説明

小型電動車両

【課題】前輪の泥除け機能を確保できるとともに車体前下方の視界を確保することができる小型電動車両を提供すること。
【解決手段】左右の前輪12、12間に位置し車体11の前下部21に設けられて車体前下方を照らすためのフロアライト22と、左右の前輪12、12の後上部をそれぞれ覆うための左右のフロントフェンダ23、23と、を備え、この左右のフロントフェンダ23、23は透明又は半透明の材料によって構成されている。
【効果】車体前下部にフロアライトが設けられており、フロアライトが車体前下方に近いので、車体前下方を明るく照らすことができ、視認性が向上する。さらにフロントフェンダは透明又は半透明であるので、運転者はフロントフェンダを透過して車体前下方を目視することができる。結果、前輪の泥除け機能を確保できるとともに車体前下方の視界を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行が困難な高齢者や身体障害者等の、いわゆる歩行困難者の移動手段として利用が可能な電動車いす等の小型電動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型電動車両のなかには、歩行困難者でも乗車して容易に操作が可能なものが知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
この特許文献1に開示された小型電動車両は、前輪が一輪で、後輪が二輪の三輪タイプの車両である。ハンドルポストの上下方向の中間部に車両前方を照らすヘッドライトが設けられている。前輪の上方は、車体カバーによって覆われている。この車体カバーは、フロントフェンダとしても機能する。
【0004】
ヘッドライトによって車両前方を照らすので、暗い場所であっても、車両前方の視界を確保することができる。また、雨水等で汚れた場所を走行する場合であっても、前輪の上方の車体カバーがフロントフェンダとしての役割を果たすので、運転者に雨水等の汚れが跳ね上がるのを防ぐことができる。
【0005】
運転者は車体前下方の視界を確保することができれば、前輪の向き、歩道の段差及び路面状態を確認することができ、運転性が向上する。しかし、前輪の上方が車体カバーで覆われているので、車体前下方が見えにくくなり、前輪付近を目視するには、運転者が少し乗り出す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3−64832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前輪の泥除け機能を確保できるとともに車体前下方の視界を確保することができる小型電動車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体の前下部に設けられて車体前下方を照らすためのフロアライトと、左右の前輪の後上部をそれぞれ覆うための左右のフロントフェンダと、を備え、この左右のフロントフェンダは透明又は半透明の材料によって構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、車体は、前上部に左右のバックミラーを備え、この左右のバックミラーは、車体の前方を照らすための左右のヘッドライトを備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、走行用電動モータと、この走行用電動モータに電力を供給するためのバッテリと、このバッテリの残容量を表示するための残量表示部と、を更に備え、この残量表示部は、車体の側部に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、車体の前下部に設けられて車体前下方を照らすためのフロアライトを備え、左右の前輪の後上部をそれぞれ覆う左右のフロントフェンダは透明又は半透明の材料によって構成されている。車体前下部にフロアライトが設けられており、フロアライトが車体前下方に近いので、車体前下方を明るく照らすことができ、視認性が向上する。さらにフロントフェンダは透明又は半透明であるので、運転者はフロントフェンダを透過して車体前下方を目視することができる。結果、前輪の泥除け機能を確保できるとともに車体前下方の視界を確保することができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、車体は、前上部に左右のバックミラーを備え、この左右のバックミラーは、車体の前方を照らすための左右のヘッドライトを備えている。車体の上部の左右のバックミラーにヘッドライトを備えたので、左右のヘッドライトは車体上部で車幅方向に広がるように配置することができ、前方から車体を大きく見せることができ、前方からの車体認識性を向上させることができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、走行用電動モータに電力を供給するためのバッテリと、このバッテリの残容量を表示するための残量表示部と、を更に備え、この残量表示部は、車体の側部に配置されている。車体の側部にバッテリの残量表示部を備えたので、側方からもバッテリの残容量を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る小型電動車両の左前方斜視図である。
【図2】図1に示される小型電動車両の左後方斜視図である。
【図3】図1に示される小型電動車両の前部斜視図である。
【図4】図1に示される小型電動車両の要部斜視図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図4に示される小型電動車両の前部操作部の斜視図である。
【図7】図6に示される移動端末の平面図の側面図である。
【図8】図1に示される小型電動車両のブロック図である。
【図9】図1に示される小型電動車両の作用図である。
【図10】図1に示される小型電動車両の側面図である。
【図11】図10に示される小型電動車両の後部操舵ハンドル折り畳み機構の作用図である。
【図12】図11(a)の12−12線断面図である。
【図13】図10に示される小型電動車両の車体前部折り畳み機構の作用図である。
【図14】図13(a)の14−14線断面図である。
【図15】図10に示される小型電動車両の車体前部の折り畳み機構の分解斜視図である。
【図16】図10に示される小型電動車両のシート移動機構の斜視図である。
【図17】図16の17−17線断面図である。
【図18】図10に示される小型電動車両の折り畳み状態の側面図である。
【図19】図18に示される小型電動車両の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0016】
先ず、本発明に係る小型電動車両を図1〜図8に基づいて説明する。図1〜図2は、本発明に係る小型電動車両の全体構成を説明する図である。
【0017】
図1〜図2に示される小型電動車両10は、車体11と、左右の前輪12、12と、左右の後輪13、13と、走行用電動モータ14と、からなる。車体11は、車体11の中央に位置する車体本体部20と、この車体本体部20の前部に折り畳み可能に設けられた車体前部40と、車体本体部20の後部に折り畳み可能に設けられた後部操舵ハンドル60とからなる。
【0018】
車体本体部20は、前下部21に設けられているフロアライト22と、前下部21の側方に設けられている左右のフロントフェンダ23、23と、前下部21の後方に設けられているフロアステップ24と、このフロアステップ24の下方に設けられているバッテリ25と、フロアステップ24の後端部に設けられている傾斜部26と、この傾斜部26の後端部に設けられている荷台27とを有する。
【0019】
フロアライト22は車体前下方を照らすものであり、左右のフロントフェンダ23、23は左右の前輪12、12の後上部をそれぞれ覆うものであり、フロアステップ24は運転者15が足を載せるものである。また、バッテリ25は走行用電動モータ14等に給電するものであり、傾斜部26はフロアステップ24の後端部から後上がり傾斜するものであり、荷台27はフロアステップ24よりも高い位置に形成されるものである。
【0020】
さらに、車体本体部20は、ステップフロア24の側部下方から傾斜部26の側部にかけて配意されている左右の残量表示部28と、荷台27の後部左右に配置されている方向指示器31と、荷台27の下方に配置されている制御部32とを備える。
【0021】
残量表示部28はバッテリ25の残容量を表示するものであり、方向指示器31は方向を指示するものであり、制御部32は後部操舵ハンドル60等からの入力情報を制御するものである。
【0022】
車体前部40は、前下部21から立ち上がっており、前上部41が車両後方に反り返っている。前上部41の上面42は、運転者15が視認できるように運転者15に対向している。
【0023】
車体前部40は、前上部41に設けられている左右のバックミラー43、43と、前上部41のバックミラー43、43の後方に設けられている前部操作部50と、前上部41に設けられている太陽電池44と、前上部41の下方に設けられている収納カゴ45とを備えている。なお、収納カゴ45は、車体前部40に一体化されたフレーム45aに柔軟な材料で形成された網45bを設けたものである。
【0024】
左右のバックミラー43、43は運転者15が後方を確認するためのものであり、前部操作部50は走行方向及び前後進を切り替え操作するためのものであり、太陽電池44は電力を発生してスマートフォン等の移動端末80(詳細後述)に供給するためのものであり、収納カゴ45は荷物を収納するものである。なお、収納カゴ45は、車体前部40に一体化されたフレーム45aに柔軟な材料で形成された網45bを設けたものである。
【0025】
左右のバックミラー43、43は、左右のミラーハウジング46、46と、左右のミラーハウジング46、46内方に設けられている左右のミラー本体47、47と、左右のミラーハウジング46、46の前側に設けられている左右のヘッドライト48、48と、上前部41車両前後方向に移動可能に設けられている左右のミラーステー49、49とからなる。
【0026】
左右のミラー本体47、47は後方の状況を写し出すものであり、左右のヘッドライト48、48は車体11の前方を照らすためのものであり、左右のミラーステー49、49は左右のミラーハウジング46、46を支持するものである。
【0027】
左右のバックミラー46、46にヘッドライト48、48を一体的に設けたので、ヘッドライト48、48用のステーを設けることなく、車体11の上部にて車幅方向に広げて配置することができる。結果、前方からの視認性を向上させることができるとともに、部品コストを抑えることができる。
【0028】
左右のバックミラー43、43は、矢印aのように車両後方に折り畳むことができる。左右のバックミラー43、43を折り畳むことで、車幅方向の幅を小さくすることができる。
【0029】
前部操作部50は、前上部41に設けられている左右の前部操舵ハンドル51、51と、左右の前部操舵ハンドル51、51の端部に設けられている方向指示器52、52と、左右の前部操舵ハンドル51、51の近傍に設けられている左右の走行レバー53、53と、上面42に設けられている操作信号切り替え部54とからなる。
【0030】
左右の前部操舵ハンドル51、51は前輪12を操舵するものであり、左右の方向指示器52、52は方向を指示するものであり、左右の走行レバー53、53は走行のONとOFFを切り替えるものであり、操作信号切り替え部54は前部操作部50の操作信号を切り替える等の操作ボタンの役割を有するものである。
【0031】
左右の前部操舵ハンドル51、51は、基端部を軸にして下方に折り畳むができ、走行時は左右の前部操舵ハンドル51、51を横方向に広げた状態でロックされている。ロックを外すことで、左右の前部操舵ハンドル51、51を、矢印bのように下方に折り畳むことができる。
【0032】
後部操舵ハンドル60は、車体本体部11の傾斜部26から前上がりに延ばされた支持フレーム33、33に設けられている。後部操舵ハンドル60は、支持フレーム33、33の上端部に設けられて車両側面視三角形状を呈するシートレール支持部材34、34と、シートレール支持部材34、34に支持されて後上がりに傾斜する左右のシートレール61、61と、これらの左右のシートレール61、61の上部に設けられて小型電動車両10の後方に立った介助者等が握る握り部62と、左右のシートレール61、61に掛け渡されて運転者15が着座するシート63とからなる。
【0033】
シート63は、左右のシートレール61、61の下部に着脱自在に掛け渡されている下部クロスパイプ64と、左右のシートレール61、61の上部に掛け渡されている上部クロスパイプ65と、この上部クロスパイプ65と下部クロスパイプ64との間に渡されて運転者15が着座する布部66とからなる。布部66は、シートクッション67と、シートバック68とからなる。
【0034】
次にフロントフェンダについて説明する。
図3に示すように、フロントフェンダ23、23は、透明又は半透明の材料により構成されている。そのため、フロントフェンダ23、23を透かして前輪12、12の位置を確認することができる。前部操舵ハンドル51、51を矢印cのように動かすと、前輪12、12は矢印dのように移動する。図1に示す運転者15は、フロントフェンダ23、23を透かして図1の目線の矢印のように、前輪12、12や前輪12、12付近の段差等を目視できるので、運転性の向上を図ることができる。
【0035】
次に後部操作部について説明する。
図4に示すように、後部操舵ハンドル60の握り部62に、走行方向及び前後進を切り替え操作するための後部操作部70が設けられている。後部操作部70は、握り部62の車幅方向中央に配置されている前進ボタン71と、前進ボタン71の下方に配置されている後進ボタン72と、前進ボタン71の左方に配置されている左折ボタン73と、前進ボタン71の右方に配置されている右折ボタン74とからなる。
【0036】
前進ボタン71は押すことで小型電動車両10を前進させるものであり、後進ボタン72は押すことで小型電動車両10を後進させるものであり、左折ボタン73は押すことで前輪12を左に向けるものであり、右折ボタン74は押すことで前輪12を右に向けるものである。
【0037】
前進ボタン71は、横長で且つ下側が開いた略コの字の形状を呈している。前進ボタン71は横長であるため、右手16でも左(不図示)ででも前進ボタン71を容易に押すことができる。例えば右手16で前進ボタン71の右側部分を押し、左手で左折ボタンを押すことが容易に行える。また、後進ボタン72は、前進ボタン71よりも車幅方向に小さく面積が小さい。
【0038】
前進ボタン71を押すと小型電動車両10は前進し、前進ボタン71を離すと小型電動車両10にブレーキが掛かる。後進進ボタン72を押すと小型電動車両10は後進し、後進ボタン72を離すと小型電動車両10にブレーキが掛かる。
左ボタン73を押すと、前部操作部50の左右の前部操舵ハンドル51が左に切られる。右ボタン74を押すと、前部操作部50の左右の前部操舵ハンドル51が右に切られる。左ボタン73及び右ボタン74を押すことで、前部操舵ハンドル51、51を矢印eのように連動して動かされる。すなわち、後部操作部70を操作することで、前部操作部50を遠隔操作することができる。介助者又はシートから降りた運転者15が、小型電動車両10の後方に立って後部操作部70を操作する場合でも、前部操舵ハンドル51、51の転舵量を目視することができ、運転性の向上を図ることができる。
【0039】
次に握り部とシートの位置関係について説明する。
図5に示すように、握り部62は、後部操舵ハンドル60の後端に設けられている。上部クロスパイプ65は、握り部62より車両前方側で後部操舵ハンドル60に設けられている。握り部62と上部クロスパイプ65との隙間75の距離は、Lである。距離Lは、右手16を容易に入れることができる距離である。
【0040】
次に操作信号切り換え部について説明する。
図6に示すように、車体前部40の前上部41には、凹部81が設けられている。凹部81の上端には、透明又は半透明のシート82が設けられている。凹部81に、想像線で示す携帯可能な移動端末80(高機能携帯端末、スマートフォン等を含む。)を出し入れすることができる。凹部81に嵌め込まれた移動端末80は、シート82の表面からも操作することができる。移動端末80は、小型電動車両10のパーキングキーの役割も兼ねている。移動端末80を凹部81に入れることで、小型電動車両10のパーキング状態(駐車状態)が解除する。
【0041】
次に携帯可能な移動端末の操作パネルについて説明する。
図7に示すように、携帯可能な移動端末80は、スマートフォンである。スマートフォン80の操作パネル83は、例えば、上部に受信感度表示部84及び時刻表示部85を有し、中央部にバッテリ25(図1参照。)のバッテリ残量表示部86を有し、下部にメインスイッチ87、前後操作部切り替えスイッチ88、前進後進切り替えスイッチ91、速度設定操作部92及び方向指示スイッチ93、93を有する。
【0042】
次に小型電動車両のブロック図について説明する。
図8に示すように、操作パネル83のメインスイッチ87、前後操作部切り替えスイッチ88、前進後進切り替えスイッチ91、速度設定操作部92及び方向指示スイッチ93の操作信号は制御部に送られる。
【0043】
前後操作部切り替えスイッチ88で後部操作部70を選択する。後部操作部70の前進ボタン71の操作信号、後進ボタン72の操作信号、左折ボタン73の操作信号及び右折ボタン74の操作信号は、制御部32に送られる。
【0044】
左折ボタン73の操作信号及び右折ボタン74の操作信号は、ハンドル用モータ101、ハンドル用クラッチ102及びステアリング用モータ103に送られる。ハンドル用モータ101が駆動し、ハンドル用クラッチ102がONになることで、左右の前部操舵ハンドル51、51はハンドル軸104を中心にして転舵する。ステアリング用モータ104が駆動し、前輪12、12は左折ボタン73の操作信号又は右折ボタン74の操作信号に応じて方向を変えられる。制御部32に送られた左折ボタン73の操作信号及び右折ボタン74の操作信号は、方向指示器52に送られ、方向指示器52は左折ボタン73の操作信号又は右折ボタン74の操作信号に応じて点滅する。
【0045】
前進ボタン71の操作信号及び後進ボタン72の操作信号は、走行用電動モータ14に送られる。走行用電動駆動モータ14が駆動し、小型電動車両10は前進又は後進する。また、バッテリ25から走行用電動駆動モータ14に給電される。バッテリ25の残容量は、残量表示部28に表示される。
【0046】
前後操作部切り替えスイッチ88で前部操作部50を選択する。左右の走行レバー53、53を引く(握る)と走行スイッチ105、105がONになり、左右の走行レバー53、53を戻す(離す)と走行スイッチ105、105がOFFになる。左右の走行スイッチ105、105の操作信号は、制御部32に送られる。制御部32に送られた左右の操作スイッチ105、105の操作信号は、走行用電動モータ14に送られる。走行用電動駆動モータ14が駆動し、小型電動車両10は前進又は後進する。なお、小型電動車両10の前後進の切り替えは、前進後進切り替えスイッチ91により選択される。
【0047】
前後操作部切り替えスイッチ88で前部操作部50を選択すると、ハンドル用くラッチ102がOFFになる。前輪12、12の方向は、運転者15(図1参照)が左右の前部操舵ハンドル51、51を操作することで変えられる。
【0048】
次に以上に述べた小型電動車両の作用について説明する。
図9(a)は電動車いすとして使用する場合の説明図であり、非介助者17はシート63に着座している。小型電動車両10の後方に立っている介助者18(後部運転者18)は、後部操舵ハンドル60を握り、後部操作部70により小型電動車両10を運転する。このように、小型電動車両10を電動車いすとして使用することができる。
【0049】
図9(b)は電動押し車として使用する場合の説明図であり、運転者15(図1参照)は小型電動車両10をおりて、後部運転者18として車両後方に立つ。後部運転者18は、後部操舵ハンドル60を握り、後部操作部70により小型電動車両10を運転する。このように、小型電動車両10を電動押し車として使用することができる。
【0050】
図9(c)は電動カートとして使用する場合の説明図であり、(b)と同様にして、後部運転者18は、後部操舵ハンドル60を握り、後部操作部70により小型電動車両10を運転する。例えば、スーパーマーケット等では、シート60に買い物かご111を載せることができる。後部運転者18は、小型電動車両10を操作しつつ、高い位置にある品物112を手に取ることができる。このように、小型電動車両10を電動カートとして使用することができる。
【0051】
次に車体前部及び後部操舵ハンドルの折り畳みについて説明する。
図10に示すように、車体前部40の下部に、車体前部折り畳み機構120が設けられている。車体前部40は、車体前部折り畳み機構120部分から、矢印fのように折り畳むことができる。
【0052】
後部操舵ハンドル60の下部に、後部操舵ハンドル折り畳み機構130が設けられている。後部操舵ハンドル60は、後部操舵ハンドル折り畳み機構130部分から、矢印gのように折り畳むことができる。
【0053】
次に後部操舵ハンドル折り畳み機構130について説明する。
図11(a)は車両側面視における要部拡大図であり、支持フレーム33の上部に図奥から手前に延びて断面が正四角形を呈する四角柱ピン131が溶接されている。シートレール支持部材34には、四角柱ピン131をガイドする略L字状のL字状貫通穴132が設けられる。L字状貫通穴132は、縦長穴部133と、この縦長穴部133に直角に交わる横長穴部134と、この横長穴部134と縦長穴部133との交差部に設けられる丸穴部135とからなる。縦長穴部134の幅及び横長穴部134の幅は、四角柱ピン131の断面の一辺の長さをほぼ同じである。四角柱ピン131はL字状貫通穴132をスライドするこができる。
【0054】
次に後部操舵ハンドル折り畳み機構を断面図に基づいて説明する。
図12に示すように、四角柱ピン131は、支持フレーム33を貫通するようにして支持フレーム33に溶接される。四角柱ピン131の図下側は、シートレール支持部材34の厚みより若干小さく支持フレーム33から突出している。四角柱ピン131の端部からは雄ねじ部136が突出しており、この雄ねじ部136に対応する雌ねじ部137を有するノブ138を締め付けることで、シートレール支持部材34は支持フレーム33に固定される。また、ノブ138を緩めることで、支持フレーム33に対してシートレール支持部材34をスライドさせることができる。
【0055】
図11(a)に戻って、ノブ138を緩め、シートレール支持部材34を矢印hのように移動させる。次に(b)に示すように、四角柱ピン131が丸穴部135に達したところで、シートレール支持部材34を矢印iのように移動させる。次に(c)に示すように、シートレール支持部材34を矢印jのように移動させる。次に(d)に示すように、四角柱ピン131が、横長穴部134の端部に突き当たった位置でノブ138を締め付ける。このようにして、図10に示す後部操舵ハンドル60を折り畳むことができる。
【0056】
次に車体前部折り畳み機構について説明する。
図13(a)に示すように、車両側面視における要部拡大図であり、前下部21の上部の膨出部121に図奥から手前に延びて断面が正四角形を呈する四角柱ピン122が設けられている。車体前部40には四角柱ピン122をガイドするガイド穴123が設けられる。ガイド穴123の図下端部に丸穴部124が連続して設けられている。ガイド穴123の幅は、四角柱ピン122の断面の一辺の長さをほぼ同じである。四角柱ピン122はガイド穴123をスライドするこができる。
【0057】
次に車体前部折り畳み機構を断面図に基づいて説明する。
図14に示すように、四角柱ピン122は、車体前部40に一体化したフレーム45aを貫通するようにして膨出部121に溶接される。四角柱ピン122の長さは、フレーム45aの厚みより若干短く設定されている。四角柱ピン122の図下端部からは雄ねじ部125が突出しており、この雄ねじ部125に対応する雌ねじ部126を有するノブ127を締め付けることで、車体前部40は車体本体部20の膨出部121に固定される。また、ノブ127を緩めることで、車体本体部20に対して車体前部40をスライドさせることができる。
【0058】
図13(a)に戻って、ノブ127を緩め、車体前部40を矢印kのように移動させる。次に(b)に示すように、四角柱ピン122が丸穴部124に達したところで、車体前部40を矢印mのように倒す。次に(c)に示すように、車体前部40を矢印nのように移動させる。四角柱ピン122が、ガイド穴123の端部に突き当たった位置でノブ127を締め付ける。このようにして、図10に示す車体前部40を折り畳むことができる。なお、図2に示す左右のバックミラー43、43及び左右の前部操舵ハンドル51を折り畳むので、車体前部40の車幅方向の幅が小さくなる。これにより、車体前部40をシートレール61、61の間に通すことができる。
【0059】
次に車体前部折り畳み機構を分解斜視図に基づいて説明する。
図15に示すように、車体本体部20の膨出部121に、車幅方向に突出するようにして四角柱ピン122が設けられる。四角柱ピン122の先端部からさらに雄ねじ部125が突出している。この雄ねじ部125及び四角柱ピン122を、ガイド穴123又は丸穴部124に通し、外方からノブ127を締め付ける。
【0060】
次にシートについて説明する。
図16に示すように、シート63の下部クロスパイプ64に、下部クロスパイプ64を後部操舵ハンドル60に着脱するためのシート着脱機構140が設けられている。下部クロスパイプ64の一端には固定ピン141が設けられ、下部クロスパイプ64の他端には移動ピン142が設けられている。
【0061】
次にシート着脱機構140について説明する。
図17に示すように、下部クロスパイプ64の一端に固定ピン141が設けられている。下部クロスパイプ64の内部に移動ピン142が移動自在に設けられている。下部クロスパイプ64の内部にスプリング143を固定する固定部144が設けられている。スプリング143により移動ピン142は外方に付勢される。下部クロスパイプ64の移動ピン142近傍に、長穴145が下部クロスパイプ64の軸に沿って設けられている。この長穴145につまみ146が通され、移動ピン142に取り付けられている。つまみ146を矢印pのように移動させることで、移動ピン142を下部クロスパイプ64の内部に移動させることができる。
【0062】
固定ピン141は第1固定穴147に挿入されており、移動ピン142は第2固定穴148に挿入されている。このようにして下部クロスパイプ64を後部操舵ハンドル60に取り付けることができる。そして、つまみ146を矢印pのように移動させることで、下部クロスパイプ64を後部操舵ハンドル60から外すことができる。
【0063】
次に車体前部及び後部操舵ハンドルが折り畳まれた状態について説明する。
図18に示すように、バックミラー43及び前部操舵ハンドル51は折り畳まれている。さらに車体前部40は車両後方に折り畳まれている。車体前部40の上に後部操舵ハンドル60が折り畳まれている。下部クロスパイプ64は、シート着脱機構140により一旦外されてから、上部クロスパイプ65の近傍に取り付けられている。
【0064】
後部操舵ハンドル60が起立状態から前方へ折り畳まれる範囲Rは、後部操舵ハンドル60が車両前方へ折り畳まれた状態で、車両前側から握り部62を持ち上げることができる範囲である。さらに、範囲Rは、握り部62を持ち上げた状態で、後部操作部70を操作することが可能な範囲である。
【0065】
次に車体前部及び後部操舵ハンドルが折り畳まれた状態での小型電動車両の作用を説明する。
図19に示すように、小型電動車両10を降りた運転者15は、握り部62を持ち上げた状態で、後部操作部70を操作する。このような状態で小型自動二輪車10を収納場所等に移動させることが可能である。
【0066】
本発明に係る小型電動車両の説明をまとめると、次の通りである。
図1に示すように、左右の前輪12、12間に位置し車体11の前下部21に設けられて車体前下方を照らすためのフロアライト22と、左右の前輪12、12の後上部をそれぞれ覆うための左右のフロントフェンダ23、23と、を備え、この左右のフロントフェンダ23、23は透明又は半透明の材料によって構成されている。この構成により、車体11の前下部21にフロアライト22が設けられており、フロアライト22が車体前下方に近いので、車体前下方を明るく照らすことができ、視認性が向上する。さらにフロントフェンダ23、23は透明又は半透明であるので、運転者15はフロントフェンダ23、23を透過して車体前下方を目視することができる。結果、前輪12、12の泥除け機能を確保できるとともに車体前下方の視界を確保することができる。
【0067】
図1に示すように、車体11は、前上部41に左右のバックミラー43、43を備え、この左右のバックミラー43、43は、車体11の前方を照らすための左右のヘッドライト48、48を備えている。この構成により、車体11の上部の左右のバックミラー43、43にヘッドライト48、48を備えたので、左右のヘッドライト48、48は車体11上部で車幅方向に広がるように配置することができ、前方から車体11を大きく見せることができ、前方からの車体認識性を向上させることができる。
【0068】
図1に示すように、走行用電動モータ14と、この走行用電動モータ14に電力を供給するためのバッテリ25と、このバッテリ25の残容量を表示するための残量表示部28と、を更に備え、この残量表示部28は、車体11の側部に配置されている。この構成により、車体11の側部にバッテリ25の残量表示部28を備えたので、側方からもバッテリ25の残容量を容易に確認することができる。
【0069】
尚、実施例では、小型電動車両を四輪車としたが、これに限定されず、透明又は半透明のフロントフェンダを備えた三輪車であっても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の小型電動車両は、歩道を走行することが可能であり、高齢者等の移動手段として利用が可能な電動車いす等に好適である。
【符号の説明】
【0071】
10…小型電動車両、11…車体、12…左右の前輪、14…走行用電動モータ、15…運転者、21…前下部、22…フロアライト、23…左右のフロントフェンダ、25…バッテリ、28…残量表示部、43…左右のバックミラー、48…左右のヘッドライト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前下部に設けられて車体前下方を照らすためのフロアライトと、左右の前輪の後上部をそれぞれ覆うための左右のフロントフェンダと、を備え、この左右のフロントフェンダは透明又は半透明の材料によって構成されていることを特徴とする小型電動車両。
【請求項2】
前記車体は、前上部に左右のバックミラーを備え、
この左右のバックミラーは、車体の前方を照らすための左右のヘッドライトを備えていることを特徴とする請求項1記載の小型電動車両。
【請求項3】
走行用電動モータと、この走行用電動モータに電力を供給するためのバッテリと、このバッテリの残容量を表示するための残量表示部と、を更に備え、
この残量表示部は、前記車体の側部に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の小型電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−106896(P2013−106896A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256264(P2011−256264)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】