小細胞肺癌の判定用キット
【課題】早期診断が可能な小細胞肺癌に対する特異的な新規腫瘍マーカーを提供すること。
【解決手段】早期肺癌の診断のために有用な腫瘍マーカー候補物質の探索を目的として、ヒト肺癌由来培養細胞株の培養上清に放出されるたんぱく質・ペプチドのプロテオーム解析を行った結果、小細胞肺癌培養細胞株であるSBC3の培養上清にproNT/NMN(proNeurotensin/Neuromedin N)が放出されているが、小細胞肺癌以外の肺癌細胞株(腺癌・大細胞癌・扁平上皮癌)の培養上清にはproNT/NMNが検出されないことを見い出した。したがって、ヒトから採取した生体試料中のproNT/NMNの発現量を、proNT/NMNに対する抗体や、proNT/NMNの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブを用いて測定することにより、小細胞肺癌の診断が可能となる。
【解決手段】早期肺癌の診断のために有用な腫瘍マーカー候補物質の探索を目的として、ヒト肺癌由来培養細胞株の培養上清に放出されるたんぱく質・ペプチドのプロテオーム解析を行った結果、小細胞肺癌培養細胞株であるSBC3の培養上清にproNT/NMN(proNeurotensin/Neuromedin N)が放出されているが、小細胞肺癌以外の肺癌細胞株(腺癌・大細胞癌・扁平上皮癌)の培養上清にはproNT/NMNが検出されないことを見い出した。したがって、ヒトから採取した生体試料中のproNT/NMNの発現量を、proNT/NMNに対する抗体や、proNT/NMNの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブを用いて測定することにより、小細胞肺癌の診断が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、早期肺癌に対応できる腫瘍マーカー、詳しくは小細胞肺癌に特異的な腫瘍マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療における診断・判定として血中腫瘍マーカーの計測が挙げられる。腫瘍マーカーは腫瘍または腫瘍と反応した正常細胞が作る物質の中で、血中や尿中などに放出され腫瘍の体外診断を可能としているものである。
【0003】
上記腫瘍マーカーに関しては、乳癌患者と正常人の胸部組織に差異的に発現する遺伝子を使用した悪性腫瘍、特に乳癌を予想、診断 、予後判定、予防および処置するための新
規な組成物、方法および使用(例えば、特許文献1参照)や、肝炎ウイルスの感染に起因し慢性肝炎または肝硬変を発症した患者に対し、肝炎ウイルスに感染した患者のミトコンドリアDNAの塩基配列を評価することによって肝臓癌の発癌リスクを評価する方法(例えば、特許文献2参照)や、その遺伝子産物がCLL細胞および前立腺癌細胞の新生物性または腫瘍形成性増殖を抑制するmiR15およびmiR16のコピー数、変異状態または遺伝子発現を検出することによる慢性リンパ性白血病または前立腺癌の診断方法(例えば、特許文献3参照)や、無症候性期または初期段階の患者における発癌過程の存在を検出するのに適当な迅速な癌の診断方法や、癌患者の血清中に存在する炭酸脱水酵素IIの活性化化合物、すなわち腫瘍マーカー、該癌の診断方法によって、無症候性期または初期段階の患者の癌を検出することを特徴とする癌の処置方法;ならびに該癌の診断方法を行うためのキット(例えば、特許文献4参照)等が知られている。
【0004】
また、肺癌は小細胞癌と非小細胞癌の2つの型に大きく分類され、非小細胞癌はさらに腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌の3タイプに分類され、それぞれのタイプによって発生する部位がある程度決まっており、小細胞癌と扁平上皮癌は肺門部に、腺癌と大細胞癌は肺野部にできやすい肺癌といわれている。肺癌に関して、小細胞肺癌 (SCLC)を患う患者を治療し、またはSCLC腫瘍の存在を検出するための、比較的短いペプチド、詳細には、α−コノトキシンペプチドMIIおよびU002を使用して小細胞肺癌の存在または位置を決定することにより検出する方法(例えば、特許文献5参照)や、血清中の肺癌マーカーとして優れる血管透過性因子を測定することにより、特に化学発光検出系酵素免疫測定法を用いて高感度で測定することにより、肺癌の早期診断、さらには治療効果の判定、経過観察を行う方法(例えば、特許文献6参照)等が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−159640号公報
【特許文献2】特開2004−121029号公報
【特許文献3】特表2006−506469号公報
【特許文献4】特表2001−524815号公報
【特許文献5】特表平11−506737号公報
【特許文献6】特開平9−33531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、これまでに様々な腫瘍マーカーが開発されているが、擬陽性が多く初期の癌の検出が困難であるなど改善の余地が多く残されており、特に肺癌・膵臓癌・大腸癌など難治性の癌のマーカーの開発が求められている。更に、現在日本において肺癌は男性の癌死亡率の第1位であり、女性では胃癌に次いで第2位であることから、新たな肺癌に対する腫瘍マーカーの開発による早期診断・治療成績の向上が期待されていた。本発明の課題は、早期診断が可能な小細胞肺癌に対する特異的な新規腫瘍マーカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特に早期肺癌の診断のために有用な腫瘍マーカー候補物質の探索を目的として、ヒト肺癌由来培養細胞株の培養上清に放出されるたんぱく質・ペプチドのプロテオーム解析を行った結果、小細胞肺癌培養細胞株であるSBC3の培養上清にproNeurotensin/Neuromedin N(proNT/NMN)が放出されているが、小細胞肺癌以外の肺癌細胞株(腺癌・大細胞癌・扁平上皮癌)の培養上清にはproNT/NMNが検出されないことを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、(1)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌を判定するためのキットや、(2)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌を判定するためのキットに関する。
【0009】
また本発明は、(3)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌再発のリスクを評価するためのキットや、(4)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌再発のリスクを評価するためのキットに関する。
【0010】
さらに本発明は、(5)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのキットや、(6)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのキットに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、小細胞肺癌の判定、小細胞肺癌再発のリスク評価、抗癌剤の小細胞肺癌に対する有効性の判定、小細胞肺癌の抑制剤・治療剤のスクリーニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】SBC3培養細胞株の培養上清のMSスペクトル測定結果を示す図である。
【図2】SBC3培養上清中のタンパク質を、カラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製した際の溶出曲線を示す図である。
【図3】SBC3培養上清中のタンパク質を、カラムクロマトグラフィーを用いた分離・精製において、18−19分前後に溶出した画分のMSスペクトル測定結果を示す図である。
【図4】トリプシン消化したタンパク質断片のMSスペクトル測定結果を示す図である。
【図5】トリプシン消化したタンパク質断片のうち、MSスペクトルがm/zが1047のフラグメントに対するMS/MSスペクトル測定結果を示す図である。
【図6】本発明のproNT/NMNのアミノ酸配列を示す図である。
【図7】proNT/NMNのアミノ酸配列において、SBC3培養上清をトリプシン処理したペプチド断片についてNANOLC−ESI−LIT−TOF質量分析計で検出された配列(グレーの色付部分)を示す図である。
【図8】proNT/NMNのアミノ酸配列において、トリプシン・V8プロテアーゼ混合液で処理を行ったペプチド断片についてNANOLC−ESI−LIT−TOF質量分析計で検出された配列(グレーの色付部分)を示す図である。
【図9】proNT/NMNのアミノ酸配列において、MALDI TOF/TOF質量分析計及びNANOLC−ESI−LIT−TOF質量分析計で検出された配列(下線部分)を示す図である。
【図10】proNT/NMNの分子内構造を示す図である。
【図11】SBC−3を無血清培養した培養上清、SBC−3を血清培養した培養上清、SBC−3の細胞破砕液を泳動し、NT、Large NMNに対する抗体を用いてウエスタンブロットを行った結果を示す図である。Lane1はSBC−3を無血清培養した培養上清、Lane2はSBC−3を血清培養した培養上清、Lane3はSBC−3の細胞破砕液を泳動した。(a)SDS−PAGE後のゲルを銀染色したもの、(b)NT抗体を用いてウエスタンブロットしたもの、(c)Large NMN抗体を用いてウエスタンブロットしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の肺癌の判定方法としては、ヒトから採取した血清、痰、肺組織等の生体試料中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチド(proNT/NMN)の発現量を測定する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の肺癌の判定用キットとしては、proNT/NMNに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、また、proNT/NMNの発現量の測定方法としては、血清、痰、肺組織溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の肺癌の判定用キットを用いる、ELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT(Reverse Transcription)−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。そして、proNT/NMNの発現を検出した場合、対象者は小細胞肺癌患者と判定されることになる。
【0014】
本発明の肺癌再発のリスク評価方法としては、肺癌患者から採取した血清、痰、肺癌組織等の生体試料中のproNT/NMNの発現量を測定する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の肺癌再発のリスク評価用キットとしては、proNT/NMNに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、また、proNT/NMNの発現量の測定方法としては、血清、痰、肺癌細胞溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の小細胞肺癌再発のリスク評価用キットを用いる、ELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。そして、proNT/NMNの発現を検出した場合、対象者は小細胞肺癌が再発していると判定されることになる。
【0015】
本発明の抗癌剤の有効性の判定方法としては、抗癌剤を服用している小細胞肺癌患者から採取した血清、痰、肺癌組織等の生体試料中の、proNT/NMNの発現量を測定する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の小細胞肺癌に対する抗癌剤の有効性判定用キットとしては、proNT/NMNに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、抗癌剤の有効性を判定することにより、各患者個人に適した治療、いわゆるテーラーメイド治療が可能となる。また、上記ペプチドproNT/NMNの発現量の測定方法としては、血清、痰、肺癌細胞溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の抗癌剤の小細胞肺癌における有効性判定用キットを用いる、ELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。そして、抗癌剤の服用の結果、proNT/NMNの発現量が減少した場合、当該抗癌剤は小細胞肺癌の治療に有効であると判定されることになる。
【0016】
本発明の小細胞肺癌の抑制剤・治療剤のスクリーニング方法としては、ヒト肺小細胞癌培養細胞株(例えば、SBC3、SBC5)を、抗癌剤、抗癌候補物質、低分子化合物、天然有機高分子物質、天然の動植物の抽出物、ペプチドなどの被検物質の存在下に培養し、細胞溶解物中のproNT/NMNの発現量を測定し、被検物質の非存在下における場合と比較・評価する方法であれば特に制限されず、上記ペプチドの発現量を測定する方法としては、ヒト肺癌培養細胞株(SBC3、SBC5)の細胞溶解物を二次元電気泳動に供試して所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法の他、proNT/NMNに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を用いるELISA法等の免疫反応を利用する方法や、proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を用いるドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法を挙げることができる。そして、被検物質の存在下に培養した細胞溶解物中のproNT/NMNの発現量が、被検物質の非存在下における場合と比較して減少している場合、当該被検物質は小細胞肺癌の治療に有効な小細胞肺癌の抑制剤・治療剤である可能性が大きい。
【0017】
上記proNT/NMNに特異的に結合する抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、2つのエピトープを同時に認識することができる二機能性抗体等を例示することができる。これら抗体は、慣用のプロトコールを用いて、動物(好ましくはヒト以外)に、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチド又はエピトープを含む断片を投与することにより産生され、例えばモノクローナル抗体の調製には、連続細胞系の培養物により産生される抗体をもたらす、ハイブリドーマ法(Nature 256, 495-497, 1975)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today 4, 72, 1983)及びEBV−ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, pp.77-96, Alan R.Liss, Inc.,1985)など任意の方法を用いることができる。
【0018】
また、一本鎖抗体をつくるために、一本鎖抗体の調製法(米国特許第4,946,778 号、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,455,030号)を用いることができ、ヒト化抗体をつくるために、ヒト化抗体の調製法(米国特許第5,585,089号、Nature, 321, 522-525, 1986、Protein Engineering, 4, 773-783, 1991)を用いることができ、キメラ抗体をつくるために、キメラ抗体の調製法(米国特許第4,816,567号、Science, 229, 1202-1207, 1985、BioTechniques, 4, 214, 1986、Nature, 312, 643-646, 1984、Nature, 314, 268.270, 1985)を用いることができる。二機能性抗体は、2つの関連した抗体を産生する2つのモノクローナル細胞系同士のハイブリッド、または2つの抗体の断片の化学結合によって産生することができる。
【0019】
また、上記抗体のFab断片やF(ab’)2断片等も、上記抗体と同様に用いることができる。例えば、Fab断片は抗体をパパイン等で処理することにより、またF(ab’)2断片はペプシン等で処理することにより調製することができる。
【0020】
これら抗体に、例えば、FITC(フルオレセインイソシアネート)又はテトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光物質や、125I、32P、14C、35S又は3H等のラジオアイソトープや、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ又はフィコエリトリン等の酵素で標識したものや、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光発光タンパク質などを融合させた融合タンパク質を用いることによって、上記配列番号1に示されるアミノ酸からなるペプチドを免疫学的測定方法により測定することができる。かかる免疫学的測定方法としては、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、血球凝集反応法、オクタロニー法等の方法を挙げることができる。
【0021】
上記proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプライマーセットとしては、これらペプチドのmRNA又はcDNA(配列番号3)のうち、上流及び下流の配列の一部とハイブリダイズしうる相補的なプライマーセットであれば、プライマー配列の長さ及びmRNA又はcDNAのどの部位と相補的であるかなどは特に制限されず、例えば、これらのプライマーは、5’側又は3’側、又はその両方に、上記ペプチドのmRNA又はcDNA配列と一部に相補的ではない配列を含んでも、これらとハイブリダイズできる限り、プライマーとして用いることができる。また、非特異的な増幅を防ぐためや、適当な制限酵素認識部位を導入するために、これらのmRNA又はcDNAと相補的でないミスマッチ配列を持つプライマーを使用することができる。
【0022】
上記proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプローブとしては、これらペプチドをコードするDNA(cDNA)又はRNA(cRNA)とハイブリダイズしうるアンチセンス鎖の全部又は一部であり、プローブとして成立する程度の長さ(少なくとも20ベース以上)を有するものが好ましく、例えば、これらのプローブは、5’側又は3’側、又はその両方に、上記ペプチドのmRNA又はcDNA配列と一部に相補的ではない配列を含んでも、これらとハイブリダイズできる限り、プローブとして用いることができ、また、検出しやすいように、任意の配列を付加したものを用いることができる他、検出しやすいように5’末端を標識したものを用いることもでき、そのような標識としては、たとえば、ビオチン、蛍光、又は32Pなどを例示することができる。
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
(培養細胞株)
実施例では9種類の培養細胞株を用いた。いずれの培養細胞株もヒト肺癌由来のものであり、小細胞癌としてSBC−3、SBC−5、腺癌としてNCI−H650、NCI−H1650、大細胞癌としてNCI−H661、NCI−H1581、NCI−H460、扁平上皮癌としてNCI−H2170、NCI−H1869を用いた。SBC−3の培養上清を分析し、他の培養上清と比較することで腫瘍マーカーの候補を検索した。これらの細胞株は、American Type Culture Collection (ATCC社)又は財団法人ヒューマン振興財団から入手することができる。
【0025】
(培養上清の調整)
培養上清は以下のように回収した。各々の細胞を1×106となるよう10cmシャーレに播種し、一晩インキュベートして細胞をシャーレに接着させた。培地は10%のウシ胎児血清(fetal bovine serum:FBS)を含むRPMI1640(Sigma社製)を用いた。次にリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)で2回洗浄した後、FBSを含まないRPMI1640培地に交換した。系内にFBSが存在すると測定誤差が大きくなるため、実施例では無血清培地を使用した。RPMI1640培地で1時間インキュベートした後、培地を捨て、PBSでさらに2回洗浄し、RPMI1640培地を7ml加えた。48時間インキュベートした後この培地を回収し、実験に用いた。
【実施例2】
【0026】
(培養上清のMSスペクトル測定)
SBC3培養細胞株の培養上清のMSスペクトルを測定した。培養上清1mlに対し、ZipTip(Millipore社製)を用いて脱塩・濃縮を行い、MSスペクトルを測定した。MSスペクトルはApplied Biosystems社製4700MALDI TOF/TOF質量分析計を用いて測定した。対照として細胞と接触していない培地を上述と同様の処理を行い、MSスペクトルを測定した。結果を図1に示す。図のように培養上清では分子量1000−10000付近に培地には存在しない分子が多く観測された。これらの分子はSBC3細胞が生成し、放出したものであると考えられる。また分子量から類推すると直接MS/MSスペクトルを測定し、タンパク質の配列を決定するためには分子量が大きすぎることが分かった。
【実施例3】
【0027】
(培養上清中のタンパク質のカラムクロマトグラフィーによる分離とMSスペクトル測定)
SBC3培養上清中のタンパク質を、カラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製した。カラムクロマトグラフィーシステムとしてProteomeLab PF2D(ベックマン社製)を、カラムとしてMightysil RP−18GP250−4.6(5μm:関東化学社製)を用いた。溶出曲線を図2に示す。図のように保持時間が18−19分前後に培地には無いピークが検出された。これらの全画分を回収し、MSスペクトルを測定した。一例として18−19分前後に溶出した画分のMSスペクトルを図3に示す。図のように分子量17300前後の分子が観測された。
【実施例4】
【0028】
(タンパク質のトリプシン消化とMS/MSスペクトル測定)
カラムクロマトグラフィーで得られた18−19分前後の画分中のタンパク質をトリプシン消化し、MS/MS測定を行うことによって、タンパク質の配列を決定した。トリプシン消化は以下のように行った。得られた画分を減圧下で遠心濃縮し、0.2% RapiGest(Waters社製)を15μl加えタンパク質を溶解した。これにトリプシン溶液(8.3ng/μl、50mM 炭酸水素アンモニウム)を15μl加え37℃で1時間インキュベートした。500mM 塩酸3μlを加えて反応を停止した後、ZipTipを用いて脱塩を行い、MSスペクトルを測定した。MSスペクトルの結果を図4に示す。分子量17300前後のピークは観測されなかったことから、トリプシン消化が行われ、タンパク質が断片化していることが分かる。
【0029】
さらに上記タンパク質断片のペプチドに対し、MS/MSスペクトルの測定を行った。一例としてm/zが1047のフラグメントに対するMS/MSスペクトルを図5に示す。図のように1047の親ピークが無くなりアミノ酸単位に開裂したスペクトルが得られた。このスペクトルをデータベースと照らし合わせることによって、ペプチド配列を決定した。その結果、このペプチドの配列はQLYENKPRであることが分かった。同定されたy系列およびb系列の分子量を図5に示す。
【0030】
さらに、図4で検出されたm/zが789.5、902.6、945.6、2513.1に対して同様にペプチド配列を決定した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
これらのペプチドはアミノ酸13個からなる直鎖ペプチドであるニューロテンシンの前駆体(proNT/NMN)の一部であることが分かった。図6にproNT/NMNの配列を示す。太字で示したものが検出されたペプチドである。さらにトリプシン消化前のタンパク質の分子量は図3より17300前後と推定されていた。proNT/NMNの分子量は17225であり、高分子のマススペクトルの誤差を許容するとほぼ一致していることが分かる。以上のことよりSBC3培養上清にはproNT/NMNが放出されていることが明らかとなった。ニューロテンシン(NT)は「LYENKPRRPYIL」(配列番号2)の構造を持つ。これまでの研究によりNTはペプチドホルモンとして機能することが分かっている。しかしながらヒト肺癌由来の腫瘍細胞がNTの前駆体であるproNT/NMNを放出しているという報告が無く、本研究によってはじめて明らかとなった。一般的にペプチドホルモンは血中で不安定である場合が多く、腫瘍マーカーとしては不適切である場合が多かったが、proNT/NMNはペプチドホルモンの前駆体であるため血中安定性が高く腫瘍マーカー候補として適切である可能性が高い。
【実施例5】
【0033】
(種々の肺癌由来培養細胞の比較)
他の小細胞癌としてSBC5の培養上清を上述の方法を用いて分析したところ、SBC3と同様にproNT/NMNの放出が確認できた。さらに、3種類の大細胞癌、2種類の腺癌、2種類の扁平上皮癌ではproNT/NMNの放出は検出できなかった。以上のことよりproNT/NMNは小細胞肺癌特異的なマーカーとして期待できると言える。なお、正常者の肺由来の細胞からproNT/NMNの放出は報告されていない。
【実施例6】
【0034】
(培養上清中のタンパク質のカラムクロマトグラフィーによる分離とnanoLC−ESI−LIT−TOF質量分析)
また、SBC3培養上清を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、得られたタンパク質画分をトリプシンのみ、あるいはトリプシンとV8プロテアーゼの2種類の酵素で消化した。消化されたタンパク質断片(ペプチド)に対し、nanoLC−ESI−LIT−TOF質量分析計 NanoFrontier((株)日立ハイテクノロジーズ社製)での測定を行った。トリプシン消化は以下のように行った。
【0035】
カラムクロマトグラフィーで得られた18−19分前後の画分を減圧下で遠心濃縮し、トリプシン溶液30μl(トリプシンが0.5μg含まれた50mM炭酸水素アンモニウム溶液)を加え、37℃で18時間インキュベートし、その反応液5μlを分析した。
また、トリプシンとV8プロテアーゼの2種類の酵素での処理には、トリプシン溶液30μlのかえて、トリプシン・V8プロテアーゼ混合液30μl(トリプシンが1μg、V8プロテアーゼが1μg含まれた50mM炭酸水素アンモニウム溶液)を用いた。
【0036】
トリプシンのみで処理を行ったペプチド断片の分析結果を表2及び図7に示す。その結果、proNT/NMNの一部であるペプチド断片が検出された。同様にトリプシン・V8プロテアーゼ混合液で処理を行ったペプチド断片の分析結果を表3及び図8に示す。図9のスキーム中に下線で示したものが二種類の質量分析計を用いて検出されたペプチドである(配列番号1)。proNT/NMNのN末端およびC末端を含むほとんどの配列を検出することができた。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【実施例7】
【0039】
(Neurotensin及びLarge Neuromedin Nに対する抗体を用いたウエスタンブロット)
proNT/NMNは分子内にNeurotensin(NT)、Neuromedin N(NMN)、Large Neuromedin N(Large NMN)の配列を有する(図10)。そこで、SBC3を無血清培養した培養上清、SBC−3を血清培養した培養上清、SBC3の細胞破砕液を泳動し、NT、Large NMNに対する抗体を用いてウエスタンブロットを行った(図11)。
【0040】
その結果、SBC−3を血清培養した培養上清及びSBC−3の細胞破砕液について、proNT/NMN(分子量17225)前後に陽性バンドが検出された(赤矢印)。NT、Large NMNの分子量はこれと大きく異なることから、検出できたバンドはproNT/NMNであると言える。また細胞内でも検出できたことから細胞がproNT/NMNを生産し上清に放出したと言える。
抗体を使ってproNT/NMNが検出できたため、今後ELISAなど汎用の臨床検査を用いてもproNT/NMNが検出できる可能性を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、早期肺癌に対応できる腫瘍マーカー、詳しくは小細胞肺癌に特異的な腫瘍マーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療における診断・判定として血中腫瘍マーカーの計測が挙げられる。腫瘍マーカーは腫瘍または腫瘍と反応した正常細胞が作る物質の中で、血中や尿中などに放出され腫瘍の体外診断を可能としているものである。
【0003】
上記腫瘍マーカーに関しては、乳癌患者と正常人の胸部組織に差異的に発現する遺伝子を使用した悪性腫瘍、特に乳癌を予想、診断 、予後判定、予防および処置するための新
規な組成物、方法および使用(例えば、特許文献1参照)や、肝炎ウイルスの感染に起因し慢性肝炎または肝硬変を発症した患者に対し、肝炎ウイルスに感染した患者のミトコンドリアDNAの塩基配列を評価することによって肝臓癌の発癌リスクを評価する方法(例えば、特許文献2参照)や、その遺伝子産物がCLL細胞および前立腺癌細胞の新生物性または腫瘍形成性増殖を抑制するmiR15およびmiR16のコピー数、変異状態または遺伝子発現を検出することによる慢性リンパ性白血病または前立腺癌の診断方法(例えば、特許文献3参照)や、無症候性期または初期段階の患者における発癌過程の存在を検出するのに適当な迅速な癌の診断方法や、癌患者の血清中に存在する炭酸脱水酵素IIの活性化化合物、すなわち腫瘍マーカー、該癌の診断方法によって、無症候性期または初期段階の患者の癌を検出することを特徴とする癌の処置方法;ならびに該癌の診断方法を行うためのキット(例えば、特許文献4参照)等が知られている。
【0004】
また、肺癌は小細胞癌と非小細胞癌の2つの型に大きく分類され、非小細胞癌はさらに腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌の3タイプに分類され、それぞれのタイプによって発生する部位がある程度決まっており、小細胞癌と扁平上皮癌は肺門部に、腺癌と大細胞癌は肺野部にできやすい肺癌といわれている。肺癌に関して、小細胞肺癌 (SCLC)を患う患者を治療し、またはSCLC腫瘍の存在を検出するための、比較的短いペプチド、詳細には、α−コノトキシンペプチドMIIおよびU002を使用して小細胞肺癌の存在または位置を決定することにより検出する方法(例えば、特許文献5参照)や、血清中の肺癌マーカーとして優れる血管透過性因子を測定することにより、特に化学発光検出系酵素免疫測定法を用いて高感度で測定することにより、肺癌の早期診断、さらには治療効果の判定、経過観察を行う方法(例えば、特許文献6参照)等が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−159640号公報
【特許文献2】特開2004−121029号公報
【特許文献3】特表2006−506469号公報
【特許文献4】特表2001−524815号公報
【特許文献5】特表平11−506737号公報
【特許文献6】特開平9−33531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、これまでに様々な腫瘍マーカーが開発されているが、擬陽性が多く初期の癌の検出が困難であるなど改善の余地が多く残されており、特に肺癌・膵臓癌・大腸癌など難治性の癌のマーカーの開発が求められている。更に、現在日本において肺癌は男性の癌死亡率の第1位であり、女性では胃癌に次いで第2位であることから、新たな肺癌に対する腫瘍マーカーの開発による早期診断・治療成績の向上が期待されていた。本発明の課題は、早期診断が可能な小細胞肺癌に対する特異的な新規腫瘍マーカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特に早期肺癌の診断のために有用な腫瘍マーカー候補物質の探索を目的として、ヒト肺癌由来培養細胞株の培養上清に放出されるたんぱく質・ペプチドのプロテオーム解析を行った結果、小細胞肺癌培養細胞株であるSBC3の培養上清にproNeurotensin/Neuromedin N(proNT/NMN)が放出されているが、小細胞肺癌以外の肺癌細胞株(腺癌・大細胞癌・扁平上皮癌)の培養上清にはproNT/NMNが検出されないことを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、(1)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌を判定するためのキットや、(2)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌を判定するためのキットに関する。
【0009】
また本発明は、(3)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌再発のリスクを評価するためのキットや、(4)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌再発のリスクを評価するためのキットに関する。
【0010】
さらに本発明は、(5)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのキットや、(6)配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのキットに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、小細胞肺癌の判定、小細胞肺癌再発のリスク評価、抗癌剤の小細胞肺癌に対する有効性の判定、小細胞肺癌の抑制剤・治療剤のスクリーニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】SBC3培養細胞株の培養上清のMSスペクトル測定結果を示す図である。
【図2】SBC3培養上清中のタンパク質を、カラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製した際の溶出曲線を示す図である。
【図3】SBC3培養上清中のタンパク質を、カラムクロマトグラフィーを用いた分離・精製において、18−19分前後に溶出した画分のMSスペクトル測定結果を示す図である。
【図4】トリプシン消化したタンパク質断片のMSスペクトル測定結果を示す図である。
【図5】トリプシン消化したタンパク質断片のうち、MSスペクトルがm/zが1047のフラグメントに対するMS/MSスペクトル測定結果を示す図である。
【図6】本発明のproNT/NMNのアミノ酸配列を示す図である。
【図7】proNT/NMNのアミノ酸配列において、SBC3培養上清をトリプシン処理したペプチド断片についてNANOLC−ESI−LIT−TOF質量分析計で検出された配列(グレーの色付部分)を示す図である。
【図8】proNT/NMNのアミノ酸配列において、トリプシン・V8プロテアーゼ混合液で処理を行ったペプチド断片についてNANOLC−ESI−LIT−TOF質量分析計で検出された配列(グレーの色付部分)を示す図である。
【図9】proNT/NMNのアミノ酸配列において、MALDI TOF/TOF質量分析計及びNANOLC−ESI−LIT−TOF質量分析計で検出された配列(下線部分)を示す図である。
【図10】proNT/NMNの分子内構造を示す図である。
【図11】SBC−3を無血清培養した培養上清、SBC−3を血清培養した培養上清、SBC−3の細胞破砕液を泳動し、NT、Large NMNに対する抗体を用いてウエスタンブロットを行った結果を示す図である。Lane1はSBC−3を無血清培養した培養上清、Lane2はSBC−3を血清培養した培養上清、Lane3はSBC−3の細胞破砕液を泳動した。(a)SDS−PAGE後のゲルを銀染色したもの、(b)NT抗体を用いてウエスタンブロットしたもの、(c)Large NMN抗体を用いてウエスタンブロットしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の肺癌の判定方法としては、ヒトから採取した血清、痰、肺組織等の生体試料中の、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチド(proNT/NMN)の発現量を測定する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の肺癌の判定用キットとしては、proNT/NMNに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、また、proNT/NMNの発現量の測定方法としては、血清、痰、肺組織溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の肺癌の判定用キットを用いる、ELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT(Reverse Transcription)−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。そして、proNT/NMNの発現を検出した場合、対象者は小細胞肺癌患者と判定されることになる。
【0014】
本発明の肺癌再発のリスク評価方法としては、肺癌患者から採取した血清、痰、肺癌組織等の生体試料中のproNT/NMNの発現量を測定する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の肺癌再発のリスク評価用キットとしては、proNT/NMNに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、また、proNT/NMNの発現量の測定方法としては、血清、痰、肺癌細胞溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の小細胞肺癌再発のリスク評価用キットを用いる、ELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。そして、proNT/NMNの発現を検出した場合、対象者は小細胞肺癌が再発していると判定されることになる。
【0015】
本発明の抗癌剤の有効性の判定方法としては、抗癌剤を服用している小細胞肺癌患者から採取した血清、痰、肺癌組織等の生体試料中の、proNT/NMNの発現量を測定する方法であれば特に制限されるものではなく、また本発明の小細胞肺癌に対する抗癌剤の有効性判定用キットとしては、proNT/NMNに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたキットや、proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたキットであれば特に制限されるものではなく、抗癌剤の有効性を判定することにより、各患者個人に適した治療、いわゆるテーラーメイド治療が可能となる。また、上記ペプチドproNT/NMNの発現量の測定方法としては、血清、痰、肺癌細胞溶解物等を対象サンプルとして、上記本発明の抗癌剤の小細胞肺癌における有効性判定用キットを用いる、ELISA法等の免疫反応を利用する方法や、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法の他、二次元電気泳動に供試して、所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法を挙げることができる。そして、抗癌剤の服用の結果、proNT/NMNの発現量が減少した場合、当該抗癌剤は小細胞肺癌の治療に有効であると判定されることになる。
【0016】
本発明の小細胞肺癌の抑制剤・治療剤のスクリーニング方法としては、ヒト肺小細胞癌培養細胞株(例えば、SBC3、SBC5)を、抗癌剤、抗癌候補物質、低分子化合物、天然有機高分子物質、天然の動植物の抽出物、ペプチドなどの被検物質の存在下に培養し、細胞溶解物中のproNT/NMNの発現量を測定し、被検物質の非存在下における場合と比較・評価する方法であれば特に制限されず、上記ペプチドの発現量を測定する方法としては、ヒト肺癌培養細胞株(SBC3、SBC5)の細胞溶解物を二次元電気泳動に供試して所定箇所に現れるスポットの大きさを測定する方法の他、proNT/NMNに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を用いるELISA法等の免疫反応を利用する方法や、proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を用いるドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT−PCR法等の発現している遺伝子を転写レベルで検出する方法を挙げることができる。そして、被検物質の存在下に培養した細胞溶解物中のproNT/NMNの発現量が、被検物質の非存在下における場合と比較して減少している場合、当該被検物質は小細胞肺癌の治療に有効な小細胞肺癌の抑制剤・治療剤である可能性が大きい。
【0017】
上記proNT/NMNに特異的に結合する抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、2つのエピトープを同時に認識することができる二機能性抗体等を例示することができる。これら抗体は、慣用のプロトコールを用いて、動物(好ましくはヒト以外)に、配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチド又はエピトープを含む断片を投与することにより産生され、例えばモノクローナル抗体の調製には、連続細胞系の培養物により産生される抗体をもたらす、ハイブリドーマ法(Nature 256, 495-497, 1975)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today 4, 72, 1983)及びEBV−ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, pp.77-96, Alan R.Liss, Inc.,1985)など任意の方法を用いることができる。
【0018】
また、一本鎖抗体をつくるために、一本鎖抗体の調製法(米国特許第4,946,778 号、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,455,030号)を用いることができ、ヒト化抗体をつくるために、ヒト化抗体の調製法(米国特許第5,585,089号、Nature, 321, 522-525, 1986、Protein Engineering, 4, 773-783, 1991)を用いることができ、キメラ抗体をつくるために、キメラ抗体の調製法(米国特許第4,816,567号、Science, 229, 1202-1207, 1985、BioTechniques, 4, 214, 1986、Nature, 312, 643-646, 1984、Nature, 314, 268.270, 1985)を用いることができる。二機能性抗体は、2つの関連した抗体を産生する2つのモノクローナル細胞系同士のハイブリッド、または2つの抗体の断片の化学結合によって産生することができる。
【0019】
また、上記抗体のFab断片やF(ab’)2断片等も、上記抗体と同様に用いることができる。例えば、Fab断片は抗体をパパイン等で処理することにより、またF(ab’)2断片はペプシン等で処理することにより調製することができる。
【0020】
これら抗体に、例えば、FITC(フルオレセインイソシアネート)又はテトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光物質や、125I、32P、14C、35S又は3H等のラジオアイソトープや、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ又はフィコエリトリン等の酵素で標識したものや、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光発光タンパク質などを融合させた融合タンパク質を用いることによって、上記配列番号1に示されるアミノ酸からなるペプチドを免疫学的測定方法により測定することができる。かかる免疫学的測定方法としては、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、血球凝集反応法、オクタロニー法等の方法を挙げることができる。
【0021】
上記proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプライマーセットとしては、これらペプチドのmRNA又はcDNA(配列番号3)のうち、上流及び下流の配列の一部とハイブリダイズしうる相補的なプライマーセットであれば、プライマー配列の長さ及びmRNA又はcDNAのどの部位と相補的であるかなどは特に制限されず、例えば、これらのプライマーは、5’側又は3’側、又はその両方に、上記ペプチドのmRNA又はcDNA配列と一部に相補的ではない配列を含んでも、これらとハイブリダイズできる限り、プライマーとして用いることができる。また、非特異的な増幅を防ぐためや、適当な制限酵素認識部位を導入するために、これらのmRNA又はcDNAと相補的でないミスマッチ配列を持つプライマーを使用することができる。
【0022】
上記proNT/NMNのmRNAの存在を検出するためのプローブとしては、これらペプチドをコードするDNA(cDNA)又はRNA(cRNA)とハイブリダイズしうるアンチセンス鎖の全部又は一部であり、プローブとして成立する程度の長さ(少なくとも20ベース以上)を有するものが好ましく、例えば、これらのプローブは、5’側又は3’側、又はその両方に、上記ペプチドのmRNA又はcDNA配列と一部に相補的ではない配列を含んでも、これらとハイブリダイズできる限り、プローブとして用いることができ、また、検出しやすいように、任意の配列を付加したものを用いることができる他、検出しやすいように5’末端を標識したものを用いることもでき、そのような標識としては、たとえば、ビオチン、蛍光、又は32Pなどを例示することができる。
【0023】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
(培養細胞株)
実施例では9種類の培養細胞株を用いた。いずれの培養細胞株もヒト肺癌由来のものであり、小細胞癌としてSBC−3、SBC−5、腺癌としてNCI−H650、NCI−H1650、大細胞癌としてNCI−H661、NCI−H1581、NCI−H460、扁平上皮癌としてNCI−H2170、NCI−H1869を用いた。SBC−3の培養上清を分析し、他の培養上清と比較することで腫瘍マーカーの候補を検索した。これらの細胞株は、American Type Culture Collection (ATCC社)又は財団法人ヒューマン振興財団から入手することができる。
【0025】
(培養上清の調整)
培養上清は以下のように回収した。各々の細胞を1×106となるよう10cmシャーレに播種し、一晩インキュベートして細胞をシャーレに接着させた。培地は10%のウシ胎児血清(fetal bovine serum:FBS)を含むRPMI1640(Sigma社製)を用いた。次にリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)で2回洗浄した後、FBSを含まないRPMI1640培地に交換した。系内にFBSが存在すると測定誤差が大きくなるため、実施例では無血清培地を使用した。RPMI1640培地で1時間インキュベートした後、培地を捨て、PBSでさらに2回洗浄し、RPMI1640培地を7ml加えた。48時間インキュベートした後この培地を回収し、実験に用いた。
【実施例2】
【0026】
(培養上清のMSスペクトル測定)
SBC3培養細胞株の培養上清のMSスペクトルを測定した。培養上清1mlに対し、ZipTip(Millipore社製)を用いて脱塩・濃縮を行い、MSスペクトルを測定した。MSスペクトルはApplied Biosystems社製4700MALDI TOF/TOF質量分析計を用いて測定した。対照として細胞と接触していない培地を上述と同様の処理を行い、MSスペクトルを測定した。結果を図1に示す。図のように培養上清では分子量1000−10000付近に培地には存在しない分子が多く観測された。これらの分子はSBC3細胞が生成し、放出したものであると考えられる。また分子量から類推すると直接MS/MSスペクトルを測定し、タンパク質の配列を決定するためには分子量が大きすぎることが分かった。
【実施例3】
【0027】
(培養上清中のタンパク質のカラムクロマトグラフィーによる分離とMSスペクトル測定)
SBC3培養上清中のタンパク質を、カラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製した。カラムクロマトグラフィーシステムとしてProteomeLab PF2D(ベックマン社製)を、カラムとしてMightysil RP−18GP250−4.6(5μm:関東化学社製)を用いた。溶出曲線を図2に示す。図のように保持時間が18−19分前後に培地には無いピークが検出された。これらの全画分を回収し、MSスペクトルを測定した。一例として18−19分前後に溶出した画分のMSスペクトルを図3に示す。図のように分子量17300前後の分子が観測された。
【実施例4】
【0028】
(タンパク質のトリプシン消化とMS/MSスペクトル測定)
カラムクロマトグラフィーで得られた18−19分前後の画分中のタンパク質をトリプシン消化し、MS/MS測定を行うことによって、タンパク質の配列を決定した。トリプシン消化は以下のように行った。得られた画分を減圧下で遠心濃縮し、0.2% RapiGest(Waters社製)を15μl加えタンパク質を溶解した。これにトリプシン溶液(8.3ng/μl、50mM 炭酸水素アンモニウム)を15μl加え37℃で1時間インキュベートした。500mM 塩酸3μlを加えて反応を停止した後、ZipTipを用いて脱塩を行い、MSスペクトルを測定した。MSスペクトルの結果を図4に示す。分子量17300前後のピークは観測されなかったことから、トリプシン消化が行われ、タンパク質が断片化していることが分かる。
【0029】
さらに上記タンパク質断片のペプチドに対し、MS/MSスペクトルの測定を行った。一例としてm/zが1047のフラグメントに対するMS/MSスペクトルを図5に示す。図のように1047の親ピークが無くなりアミノ酸単位に開裂したスペクトルが得られた。このスペクトルをデータベースと照らし合わせることによって、ペプチド配列を決定した。その結果、このペプチドの配列はQLYENKPRであることが分かった。同定されたy系列およびb系列の分子量を図5に示す。
【0030】
さらに、図4で検出されたm/zが789.5、902.6、945.6、2513.1に対して同様にペプチド配列を決定した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
これらのペプチドはアミノ酸13個からなる直鎖ペプチドであるニューロテンシンの前駆体(proNT/NMN)の一部であることが分かった。図6にproNT/NMNの配列を示す。太字で示したものが検出されたペプチドである。さらにトリプシン消化前のタンパク質の分子量は図3より17300前後と推定されていた。proNT/NMNの分子量は17225であり、高分子のマススペクトルの誤差を許容するとほぼ一致していることが分かる。以上のことよりSBC3培養上清にはproNT/NMNが放出されていることが明らかとなった。ニューロテンシン(NT)は「LYENKPRRPYIL」(配列番号2)の構造を持つ。これまでの研究によりNTはペプチドホルモンとして機能することが分かっている。しかしながらヒト肺癌由来の腫瘍細胞がNTの前駆体であるproNT/NMNを放出しているという報告が無く、本研究によってはじめて明らかとなった。一般的にペプチドホルモンは血中で不安定である場合が多く、腫瘍マーカーとしては不適切である場合が多かったが、proNT/NMNはペプチドホルモンの前駆体であるため血中安定性が高く腫瘍マーカー候補として適切である可能性が高い。
【実施例5】
【0033】
(種々の肺癌由来培養細胞の比較)
他の小細胞癌としてSBC5の培養上清を上述の方法を用いて分析したところ、SBC3と同様にproNT/NMNの放出が確認できた。さらに、3種類の大細胞癌、2種類の腺癌、2種類の扁平上皮癌ではproNT/NMNの放出は検出できなかった。以上のことよりproNT/NMNは小細胞肺癌特異的なマーカーとして期待できると言える。なお、正常者の肺由来の細胞からproNT/NMNの放出は報告されていない。
【実施例6】
【0034】
(培養上清中のタンパク質のカラムクロマトグラフィーによる分離とnanoLC−ESI−LIT−TOF質量分析)
また、SBC3培養上清を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、得られたタンパク質画分をトリプシンのみ、あるいはトリプシンとV8プロテアーゼの2種類の酵素で消化した。消化されたタンパク質断片(ペプチド)に対し、nanoLC−ESI−LIT−TOF質量分析計 NanoFrontier((株)日立ハイテクノロジーズ社製)での測定を行った。トリプシン消化は以下のように行った。
【0035】
カラムクロマトグラフィーで得られた18−19分前後の画分を減圧下で遠心濃縮し、トリプシン溶液30μl(トリプシンが0.5μg含まれた50mM炭酸水素アンモニウム溶液)を加え、37℃で18時間インキュベートし、その反応液5μlを分析した。
また、トリプシンとV8プロテアーゼの2種類の酵素での処理には、トリプシン溶液30μlのかえて、トリプシン・V8プロテアーゼ混合液30μl(トリプシンが1μg、V8プロテアーゼが1μg含まれた50mM炭酸水素アンモニウム溶液)を用いた。
【0036】
トリプシンのみで処理を行ったペプチド断片の分析結果を表2及び図7に示す。その結果、proNT/NMNの一部であるペプチド断片が検出された。同様にトリプシン・V8プロテアーゼ混合液で処理を行ったペプチド断片の分析結果を表3及び図8に示す。図9のスキーム中に下線で示したものが二種類の質量分析計を用いて検出されたペプチドである(配列番号1)。proNT/NMNのN末端およびC末端を含むほとんどの配列を検出することができた。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【実施例7】
【0039】
(Neurotensin及びLarge Neuromedin Nに対する抗体を用いたウエスタンブロット)
proNT/NMNは分子内にNeurotensin(NT)、Neuromedin N(NMN)、Large Neuromedin N(Large NMN)の配列を有する(図10)。そこで、SBC3を無血清培養した培養上清、SBC−3を血清培養した培養上清、SBC3の細胞破砕液を泳動し、NT、Large NMNに対する抗体を用いてウエスタンブロットを行った(図11)。
【0040】
その結果、SBC−3を血清培養した培養上清及びSBC−3の細胞破砕液について、proNT/NMN(分子量17225)前後に陽性バンドが検出された(赤矢印)。NT、Large NMNの分子量はこれと大きく異なることから、検出できたバンドはproNT/NMNであると言える。また細胞内でも検出できたことから細胞がproNT/NMNを生産し上清に放出したと言える。
抗体を使ってproNT/NMNが検出できたため、今後ELISAなど汎用の臨床検査を用いてもproNT/NMNが検出できる可能性を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌を判定するためのキット。
【請求項2】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌を判定するためのキット。
【請求項3】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌再発のリスクを評価するためのキット。
【請求項4】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌再発のリスクを評価するためのキット。
【請求項5】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのキット。
【請求項6】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのキット。
【請求項1】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌を判定するためのキット。
【請求項2】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌を判定するためのキット。
【請求項3】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌再発のリスクを評価するためのキット。
【請求項4】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌再発のリスクを評価するためのキット。
【請求項5】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのキット。
【請求項6】
配列番号1に示されたアミノ酸配列からなるペプチドのmRNAの存在を検出するためのプライマーセット若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする小細胞肺癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−215589(P2012−215589A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171437(P2012−171437)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【分割の表示】特願2007−86831(P2007−86831)の分割
【原出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【分割の表示】特願2007−86831(P2007−86831)の分割
【原出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【Fターム(参考)】
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