説明

小豆加工品

【課題】ざらつき感の少ない口当たりの良好ななめらかな小豆加工品を提供することである。
【解決手段】澱粉粒の粒度分布が30μm〜50μmであることを特徴とする小豆加工品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羊羹、水羊羹及び饅頭など餡を用いた菓子類、並びに甘納豆、ぜんざいなど小豆を使用した食品など小豆加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
小豆は、従来から糖質、脂質、タンパク質等の栄養成分やナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄、タンニン等のミネラル成分とポリフェノール成分を含有する豆類である事が知られており、餡、羊羹、汁粉等のさまざまな食品の原料として用いられている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−9876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、日本では古くから餡などの原料として用いられている小豆については、その食感などの研究、報告がほとんどなく、多様化する現代人の食感に対応されておらず、例えば、餡などを原料とする小豆加工品のざらつき感は、好まれていない。
【0005】
そこで、本発明は、ざらつき感の少ない口当たりの良好ななめらかな小豆加工品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、澱粉粒の粒径を均一にすることによって、小豆加工品のざらつき感を少なくし、口当たりが良好でなめらかな食感を得ることができることを見出した。すなわち、本発明は、澱粉粒の粒度分布が30μm〜500μm、好ましくは40μm〜400μmであることを特徴とする小豆加工品である。本発明に係る小豆加工品において、澱粉粒とは、常法により作製された生餡に含まれる澱粉の粒のことをいう。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明によれば、ざらつき感の少ない口当たりの良好ななめらかな小豆加工品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、澱粉粒の粒度分布が30μm〜500μmである小豆加工品は、原料として発芽小豆を用いることにより得ることができる。発芽させることにより、餡の澱粉粒が変化して荒い部分がなくなり均一化し、また、発芽させるために、小豆澱粉がエネルギーとして利用され、それ自身の澱粉粒を細かくできるためと考えられる。本発明に係る小豆加工品において発芽小豆とは、発芽させた小豆のことをいい、この発芽小豆は、水漬け処理した小豆を温度、湿度を保ちながら発芽反応を進行させることによって得ることができる。具体的には、小豆を流水により良く洗浄し、水に浸漬させ、水切り後、発芽処理を4時間〜48時間行うことによって得ることができる。より具体的には、小豆を15〜30分流水により洗浄を行い、洗浄した小豆を2倍〜5倍量の水に2〜24時間、好ましくは5〜18時間浸漬させ、水に浸漬させた小豆を水切りして、10〜40℃、好ましくは15〜30℃に調節した発芽床に並べ、その後、発芽床において、1〜6時間ごと、好ましくは1〜2時間ごとに散水を行い、その後4時間〜48時間、好ましくは6時間〜24時間進行させることにより発芽させる。
【0009】
本発明に係る小豆加工品は、発芽小豆を原料として用いることにより、発芽前に比べてγ−アミノ酪酸(GABA)やアミノ酸を増加させるという栄養付与という作用効果を奏することができる。発芽小豆は、発芽前の小豆に比してγ−アミノ酪酸(GABA)が2〜15倍量増加し、アミノ酸が2〜10倍量増加する。なお、アミノ酸の測定は、アミノ酸分析装置により分析する。よって、本発明に係る小豆加工品において、前記発芽小豆は、発芽前の小豆よりもγ−アミノ酪酸(GABA)の量が多く、2倍以上であることが好ましく、また、発芽前の小豆よりもアミノ酸の量が多く、2倍以上であることが好ましい。
【0010】
本発明において、小豆加工品としては、羊羹、水羊羹、餡を使用した饅頭、餡蜜、アンパン、最中、甘納豆、ぜんざい、赤飯、汁粉、小豆キャンディーアイス、小豆の煮汁を利用した飲料など多くの食品がある。また、小豆加工品として小豆そのものの形態を残しているものが好ましく、具体的には、小倉あん、小倉羊羹、小倉水羊羹、甘納豆、ぜんざい、赤飯などである。一方、生餡の製造においては、蒸煮後、摩砕とこしにより篩い分けられ、生餡よりは煮汁部分にγ−アミノ酪酸(GABA)などの栄養素が移行することがある。したがって、γ−アミノ酪酸(GABA)などの栄養素を生かす製品としては、小豆煮汁を利用した汁粉や小豆ゼリーなどが考えられる。
【実施例】
【0011】
実験例1
次に、本発明に係る小豆加工品の実施例1として生餡及び並餡を作製した。原料として用いた発芽小豆は、小豆を20分流水により洗浄を行い、洗浄した小豆を3倍量の水に12時間浸漬させ、水に浸漬させた小豆を水切りして、25℃に調節した発芽床に並べ、その後、発芽床において、6時間ごとに散水を行い、その後48時間進行させて発芽させることにより得た。この発芽小豆を常法により生餡を作製し、その後白双糖を加え、糖度を50に調整することによって並餡を作製した。比較例1として一日水漬けを行った小豆を原料とし、比較例2として水漬けを行わなかった小豆を原料として、同様に生餡及び並餡を作製した。
【0012】
これら実施例1並びに比較例1及び2に係る生餡の澱粉粒について、粒度分析計(日機装株式会社製)を用いて、粒径分布を比較した。その結果を図1乃至3に示す。図1乃至3に示すように、実施例1に係る生餡は、比較例1及び比較例2に係る餡に比し、澱粉粒の粒径が均一化されていることが分かる。また、実施例1並びに比較例1及び2に係る並餡(Brix50)の澱粉粒についても、同様に粒度分析計を用いて粒径分布を比較したところ、生餡と同様の結果を得ることができた。
【0013】
実験例2
次に、実験例1で用いた発芽小豆、一日水漬けを行った小豆、及び水漬けを行わなかった小豆それぞれを用いて作った並餡をもとに羊羹及び水羊羹を表1に示す処方にて作製し、被験者(n=18)に口あたりについての官能試験をしてもらった。その結果、羊羹に関しては18人中13人が、水羊羹に関しては18人中16人が、比較例1及び2に係る羊羹及び水羊羹に比し実施例1に係る羊羹及び水羊羹の方が口あたりが良いと回答した。
【0014】
【表1】

【0015】
実験例3
次に、実施例1に係る餡で用いた発芽小豆について、80%エタノールで抽出後DNP法によりHPLC(島津製作所社製:カラムODS−80Ts)にて、γ−アミノ酪酸(GABA)の量を測定したところ、乾燥小豆換算で38mg/100gであった。同様に比較例2について測定したところ、7mg/100gであり、実施例1に係る餡で用いた発芽小豆のγ−アミノ酪酸(GABA)の量が明らかに増加していた。
【0016】
実験例4
次に、実施例1並びに比較例1及び2に係る餡の色を観察した。その結果を表2に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
表2に示すように、実施例1に係る発芽小豆を原料とする餡は、比較例1乃至2に係る餡に比し、よく渋切りされた餡に近い状態であった。
【0019】
実験例5
次に、実施例1及び比較例2の小豆について、アミノ酸分析装置(日立テクノロジーズ)を用い、ニンヒドリン発色法によりアミノ酸を検出した。検出データを表3に示す。
【0020】
【表3】

【0021】
表3に示すように実施例1に係る発芽小豆は、全ての項目において比較例2に係る小豆に対して増加量が2倍以上であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1に係る生餡の澱粉粒の粒度分布を示すグラフである。
【図2】比較例1に係る生餡の澱粉粒の粒度分布を示すグラフである。
【図3】比較例2に係る生餡の澱粉粒の粒度分布を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉粒の粒度分布が30μm〜500μmであることを特徴とする小豆加工品。
【請求項2】
発芽小豆を原料として用いることを特徴とする請求項1記載の小豆加工品。
【請求項3】
前記発芽小豆は、発芽前の小豆よりもγ―アミノ酪酸の量が2倍以上であることを特徴とする請求項2記載の小豆加工品。
【請求項4】
前記発芽小豆は、発芽前の小豆よりもアミノ酸の量が2倍以上であることを特徴とする請求項2記載の小豆加工品。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−61022(P2006−61022A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244243(P2004−244243)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】