説明

小型RNAを単離するための方法

小型RNAをサンプルから単離するための方法が提供され、上記方法は、上記サンプルをa)少なくとも1つのアルコール、b)トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩、およびc)シリカ粒子と接触させることによって、RNAをシリカ粒子に結合させる工程ならびに結合したRNAを残りのサンプルから分離する工程を含む。本発明はまた、小型RNA分子をサンプル、特に生物学的サンプル(例えば、血液、血液産物、組織および体液)から有効に単離するための組成物、およびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明をもたらした研究は、助成金契約番号222916の下、the European Community’s Seventh Framework Programme(FP7/2007−2013)からの資金提供を受けている。
【0002】
本発明は、小型RNA分子をサンプル、特に生物学的サンプル(例えば、組織および体液)から単離するための方法、組成物、およびキットに関連する。
【背景技術】
【0003】
小型RNA(すなわち、種々の組織および多くの生物由来、ならびに細胞の培養物由来のおよそ250ヌクレオチドまたはそれより少ないRNA分子)の研究は、大変興味深い領域であり、将来に1つ残る見込みがある。小型RNAとしては、とりわけマイクロRNA(miRNA)、および低分子干渉RNA分子が挙げられ、その両方は、遺伝子の発現に及ぼす強力な作用を有し得る。さらに、mRNAおよびrRNAプロセシングに関与する他の核内低分子RNAおよび核小体低分子RNA(例えば、snRNAおよびsnoRNA)も重要である。
【0004】
それぞれの小型RNA分子に対する興味の増加を伴って、標準的な単離手順は、小型RNAの単離を容易にするために改変されている。このことは、小型RNA分子が、単離プロセスの間に有効に捕捉および溶出されないことが多いので、DNAまたは総RNAを単離するための標準として使用される公知のプロトコルが、通常、小型RNA分子を単離するのに理想的ではないからである。従って、標準手順を用いてサンプルから単離される総RNAは、通常、十分な量の小型RNA分子を含まない。従って、小型RNA分子の、単独または総RNAの一部としての、効率的な単離のための改善された技術の必要性が存在する。
【0005】
小型RNA分子の単離のために最適化されている方法は、しばしば、フェノールおよびクロロホルム抽出ならびに段階的なアルコール分画に依存する。フェノールおよびクロロホルムの使用を含む方法の主要な欠点は、とりわけ、これらの化学物質が潜在的な健康リスクを引き起こすことである。さらに、それらはまた特定の生物学的物質と効果がない。さらに、相の分離およびアルコール分画は、困難で時間がかかり、高スループットおよび自動化の要求に適合しないようにする。
【0006】
さらに、総RNAの単離のためのカオトロピック剤、高濃度のアルコールおよびシリカ膜の使用を含む、小型RNAを単離するための改善された方法が開発されている。これらのプロトコルを用いて単離される総RNAはまた、一部分として小型RNAを含む。これらの方法は、従って、小型RNA分子を効率的に単離するのに有用である。これらの方法に基づく市販の製品は、例えば、QIAGENによって販売されるPAXgene Blood miRNAキットである。このキットは、サンプルからの小型RNAの効率的な単離を可能にする。しかし、たとえこの方法が、小型RNAを単離することにおいて非常に効率的であっても、単離がシリカ膜によって行われるという欠点を有する。シリカ膜を用いる単離手順は、しばしば時間がかかり、また、高スループット様式(例えば、ロボットシステムを用いる)での柔軟性がありかつ専用の自動化プロセスによって小型RNAを単離するのを難しくする。さらに、より大きいサンプル体積も処理できることが望ましい。特に、複雑な生物学的サンプル(例えば、全血、および血液産物)から小型RNAを効率的に単離することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、好ましくは、自動化システムによる処理をも可能にする、サンプル、特に生物学的サンプルからの小型RNA分子の効率的な単離のための改善された技術の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シリカ粒子を用いることによって、小型RNA分子をサンプルから迅速かつ効率的に単離するための方法を提供する。シリカ粒子、特に磁性シリカ粒子の使用は、サンプルからの小型RNA分子の、迅速で、柔軟性があり、かつまた自動化された高スループットでの単離を可能にする。本発明者らは、シリカ粒子を用いるときに複雑なサンプルであっても小型RNAの効率的な単離を可能にする特別な結合条件を同定した。
【0009】
従って、本発明の1つの局面に従って、小型RNAをサンプルから単離するための方法を提供し、ここで、上記方法は、
上記サンプルを
a)少なくとも1つのアルコール、
b)トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩、および
c)シリカ粒子
と接触させることによって、上記RNAをシリカ粒子に結合させる工程、ならびに
結合した上記RNAを上記サンプルの残りから分離する工程
を含む。
【0010】
この方法は、良好な収量で、サンプルからの小型RNAの効率的かつ迅速な単離を可能にすることが見出されている。上記小型RNAは、好ましくは、総RNAの一部として得られる。
【0011】
本発明のさらなる局面に従って、小型RNAをサンプルから単離するためのキットを提供し、このキットは、
a)少なくとも1つのアルコールと、
b)トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩と、
c)シリカ粒子
とを含む。
【0012】
本発明のさらなる局面は、小型RNAをシリカ粒子に結合させるための組成物を包含し、この組成物は、
a)少なくとも1つのアルコールと、
b)トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩と、
c)シリカ粒子
とを含む。
【0013】
本願の他の目的、特徴、利点および局面は、以下の記載および添付の特許請求の範囲から当業者に明らかとなる。しかし、以下の記載、添付の特許請求の範囲、および特定の実施例が、本願の好ましい実施形態を示す一方で、例示のみとして与えられることが理解されるべきである。開示される発明の趣旨および範囲内の種々の変化および改変は、以下を読むことによって当業者に容易に明らかとなる。
【0014】
発明の詳細な説明
シリカ粒子(例えば、磁性シリカ粒子)が、それらの結合の特徴においてシリカ膜とかなり異なることが見出されている。従って、シリカ膜について確立された結合条件は、特に複雑なサンプル(例えば、全血のサンプル)について、特にシリカ粒子と同等の量で、効率的に小型RNAを結合させるのに適していない。このことは、シリカ粒子を用いるときに、受容可能な収量での小型RNAの単離および精製を難しくする。
【0015】
従って、核酸結合キャリアとしてシリカ粒子(例えば、特に磁性シリカ粒子)を用いるときに小型RNAの効率的な単離を可能にする適切な結合条件を見出すことが必要であった。シリカ粒子および特に磁性シリカ粒子の使用は、例えば、自動化プロセスにおける粒子の処理に関して利点を有する。
【0016】
特定のカオトロピックアニオンを用いることによって、小型RNAをシリカ粒子に有効に結合させることが可能であることが、今や、驚くことに見出された。特定のカオトロピックアニオンを用いるとき、上記小型RNAの結合は、一般的に使用されるカオトロピック剤(例えば、グアニジニウムイソチオシアネートまたはグアニジニウムヒドロクロリド)を含む通常の結合条件と比較してかなり改善された。
【0017】
従って、本発明の第一の局面に従って、小型RNAをサンプルから単離するための方法を提供し、上記方法は、サンプルを
a)少なくとも1つのアルコール、
b)トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩、および
c)シリカ粒子
と接触させることによって、上記RNAをシリカ粒子に結合させる工程、ならびに
結合したRNAをサンプルの残りから分離する工程を含む。
【0018】
それぞれの結合条件が、磁石を介したシリカ粒子の処理を簡便にするために好ましくは磁性シリカ粒子であるシリカ粒子への小型RNAの効率的な結合を可能にし、それにより、手動の処理の他に、ロボットシステムを使用することによる容易な処理をも可能にすることが驚くことに見出された。
【0019】
1つの実施形態に従って、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択される上記カオトロピックアニオンは、飽和限度までの少なくとも0.05Mの濃度で、結合組成物中に存在する。1つの実施形態に従って、濃度は0.05M〜4Mの範囲にある。1つの実施形態に従って、濃度は0.05M〜3Mの範囲、および好ましくは0.05M〜2Mの範囲にある。非常に好ましい実施形態に従って、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択される上記カオトロピックアニオンの濃度は、0.1M〜1Mの範囲にある。最も好ましくは、上記カオトロピックアニオンの濃度は、1M未満であり、0.1M〜0.9Mの範囲、または0.1M〜0.8Mの範囲にある。従って、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含むカオトロピック塩は、好ましくは、特に上記塩が一価カチオンを含むときに本発明に従ってカオトロピックアニオンについて上に記載された濃度で、結合組成物中に存在する。カチオンとして、アルカリ金属イオン(例えば、好ましくは、ナトリウム)が使用され得る。従って、1つの実施形態に従って、カオトロピック塩は、過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムからなる群より選択される。実施例に示されるように、それぞれのカオトロピック塩は、核酸結合キャリアとしてシリカ粒子を用いるときに、小型RNAの単離に特によく適している。好ましくは、トリクロロ酢酸ナトリウムは、0.1M〜1M未満の濃度、好ましくは0.1M〜0.7Mの濃度で、結合組成物中に存在する。所望される場合、他のカオトロピック塩(例えば、一般的に使用されるグアニジニウム塩)も、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含むカオトロピック塩に加えて使用され得る。
【0020】
シリカ粒子を用いることによって小型RNAを単離することについて、結合の間、および従って結合組成物中で、40v/v%以上、好ましくは40v/v%以上〜80v/v%以下のアルコール濃度を使用することは、有益である。最も好ましいものは、結合の間、50v/v%以上〜65v/v%以下のアルコール濃度である。また、アルコールの混合物が使用され得る。
【0021】
アルコールとして、好ましくは1個〜5個の炭素原子を有する短鎖分岐の、または非分岐のアルコールが使用され得る。例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびブタノールである。上記アルコールは、好ましくは、イソプロパノール、およびエタノールから選択され、特によく適しているのは、イソプロパノールである。
【0022】
必要に応じて、1つまたはそれより多くの洗剤が、結合組成物中に含まれ得る。好ましくは、イオン性および/または非イオン性洗剤が、洗剤として使用される。好ましくは、非イオン性洗剤が、少なくとも5%の濃度で使用される。上記洗剤は、例えば、結合バッファーとともに添加され得る。
【0023】
さらに、生物学的バッファーは、結合のために使用され得る。生物学的バッファーの限定されない例としては、HEPES、MES、MOPS、TRIS、BIS−TRISプロパンおよび他が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、Trisバッファーが使用される。従って、1つの実施形態に従って、上記サンプルは、少なくとも1つのアルコールと、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩と、ならびに好ましくはTrisである生物学的バッファーとを含む結合バッファーと接触させられる。必要に応じて、上記結合バッファーはまた、上に記載されるような洗剤を含み得る。しかし、構成要素はまた、上記サンプルに別個に添加されて、適切な結合組成物を形成し得る。好ましくは、上記結合バッファーは、pH8を含む範囲において緩衝化する。1つの実施形態に従って、上記結合バッファーは、pH7.0〜9、好ましくは7.5〜8.5の範囲にあるpHを有し;最も好ましい上記結合バッファーは、pH8を有する。
【0024】
上記シリカ粒子は、ビーズの形態で使用され得、好ましくは約0.02μm〜約30μmの粒径、好ましくは0.05μm〜15μmの粒径、および最も好ましくは0.1μm〜10μmの粒径を有する。核酸結合キャリアの処理を容易にするために、好ましくは磁性シリカ粒子が使用される。上記磁性シリカ粒子は、例えば、フェリ磁性、強磁性、常磁性、または超常磁性であり得る。適切な磁性シリカ粒子は、例えば、WO01/71732、WO2004/003231、およびWO2003/004150に記載される。他の磁性シリカ粒子はまた、先行技術から公知であり、例えば、WO98/31840、WO98/31461、EP1 260 595、WO96/41811、およびEP0 343 934に記載され、また例えば、磁性シリカガラス粒子を含む。
【0025】
上に概説されるように、本発明の方法は、サンプルから小型RNAを回収するのに特に適している。代表的に、小型RNA分子は、長さが、約250ヌクレオチド未満、好ましくは200ヌクレオチド未満である。原核細胞および真核細胞の両方は、複数の異なる大きさのRNA分子を含む。約200または250ヌクレオチドの長さより大きなRNA分子としては、長鎖ノンコーディングRNA(long noncoding RNA)(lncRNA)/長鎖遺伝子間ノンコーディングRNA(large intergenic noncoding RNA)(lincRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、16S/18SリボソームRNA(rRNA)、および23S/28S rRNAが挙げられる。約200〜250ヌクレオチド未満の長さを有する小型RNA分子としては、5.8S rRNA、5S rRNA、トランスファーRNA(tRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA);マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、トランス作動性siRNA(tasiRNA)、反復配列関連siRNA(repeat−associated siRNA)(rasiRNA)、小分子RNA(small temporal RNA)(stRNA)、極小ノンコーディングRNA(tiny non−coding RNA)(tncRNA)、小型走査RNA(small scan RNA)(scRNA)、および小型調節性RNA(small modulatory RNA)(smRNA)が挙げられる。上記小型RNAは、総RNAの一部分として得られ得、従って、サンプルから単離される総RNA中に実質的な量で含まれる。
【0026】
上記サンプルは、任意の種類であり得、従って、また、小型RNA分子を含むインビトロでのサンプルであり得る。好ましくは、上記サンプルは、ヒト、動物、植物、細菌、または真菌類由来の生物学的サンプルである。好ましくは、上記サンプルは、細胞、組織、細菌、ウイルス、および体液(例えば、血液、血液産物(例えば、軟膜、血漿、および血清)、尿、液体(liquor)、痰、便、CSF、および精子)、上皮スワブ、生検材料、骨髄サンプル、および組織サンプル、好ましくは、器官組織サンプル(例えば、肺および肝臓)からなる群より選択される。好ましくは、上記サンプルは、全血および血液産物(例えば、軟膜、血清、または血漿)から選択される。
【0027】
RNAが生物学的サンプル(例えば、全血または血液産物)から単離されるときに特に好ましい1つの実施形態に従って、核酸は、サンプルの現状および特に転写パターンを保存するために好ましくは、生物学的サンプルが、その天然の環境から取得されたすぐ後に安定化される。これは、医学および診断の分野において特に有益である。
【0028】
従って、1つの実施形態に従って、上記生物学的サンプルは、上記サンプルから核酸を単離する前に上記生物学的サンプルにおいて核酸を安定化するために核酸保存安定化組成物と混合される。1つの実施形態に従って、上記安定化組成物は、
a)一般式:

のカチオン性化合物であって、
ここでYは、窒素またはリン(phosphor)を表し、好ましくは窒素を表し、
およびRは、独立して、分岐または非分岐のC〜C20アルキル基、C〜C20アリール基および/またはC〜C26アラルキル基を表し;
は、無機または有機の、一塩基酸または多塩基酸のアニオンを表す、カチオン性化合物;ならびに
b)少なくとも1つのプロトン供与体であって、ここで上記プロトン供与体は、好ましくは、飽和までの50mMより上の濃度で上記組成物に存在し、ここで上記プロトン供与体は、好ましくは、飽和脂肪族モノカルボン酸、不飽和アルケニルカルボン酸、飽和および/もしくは不飽和脂肪族C〜Cジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシルジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシルトリカルボン酸、脂肪族ケトカルボン酸、アミノ酸、または無機酸、またはそれらの塩からなる群から、それら単独で、または組み合わせて選択される、少なくとも1つのプロトン供与体
を含む。
【0029】
好ましくは、Rは、12、14、または16炭素原子を有する、高級アルキル基を示し、R、RおよびRは、それぞれメチル基を表す。
【0030】
好ましくは、上記アニオンXは、ハロゲン化水素酸(hydrohalic acid)のアニオン、または一塩基性または二塩基性有機酸のアニオンを表し、最も好ましい上記アニオンXは、臭化物イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、シュウ酸イオン、マロン酸イオン、コハク酸イオン、またはクエン酸イオンからなる群より選択される。
【0031】
好ましくは、上記プロトン供与体は、飽和脂肪族モノカルボン酸、不飽和アルケニルカルボン酸、飽和および/もしくは不飽和脂肪族C〜Cジカルボン酸、脂肪族ケトカルボン酸、アミノ酸、または無機酸、またはそれらの塩、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。好ましくは、上記脂肪族モノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸、エチルメチル酢酸(2−メチル酪酸)、2,2−ジメチルプロピオン酸(ピバル酸)、n−ヘキサン酸、n−オクタン酸、n−デカン酸、またはn−ドデカン酸(ラウリン酸)、またはそれらの混合物からなる群より選択されるC〜Cアルキルカルボン酸を含む。好ましくは、脂肪族アルケニルカルボン酸は、アクリル酸(プロペン酸)、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、もしくはビニル酢酸、またはそれらの混合物からなる群より選択される。好ましくは、上記飽和脂肪族C〜Cジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、もしくはアジピン酸、またはそれらの混合物からなる群より選択される。最も好ましくは、上記脂肪族ジカルボン酸は、シュウ酸、もしくはコハク酸、またはそれらの混合物である。好ましくは、上記脂肪族ヒドロキシルジカルボン酸、および脂肪族ヒドロキシルトリカルボン酸は、タルトロン酸、D−(+)−リンゴ酸、L−(−)−リンゴ酸もしくはDL−リンゴ酸、(2R,3R)−(+)−酒石酸、(2S,3S)−(−)−酒石酸、メソ酒石酸、およびクエン酸、またはそれらの混合物からなる群より選択される。最も好ましくは、上記不飽和ジカルボン酸は、マレイン酸および/もしくはフマル酸、またはそれらの混合物である。好ましくは、不飽和トリカルボン酸は、アコニット酸である。好ましくは、脂肪族ケトジカルボン酸は、メソシュウ酸もしくはオキサロ酢酸、またはそれらの混合物である。好ましくは、上記アミノ酸は、アミノ酢酸(グリシン)、α−アミノプロピオン酸(アラニン)、α−アミノイソ吉草酸(バリン)、α−アミノイソカプロン酸(ロイシン)、およびα−アミノ−β−メチル吉草酸(イソロイシン)、またはそれらの混合物からなる群より選択される。
【0032】
好ましくは、安定化させる組成物は、水性溶液中に存在する。好ましくは、上記カチオン性化合物は、0.01重量%〜15重量%の範囲の濃度で含まれる。
【0033】
適切な安定化させる溶液はまた、例えば、US7,270,953において詳細に記載され、本明細書中で参考として援用される。
【0034】
安定化させる溶液中の添加物に起因して、上に記載されるように安定化された複雑なサンプルは、核酸を単離することが特に難しい。本発明の方法は、これらの困難な点を克服し、それぞれ安定化されたサンプル、および特に複雑な生物学的サンプル(例えば、血液、血液産物(例えば、軟膜、血清および/または血漿)、または組織サンプル、特に、例えば、肺および肝臓から得られる器官組織サンプル)由来の特に総RNAの一部として、良好な収量での小型RNAの単離を可能にする。従って、本発明の方法は、医学および特に診断の分野において特に有用である。
【0035】
さらに、本発明の方法は、大きいサンプル体積からも、複雑なサンプル(例えば、全血、血液産物、または組織サンプル)に直面するときにも、RNA(上記小型RNAが挙げられる)の単離を可能にすることが、驚くことに見出された。従って、少なくとも1ml、少なくとも2ml、および好ましくは少なくとも2.5mlの体積を有する複雑なサンプルは、本発明の方法で効率的に処理され得る。
【0036】
使用されるサンプルに依存して、RNAをシリカ粒子に結合させる前に上記サンプルを予め処理することが有用であり得る。従って、1つの実施形態に従って、上記サンプルの少なくとも一部分は、少なくとも1つ溶解剤の添加によって、結合前に予め処理される。好ましくは、溶解のために、プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)、およびカオトロピック剤(例えば、グアニジニウムヒドロクロリド、グアニジニウムチオシアネート、グアニジニウムイソチオシアネート、ヨウ化ナトリウム、および/または過塩素酸ナトリウム)が使用される。溶解のための他の適切な方法としては、例えば、洗剤(例えば、SDS、LiDS、またはサルコシル)の使用が挙げられる。しかし、また、先行技術において公知である他の適切な溶解方法が使用され得る。それぞれの方法が、先行技術において公知であるので、ここでさらに記載する必要はない。好ましくは、溶解は、プロテイナーゼK、およびカオトロピック剤を用いて、中性pHにてバッファーにおいて行われる。
【0037】
1つの実施形態に従って、非標的核酸は、適切な核酸結合キャリアの添加によって、主に上記非標的核酸が上記核酸結合キャリアに結合される条件下で、溶解後、少なくとも部分的に除去される。この目的のために、再度シリカ粒子が使用され得る。通常、RNAが上記生物学的サンプルから単離されるとき、上記非標的核酸はDNAである。それぞれの非標的核酸を除去するための適切な方法は、例えば、EP0 880 537およびWO95/21849に記載される。
【0038】
RNAの単離についての1つの実施形態に従って、上記非標的核酸の除去後に得られる上清は、上に記載されるように、シリカ粒子、少なくとも1つのアルコール、ならびにトリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩と接触させて、上記RNA(上記小型RNAが挙げられる)を上記シリカ粒子に結合させる。適切な結合条件は上に記載される。それは、上の開示に参照される。
【0039】
好ましい実施形態に従って、上記シリカ粒子に結合後、上記RNAは、1つまたはそれより多くの洗浄バッファーを用いて少なくとも1回洗浄される。適切な洗浄バッファーの例は、少なくとも1つのカオトロピック剤、および/または少なくとも1つのアルコールを含む。洗浄バッファーにおいて使用され得るカオトロピック塩としては、グアニジニウムヒドロクロリド、グアニジニウムチオシアネート、グアニジニウムイソチオシアネート、およびヨウ化ナトリウムが挙げられる。さらに、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含むカオトロピック塩が使用され得る。それぞれのカオトロピック塩の例は、過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムのようなアルカリ塩である。アルコールとして、好ましくは1個〜5個の炭素原子を有する短鎖分岐の、または非分岐のアルコールが使用され得る。例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびブタノールである。好ましくは、イソプロパノール、および/またはエタノールが使用される。好ましくは、上記洗浄バッファーは、少なくとも50%のアルコール、および少なくとも1Mのカオトロピック塩、好ましくは少なくとも2Mのカオトロピック塩を含む。さらに、上記洗浄バッファーは、洗剤を含み得る。好ましくは、イオン性および/または非イオン性洗剤が、洗剤として使用される。好ましくは、非イオン性洗剤は、少なくとも5%の濃度で使用される。
【0040】
上に記載される洗浄バッファーの代わり、またはこのバッファーの他に使用され得る、さらなる適切な洗浄バッファーは、アルコールおよび生物学的バッファーを含む。適切なアルコールおよび生物学的バッファーは、上に記載される。好ましくは、イソプロパノールまたはエタノール、最も好ましくはエタノールが、この第二の洗浄ステップのために使用される。好ましくは、エタノールは、少なくとも70v/v%の濃度、好ましくは少なくとも80v/v%の濃度で使用される。上記生物学的バッファーは、好ましくは約7〜8のpHのTrisである。
【0041】
1つの実施形態に従って、DNアーゼ消化は、第一の洗浄ステップ(複数可)の後に行われる。DNアーゼ消化を行うための条件が、先行技術において周知であるので、ここでさらに記載する必要はない。
【0042】
1つの実施形態に従って、第一の洗浄ステップ(複数可)および必要に応じてDNアーゼ消化の後に、上記シリカ粒子および上記RNAは、再度、少なくとも1つのアルコール、ならびにトリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩と接触させられる。この目的のために、好ましくは、それぞれの剤および必要に応じて上に記載されるような洗剤を含む、結合バッファーが使用される。この第二のRNA結合ステップは、上記シリカ粒子に対する上記RNA、および特に上記小型RNAのしっかりした結合を確実にし、従って、良好な収量を確実にする。上記第二の結合ステップは、上に記載されるような条件下で行われ得、ここで、適切な濃度および例は、特に、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択される上記カオトロピックアニオン、対応するカオトロピック塩、アルコール、および生物学的バッファーについて記載される。それは、上の開示に参照される。
【0043】
必要に応じて、さらなる洗浄ステップが、上記第二のRNA結合ステップの後に行われ得る。洗浄バッファーとして、上に記載されるのと同じ洗浄バッファーが使用され得る。それは、上の開示に参照される。
【0044】
所望される場合、上記RNAは、上記シリカ粒子から溶出され得る。あるいは、上記RNAはまた、意図されるその後の適用(downstream application)に依存して、依然として上記シリカ粒子に結合されている間に処理され得る。溶出は、例えば、古典的な溶出バッファー(例えば、水、バッファー、特に生物学的バッファー(例えば、Tris))を用いて行われ得、好ましくは、意図されるその後の適用を妨げない溶出溶液が使用される。
【0045】
上に記載される、小型RNAの単離を行った後、必要に応じて総RNAの一部として上記小型RNAは使用され得、それぞれさらに処理(例えば、増幅、改変、逆転写または分析手順)され得る。
【0046】
また、提供されるのは、サンプルから小型RNAを単離するためのキットであって、上記キットは、
a)必要に応じて、少なくとも1つのアルコールと、
b)トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩と、
c)シリカ粒子と、
d)必要に応じて、使用のための指示書
とを含む、キットである。
【0047】
1つの実施形態に従って、上記キットは、アルコールとして、好ましくは1個〜5個の炭素原子を有する短鎖分岐の、または非分岐のアルコールを含む。例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびブタノールである。好ましくは、イソプロパノール、および/またはエタノールが、アルコールとしてキットに含まれる。上に記載されるように、イソプロパノールが最も好ましい。
【0048】
上記キットは、少なくとも1つのアルコールと、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩とを含む、結合バッファーを含み得る。1つの結合バッファー中に上記アルコールおよび上記カオトロピック塩を提供することは、顧客が、それぞれの構成要素を別個に混合して上記結合組成物を形成する必要がないという利点を有する。上記結合バッファーは、好ましくは、約40v/v%以上の、好ましくは40v/v%以上〜80v/v%以下の、上記結合組成物におけるアルコールの濃度をもたらすのに適した濃度で上記アルコールを含む。最も好ましい上記アルコールは、上記結合組成物において、50v/v%以上〜65v/v%以下のアルコール濃度をもたらすのに適した上記結合バッファーにおいて提供される。この目的のために、1つの実施形態に従って、上記結合バッファーは、少なくとも60v/v%、好ましくは少なくとも70v/v%の濃度でアルコールを含む。
【0049】
さらに、1つの実施形態に従って、上記結合バッファーは、上記カオトロピック塩を含み、このカオトロピック塩は、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む。1つの実施形態に従って、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択される上記カオトロピックアニオンは、上記結合組成物において、飽和限度までの少なくとも0.05Mの上記カオトロピックアニオンの濃度を得るのに適した濃度で、上記結合バッファー中に存在する。1つの実施形態に従って、上記カオトロピックアニオンは、上記結合組成物において、0.05M〜4Mの範囲にある上記カオトロピックアニオンの濃度を得るのに適した濃度で上記結合バッファー中に存在する。1つの実施形態に従って、上記カオトロピックアニオンは、上記結合組成物において、0.05M〜3Mの範囲、好ましくは0.05M〜2Mの範囲にある上記カオトロピックアニオンの濃度を得るのに適した濃度で上記結合バッファー中に存在する。非常に好ましい実施形態に従って、上記カオトロピックアニオンは、上記結合組成物において、0.1M〜1Mの範囲にある上記カオトロピックアニオンの濃度を得るのに適した濃度で上記結合バッファー中に存在する。最も好ましくは、上記カオトロピックアニオンは、上記結合組成物において、1M未満であり、0.1M〜0.9Mの範囲、または0.1M〜0.8Mの範囲にある上記カオトロピックアニオンの濃度を得るのに適した濃度で上記結合バッファー中に存在する。従って、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む上記カオトロピック塩は、上記カオトロピックアニオンについて上に記載される濃度で、上記結合バッファー中に存在し得る。カオトロピック塩のカチオンとして、アルカリ金属イオン(例えば、好ましくは、ナトリウム)が使用され得る。従って、1つの実施形態に従って、カオトロピック塩は、過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムからなる群より選択される上記結合バッファー中に含まれる。実施例に示されるように、それぞれのカオトロピック塩は、核酸結合キャリアとしてシリカ粒子を用いるときに、総RNA一部としての小型RNAの単離に特によく適している。好ましくは、トリクロロ酢酸ナトリウムは、0.1M〜1M未満の濃度で上記結合バッファー中に存在する。好ましい実施形態に従って、上記結合バッファーは、少なくとも0.5Mの上記カオトロピック塩を含み、それは、好ましくは、トリクロロ酢酸ナトリウムである。トリクロロ酢酸ナトリウムは、好ましくは、0.6Mの濃度で上記結合バッファー中に存在する。上に記載されるように、他のカオトロピック塩(例えば、一般的に使用されるグアニジニウム塩)は、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む上記カオトロピック塩に加えて上記結合バッファー中に含まれ得る。
【0050】
さらに、上記結合バッファーは、生物学的バッファーを含み得る。上記生物学的バッファーおよび適切なpH値に関する詳細は、本発明に従う方法とともに上に記載される。それは、上の開示に参照される。好ましくは、7と9との間のpH、8.5のpH、好ましくはpH8〜8.5を有するTrisバッファーが使用される。
【0051】
好ましくは、磁性シリカ粒子は、上記キットに含まれる。このことは、上記磁性シリカ粒子が、単離の間の、取り扱いおよび従って上記シリカ粒子の処理を簡単にするからである。磁性シリカ粒子の使用はまた、例えば、ロボットシステムを介した単離プロトコルの自動化処理を可能にする。適切な磁性シリカ粒子は、上に記載され、また先行技術において公知である。
【0052】
さらなる実施形態に従って、上記キットは、追加的または代替的に溶解バッファーを含み、これは、好ましくは、少なくとも1つのカオトロピック塩を含む。さらに、上記キットは、追加的または代替的に、溶解酵素(例えば、プロテアーゼ、好ましくはプロテイナーゼK)を含む溶液を含む。
【0053】
さらに、上記キットは、1つまたはそれより多くの洗浄バッファーを含み得る。適切な洗浄バッファーは、上に記載される;それは、上の開示に参照される。
【0054】
さらに、上記キットは、追加的または代替的に溶出バッファーを含み得る。適切な溶出バッファーは、上に記載される;それは、上の開示に参照される。
【0055】
さらなる実施形態に従って、小型RNAをシリカ粒子に結合させるための組成物が提供され、この組成物は、
a)少なくとも1つのアルコールと、
b)トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩と、
c)シリカ粒子と
d)核酸を含む、少なくとも1つのサンプル、またはサンプルの一部分もしくは一部
とを含む。
【0056】
シリカ粒子を用いることによって小型RNAを単離するために、それぞれの結合組成物を使用する利点は、上に詳細に記載される。それは、上の開示に参照される。
【0057】
好ましくは総RNAの一部分として、上記サンプルから小型RNAを単離するのに適している上記組成物は、好ましくは、1つまたはそれより多くの以下の特徴を有する:
1つの実施形態に従って、それは、アルコールとして、好ましくは1個〜5個の炭素原子を有する短鎖分岐の、または非分岐のアルコールを含む。例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびブタノールである。好ましくは、アルコールとして、イソプロパノールおよび/またはエタノール、最も好ましくはイソプロパノールが含まれる。上記アルコールは、1つの実施形態に従って、約40v/v%以上、好ましくは40v/v%以上〜80v/v%以下の濃度で含まれる。最も好ましくは、上記アルコールは、50v/v%以上〜65v/v%以下の濃度で含まれる。
【0058】
1つの実施形態に従って、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択される上記カオトロピックアニオンは、飽和限度までの少なくとも0.05Mの濃度で上記結合組成物中に存在する。1つ実施形態に従って、上記の濃度は、0.05M〜4Mの範囲にある。1つの実施形態に従って、上記の濃度は、0.05M〜3Mの範囲、好ましくは0.05M〜2Mの範囲にある。非常に好ましい実施形態に従って、上記結合組成物における、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択される上記カオトロピックアニオンの濃度は、0.1M〜1Mの範囲にある。最も好ましくは、上記カオトロピックアニオンの濃度は、1M未満であり、0.1M〜0,9Mの範囲、または0.1M〜0.8Mの範囲にある。従って、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む上記カオトロピック塩は、上記カオトロピックアニオンについて上に記載される濃度で、上記結合組成物中に存在し得る。対応するカチオンは、好ましくは、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウム)である。従って、1つの実施形態に従って、上記結合組成物は、過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムからなる群より選択されるカオトロピック塩を含む。実施例に示されるように、それぞれのカオトロピック塩は、核酸結合キャリアとしてシリカ粒子を用いるときに、小型RNAの単離に特によく適している。好ましくは、トリクロロ酢酸ナトリウムは、0.1M〜1M未満の濃度、好ましくは0.1M〜0.7Mの濃度で上記結合組成物中に存在する。もちろん、他のカオトロピック塩(例えば、一般的に使用されるグアニジニウム塩)は、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む上記カオトロピック塩に加えて含まれ得る。
【0059】
さらに、上記組成物は、好ましくはTrisである生物学的バッファーを含み得る。適切な生物学的バッファーおよび適切なpH値の例は、本発明に従う方法とともに上に記載される。それは、上の開示に参照される。
【0060】
上に概説されるように、上記結合組成物はまた、洗剤を含み得る;詳細について、それは上の開示に参照される。
【0061】
それぞれの組成物の利点およびさらなる特徴はまた、シリカ粒子を用いて小型RNAを単離するための方法とともに上に概説された。それは、上の開示に参照される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、以下を用いて生成された溶出液を比較している、miScript(登録商標)プライマーアッセイ(QIAGEN)の結果を示す;− QIAsymphony PAXgene Blood RNA Kit(自動化キットであって、ここで磁性シリカ粒子は、QIAsymphonyロボットシステムによって処理される核酸結合キャリアとして使用される、自動化キット;PreAnalytiX)、− PAXgene Blood miRNA Kit(RNAを単離するために、核酸結合キャリアとしてシリカ膜を用いたmiRNAの単離のための専用キット;PreAnalytiX)、− PAXgene Blood RNA Kit(核酸結合キャリアとしてシリカ膜を用いた一般のRNA単離キット;PreAnalytiX)、および− 本発明の方法に従って、それぞれ、過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、またはトリフルオロ酢酸ナトリウムを含む、結合バッファーを用いたRNA単離方法であって、ここで磁性シリカ粒子が、単離のための核酸結合キャリアとして使用され、ここではそれは、QIAsymphonyロボットシステム(QIAGEN)によって処理されるMagAttract粒子(QIAGEN)である、RNA単離方法。行われた単離手順における詳細については、実施例におけるそれぞれの記載を参照のこと。上記小型RNAが、種々の比較された方法によって、上記総RNAの一部として有効に単離されたかどうかを分析するために、miRNA has−miR 16が、miScript(登録商標)Primer Assayにおいて検出された。結果は、図1に示される。
【図2−1】図2a)〜図2c)は、以下を用いて生成された溶出液を比較している、3つのmiScript Assay(QIAGEN)の結果を示す;QIAsymphony PAXgene Blood RNA Kit、PAXgene Blood miRNA Kit、PAXgene Blood RNA Kit、および核酸結合キャリアとしてMagAttractビーズとともに使用した、トリクロロ酢酸ナトリウムを含む本発明に従う結合バッファー(本発明の単離手順における詳細については、実施例におけるそれぞれの記載を参照のこと)。ここで、miRNAのhsa−miR 10a、hsa−miR 16、およびhsa−miR 30bが検出された。
【図2−2】図2a)〜図2c)は、以下を用いて生成された溶出液を比較している、3つのmiScript Assay(QIAGEN)の結果を示す;QIAsymphony PAXgene Blood RNA Kit、PAXgene Blood miRNA Kit、PAXgene Blood RNA Kit、および核酸結合キャリアとしてMagAttractビーズとともに使用した、トリクロロ酢酸ナトリウムを含む本発明に従う結合バッファー(本発明の単離手順における詳細については、実施例におけるそれぞれの記載を参照のこと)。ここで、miRNAのhsa−miR 10a、hsa−miR 16、およびhsa−miR 30bが検出された。
【図3】図3a)および図3b)は、以下を用いて生成された溶出液を比較している、2つのABI TaqMan(登録商標)MicroRNAアッセイ(Life Technologies)の結果を示す;QIAsymphony PAXgene Blood RNA Kit、PAXgene Blood miRNA Kit、PAXgene Blood RNA Kit、および核酸結合キャリアとしてMagAttractビーズとともに使用した、トリクロロ酢酸ナトリウムを含む本発明に従う結合バッファー(本発明の単離手順における詳細については、実施例におけるそれぞれの記載を参照のこと)。ここで、miRNAのhas−miR 16、およびhsa−miR 30bが検出された。
【図4】図4a)および図4b)は、以下を用いて生成された溶出液を比較している、2つのmiScript(登録商標)Primer Assay(QIAGEN)の結果を示す;QIAsymphony PAXgene Blood RNA Kit、PAXgene Blood miRNA Kit、PAXgene Blood RNA Kit、およびイソプロパノールまたはエタノールのいずれかとともにトリクロロ酢酸ナトリウムを含み、核酸結合キャリアとして、MagAttractビーズとともに使用される、本発明に従う結合バッファー(本発明の単離手順における詳細については、実施例におけるそれぞれの記載を参照のこと)。ここで、miRNAのhsa−miR 10a、およびhsa−miR 30bが検出された。
【発明を実施するための形態】
【0063】
実施例
1.RNA単離プロトコル
総RNAを、安定化溶液を含むPAXgene Blood RNAチューブにおいて、異なる5ドナーからの全血(2.5ml)から単離した。適切な安定化溶液をまた、上に記載する。安定化されたサンプルを含むPAXgene Blood RNAチューブ(PreAnalytiX)を、市販のキットQIAsymphony PAXgene Blood RNA Kit(PreAnalytiX)、PAXgene Blood miRNA Kit(PreAnalytiX)、PAXgene Blood RNA Kit(PreAnalytiX)のための指示マニュアル、または本発明に従う方法に従って、さらに処理した。
【0064】
上記安定化されたサンプルを以下のように処理した:
a)QIAsymphony PAXgene Blood RNA(PreAnalytiX)
詳細なプロトコルは、対応するハンドブックに記載されている。従って、本明細書中において、それぞれのプロトコルを簡潔にのみ記載する:
1. PAXgene Blood RNAチューブを、スイングアウトローターを用いて、3000〜5000×gで10分間、遠心分離した。
【0065】
2. 遠心分離後、上清をデカントすることによって除いた。上記上清を捨て、ペレットをステップ3における再懸濁のために取っておいた。
【0066】
3. 1つのチューブ当たり300μlのBuffer BR1を添加した。上記チューブを閉め、ボルテックスによってペレットを完全に再懸濁した。マルチチューブボルテクサー(vortexer)を、それぞれ、上記ペレットが完全に再懸濁するまで、全速力で30秒間、再懸濁のために使用した。
【0067】
4. クロージャ(closure)を除き、捨てた。
【0068】
5. ロボットシステムQIAsymphony SPを、さらなる処理のために使用した。PAXgene Blood RNA単離のために必要とされる試薬カートリッジおよび消耗品を、「試薬および消耗品」引出しに入れた。さらに、必要とされる溶出ラックを「溶出液」引出しに入れた。
【0069】
6. ステップ4からのサンプルを、適切なサンプルキャリアに配置し、「サンプル」引出しに入れた。その後、上記サンプルを、対応するプログラムを用いて、QIAsymphonyによって処理した。簡単に言うと、上記ロボットシステムQIAsymphonyは、溶解バッファーBR2、プロテイナーゼK、およびMagAttractビーズを添加することによってプローブを処理する。まず、DNAを上記ビーズに結合させ、除く。その後、結合バッファーQSB1の他にさらなる磁性ビーズを添加する。その後、複合体を、バッファーQSB1およびバッファーBR4を用いて予め洗浄する。
【0070】
7. 上記サンプルをバッファーBR5で予め溶出し、残っているDNAを消化する。バッファーQSB2を添加することによって、RNAを再結合させる。その後、さらなる洗浄ステップを行い、複合体を乾燥させ、RNAを溶出する。
【0071】
b)PAXgene Blood miRNA Kit(PreAnalytiX)
詳細なプロトコルは、対応するハンドブックに記載されている。従って、本明細書中において、それぞれのプロトコルを簡潔にのみ記載する:
1. PAXgene Blood RNAチューブを、スイングアウトローターを用いて、3000〜5000×gで10分間、遠心分離した。
【0072】
2. 上清をデカントまたはピペッティングによって除いた。4mlのRNアーゼを含まない水を、ペレットに添加し、チューブを閉めた。
【0073】
3. 上記ペレットを、目に見えて溶解するまでボルテックスし、スイングアウトローターを用いて、3000〜5000×gで10分間、遠心分離した。その上清全体をデカントまたはピペッティングによって除き、捨てた。
【0074】
4. 350μlのバッファーBM1を添加し、ペレットが目に見えて溶解するまでボルテックスした。
【0075】
5. サンプルを1.5mlの微量遠心分離チューブにピペットで入れた。300μlのバッファーBM2、および40μlのプロテイナーゼKを添加した。これらの構成要素を、5秒間ボルテックスすることによって混合し、400〜1400rpmでのシェーカーインキュベーターにおいて55℃にて10分間、インキュベートした。インキュベーション後、ステップ20において使用するために、シェーカーインキュベーターの温度を65℃に設定した。
【0076】
6. サンプルを、PAXgene Shredderスピンカラムにピペットで入れ、2mlの処理チューブに配置し、全速力で3分間、遠心分離した。
【0077】
7. PAXgene Shredderスピンカラムからのフロースルーの上清全体を、上記処理チューブ内のペレットをかき乱すことなく、新しい1.5mlの微量遠心分離チューブに慎重に移した。
【0078】
8. 700μlのイソプロパノール(100%、純度グレード p.a.)を添加し、ボルテックスすることによって混合した。
【0079】
9. 700μlのサンプルをPAXgene RNAスピンカラムにピペットで入れ、2mlの処理チューブに配置した。8000〜20000×gでの1分間の遠心分離後、そのスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、フロースルーを含む古い処理チューブを捨てた。
【0080】
10. 残っているサンプルをPAXgene RNAスピンカラムにピペットで入れ、8000〜20000×gで1分間、遠心分離した。そのスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、古い処理チューブを捨てた。
【0081】
11. 350μlのバッファーBM3をPAXgene RNAスピンカラムに添加した。ふたを閉め、8000〜20000×gで15秒間、遠心分離した。そのスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、フロースルーを含む古い処理チューブを捨てた。
【0082】
12. 10μlのDNアーゼIストック溶液を、1.5mlの微量遠心分離チューブ中の70μlのバッファーRDDに添加した。
【0083】
13. DNアーゼIインキュベーション混合物(80μl)をPAXgene RNAスピンカラム膜上にピペットで直接的に乗せ、ベンチトップ上で15分間インキュベートした。
【0084】
14. 350μlのバッファーBM3をPAXgene RNAスピンカラムに添加した。ふたを閉め、8000〜20000×gで15秒間、遠心分離した。そのスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、フロースルーを含む古い処理チューブを捨てた。
【0085】
15. 500μlのバッファーBM4をPAXgene RNAスピンカラムに添加し、8000〜20000×gで15秒間、遠心分離した。フロースルーを捨てた。そのスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、フロースルーを含む古い処理チューブを捨てた。
【0086】
16. 別の500μlのバッファーBM4をPAXgene RNAスピンカラムに添加し、8000〜20000×gで2分間、遠心分離した。
【0087】
17. フロースルーを含む処理チューブを捨て、PAXgene RNAスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、8000〜20000×gで1分間、遠心分離した。
【0088】
18. フロースルーを含む処理チューブを捨てた。PAXgene RNAスピンカラムを新しい1.5mlの微量遠心分離チューブに配置し、40μlのバッファーBR5を、そのスピンカラム膜上にピペットで直接的に乗せた。ふたを閉め、8000〜20000×gで1分間、遠心分離して、RNAを溶出した。
【0089】
19. 40μlのバッファーBR5および同じ微量遠心分離チューブを用いて、溶出ステップ18を記載されたように繰り返した。
【0090】
20. 溶出液を、シェーカーインキュベーターにおいて振とうさせることなく、65℃にて5分間、インキュベートした。インキュベーション後、サンプルを氷上ですぐに冷やした。
【0091】
21. その後、サンプルは、すぐに使用でき、それぞれ保存した。
【0092】
c)PAXgene Blood RNA Kit(PreAnalytiX)
詳細なプロトコルは、対応するハンドブックに記載される。従って、本明細書中において、それぞれのプロトコルを簡潔にのみ記載する:
1. PAXgene RNAチューブを、スイングアウトローターを用いて、3000〜5000×gで10分間、遠心分離した。
【0093】
2. 上清をデカントまたはピペッティングによって除いた。4mlのRNアーゼを含まない水を、ペレットに添加し、チューブを閉めた。
【0094】
3. 上記ペレットを、目に見えて溶解するまでボルテックスし、スイングアウトローターを用いて、3000〜5000×gで10分間、遠心分離した。その上清全体を除き、捨てた。
【0095】
4. 350μlの再懸濁バッファー(BR1)を添加し、ペレットが目に見えて溶解するまでボルテックスした。
【0096】
5. サンプルを1.5mlの微量遠心分離チューブにピペットで入れた。300μlの結合バッファー(BR2)、および40μlのプロテイナーゼKを添加し、5秒間ボルテックスすることによって混合し、400〜1400rpmでのシェーカーインキュベーターを用いて、55℃にて10分間、インキュベートした。インキュベーション後、ステップ20のために、シェーカーインキュベーターの温度を65℃に設定した。
【0097】
6. 溶解産物を、2mlの処理チューブに配置されたPAXgene Shredderスピンカラムにピペットで直接的に入れ、最高スピードで3分間、遠心分離した。
【0098】
7. フロースルー画分の上清全体を、処理チューブ内のペレットをかき乱すことなく、新たな1.5mlの微量遠心分離チューブに慎重に移した。
【0099】
8. 350μlのエタノール(96〜100%、純度グレード p.a.)を添加し、ボルテックスすることによって混合し、軽く遠心分離して(500〜1000×gで1〜2秒)、チューブのふたの内側から滴を除いた。
【0100】
9. 700μlのサンプルを、2mlの処理チューブに配置されたPAXgene RNAスピンカラムにピペットで入れ、8000〜20000×gで1分間、遠心分離した。そのスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、フロースルーを含む古い処理チューブを捨てた。
【0101】
10. 残っているサンプルをPAXgene RNAスピンカラムにピペットで入れ、8000〜20000×gで1分間、遠心分離した。そのスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、フロースルーを含む古い処理チューブを捨てた。
【0102】
11. 350μlの洗浄バッファー1をPAXgene RNAスピンカラムにピペットで入れ、8000〜20000×gで1分間、遠心分離した。そのスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、フロースルーを含む古い処理チューブを捨てた。
【0103】
12. 10μlのDNアーゼIストック溶液を、1.5mlの微量遠心分離チューブ中の70μlのDNA消化バッファー(RDD)に添加し、混合し、軽く遠心分離した。
【0104】
13. DNアーゼIインキュベーション混合物(80μl)をPAXgeneスピンカラム膜上にピペットで直接的に乗せ、ベンチトップ上に15分間置いた。
【0105】
14. 350μlの洗浄バッファー1(BR3)をPAXgene RNAスピンカラムにピペットで入れ、8000〜20000×gで1分間、遠心分離した。そのスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、フロースルーを含む古い処理チューブを捨てた。
【0106】
15. 500μlの洗浄バッファー2(BR4)をPAXgene RNAスピンカラムにピペットで入れ、8000〜20000×gで1分間、遠心分離した。そのスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、フロースルーを含む古い処理チューブを捨てた。
【0107】
16. 別の500μlの洗浄バッファー2(BR4)をPAXgene RNAスピンカラムに添加し、8000〜20000×gで3分間、遠心分離した。
【0108】
17. フロースルーを含む処理チューブを捨て、PAXgene RNAスピンカラムを新しい2mlの処理チューブに配置し、8000〜20000×gで1分間、遠心分離した。
【0109】
18. フロースルーを含む処理チューブを捨て、PAXgene RNAスピンカラムを1.5mlの遠心分離チューブに配置し、40μlの溶出バッファー(BR5)を、PAXgene RNAスピンカラム膜上にピペットで直接的に乗せ、8000〜20000×gで1分間、遠心分離して、RNAを溶出した。
【0110】
19. 40μlの溶出バッファー(BR5)および同じ微量遠心分離チューブを用いて、溶出ステップ18を記載されたように繰り返した。
【0111】
20. 溶出液を、シェーカーインキュベーターにおいて振とうさせることなく、65℃にて5分間、インキュベートした。インキュベーション後、そのサンプルを氷上ですぐに冷やした。
【0112】
21. サンプルは、ここですぐに使用でき、それぞれ保存した。
【0113】
d)本発明に従う方法
本発明に従う方法を、QIAsymphonyロボットシステムにおいて行った。簡単に言うと、以下のステップを行った:
1. PAXgene Blood RNAチューブを、3.000〜6.000rpmで10分間、遠心分離した。ペレットを、酢酸アンモニウムを含むバッファー(300μl)の添加およびボルテックスすることによって再懸濁した。
【0114】
2. さらに溶解剤、好ましくはプロテイナーゼK(40μl)、および3M超のカオトロピック塩、好ましくはGITCを含む溶解バッファー(230μl)を添加した。その後、サンプルを56℃で10分間、インキュベートした。
【0115】
3. MagAttractビーズを添加して、DNAをシリカ粒子と一緒に結合させて除いた。
【0116】
4. RNAの結合のために、新しいMagAttractビーズ、ならびに本発明に従って、80%のイソプロパノール(またはエタノール)、それぞれ0.6Mの過塩素酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、またはトリクロロ酢酸ナトリウム、およびTrisを含む1500μlの結合バッファーを添加した。
【0117】
5. 2つの洗浄ステップを行った。第一の洗浄ステップを、イソプロパノール、GTCおよび洗剤を含むバッファーで行い;第二の洗浄ステップを、エタノールおよびTrisを含む洗浄バッファーで行った。
【0118】
6. その後、DNアーゼ消化を行った。
【0119】
7. RNAを上記ビーズに再結合させるために、本発明に従って、1400μlの同じ結合バッファー(上記を参照のこと)を添加した。この第二の結合ステップは小型RNAの良好な収量を確実にする。
【0120】
8. その後、4つの追加の洗浄ステップを行った。
【0121】
9. 総RNAを、適切な溶出バッファー(BR5、QIAGEN)を用いて、溶出した。また、他の一般的な溶出バッファー(例えば、水またはTrisバッファー)が、使用され得る。
【0122】
2.結果
小型RNAが総RNAの一部として有効に単離されたかどうかを、種々の比較された方法によって分析するために、数種類のmiRNAを種々の確立されたアッセイ(詳細は、図を参照のこと)を用いて検出した。各方法の溶出液を用いて得られたCT値を示す。CT値が高くなればなるほど、分析された溶出液におけるそれぞれのmiRNAの濃度はより低く、従って、試験された方法による小型RNAの単離はより効率が低かった。
【0123】
結果は、磁性シリカ粒子を用いる市販のキットが、小型RNAを単離することにおいて、単離のために特定のカオトロピック塩を用いる本発明の方法よりも効率が低いことを示す(図を参照のこと)。最良の結果は、マニュアルPAXgene Blood miRNAキットを用いて達成されるが、このキットは、シリカ膜ベースであり、従って、柔軟性がありかつ高スループットの自動化プロセスに適さないという欠点を有する。本発明に従う方法で得られた結果は、たとえ磁性シリカ粒子が単離に使用されても、本発明に従う方法が良好な収量で小型RNAを単離するのに適していることを示す。従って、本発明によって提供される新規の結合条件は、特定の結合条件を用いることによって、シリカ粒子の使用に基づく標準RNA単離方法を改善することを可能にし、それにより、核酸結合キャリアとしてシリカ粒子を用いるときでさえ、小型RNAの効率的な単離を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型RNAをサンプルから単離するための方法であって、該方法は、該サンプルを
a)少なくとも1つのアルコール、
b)トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩、および
c)シリカ粒子
と接触させることによって、RNAをシリカ粒子に結合させる工程、ならびに
結合した該RNAを該サンプルの残りから分離する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記カオトロピックアニオンが、結合の間、0.05M〜2Mの濃度、好ましくは0.1M〜1M未満の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カオトロピック塩が、過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムからなる群より選択され、好ましくは該カオトロピック塩がトリクロロ酢酸ナトリウムである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルコールが、結合の間、40v/v%以上、好ましくは40v/v%以上〜80v/v%以下、より好ましくは50v/v%以上〜65v/v%以下の濃度で存在する、
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記小型RNAが、総RNAの一部として得られる、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
以下の特徴:
i)前記サンプルが、体液、血液、血液産物、組織、および骨髄から選択される生物学的サンプルであり;
ii)該サンプルが、核酸を安定化するために核酸安定化組成物と混合される;そして/または
iii)該サンプルが、核酸安定化組成物と混合され、ここで該安定化組成物は、
a)一般式:

のカチオン性化合物であって、
ここでYは、窒素またはリン(phosphor)、好ましくは窒素を表し、
およびRは、独立して、分岐または非分岐のC〜C20アルキル基、C〜C20アリール基および/またはC〜C26アラルキル基を表し;
は、無機または有機の、一塩基酸または多塩基酸のアニオンを表す、カチオン性化合物と;
b)少なくとも1つのプロトン供与体と、
を含む、
のうちの1つまたはそれより多くによって特徴付けられる、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプル、または該サンプルの一部分もしくは一部が、少なくとも1つ溶解剤、好ましくはプロテアーゼ、および/またはカオトロピック剤の添加によって、結合前に予め処理される、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
溶解後、非標的核酸が、適切な核酸結合キャリアの添加によって、そして該非標的核酸の少なくとも一部分を結合するための適切な条件下で除去される、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記シリカ粒子に結合した前記RNAが洗浄される、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記RNAが、
a)カオトロピック剤、およびアルコール、および好ましくは洗剤を含む洗浄バッファー;ならびに
b)アルコールおよび生物学的バッファーを含む洗浄バッファー
から選択される、1つまたはそれより多くの洗浄バッファーを用いて少なくとも1回洗浄される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
洗浄後、前記シリカ粒子および前記RNAが、再度、少なくとも1つのアルコール、ならびにトリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含むカオトロピック塩と、好ましくは請求項1〜4のうちのいずれか一項において定義されるような条件下で接触させられる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
小型RNAをサンプルから単離するためのキットであって、該キットは、
a)任意選択のアルコールと、
b)トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩と、
c)シリカ粒子
とを含む、キット。
【請求項13】
以下の試薬:
a)イソプロパノールおよび/またはエタノール;
b)少なくとも60%の濃度でのアルコール、好ましくは少なくとも70%のアルコールと、少なくとも0.5Mの、トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含むカオトロピック塩、好ましくはトリクロロ酢酸ナトリウムと、生物学的バッファー、好ましくはTrisとを含む結合バッファー;
c)磁性シリカ粒子;
d)好ましくはカオトロピック剤を含む、溶解バッファー;
e)プロテアーゼを含む組成物;
f)1つまたはそれより多くの洗浄バッファー;
g)溶出バッファー
のうちの1つまたはそれより多くを含む、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
小型RNAをシリカ粒子に結合させるための組成物であって、該組成物は、
a)少なくとも1つのアルコールと、
b)トリクロロ酢酸イオン、過塩素酸イオン、およびトリフルオロ酢酸イオンからなる群より選択されるカオトロピックアニオンを含む少なくとも1つのカオトロピック塩と、
c)シリカ粒子と
d)核酸を含む、少なくとも1つのサンプル、またはサンプルの一部分もしくは一部
とを含む、組成物。
【請求項15】
以下の特徴:
a)前記組成物が、アルコールとして、イソプロパノールおよび/またはエタノール、好ましくはイソプロパノールを含み;
b)該組成物が、少なくとも40v/v%以上、好ましくは40v/v%以上〜80v/v%以下、より好ましくは50v/v%以上〜65v/v%以下の濃度でアルコールを含み;
c)該組成物が、0.05M〜2Mの濃度、好ましくは0.1M〜1M未満の濃度で前記カオトロピックアニオンを含み;
d)該組成物が、カオトロピック塩として、トリクロロ酢酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムからなる群より選択される塩、好ましくはトリクロロ酢酸ナトリウムである塩を含み;
e)該組成物が、生物学的バッファー、好ましくはTrisを含み、そして/あるいは
f)該組成物が、核酸を含む、血液、または血液の一部分もしくは一部を含む、
のうちの1つまたはそれより多くを有する、請求項14に記載の組成物。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−516969(P2013−516969A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548459(P2012−548459)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050590
【国際公開番号】WO2011/086195
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(507214038)キアゲン ゲーエムベーハー (16)
【Fターム(参考)】