説明

小麦粉の加工方法及びその加工方法により得られた加工小麦粉並びにその加工小麦粉を使用した食品

【課題】二次加工適性を損なうことなく風味、食感を改善するための小麦粉の加工方法及びその加工方法により得られた加工小麦粉並びにそれを使用した食品を提供する。
【解決手段】小麦粉100重量部に対してエチルアルコール10〜55重量部を、全体の水分が20重量%以下となるような条件下で均一に分散させ、次にこれから50℃以下の温度でエチルアルコールを揮発させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦粉の加工適性を損なわずに、その食感、風味を改善することが可能な小麦粉の加工方法及びその加工方法により得られた加工小麦粉並びにその加工小麦粉を使用した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉は、食品分野においてパン類、麺類、菓子類(クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、プレッツェル等)、スナック類の主原料として広く応用されている。
【0003】
上記の食品は、いずれも小麦粉が主原料となるため、小麦粉の性質が食品の食感に大きく反映されるが、小麦粉固有の粉っぽさ、口溶けの悪さといった現象が見られる問題がある。小麦粉特有のたんぱく質であるグルテンは、小麦粉の幅広い二次加工適性を担う成分であり、上記食品の製造にあたっては必要不可欠な成分であるが、一方では疎水性のたんぱく質であるため、粉っぽさ等の一因ともなっている。
【0004】
一方、現在食品におけるアルコール処理の方法としては、ナッツ、米、小麦ふすま等の処理が報告されているが、従来の処理方法は、アルコール処理時もしくはアルコール除去時に高温加熱を伴う(例えば、特許文献1参照)、あるいはさらに水を使用すること(例えば、特許文献2参照)が必須となっている。
【0005】
しかしながら、これらの方法を小麦粉に応用した場合、加熱により小麦粉のグルテンが失活して小麦粉の二次加工適性が失われる、もしくは小麦粉への加水により小麦粉が生地を形成してしまい、その後様々な形態への加工が困難となり、目的とする食感の改善も達せられないという問題があった。
【0006】
このように、従来のアルコール処理方法は小麦粉のような細かな粉体の処理を前提としておらず、加水や加熱によっても基本的な物性、性状が影響を受けにくい食品原料、例えば粒状の穀物類等の処理に関するものであり、またその目的も対象物の臭気の改善や栄養成分の濃縮といったものであり、小麦粉のような幅広い二次加工適性を有する粉体の処理に応用可能なものではなかった。
【0007】
さらに、近年健康志向の高まりから栄養価に富んだ小麦全粒粉の使用が望まれているが、小麦全粒粉は食感及び風味が著しく悪く、特にその臭気は小麦全粒粉中のふすま部分に多く含まれるアルデヒド類に由来することが知られており、風味を改善するための研究が行われている。ふすまの風味を改善する方法としては、ふすまを蒸煮し、その後、酸と糖を加えて加熱乾燥する方法(例えば、特許文献3参照)、ふすまに加水し、これに麹菌を接種して培養する方法(例えば、特許文献4参照)、小麦の大ふすまを水に浸漬して脱水し、加熱乾燥する方法(例えば、特許文献5参照)、ふすまに加水し、ふすま自身が有する酵素を作用させ、さらには加熱、加圧処理を行う方法(例えば、特許文献6参照)が知られている。
【0008】
しかしながら、これらの方法は小麦から分離したふすまに限定して行われる処理方法であり、小麦全粒粉に応用した場合、やはりグルテンが失活或いは著しく変性するため、それを使用した製品への二次加工適性が損なわれ、食感の改善も達せられないという問題があった。
【0009】
【特許文献1】特公昭56−43332号公報
【特許文献2】特公昭56−36898号公報
【特許文献3】特公昭56−50546号公報
【特許文献4】特開昭57−105153号公報
【特許文献5】特開昭62−32849号公報
【特許文献6】特許第2997082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、二次加工適性を損なうことなく風味、食感を改善するための小麦粉の加工方法及びその加工方法により得られた加工小麦粉並びにその加工小麦粉を使用した食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を行い、小麦粉100重量部に対してエチルアルコール10〜55重量部を、全体の水分が20重量%以下となるような条件下で均一に分散させ、次にこれから50℃以下の温度でエチルアルコールを揮発させることを特徴とする小麦粉の加工方法であれば、二次加工適性を損なうことなく風味、食感が改善された加工小麦粉が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
また、上記加工方法において、エチルアルコールの揮発を減圧下で行えば、好適に風味、食感を改善できること、さらに小麦粉が全粒粉からなれば、全粒粉の風味を顕著に改善できるため、好ましい加工小麦粉が得られることを見出した。
【0013】
本発明はさらに、上記加工方法により得られた加工小麦粉に関する。
【0014】
本発明はさらにまた、上記加工小麦粉を使用した食品に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の加工方法によれば、小麦グルテンの二次加工適性を損なうことなく、口溶けの悪さ等の小麦粉特有の好ましからざる食感を大いに改善することができると共に、風味も改善することができる。
【0016】
さらに、本発明の加工方法を小麦全粒粉に応用した場合には、食感が改善できるのみでなく、全粒粉特有の好ましからざる苦味、臭気を除去し、風味をも顕著に改善することができる。
【0017】
また、上記の加工方法により得られた加工小麦粉を使用して食品を製造すると、舌触り、口溶け感、のど越し等の食感の優れた品質となる。さらに、小麦粉特有の粉臭さも完全に除去された優れた品質となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に記載する。
【0019】
本発明で使用する小麦粉とは、強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉等の小麦粉類であり、アルコールとしては、食品としての安全性、沸点等を考慮してエチルアルコールを使用する。
【0020】
本発明の小麦粉の加工方法は、まず第一に上記小麦粉100重量部に対してエチルアルコール10〜55重量部(含水エチルアルコールを使用した場合には、水を除いたエチルアルコールとして)を、全体の水分が20重量%以下となるような条件下で均一に分散させる。小麦粉にエチルアルコールを均一に分散させる方法としては、ミキサーにて小麦粉を攪拌しているところにエチルアルコールを投入・混合する方法、シフターを通過して落下中の小麦粉に、定量的に霧状のエチルアルコールを噴霧する方法、連続式のミキサーにエチルアルコールを定量的に滴下する方法等、小麦粉とエチルアルコールを均一に分散させることができる方法であれば、適宜それらの方法を用いることができる。
【0021】
小麦粉とエチルアルコールとの混合比率としては、上記したように本発明においては、小麦粉100重量部に対してエチルアルコールを10〜55重量部、好ましくは15〜40重量%となるように混合する。
【0022】
エチルアルコールの混合比率が55重量部を超える場合には、エチルアルコール中に小麦粉が分散した状態で、エチルアルコールの揮発が困難になるほど極端にハンドリングが悪くなることや、ダマ形成が起きてしまい、得られた加工小麦粉は加工適性の低いものになってしまう。また、エチルアルコールの混合比率が10重量部より少ない場合には、得られた加工小麦粉を使用して食品を製造しても、本発明の特徴である食感の改善が見られなかった。
【0023】
本発明において、上記小麦粉とエチルアルコールを均一に分散するときの水分含量としては、20重量%以下、より好ましくは13重量%以下である。水分含量が、20重量%を超えると、小麦粉にエチルアルコールを分散させるときにダマが形成されて不均一になってしまう。また、後述するその後のエチルアルコールを揮発させる工程において、強固な生地様なダマが硬いままで残存してしまい、得られた加工小麦粉は加工適性の低いものになってしまうため、本発明の小麦粉の加工方法としては好ましくない。
【0024】
一般に、小麦粉には12〜14重量%の水分が含まれるが、本発明に規定する水分含量には、小麦粉中の水分も含まれる。また、エチルアルコールについても、含水エチルアルコールを使用した場合には、含水エチルアルコール中の水分も含まれる。
【0025】
次に、上記のようにして作製した小麦粉とエチルアルコールを均一に分散させた分散物から、50℃以下、より好ましくは40〜50℃の温度でエチルアルコールを揮発させる。50℃を超える温度でエチルアルコールを揮発させると、小麦粉中のグルテンが失活してしまい、小麦粉の二次加工適性が失われてしまうので好ましくない。
【0026】
エチルアルコールを揮発させる方法としては、バッチ式の庫内に乾燥した空気を送り込み、エチルアルコールを分散処理した試料を対流させながら揮発させる通風乾燥法、温調されたスチールバンドの上に試料を敷き詰めながら揮発させる方法等適宜使用することができるが、減圧乾燥機を用い、減圧下で、好ましくは減圧度20kPa以下で、さらに好ましくは10kPa以下で揮発させ小麦粉を乾燥すれば、より低温かつ短時間でエチルアルコールの除去が可能となるため好ましい。
【0027】
エチルアルコールを揮発させた加工小麦粉は、充分なエチルアルコールの除去を行えば粉末状になるが、粉体がケーキングしている場合には、30メッシュ程のシフターを使用して均一な粉末状としてもよい。エチルアルコールが揮発されると小麦粉は再び加工に適した粉末の状態を呈し、様々な二次加工に適した物性となる。
【0028】
このようにして本発明の加工方法によって得られた本発明の加工小麦粉は、小麦グルテンの二次加工適性を損なうことなく口溶けの悪さ等の小麦粉特有の好ましからざる食感を大いに改善することができると共に、風味も改善することができる。
【0029】
さらに、本発明の加工方法で小麦全粒粉を処理した場合には、それを使用した食品の食感が改善できるのみでなく、全粒粉特有の好ましからざる苦味、臭気を除去し、風味をも顕著に改善することができる。
【0030】
本発明の加工小麦粉は、従来の小麦粉の一部、又は全部と代替してパン類、麺類、クッキー、ビスケット、クラッカー、ケーキ、パイ、プレッツェル、スナック類等に使用することができ、それを使用した製品は、舌触り、口溶け感、のど越し等の食感の優れた品質となる。さらに、小麦粉特有の粉臭さも完全に除去された優れた品質となる。
【実施例】
【0031】
次に実施例、比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0032】
粉体として小麦粉(薄力粉)、小麦全粒粉、参考としてそば粉を、それぞれ縦型ミキサーで攪拌しながら、下記[表1]の[実施例1〜8]及び[比較例1〜6]の条件となるように含水エチルアルコールを噴霧・分散し、減圧乾燥機で乾燥させた後、30メッシュの篩を通して、14種類の加工粉体を得た。得られた加工粉体100重量部に塩2重量部と水45重量部を加え、縦型ミキサーで15分混合し生地を作成することにより、14種類の加工粉体の二次加工適正を確認した。その二次加工適性の結果を、[表1]に示した。
【0033】
【表1】

【0034】
この結果、小麦粉の粉末化については、水分が高い[比較例2]とエチルアルコールの含量が多い[比較例5]では、生地ダマが発生し、粉末化ができなかった。また、エチルアルコールの揮発温度を55℃の[比較例1]で処理した加工小麦粉を使用して作製した生地は、生地のつながりが悪くドウが形成できなかった。
【0035】
次に、[表1]の[実施例1〜8]及び[比較例1〜6]の各条件で処理した加工粉体並びに更に[比較例7〜8]として未処理の小麦粉及び未処理の小麦全粒粉を、それぞれ100重量部、砂糖25重量部、マーガリン15重量部、全脂粉乳5重量部、食塩1重量部、重曹0.5重量部、炭安2重量部、バニラ香料0.1重量部、水26重量部からなる原料を常法により混合・攪拌・発酵し、ハードビスケット生地を作製した。次にこの生地を12層にラミネートし、生地厚1.8mm、直径50mm、ピン穴10個に成型を行い、上下火ともに180℃のオーブンで9分間加熱焼成し、各々ハードビスケットを得た。作製したビスケットを10名のパネラーにより官能検査を実施し、その結果を[表2]に示した。
【0036】
尚、[比較例1、2及び5]で処理した加工小麦粉は、ビスケット生地を作ることができず、従ってビスケットを製作することができなかった。
【0037】
官能検査は、下記の基準による5段階で評価した。
パネラーの評価基準
5…非常に良い
4…良い
3…普通(未処理小麦粉を基準)
2…悪い
1…非常に悪い
【0038】
【表2】

【0039】
この結果、[実施例1〜8]で処理した加工小麦粉で作製した本発明のビスケットは、粉っぽさ、口溶けの悪さが軽減された、食感のよい、美味なものであった。特に、小麦全粒粉を[実施例7]で処理して作製したビスケットは、未処理の小麦全粒粉を使用したビスケットに比して、全粒粉特有の強烈な穀物臭が顕著に改善されており、非常に美味なものであった。
【0040】
本発明の比較例として[比較例3]と[比較例4]で処理した加工小麦粉を使用して作製したビスケットは、未処理の小麦粉を使用して作製したビスケットと同様に粉っぽさを有し、口除けの悪いビスケットであった。また、[比較例6]でそば粉を処理し、それを使用して作製したビスケットは、そばの風味が乏しいものであった。
【0041】
[実施例9]
薄力粉100重量部をミキサーにて低速攪拌中に、95%エチルアルコール(v/v)37.9重量部を噴霧・攪拌し、エチルアルコールが均一に分散した水分12.2%の粉体を得た。
【0042】
次に、減圧乾燥機を49℃に設定し、6.0kPaの減圧下で4時間減圧乾燥することにより、エチルアルコール分の揮発した、加工小麦粉を得た。
【0043】
続いて、加工小麦粉100重量部、砂糖30重量部、マーガリン38重量部、全脂粉乳5重量部、全卵5重量部、食塩0.5重量部、重曹1重量部、炭安1重量部、バニラ香料0.2重量部、水10重量部からなる原料を常法により混合・攪拌し、クッキー生地を作製した。
【0044】
この生地をロータリーモールダーにて直径47mm、厚さ5mmの円柱形に成形し、上下火ともに180℃のオーブンで8分間加熱焼成し、焼菓子を得た。得られた焼菓子は、加工小麦粉を使用しない通常のクッキーよりも、粉っぽさ、口溶けの悪さが低減された、食感のよい、美味なものであった。
【0045】
更なる実施例、比較例を例示する。
【0046】
[実施例10]うどん
中力粉100重量部をミキサーにて低速攪拌中に、87%エチルアルコール(v/v)61.1重量部を噴霧・攪拌し、エチルアルコールが均一に分散した水分15.6%の粉体を得た。
【0047】
次に、減圧乾燥機を40℃に設定し、4.0kPaで、攪拌しながら2時間減圧乾燥することにより、エチルアルコール分の揮発した、加工小麦粉を得た。
【0048】
続いて、加工小麦粉100重量部、塩45重量部、水440重量部からなる原料を常法により混合・攪拌し、うどん生地を作製した。
【0049】
次にこの生地を、リバースシーターを用い、厚さ3.5mmのシート状に成形し、続いて麺機で幅3.5mmの麺を作成した。この麺を13分間茹で上げ、氷水でしめ、うどんを得た。得られたうどんは、加工小麦粉を使用しない通常のうどんよりも、粉っぽさ、口溶けの悪さが低減された、食感のよい、美味なものであった。
【0050】
[実施例11]パン
小麦全粒粉100重量部をミキサーにて低速攪拌中に、95%エチルアルコール(v/v)37.9重量部を噴霧・攪拌し、エチルアルコールが均一に分散した水分10.8%の粉体を得た。
【0051】
次に、減圧乾燥機を49℃に設定し、6.0kPaで4時間減圧乾燥することにより、エチルアルコール分の揮発した、加工小麦全粒粉を得た。
【0052】
続いて、加工小麦全粒粉100重量部、イースト1.5重量部、イーストフード0.1重量部、マーガリン5重量部、砂糖2重量部、食塩1.7重量部、水60重量部からなる原料を常法により混合・攪拌・発酵し、パン生地を作成した。
【0053】
1個当たり80gに分割・手丸め成型し、温度38℃、湿度85%にて1時間2次発酵をとった後、上下火ともに200℃のオーブンで19分間加熱焼成し、調整全粒粉パンを得た。得られたパンは、加工全粒粉を使用しない通常の全粒粉パンに比べ、粉っぽさ、口溶けの悪さが低減された、食感のよい、さらに全粒粉特有の不快な穀物臭のない美味なものであった。
【0054】
[比較例9]プレッツェル
強力粉100重量部をミキサーにて低速攪拌中に、95%エチルアルコール(v/v)37.9重量部を噴霧・攪拌し、エチルアルコールが均一に分散した水分12.2%の粉体を得た。
【0055】
次に、減圧乾燥機を55℃に設定し、6.0kPaで3時間30分減圧乾燥することにより、アルコール分の揮発した、加工小麦粉を得た。
【0056】
続いて、加工小麦粉90重量部、薄力粉10重量部、澱粉25重量部、ショートニング15重量部、食塩2重量部、重曹3重量部、ドライイースト2重量部、水25重量部からなる原料を常法により混合・攪拌し、プレッツェル生地を作製しようとしたが、通常の強力粉を使用した場合と異なり、つながりがなく、ボロボロで、適切な生地が得られなかった。
【0057】
[比較例10]
薄力粉100重量部をミキサーにて低速攪拌中に、70%エチルアルコール(v/v)56重量部を噴霧・攪拌したところ、水分が22.5%と高かったため、グルテンが結着し、生地様のダマが大量に出来てしまい、求める均質な状態にすることが出来なかった。
【0058】
減圧乾燥機を49℃に設定し、6.0kPaの減圧下で4時間減圧乾燥を行ったが、生地様のダマは、乾燥されても硬いまま残存してしまい、粉体として得ることは出来なかった。
【0059】
[比較例11]ビスケット
薄力粉100重量部をミキサーにて低速攪拌中に、95%エチルアルコール(v/v)5.4重量部を噴霧・攪拌し、エチルアルコールが均一に分散した水分13.7%の粉体を得た。
【0060】
次に、減圧乾燥機を49℃に設定し、6.0kPaで3時間減圧乾燥することにより、アルコール分の揮発した、加工小麦粉を得た。
【0061】
続いて、加工小麦粉100重量部、砂糖25重量部、マーガリン40重量部、全脂粉乳5重量部、全卵5重量部、食塩0.5重量部、重曹1重量部、炭安1重量部、バニラ香料0.2重量部、水10重量部からなる原料を常法により混合・攪拌し、ビスケット生地を作製した。
【0062】
次に、この生地をロータリーモールダーを使用し、直径47mm、厚さ5mmの円柱形に成形し、上下火ともに180℃のオーブンで8分間加熱焼成し、焼菓子を得た。得られた焼菓子は、加工小麦粉を使用しない通常の小麦粉を用いたビスケットと大差のない、通常通りのビスケットとなってしまった。
【0063】
[比較例12]そば
そば粉100重量部をミキサーにて低速攪拌中に、95%エチルアルコール(v/v)37.9重量部を噴霧・攪拌し、エチルアルコールが均一に分散した水分11.9%の粉体を得た。
【0064】
次に、減圧乾燥機を49℃に設定し、6.0kPaの減圧下で4時間減圧乾燥することにより、エチルアルコール分の揮発した、加工そば粉を得た。
【0065】
続いて、加工そば粉100重量部、中力粉25重量部、水50重量部からなる原料を常法により混練し、そば生地を作製した。
【0066】
この生地を麺棒を用いて厚さ2mmに圧延し、適当な幅に裁断してそば麺を得た。そば麺を沸騰した湯で茹で上げ、流水にて洗いそばを得た。得られたそばは、加工そば粉を使用しない通常のそば粉を用いた場合に比べ、そばの風味の無い、味気の無いものになってしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉100重量部に対してエチルアルコール10〜55重量部を、全体の水分が20重量%以下となるような条件下で均一に分散させ、次にこれから50℃以下の温度でエチルアルコールを揮発させることを特徴とする小麦粉の加工方法。
【請求項2】
エチルアルコールの揮発を減圧下で行うことを特徴とする請求項1記載の小麦粉の加工方法。
【請求項3】
小麦粉が全粒粉からなることを特徴とする請求項1記載の小麦粉の加工方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載された加工方法により得られた加工小麦粉。
【請求項5】
請求項4に記載された加工小麦粉を使用した食品。

【公開番号】特開2006−109740(P2006−109740A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299432(P2004−299432)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(390002990)株式会社ロッテ (24)
【Fターム(参考)】