説明

小物用フック

【課題】フックで容易にかつ安定して商品等の収納体を吊り下げることができるようにする。
【解決手段】フック本体1に、商品等の収納袋Bに形成した2箇所のフック孔H、Hにそれぞれ挿し込む2本の突片2、2を形成し、この突片2の根元側に、フック孔Hの大きさよりも大きい幅を有する抜け止め部3を形成する。このように、離間した2箇所のフック孔H、Hに突片2を挿し込むようにしたことによって、この2箇所のフック孔H、Hのうちいずれか一方を揺動軸として左右に揺れることがない。このため、フック孔Hの周囲が傷んで商品価値が下がるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、店頭等において商品等を吊り下げて展示する際に用いる小物用フックに関する。
【背景技術】
【0002】
小物用フックは、例えば下記特許文献1に示すように、フック孔を形成した商品等の収納袋や収納ケース等の収納体に取り付けて、この収納体を吊り下げて展示する際に用いるものである。このフックは可撓性を有する素材からなる薄板状のものであって、フック本体に、根元部がこのフック本体とつながった、逆きのこ形状の切り込みが形成されている。このきのこ形状の柄から張り出す傘の横幅は前記フック孔の内径よりも大きく、この切り込み部分をフック本体から起こし、この傘の部分に前記フック孔を引っかけると、このフック孔からの傘の抜け止めが図られる。
【0003】
前記フック孔への引っかけの際は、前記傘の部分を指でつまんで変形させ、その変形させた状態のままフック孔をくぐらせる。そして、この傘をその弾性によって元の形状に戻すことによって、商品の展示中に、この商品がフックから外れて落ちるのを防止することができる。その一方で、商品の購入者が店頭で又は購入後にこのフックを取り外す際は、前記傘の部分を指でつまんで変形させ、再びこのフック孔をくぐらせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−294657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のフックは、商品の収納体に形成した一つのフック孔に傘を引っかけるようになっている。このため、商品の展示中に顧客が手を触れたりすると、このフックに引っかけた収納体が、このフック孔を揺動軸として不安定に左右に揺れやすい。このように収納体が揺れると、フック孔の内周が前記傘によってこすれ、このフック孔の周囲が次第に傷んでくることがある。この結果、商品の見栄えが悪くなって、その商品価値が下がってしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、この発明は、このフックで容易にかつ安定して商品等の収納体を吊り下げることができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明は、商品の収納体に形成したフック孔に、フック本体に形成した突片を挿し込んで、この収納体を吊り下げる小物用フックにおいて、フック本体に、前記収納体に形成した2箇所のフック孔にそれぞれ挿し込む2本の突片を形成し、この突片の根元側に、前記フック孔の大きさよりも大きい幅を有する抜け止め部を形成し、前記収納体が前記突片の突出方向にスライドした際に、前記両突片が両フック孔に挿し込まれた状態のまま、前記抜け止め部が前記フック孔の少なくとも一方の内周に当接して、それ以上のスライドが阻止されるように小物用フックを構成した。
【0008】
この2箇所のフック孔は離間しており、両フック孔のそれぞれに突片を挿し込むようにすることによって、この2箇所のフック孔のうちいずれか一方を揺動軸として左右に揺れることができない。このため、前記フック孔の周囲が傷んで、商品価値が下がるのを防止することができる。
【0009】
また、前記抜け止め部によって前記収納体のスライド量を所定範囲内に制限することにより、この収納体が一方にスライドしすぎてフック孔から突片が外れ、商品が脱落するのを防止することができる。
【0010】
前記構成における抜け止め部の幅は適宜決定してもよいが、特に、前記抜け止め部の前記スライド方向への幅と、いずれか一方の前記突片の突出長さとの和が、前記2箇所のフック孔の間隔よりも大きく、かつ、前記抜け止め部の前記スライド方向への幅が、前記間隔の大きさ以下であるように、寸法設計するのが好ましい。
【0011】
このように寸法設計すると、前記収納体が一方に最大限スライドした場合(フック孔の内周が、前記抜け止め部の少なくとも一方に当接した状態)でも、前記フック孔から前記突片が抜けないようにすることができる。しかも、両フック孔の間に前記抜け止め部が突っ張った状態となって、前記収納体が両フック孔の方向に無理に引っ張られるのが防止される。
【0012】
前記各構成においては、前記フック本体に挟み込み片を形成し、前記収納体の吊り下げの際に、この収納体が、前記突片と挟み込み片との間に挟み込まれるようにするのが好ましい。
【0013】
この収納体を挟み込むようにすることで、商品の展示の際に前記収納体が不用意にスライドするのが防止されるため、前記突片がフック孔から抜けて商品が脱落するおそれが一層小さくなる。
【0014】
また、このフックの素材は、商品を収納した収納体を吊り下げることができる強度を有するものであれば限定されないが、特に、バルカナイズドファイバーを用いるのが好ましい。
【0015】
このバルカナイズドファイバーは、木材パルプや綿を薬液処理した後に圧縮・乾燥工程を経て製造される、緻密かつ強靭な素材であって、適度な可撓性を備えている。このため、商品の重さによって変形しにくく、安定した吊り下げ状態を確保できる一方で、フックの突片を指でつまんで変形させて、前記フック孔に容易に前記突片を挿し込む(フック孔に突片を引っかける)ことができる。
【0016】
また、従来のプラスチック素材の場合は、高価な金型を用いてフック形状へ成形する必要があるのに対して、バルカナイズドファイバーの場合は、金型と比較して安価な抜き型を用いて、シート状(板状)の素材を打ち抜くことによって成形する。このため、製造コストの削減を図ることが可能となる。
【0017】
さらに、このバルカナイズドファイバーは、木材パルプ等の自然素材から製造されるので、プラスチックと比較して、使用後に廃棄する際の環境に対する負荷が小さいというメリットもある。
【発明の効果】
【0018】
この発明によると、商品等の収納体に形成した2箇所のフック孔のそれぞれに、フックの突片を挿し込むだけなので、商品の展示作業を容易に行うことができる。また、2箇所のフック孔に突片を挿し込むので、この2箇所のフック孔のいずれか一方を揺動軸として不安定に左右に揺れることがない。このため、商品が展示中に揺動して前記フック孔の周囲が傷み、その商品価値を損なうおそれが低い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明に係る小物用フックの第一の実施形態を示す斜視図であって、(a)はフック取り付け前、(b)はフック取り付け後
【図2】図1に示す小物用フックの、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A断面図
【図3】本願発明に係る小物用フックの第二の実施形態を示す正面図
【図4】本願発明に係る小物用フックの第三の実施形態を示す正面図
【図5】本願発明に係る小物用フックの第四の実施形態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る小物用フックの第一の実施形態を図1及び2に示す。この小物用フックは、商品の収納袋Bに形成したフック孔Hに、フック本体1に形成した突片2を挿し込んで、この収納袋Bを吊り下げるものであって、その素材として上述したバルカナイズドファイバー(厚みが約0.5mmの平板状)が用いられている。
【0021】
この小物用フックのフック本体1には、収納袋Bに形成した2箇所のフック孔H、Hにそれぞれ挿し込む2本の突片2、2が形成されており、この突片2の根元側に、フック孔Hの大きさ(内径)よりも大きい縦方向幅を有する抜け止め部3が形成されている。そして、収納袋Bが突片2の突出方向にスライドした際に、両突片2、2が両フック孔H、Hに挿し込まれた状態のまま、抜け止め部3がフック孔Hの少なくとも一方の内周に当接して、収納袋Bがそれ以上スライドするのが阻止されるようになっている。また、フック本体1の上部には吊り下げ部4が形成され、この吊り下げ部4で店舗等に設置されているハンガー棒に吊り下げて、商品を展示する。
【0022】
この抜け止め部3の前記スライド方向への幅と、一方の突片2の突出長さとの和d23は、収納袋Bに形成した2箇所のフック孔H、Hの間隔dHHよりも大きい(d23>dHH)。このため、収納袋Bを最大限にスライドさせた場合でも、両突片2、2が必ず両フック孔H、Hに挿し込まれた状態が保たれて、商品が脱落してしまうおそれは低い。
【0023】
また、抜け止め部3の前記スライド方向への幅dは、収納袋Bに形成した2箇所のフック孔H、Hの間隔dHHとほぼ同じである(d≒dHH)。このため、この抜け止め部3が両フック孔H、Hの間に突っ張った状態となって、この収納袋Bが両フック孔H、Hの方向に無理に引っ張られるのが防止される。
【0024】
さらに、このフック本体1には挟み込み片5が形成されており、収納袋Bの吊り下げの際に、この収納袋Bが、突片2と挟み込み片5との間に挟み込まれるようになっている。このように収納袋Bを挟み込むようにすることで、商品が脱落するのを一層防止することができる。
【0025】
この発明に係る小物用フックの第二の実施形態を図3に示す。このフックの吊り下げ部4にはスリット6が形成されていて、このスリット6の幅を拡げることによって、前記ハンガー棒へのフックの脱着を行う。その他の部分の形状及び機能は、図1及び2に示した小物用フックとほぼ同じである。
【0026】
この発明に係る小物用フックの第三の実施形態を図4に示す。このフックは、フック本体1に突片2及び抜け止め部3が形成されていて、上述した各フックと同様に、この突片2を収納袋Bのフック孔Hに挿し込んで、この収納袋Bを吊り下げるようにするものであるが、挟み込み片5が形成されていない。商品が軽量で収納袋Bの脱落のおそれが小さい場合は、この挟み込み片5を形成しない構成としても、使用上特に問題はない。また、この挟み込み片5を形成しないことにより、バルカナイズドファイバーの使用量を減らすことができるため、製造コストの低減を図ることが可能である。
【0027】
この発明に係る小物用フックの第四の実施形態を図5に示す。このフックの両突片2、2はフックの内側(フック本体1側)に向かってその先端が突出している一方で、この突片2の根元側(突片2の外側)に抜け止め部3が形成されており、図3に示したフックとは、突片2の突出方向が反対向きとなっている。このフックの使用方法は図3に示したものと同じであって、収納袋Bに形成した2箇所のフック孔H、Hに、内向きに両突片2、2を挿し込むことによって、商品を安定して吊り下げることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 フック本体
2 突片
3 抜け止め部
4 吊り下げ部
5 挟み込み片
6 スリット
B 収納体(収納袋)
H フック孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品の収納体(B)に形成したフック孔(H)に、フック本体(1)に形成した突片(2)を挿し込んで、この収納体(B)を吊り下げる小物用フックにおいて、
フック本体(1)に、前記収納体(B)に形成した2箇所のフック孔(H、H)にそれぞれ挿し込む2本の突片(2、2)を形成し、この突片(2)の根元側に、前記フック孔(H)の大きさよりも大きい幅を有する抜け止め部(3)を形成し、前記収納体(B)が前記突片(2)の突出方向にスライドした際に、前記両突片(2、2)が両フック孔(H、H)に挿し込まれた状態のまま、前記抜け止め部(3)が前記フック孔(H)の少なくとも一方の内周に当接して、それ以上のスライドが阻止されるようにしたことを特徴とする小物用フック。
【請求項2】
前記抜け止め部(3)の前記スライド方向への幅と、いずれか一方の前記突片(2)の突出長さとの和(d23)が、前記2箇所のフック孔(H、H)の間隔(dHH)よりも大きく、かつ、前記抜け止め部(3)の前記スライド方向への幅(d)が、前記間隔(dHH)の大きさ以下であることを特徴とする請求項1に記載の小物用フック。
【請求項3】
前記フック本体(1)に挟み込み片(5)を形成し、前記収納体(B)の吊り下げの際に、この収納体(B)が、前記突片(2)と挟み込み片(5)との間に挟み込まれるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の小物用フック。
【請求項4】
バルカナイズドファイバーを素材として用いたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の小物用フック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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