説明

小胞体ストレス関連疾患の治療薬および予防薬

【課題】神経細胞における小胞体ストレス関連疾患の治療および/または予防のための、薬学的組成物を提供することを本発明の課題とする。
【解決手段】プラノプロフェンなどのNSAIDsが神経細胞に細胞死をもたらすというような副作用を伴うことなく、小胞体ストレス関連疾患の処置および/または予防に有効であることを示すことによって、本発明が完成された。従って、本発明によって、アルツハイマー病、パーキンソン病、および、脳虚血のような神経細胞の小胞体ストレス関連疾患の治療剤および予防剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小胞体(ER)関連疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、および、脳虚血のような中枢神経(CNS)疾患)の治療薬に関連する。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、発熱、疼痛、および、炎症の処置における治療剤として広範に使用されている。その一方で、これらの効果に加えて、近年、非ステロイド性抗炎症薬が他の作用を有することも示唆されている。臨床実験の結果、いくつかの非ステロイド性抗炎症薬が癌の処置および治療に有効であることが示されている(非特許文献1)。さらに、疫病学の研究の結果、非ステロイド性抗炎症薬がアルツハイマー病(非特許文献2)およびパーキンソン病(非特許文献3)のリスクの軽減に関連することが示されている。しかしながら、非ステロイド性抗炎症薬の全てがアルツハイマー病やパーキンソン病に有効であるのか、または、どのようなメカニズムによって非ステロイド性抗炎症薬のいくつかがこれら疾患に対して効果を有するのかは不明である。また、胃細胞にNSAIDsを使用した場合には細胞死をもたらすことが報告されていることから、このような望まれない副作用を克服することもNSAIDsを用いる場合の課題とされている。
【0003】
その一方で、ER中の折りたたまれていないタンパク質および凝集物の蓄積は、ERストレスをもたらす。中程度のERストレスは、UPR(unfolded protein response)およびERに関連する分解のような、多くのレスキュー応答をもたらす(非特許文献4)。UPRはERに存在するキナーゼであるIRE1によってトリガーされるシグナル伝達経路の活性化によって特徴付けられる(非特許文献5)。IRE1の活性化は、Xボックス結合タンパク質(XBP−1)mRNAスプライシングの活性化を誘導する。スプライスされたXBP−1タンパク質は、転写因子として機能し、ERストレス遺伝子(例えば、タンパク質のフォールディングに関連するER分子シャペロンであるGRP78)を誘導する(非特許文献6)。他方、ERストレスは、アポトーシス促進性の転写因子であるCHOPの誘導を増加することによって、細胞死を誘導できる(非特許文献7,8)。
【0004】
しかしながら、非ステロイド性抗炎症薬によってERストレスが緩和され、その結果、ER関連疾患が治療され得るか否かについては知られておらず、また、どのような非ステロイド性抗炎症薬がERストレスに対して効果を有するかについても知られていない。
【非特許文献1】C.M. Ulrich, J. Bigler, J.D. Potter, Non-steroidal anti-inflammatory drugs for cancer prevention: promise, perils and pharmacogenetics. Nat. Rev. Cancer 6 (2006) 130-140.
【非特許文献2】P.P. Zandi, J.C. Breitner, Do NSAIDs prevent Alzheimer's disease? And, if so, why? The epidemiological evidence. Neurobiol. Aging 22 (2001) 811-817.
【非特許文献3】M. Asanuma, I. Miyazaki, N. Ogawa, Neuroprotective effects of nonsteroidal anti-inflammatory drugs on neurodegenerative diseases. Curr. Pharm. Des. 10 (2004) 695-700.
【非特許文献4】K. Mori, Tripartite management of unfolded proteins in the endoplasmic reticulum. Cell 101 (2000) 451-454.
【非特許文献5】X.Z. Wang, H.P. Harding, Y. Zhang, E.M. Jolicoeur, M. Kuroda, D. Ron, Cloning of mammalian Ire1 reveals diversity in the ER stress responses. EMBO J. 17 (1998) 5708-5717.
【非特許文献6】H. Yoshida, T. Matsui, A. Yamamoto, T. Okada, K. Mori, XBP1 mRNA is induced by ATF6 and spliced by IRE1 in response to ER stress to produce a highly active transcription factor. Cell 107 (2001) 881-891.
【非特許文献7】H. Zinszner, M. Kuroda, X. Wang, N. Batchvarova, R.T. Lightfoot, H. Remotti, J.L. Stevens, D. Ron, CHOP is implicated in programmed cell death in response to impaired function of the endoplasmic reticulum. Genes Dev. 12 (1998) 982-995.
【非特許文献8】K. Hyoda, T. Hosoi, N. Horie, Y. Okuma, K. Ozawa, Y. Nomura, PI3K-Akt inactivation induced CHOP expression in endoplasmic reticulum-stressed cells. Biochem. Biophys. Res. Commun. 340 (2006) 286-290.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小胞体(ER)関連疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、および、脳虚血のような中枢神経(CNS)疾患)の治療薬を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、プラノプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症性化合物が、優れた小胞体(ER)関連疾患治療薬であり、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳虚血、糖尿病、嚢胞性線維症、虚血性疾患、および、神経変性疾患のような中枢神経(CNS)(例えば、神経細胞やグリア細胞)の疾患の治療に有用であることを見出して、解決された。
【0007】
具体的には、本発明は、以下を提供する。
【0008】
(項目1) 有効量の非ステロイド性抗炎症性化合物を含有する、グリア細胞における小胞体ストレス関連疾患の治療および/または予防のための、薬学的組成物であって、ここで、該非ステロイド性抗炎症性化合物が、プラノプロフェン、チアプロフェン酸、オキサプロジン、ロキソプロフェンナトリウム、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、アンフェナクナトリウム、ナブメトン、フルルビプロフェン、(s)−(+)−イブプロフェン、ナプロキセン、アセメタシン、インドメタシン、インドメタシンファルネシル、マレイン酸プログルメタシン、スリンダク、エトドラク、モフェゾラク、アンピロキシカム、テノキシカム、メロキシカム、ロルノキシカム、メフェナム酸、フルフェナム酸、エピリゾール、塩酸チアラミド、およびエモルファゾンからなる群から選択される、薬学的組成物。
【0009】
(項目2) 前記小胞体ストレス関連疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳虚血、糖尿病、嚢胞性線維症、虚血性疾患、神経変性疾患、肥満、躁鬱病、および、ガンからなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【0010】
(項目3) 前記小胞体ストレス関連疾患が、アルツハイマー病である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【0011】
(項目4) 前記小胞体ストレス関連疾患が、パーキンソン病である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【0012】
(項目5) 前記小胞体ストレス関連疾患が、脳虚血である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【0013】
(項目6) 前記小胞体ストレス関連疾患が、糖尿病である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【0014】
(項目7) 前記小胞体ストレス関連疾患が、嚢胞性線維症である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【0015】
(項目8) 前記小胞体ストレス関連疾患が、虚血性疾患である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【0016】
(項目9) 前記小胞体ストレス関連疾患が、神経変性疾患である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【0017】
(項目10) 前記小胞体ストレス関連疾患が、肥満である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【0018】
(項目11) 前記小胞体ストレス関連疾患が、躁鬱病である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【0019】
(項目12) 前記小胞体ストレス関連疾患が、ガンである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【0020】

(項目13) 神経細胞における小胞体ストレス関連疾患の治療剤および/または予防剤を製造するための、有効量の非ステロイド性抗炎症性化合物の使用であって、ここで、該非ステロイド性抗炎症性化合物が、プラノプロフェン、チアプロフェン酸、オキサプロジン、ロキソプロフェンナトリウム、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、アンフェナクナトリウム、ナブメトン、フルルビプロフェン、(s)−(+)−イブプロフェン、ナプロキセン、アセメタシン、インドメタシン、インドメタシンファルネシル、マレイン酸プログルメタシン、スリンダク、エトドラク、モフェゾラク、アンピロキシカム、テノキシカム、メロキシカム、ロルノキシカム、メフェナム酸、フルフェナム酸、エピリゾール、塩酸チアラミド、およびエモルファゾンからなる群から選択される、使用。
【0021】
(項目14) 前記小胞体ストレス関連疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳虚血、糖尿病、嚢胞性線維症、虚血性疾患、神経変性疾患、肥満、躁鬱病、および、ガンからなる群から選択される、請求項13に記載の使用。
【0022】
(項目15) 前記小胞体ストレス関連疾患が、アルツハイマー病である、請求項14に記載の使用。
【0023】
(項目16) 前記小胞体ストレス関連疾患が、パーキンソン病である、請求項14に記載の使用。
【0024】
(項目17) 前記小胞体ストレス関連疾患が、脳虚血である、請求項14に記載の使用。
【0025】
(項目18) 前記小胞体ストレス関連疾患が、糖尿病である、請求項14に記載の使用。
【0026】
(項目19) 前記小胞体ストレス関連疾患が、嚢胞性線維症である、請求項14に記載の使用。
【0027】
(項目20) 前記小胞体ストレス関連疾患が、虚血性疾患である、請求項14に記載の使用。
【0028】
(項目21) 前記小胞体ストレス関連疾患が、神経変性疾患である、請求項14に記載の使用。
【0029】
(項目22) 前記小胞体ストレス関連疾患が、肥満である、請求項14に記載の使用。
【0030】
(項目23) 前記小胞体ストレス関連疾患が、躁鬱病である、請求項14に記載の使用。
【0031】
(項目24) 前記小胞体ストレス関連疾患が、ガンである、請求項14に記載の使用。
【発明の効果】
【0032】
本発明に従って、小胞体ストレス関連疾患の治療薬および、小胞体ストレス関連疾患の製造のための化合物の使用方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0034】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0035】
本明細書において使用される用語「プラノプロフェン」とは、以下の式:
【0036】
【化1】

を有する化合物およびその鏡像異性体ならびにこれらの塩をいう。
【0037】
本明細書において使用される用語「ジクロフェナクナトリウム」とは、以下の式:
【0038】
【化2】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0039】
本明細書において使用される用語「フルルビプロフェン」とは、以下の式:
【0040】
【化3】

を有する化合物およびその鏡像異性体ならびにこれらの塩をいう。
【0041】
本明細書において使用される用語「アセメタシン」とは、以下の式:
【0042】
【化4】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0043】
本明細書において使用される用語「メフェナム酸」とは、以下の式:
【0044】
【化5】


を有する化合物およびその塩をいう。
【0045】
本明細書において使用される用語「エピリゾール」とは、以下の式:
【0046】
【化6】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0047】
本明細書において使用される用語「(s)−(+)−イブプロフェン」とは、以下の式:
【0048】
【化7】

を有する化合物およびその鏡像異性体ならびにこれらの塩をいう。
【0049】
本明細書において使用される用語「チアプロフェン酸」とは、以下の式:
【0050】
【化8】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0051】
本明細書において使用される用語「オキサプロジン」とは、以下の式:
【0052】
【化9】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0053】
本明細書において使用される用語「ロキソプロフェンナトリウム」とは、以下の式:
【0054】
【化10】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0055】
本明細書において使用される用語「アルミノプロフェン」とは、以下の式:
【0056】
【化11】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0057】
本明細書において使用される用語「ザルトプロフェン」とは、以下の式:
【0058】
【化12】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0059】
本明細書において使用される用語「アンフェナクナトリウム」とは、以下の式:
【0060】
【化13】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0061】
本明細書において使用される用語「ナブメトン」とは、以下の式:
【0062】
【化14】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0063】
本明細書において使用される用語「ナプロキセン」とは、以下の式:
【0064】
【化15】

を有する化合物およびその鏡像異性体ならびにこれらの塩をいう。
【0065】
本明細書において使用される用語「インドメタシン」とは、以下の式:
【0066】
【化16】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0067】
本明細書において使用される用語「インドメタシンファルネシル」とは、以下の式:
【0068】
【化17】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0069】
本明細書において使用される用語「マレイン酸プログルメタシン」とは、以下の式:
【0070】
【化18】

を有する化合物およびその鏡像異性体ならびにこれらの塩をいう。
【0071】
本明細書において使用される用語「スリンダク」とは、以下の式:
【0072】
【化19】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0073】
本明細書において使用される用語「エトドラク」とは、以下の式:
【0074】
【化20】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0075】
本明細書において使用される用語「モフェゾラク」とは、以下の式:
【0076】
【化21】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0077】
本明細書において使用される用語「アンピロキシカム」とは、以下の式:
【0078】
【化22】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0079】
本明細書において使用される用語「テノキシカム」とは、以下の式:
【0080】
【化23】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0081】
本明細書において使用される用語「メロキシカム」とは、以下の式:
【0082】
【化24】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0083】
本明細書において使用される用語「ロルノキシカム」とは、以下の式:
【0084】
【化25】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0085】
本明細書において使用される用語「フルフェナム酸」または「フルフェナム酸アルミニウム」とは、以下の式:
【0086】
【化26】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0087】
本明細書において使用される用語「塩酸チアラミド」とは、以下の式:
【0088】
【化27】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0089】
本明細書において使用される用語「エモルファゾン」とは、以下の式:
【0090】
【化28】

を有する化合物およびその塩をいう。
【0091】
本明細書において使用される用語「小胞体」とは、真核細胞貿中の,細管あるいは扁平嚢(槽)の網状の広がりをいう。小胞体の中には、リボゾームが付着しているものと、付着していないものがある。
【0092】
本明細書において使用される用語「小胞体ストレス関連疾患」とは、小胞体の異常、特に、タンパク質生合成における異常によって引き起こされる疾患をいう。小胞体ストレス関連疾患としては、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳虚血、糖尿病、嚢胞性線維症、虚血性疾患、および、神経変性疾患が挙げられるが、これに限定されない。
【0093】
本明細書において使用される用語「非ステロイド性抗炎症性化合物」とは、シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有する抗炎症剤をいい、シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有する抗炎症剤の有効成分は、好適には、シクロオキシゲナーゼ阻害試験におけるIC50値が100μM以下(好適には、10μM以下)である化合物をいう。
【0094】
本明細書において使用される場合、「キット」とは、複数の容器、および製造業者の指示書を含み、そして各々の容器が、本発明の薬学的組成物、その他の薬剤、およびキャリアを含む製品をいう。
【0095】
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または薬学的アジュバント。
【0096】
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間−1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0097】
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
【0098】
(薬学的組成物)
本明細書において薬剤の「有効量」とは、その薬剤が目的とする薬効を発現することができる量をいう。本明細書において、そのような有効量のうち、最小の濃度を最小有効量ということがある。そのような最小有効量は、当該分野において周知であり、通常、薬剤の最小有効量は当業者によって決定されているか、または当業者は適宜決定することができる。そのような有効量の決定には、実際の投与のほか、動物モデルなどを用いることも可能である。本発明はまた、このような有効量を決定する際に有用である。
【0099】
成人(体重60kg)におけるプラノプロフェンの有効量は、好ましくは、0.025〜752mg/kg/日、より好ましくは、0.25〜75mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.83〜22.5mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるチアプロフェン酸の有効量は、好ましくは0.067〜2004mg/kg/日、より好ましくは、0.67〜200mg/kg/日、さらにより好ましくは、2.22〜60mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるオキサプロジンの有効量は、好ましくは0.13〜2004mg/kg/日、より好ましくは、1.33〜200mg/kg/日、さらにより好ましくは、4.44〜60mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるロキソプロフェンナトリウムの有効量は、好ましくは0.02〜601mg/kg/日、より好ましくは、0.2〜60mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.67〜18mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるアルミノプロフェンの有効量は、好ましくは0.067〜2004mg/kg/日、より好ましくは、0.67〜200mg/kg/日、さらにより好ましくは、2.22〜60mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるザルトプロフェンの有効量は、好ましくは0.026〜802mg/kg/日、より好ましくは、0.26〜80mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.89〜24mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるジクロフェナクトナトリウムの有効量は、好ましくは、0.008〜334mg/kg/日、より好ましくは、0.08〜33mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.28〜10mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるアンフェナクナトリウムの有効量は、好ましくは0.017〜668mg/kg/日、より好ましくは、0.17〜67mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.56〜20mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるナブメトンの有効量は、好ましくは0.13〜2672mg/kg/日、より好ましくは、1.33〜267mg/kg/日、さらにより好ましくは、4.44〜80mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるフルルビプロフェンの有効量は、好ましくは、0.013〜401mg/kg/日、より好ましくは、0.13〜40mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.44〜12mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるイブプロフェンの有効量は、好ましくは、0.067〜2004mg/kg/日、より好ましくは、0.67〜200mg/kg/日、さらにより好ましくは、2.22〜60mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるナプロキセンの有効量は、0.13〜2672mg/kg/日、より好ましくは、1.33〜267mg/kg/日、さらにより好ましくは、4.44〜80mg/kg/日である。
成人(体重60kg)におけるアセメタシンの有効量は、好ましくは、0.020〜601mg/kg/日、より好ましくは、0.20〜60mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.67〜18mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるインドメタシンの有効量は、好ましくは0.0083〜251mg/kg/日、より好ましくは、0.083〜25mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.28〜7.5mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるインドメタシンファルネシルの有効量は、好ましくは0.033〜668mg/kg/日、より好ましくは、0.33〜67mg/kg/日、さらにより好ましくは、1.11〜20mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるマレイン酸プログルメタシンの有効量は、好ましくは0.03〜902mg/kg/日、より好ましくは、0.3〜90mg/kg/日、さらにより好ましくは、1〜27mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるスリンダクの有効量は、好ましくは0.017〜668mg/kg/日、より好ましくは、0.17〜67mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.56〜20mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるエトドラクの有効量は、好ましくは0.033〜1336mg/kg/日、より好ましくは、0.33〜133mg/kg/日、さらにより好ましくは、1.11〜7.5mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるモフェゾラクの有効量は、好ましくは0.025〜751mg/kg/日、より好ましくは、0.25〜75mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.83〜22.5mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるアンピロキシカムの有効量は、好ましくは0.0045〜90mg/kg/日、より好ましくは、0.045〜9mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.15〜2.7mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるテノキシカムの有効量は、好ましくは0.0033〜67mg/kg/日、より好ましくは、0.033〜6.67mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.11〜2mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるメロキシカムの有効量は、好ましくは0.0017〜50mg/kg/日、より好ましくは、0.017〜5mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.056〜1.5mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるロルノキシカムの有効量は、好ましくは0.0027〜80mg/kg/日、より好ましくは、0.027〜8mg/kg/日、さらにより好ましくは、0.089〜2.4mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるメフェナム酸の有効量は、好ましくは、0.167〜5010mg/kg/日、より好ましくは、1.67〜500mg/kg/日、さらにより好ましくは、5.56〜150mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるフルフェナム酸の有効量は、好ましくは0.125〜2505mg/kg/日、より好ましくは、1.25〜250mg/kg/日、さらにより好ましくは、4.17〜75mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるエピリゾールの有効量は、好ましくは、0.050〜1503mg/kg/日、より好ましくは、0.50〜150mg/kg/日、さらにより好ましくは、1.67〜45mg/kg/日である。成人(体重60kg)における塩酸チアラミドの有効量は、好ましくは0.033〜1002mg/kg/日、より好ましくは、0.33〜100mg/kg/日、さらにより好ましくは、1.11〜30mg/kg/日である。成人(体重60kg)におけるエモルファゾンの有効量は、好ましくは0.067〜2004mg/kg/日、より好ましくは、0.67〜200mg/kg/日、さらにより好ましくは、2.22〜60mg/kg/日である。 本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバント。
【0100】
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日〜数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回〜1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間〜1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0101】
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
【0102】
本発明では、いったん類似の種類(例えば、ヒトに対するマウスなど)の生物、培養細胞、組織などに関し、ある特定の糖鎖構造の分析結果と、疾患レベルとが相関付けられた場合、対応する糖鎖構造の分析結果と、疾患レベルとが相関付けることができることは、当業者は容易に理解する。そのような事項は、例えば、動物培養細胞マニュアル、瀬野ら編著、共立出版、1993年などに記載され支持されており、本明細書においてこのすべての記載を援用する。
【0103】
(処方)
本発明はまた、有効量の治療剤の被験体への投与による、疾患または障害(例えば、感染症)の処置および/または予防の方法を提供する。治療剤は、薬学的に受容可能なキャリア型(例えば、滅菌キャリア)と組み合せた、本発明の組成物を意味する。
【0104】
治療剤を、個々の患者の臨床状態(特に、治療剤単独処置の副作用)、送達部位、投与方法、投与計画および当業者に公知の他の因子を考慮に入れ、例えば、「治療薬マニュアル2006」医学書院 監修:高久 史麿/矢崎 義雄、編集:関 顕/北原 光夫/上野 文昭/越前 宏俊に従って処方および投薬する。従って、本明細書において目的とする「有効量」は、このような考慮を行って決定される。
【0105】
一般的提案として、用量当り、非経口的に投与される治療剤の合計薬学的有効量は、患者体重の、約1mg/kg/日〜15mg/kg/日の範囲にあるが、上記のようにこれは治療的裁量に委ねられる。さらに好ましくは、本発明の細胞生理活性物質について、この用量は、少なくとも1mg/kg/日、最も好ましくはヒトに対して約3mg/kg/日と約10mg/kg/日との間である。静脈内用バッグ溶液もまた使用し得る。変化を観察するために必要な処置期間および応答が生じる処置後の間隔は、所望の効果に応じて変化するようである。
【0106】
治療剤を、経口的、直腸内、非経口的、槽内、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与し得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
【0107】
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、経口的、直腸内、非経口的、槽内、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与され得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
【0108】
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、適切なポリマー物質(例えば、成形品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態の半透過性ポリマーマトリックス)、適切な疎水性物質(例えば、許容品質油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、および貧可溶性誘導体(例えば、貧可溶性塩)を包含する。
【0109】
徐放性マトリックスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら、Biopolymers 22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15: 167−277(1981)、およびLanger,Chem.Tech.12:98−105(1982))、エチレンビニルアセテート(Langerら、同書)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。
【0110】
徐放性治療剤はまた、リポソームに包括された本発明の治療剤を包含する(一般に、Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(編),Liss,New York,317−327頁および353−365(1989)を参照のこと)。治療剤を含有するリポソームは、それ自体が公知である方法により調製され得る:DE3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688−3692(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030−4034(1980);EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,949;EP142,641;日本国特許出 願第83−118008号;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号ならびにEP第102,324号。通常、リポソームは、小さな(約200〜800Å)ユニラメラ型であり、そこでは、脂質含有量は、約30モル%コレステロールよりも多く、選択された割合が、最適治療剤のために調整される。
【0111】
なおさらなる実施態様において、本発明の治療剤は、ポンプにより送達される(Langer、前出;Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら、Surgery 88:507(1980);Saudekら、N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。
【0112】
他の制御放出系は、Langer(Science 249:1527−1533(1990))による総説において議論される。
【0113】
非経口投与のために、1つの実施態様において、一般に、治療剤は、それを所望の程度の純度で、薬学的に受容可能なキャリア、すなわち用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、かつ処方物の他の成分と適合するものと、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で混合することにより処方される。例えば、この処方物は、好ましくは、酸化、および治療剤に対して有害であることが知られている他の化合物を含まない。
【0114】
一般に、治療剤を液体キャリアまたは微細分割固体キャリアあるいはその両方と均一および緊密に接触させて処方物を調製する。次に、必要であれば、生成物を所望の処方物に成形する。好ましくは、キャリアは、非経口的キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性ビヒクルもまた、リポソームと同様に本明細書において有用である。
【0115】
キャリアは、等張性および化学安定性を高める物質のような微量の添加剤を適切に含有する。このような物質は、用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、このような物質としては、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸またはその塩類のような緩衝剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンのようなアミノ酸;セルロースまたはその誘導体、ブドウ糖、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン;および/またはポリソルベート、ポロキサマーもしくはPEGのような非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0116】
治療的投与に用いられるべき任意の薬剤は、生物・ウイルスを含まない状態、すなわち、無菌状態であり得る。滅菌濾過膜(例えば0.2ミクロンメンブラン)で濾過することにより無菌状態は容易に達成される。一般に、治療剤は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下用注射針で穿刺可能なストッパー付の静脈内用溶液バッグまたはバイアルに配置される。
【0117】
治療剤は、通常、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに、水溶液または再構成するための凍結乾燥処方物として貯蔵される。凍結乾燥処方物の例として、10mlのバイアルに、滅菌濾過した1%(w/v)治療剤水溶液5mlを充填し、そして得られる混合物を凍結乾燥する。凍結乾燥した治療剤を、注射用静菌水を用いて再構成して注入溶液を調製する。
【0118】
本発明はまた、本発明の治療剤の1つ以上の成分を満たした一つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。さらに、治療剤を他の治療用化合物と組み合わせて使用し得る。
【0119】
本発明の治療剤は、単独または他の治療剤と組合わせて投与され得る。組合わせは、例えば、混合物として同時に;同時にまたは並行してだが別々に;あるいは経時的のいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療用混合物として共に投与されるという提示、およびまた、組み合わされた薬剤が、別々にしかし同時に、例えば、同じ個体に別々の静脈ラインを通じて投与される手順を含む。「組み合わせて」の投与は、一番目、続いて二番目に与えられる化合物または薬剤のうち1つの別々の投与をさらに含む。
【0120】
特定の実施態様において、本発明の薬学的組成物は、抗がん剤との組み合わせで投与される。
【0121】
本発明の非ステロイド性抗炎症薬は、単独または他の治療剤と組み合わせて投与され得る。本発明の治療剤と組み合わせて投与され得る治療剤としては、他の抗癌剤、化学療法剤、抗生物質、ステロイドの抗炎症剤、従来の免疫治療剤、他のサイトカイニン、および/または、増殖因子が挙げられるが、これらに限定されない。組み合わせは、例えば、混合物として同時に(同時に、または、並行してだが、別々に)、あるいは経時的のいずかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療用混合物として共に投与されるという提示、およびまた、組み合わされた薬剤が別々にしかし同時に、例えば、同じ個体に別々の静脈ラインを通じて投与される手順を含む。「組み合わせて」の投与は、一番目、続いて二番目に与えられる化合物、または、薬剤のうち1つの別々の投与をさらに含む。
【0122】
さらなる実施態様において、本発明の非ステロイド性抗炎症薬は、抗生物質と組み合わせて投与される。使用され得る抗生物質としては、アミノグリコシド系抗生物質、ポリエン系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、セフェム系抗生物質、ペプチド系抗生物質、マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
さらなる実施形態において、本発明の治療剤は、他の治療レジメまたは予防レジメ(例えば、放射線治療)と組合わせて投与される。
【0124】
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0125】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0126】
(材料および方法)
(初代培養グリア細胞の調製)
グリア細胞は、新生児C57BL/6マウスの全脳より調製した。具体的には、マウスの新生児 (生後 24 時間以内) から脳を摘出し、髄膜を除去した。脳をメッシュ (300 μm) で透過させた後、0.25% trypsin, 2000 Kunitz units の Deoxyribonuclease 1 含有 DMEM でインキュベートし、細胞を分離した。細胞を4℃、880×g、10分間遠心して回収し、10 % FCS を含む DMEM 培地中で37℃、95 % air / 5 % CO2 下で10日間1次培養した。その後、混合したグリア細胞を、120rpmで18時間振とうし、1mM EGTA 含有 PBS(-) で細胞を懸濁し、さらに5〜7 日間2次培養したものを混合グリア細胞として実験に用いた。この細胞には GFAP 陽性のアストロサイトが95 % 以上、ED1(anti-macrophage / microglia mAb) 染色陽性のミクログリアが約5 % 程度含まれている。
【0127】
(RT−PCR分析)
総RNAをTRI試薬(Sigma−Aldrich、St.Loius、MO)を用いて単離し、RT−PCRを行った。具体的には、Superscript緩衝液(Invitrogen)、1mM dNTP混合液、10mM DTT、および20UのRNaseインヒビターを含む20μlの反応混合液中で、25UのSuperscript Reverse Transcriptase3(Invitrogen)およびオリゴ(dT)12−18プライマー(Invitrogen)を用いる逆転写によって、cDNAを総RNAより合成した。総RNAおよびオリゴ(dT)12−18プライマーを、70℃で10分間、逆転写反応の前にインキュベートした。46℃での1.5時間のインキュベーションの後、70℃で15分間酵素を変性することによって、反応を終了した。PCR増幅のために、1.2μlのcDNAを、0.2μMの各プライマー、0.2μのdNTP混合物、0.6UのTaqポリメラーゼ、および反応緩衝液を含む12μlの反応混合物に添加した。PCRを、DNAサーマルサイクラー(GeneAmp(登録商標)PCRシステム9700)中で行った。以下のプライマーを、使用した:XBP−1上流(5’−cct tgt ggt tga gaa cca gg−3’;配列番号1);XBP−1下流(5’−cta gag gct tgg tgt ata c−3’ ;配列番号2);GRP78上流(5’−ctg ggt aca ttt gat ctg act gg−3’ ;配列番号3);GRP78下流(5’−gca tcc tgg tgg ctt tcc agc cat tc−3’ ;配列番号4);CHOP上流(5’−ccc tgc ctt tca cct tgg−3’ ;配列番号5);CHOP下流(5’−ccg ctc gtt ctc ctg ctc−3’ ;配列番号6);GAPDH上流(5’−aaa ccc atc acc atc ttc cag−3’ ;配列番号7);GAPDH下流(5’−agg ggc cat cca cag tct tct−3’;配列番号8)。PCR産物(10μl)を、TBE緩衝液中の8%ポリアクリルアミドゲルで泳動した。ゲルをエチジウムブロミドにて染色し、紫外線照射下で写真撮影した。XBP−1、GRP78、CHOPおよびGAPDHのcDNAを、それぞれ、35サイクル(94℃1分、55℃1分、72℃1分)、18サイクル(94℃1分、55℃1分、72℃1分)、22サイクル(94℃1分、57℃1分、72℃1分)、および、18サイクル(94℃1分、57℃1分、72℃1分)で増幅し、これらPCR反応産物を、別々に電気泳動した。各々の分子についての増幅反応の直線性の範囲を決定する予備実験に基づいて、これらサイクル数を決定した。
【0128】
(ウェスタンブロット反応)
ウェスタンブロットを、以下のとおりに行った。細胞を、氷冷したPBSで洗浄し、そして、10mM HEPES−NaOH(pH7.5)、150mM、1mM EGTA、1mM NaVO、10mM NaF、10μg/ml アプロチニン、10μg/ml ロイペプチン、1mM PMSF、および1% NP−40を含む緩衝液中で20分間溶解した。溶解物を、15,000rpmで20分間、4℃で遠心し、上清を回収した。サンプルをラムリ緩衝液で3分間ボイルし、SDS−PAGEで電気泳動し、4℃でニトロセルロースメンブレンに転写した。メンブレンを抗KDEL抗体(StressGen;1:1,000希釈)、抗CHOP抗体(Santa Cruz、1:500希釈)とともにインキュベートし、次に、抗西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗体とともにインキュベートした。ペルオキシダーゼを、ECLシステム(Amersham)を用いて、化学発光によって検出した。
【0129】
(統計分析)
結果を平均±SEとして示した。統計分析を、対応t検定を用いて行った。
【0130】
(実施例1:プラノプロフェンは、ERストレスによって誘導されたGRP78およびCHOP発現を阻害する)
ERストレスによって誘導されたGRP78およびCHOP発現に対するプラノプロフェンの影響について実験を行った。本実施例においては、タンパク質N−グリコシル化のインヒビターであるツニカマイシンを使用して、ERストレスを誘導した。細胞を、プラノプロフェン(1mM)で1時間前処理し、次に、ツニカマイシン(10ng/ml)を用いて刺激した。RT−PCRで評価したように、プラノプロフェンによって有意に阻害されたGRP78転写産物の増加を観察した(図1AおよびB)。ウェスタンブロットで評価したように、プラノプロフェンによって有意に阻害されたGRP78の発現は、ツニカマイシンによって増加した(図1CおよびD)。その一方で、プラノプロフェン単独では、GRP78発現を増加しなかった(図1)。同様に、mRNAレベルおよびタンパク質レベルの両方においてプラノプロフェンによって有意に阻害されたCHOP発現は、ERストレスによって誘導された(図2)。プラノプロフェン単独では、初代グリア細胞中のCHOP発現に影響を与えなかった(図2)。これらの結果は、プラノプロフェンがERストレスによって誘導されるGRP78およびCHOP発現に対して阻害効果を有することを示す。
【0131】
(実施例2:ERストレスによって誘導されたeIF2α活性化に対するプラノプロフェンの影響)
ERストレスによって誘導されたCHOP発現は、PERK−eIF2αを媒介する経路を介して媒介することが報告されている(Hardingら、Mol.Cell 6(2000)1099−1108;および、Scheunerら、Mol.Cell 7(2001)1165−1176)。従って、次に、プラノプロフェンがeIF2αを活性化するか否かを決定した。2時間のツニカマイシン(10ng/ml)による処理は、eIF2αリン酸化を増加した(図3)。興味深いことに、図3に示されるように、プラノプロフェン処置単独によって、eIF2αリン酸化が増加し、リン酸化の程度は、ERストレスによってさらに増加した。従って、これらの結果から、ERストレスによって誘導されたCHOP発現に対するプラノプロフェンの効果は、eIF2αの活性化状態とは独立の事象であることが示された。
【0132】
(実施例3:ERストレスによって誘導されたXBP1スプライシングに対するプラノプロフェンの効果)
ERストレスは、XBP1スプライシングを誘導することが報告されている。スプライシングされたXBP1の短縮型形態は、GRP78またはCHOP誘導に関与する転写因子として機能する。従って、プラノプロフェンがERストレスによって誘導されるXBP1スプライシングに影響するか否かを決定した。1時間プラノプロフェンで処置し、次に、ツニカマイシン(10ng/ml)で6時間刺激し、そして、RT−PCR分析を行った。プラノプロフェン単独は、XBP1スプライシングを誘導しなかった(図4)。しかし、図4に示されるように、プラノプロフェンは、ERストレスによって誘導されたXBP1スプライシングを有意に阻害した。これらの結果は、プラノプロフェンがERストレスによって誘導されたXBP1スプライシングを特異的に阻害したことを示した。
【0133】
(考察)
最近の証拠によって、NSAIDsが、シクロオキシゲナーゼ阻害作用に加えて、新規の薬理学的作用を有することが示唆されている。本発明においては、グリア細胞におけるERストレス応答に影響を与えるというプラノプロフェンの新規の薬理学的作用を見出した。疫学的研究によって、NSAIDsの使用が、例えば、アルツハイマー病のような神経変性疾患を減少することが示された。しかしながら、神経変性疾患に対するNSAIDsのメカニズムは、不明である。本発明の結果は、ERストレスに影響し得る、NSAIDsの可能なメカニズムの一つを示すものである。
【0134】
ERストレスに対するプラノプロフェンの独特の性質を観察した。プラノプロフェンは、ERストレスによって誘導されたXBP1のスプライシング、GRP78発現およびCHOP発現を阻害したが、eIF2αリン酸化を増加した。本発明の結果は、NSAIDsがERストレスによって誘導される遺伝子(例えば、GRP78およびCHOP)を誘導し、胃細胞の細胞死をもたらしたことを報告した、以前の観察とは異なっている。その一方で、NSAIDsはERストレスによって誘導されたSH−SY5Yニューロン細胞における細胞死を阻害することが報告されている。本発明においては、ERストレスによって誘導された、グリア細胞におけるGRP78発現とCHOP発現に対するプラノプロフェンの阻害効果が観察された。本発明の結果と過去の報告の不一致の理由は不明であるが、実験に用いた細胞の由来および/または使用したNSAIDsの種類の差異によるものと考えられる。NSAIDsの作用は、個々のNSAIDs毎に必ずしも同一ではなく、使用する用量および対象とする組織に依存して種々の異なる薬理学的作用を示すという過去の知見は、この結論を支持するものである。NSAIDsの胃腸における副作用は、胃細胞に対するアポトーシス効果を説明するものかもしれない。その一方で、本発明において観察された、ニューロン細胞であるSH−SY5YのERストレスに対するプラノプロフェンの保護効果、または、グリア細胞のERストレス応答に対するNSAIDsの阻害効果は、NSAIDs投与に関連する神経変性疾患のリスクの減少を説明し得るものである。
【0135】
これらの結果から、プラノプロフェンは、細胞死などの有害な副作用をもたらすことのない、神経細胞における小胞体ストレス関連疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、および、脳虚血)の治療剤として有用であると結論付けられる。
【0136】
(実施例3:プラノプロフェン以外の非ステロイド性抗炎症性化合物による小胞体ストレス関連疾患の治療および/または予防)
プラノプロフェン以外の非ステロイド性抗炎症性化合物である、ジクロフェナクナトリウム、フルルビプロフェン、アセメタシン、メフェナム酸、エピリゾール、および(s)−(+)−イブプロフェンについて、小胞体ストレス関連疾患の治療および/または予防を試験した。
【0137】
初代グリア細胞を種々の非ステロイド性抗炎症性化合物(DSS:ジクロフェナクナトリウム、FLU:フルルビプロフェン、ACE:アセメタシン、MEF:メフェナム酸、MEP:エピリゾール、およびIBU:(s)−(+)−イブプロフェン、各100μM)で前処理した。「+Tm」と記載したサンプルでは、非ステロイド性抗炎症性化合物での前処理後に、ツニカマイシン(Tm、10ng/ml)で6時間刺激した。「Tm」は、非ステロイド性抗炎症性化合物を用いなかった結果であり、「Cont」は、非ステロイド性抗炎症性化合物もツニカマイシンのいずれも用いなかった結果である。「Cont」においてはTmの溶媒であるDMSO を処理している。
【0138】
ウェスタン分析を、GRP78特異的抗体およびCHOP特異的抗体を用いて行った結果を示す。図5は、GRP78のタンパク質量を、ゲル上でのサンプルの濃度測定の結果として示した結果である(GRP78の場合を1とした相対値)。図6は、CHOPのタンパク質量を、ゲル上でのサンプルの濃度測定の結果として示した結果である(CHOPの場合を1とした相対値)。
【0139】
図5および図6に示されるように、用いた非ステロイド性抗炎症性化合物のいずれにおいても、小胞体ストレス応答を抑制した。従って、これら非ステロイド性抗炎症性化合物もプラノプロフェンと同様に、小胞体ストレス関連疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、および、脳虚血)の治療剤として有用であると結論付けられる。
【0140】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明に従って、神経細胞における小胞体ストレス関連疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、および、脳虚血)に対する新規の治療剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、ERストレスによって誘導されたGRP78発現をプラノプロフェンが抑制する結果を示す。図1Aは、グリア細胞をプラノプロフェン(Pra、1mM)で1時間前処理し、次に、ツニカマイシン(Tm、10ng/ml)で6時間刺激した結果を示す。RT−PCR分析を、GRP78特異的プライマーおよびGAPDH特異的プライマーを用いて行った結果を示す。図1Bは、GRP78のmRNA量を、ゲル上でのサンプルの濃度測定の結果として示した結果である(GAPDHの場合を1とした相対値)。図1Cは、グリア細胞を、プラノプロフェン(1mM)で1時間前処理し、次に、ツニカマイシン(Tm、10ng/ml)で18時間刺激した結果を示す。GRP78およびGAPDHのレベルを、ウェスタンブロットで決定した。図1Dは、GRP78タンパク質のレベルを、ゲル上でのサンプルの濃度測定結果として示した結果である(GAPDHの場合を1とした相対値)。値は、平均±標準偏差として示した(グループあたりn=3)。p<0.05である(TmとTm+プラノプロフェンとの間の有意な差異)。
【図2】図2は、ERストレスによって誘導されたCHOP発現をプラノプロフェンが抑制する結果を示す。図2Aは、グリア細胞をプラノプロフェン(1mM)で1時間前処理し、次に、ツニカマイシン(Tm、10ng/ml)で6時間刺激した結果を示す。RT−PCR分析を、CHOP特異的プライマーおよびGAPDH特異的プライマーを用いて行った結果を示す。図2Bは、CHOPのmRNA量を、ゲル上でのサンプルの濃度測定の結果として示した結果である(GAPDHの場合を1とした相対値)。図2Cは、グリア細胞を、プラノプロフェン(1mM)で1時間前処理し、次に、ツニカマイシン(Tm、10ng/ml)で18時間刺激した結果を示す。CHOPおよびGAPDHのレベルを、ウェスタンブロットで決定した。図2Dは、CHOPタンパク質のレベルを、ゲル上でのサンプルの濃度測定結果として示した結果である(GAPDHの場合を1とした相対値)。値は、平均±標準偏差として示した(グループあたりn=3)。p<0.05である(TmとTm+プラノプロフェンとの間の有意な差異)。
【図3】図3は、ERストレスによって誘導されたeIF2αリン酸化をプラノプロフェンが増加する結果を示す。図3Aは、グリア細胞をプラノプロフェン(1mM)で1時間前処理し、次に、ツニカマイシン(Tm、10ng/ml)で2時間刺激した結果を示す。リン酸化eIF2α(Ser51)のレベルおよびGAPDHのレベルを、ウェスタンブロットで決定した。図3Bは、リン酸化eIF2α(Ser51)のレベルを、ゲル上でのサンプルの濃度測定の結果として示した結果である(GAPDHの場合を1とした相対値)。値は、平均±標準偏差として示した(グループあたりn=3)。p<0.05である(TmとTm+プラノプロフェンとの間の有意な差異)。
【図4】図4は、ERストレスによって誘導されたXBP1スプライシングをプラノプロフェンが抑制する結果を示す。図4Aは、グリア細胞をプラノプロフェン(1mM)で1時間前処理し、次に、ツニカマイシン(Tm、10ng/ml)で6時間刺激した結果を示す。RT−PCR分析を、XBP1特異的プライマーおよびGAPDH特異的プライマーを用いて行った結果を示す。「u−XBP1」は、スプライシングされていない転写産物を示し、「s−XBP1」は、スプライシングされた転写産物を示す。図4Bは、XBP1のmRNA量を、ゲル上でのサンプルの濃度測定の結果として示した結果である(GAPDHの場合を1とした相対値)。値は、平均±標準偏差として示した(グループあたりn=3)。p<0.05である(TmとTm+プラノプロフェンとの間の有意な差異)。
【図5】図5は、ERストレスによって誘導されたGRP78発現をプラノプロフェン以外の非ステロイド性抗炎症性化合物(ジクロフェナクナトリウム、フルルビプロフェン、アセメタシン、メフェナム酸、エピリゾール、および(s)−(+)−イブプロフェン)が抑制する結果を示す。初代グリア細胞を各非ステロイド性抗炎症性化合物(100μM)で1時間前処理し、次に、ツニカマイシン(Tm、10ng/ml)で刺激した結果を示す。ウエスタン分析を、GRP78特異的抗体を用いて行った結果を示す。図は、GRP78の蛋白質量を、ゲル上でのサンプルの濃度測定の結果として示した結果である(GRP78の場合を1とした相対値)。Cont:非ステロイド性抗炎症性化合物もツニカマイシンも添加しない、DSS:ジクロフェナクナトリウム、FLU:フルルビプロフェン、ACE:アセメタシン、MEF:メフェナム酸、MEP:エピリゾール、IBU:(s)−(+)−イブプロフェン、Tm:ツニカマイシン、DSS+Tm:ジクロフェナクナトリウムおよびツニカマイシン、FLU+Tm:フルルビプロフェンおよびツニカマイシン、ACE+Tm:アセメタシンおよびツニカマイシン、MEF+Tm:メフェナム酸およびツニカマイシン、MEP+Tm:エピリゾールおよびツニカマイシン、ならびに、IBU+Tm:(s)−(+)−イブプロフェンおよびツニカマイシン。
【図6】図6は、ERストレスによって誘導されたCHOP発現をプラノプロフェン以外の非ステロイド性抗炎症性化合物(DSS:ジクロフェナクナトリウム、FLU:フルルビプロフェン、ACE:アセメタシン、MEF:メフェナム酸、MEP:エピリゾール、およびIBU:(s)−(+)−イブプロフェン)が抑制する結果を示す。初代グリア細胞を各非ステロイド性抗炎症性化合物(100μM)で1時間前処理し、次に、ツニカマイシン(Tm、10ng/ml)で刺激した結果を示す。ウエスタン分析を、CHOP特異的抗体を用いて行った結果を示す。図は、CHOPの蛋白質量を、ゲル上でのサンプルの濃度測定の結果として示した結果である(CHOPの場合を1とした相対値)。Cont:非ステロイド性抗炎症性化合物もツニカマイシンも添加しない、DSS:ジクロフェナクナトリウム、FLU:フルルビプロフェン、ACE:アセメタシン、MEF:メフェナム酸、MEP:エピリゾール、IBU:(s)−(+)−イブプロフェン、Tm:ツニカマイシン、DSS+Tm:ジクロフェナクナトリウムおよびツニカマイシン、FLU+Tm:フルルビプロフェンおよびツニカマイシン、ACE+Tm:アセメタシンおよびツニカマイシン、MEF+Tm:メフェナム酸およびツニカマイシン、MEP+Tm:エピリゾールおよびツニカマイシン、ならびに、IBU+Tm:(s)−(+)−イブプロフェンおよびツニカマイシン。
【配列表フリーテキスト】
【0143】
配列番号1は、XBP−1上流プライマーの配列である。
【0144】
配列番号2は、XBP−1下流プライマーの配列である。
【0145】
配列番号3は、GRP78上流プライマーの配列である。
【0146】
配列番号4は、GRP78下流プライマーの配列である。
【0147】
配列番号5は、CHOP上流プライマーの配列である。
【0148】
配列番号6は、CHOP下流プライマーの配列である。
【0149】
配列番号7は、GAPDH上流プライマーの配列である。
【0150】
配列番号8は、GAPDH下流プライマーの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の非ステロイド性抗炎症性化合物を含有する、グリア細胞における小胞体ストレス関連疾患の治療および/または予防のための、薬学的組成物であって、ここで、該非ステロイド性抗炎症性化合物が、プラノプロフェン、チアプロフェン酸、オキサプロジン、ロキソプロフェンナトリウム、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、アンフェナクナトリウム、ナブメトン、フルルビプロフェン、(s)−(+)−イブプロフェン、ナプロキセン、アセメタシン、インドメタシン、インドメタシンファルネシル、マレイン酸プログルメタシン、スリンダク、エトドラク、モフェゾラク、アンピロキシカム、テノキシカム、メロキシカム、ロルノキシカム、メフェナム酸、フルフェナム酸、エピリゾール、塩酸チアラミド、およびエモルファゾンからなる群から選択される、薬学的組成物。
【請求項2】
前記小胞体ストレス関連疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳虚血、糖尿病、嚢胞性線維症、虚血性疾患、神経変性疾患、肥満、躁鬱病、および、ガンからなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記小胞体ストレス関連疾患が、アルツハイマー病である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記小胞体ストレス関連疾患が、パーキンソン病である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記小胞体ストレス関連疾患が、脳虚血である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記小胞体ストレス関連疾患が、糖尿病である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記小胞体ストレス関連疾患が、嚢胞性線維症である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記小胞体ストレス関連疾患が、虚血性疾患である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記小胞体ストレス関連疾患が、神経変性疾患である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記小胞体ストレス関連疾患が、肥満である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記小胞体ストレス関連疾患が、躁鬱病である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記小胞体ストレス関連疾患が、ガンである、請求項2に記載の薬学的組成物。

【請求項13】
神経細胞における小胞体ストレス関連疾患の治療剤および/または予防剤を製造するための、有効量の非ステロイド性抗炎症性化合物の使用であって、ここで、該非ステロイド性抗炎症性化合物が、プラノプロフェン、チアプロフェン酸、オキサプロジン、ロキソプロフェンナトリウム、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、アンフェナクナトリウム、ナブメトン、フルルビプロフェン、(s)−(+)−イブプロフェン、ナプロキセン、アセメタシン、インドメタシン、インドメタシンファルネシル、マレイン酸プログルメタシン、スリンダク、エトドラク、モフェゾラク、アンピロキシカム、テノキシカム、メロキシカム、ロルノキシカム、メフェナム酸、フルフェナム酸、エピリゾール、塩酸チアラミド、およびエモルファゾンからなる群から選択される、使用。
【請求項14】
前記小胞体ストレス関連疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳虚血、糖尿病、嚢胞性線維症、虚血性疾患、神経変性疾患、肥満、躁鬱病、および、ガンからなる群から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記小胞体ストレス関連疾患が、アルツハイマー病である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記小胞体ストレス関連疾患が、パーキンソン病である、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記小胞体ストレス関連疾患が、脳虚血である、請求項14に記載の使用。
【請求項18】
前記小胞体ストレス関連疾患が、糖尿病である、請求項14に記載の使用。
【請求項19】
前記小胞体ストレス関連疾患が、嚢胞性線維症である、請求項14に記載の使用。
【請求項20】
前記小胞体ストレス関連疾患が、虚血性疾患である、請求項14に記載の使用。
【請求項21】
前記小胞体ストレス関連疾患が、神経変性疾患である、請求項14に記載の使用。
【請求項22】
前記小胞体ストレス関連疾患が、肥満である、請求項14に記載の使用。
【請求項23】
前記小胞体ストレス関連疾患が、躁鬱病である、請求項14に記載の使用。
【請求項24】
前記小胞体ストレス関連疾患が、ガンである、請求項14に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−208091(P2008−208091A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48123(P2007−48123)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】