説明

小型電子機器用クリップ機構

【課題】クリップ機構と小型電子機器との間の相対角度を任意の位置に設定して少々の外力に対しては設定された相対角度を維持することができるクリップ機構を提供すること。
【解決手段】被取付部材40に回動可能に取り付け可能な基台10と、基台10の回動可能に取り付けられたレバー30と、基台10とレバー30との間に位置してレバー30の回動により開閉される係止板20とからなり、係止板20の先端が基台10から突出して被取付部材40に弾性する先端部21aを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、函体に電子部品などを収容した小型電子機器を着衣に固定するためのクリップ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガスセンサー有する小型電子機器は、ガスをセンサーに取り込む関係上、着衣の表面に露出させることが必要となる。
このため、函体にクリップを固定してクリップにより着衣に固定する構造が採られているが、例えば表示用ディスプレイを有する小型電子機器にあっては、着衣への取り付け位置によっては天地を逆に取り付ける方が、表示が見やすいということもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところはクリップ機構と小型電子機器との間の相対角度を任意の位置に設定して少々の外力に対しては設定された相対角度を維持することができるクリップ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような課題を達成するために本発明においては、被取付部材に回動可能に取り付け可能な基台と、前記基台の回動可能に取り付けられたレバーと、前記基台とレバーとの間に位置して前記レバーの回動により開閉される係止板とからなり、前記係止板の一端には係止部が、他端には前記基台から突出して前記被取付部材に弾性する先端部が形成されていて、前記レバーを倒して前記係止部が前記基台に当接する状態では前記先端部が前記被取付部材に弾接するように構成されている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、電子機器との相対位置を予め設定した状態で着衣などに固定すると、係止板の先端が被取付部材の表面に弾接して強い摩擦力を発生するから、自由回転が阻止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、本発明のクリップ機構の一実施例を示すものであって、クリップ機構1は、被取付部材40に回動可能に取り付けられる基台10、係止板20、及びレバー30の3つの部材により構成されている。
【0007】
基台10は、図2(イ)乃至(ハ)に示したように板材により構成されていて、具体的にはその本体部11には被取付部材材への取り付け孔12が穿設され、両側にはほぼ直角に折り曲げて側壁部13、13が形成され、側壁部13、13の、取り付け孔12から離れた位置に後述するレバー30の軸部33を支承する貫通孔14、14が相対向する位置に穿設され、さらに係止板20の先端側、つまり係合部とは反対側の位置を若干折り曲げて係止板20の先端部に当接する当接部15と、係止板20の係合凸部21が挿通される長孔16を形成して構成されている。
【0008】
係止板20は、図3(イ)乃至(ハ)に示したように弾性材を略「く」の字状に整形して構成されていて、具体的には先端には両側が基台10の当接部15に当接するように基台10の長孔16に係合する後述の凸部21が、また若干後退した両側には側壁部13、13に弾接する凸部22、22が形成され、また後端には着衣などを確実に係止するように波型の係合部23が形成されている。
【0009】
凸部21は、基台10の長孔16から突出し、かつレバー30により係止板20が押圧された状態では、その先端21aが基台よりも被取付部材材側に移動して被取付部材材を構成する壁面40aの表面に弾接するように、その長さが調整されている。
【0010】
レバー30は、図4(イ)乃至(ハ)に示したように比較的剛性の高い板材をほぼ直角に折り曲げ、操作部31となる側の周面が折り曲げられて剛性が付与され、操作部31に対してほぼ垂直に折り曲げられた押し込み部32の側部に貫通孔14、14に回動可能に挿通される軸部33となる凸部が形成されている。
【0011】
押し込み部32は、その先端が軸部33、33から若干突出するように形成されていて、係止板20との摩擦を可及的に小さくしつつ係止板20を確実に押さえ込むことができるように構成されている。
【0012】
このように構成された各部材10、20、30は、まず基台10の先端の長孔16に係止板20の凸部21を挿通し、ついでその上にレバー30が重なるようにその軸部33、33を基台10の貫通孔14に挿通する。
【0013】
これにより、係止板20は、その凸部21が基台10の長孔16に、また凸部22、22が基台10の側壁部13、13とにより前後左右を規制され、また上部をレバー30により規制されて、先端側を支点とする回動のみ可能な状態となる。
【0014】
レバー30を図1(イ)に示したように開放すると、レバー30の押し込み部32が基台10に対して上昇するため、係止板20はその先端側を中心として後端側の係合部23が基台10から浮き上がって間隙が形成されるので、この間隙に着衣やベルトなどを挿通する。
【0015】
ついでレバー30の操作部31を図1(ロ)に示したように基台側に回動すると、レバー30の先端の押し込み部32が係止板20を基台10の側に押し込むように回動して略垂直となった状態、つまり押し込み部32の先端が貫通孔14、14を結ぶ線を含み、かつ基台10に垂直な面に含まれる位置で回動が停止する。これにより係止板20は、自身の弾性により係合部23を基台10に弾接させる。
【0016】
いうまでもなく、レバー30の押し込み部32は係止板20からの弾性力を受け、軸部22、22を貫通孔14の上方側に押さえつけているから、レバー30は所定の位置に固定される。
【0017】
この状態では、基台10から突出した係止板20の先端部21aは、被取付部材の表面に弾接して相互の間に強い摩擦力を発生させ、被取付部材に作用した外力によっても回動するのを可及的に阻止する。
【0018】
クリップ機構を着衣から取り外す場合には、レバー30の操作部31と係止板20との隙間に爪を挿入してレバー30を引き起こすことにより図1(イ)の状態となるから、簡単に取り外すことができる。
【0019】
図5は、本発明のクリップ機構1に適した被取付部材40である小型電子機器の一例を示すものであって、少なくともクリップ機構1を取り付ける面41に平面部を有する函体42であって、この例では対向する他方の面43にガスセンサー44とディスプレイ45とを設けて携帯用ガス検出器として構成されている。
【0020】
上述のクリップ機構1の取り付け孔12を好ましくは円形として鳩目46により取り付け孔12を中心に回動可能で、かつクリップ機構1が所定の角度に摩擦で停止する程度の挟持力で取り付け、着衣に取り付けたときにディスプレイ45の文字が見やすい角度となるようにクリップ機構1との相対角度を調整してレバー30により固着する。
【0021】
これにより、係止板20の係合部23が基台10との間に着衣をかみ込んで固定される。
この状態では、上述したように係止板20の先端部21aは、被取付部材の表面40aに弾接して相互の間に強い摩擦力を発生させ、被取付部材に作用した外力によっても回動するのを可及的に阻止して被取付部材40とクリップ機構1との相対角度を一定に維持する。
【0022】
なお、上述に実施例においては、クリップ機構1を被取付部材40に直接取り付けているが、図6に示したようにクリップ機構1と被取付部材40との間にラッチ機構50を介装してクリップ機構1を回動可能に取り付けることもできる。
【0023】
このようなラッチ機構50は、相対的に回転移動可能に積層され二枚の板材51、52と、一方の板材(下板)51の上面にボール保持孔を形成してここにボール53を保持させたり、半球状の突起を係止し、また他方の板材(上板)52を弾性変形可能な材料で構成するとともに、円周上に所定の間隔でボール53が嵌合可能な凹部を形成して構成したものが最適である。
【0024】
この実施例によれば、まずラッチ機構50によりクリップ機構1と被取付部材40との相対角度を位置決めし、この状態でクリップ機構1を着衣などに固定すると、ラッチ機構の上板52が係止板20の先端部21aにより押圧されて弾性変形するため、板材51、52の間に強い圧力が作用して、ボール53を乗り越えことが不可能となって、固定される。
【0025】
なお、上述の実施例においては、ラッチ機構を単独の部材として構成しているが、一方の板材(下板)51を、取付部材材となるケースの壁面40aを利用して構成しても同様の作用を奏する。
【0026】
また、各部材は、板金等により構成するのが望ましいが、比較的剛性が高い高分子材料の射出整形により構成しても同様の作用を奏することは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図(イ)、(ロ)は、それぞれ本発明のクリップ機構の一実施例を開放状態と係止状態とで示す断面図である。
【図2】図(イ)乃至(ハ)は、それぞれ同上クリップ機構を構成する基台の一実施例を示す上面図、側面図、及び正面図である。
【図3】図(イ)乃至(ハ)は、それぞれ同上クリップ機構を構成する係止板の一実施例を示す上面図、側面図、及び正面図である。
【図4】図(イ)乃至(ハ)は、それぞれ同上クリップ機構を構成するレバーの一実施例を示す上面図、側面図、及び正面図である。
【図5】同上クリップ機構を適用するのに適した小型電子機器の一例を示す図である。
【図6】同上クリップ機構の他の取り付け例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 クリップ機構
10 基台
11 本体部
12 取り付け孔
13 側壁部
14 貫通孔
15 当接部
16 長孔
20 係止板
21 凸部
22 凸部
23 波型の係合部
30 レバー
31 操作部
32 押し込み部
33 軸部
40 被取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に回動可能に取り付け可能な基台と、前記基台の回動可能に取り付けられたレバーと、前記基台とレバーとの間に位置して前記レバーの回動により開閉される係止板とからなり、
前記係止板の一端には係止部が、他端には前記基台から突出して前記被取付部材に弾性する先端部が形成されていて、前記レバーを倒して前記係止部が前記基台に当接する状態では前記先端部が前記被取付部材に弾接するように構成された小型電子機器用クリップ機構。
【請求項2】
前記基台にクリック機構が設けられていて前記クリック機構を介して前記被取付部材に回動可能に取り付けられ、前記レバーを倒して前記係止部が前記基台に当接する状態では前記先端部が前記クリック機構に弾接するように構成されている請求項1に記載の小型電子機器用クリップ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−245295(P2006−245295A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59059(P2005−59059)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】