説明

小型無線機、携帯電話機の着信表示発光部及びその取り付け方法

【課題】 着信表示発光部を筐体に直接超音波溶着することで固定すると、工数を裂かれるばかりでなく、解体時のリサイクルの困難性を増す。また溶着用のスペースを別途確保する必要がある。
【解決手段】 着信表示発光部1にスナップフィット機構に順ずる構成を提供する。すなわち、弾性変形を行う係止爪11に加圧することで弾性変形させ、着信表示発光部取付部21を通過させる。通過後は係止爪11が復元することで上縁部13と係止爪11が上部筐体外側カバー2を保持する。これにより着信表示発光部1を上部筐体外側カバー2に固定することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、PHS等の小型携帯無線機に用いる着信表示発光部及びその取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機器及びPHS(パーソナルハンディフォンシステム)は、双方の全契約者数が国内で8700万人を越え(2004年5月末時点)、一般的に所持されるアイテムとなっている。これら携帯電話機等(以下「携帯電話機」と略)は通話機能以外の各種機能、例えば電子メール機能やウェブブラウザ機能、が標準機能として用意されている。しかし、その機能の中核に「通話」が存在するのは普遍的である。
【0003】
また、携帯電話機の性能向上の一として、容積の圧縮が上げられる。すなわち筐体を小型化、軽量化することで携帯性を向上させ、使用感の向上を図るものである。
【0004】
しかし、かかる高機能化を果たした携帯電話機であっても着呼を示す着信ランプが実用上必要不可欠である。この着信ランプは当初、携帯電話機の筐体にLEDを直接露出するといったものであった。しかし、耐衝撃性などの観点から掛かる形態は姿を消し、基板上にLEDを設置し、導光板を着信表示発光部として筐体より露出させる構成が一般的となった。
【0005】
この着信表示発光部の固定方法として以下のような先行技術があげられる。
【0006】
特開平08−213928号公報では透光インディケータ(本書で言う着信表示発光部)用部材に外方へ延伸する接合部を設け、該接合部に空孔を備え、該空孔に筐体のエンボスを通して超音波溶着を行う旨が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平08−213928号公報、図6及び図7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来例には次のような課題がある。
【0009】
すなわち、その構成上空孔を備えるだけの外延部を用意せざるを得ず、着信表示発光部自体の大型化が避けざるを得ない。これは「筐体の小型化、軽量化」をいう要請に反する。
【0010】
また、超音波溶着することで、着信表示発光部のみの部品交換を行えなくなり、修理を行う際には筐体の該当部を交換せざるを得ない。
【0011】
さらには超音波溶着で固定されていると、解体時に部品の峻別ができなくなるという弊害がある。
【0012】
本発明は、非透過性の筐体に透過性の着信表示発光部を設ける際、超音波溶着等を用いることなく着信表示発光部を固定する方法を明示したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る着信表示発光部は、弾性を有する係止爪と弾性を有さない支持端と、弾性を有さない上縁部を含み、着信表示発光部が透光性を有することを特徴とする。
【0014】
また、この係止爪と支持端及びこの係止爪と上縁部が筐体を挟持することで、筐体に着信表示発光部を固定することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る携帯電話機は上記にかかわる着信表示発光部と発光部を含み、発光部発光時に着信表示発光部を透過して出光することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る携帯電話機の着信表示発光部取り付け方法は、支持端を着信表示発光部取付部に挿入するステップと、着信表示発光部を押下することで係止爪を変形させると共に着信表示発光部を着信表示発行部取付部に挿入するステップとからなる。
【発明の効果】
【0017】
上記構成をとることによって溶着等を行わずに着信表示発光部を筐体に固定することができ、着信表示発光部自体を小型にすることができ、携帯電話機全体の容積縮小に資する。また、筐体をそのまま流用して着信表示発光部のみの交換を可能にする。これにより、故障発生時の部品コストの増大を防止できる。
【0018】
また、解体性を向上させ、材質の異なる素材の分別を容易にすることで廃棄物処理の効率化に資する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明における携帯電話機の着信表示発光部1と上部筐体外側カバー2を表したものであり、図2は着信表示発光部1の斜視図である。
【0021】
着信表示発光部1は全体として透明若しくは半透明の弾性素材よりできている。着呼やメールの着信などにより図示しない上部筐体内の基板上に配置されたLEDが発光すると、LEDから発せられた光が着信表示発行部1を介して外部に露出し、操作者に着呼等の旨を表示する。
【0022】
上部筐体外側カバー2は折畳型携帯電話機の筐体の構成部品である。ここで折畳型携帯電話機をもちいて説明している為、「上部筐体外側カバー」としている。しかし、必ずしも折畳型携帯電話機に限定するものではなく、ストレート型(キャンディバー型)、スライド型、いわゆる平面2軸ヒンジ使用折畳型などの携帯電話機などでも良い。また携帯電話機に限られず、PDAやノートパソコンにも本発明は適用可能である。また、折畳型携帯電話機であっても「下部筐体」側に本構造を設けても良い。
【0023】
上部筐体外側カバー2には着信表示発光部取付部21を含む。着信表示発行部取付部21に図3に示す方法で装着することで、着信表示発光部1を固定する。
【0024】
着信表示発光部1は引掛爪11、支点爪12及び上縁部13を含む。
【0025】
引掛爪(係止爪)11は圧入時固定用の爪であり、一方、支点爪12は着信表示発光部1圧入時の位置決め用の支点となる箇所である。
【0026】
引掛爪11は弾性を有し、弾性変形することで着信表示発光部取付部21の最突出部が着信表示発光部取付部21を通過する。着信表示発光部取付部21通過後は変形していた引掛爪11が元に戻ることによって、着信表示発光部1を上部筐体外側カバー2に固定する。
【0027】
一方、支点爪(支持端)12は樹脂素材の塊として存在する部分であり、弾性を有しない、若しくは極微量の変形を伴う極めて小さな弾性を有する。支点爪12の目的は引掛爪11の弾性変形時に生じる応力を支える役割を果たす。
【0028】
上縁部13は弾性を有しない、または弾性のきわめて小さい樹脂素材である。
【0029】
また上表面14は着信表示発光部1を着信表示発光部取付部21に取り付けた際に外部に露出する着信表示発光部1の表面を言う。
【0030】
なお、以降の説明でA−A‘断面と述べるが、このA−A’断面は図1のものを指す。すなわち、着信表示発光部取付部21を通る長辺方向の断面である。
【0031】
図3はこの着信表示発光部1を上部筐体外側カバー2に装着する際の処理フローを記した図1のA−A‘断面の断面図である。
【0032】
図3(a)は着信表示発光部1挿入前の着信表示発光部1及び上部筐体外側カバー2を表す。
【0033】
図3(b)は着信表示発光部1挿入時の挿入方向を表す。最初に着信表示発光部1の支点爪12を着信表示発光部取付部21内に挿入することを表す。
【0034】
図3(c)は引掛爪11に対して変形応力を加えない範囲で着信表示発光部1を着信表示発光部取付部21に押圧した際の図面である。この時点では引掛爪11は弾性変形をしないため、着信表示発光部取付部21上端で引掛爪11が係止する。
【0035】
図3(d)はさらに着信表示発光部取付部21に応力Cを加圧し、引掛爪11に対して変形応力を加えた際の状態を表す図面である。図3(c)からさらに着信表示発光部取付部21を加圧すると引掛爪11が弾性変形を起こし、引掛爪11が着信表示発光部取付部21上端を乗り越える。一方で、支点爪12及び上縁部13は弾性変形しないため、図で示す回転方向Dに向かって挿入される。
【0036】
図3(e)は着信表示発光部1に対して応力を加えた結果、着信表示発光部1が着信表示発光部取付部21に取り付けられた状態を表す図である。引掛爪11が弾性変形を起こし着信表示発光部取付部21上端を完全に乗り越えると、上縁部13が上部筐体外側カバー2に突接する。既述の通り、上縁部13は引掛爪11と異なり、弾性が無い若しくは若干しかない。従って、上部筐体外側カバー2に上縁部13が当たっても上縁部13は変形しない。一方で、引掛爪11が着信表示発光部取付部21を通過すると変形していた引掛爪11が復元するため、着信表示発光部1が着信表示発光部取付部21から脱落することを防止する。
【0037】
図4は図3(e)で着信表示発光部1を取り付けた上部筐体外側カバー2を携帯電話機に取り付けた際の着信表示発光部1周辺の拡大図である。
【0038】
携帯電話機内には基板3及び発光部4が内包される。
【0039】
基板3には発光部4の制御をする制御回路、無線回路などが構成されている。
【0040】
発光部4は着呼及びメールの着信等があった際に発光する。発光部4が発光すると着信表示発光部1を透過して携帯電話機外部に出光し、操作者に対して着信があった旨を報知する。
【0041】
ここで着信表示発光部1の上表面14を、上部筐体外側カバー2の外表面よりΔd(本書で「マージン」という)だけ落とし込ませることで上表面14の保護を図ると共に、意図して着信表示発光部1を操作者が取り外すことを防止する。
【0042】
なお、本図では発光部4を着信表示発光部1直下に配置しているが、必ずしもこの構成にこだわるものではない。例えば、導光板等を用いて着信表示発光部1に光を導くような構成にしても良い。
【0043】
次に筐体分解時の処理について述べる。
【0044】
筐体分解時には図3の逆の処理を行えばよい。図5は、A−A‘断面における着信表示発光部1取り外し時の処理フローを表す図である。
【0045】
最初に携帯電話機の着信表示発光部1が係止した状態で上部筐体外側カバー2を取り外す。図5(a)はその取り外した上体での上部筐体外側カバー2と着信表示発光部1である。
【0046】
図5(a)において引掛爪11を押圧することで(図5(a)の矢印)、引掛爪11を弾性変形させ上部筐体外側カバー2との係止状態を解除する。
【0047】
その後、係止が外れると上部筐体外側カバー2の裏面方向から力を着信表示発光部1に対して加える(図5(b)の矢印)。これにより、着信表示発光部1が上部筐体外側カバー2から脱落し、容易に解体することが可能となる。
【0048】
このような構成をとることで、組み立て時に容易に着信表示発光部1を装着可能となり作業工程が短縮する。また携帯電話運用時には着信表示発光部1の脱落を防止すると共に、解体時には逆に着信表示発光部1を容易に分解可能となる。これにより解体時の分別が容易となり、リサイクル性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】着信表示発光部及び上部筐体外側カバーの斜視図である。
【図2】着信表示発光部を二方向から見た際の斜視図である。
【図3】着信表示発光部を上部筐体外側カバーに装着する際の処理フローを記したA−A‘断面の断面図である。
【図4】着信表示発光部を取り付けた上部筐体外側カバーを携帯電話機に取り付けた際の着信表示発光部周辺の拡大図である。
【図5】A−A‘断面における着信表示発光部1取り外し時の処理フローを表す図である。
【符号の説明】
【0050】
1:着信表示発光部
2:上部筐体外側カバー
3:基板
4:発光部
11:引掛爪(係止爪)
12:支点爪(支持端)
13:上縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する係止爪と、
弾性を有さない支持端と、
弾性を有さない上縁部を含む着信表示発光部であって、
前記着信表示発光部は透光性を有することを特徴とする着信表示発光部。
【請求項2】
前記係止爪と前記支持端及び前記係止爪と前記上縁部が筐体を挟持することで、前記筐体に前記着信表示発光部を固定することを特徴とする請求項1記載の着信表示発光部。
【請求項3】
請求項2記載の着信表示発光部と発光部を含む携帯情報端末であって、
前記筐体とは前記携帯情報端末の筐体であって、
前記発光部発光時に前記着信表示発光部を透過して出光することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項4】
前記着信表示発光部の上表面と前記筐体の外表面との間にマージンを設けることを特徴とする請求項3記載の携帯情報端末。
【請求項5】
弾性を有する係止爪、弾性を有さない支持端及び弾性を有さない上縁部を含む透光性を有する着信表示発光部と、
着信表示発行部取付部が設けられた筐体からなる携帯電話機の着信表示発光部取り付け方法であって、
前記支持端を前記着信表示発行部取付部に挿入するステップと、
前記着信表示発光部を押下することで前記係止爪を変形させると共に前記着信表示発光部を前記着信表示発行部取付部に挿入するステップとからなる携帯電話機の着信表示発光部取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−345391(P2006−345391A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171014(P2005−171014)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】