説明

少なくとも一つのエストロゲン、及び/又は少なくとも一つゲスターゲン、及び少なくとも一つのプロバイオティック細菌株を含む、経口投与医薬

本発明は、少なくとも一つのエストロゲン、及び/又は一つのゲスターゲン、及び少なくとも一つのプロバイオティック細菌株、例えば乳酸菌種など、を含む経口投与のための医薬に関する。
本発明の医薬は、経口避妊薬のために又はホルモン治療(HT)のために用いられ、それは、その間、膣内環境の安定化、それ故、感染症、例えば膣真菌症、細菌性膣炎、及び/又は膀胱炎(細菌性膀胱炎)などの予防のために、又は泌尿生殖器症状、例えば性交疼痛及び排尿障害などの予防のために同時に働く。
本発明はさらに、前記医薬を含む投与量単位、及びさらにプロバイオティック細菌株のみを含む投与量単位を含む医薬的組み合わせ調製物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つのエストロゲン、及び/又は少なくとも一つゲスターゲン、及び少なくとも一つのプロバイオティック細菌株(例えば、乳酸菌)を含む医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明による医薬は、経口避妊のため、又はホルモン治療(HT)のために用いられ、よって同時に膣内環境の安定化、及び従って感染症、例えば、膣真菌症、細菌性膣炎、及び/又は膀胱炎(細菌性膀胱炎)などの予防、又は泌尿生殖器症状、例えば、性交疼痛及び排尿障害の予防のために、同時に用いられるように構成されている。
【0003】
受胎調節の分野において積極的な製薬会社は、従来の避妊薬を改良するために絶えず努力している。これは、新規の物質の開発による増大する避妊薬の信頼性、及び改良された使用の快適さのみを含むわけではない。それどころか、彼らはまた、避妊と疾患予防の組み合わせに対する革新的な手法を追い求めている。
【0004】
閉経前の女性において、膣内環境は、性行為により、精液のpHのために、中性から塩基性に傾く。これは、酸性の範囲でのみ存在することができる膣内菌叢、例えば、自然に生ずる乳酸菌が、塩基性の範囲で成長する尿病原菌(カンジダ菌、大腸菌、アトポビウム・バギナエ(A. vaginae)、ガードネレラ・バギナリス(G.vaginalis))によって、抑制され又は置き換えられるという結果を有する。
【0005】
結果として、性的に活動的な女性にとって、前述の泌尿生殖路感染症又は症状に罹患する増大したリスクが存在する。確かに、現在の標準的な治療(メトロニダゾール、クリンダマイシン、及び抗真菌薬など)は、病原性微生物叢の実質的な撲滅を可能にし;しかしながら、それらの作用機構により、それらは、乳酸菌の定着を含む、自然な膣内環境に修復するとこができない(Marellli)。
これに関連して、慢性化をもたらす再感染の増大したリスクが存在する。加えて、繰り返される治療のために、標準的な治療に対して大幅に抵抗力を有する微生物叢の開発の増大したリスクが存在する(Cribby;Hay)。
【0006】
これらの感染症に関連する症状は、頻繁な医療相談及び/又は不十分な自己投薬をもたらす、罹患した女性において、相当な心理的ストレスを引き起こす。プロバイオティック細菌種(直腸の又は膣内の)に関する定着状況、年齢、人種/民族、教育レベル、及び女性の社会的地位に依存して、泌尿生殖路感染症、例えば、細菌性膣炎の高い発生率が存在する(Johannsen)。
細菌性膣炎の発生率に関する文献の記述は、集団調査によって4〜60%変動する。米国では、例えば、全ての性的に成熟した女性の最大3分の1までが、細菌性膣炎に罹患している(Allsworth)。
全女性の70〜75%は、彼女らの人生において、少なくとも一度は外陰膣炎に罹患する:全女性の40〜50%は、何度かそれに罹患する(Sobel)。
それらの高い発症率、及び高い再発率のために、泌尿生殖路感染症は、健康管理のために使用できる予算への相当な負担を意味する。国及び社会に対するさらなるコストは、それによって生じる労働時間の損失を介して生じる。
泌尿生殖路感染症、例えば、細菌性膣炎などは、未熟児出産のリスク因子であり、女性の早産の増大したリスクに関連する(Nelson)。
【0007】
閉経期前後の及び閉経後の女性において、エストロゲン欠乏のために、自然な、乳酸菌を含む膣内叢が、尿路病原性微生物により抑制され、それゆえ、膣内環境は不安定化する。
【0008】
閉経期前後の及び閉経後の女性において、エストロゲンの欠乏は、グリコーゲン陽性の膣上皮の供給の減少、及びそれとともに関連する自然に生じる乳酸菌の減少を導く。結果として、これは、膣内pHの変化に関連する膣内環境の不安定化を導く。膣内環境における、これらの変化は、閉経前の女性についてすでに記述したような同様の結果(病原性微生物侵入)を有する。
【0009】
用語、閉経前の、閉経期前後の、閉経後の、は本発明の文脈上で、当業者によく知られている様態で、用いられる。
【0010】
女性の年齢が増加するにつれて、リスク因子、例えば、加齢に関連した解剖学的変化、免疫学的因子、及び/又は減少した灌流など、はまた増加する。これに関連して、年齢が増加するとともに、増加する発生率、及び慢性化が存在する。特に、高齢者の治療、同様に、複数の病気に罹患した女性患者は、泌尿生殖路感染症の体系立てられた治療を必要とする。この常連の患者において、複数の薬理学的治療の下でしばしば、望まれていない薬物相互作用のリスクはまた、それぞれさらなる治療とともに増加する。
【0011】
すでに先に記載した生殖路感染症の治療後、一般に健康的な膣内環境の回復のために、乳酸菌を含む膣内錠剤又はカプセルの投与が続く。
ここでいくつかの調製物では、エストロゲンの少量の添加、例えば、Gynoflor(登録商標)医薬中のエストリオールは、グリコーゲン放出を増加させるため、及びそれとともに関連して、乳酸菌のためのさらなる栄養的主基盤を提供するために、与えられる。
【0012】
細菌性膣炎(Anukam;May)、又は泌尿生殖路感染症(Falagas;Reid a)に罹患した患者において、乳酸菌投与の好ましい結果は、近年何度も記述されている。
【0013】
近年入手可能な、もっぱら膣の、乳酸菌の存在は、傷つきやすい月経時期の間、治療の継続が許容されない。同様に、錠剤及び座薬の膣内適用は、望ましくない、服薬遵守を抑制する結果、例えば、製剤の残余物の流出、並びに痛み、かゆみ、赤みをもたらす。
しかしながら、プロバイオティック菌株(ラクトバチルス・ラムノサス (Lactobacillus rhamnosus) GR-1、ラクトバチルス・レウテリ(Lactobacillus reuterii)RC-14)の経口投与の方法によって、それは、閉経後の女性において、正常な膣内叢を回復することが可能であることが、すでに記述されている(Petricevic)。
乳酸菌(ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum))は、経口投与後、膣内領域に達し得ることは、これまでにすでに示されている(Marelli;Reid b)。
【0014】
月経周期の機能として(及びそれ故、特定のホルモン状態の機能として)乳酸菌の付着は、すでにエクスビボ/インビトロ試験で実証されている(Chan)。
【0015】
閉経後の女性において、低エストロゲンレベルと乳酸菌定着化の減少の間の関係はまた、観察され得る(Falagas)。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、前述の患者群において、すでに記述した疾患、又は性的活動による疾患のリスクを最小限にする避妊薬又はHT調製物をつくる目的に基づく。
【0017】
本発明はまた、本発明の医薬又は医薬組成物の使用者が、中断後のさらなる期間においても泌尿生殖路感染症に対してさらに、より確実に保護されることを確保する、医薬的組成物(キット)の形態の医薬又は治療形態を開発する目的に基づく。
【0018】
本発明に従って、避妊薬又はHT治療調製物、及びプロバイオティック細菌株の同時の経口使用のために好適な、組み合わせ調製物が提案される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
該当記載無し
【発明を実施するための形態】
【0020】
ホルモンの、経口避妊薬は、どの場合においても、ゲスターゲンを含む(いわゆるPOP、プロゲステロンのみのピル);しかしながら、多くの場合、それらはエストロゲン (多くの場合、それはエチニルエストラジオール)及びゲスターゲンを含む。ここで、異なる投与、及び投与量形態は知られている。
HT調製物は、どの場合においても、エストロゲン(好ましくは、これはエストラジオール又はエストラジオール吉草酸エステル;しかしながらエチニルエストラジオールもまた可能である)を含み、ほとんどの場合ゲスターゲンもまた含む。ここでまた、異なる投与、及び投与量形態は知られている。
【0021】
それ故、本発明の実施形態は、少なくとも一つのエストロゲン、及び/又は一つのゲスターゲン、及び少なくとも一つのプロバイオティック細菌株を含む経口投与のための医薬に関する。
【0022】
さらなる実施形態は、従属する請求項2〜14に記述される。
【0023】
さらなる実施形態は、少なくとも一つのエストロゲン、及び/又は一つのゲスターゲン、及び少なくとも一つのプロバイオティック細菌株を含む、経口投与のための医薬を含む少なくとも20の1日投与量単位、並びに少なくとも1つのプロバイオティック細菌株を含む少なくとも1の1日投与量単位を含む、複数相の医薬的組み合わせ調製物(キット)からなり、ここでキットに含まれる全投与量単位の数は、少なくとも28であり、投与量単位は、最初に少なくとも一つのエストロゲン、及び/又はゲスターゲン、及び少なくとも一つのプロバイオティック細菌株を含む経口投与のための医薬を含む投薬量単位、それからプロバイオティック細菌株のみを含む投薬量単位が服用されるように、準備される。
【0024】
本発明による医薬的組み合わせ調製物のためのさらなる実施形態に関して、従属する項16〜22を参照されたい。
本発明による医薬的組み合わせ調製物は、それが経口避妊薬である場合、具体的には、21+7として、又は24+4形態として、すなわち、21又は24のエストロゲン及びゲスターゲン、及びプロバイオティック細菌株を含む1日投与量単位、及びもっぱらプロバイオティック細菌株のみを含む7又は4の1日投与量単位、として投与される。
【0025】
これらの二つの形態は、以下の二つの図1)、及び2)に、図式的に表される:
【0026】
【表1】

【0027】
さらに、延長された投与周期(「延長された投与計画」)、又は柔軟な投与周期において、本発明による医薬を使用することは可能である。
【0028】
避妊薬のための医薬的組み合わせ調製物における、プロバイオティック細菌株の経口投与のみは、傷つきやすい月経の段階において、膣内環境の安定化、及び乳酸菌での処置に対するエストロゲンの既に言及した相乗効果の十分な発現を可能にする。
【0029】
閉経後の女性において、有益性は、経口投与のために、処置が、性交疼痛及び排尿障害に付随した症状にかかわらず、制限無しに続けられ得る、という事実にある。
【0030】
経口避妊薬、又は経口投与されるHT調製物、及びプロバイオティック細菌株の組み合わせの投与によるあらゆる場合において、プロバイオティック細菌株の連続的な提供が達成される。避妊薬、又はHT調製物の同時摂取のために、服薬遵守は増加する。この結果として、リスク群の女性(性的に活動的な女性、又は閉経前後の、閉経後の女性)は、プロバイオティック細菌株で、これに付随して健康的な膣内環境の安定化/回復を伴って、連続的に処置される。結果として、泌尿生殖路感染症及び症状に対する、改良された、連続的な保護が達成される。
【0031】
本発明による医薬、又は医薬的組み合わせ調製物の投与により、医薬又は医薬的組み合わせ調製物の摂取の中断後、数週間から数ヶ月後にかけて、膣内pH(3.5〜4.2)の安定化が達成される(Gynoflor(登録商標)に関する専門家情報)。これは、中断後の一定期間、医薬、又は医薬的組み合わせ調製物で、泌尿生殖路感染症から、使用者をより確実に保護する当初に設定された問題を解決する。
膣内粘膜からの尿路病原性微生物の上昇、及びその場所から発展する頸部炎症環境は、具体的には最初の3ヶ月において、妊娠している女性が早産するリスク因子として知られている(Simhan)。特に、医薬の服用の中止後の妊娠の早期では、使用者は、それによって、特定の時間、泌尿生殖路感染症から、まだ保護される。その結果として、早産に関する重大なリスク因子が排除される。
【0032】
ゲスターゲンとして、例えば下記の物質は、本発明による医薬、又は本発明による医薬的組み合わせ調製物に用いてもよい:レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエチステロン、ジドロゲステロン、ドロスピレノン、6β,7β;15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-17-プレグナ-4,9(11)-ジエン-21,17β-カルボラクトン(= 9,11-デヒドロ-ドロスピレノン= WO 2009/146811)、3-ベータ-ヒドロキシデソゲストレル、3-ケトデソゲストレル(= エトノゲストレル)、17-デアセチルノルゲスチメート、19-ノルプロゲステロン、アセトキシプレグネノロン、アリルエストレノール、アムゲストン(amgestone)、クロルマジノン、シプロテロン、デメゲストン、デソゲストレル、ジエノゲスト、ジヒドロゲステロン、ジメチステロン、エチステロン、エチノジオール酢酸エステル、フルロゲストン酢酸エステル、ガストリノン(gastrinone)、ゲストデン、ゲストリノン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、リネストレノール(=リノエストレノール)、ミクロゲストン(mecirogestone)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メレンゲストロール、ノメゲストロール、ノルエチンドロン(=ノルエチステロン)、ノルエチノドレル、ノルゲストレル(d-ノルゲストレル及びdl-ノルゲストレルを含む)、ノルゲストリエノン、ノルメチステロン、プロゲステロン、キンゲスタノール、(17アルファ)-17-ヒドロキシ-11-メチレン-19-ノルプレグナ-4,15-ジエン-20-イン-3-オン、チボロン、トリメゲストン、アルゲストンアセトフェニド、ネストロン、プロメゲストン、17-ヒドロキシプロゲステロンエステル、19-ノル-17ヒドロキシプロゲステロン、17アルファ-エチニル-テストステロン、17アルファ-エチニル-19-ノル-テストステロン、d-17ベータ-アセトキシ-13ベータ-エチル-17アルファ-エチニル-ゴン-4-エン-3-オン オキシム、又は国際公開00/66571、特にタナプロゲット、に開示の化合物。レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエチステロン、ドロスピレノン、ジエノゲスト、及びジドロゲステロンは、好ましい。ドロスピレノンは特に好ましい。
【0033】
本発明による医薬、又は本発明による医薬的組み合わせ調製物中のエストロゲンのように、エチニルエストレジオール、メストラノール、キネストラノール、エストラジオール、エストラジオールのエステル、特にそれらの吉草酸エステル、又は安息香酸エステル、エストロン、エストラン、エストリオール、エステトロール、及び、複合化ウマエストロゲンが可能である。ここで、エチニルエストラジオール、エストラジオール、及びエストラジオール吉草酸エステルは好ましく、エチニルエストラジオールは特に好ましい。
【0034】
ゲスターゲン、及び/又はエストロゲンの量は、経口避妊薬又は経口HT調製物で通常知られている量に相当する。
【0035】
例えば、以下で言及するゲスターゲンについて、これらは通常次の通りである:
【0036】
【表2】

【0037】
本発明に従って、ドロスピレノンの1日に投与される好適な量は、0.5〜5 mgである。一つの経口避妊薬(Yasmin(登録商標)、YAZ(登録商標))では、3 mgが投与量単位につき含まれる。経口HT調製物Angeliq(登録商標)については、ドロスピレノンの異なる量を用いた、例えばドロスピレノン 1又は2 mgを用いる変更が開発されている。
【0038】
以下で言及するエストロゲンについて、本発明によって用いられたエストロゲンの量はおよそ:
【0039】
【表3】

【0040】
本発明に従って、例えばエチニルエストラジオールに基づく経口避妊薬での、好ましい1日に投与される量は、10〜50μg、特に好ましくは、10〜30μg、さらに特に好ましくは、20〜30μgである。
経口HT調製物は通常、1〜2 mgの間のエストラジオールを含む。
【0041】
プロバイオティック細菌株は、一つの細菌株、又はいくつかのそのような株の組み合わせのいずれかを意味すると考えられる。
【0042】
本発明による医薬、又は本発明による医薬的組み合わせ調製物における、本発明に従って使用されるプロバイオティック細菌株の例として、以下があげられる:ビフィドバクテリウム属(bifidobacterium)株、乳酸菌種、例えば、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuterii) RC-14、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・カテナフォルメ(Lactobacillus catenaforme)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・パラカゼイLbp PB01、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・アシドフィラスLba EB01、ラクトバチルス・アシドフィラス Lba EB02、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・クリスパータス CTV05、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ファーメンタム RC-14、ラクトバチルス・ファーメンタム B-54、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・プランタルムLbpl PB02、ラクトバチルス Lbxx EB03、ラクトバチルス Lbxx PB03、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ラムノーサス GR-1、及び他の属、又は本質的に同様の性質を有する細菌株。
好ましくは、プロバイオティック細菌株は、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・クリスパータス、及びラクトバチルス・ラムノーサス、又はこれらの好ましい菌の組み合わせ、又はこれらの菌株の少なくとも一つと、上記の一覧からの菌株の少なくとももう一つとの組み合わせである。
【0043】
プロバイオティック細菌株の1日の投与量は、107〜1011CFU(コロニー形成単位)であり、1日の投与量は、好ましくは、107〜109CFUである。
【0044】
製剤化
当業者は、乳酸菌科に属する乳酸菌を含む医薬の製造において、偏性嫌気性細菌は乳酸を分泌するので、制限を考慮しなければならないという事実に精通している:それ故、乳酸菌調製物、例えば、細胞濃縮に続く凍結乾燥による発酵プロセスから大部分は得られる、ラクトバチルス・アシドフィラス由来の乾燥粉末などは、一方では水分、及び上昇した温度に、他方では機械的ストレスにとりわけ傷つきやすい。他方では、ホルモン活性物質を含む医薬のために、錠剤又はフィルムコート錠剤が薬剤の形態として得られるように、多くの場合、製造プロセス、例えば、湿式造粒、錠剤化、及び水性フィルム懸濁液によるフィルムコート化が用いられる。しかしながら、湿式造粒及び、フィルムコーティングのあいだ、製造される医薬は、水分、暖かい環境にさらされ、製剤化合物の錠剤化のあいだ、高圧の適用により固められる。よって乳酸菌調製物の上述の傷つきやすさのために、乳酸菌を含む経口のための医薬は、固められずに、又は少しだけ固めた薬剤形態、例えば、分配された粉末として、又はカプセル中に又は少しだけ固められたチュアブル錠剤として大部分が販売されることは、驚くべきことではない。
【0045】
本発明の使用のための製剤は、それゆえ、最初に、乳酸菌調製物に、及びホルモンに好適な製造方法が、それぞれお互いとは別々に使用され、その後、乳酸菌調製物とホルモン調製物は、一つの医薬に組み合わせられる、といった方法で、好ましくは製造される。
乳酸菌調製物のための好適な製造方法は当業者にはよく知られている。これらは、多くの場合、細胞製造のための発酵プロセス、遠心分離又は分離による細胞濃縮、及びいくつかの医薬的添加物の添加を伴う凍結乾燥による乾燥プロセスを含む。凍結乾燥のための好適な添加物として、例えば、スクロース、微結晶性セルロース、マンニトール、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、又は高分散二酸化ケイ素を用いてもよい。製粉プロセスの終了後、得られたラクトバチルス・アシドフィラスの乾燥粉末は、例えば、一つ又はそれ以上の医薬的添加物と混合される。好適な添加物として、例えば、ラクトース、スクロース、微結晶性セルロース、マンニトール、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、高分散二酸化ケイ素、高酸化物質、ビタミン及び微量成分が、挙げられる(国際公開第2005060937号;欧州特許第00931543号明細書;国際公開第2000195918号)。
ホルモン調製物(経口避妊薬、又はHT調製物)のための好適な製造方法は、当業者に大変よく知られている。
乳酸菌調製物とホルモン調製物の組み合わせは、例えば、カプセル中に充填することによって達成される。このために、例えば、硬ゼラチンカプセルは開けられ、最初にホルモンを含む錠剤又はフィルムコートされた錠剤がそれぞれ充填され、それから粉末形状の乳酸菌調製物の規定量がそれぞれ充填され、その後密封される。
【0046】
経口投与量形態のためのプロバイオティックの製造の細胞数安定性に関する例:
【表4】

【0047】
本発明による医薬で、又は本発明による医薬的組み合わせ調製物で処置した女性において、処置していない女性、すなわち、プロバイオティック細菌株を含まない経口避妊薬又は経口HT調製物のみを服用している女性と比較して、膣内環境の安定化、及びそれとともに関連して、記述された泌尿生殖路感染症の低い発生率は、処置の間、及び処置終了後からさらに1週間の間、観察された。
【0048】
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【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのエストロゲン、及び/又は一つのゲスターゲン、及び少なくとも一つのプロバイオティック細菌株を含む経口投与用医薬。
【請求項2】
前記エストロゲンが、エチニルエストラジオール、メストラノール、キネストラノール(quinestranol)、エストラジオール、及びエストラジオールのエステル、特にそれらの吉草酸エステル又は安息香酸エステル、エストロン、エストラン、エストリオール、エステトロールの化合物、及び複合化ウマエストロゲンの群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記ゲスターゲンが、レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエチステロン、ジドロゲステロン、ドロスピレノン、6β,7β;15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-17-プレグナ-4,9(11)-ジエン-21,17β-カルボラクトン(9,11-デヒドロ-ドロスピレノン)、3-ベータ-ヒドロキシデソゲストレル、3-ケトデソゲストレル(エトノゲストレル)、17-デアセチルノルゲスチメート、19-ノルプロゲステロン、アセトキシプレグネノロン、アリルエストレノール、アムゲストン(amgestone)、クロルマジノン、シプロテロン、デメゲストン、デソゲストレル、ジエノゲスト、ジヒドロゲステロン、ジメチステロン、エチステロン、エチノジオール酢酸エステル、フルロゲストン酢酸エステル、ガストリノン(Gastrinone)、ゲストデン、ゲストリノン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、リネストレノール(リノエストレノール)、ミクロゲストン(mecirogestone)、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メレンゲストロール、ノメゲストロール、ノルエチンドロン(ノルエチステロン)、ノルエチノドレル、ノルゲストレル(d-ノルゲストレル及びdl-ノルゲストレルを含む)、ノルゲストリエノン、ノルメチステロン、プロゲステロン、キンゲスタノール、(17アルファ)-17-ヒドロキシ-11-メチレン-19-ノルプレグナ-4,15-ジエン-20-イン-3-オン、チボロン、トリメゲストン、アルゲストンアセトフェニド、ネストロン、プロメゲストン、17-ヒドロキシプロゲステロンエステル、19-ノル-17ヒドロキシプロゲステロン、17アルファ-エチニル-テストステロン、17アルファ-エチニル-19-ノル-テストステロン、d-17ベータ-アセトキシ-13ベータ-エチル-17アルファ-エチニル-ゴン-4-エン-3-オン オキシム、又はタナプロゲットの化合物の群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
数個のプロバイオティック細菌株を含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬。
【請求項5】
二つのプロバイオティック細菌株を含むことを特徴とする、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
前記のプロバイオティック細菌株、又はプロバイオティック細菌株(複数)が、ビフィドバクテリウム属(bifidobacterium)株、乳酸菌(Lactobacillus)種、例えば、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuterii)RC-14、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・カテナフォルメ(Lactobacillus catenaforme)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・パラカゼイLbp PB01、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・アシドフィラスLba EB01、ラクトバチルス・アシドフィラス Lba EB02、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・クリスパータス CTV05、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ファーメンタム RC-14、ラクトバチルス・ファーメンタム B-54、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・プランタルムLbpl PB02、ラクトバチルス Lbxx EB03、ラクトバチルス Lbxx PB03、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ラムノーサス GR-1、及び他の属、又は本質的に同様の性質を有する細菌株など、の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
少なくとも一つのプロバイオティック細菌株が、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・クリスパータス、及びラクトバチルス・ラムノーサスの群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
ゲスターゲンの1日の投与量として、以下のものが、含まれることを特徴とする、請求項1に記載の医薬。
【表1】

【請求項9】
1日の投与量として、0.5〜3 mg、好ましくは3 mg、のドロスピレノンが、経口避妊薬に含まれることを特徴とする、請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
1日の投与量として、0.5〜2 mgのドロスピレノンが、経口HT調製物に含まれることを特徴とする、請求項8に記載の医薬。
【請求項11】
前記エストロゲンの1日の投与量として、以下のものが、含まれることを特徴とする、請求項1に記載の医薬。
【表2】

【請求項12】
1日の投与量として、10〜50μg、好ましくは10〜30μg、特に好ましくは20〜30μg、のエチニルエストラジオールが、経口避妊薬に含まれることを特徴とする、請求項11に記載の医薬。
【請求項13】
1日の投与量として、0.5〜2 mgのエストラジオールが、経口HT調製物に含まれることを特徴とする、請求項11に記載の医薬。
【請求項14】
プロバイオティック細菌株の1日の投与量として、107〜1011CFU(コロニー形成単位)、好ましくは107〜109CFUが、含まれることを特徴とする、請求項1に記載の医薬。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬を含む少なくとも20の1日投与量単位、及び少なくとも1つのプロバイオティック細菌株を含む少なくとも1の1日投与量単位、を含むキットであって、前記キットに含まれる全ての投与量単位の数が、少なくとも28であり、投与量単位は、最初に請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬を含む投与量単位、次にプロバイオティック細菌株のみを含む投与量単位が服用されるように準備されている、キット。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬を含む20〜30の1日投与量単位、及びプロバイオティック細菌株を含む1〜10の1日投与量単位を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬を含む21〜26の1日投与量単位、及びプロバイオティック細菌株を含む2〜7の1日投与量単位を含み、キットの含まれる全ての投与量単位の数が28である、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬を含む21〜26の1日投与量単位、及びプロバイオティック細菌株を含む2〜7の1日投与量単位を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬を含む21の1日投与量単位、及びプロバイオティック細菌株を含む7の1日投与量単位を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬を含む24の1日投与量単位、及びプロバイオティック細菌株を含む4の1日投与量単位を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項21】
キット中に含まれる全ての投与量単位の数が28であることを特徴とする、請求項19に記載のキット。
【請求項22】
キット中に含まれる全ての投与量単位の数が28であることを特徴とする、請求項20に記載のキット。

【公表番号】特表2012−527413(P2012−527413A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511177(P2012−511177)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002965
【国際公開番号】WO2010/133314
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(300049958)バイエル ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】