説明

少なくとも一つのレチノイド及び過酸化ベンゾイルを含むゲル組成物

【課題】過酸化ベンゾイル及びレチノインを含む物理的に安定なゲル化組成物に対する必要性は未だ存在する。
【解決手段】生理学的に許容可能な媒体中に、少なくとも一つのレチノイド、分散した過酸化ベンゾイル、及び少なくとも一つのpH非依存性ゲル化剤を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理学的に許容可能な媒体中に、少なくとも一つのレチノイド、分散した過酸化ベンゾイル、及び少なくとも一つのpH非依存性ゲル化剤を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのクラスの活性成分の使用は、特に皮膚科学的疾患の治療のためにしばしば使用されている治療上のツールである。
特に、皮膚炎の治療において、例えばヒドロコルチゾン、ミコナゾール、又はベータメタゾンバレラートのようなコルチコステロイド、抗ヒスタミン剤(例えばミゾラスチン)、及び/又は角質溶解剤、たとえばサリチル酸を使用することが周知に実施されている。各種の抗真菌剤、例えばアリルアミン誘導体、トリアゾール、抗細菌剤、または抗微生物剤、例えば抗生物質、キノロン、及びイミダゾールもまた、皮膚科学的疾患の治療において従来組み合わされている。過酸化物、ビタミンD、及びレチノイドもまた、皮膚または粘膜と関連する各種の病理、特にざ瘡の局所的治療のために記載されている。
いくつかの局所的治療の組み合わせ(抗生物質、レチノイド、過酸化物、及び亜鉛)もまた、活性成分の効力を増大し、その毒性を減少するために皮膚科学において使用されている(Cunliffe W.J., J. Dermatol. Treat., 2000, 11 (suppl2), pp. 13-14)。
各種の皮膚科学製品の複数回の適用は、患者に対して比較的煩わしく制限的なものであろう。
かくして、良好な化粧品の使用性を与える安定な組成物中に皮膚科学的病気に有効であり、単一回の適用と患者が快適性を見出す使用性を可能にする新規な治療を得るための探求の価値が予期されるであろう。
当業者に提案されたこの一連の治療の中では、同じ組成物中に過酸化ベンゾイルとレチノイドを組み合わせることを当業者に奨励するものは何もなかった。
【0003】
しかしながら、そのような組成物の製剤化は、いくつかの問題を呈する。
【0004】
第一に、過酸化ベンゾイルの効力は、それが皮膚と接触された際のその分解と関連している。特にそれは、所望の効果を導くこの分解の間で生ずるフリーラジカルの酸化特性である。かくして、過酸化ベンゾイルの最適な効力を維持するために、使用前、即ち貯蔵の間の分解を防止することが重要である。
【0005】
過酸化ベンゾイルは不安定な化合物であり、そのことがそれを最終製品に製剤化することを困難にする。
【0006】
過酸化ベンゾイルの溶解性及び安定性は、エタノール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール400(PEG400)と水の各種の混合物において、Chellquist等によって研究された(Chellquist E.M.及びGorman W.G., Pharm. Res., 1992, Vol 9: 1341-1346)。過酸化ベンゾイルは、以下の表に示されているように、特にPEG400及びエタノールにおいて安定である:
【0007】
【表1】

【0008】
前記文献は更に、過酸化ベンゾイルの安定性が、製剤の化学的組成及び貯蔵温度によって著しく影響されることを述べている。過酸化ベンゾイルは非常に反応性であり、そのパーオキシド結合の不安定性のため低温で溶液中で分解する。かくして著者らは、溶液中の過酸化ベンゾイルが、溶媒のタイプとその濃度の関数として、研究された全ての溶媒において多かれ少なかれ迅速に分解すると述べている。
PEG400(0.5mg/g)、エタノール、及びプロピレングリコールにおける過酸化ベンゾイルについての分解時間は、それぞれ40℃で1.4日、29日、及び53日である。そのような分解は、販売を企図した製品の調製を許容しない。
【0009】
さらに、過酸化ベンゾイルは、水及びプロピレングリコールにおいて懸濁状態(即ち分散形態)に置かれた場合、90日間の貯蔵の後で分解しないため、より安定であることが知られている。かくして、溶液中での過酸化ベンゾイルの迅速な不安定性の問題を制限するために、分散形態で過酸化ベンゾイルを製剤化することの利点が見出されている。しかしながらこのタイプの製剤は、最終製品中の過酸化ベンゾイルの分解が未だ観察されるため、完全に満足なものであるとはいえない。
【0010】
過酸化ベンゾイルとレチノイドの両者を含む組成物の調製において解消されるべき別の困難性は、ほとんどのレチノイドが、自然の酸化、可視光、及び紫外光に特に感受性であり、過酸化ベンゾイルが強力な酸化剤であるため、同じ製剤におけるこれらの化合物の化学的適合性が、物理的及び化学的安定性の点で多くの問題を呈することである。
【0011】
2種のレチノイドの安定性の研究が、一方はレチノイド(トレチノインまたはアダパレン)を含み、他方は過酸化ベンゾイルに基づく二つの市販の製品を組み合わせることによって実施された(B. Martin等, Br. J. Dermatol. (1998) 139, (suupl.52), 8-11)。過酸化ベンゾイルに基づく製剤の存在は、酸化感受性レチノイドの非常に迅速な分解を導く:トレチノインの50%が2時間で分解し、95%が24時間で分解すると測定される。レチノイドがアダパレンである組成物では、アダパレンの分解は24時間に亘り測定されなかった。この研究は、過酸化ベンゾイルが分解するようになり、経時的に酸化感受性レチノイドを分解し、次第に最終製品中に安息香酸を放出することを確認する。対照的に、接触状態に置いた際の二つの組成物の物理的安定性に関する指標、または同じ組成物中に二つの活性成分を組み合わせることによって最終的に得られるであろう治療上の活性に関する指標は変化がない。
過酸化ベンゾイルの存在がゲルのタイプの組成物を化学的及び物理的に不安定化したことが一般的に知られていたことを考慮して、ゲルのタイプの安定な組成物を得るために、これらの二つの活性剤を組み合わせることについての奨励は存在しなかった。
【0012】
ここで、過酸化ベンゾイル及びレチノイドの分解が、それらを含む組成物の効力を損なうために所望されないことは明らかである。
【0013】
さらに、特に製薬組成物または化粧品組成物である場合の最終製品は、それぞれその製薬学的性質または化粧品の性質を確保するために、その貯蔵機関を通じて正確な物理化学的基準を維持しなければならない。これらの基準の中では、流動学的特性が維持されることが必要である。それらは適用の間の組成物の挙動及びきめを規定するが、活性成分の放出特性[1998 SFSTP Commission Report]及び活性成分が分散形態でそこに存在する場合の製品の均質性をも規定する。
【0014】
特に、ゲルの形態の過酸化ベンゾイルとレチノイドの製剤は、特にべたつき感が皮膚に残ることを避けるため、ざ瘡の治療のような局所的治療に有利である。
特に過酸化ベンゾイルを含む組成物を調製する際に解消されるべき別の困難性は、組成物がゲルの形態である場合、過酸化ベンゾイルの分解の間で放出される安息香酸によってゲル化剤が不安定化することである。
特に、過酸化ベンゾイルを有するこれらの組成物を製剤化するために一般的に使用される増粘剤は、単独でまたはシリカートと組み合わせたアクリル酸ポリマー(カーボマー)及びセルロースである。
ここで、水性ゲルタイプの組成物におけるカーボマーの使用は、過酸化ベンゾイルの化学的安定性の観点、または流動学的安定性の観点で、良好な結果を与えないものである。Bollingerによって記載されたように(Bollinger, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, vol 5)、使用されるカーボマーの中和剤に依存して、5から20%の過酸化ベンゾイルが40℃で2ヶ月後に損失することが観察されている。更に、安息香酸の放出は、カーボマーの脱重合を引き起こし、粘度の減少を導いて相分離を生ずるであろう。ヒドロキシプロピルセルロース及びアルミニウムマグネシウムシリカートの混合物からなる他のゲルでは、経時的な粘度の減少が観察され、懸濁物としての活性剤の沈降、及び最終製品における分散物の不均一性を引き起こす。
過酸化ベンゾイルゲルのこの不安定性は、その効力及び化粧品の使用性を損なう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Cunliffe W.J., J. Dermatol. Treat., 2000, 11 (suppl2), pp. 13-14
【非特許文献2】Chellquist E.M.及びGorman W.G., Pharm. Res., 1992, Vol 9: 1341-1346
【非特許文献3】B. Martin等, Br. J. Dermatol. (1998) 139, (suupl.52), 8-11
【非特許文献4】Bollinger, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, vol 5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
過酸化ベンゾイル及びレチノインを含む物理的に安定なゲル化組成物に対する必要性は未だ存在する。
本出願人はここで、驚くべきことに、分散した、遊離状態のまたはカプセル化した過酸化ベンゾイル、少なくとも一つのレチノイド、及びpH非依存性ゲル化剤を含み、良好な物理的安定性、即ち4から40℃の間の温度で経時的に粘度の下降を示さず、二つの活性剤(過酸化ベンゾイル及びレチノイド)の良好な化学的安定性を維持する、即ち4から40℃の間の温度で経時的に活性剤の分解が観察されない、この必要性を満たす組成物を生産した。
本出願人はまた、驚くべきことに、活性成分の完全な分散が、特定の調製方法に従うことによって得ることができることを発見した。加熱することなく実施されるこの調製方法は、組成物中の二つの活性剤の最適なサイズ及び均一な分散を得ることができると同時に、製品の物理的安定性を確保できる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かくして本発明は、生理学的に許容可能な媒体中に、少なくとも一つのレチノイド、分散した過酸化ベンゾイル、及び少なくとも一つのpH非依存性ゲル化剤を含む組成物に関する。
【0018】
本発明に係る組成物は、好ましくは水性ゲルの形態で存在する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
用語「水性ゲル」は、水性相中に、コロイド状懸濁物(ゲル化剤)から形成される粘弾性の塊を含む組成物を意味する。
【0020】
用語「pH非依存性ゲル化剤」は、過酸化ベンゾイルによる安息香酸の放出によって引き起こされるpHの変化の影響下でさえ、懸濁物中にレチノイド及び過酸化ベンゾイルを保持するのに十分な粘度を組成物に与えることが可能なゲル化剤を意味する。
【0021】
非制限的な例として、ポリアクリルアミドファミリーのゲル化剤、例えばSEPPIC社によりSimulgel 600の名称で市販されている、アクリルアミドナトリウムアクリロイルジメチルタウラートコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルバート80の混合物、ポリアクリルアミド/イソパラフィンC13-14/ラウレス-7の混合物、例えばSEPPIC社によりSepigel 305の名称で市販されている製品、疎水性鎖に結合したアクリルポリマーのファミリー、例えばAculyn 44(プロピレングリコール(39%)及び水(26%)の混合物中に35重量%で存在する、150または180molのエチレンオキシドを含むポリエチレングリコール、デシルアルコール、及びメチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアナートを少なくとも成分として含む重縮合物))の名称で市販されているPEG-150/デシル/SMDIコポリマー、変性デンプンのファミリー、例えばStructure Solanaceの名称で市販されている変性ジャガイモデンプン、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
好ましいゲル化剤は、Simulgel 600またはSepigel 305、あるいはこれらの混合物のようなポリアクリルアミドから由来する。
【0023】
前述のようなゲル化剤は、好ましくは0.1から15%の範囲、より好ましくは0.5から5%の範囲の濃度で使用されて良い。
【0024】
本発明に係る組成物は、少なくとも一つのレチノイドを含む。
【0025】
用語「レチノイド」は、RAR及び/またはRXRレセプターに結合するいずれかの化合物を意味する。
【0026】
好ましくはレチノイドは、特許出願EP 0 199 636に記載されたようなベンゾナフタレンレチノイドのファミリーから選択される化合物である。特に、アダパレン及びその前駆体及び/または誘導体が好ましいであろう。
【0027】
用語「レチノイド前駆体」は、レチノイドの直近の生物学的前駆体または基質、並びにその化学的前駆体を意味する。
【0028】
用語「レチノイド誘導体」は、レチノイドの代謝誘導体及び化学的誘導体の両者を意味する。
【0029】
他のレチノイドは、以下の特許または特許出願に記載されたものから選択されて良い:US 4,666,941、US 4,581,380、EP 0 210 929、EP 0 232 199、EP 0 260 162、EP 0 292 348、EP 0 325 540、EP 0 359 621、EP 0 409 728、EP 0 409 740、EP 0 552 282、EP 0 584 191、EP 0 514 264、EP 0 514 269、EP 0 661 260、EP 0 661 258、EP 0 658 553、EP 0 679 628、EP 0 679 631、EP 0 679 630、EP 0 708 100、EP 0 709 382、EP 0 722 928、EP 0 728 739、EP 0 732 328、EP 0 740 937、EP 0 776 885、EP 0 776 881、EP 0 823 903、EP 0 832 057、EP 0 832 081、EP 0 816 352、EP 0 826 657、EP 0 874 626、EP 0 934 295、EP 0 915 823、EP 0 882 033、EP 0 850 909、EP 0 879 814、EP 0 952 974、EP 0 905 118、EP 0 947 496、WO 98/56783、WO 99/10322、WO 99/50239、WO 99/65872。
【0030】
言うまでもなく、本発明に係る組成物中の過酸化ベンゾイル及びレチノイドという二つの活性剤の量は、選択される組み合わせ、かくして特に考慮されるレチノイド及び所望される治療の性質に依存するであろう。
【0031】
好ましいレチノイドの濃度は、組成物の総重量に対して0.0001から20重量%の間である。
【0032】
過酸化ベンゾイルは、遊離形態で、またはいずれかの多孔性の支持体上若しくは前記支持体中に吸収された形態というカプセル化された形態で使用されても良い。それは例えば、Advanced Polymer System社によるMicrosponges P009A Benzoyl peroxideの名称で市販されているマイクロスポンジのような、多孔性のミクロスフェアからなるポリマーシステム中にカプセル化された過酸化ベンゾイルであっても良い。
【0033】
大きな効果を得るために、本発明に係る組成物は、有利には組成物の総重量に対して0.0001から20重量%の過酸化ベンゾイル及び0.0001から20重量%のレチノイド、好ましくは組成物の総重量に対して0.025から10重量%の過酸化ベンゾイル及び0.001から10重量%のレチノイドを含む。
【0034】
例えばざ瘡を治療するための組成物において、過酸化ベンゾイルは好ましくは組成物の総重量に対して、好ましくは2から10重量%、とりわけ2.5から5重量%の範囲の濃度で使用される。レチノイドに関して言うと、組成物の総重量に対して、一般的に0.05から1重量%の範囲の濃度で、このタイプの組成物において使用される。
【0035】
有利には、レチノイド及び過酸化ベンゾイルの粒径は、粒子の数値に関して少なくとも80%、好ましくは粒子の数値に関して少なくとも90%が、25μm未満の直径を有し、粒子の数値に関する少なくとも99%が、100μm未満の直径を有するように存在する。
【0036】
本発明によれば、過酸化ベンゾイルおよびレチノイドを含むゲルは、有利には少なくとも水を含み、浸透促進剤及び/または液体湿潤性界面活性剤を含んでも良い。
【0037】
本発明の組成物は、組成物の総重量に対して、好ましくは0から20重量%の範囲、より好ましくは2から6重量%の範囲の濃度で、一つ以上の浸透促進剤を含んでよい。それらは一般的に、使用されるパーセンテージで活性剤を分解すべきではなく、過酸化ベンゾイルに有害な発熱反応を引き起こすべきではなく、活性剤の満足な分散を補助すべきであり、消泡特性を有すべきではない。好ましく使用される浸透促進剤としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールジペラルゴナート、ラウログリコール、及びエトキシジグリコールのような化合物が挙げられるが、これらに制限されない。
【0038】
特に好ましい浸透促進剤はプロピレングリコールである。
【0039】
有利には、本発明に係る組成物は、好ましくは0から10%の範囲、より好ましくは0.1から2%の範囲の濃度で、一つ以上の液体湿潤性界面活性剤を含む。湿潤力は、表面に広がる液体の傾向である。それらは好ましくは、7から9のHLB(親水性-新油性バランス)値を有する界面活性剤、またはポリオキシエチレン化及び/またはポリオキシプロピレン化コポリマーのような非イオン性界面活性剤である。それらは、加熱する必要なく、本発明の組成物に容易に取り込めるように液体であるべきである。
【0040】
好ましく使用される湿潤剤として、ポロキサマーファミリーの化合物、とりわけポロキサマー124及び/またはポロキサマー182が使用できるが、このリストに制限されない。
【0041】
特に好ましい液体湿潤性界面活性剤はポロキサマー124である。
【0042】
本発明の組成物は、化粧品業界または製薬業界で通常使用されるいずれかの添加剤、例えば金属イオン遮蔽剤、抗酸化剤、サンスクリーン剤、防腐剤、フィラー、電解質、湿潤剤、着色料、一般的な鉱物のまたは有機の酸または塩基、香料、鉱油、化粧品活性剤、保湿剤、ビタミン、必須脂肪酸、スフィンゴリピド、自己日焼け化合物、例えばDHA、及びカルマン、及びアラントインのような皮膚のための保護剤を含んでも良い。言うまでもなく、当業者はこのまたはこれらの更なる化合物、及び/またはその量を選択するのに注意を払い、本発明に係る組成物の有利な特性が、負に影響されない、または実質的に負に影響されないようにするであろう。
【0043】
これらの添加剤は、本発明の組成物の総重量に対して0から20重量%の割合で組成物中に存在して良い。
【0044】
金属イオン遮蔽剤の例として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及びその誘導体またはその塩、ジヒドロキシエチルグリシン、クエン酸、及び酒石酸、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0045】
防腐剤の例として、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ジアゾリジニルウレア、及びパラベン、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
湿潤剤の例として、グリセロール及びソルビトールが挙げられる。
【0047】
特に本発明は、皮膚、外皮、または粘膜に対する局所適用のための製薬または化粧品組成物であって、皮膚、外皮、または粘膜に対する局所適用と適合可能な生理学的に許容可能な媒体中に、
− 0から90%、好ましくは5から25%、特に10から20%の水;
− 0から10%、好ましくは0から2%、特に0から0.5%の液体湿潤性界面活性剤;
− 0から20%、好ましくは0から10%、特に2から5%の浸透促進剤;
− 0.0001から20%、好ましくは0.025から10%の過酸化ベンゾイル;
− 0.0001から20%、好ましくは0.001から10%のレチノイド;及び
− pH非依存性ゲル化剤と水を含む水性相
を含む活性相(重量パーセンテージで表される)を含むことを特徴とする組成物に関する。
【0048】
本発明に係るエマルションの水性相は、水、ヤグルマソウ水のような花の水、またはVittelの水、Vichy盆地の水、d'Uriageの水、la Roche Posayの水、la Bourbouleの水、d'Enghien-les-Bainsの水、Saint Gervais-les-Bainsの水、Neris-les-Bainsの水、d'Allevard-les-Bainsの水、Digneの水、Maizieresの水、Neyrac-les-Bainsの水、Lons-le-Saunierの水、Eaux Bonnesの水、Rochefortの水、Saint Christauの水、Fumadesの水、Tercis-les-bainsの水、d'Aveneの水、またはd'Aix les Bainsの水から選択される天然の鉱水若しくは湧き水を含んでも良い。
【0049】
前記水性相は、組成物の総重量に対して10から90重量%の間、好ましくは20から80重量%の間の含量で存在して良い。
【0050】
本発明に係る好ましい組成物は、
− 2.50%の過酸化ベンゾイル;
− 0.10%のアダパレン;
− 0.10%のEDTA二ナトリウム;
− 4.00%のグリセロール
− 4.00%のプロピレングリコール
− 0.05%のドキュセートナトリウム
− 0.20%のポロキサマー124
− 4.00%のアクリルアミドナトリウムアクリロイルジメチルタウラートコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルバート80;
− pH5にする適量の水酸化ナトリウム;
を水中に含む。
【0051】
本発明の主題はまた、医薬品としての前述の組成物である。
【0052】
本発明はまた、化粧品及び皮膚科学における前述の新規な組成物の使用に関する。
【0053】
本発明の主題は、室温(RT)、即ち20から25℃で、活性相、水性相、及びゲル化相の生産を含み、以下の工程:
a)水、及び任意にキレート化剤及び/または浸透促進剤及び/または湿潤剤を含む水性相を調製する工程;
b)レチノイド、過酸化ベンゾイル、及び任意に液体湿潤性界面活性剤及び/または浸透促進剤の水中の混合物を含む活性相を攪拌しながら調製する工程;
c)活性相を攪拌しながら水性相に導入する工程;及び
d)工程c)から得られる混合物中にゲル化剤を攪拌しながら導入する工程;
を連続して含む、水性ゲルタイプの組成物の調製方法である。
【0054】
一つの実施態様では、活性相、水性相、及びゲル化相の室温での生産を含む、水性ゲル組成物の調製方法は、以下の工程:
a)水、及び任意にキレート化剤及び/または浸透促進剤及び/または湿潤剤を含む水性相を調製する工程;
b)任意に液体湿潤性界面活性剤及び/または浸透促進剤と、一方がレチノイドとの水中の混合物、他方が過酸化ベンゾイルとの水中の混合物の、二つの活性剤を攪拌しながら調製する工程;
c)活性相を攪拌しながら水性相に導入する工程;及び
d)工程c)から得られる混合物中にゲル化剤を攪拌しながら導入する工程;
を連続して含む。
【0055】
これらの方法の一つによって調製された水性ゲルは、特により単純であるため、及びこの方法の最終製品へのゲル化剤の導入が、封入により粒子のより優れた分散を得ることを可能にし、これらのゲルは皮膜形成性であっても良く、かくして発汗を制限してもよいため、他のすでに既知の水性ゲルの調製に対して多くの利点を提供することが見出された。粒子の数値に関して少なくとも80%、好ましくは粒子の数値に関して少なくとも90%が25μm未満の直径を有し、粒子の数値に関して少なくとも99%が組成物中で100μm未満の直径を有する。
【0056】
過酸化ベンゾイルの角質溶解活性、殺菌活性、及び抗炎症活性のため、並びに細胞分化及び増殖の分野におけるレチノイドの顕著な活性のため、本発明の組成物は特に、以下の治療分野において適している:
1)分化及び増殖に関連する角質化疾患と関連する皮膚科学的疾患の治療、特に一般的なざ瘡、面皰壊死、多形核白血球、酒さ性ざ瘡、結節性ざ瘡、集簇性ざ瘡、老年性ざ瘡、日光ざ瘡のような二次的ざ瘡、医薬関連ざ瘡、または職業上のざ瘡、及び化膿性汗腺炎の治療;
2)他のタイプの角質化疾患、特に魚鱗癬、魚鱗形態疾患、ダリエ病、手のひらの角皮症、白斑症、及び白斑形態疾患、及び皮膚または粘膜(頬)の苔癬の治療;
3)炎症及び/または免疫アレルギー成分を有する角質化疾患と関連する他の皮膚科学的疾患、特に全ての形態の乾癬、天候性の皮膚、粘膜、または爪の乾癬、及び乾癬性リューマチ、または皮膚アトピー、例えば湿疹、または呼吸性アトピー、または歯内肥大の治療;化合物は、毛包炎のような角質化疾患を示さない特定の炎症性疾患において使用されて良い;
4)良性または悪性にかかわらず、及びウイルス起源または他のものにかかわらず、全ての皮膚または表皮増殖、例えば一般的ないぼ、扁平いぼ、伝染性軟属腫、及びいぼ状表皮異形成、葉状口腔乳頭腫症、及び化学線角化症の場合における紫外線によって誘導される増殖の治療;
5)光誘導性または加齢性の老化にかかわらず、皮膚の老化の修復または解消、または色素沈着、あるいは光誘導性または加齢性の老化と関連するいずれかの病理の減少;
6)瘢痕形成疾患及び皮膚潰瘍の予防的なまたは治癒的な治療、皮膚萎縮線条の予防または修復、または瘢痕形成の促進;
7)ざ瘡の過剰脂漏症または単純な脂漏症のような皮脂機能の疾患の解消;
8)皮膚上の真菌起源のいずれかの疾患、例えば足白癬及び癜風の治療;
9)免疫学的成分を有する皮膚科学疾患の治療;
10)UV線への曝露によって引き起こされる皮膚疾患の治療;及び
11)特に微生物コロニー形成または乾癬によって引き起こされる、毛髪の小胞の周辺組織の炎症または感染と関連する皮膚科学的疾患、膿痂疹、脂漏性皮膚炎、毛包炎、または毛瘡、あるいはいずれかの他の細菌剤または真菌剤に関連する疾患の治療。
【0057】
本発明に係る組成物は、一般的なざ瘡の予防的または治癒的な治療に特に適している。
【0058】
本発明の主題は、細胞分化及び/または増殖疾患及び/または角質化疾患と関連する皮膚科学疾患の予防または治療のための製薬調製物の製造、並びに一般的なざ瘡を予防または治療するための製薬調製物の製造に関する。
【0059】
本発明に係る組成物は、特にざ瘡傾向の皮膚の治療のための、毛髪の再生のための、毛髪の損失の予防のための、皮膚または毛髪のべたついた外観を解消するための、日光の有害な効果からの保護における、生理学的な乾燥肌の治療における、あるいは光誘導性または加齢性の老化の予防及び/または解消のための、化粧品への適用が見出される。
【0060】
本発明に係る組成物はさらに、身体及び毛髪の衛生における適用が見出される。
【0061】
かくして本発明はさらに、ざ瘡傾向の皮膚の治療のための、毛髪の再生のための、または毛髪の損失の予防のための、皮膚または毛髪のべたついた外観を解消するための、日光の有害な効果からの保護における、または生理学的な乾燥肌の治療における、あるいは光誘導性または加齢性の老化の予防及び/または解消のための、本発明に係る組成物の美容的使用に関する。
【0062】
以下の製剤例は、本発明に係る組成物を説明するものであるが、その範囲を制限するものではない。非制限的な態様で述べられた、本発明に係る組成物の調製方法の実施例、及び前記組成物の部地理的及び化学的安定性を説明する実施例もまた記載されている。
【実施例】
【0063】
I.製剤例
以下の組成物(実施例1から5)において、各種の構成成分の割合は、組成物の総重量に対する重量パーセンテージとして表されている。
【0064】
実施例1:
【表2】

【0065】
実施例2:
【表3】

【0066】
実施例3:
【表4】

【0067】
実施例4:
【表5】

【0068】
実施例5:
【表6】

【0069】
II. 調製方法の実施例
実施例6:
調製方法の実施例は、非制限的な態様で与えられている。提示された調製方法は、実施例3の主題である組成物のものである:
【0070】
【表7】

【0071】
提示された調製方法は、実施例5の主題である組成物のものである:
【表8】

【0072】
III.安定性の研究
実施例6:流動閾値(単位:Pa.s−1)を測定することによる組成物の物理的安定性
実施された試験は、レオグラムとして既知のプロッティング曲線に対する粘度測定であり、所定の速度勾配γが剪断ストレスτを測定することを可能にし、所定の剪断ストレスτが速度勾配γを測定することを可能にする("Initiation a la rheologie" [Introduction to rheology] Gouarraze - Grossiord 1991; "La Viscosite et sa mesure dans les pharmacopees [Viscosity and its measurement in pharmacopoeias]; L. Molle, Journal Pharma Belg. 1975, 30, 5-6, 597-619)。
【0073】
用語「収量値」は、ファンデルワールスタイプの凝集力を解消し、流動を生ずるのに必要とされる力(最小剪断ストレス)を意味する。
【0074】
収量値(τ0)は、視覚的に(レオグラムの起源でy軸)または計算により(数学的モデルの応用)のいずれかで推定される。
【0075】
使用されたゲルの組成:
【0076】
【表9】

【0077】
【表10】

【0078】
【表11】

RT:室温
T40℃:40℃での貯蔵
本発明に係る組成物の収量値は、室温及び40℃の両者で経時的に迅速に粘度が下降する他の二つの例の水性ゲルとは異なり、経時的に各温度で安定である。これらの結果は、標準的な水性ゲルの組成物とは異なり、本発明に係る組成物の経時的に非常に良好な物理的安定性を示す。
【0079】
実施例7:組成物中の過酸化ベンゾイルの量(単位:パーセンテージ)を測定することによる、貯蔵温度の関数としての経時的な過酸化ベンゾイルの安定性
以下の表に提示された過酸化ベンゾイル(BPO)のパーセンテージは、ヨードメトリーにより過酸化ベンゾイル濃度を測定することによって得られた。適切な量の組成物を、はじめに精製水に、次いでアセトニトリルに溶解し、ヨウ化カリウム溶液の作用に掛ける。ヨウ化カリウムを加えた場合、白色から褐色への色の変化が生じ、これは組成物中の過酸化ベンゾイルの存在を示す。放出されたヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液を使用して滴定する:
+2Na→2NaI+Na
【0080】
以下の表に与えられた過酸化ベンゾイルのパーセンテージは、導入された理論的な量に対する製品で測定された過酸化ベンゾイルのパーセンテージに対応する。
【0081】
【表12】

【0082】
実施例2の組成物において、経時的な過酸化ベンゾイルのパーセンテージは安定なままであり、室温及び40℃の両者で100%に等しい。従来技術の水性ゲルの他の2つの実施例において存在する過酸化ベンゾイルは、経時的に有意に下降する。3ヵ月後、室温で6%まで、T40℃で少なくとも14%である過酸化ベンゾイルの損失が観察されるであろう。これらの結果は、本発明に係る組成物が、標準的な組成物とは異なり、40℃でさえ、経時的な過酸化ベンゾイルの非常に良好な安定性を許容することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容可能な媒体中に、少なくとも一つのレチノイド、分散した過酸化ベンゾイル、及び少なくとも一つのpH非依存性ゲル化剤を含む組成物であって、前記pH非依存性ゲル化剤が、ポリアクリルアミドファミリーからなる群より選択される、組成物。
【請求項2】
0.1から15%の間のpH非依存性ゲル化剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
pH非依存性ゲル化剤がポリアクリルアミドであることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
0.0001から20%のレチノイドを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
レチノイドがアダパレンであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
0.0001から20%の過酸化ベンゾイルを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
過酸化ベンゾイルがカプセル化または遊離状態であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
浸透促進剤を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
20%までの浸透促進剤を含むことを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
浸透促進剤がプロピレングリコールであることを特徴とする、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
液体湿潤性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
10%までの液体湿潤性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
液体湿潤性界面活性剤がポロキサマーであることを特徴とする、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
− 2.50%の過酸化ベンゾイル;
− 0.10%のアダパレン;
− 0.10%のEDTA二ナトリウム;
− 4.00%のグリセロール
− 4.00%のプロピレングリコール
− 0.05%のドキュセートナトリウム
− 0.20%のポロキサマー124
− 4.00%のアクリルアミドナトリウムアクリロイルジメチルタウラートコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルバート80;
− pH5にする適量の水酸化ナトリウム;
を水中に含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
医薬品としての、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
室温で、以下の工程:
a)水、及び任意にキレート化剤及び/または浸透促進剤及び/または湿潤剤を含む水性相を調製する工程;
b)レチノイド、過酸化ベンゾイル、及び任意に液体湿潤性界面活性剤及び/または浸透促進剤の水中の混合物を含む活性相を攪拌しながら調製する工程;
c)活性相を攪拌しながら水性相に導入する工程;及び
d)工程c)から得られる混合物中にゲル化剤を攪拌しながら導入する工程;
を連続して含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項17】
室温で、以下の工程:
a)水、及び任意にキレート化剤及び/または浸透促進剤及び/または湿潤剤を含む水性相を調製する工程;
b)任意に液体湿潤性界面活性剤及び/または浸透促進剤と、一方がレチノイドとの水中の混合物、他方が過酸化ベンゾイルとの水中の混合物の、二つの活性相を攪拌しながら調製する工程;
c)活性相を攪拌しながら水性相に導入する工程;及び
d)工程c)から得られる混合物中にゲル化剤を攪拌しながら導入する工程;
を連続して含むことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項18】
細胞分化及び/または増殖疾患及び/または角質化疾患と関連する皮膚科学疾患の予防または治療のための製薬調製物の製造のための、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
尋常性ざ瘡の予防または治療のための製薬調製物の製造のための、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
ざ瘡傾向の皮膚の治療のための、毛髪の再生のための、または毛髪の損失の予防のための、皮膚または毛髪のべたついた外観を解消するための、日光の有害な効果からの保護における、または生理学的な乾燥肌の治療における、あるいは光誘導性または加齢性の老化の予防及び/または解消のための、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物の美容的使用。

【公開番号】特開2011−37904(P2011−37904A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264093(P2010−264093)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【分割の表示】特願2003−556050(P2003−556050)の分割
【原出願日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】