説明

小型車両の衝突対応構造

【課題】サイドシルを前方へ延出することができず、サイドシルの延出前部に衝撃吸収構造を取付けるだけのスペースが確保できない小型車両において、衝突による前輪後退時のスペース(前輪の後退量)、前突時のクラッシュ量を確保することができる小型車両の衝突対応構造の提供を目的とする。
【解決手段】前輪19の後方で、かつヒンジピラー17よりも後方位置に、車両衝突時における前輪後退時の衝撃吸収構造30が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2人乗りスマートサイズの所謂コミュータEV(Commuter Electric Vehicle)のような小型車両の衝突対応構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、普通乗用車等の車両においては車両前部の長さ所謂ノーズが比較的長いので、前突時の衝撃吸収用のクラッシュストロークを充分確保することができるが、上述例の小型車両においては車両前部の長さ所謂ノーズが極めて短く、前突時の衝撃吸収用のクラッシュストロークを充分に確保することが困難であった。
【0003】
ところで、特許文献1には、サイドシルのダッシュパネルよりも前方へ突出したサイドシル前端部に、複数のビードまたは切欠きから成る衝撃吸収部をもうけた構造が開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示された構造は、既存のサイドシルの前端部を前方へ延長し、この前端部を衝撃吸収構造とするもので、あくまでも、普通サイズの車両には採用できるが、サイドシルを前方へ延出させることができず、かつ、サイドシルの延長前部に衝撃吸収構造を取付けるだけのスペースが確保できないような上述例の小型車両には採用することが不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−212280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、前輪の後方で、かつヒンジピラーよりも後方位置に、前輪後退時の衝撃吸収構造を設けることで、小型車両において衝突による前輪後退時のスペース(前輪の後退量)、前突時のクラッシュ量を確保することができる小型車両の衝突対応構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による小型車両の衝突対応構造は、前輪の後方で、かつヒンジピラーよりも後方位置に、車両衝突時における前輪後退時の衝撃吸収構造が設けられたものである。
【0008】
上記構成によれば、衝撃吸収構造を前輪後方かつヒンジピラー後方位置に設けるので、サイドシルを前方へ延出させることができず、サイドシルの延長前部に衝撃吸収構造を取付けるだけのスペースが確保できない小型車両において、衝突による前輪後退時のスペース(前輪の後退量)、前突時のクラッシュ量を確保することができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、サイドシルの前端が上記ヒンジピラーよりも後方に位置しており、上記サイドシルの前端とヒンジピラー下端との間に上記衝撃吸収構造が設けられたものである。
【0010】
上記構成によれば、サイドシル前端とヒンジピラー下端との間に設けた衝撃吸収構造により、前輪後退時の衝撃荷重を効果的に吸収することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、フロア下面を車両前後方向に延びるフロアフレームを設け、トルクボックスの前端が上記フロアフレームに連結され、トルクボックスの後端がその前端に対して後方かつ車幅方向外方に延びて上記ヒンジピラーよりも後方に位置するサイドシルに連結されたものである。
【0012】
上記構成によれば、上記トルクボックスで車体剛性の向上を図りつつ、該トルクボックスが平面視で斜め後方に延びているので、このトルクボックスが前輪の後退を妨げることなく、該トルクボックスで前輪の後退移動を案内することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、サイドシルレス構造に成すと共に、前輪の後端から後輪の前端までを衝撃吸収構造と成したものである。
【0014】
上記構成によれば、サイドシルを廃止したサイドシルレス構造とし、サイドシルが存在していたスペースを利用して、前輪の後端から後輪の前端までを衝撃吸収構造と成したので、衝撃吸収領域を前輪後端から後輪前端までの広い範囲に拡大することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、フロア下面の左右一対のフロアフレームを、平面視で前端相互間が狭く、後端相互間が広くなるハの字状に配設し、上記左右一対のフロアフレーム後端を、後輪前方において車幅方向に延びるリヤクロスメンバに連結したものである。
【0016】
上記構成によれば、前突時の衝撃荷重をフロアフレームで受けつつ、上記衝撃吸収構造により前輪の後退スペースを確保することができると共に、車体剛性を確保することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記衝撃吸収構造は、サイドシル前端とヒンジピラー下端との間に位置する閉断面構造部材と、該閉断面構造部材から車幅方向の内向きに突出するリブとを備えたものである。
【0018】
上記構成によれば、閉断面構造部材で非衝突時(ノーマル時)の剛性を確保しつつ、上述のリブにより車両側突時の剛性向上を図ることができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記ヒンジピラーの下部が側面視で斜め後方へ延出され、前輪の後退スペースを確保するように形成されたものである。
【0020】
上記構成によれば、ヒンジピラー下部の斜め後方へ延出された部位で、前輪の後退をガイドすることができ、乗降用の開口スペースを確保しつつ、併せて、前輪の後退スペースを確保することができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上下方向に延びるヒンジピラー前端から後方へ離間した位置に、上記衝撃吸収構造の前端が位置するよう、上記衝撃吸収構造を設けたものである。
【0022】
上記構成によれば、ヒンジピラー後方に衝撃吸収構造を設けることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、前輪の後方で、かつヒンジピラーよりも後方位置に、前輪後退時の衝撃吸収構造を設けたので、小型車両において衝突による前輪後退時のスペース(前輪の後退量)、前突時のクラッシュ量を確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の衝突対応構造を備えた小型車両の側面図
【図2】小型車両の正面図
【図3】小型車両の背面図
【図4】図2のA‐A線矢視断面図
【図5】小型車両の衝突対応構造を示す平面図
【図6】図5の斜視図
【図7】衝撃吸収構造を示す拡大斜視図
【図8】要部の拡大側面図
【図9】前突時の状態を平面から見て示す説明図
【図10】衝撃吸収構造の他の実施例を示す拡大斜視図
【図11】小型車両の衝突対応構造の他の実施例を示す平面図
【図12】前突時の状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
小型車両において衝突による前輪後退時のスペース(前輪の後退量)、前突時のクラッシュ量を確保するという目的を、前輪の後方で、かつヒンジピラーよりも後方位置に、車両衝突時における前輪後退時の衝撃吸収構造を設けるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0026】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は、小型車両の衝突対応構造を示し、図1は衝突対応構造を備えた小型車両の側面図、図2はその正面図、図3は背面図、図4は図2のA‐A線矢視に沿う拡大側面図、図5はフロアパネルを省略して示す平面図、図6は図5の要部斜視図である。
【0027】
図1〜6、特に、図4において、前室1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル3(ダッシュパネル)を設け、このダッシュロアパネル3の下端には前高後低状に傾斜するスラント部4を介して、後方に向けて水平に延びるフロアパネル5を連接している。
上述のフロアパネル5の後部には、上方に立上がるキックアップ部6を介してリヤフロア7(フロアパネルの一部)を連接し、このリヤフロア7を後方に向けて水平に延出している。
【0028】
図4〜6に示すように、上述のスラント部4の下面に沿設した左右一対のフロントサイドフレーム8,8を設け、該フロントサイドフレーム8,8をダッシュロアパネル3の下端位置から車両前方に向けて突出させている。
これら一対のフロントサイドフレーム8,8は前室1の左右両サイドに位置する車体剛性部材であって、該フロントサイドフレーム8,8の後端には、該フロントサイドフレーム8,8に連続して後方に延びるフロアフレーム9,9を設けている。
【0029】
上述のフロアフレーム9,9はフロアパネル5の下面において車両の前後方向に延びる車体剛性部材である。
左右一対のフロアフレーム9,9の車外側には、該フロアフレーム9,9と平行に左右のサイドシル10,10を離間して設けている。サイドシル10は車両の前後方向に延びる車体剛性部材である。
【0030】
ここで、左右一対のフロントサイドフレーム8,8の前端部相互間には、車幅方向に延びるフロントクロスメンバ(いわゆるNo.1クロスメンバ)11を設け、左右一対のフロアフレーム9,9の前端部相互間には車幅方向に延びる中間クロスメンバ(いわゆるNo.2クロスメンバ)12を設けている。
また、上述の中間クロスメンバ12の後方において、各フロアフレーム9,9の上部には、左右一対のサイドシル10,10車幅方向に連結する別の中間クロスメンバ(いわゆるNo.3クロスメンバ)13を設けている。
さらに、フロアフレーム9の後端位置において、キックアップ部6の車外側には、左右一対のサイドシル10,10を車幅方向に連結するリヤクロスメンバ(いわゆるNo.4クロスメンバ)14を設けている。
さらにまた、平面から見てフロアフレーム9とサイドシル10の車幅方向中間位置において、リヤクロスメンバ14から後方に向けて延びる左右一対のリヤサイドフレーム15,15を設けている。
このリヤサイドフレーム15はリヤフロア7の下面において車両の前後方向に延びる車体剛性部材である。
上述の各要素8〜15は、車体剛性を確保する目的で、それぞれ閉断面構造に形成されている。
【0031】
図1に示すサイドドア16の前側ヒンジ部と対応するように、車幅方向においてサイドシル10,10と相当する部位には、上下方向に延びるヒンジピラー17,17を設けている。
これらの各ヒンジピラー17,17は、図4に示すように、側面視でその下部が斜め後方かつ下方に延びるスラント部17aに形成されており、該スラント部17aの後端部17bはサイドシル10の前端部に連結されている(図8参照)。
【0032】
図5、図6に示すように、フロアフレーム9とサイドシル10とを車幅方向に連結する左右一対のトルクボックス18,18を設けるが、トルクボックス18の前端はフロアフレーム9の前端部車外側に連結され、トルクボックス18の後端はその前端に対して後方かつ車幅方向外方に延びて上記ヒンジピラー17(特に、ヒンジピラー17の上下方向に延びる部分)よりも後方に位置するサイドシル10の前端部車内側に連結されている。
つまり、上述の各トルクボックス18は、図5、図6に示すように、平面視で斜め後方かつ外方に延びるようにスラント配置されている。
【0033】
図4、図5、図6に示すように、サイドシル10の前方で、かつフロントサイドフレーム8の車幅方向外方には、左右一対の前輪19,19を設けると共に、サイドシル10の後方で、かつリヤサイドフレーム15の車幅方向外方には、左右一対の後輪20,20を設けている。前輪19および後輪20は、図1に示すように、ホイールリム19a,20aと、タイヤ19b,20bとを備えている。
しかも、図4〜図6に示すように、上述の前輪19の後方で、かつヒンジピラー17よりも後方位置に、車両衝突時における前輪後退時の衝撃吸収構造30を設けるが、この実施例1では、サイドシル10の前端がヒンジピラー17よりも後方に位置しており、上述の衝撃吸収構造30は、サイドシル10の前端とヒンジピラー17の下端との間に設けられている。
【0034】
上述の衝撃吸収構造30は、図7に斜視図で、また、図8に側面図で示すように、サイドシル10前端とヒンジピラー17のスラント部17a下端部との間に位置する閉断面構造部材31と、該閉断面構造部材31から車幅方向の内向きに突出し、かつ互いに車両前後方向に離間配置された複数のリブ32…とを備えている。
【0035】
上述の閉断面構造部材31で非衝突時(ノーマル時)の剛性確保を図るように構成している。また、上述のリブ32は車幅方向に延びており、各リブ32の車幅方向の内端は、図5、図6に示すように、トルクボックス18に当接していて、これら複数のリブ32により車幅側突時の剛性向上を図る一方で、前突時においてはクラッシュしやすい構造(クラッシュブル構造)となっている。
【0036】
この実施例1では、上述の閉断面構造部材31と複数のリブ32とを、合成樹脂により一体形成したが、樹脂製のものに限定されるものではなく、板金製の衝撃吸収構造30を採用してもよい。
【0037】
なお、図中33はステアリングホイール、34は乗員着座用のシート、35はフロントウィンドガラス、36はバックウィンドガラスである。また、図中矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
【0038】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
車両の前突時には、図8、図9に示すように、フロントサイドフレーム8,8およびフロントクロスメンバ11が変形すると共に、前輪19が後方へ移動する。
前輪19はその衝撃によりタイヤ19bがパンクし、ホイールリム19aが後退することになるが、このホイールリム19aの後退により衝撃吸収構造30がクラッシュし、ホイールリム19aはヒンジピラー17下部のスラント部17aの下面で後方かつ下方へ案内された後に、サイドシル10の前端へ当接する。
【0039】
つまり、サイドシル10の前端をヒンジピラー17よりも後方に位置させたので、図1に示す非衝突時(ノーマル時)のホイールリム19aの位置と、図8に仮想線で、また図9に実線で示す前突時のホイールリム19aの位置との間に相当して、前突時の衝撃吸収用のクラッシュストロークを確保することができるものであり、前輪後退時の充分なスペースを確保することができる。
【0040】
このように、図1〜図9で示した実施例1の小型車両の衝突対応構造は、前輪19の後方で、かつヒンジピラー17よりも後方位置に、車両衝突時における前輪後退時の衝撃吸収構造30が設けられたものである(図5参照)。
【0041】
この構成によれば、衝撃吸収構造30を前輪19後方かつヒンジピラー17後方位置に設けるので、サイドシルを前方へ延出させることができず、サイドシルの延長前部に衝撃吸収構造を取付けるだけのスペースが確保できない小型車両において、衝突による前輪後退時のスペース(前輪の後退量)、前突時のクラッシュ量を確保することができる。
また、サイドシル10の前端が上記ヒンジピラー17よりも後方に位置しており、上記サイドシル10の前端とヒンジピラー17下端との間に上記衝撃吸収構造30が設けられたものである(図5参照)。
【0042】
この構成によれば、サイドシル10前端とヒンジピラー17下端との間に設けた衝撃吸収構造30により、前輪後退時の衝撃荷重を効果的に吸収することができる。
さらに、フロア下面(フロアパネル5の下面)を車両前後方向に延びるフロアフレーム9を設け、トルクボックス18の前端が上記フロアフレーム9に連結され、トルクボックス18の後端がその前端に対して後方かつ車幅方向外方に延びて上記ヒンジピラー17よりも後方に位置するサイドシル10に連結されたものである(図4〜図6参照)。
【0043】
この構成によれば、上記トルクボックス18で車体剛性の向上を図りつつ、該トルクボックス18が平面視で斜め後方に延びているので、このトルクボックス18が前輪19の後退を妨げることなく、該トルクボックス18で前輪19の後退移動を案内することができる。
さらにまた、上記衝撃吸収構造30は、サイドシル10前端とヒンジピラー17下端との間に位置する閉断面構造部材31と、該閉断面構造部材31から車幅方向の内向きに突出するリブ32とを備えたものである(図5〜図7参照)。
【0044】
この構成によれば、閉断面構造部材31で非衝突時(ノーマル時)の剛性を確保しつつ、上述の複数リブ32により車両側突時の剛性向上を図ることができる。
加えて、上記ヒンジピラー17の下部が側面視で斜め後方へ延出され(スラント部17a参照)、前輪19の後退スペースを確保すると共に、後退する前輪19をサイドシル10へ当接させることが可能な構造に構成している。
【0045】
この構成によれば、ヒンジピラー17下部の斜め後方へ延出された部位(スラント部17a参照)で、前輪19の後退をガイドすることができ、乗降用の開口スペース(いわゆる、ドア開口)を確保しつつ、併せて、前輪19の後退スペースを確保することができる。
また、上下方向に延びるヒンジピラー17前端から後方へ離間した位置に、上記衝撃吸収構造30の前端が位置するよう、上記衝撃吸収構造30を設けたものであるから、ヒンジピラー17後方に衝撃吸収構造30を設けることができ、さらに、ヒンジピラー17下端を衝撃吸収構造30後方のサイドシル10前端に連結することができ、車体剛性を確保することができる。
【0046】
図10は衝撃吸収構造30の他の実施例を示す斜視図である。
図10に示す実施例では、閉断面構造部材31から車幅方向の内向きに傾斜して突出する複数のリブ21,22,23,24を設け、前側に位置する2つのリブ21,22の内端部を略同一位置に配設すると共に、後側に位置する2つのリブ23,24の内端部も略同一位置に配設して、平面から見て2つの三角形状部を形成し、さらに、三角形状部の車幅方向内側に位置する頂点部相互間を連結部25で連結し、この連結部25をトルクボックス18に当接させたものである。
【0047】
つまり、図10に示す実施例では、衝撃吸収構造30は、サイドシル10前端とヒンジピラー17下端との間に位置する閉断面構造部材31と、該閉断面構造部材31から車幅方向の内向きに突出され、かつ平面視で少なくとも1つのトライアングルを形成するリブ21,22および/またはリブ23,24とを備えたものである。
【0048】
この構成においても、閉断面構造部材31で非衝突時(ノーマル時)の剛性を確保しつつ、上述のトライアングル構造により車両側突時の剛性向上を図ることができる。
【0049】
図10に示す衝撃吸収構造30においても、前突時のクラッシャブル性の確保と、側突時の耐力向上との両立を図ることができる。
【実施例2】
【0050】
図11は小型車両の衝突対応構造の他の実施例を示す平面図である。
この実施例2においても、前輪19の後方で、かつヒンジピラー17(前図参照)よりも後方位置に、車両衝突時における前輪後退時の衝撃吸収構造40を設けるが、この実施例2においては、サイドシルを廃止して、サイドシルレス構造に成すと共に、サイドシルが存在していたスペースを利用して、前輪19の後端から後輪20の前端までを衝撃吸収構造40と成したものである。
【0051】
詳しくは、フロアパネル下面の左右一対のフロアフレーム9,9を、平面視で前端相互間が狭く、後端相互間が広くなるハの字状に配設し、該左右一対のフロアフレーム9,9後端を、後輪20,20の前方において車幅方向に延びるリヤクロスメンバ14に連結し、このリヤクロスメンバ14の左右両端部を、フロアフレーム9,9の後端部に対して車幅方向外方に位置させ、上述のハの字状に配設したフロアフレーム9,9の車幅方向外側に、衝撃吸収構造40,40を配置したものである。
【0052】
この衝撃吸収構造40は、前輪19の後端近傍から後輪20の前端近傍までを車両前後方向に延びる縦部材41と、この縦部材41とフロアフレーム9との間を車幅方向に延びて連結し、かつ互いに前後方向に離間配置された複数の横部材42…とを備え、平面から見て略梯子形状に構成したものである。
【0053】
上述の各横部材42はフロアフレーム9の車幅方向外側部に連結され、上述の縦部材41は各横部材42を介してフロアフレーム9に連結されると共に、該縦部材41の後方部はリヤクロスメンバ14の端部にも連結されている。
【0054】
このように構成した実施例2の作用を、以下に説明する。
車両の前突時には、図12に示すように、フロントサイドフレーム8,8およびフロントクロスメンバ11が変形すると共に、前輪19が後方へ移動する。
前輪19の後退により衝撃吸収構造40は、衝撃を吸収しつつ変形するが、この衝撃吸収構造40は前後両輪19,20間の比較的長いスパンに渡って設けられているので、衝撃吸収領域を大幅に拡大し、充分な前輪19の後退スペースを確保することができる。
【0055】
このように、図11、図12で示した実施例2の小型車両の衝突対応構造は、前輪19の後方で、かつヒンジピラー17(前図参照)よりも後方位置に、車両衝突時における前輪後退時の衝撃吸収構造40が設けられたものである(図11、図12参照)。
【0056】
この構成によれば、衝撃吸収構造40を前輪19後方かつヒンジピラー後方位置に設けるので、サイドシルを前方へ延出させることができず、サイドシルの延長前部に衝撃吸収構造を取付けるだけのスペースが確保できない小型車両において、衝突による前輪後退時のスペース(前輪の後退量)、前突時のクラッシュス量を確保することができる。
しかも、サイドシルレス構造に成すと共に、前輪19の後端から後輪20の前端までを衝撃吸収構造40と成したものである(図11参照)。
【0057】
この構成によれば、サイドシルを廃止したサイドシルレス構造とし、サイドシルが存在していたスペースを利用して、前輪19の後端から後輪20の前端までを衝撃吸収構造40と成したので、衝撃吸収領域を前輪19後端から後輪20前端までの広い範囲に拡大することができる。
さらに、フロア下面(フロアパネル下面)の左右一対のフロアフレーム9,9を、平面視で前端相互間が狭く、後端相互間が広くなるハの字状に配設し、上記左右一対のフロアフレーム9,9後端を、後輪20前方において車幅方向に延びるリヤクロスメンバ14に連結したものである(図11参照)。
【0058】
この構成によれば、前突時の衝撃荷重をフロアフレーム9で受けつつ、上記衝撃吸収構造40により前輪19の後退スペースを確保することができると共に、車体剛性を確保することができる。
【0059】
図11、図12で示したこの実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図11、図12において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0060】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロア下面は、実施例のフロアパネル5下面に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は2人乗りスマートサイズの所謂コミュータEVのような小型車両の衝突対応構造について有用である。
【符号の説明】
【0062】
5…フロアパネル(フロア)
9…フロアフレーム
10…サイドシル
14…リヤクロスメンバ
17…ヒンジピラー
18…トルクボックス
19…前輪
20…後輪
30,40…衝突吸収構造
31…閉断面構造部材
32…リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪の後方で、かつヒンジピラーよりも後方位置に、車両衝突時における前輪後退時の衝撃吸収構造が設けられたことを特徴とする
小型車両の衝突対応構造。
【請求項2】
サイドシルの前端が上記ヒンジピラーよりも後方に位置しており、
上記サイドシルの前端とヒンジピラー下端との間に上記衝撃吸収構造が設けられた
請求項1記載の小型車両の衝突対応構造。
【請求項3】
フロア下面を車両前後方向に延びるフロアフレームを設け、
トルクボックスの前端が上記フロアフレームに連結され、トルクボックスの後端がその前端に対して後方かつ車幅方向外方に延びて上記ヒンジピラーよりも後方に位置するサイドシルに連結された
請求項2記載の小型車両の衝突対応構造。
【請求項4】
サイドシルレス構造に成すと共に、
前輪の後端から後輪の前端までを衝撃吸収構造と成した
請求項1記載の小型車両の衝突対応構造。
【請求項5】
フロア下面の左右一対のフロアフレームを、平面視で前端相互間が狭く、後端相互間が広くなるハの字状に配設し、
上記左右一対のフロアフレーム後端を、後輪前方において車幅方向に延びるリヤクロスメンバに連結した
請求項4記載の小型車両の衝突対応構造。
【請求項6】
上記衝撃吸収構造は、サイドシル前端とヒンジピラー下端との間に位置する閉断面構造部材と、
該閉断面構造部材から車幅方向の内向きに突出するリブとを備えた
請求項1〜3の何れか1に記載の小型車両の衝突対応構造。
【請求項7】
上記ヒンジピラーの下部が側面視で斜め後方へ延出され、前輪の後退スペースを確保するように形成された
請求項1〜6の何れか1に記載の小型車両の衝突対応構造。
【請求項8】
上下方向に延びるヒンジピラー前端から後方へ離間した位置に、上記衝撃吸収構造の前端が位置するよう、上記衝撃吸収構造を設けた
請求項1〜7の何れか1項に記載の小型車両の衝突対応構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−1235(P2013−1235A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134117(P2011−134117)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】