説明

小型車両の可動式バンパ構造

【課題】 バンパの姿勢が車体の前後方向で変化しても緩衝機能を発揮できる小型車両の可動式バンパ構造を提供すること。
【解決手段】 傾斜角度が調節可能になった可動式荷台部31を備えたゴルフカート10にバンパ24を設けた。そして、バンパ24におけるバンパ本体部21の前端部を、回転軸25を中心として上下方向に回転可能な状態で車体後部11aに取り付けた。また、バンパ本体部21の後端部を上方に位置させたときのバンパ本体部21の前端側部分の後部に前部バンパ22a,22bを設け、バンパ本体部21の後端部が車体後部11aの後方に位置したときのバンパ本体部21の後端部に後部バンパ23a,23bを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜角度を調節可能にして車体後部に設けられた荷台を備えた小型車両の可動式バンパ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴルフカート等の小型車両の中に、ゴルフバッグを積載するための荷台が上下方向に傾斜角度を調節可能な状態で車体後部に設けられたものがある。また、このような小型車両の中に、荷台とともに、バンパも傾斜角度を調節可能な状態で設けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。このバンパは、荷台を回転可能に支持する荷台支点軸受を備えたリアフレームと、リアフレームに回転自在に取り付けられたリアバンパと、両端部が荷台とリアバンパとにそれぞれ回転自在に連結されたロッドとで構成されている。
【0003】
リアフレームは後方に延びて、その後端部にリアバンパが、荷台支点軸受と所定距離を保って取り付けられている。また、ロッドの上端部は荷台の下面下部側に連結され、ロッドの下端部は、リアバンパの前部側部分に連結されて、荷台、リアフレーム、リアバンパおよびロッドでリンク機構が構成されている。そして、荷台を上方に回転させると、ロッドに引っ張られてリアバンパも上方に回転し、荷台を下方に回転させると、リアバンパも下方に回転して略水平方向に延びるようになる。したがって、荷台が後方に延びた状態のときに、リアバンパも後方に延びるため、小型車両が後方の障害物と衝突した際にリアバンパがその衝撃を緩衝する。
【特許文献1】特開2000−185126号公報
【発明の開示】
【0004】
しかしながら、この従来の小型車両では、荷台が下方に回転してリアバンパが略水平方向に延びているときには、リアバンパはバンパとしての緩衝機能を発揮するが、荷台が上方に回転してリアバンパも荷台とともに上方に回転したときには、リアバンパはバンパとしての緩衝機能を発揮することができない。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、バンパの姿勢が車体の前後方向で変化しても緩衝機能を発揮できる小型車両の可動式バンパ構造を提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る小型車両の可動式バンパ構造の構成上の特徴は、前端側部分を支点として上下方向に回転することにより傾斜角度が調節可能になった荷台と、バンパとが、車体後部に設けられた小型車両の可動式バンパ構造であって、バンパが、後端部の位置を前後方向に変更可能にして車体後部に取り付けられたバンパ本体部と、バンパ本体部に設けられた緩衝部とで構成され、バンパ本体部の後端部が車体後部の後方における前部側と後部側との双方の位置に位置したときのそれぞれの位置におけるバンパ本体部の後端に緩衝部が位置するようにしたことにある。
【0007】
このように、本発明に係る小型車両の可動式バンパ構造では、バンパ本体部が、後端部の位置を前後方向に変更可能にして車体後部に取り付けられている。そして、バンパ本体部の後端部が前部側に位置したときと、後部側に位置したときとの双方の場合に、緩衝部がバンパ本体部の後端に位置するようにしている。このため、荷台を車体の後方に突出するように下方に回転させたときには、バンパ本体部の後端部が後部側に位置するようにバンパの位置を調節することにより、バンパ機能を確保できる。
【0008】
また、荷台を上方に回転させたときには、バンパ本体部の後端部が前部側に位置するようにバンパの位置を調節することにより、緩衝部を車体近傍に位置させた状態でバンパ機能を確保できる。そして、このように、バンパ本体部の後端部を前部側に位置させた場合、車体の前後方向の長さが短くなるため、複数の小型車両を前後に並べて車庫等に収納するときに、各小型車両を接近させることができ、収納スペースを狭くすることができる。また、この場合のバンパ本体部の後端部の前後方向への位置変更は、バンパ本体部を前端側部分を中心として回転させたり、バンパ全体を前後方向に進退させたりすることにより行える。
【0009】
また、本発明に係る小型車両の可動式バンパ構造の他の構成上の特徴は、バンパ本体部の前端部を、回転軸を中心として回転可能な状態で車体後部に取り付けることにより、バンパ本体部の後端部の位置を前後方向に変更可能にするとともに、緩衝部を第1の緩衝部と第2の緩衝部とで構成し、バンパ本体部の後端部が車体後部の後方における前部側に位置したときのバンパ本体部の前端側部分の後部に第1の緩衝部を設け、バンパ本体部の後端部が車体後部における後部側に位置したときのバンパ本体部の後端部に第2の緩衝部を設けたことにある。
【0010】
これによると、バンパを移動させるための構造を単純かつ安価に構成できる。この場合、バンパ本体部の後端部が前部側に位置したときのバンパ本体部の前端側部分の後部に、第1の緩衝部が設けられる。このため、バンパ本体部の後端部が車体後部の下部における通常、バンパが取り付けられる部分から離れた位置に移動しても、第1の緩衝部は、車体後部における適正な位置に位置する。したがって、良好なバンパ機能を発揮できる。また、バンパ本体部の後端部が後部側に位置したときのバンパ本体部の後端部に、第2の緩衝部が設けられるため、この場合も第2の緩衝部は、車体後部における適正な位置に位置して、良好なバンパ機能を発揮できる。
【0011】
また、本発明に係る小型車両の可動式バンパ構造のさらに他の構成上の特徴は、回転軸を車体の幅方向に配置し、バンパ本体部が回転軸の軸周り方向に沿って上方に回転したときに、バンパ本体部の前端側部分における後部に設けられた第1の緩衝部が後方に向かって突出し、バンパ本体部が回転軸の軸周り方向に沿って下方に回転したときに、バンパ本体部の後端部に設けられた第2の緩衝部が後方に向かって突出するようにしたことにある。
【0012】
これによると、バンパを上方と下方のいずれの方向に回転させても、使用しない方の緩衝部およびバンパ本体部におけるその使用しない緩衝部が取り付けられている部分を小型車両の走行等に支障を生じさせないようにして所定位置に移動させることができる。また、これによると、バンパが上下方向に回転するため、使用しない緩衝部およびバンパ本体部におけるその使用しない緩衝部が取り付けられている部分が車幅方向の外部側に突出して、傷害になることがない。さらに、バンパを上方に回転したときの第1の緩衝部の路面からの高さと、バンパを下方に回転したときの第2の緩衝部の路面からの高さとを同じにすることができる。
【0013】
また、本発明に係る小型車両の可動式バンパ構造のさらに他の構成上の特徴は、回転軸の軸方向から見て、バンパは、回転軸と第1の緩衝部とを結ぶ第1の仮想直線と、回転軸と第2の緩衝部とを結ぶ第2の仮想直線とが略L字形を形成するように構成され、バンパ本体部が回転軸の軸周り方向に沿って下方に回転したときに、第1の仮想直線が回転軸から下方に延び、第2の仮想直線が回転軸から後方水平方向に延びるようにしたことにある。これによると、バンパの構造を単純かつ安価に構成できる。
【0014】
また、本発明に係る小型車両の可動式バンパ構造のさらに他の構成上の特徴は、バンパ本体部における回転軸と第2の緩衝部との間に、バンパ本体部が回転軸の軸周り方向に沿って下方に回転したときに、荷物を載置できる載置部を形成したことにある。これによると、バンパを荷台としても使用できるため、別途荷物を載置するための載置部を設ける必要がなくなる。また、回転軸と第2緩衝部との間の長さは、荷台を後方に突出させた際の突出距離に応じて設定されるため、比較的長くなり、大きな荷台を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて詳しく説明する。図1および図2は、同実施形態に係る可動式バンパ構造20を備えた本発明の小型車両としてのゴルフカート10を示している。このゴルフカート10は、車体11の下部における前部および後部の左右両側にそれぞれ設けられた4個の車輪12と、車体11内の中央部の前後にそれぞれ設けられた二人用の前部シート13aと三人用の後部シート13bとを備えている。また、前部シート13aの前部にハンドル14が設けられ、ハンドル14の下方にアクセルペダルとブレーキペダル(図示せず)とが並んで設けられている。さらに、車体11の上部に、車体11の四隅に設けられた支持枠15を介して屋根部16が設けられている。
【0016】
また、車体後部11aの後端下部に可動式バンパ構造20が設けられ、車体11の前端下部にフロントバンパ17が取り付けられている。そして、車体後部11aの上部にはゴルフバッグ18を積載するための可動式荷台構造19が設けられている。このゴルフカート10は、前部シート13aに座った運転者がハンドル14を回転操作することにより前部の両車輪12が左右に向きを変更して、ゴルフカート10は左旋回したり右旋回したりしながら進行方向を変えて走行する。また、運転者がアクセルペダルを踏み込むとアクセルペダルの踏込み量に応じてゴルフカート10は加速しながら走行する。
【0017】
この場合、アクセルペダルの踏込み量が大きいほどゴルフカート10の加速度は大きくなり、アクセルペダルの踏込み量が小さいほどゴルフカート10の加速度は小さくなる。また、アクセルペダルの踏込み量を一定に維持するとゴルフカート10は一定速度で走行する。また、運転者がブレーキペダルを踏込むと、ブレーキペダルの踏込み量に応じて各車輪12の回転駆動が制動される。この場合、各車輪12に掛かる制動力は、ブレーキペダルの踏込み量に比例する。
【0018】
可動式バンパ構造20は、図3ないし図5に示したように、枠状のバンパ本体部21と、本発明に係る第1の緩衝部としての一対の前部パンパ22a,22b(図6参照)と、本発明に係る第2の緩衝部としての一対の後部バンパ23a,23bとで構成されるバンパ24を備えている。バンパ本体部21は、車体後部11aの後部下端の両側から車体11の外部に向かって延びる一対の棒状部材21a,21bと、棒状部材21a,21bの前端側部分に掛け渡された棒状の補強部材21cとで構成されている。すなわち、車体後部11aの表面部を構成するカウルの後部下端の両側に縦長の切欠き凹部11b,11cが形成されており、棒状部材21a,21bは、前端部を中心として、切欠き凹部11b,11c内を上下方向に回転可能になっている。
【0019】
前部パンパ22a,22bは、硬質ゴムを略円筒状に形成して構成されており、棒状部材21a,21bの前端側部分の下面(図3ないし図5に示した状態での下面)にそれぞれ固定されている。また、後部バンパ23a,23bは、前部パンパ22a,22bと同一のもので構成され、棒状部材21a,21bの後端部にそれぞれ固定されている。また、棒状部材21a,21bの前端部には、車体11の幅方向に延びる回転軸25がそれぞれ設けられており(一方しか図示せず)、この回転軸25を、車体後部11aに設けられたブラケット26a,26bに回転可能に係合させることにより、バンパ24は上下方向に回転可能な状態で車体後部11aに取り付けられている。
【0020】
また、可動式荷台構造19は、後述するように上下方向に回転可能になっており、可動式荷台構造19が上方に回転したときに、図6および図7に示したように、バンパ24も上方に回転することができる。そして、図6および図7に示したように、棒状部材21a,21bの前端部(図6および図7の状態では下端部)から前方(下方)に向かって、係合片27a,27bが突出している。ブラケット26a,26bは、それぞれ対向して配置された略直角三角形の片を備えており、直角を挟んだ両側部分をそれぞれ後方および上方に向けた状態で両片の直角部分が、車体後部11aの下部に車幅方向に沿って設けられた支持軸28に固定されている。この支持軸28は、車体11側に設けられたフレーム28aを介して取り付けられている。
【0021】
そして、ブラケット26a,26bは、両片の後部下部側に形成された支持穴に回転軸25を回転可能に係合させてバンパ24を支持している。また、この可動式バンパ構造20では、バンパ24が下方に回転して略水平状態になったときには、係合片27a,27bが支持軸28に係合するように構成されており、これによって、バンパ24はそれ以上、下方に回転することを防止される。また、ブラケット26a,26bの前部上部側にも支持穴(図示せず)が形成されている。
【0022】
可動式荷台構造19は、本発明の荷台としての可動式荷台部31と、支持アーム部32とで構成されている。また、可動式荷台部31は、車体11の後部下部側に上下方向に回転可能に取り付けられたバッグ受け荷台33と、バッグ受け荷台33の下端側部分に回転可能に連結された一対のバッグ止部支持部34a,34bと、一対のバッグ止部支持部34a,34bに取り付けられた板状のバッグ止部35とで構成されている。バッグ受け荷台33は、前端部(下端部)を支点として上下方向に回転可能な状態で車体後部11aの後部に取り付けられた一対の棒状本体36a,36bと、棒状本体36a,36bの後端部に掛け渡された棒状本体36cと、棒状本体36a,36bの前部側部分の上面に掛け渡された前部支持部材37aと、棒状本体36cの上面に取り付けられた後部支持部材37bとで構成されている。
【0023】
前部支持部材37aと後部支持部材37bとの左右両側部分は、それぞれ斜め上方に向かって湾曲しており、これによって、ゴルフバッグ18をバッグ受け荷台33に載せたときに、ゴルフバッグ18が前部支持部材37aと後部支持部材37bとの両側から落下しないようになっている。また、棒状本体36cの中央前部には、回転支持部38が取り付けられ、棒状本体36aの前端側部分には、バンパ24の棒状部材21aが着脱自在に係合できる係合部36dが設けられている。
【0024】
この係合部36dは対向する2個の片を備えており、2個の片で棒状部材21aを挟むことにより、バンパ24をバッグ受け荷台33の下面に沿わせる。また、棒状本体36a,36bの前端部には、それぞれ車幅方向に中心軸を沿わせた軸穴(図示せず)が形成されている。そして、棒状本体36a,36bは、この軸穴を、車体後部11aの支持軸28に取り付けられたブラケット26a,26bの上部の支持穴に合わせ両穴にボルト39を係合させることにより、上下方向に回転可能な状態で車体後部11aに連結されている。
【0025】
また、棒状本体36a,36bの下端側部分には、それぞれ、前述したバッグ止部支持部34a,34bがボルト41a,41bを介して上下方向に回転可能な状態で連結されている。このバッグ止部支持部34a,34bは、それぞれ前部側部分と、その前部側部分から左右に対向した状態で後方に延びる軸挿通穴付きの一対の支持片を備えており、一対の支持片間に棒状本体36a,36bを配置させて、ボルト41a,41bを介して棒状本体36a,36bに支持されている。そして、一対のバッグ止部支持部34a,34bの上部に、車体11の幅方向に延びるバッグ止部35が上面を後方上部に向けた状態で取り付けられている。
【0026】
また、支持アーム部32は、一対の棒状部材42a,42bからなる折り畳み式支持部42と、伸縮ロッド43とからなるリンク機構で構成されている。また、折り畳み式支持部42を構成する棒状部材42a,42bは、回転連結部44を介して互いに回転可能な状態で連結されている。この回転連結部44は、棒状部材42bの一端部に設けられ対向する左右一対の支持片を備えた回転支持部44aと、棒状部材42aの他端部から左右水平方向に延び、回転支持部44aに回転可能に連結された回転軸44bとで構成されており、回転軸44bは水平方向に延びる軸の軸周り方向にのみ回転可能になっている。
【0027】
そして、棒状部材42aの一端部は、回転連結部45を介して、車体後部11aの上部側部分に連結され、棒状部材42bの他端部は、回転連結部46を介してバッグ受け荷台33の棒状本体36cに連結されている。回転連結部45は、車体後部11aの上部側部分に設けられ対向する左右一対の支持片を備えた回転支持部45aと、棒状部材42aの一端部から左右水平方向に延び、回転支持部45aに回転可能に連結された回転軸45bとで構成されており、回転軸45bは水平方向に延びる軸の軸周り方向にのみ回転可能になっている。
【0028】
また、回転連結部46は、前述した回転支持部38と、棒状部材42bの他端部から左右水平方向に延び、回転支持部38に回転可能に連結された回転軸46aとで構成されており、回転軸46aは水平方向に延びる軸の軸周り方向にのみ回転可能になっている。このため、棒状部材42a,42bが直線状に延びると、バッグ受け荷台33は、図1に示したように、下方に位置するようになり、棒状部材42a,42bが屈曲し、その屈曲角度が大きくなるとバッグ受け荷台33は、図2に示した直立状態になる。
【0029】
伸縮ロッド43は、シリンダ43aと、シリンダ43a内を進退可能なロッド43bと、シリンダ43aの軸周り方向に回転可能な状態でシリンダ43aに取り付けられたレバー(図示せず)と、シリンダ43aの内部におけるレバーの両側にそれぞれ設置されたコイル状のスプリング(図示せず)とを備えている。スプリングは、それぞれ外側の端部がシリンダ43aに固定され、内側の端部がレバーに固定されており、通常時は、ロッド43bを締め付けて固定する。また、レバーを、一方に回転させると、スプリングによるロッド43bの締付力が小さくなって、ロッド43bをシリンダ43aの長手方向に沿った所定位置に移動させることができる。
【0030】
また、伸縮ロッド43の一端部は、回転連結部47を介して、棒状部材42aの下面における一端側部分に連結され、伸縮ロッド43の他端部は、回転連結部48を介して棒状部材42bの下面における略中央部に連結されている。回転連結部47は、ロッド43bの一端部に設けられ左右水平方向に延びる回転軸47aと、棒状部材42aの下面に設けられ回転軸47aを回転可能に支持する回転支持部47bとで構成されており、回転軸47aは水平方向に延びる軸の軸周り方向にのみ回転可能になっている。
【0031】
また、回転連結部48は、シリンダ43aの他端部に設けられ、左右方向に延びる回転軸48aと、棒状部材42bの下面に設けられ回転軸48aを回転可能に支持する回転支持部48bとで構成されており、回転軸48aは水平方向に延びる軸の軸周り方向にのみ回転可能になっている。また、レバーには、ケーブル49aを介してロック解除レバー49が連結されている。このロック解除レバー49は、棒状本体36cの長手方向に沿うようにして、棒状本体36cの下面における右側部分に取り付けられており、ばね部材(図示せず)によって、棒状本体36cから遠ざかるように付勢されている。
【0032】
そして、ロック解除レバー49を操作して、棒状本体36cに近づけるとレバーが、回転してスプリングによるロッド43bの締付力を小さくして、ロッド43bを移動可能にする。また、ロック解除レバー49を放して、棒状本体36cから遠ざけると、レバーが元の位置に戻ってスプリングによるロッド43bの締付力が大きくなりロッド47bをシリンダ43aに固定する。このため、ロック解除レバー49を操作しながら可動式荷台部31を上下移動させることにより、可動式荷台部31の傾斜角度を任意の角度に調節することができる。
【0033】
つぎに、以上のように構成された可動式バンパ構造20を備えたゴルフカート10を使用する場合について説明する。この場合、まず、バンパ24を下方に回転して係合片27a,27bを支持軸28に係合させる。これによって、バンパ24は略水平状態になって後方に延び、その後端部に後部バンパ23a,23bが位置するようになる。つぎに、ロック解除レバー49を棒状本体36c側に押した状態で、伸縮ロッド43を伸長または収縮させて、バッグ受け荷台33の位置を、図1の状態か、または図1の状態よりもやや高い任意の位置になるように調節する。
【0034】
ついで、ロック解除レバー49を放してバッグ受け荷台33をその位置に固定したのちに、バッグ止部35を回転させて棒状本体36a,36bから離間させる。このときのバッグ止部35と棒状本体36a,36bとの角度は略直角になる。そして、ゴルフバッグ18を、可動式荷台部31の上に載せる。この場合、可動式荷台部31には、支持アーム部32を挟んで、両側に2個ずつ、合計4個のゴルフバッグ18を載せることができ、各ゴルフバッグ18は、底部をバッグ止部35に当て、側部における下部側部分と上部側部分とをそれぞれ前部支持部材37aと後部支持部材37bとに当てた状態で可動式荷台部31に積載される。
【0035】
また、バッグ受け荷台33の下面には、図8に示したように、ゴルフクラブや傘などをを収容するためのケース18aを取り付けることができるようになっており、ケース18aを取り付けた場合でもバッグ受け荷台33は、ケース18aをバンパ24に干渉させることなくその傾斜角度を調節できる。この状態で、ゴルフカート10を運転して走行させ、ゴルフ場のコースを回る。そして、ゴルフカート10が走行しているときに、後続の他のゴルフカート10が接近して、図9に示したように、両ゴルフカート10が衝突した場合には、バンパ24の後部バンパ23a,23bが、後続のゴルフカート10のフロントバンパ17に当たる。
【0036】
このため、後部バンパ23a,23bとフロントバンパ17によって両ゴルフカート10の衝撃が緩衝される。また、バンパ24が後方に延びているため、後続のゴルフカート10が前方のゴルフカート10の可動式荷台構造19に衝突することが防止される。そして、ゴルフカート10の使用が終了して、ゴルフカート10を所定の場所に回収する際には、可動式荷台部31から、ゴルフバッグ18を降ろす。ついで、ロック解除レバー49を棒状本体36c側に押した状態で、可動式荷台部31を上方に押し上げる。
【0037】
そして、可動式荷台部31が略垂直状態になったときに、ロック解除レバー49を放して可動式荷台部31をその位置に固定する。この場合、ロック解除レバー49と棒状本体36cとを片手で持って操作することができる。つぎに、バンパ24を上方に回転して係合片27a,27bと支持軸28との係合を解除させる。そして、バンパ24の棒状部材21aが、可動式荷台部31の棒状本体36aに設けられた係合部36dに係合するまでバンパ24を上方に回転させ、図10の状態にする。これによって、バンパ24は略垂直状態になって上方に延び、その下端後端部に前部バンパ22a,22bが位置する。
【0038】
この状態のゴルフカート10が走行しているときに、後続の他のゴルフカート10が接近して、図11に示したように、両ゴルフカート10が衝突した場合には、バンパ24の前部バンパ22a,22bが、後続のゴルフカート10のフロントバンパ17に当たる。このため、前部バンパ22a,22bとフロントバンパ17によって両ゴルフカート10の衝撃が緩衝される。また、図11のように、バッグ受け荷台33にケース18aが取り付けられていても、ケース18aが、後続のゴルフカート10に衝突することはない。また、このように、可動式荷台部31およびバンパ24を略垂直状態にしたときには、可動式荷台部31やバンパ24が後方に突出しなくなるため、邪魔になることがなくなる。この結果、複数のゴルフカート10を前後に接近させて効率よく車庫等に収容することができる。
【0039】
このように、本実施形態に係る可動式バンパ構造20では、バンパ24が、所定の長さを備えた枠状のバンパ本体部21と、バンパ本体部21の前端下部に設けられた前部パンパ22a,22bと、バンパ本体部21の後端部に設けられた後部バンパ23a,23bとで構成されている。そして、バンパ24は、上下方向に回転可能な状態で車体後部11aに取り付けられている。このため、可動式荷台部31を車体11の後方に突出するように下方に回転させたときには、バンパ24を水平状態にして後方に延ばすことにより、後部バンパ23a,23bでバンパ機能を確保できる。
【0040】
また、可動式荷台部31を上方に回転させたときには、バンパ24を垂直状態にして上方に延ばすことにより、前部バンパ22a,22bでバンパ機能を確保できる。また、可動式荷台部31とバンパ24の双方を上方に回転して垂直状態にした場合には、車体11の前後方向の長さが短くなるため、複数のゴルフカート10を前後に並べて収納するときに、各ゴルフカート10を接近させることができ、収納スペースを狭くすることができる。また、バンパ24を上下に回転させるための機構が、回転軸25を介してバンパ24をブラケット26a,26bに対して回転可能にするだけであるため、構造が単純でかつ安価に構成できる。
【0041】
さらに、前述した実施形態に係る可動式バンパ構造20では、バンパ24を上方と下方のいずれの方向に回転させても、使用しない方の前部バンパ22a,22bまたは後部バンパ23a,23bがゴルフカート10の走行等に支障を生じさせないようにしてバンパ本体部21、前部パンパ22a,22bおよび後部バンパ23a,23bが配置されている。したがって、バンパ24が、ゴルフカート10の走行の傷害になることがない。さらに、バンパ24を上方に回転したときの前部バンパ22a,22bの路面からの高さと、バンパ24を下方に回転したときの後部バンパ23a,23bの路面からの高さが同じであるため、同じゴルフカート10と衝突した場合の緩衝機能が同じになる。また、棒状部材21a,21bの前端側部分が補強部材21cで連結されているため、棒状部材21a,21bの一方だけを操作してもバンパ24全体を回転させることができ回転作業性がよくなる。
【0042】
(第2実施形態)
図12ないし図14は、本発明の第2実施形態に係る可動式バンパ構造50を示している。この可動式バンパ構造20では、バンパ54のバンパ本体部51が、平面視が略台形の板状に形成されている。そして、バンパ本体部51の前端部下面(図14では、下端部後面)に前部バンパ52がバンパ本体部51の縁部に沿って形成されている。また、バンパ本体部51の後端部の両側に緩やかな突起状の後部バンパ53a,53bが形成されている。
【0043】
これらのバンパ本体部51、前部バンパ52および後部バンパ53a,53bは一体として形成されている。また、バンパ本体部51の上面における両側部分には、間隔を保って、砂や水等を収容する容器55を載置できる凹部からなる載置部56a,56bが形成されている。この可動式バンパ構造50のそれ以外の部分の構成は、前述した第1実施形態の可動式バンパ構造20と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0044】
この可動式バンパ構造50においては、バンパ54を後方に延ばした状態のときには、載置部56a,56bに容器55等を載置することができるが、図14のように、バンパ54を垂直状態にしたときには、容器55等を載置部56a,56bから降ろしておく。また、この可動式バンパ構造50では、前部バンパ52および後部バンパ53a,53bの車幅方向の長さが長いため、後続のゴルフカート10が真っ直ぐな方向でなく多少の角度を持って衝突してきても良好な緩衝機能を発揮することができる。この可動式バンパ構造50のそれ以外の作用効果については、前述した可動式バンパ構造20と同様である。
【0045】
(第3実施形態)
図15は、本発明の第3実施形態に係る可動式バンパ構造60を示している。この可動式バンパ構造60では、バンパ64のバンパ本体部61a,61bが、それぞれ垂直方向に配置された回転軸65a,65bを中心として、後方から車体後部11aの幅方向にかけての水平方向に回転可能に取り付けられている。そして、バンパ本体部61a,61bの前端側部分の外側面(二点鎖線で示した状態では、後面)にそれぞれ前部バンパ62a,62bが形成され、バンパ本体部61a,61bの後端部に後部バンパ63a,63bが形成されている。
【0046】
この可動式バンパ構造60のそれ以外の部分の構成は、前述した第1実施形態の可動式バンパ構造20と同一である。この可動式バンパ構造60においては、前部バンパ62a,62bを使用するときには、バンパ64が車体11に沿った状態になって、外部に突出しなくなるため邪魔になることがない。この可動式バンパ構造60のそれ以外の作用効果については、前述した可動式バンパ構造20と同様である。
【0047】
(第4実施形態)
図16および図17は、本発明の第4実施形態に係る可動式バンパ構造70を示している。なお、この可動式バンパ構造70は左右一対のもので構成されるが図16および図17では一方の可動式バンパ構造70を示している。この可動式バンパ構造70では、バンパ74のバンパ本体部71が棒状に形成されている。また、前部バンパと後部バンパとが1個の前後バンパ72で構成されて、バンパ本体部71の後端部に固定されている。そして、バンパ本体部71の前端部に円板状の係止部73が設けられ、バンパ本体部71の前部側部分と後部側部分とにそれぞれ係合凹部75a,75bが形成されている。
【0048】
そして、このバンパ74は、バンパ本体部71を車体後部11aに設けられた支持部材76の挿通穴76a内に位置させて、前後バンパ72と係止部73とで挿通穴76a内から抜け止めされた状態で移動可能に取り付けられている。また、支持部材76の後部側部分には、支持部材76の外面と内面とに貫通する穴部76bが形成されており、この穴部76bにばね78を介して係合凹部75a,75bに係合可能なロック用ノブ79が取り付けられている。また、ばね78は、穴部76bから抜け止めされて、ロック用ノブ79を挿通穴76a内側に付勢する。
【0049】
このため、ロック用ノブ79を引っ張った状態で、バンパ本体部71を前後方向に移動させ、ロック用ノブ79を係合凹部75aに係合させることにより、図17のように、バンパ74を後方に突出させた状態にでき、ロック用ノブ79を係合凹部75bに係合させることにより、図16のように、バンパ74の前後バンパ72以外の部分を車体後部11a内に後退させた状態にできる。この可動式バンパ構造70のそれ以外の部分の構成は、前述した第1実施形態の可動式バンパ構造20と同一である。この可動式バンパ構造70においては、バンパ74を車体後部11a内に後退させて使用するときには、バンパ74の前後バンパ72以外の部分が車体後部11a内に入ってしまうため、邪魔になることがない。この可動式バンパ構造70のそれ以外の作用効果については、前述した可動式バンパ構造20と同様である。
【0050】
また、本発明は、前述した実施形態に限定するものでなく、本発明の技術的範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、小型車両をゴルフカート10としたが、この小型車両は、ゴルフカートに限定されるものでなく、傾斜角度を調整可能な荷台を備えた小型車両であればなんでもよい。また、それ以外のゴルフカート10や可動式バンパ構造20等を構成する各部分についても適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係る可動式バンパ構造を備えたゴルフカートを示した側面図である。
【図2】ゴルフカートが備えるバンパを上方に回転させた状態を示した側面図である。
【図3】可動式バンパ構造を後方から見た状態を示した斜視図である。
【図4】バンパの取付構造を示した一部切欠き斜視図である。
【図5】可動式荷台部とバンパとの取付構造を示した側面図である。
【図6】バンパが略垂直状態になったときのバンパの取付構造を示した一部切欠き斜視図である。
【図7】バンパが略垂直状態になったときのバンパの取付構造を示した側面図である。底受部とバッグ受け荷台との連結状態を示した斜視図である。
【図8】バッグ受け荷台にケースを取り付けた状態を示した側面図である。
【図9】バンパを後方に延ばした状態のゴルフカートが追突した状態を示した側面図である。
【図10】ケースが取り付けられたバッグ受け荷台を垂直に向けた状態を示した側面図である。
【図11】バンパを上方に延ばした状態のゴルフカートが追突した状態を示した側面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る可動式バンパ構造を示した側面図である。
【図13】図12の底面図である。
【図14】図12の可動式バンパ構造のバンパを上方に回転させた状態を示した側面図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係る可動式バンパ構造を示した平面図である。
【図16】本発明の第4実施形態に係る可動式バンパ構造を示した断面図である。
【図17】図16の可動式バンパ構造のバンパが後方に延びた状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10…ゴルフカート、11…車体、11a…車体後部、20,50,60,70…可動式バンパ構造、21,51,61a,61b,71…バンパ本体部、22a,22b,52,62a,62b,72…前部バンパ、23a,23b,53a,53b,63a,63b…後部バンパ、24,54,64,74…バンパ、25,65a,65b…回転軸、31…可動式荷台部、55…容器、56a,56b…載置部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端側部分を支点として上下方向に回転することにより傾斜角度が調節可能になった荷台と、バンパとが、車体後部に設けられた小型車両の可動式バンパ構造であって、
前記バンパが、後端部の位置を前後方向に変更可能にして前記車体後部に取り付けられたバンパ本体部と、前記バンパ本体部に設けられた緩衝部とで構成され、前記バンパ本体部の後端部が前記車体後部の後方における前部側と後部側との双方の位置に位置したときのそれぞれの位置における前記バンパ本体部の後端に前記緩衝部が位置するようにしたことを特徴とする小型車両の可動式バンパ構造。
【請求項2】
前記バンパ本体部の前端部を、回転軸を中心として回転可能な状態で前記車体後部に取り付けることにより、前記バンパ本体部の後端部の位置を前後方向に変更可能にするとともに、前記緩衝部を第1の緩衝部と第2の緩衝部とで構成し、前記バンパ本体部の後端部が前記車体後部の後方における前部側に位置したときの前記バンパ本体部の前端側部分の後部に前記第1の緩衝部を設け、前記バンパ本体部の後端部が前記車体後部における後部側に位置したときの前記バンパ本体部の後端部に前記第2の緩衝部を設けた請求項1に記載の小型車両の可動式バンパ構造。
【請求項3】
前記回転軸を前記車体の幅方向に配置し、前記バンパ本体部が前記回転軸の軸周り方向に沿って上方に回転したときに、前記バンパ本体部の前端側部分における後部に設けられた前記第1の緩衝部が後方に向かって突出し、前記バンパ本体部が前記回転軸の軸周り方向に沿って下方に回転したときに、前記バンパ本体部の後端部に設けられた前記第2の緩衝部が後方に向かって突出するようにした請求項2に記載の小型車両の可動式バンパ構造。
【請求項4】
前記回転軸の軸方向から見て、前記バンパは、前記回転軸と前記第1の緩衝部とを結ぶ第1の仮想直線と、前記回転軸と前記第2の緩衝部とを結ぶ第2の仮想直線とが略L字形を形成するように構成され、前記バンパ本体部が前記回転軸の軸周り方向に沿って下方に回転したときに、前記第1の仮想直線が前記回転軸から下方に延び、前記第2の仮想直線が前記回転軸から後方水平方向に延びるようにした請求項3に記載の小型車両の可動式バンパ構造。
【請求項5】
前記バンパ本体部における前記回転軸と前記第2の緩衝部との間に、前記バンパ本体部が前記回転軸の軸周り方向に沿って下方に回転したときに、荷物を載置できる載置部を形成した請求項4に記載の小型車両の可動式バンパ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−69672(P2007−69672A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256759(P2005−256759)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】