説明

少なくとも一つの環状モノマーからポリマーを製造する方法

本発明は置換リン含有化合物の存在下で一種以上の環状モノマーを反応させる段階を含むラクトン、ラクタム、カーボネート、ラクチドおよびグリコリド、オキサゾリン、エポキシド、シクロシロキサンの中から選択される少なくとも一種の環状モノマーからコポリマーを製造する方法に関するものである。本発明はさらに、上記方法で得られたポリマー組成物と、その使用、特に帯電防止添加剤、生体適合性材料、流体処理用メンブレンまたは電気化学エネルギー貯蔵システムでの使用とに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換したリン含有化合物を触媒とし、必要に応じてヒドロキシル官能基またはチオール官能基を有する開始剤(initiator)の存在下で、開環することによってラクトン、カーボネート、ラクタム、ラクチドおよびグリコリド、オキサゾリン、エポキシド、シクロシロキサンの中から選択される少なくとも一種の環状モノマーから(コ)ポリマーを製造する方法と、得られた組成物と、その使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
開環重合方法では一般に金属化合物を用いるが、この金属化合物は食品や生体組織と接触した時に汚染の問題または適合性(ocompatibility)の問題を起こし易い。他の方法では酸を用いるが、酸は製造プロセスで腐食する。
【0003】
ε−カプロラクトンのようなラクトンの(コ)ポリマーは特にそのバイオコンパティビリティ(biocompatibility)、生理化学的性質および少なくとも200〜250℃の温度までの優れた熱安定性によって種々の分野で工業的に重要なポリマーである。
【0004】
これらのコポリマーの製造方法は特に非特許文献1(Jerome et al., Macromol. 2002,35,1190-1195)に記載されている。こその方法ではジクロロメタン中のエーテル塩酸(HCl・Et2O)の存在下で0℃でδ−バレロラクトンをポリ(エチレングリコール)またはモノメトキシポリ(エチレングリコール)である高分子開始剤と共重合する。この方法では3モル.1-1のモノマー濃度を使用し、高分子開始剤のヒドロキシル官能基に対して3当量の酸を使用する。2〜3時間後に得られたジブロックおよびトリブロックポリマーの最大数平均分子量Mnは9500〜19000 g/モルであり、多分散性指数は1.07〜1.09である。この方法は腐蝕性のある酸を比較的多量に使用するため、使用する機器に有害な影響を及ぼし、さらに、開始剤の存在はポリマーの分子量の制御に有益である。
【0005】
触媒として塩酸ではなくスルホン酸を使用してε−カプロラクトンをカチオン共重合する他の方法も提案されている。この方法でも開始剤の存在は必要である。そうした方法は特に非特許文献2(Maigorzata Basko et al., Journal of Polymer Science: Part A:Polymer Chemistry, Vol. 44, 7071-7081、2006)に記載されている。この方法ではジクロロメタン中で35℃でイソプロピルアルコールおよびトリフルオロメタンスルホン(トリフリック)酸の存在下でε−カプロラクトンおよび任意成分のL,Lラクチドを反応させる。得られるカプロラクトンコポリマーの数平均分子量Mnは4780〜5900g/モルで、多分散性指数は1.21〜1.24である。
【0006】
ポリアミドの工業的重要性はこれ以上証明する必要がないが、このポリアミドは開環重合で製造できる。それに用いる技術の中では酸、特にリン酸をベースにしたカチオン重合が多くの文献に記載されている。特に本出願人の特許文献1(米国特許出願第US3846357号)を参照されたい。
【0007】
一方、カーボネート、ラクチドおよびグリコリドも各種方法によって重合でき、多くの場合、金属化合物を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第US3846357号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jerome et al., Macromol.、2002、35、1190-1195
【非特許文献2】Maigorzata Basko et al., Journal of Polymer Science: Part A:Polymer Chemistry, Vol. 44, 7071-7081(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記タイプの方法を用い、置換リン含有化合物と任意成分の少なくとも一つのヒドロキシル官能基またはチオール官能基を有する開始剤との存在下で、一般に穏やかな条件下で、しかも速い反応速度で、ラクトン、ラクタム、カーボネート、ラクチドまたはグリコリド、オキサゾリン、エポキシド、シクロシロキサンのコポリマーを製造し、得られたコポリマーが高い数平均分子量Mn(場合によっては25,000g/モル以上)と、低い多分散性指数(1.5以下)とを有し、立体制御された鎖を形成するということは知られていない。
【0011】
このタイプの置換リン含有化合物を使用した触媒系の利点は金属化合物または強酸性化合物の使用を避けることができることにある。さらに、この触媒系では立体制御された鎖を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象は、置換リン含有化合物と、任意成分のヒドロキシル官能基またはチオール官能基を有する少なくとも一つの開始剤との存在下で、一種以上の環状モノマーを反応させる段階を含む、ラクトン、ラクタム、カーボネート、ラクチド、グリコリド、オキサゾリン、エポキシド、シクロシロキサンの中から選択される少なくとも一種の環状モノマーからポリマーまたはコポリマーを製造する方法にある。この方法は温度条件が「穏やかな」方法とばれ、金属を用いず、多種多様な溶剤、特に非塩素化溶剤を使用でき、特に室温で重合を開始させることができる。
本発明の他の対象は、以下で詳細に説明する、上記方法で得られるポリマー組成物と、この組成物の使用とにある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明方法は有機触媒(organocatalytic)方法であるということができる。
本明細書で「〜」という記載は両方の境界を含むものと理解しなければならない。
【0014】
本発明方法は置換リン含有化合物の存在下で一種以上の環状モノマーを反応させる段階を含む、ラクトン、ラクタム、カーボネート、ラクチドおよびグリコリド、オキサゾリン、エポキシド、シクロシロキサンの中から選択される少なくとも一種の環状モノマーからポリマーまたはコポリマーを製造する方法に関する。
本発明の第2の実施例では、本発明方法はヒドロキシル官能基またはチオール官能基を有する少なくとも一つの開始剤の存在下、置換リン含有化合物の存在下で、上記環状モノマーを反応させる段階を含む、ラクトン、ラクタム、カーボネート、ラクチドおよびグリコリド、オキサゾリン、エポキシド、シクロシロキサンから選択される少なくとも一種の環状モノマーからポリマーまたはコポリマーを製造する方法に関する。
【0015】
「コポリマー」とはラクトン、ラクタム、ラクチドまたはグリコリド(以下に、単に「環状モノマー」という)の中から選択される、少なくとも2つの互いに異なるタイプのモノマーから得られるポリマーを意味する。
【0016】
開始剤が存在する場合、それは高分子鎖中に一体化される。開始剤は非常に小さな分子、例えば水、ペンタノールにすることができる。開始剤はオリゴマーまたはポリマーにすることもでき、従って、環状モノマーとの反応生成物はブロックコポリマーになる。
【0017】
「ラクトン」とは、下記式に対応するモノマーを意味する:
【化1】

【0018】
(ここで、nは1〜20の整数であり、Rは水素または1〜4の炭素を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す)
【0019】
ラクトンの例としては特に、飽和または不飽和の置換または未置換の4〜11個の炭素原子を有するβ−、γ−、δ−およびε−ラクトン、例えばε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、ラセミまたは非ラセミδ−カプロラクトン、ラセミまたは非ラセミβ−ブチロラクトンが挙げられる。本発明ではε−カプロラクトンを使用するのが好ましい。
【0020】
ラクタムの例としては特に、飽和または不飽和の置換または未置換の4〜1個の炭素原子を有するβ−、γ−、δ−およびε−ラクタム、例えばカプロラクタム、ピロリジノン、ピペリドン、エナントラクタムおよびラウリンラクタムを挙げることができる。本発明ではカプロラクタムおよびラウリルラクタムを使用するのが好ましい。
【0021】
本発明で使用する置換ジオキサンジオン、例えばラクチドはラセミ形、エナンチオマー的に純粋な形かメゾ形にすることができる。
【0022】
本発明で使用するカーボネートは下記式(I)の環状カーボネートである:
【化2】

【0023】
(ここで、Rはオキソ基およびハロ基、例えばフッ素、塩素、臭素または沃素またはヒドロキシルの中から独立して選択される一種以上の置換基によって置換されていてもよい2〜20個の炭素原子を含む直鎖アルキル基または2〜20個の炭素原子を含む分岐鎖のアルキル基またはアルカリル基を表す)
【0024】
特に、トリメチレンカーボネートとその誘導体およびグリセロールカーボネートが好ましい。
【0025】
「開始剤(initiator)」とは、本明細書では少なくとも一つのヒドロキシル官能基または少なくとも一つのチオール官能基を有する化合物を意味する。開始剤は水または硫化水素、低分子量の化合物、例えばペンタノールまたはプロパンチオールおよびオリゴマーまたはポリマーにすることができる。
【0026】
開始剤はモノ−またはポリ−ヒドロキシル化したオリゴマーまたはポリマーにすることができ、特に下記の中から選択できる:(アルコキシ)ポリアルキレングリコール、例えば、(メトキシ)ポリエチレングリコール(MPEG/PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリ(アルキル)アルキレンアジペートジオール、例えばポリ(2−メチル−1,3−プロピレンアジペート)ジオール(PMPA)およびポリ(1,4−ブチレンアジペート)ジオール(PBA)、α−ヒドロキシル化またはα,ω−ジヒドロキシル化ポリジエン(必要に応じて水素化されていてもよい)、例えばα,ω−ジヒドロキシル化ポリブタジエンまたはα,ω−ジヒドロキシル化ポリイソプレン、モノ−またはポリ−ヒドロキシル化ポリアルキレン、例えばモノ−またはポリ−ヒドロキシル化ポリイソブチレン、末端ヒドロキシル官能基を有するポリラクチド、ポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリ(3−ヒドロキシブチレート)およびポリ(3-ヒドロキシバレレート)、変性または未変性の多糖および小糖(単糖およびオリゴ糖)、例えばデンプン、キチン、キトサン、デキストラン、セルロース、スクロースおよびイソマルツロースおよびこれらの混合物。
【0027】
変形例では、開始剤は一つまたは複数のチオール官能基を有するオリゴマーまたはポリマーであり、例えばα−チオール化またはα,ω−チオール化ポリスチレン、α−チオール化またはα,ω−チオール化ポリ(メタ)アクリレート、α−チオール化またはα,ω−チオール化ポリブタジエンおよびこれらの混合物にすることができる。
【0028】
本発明の他の変形例では、開始剤をアクリル、メタクリル、スチレンまたはジエンポリマーのファミリのビニル共オリゴマー(co-oligomer)またはコポリマーにすることができる。これらはアクリル、メタクリル、スチレンまたはジエンモノマーとヒドロキシル基を有する官能性モノマー、例えばヒドロキシル化アクリルまたはメタクリルモノマー、例えば4−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合で得られる。この重合は従来のラジカル重合、制御されたラジカル重合またはイオン重合法で実行できる。
【0029】
本発明の他の変形例では、開始剤を制御されたラジカル重合(この場合、ラジカル開始剤および/または制御剤が少なくとも一つのヒドロキシル官能基またはチオール官能基を有する)で得られるビニルポリマーにすることができる。
【0030】
開始剤として使用されるオリゴマーおよびポリマーは例えば数平均分子量を1000〜100000 g/モル、例えば1000〜20000 g/モル、多分散性指数を1〜3、例えば、1〜2.6にすることができる。
【0031】
この種のオリゴマーまたはポリマーを使用することで直鎖、星型またはグラフトブロックコポリマー(オリゴマーまたはポリマー開始剤の一つ以上のヒドロキシル官能基またはチオール官能基の配列による)を得ることができる。
【0032】
ポリマー開始剤に対する環状モノマーのモル比は5〜500が好ましく、より好ましくは10〜200、さらに好ましくは40〜100にする。
【0033】
本発明方法は触媒を使用する必要がある。この触媒は置換リン含有化合物を含むか、好ましくは置換リン含有化合物で構成される。ポリマー開始剤の各ヒドロキシル官能基またはチオール官能基に対する置換リン含有化合物のモル比は1〜3である。
【0034】
「置換リン含有化合物」とは下記の構造を有する化合物を意味する:
【化3】

【0035】
この化合物はキラルまたは非キラルにすることができる。本発明の好ましい実施例では、置換リン含有化合物がキラルであるときに反応を立体制御することができる。
【0036】
特に、リン酸ジフェニルが好ましく、(R)-3,3'-ビス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1'-ビナフチル-2,2'-ジイル リン酸水素およびN-[(トリフルオロメチル)スルホニル]-、ホスホロアミド酸のジフェニル エステルも好ましい。
【0037】
本発明方法は、触媒が通常、反応物と同じ相で存在し、担持触媒ではない、という意味で均一系触媒プロセスであるのが好ましい。触媒は反応終了時に例えばヒンダード有機塩基を用いて中和し、形成されたアンモニウム塩を除去、好ましくは水で洗浄して簡単に除去できる。
本発明方法では金属種を使用しないのが好ましい。
【0038】
本発明方法は0℃〜230℃、好ましくは25℃〜105℃、さらに好ましくは25℃〜65℃の温度で実行するのが好ましい。
【0039】
本発明方法はさらに、溶剤中または塊状で撹拌下に行うのが好ましい。適当な溶剤中、懸濁液中またはエマルション中で行うことも本発明の範囲に含まれる。本発明方法は反応器(押出機にすることができる)中で連続的、半連続的またはバッチで実行できる。
【0040】
本発明方法を連続的に実行する場合には全ての反応物を反応器入口に連続的に導入し、反応器出口で反応生成物を排出する。
本発明方法を半連続的に実行する場合には一部の反応物、例えばモノマーおよび/または触媒を連続的に導入する。
本発明方法をバッチで実行する場合には全ての反応物を反応器に同時に供給し、反応に要する時間(一般に4〜10時間)の後に反応生成物を排出する。
【0041】
本発明方法に従って製造された(コ)ポリマーはゲル透過クロマトグラフィ(またはGPC)で測定した数平均分子量Mn(これは開始剤に対するモノマーのモル比で制御できる)が25 000g/モル以上であり、および/または、ポリマー鎖長の均一性を反映する多分散性指数は1.5以下である。
【0042】
本発明方法に従って製造されたコポリマーは種々の分野で使用できる。特に、液体または気体の流体の処理用メンブレン、または、電気化学エネルギー貯蔵システム、例えばリチウムイオン電池、スーパーキャパシターまたは燃料電池、あるいは、医薬品または化粧品の分野で特に有用な生体適合材料、特に活性成分を運ぶビヒクルの製造、あるいは、プラスチックの添加剤、特に、ポリマー樹脂、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドまたはポリ(メタ)アクリレートの帯電防止添加剤、樹脂、例えば透明または透明でないポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミドまたはポリ(メタ)アクリレートの衝撃強度を改善する化合物またはPVCの可塑剤として、あるいは、織物繊維の製造で使用できる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
ポリラクトンおよびポリカーボネートの製造
実施例1A:
CDCl3 (425 μl)中のε−カプロラクトン(75μl, 40 eq., 0.9 mol.l-1)とペンタノール(1.8μl, 1 eq.)との溶液を、(R) -3-3'-bis[3,5-bis(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1'-ビナフチル-2,2'-ジイル リン酸水素(13 mg, 1 eq.)溶液中に注入する。NMRでモノマーが完全に変換したことが確認される(すなわち4時間後)まで反応混合物をアルゴン下で30℃で撹拌する。
変換率:≧ 95%
1H NMR:DP=33
GPC:Mn=7600g/モル、PDI=1.09
【0044】
実施例1B:
トルエン(9ml)中のε−カプロラクトン(1 ml, 80 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液中に、n−ペンタノール(13 μl, 1 eq.)およびリン酸ジフェニル(85 mg, 3 eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが完全に変換したことが確認される(すなわち3時間後)まで反応混合物をアルゴン下で30℃で撹拌する。
変換率:≧ 95%
1H NMR:DP=76
GPC:Mn=16 000g/モル、PDI=1.10
【0045】
実施例1C:
トルエン(6ml)中のトリメチレンカーボネート(550 mg, 40 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液中に、n−ペンタノール(15 μl, 1 eq.)およびリン酸ジフェニル(26 mg, 1 eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが完全に変換したことが確認される(すなわち20時間後)まで反応混合物をアルゴン下で30℃で撹拌する。
変換率:≧ 95%
1H NMR:DP=31および0%の脱カルボキシル化
GPC:Mn=6000g/モル、PDI=1.05
【0046】
実施例1D:
トルエン(3.6ml)中のε−カプロラクトン(400 μl, 40 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液中に、n−ペンタノール(10 μl, 1 eq.)およびホスホロアミド酸のN-[(トリフルオロメチル)スルホニル]-ジフェニル エステル(103 mg, 3 eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが完全に変換したことが確認される(すなわち45分後)まで反応混合物をアルゴン下で30℃で撹拌する。次いで、ε−カプロラクトン(400 μl, 40 eq.)を反応混合物に添加する。完全変換後、800 μl, 80 eq.を反応混合物に再導入する。完全変換は最後の添加から3時間後にNMRで確認される。
変換率:≧ 99%
1H NMR:DP=148
GPC:Mn=26 500g/モル、PDI=1.11
【0047】
実施例1E:
トルエン(3.6ml)中のε−カプロラクトン(400 μl, 40 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液中に、ホスホロアミド酸のN-[(トリフルオロメチル)スルホニル]-ジフェニル エステル(34mg, 1 eq.)を添加する。NMRでモノマーが完全に変換したことが確認される(すなわち6時間後)まで反応混合物をアルゴン下で30℃で撹拌する。
変換率:≧ 99%
1H NMR:DP=140
GPC:Mn=24 000g/モル、PDI=1.34
【0048】
実施例1F:
トルエン(9ml)中のε−カプロラクトン(1 ml, 80 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液中に、n−ペンタノール(25 μl, 1 eq.)およびホスホロアミド酸のN-[(トリフルオロメチル)スルホニル]-ジフェニル エステル(85mg, 3 eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが完全に変換したことが確認される(すなわち3時間後)まで反応混合物をアルゴン下で30℃で撹拌する。
変換率:≧ 95%
1H NMR:DP=62
GPC:Mn=12 600g/モル、PDI=1.11
【0049】
実施例1G:
連続重合
トルエン(2.25ml)中のε−カプロラクトン(250 μl, 10 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液中に、n−ペンタノール(25 μl, 1 eq.)およびリン酸ジフェニル(56mg, 1 eq.)を連続して添加する。反応混合物をアルゴン下で30℃で撹拌する。トルエン(17.25ml)中のε−カプロラクトン(1.75 ml, 70 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液を0.03ml/分の流量で10時間連続的に添加する。添加終了後30分(すなわち10時間30分後)にNMRでモノマーの完全変換が確認される。
変換率:≧ 95%
1H NMR:DP=59
GPC:Mn=12 100g/モル、PDI=1.06
【0050】
実施例1H:
連続重合
トルエン(2.25ml)中のε−カプロラクトン(250 μl, 10 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液中に、n−ペンタノール(25 μl, 1 eq.)およびホスホロアミド酸のN-[(トリフルオロメチル)スルホニル]-ジフェニル エステル(90mg, 1 eq.)を連続して添加する。反応混合物をアルゴン下で30℃で撹拌する。トルエン(17.25ml)中のε−カプロラクトン(1.75 ml, 70 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液を0.06ml/分の流量で5時間連続的に添加する。添加終了後15分(すなわち5時間15分後)にNMRでモノマーの完全変換が確認される。
変換率:≧ 95%
1H NMR:DP=68
GPC:Mn=13 700g/モル、PDI=1.09
【0051】
実施例2
高温でのポリラクトンおよびポリカーボネートの製造
実施例2A
トルエン(9ml)中のε−カプロラクトン(1 ml, 80 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液中に、n−ペンタノール(13 μl, 1 eq.)およびリン酸ジフェニル(85mg, 3 eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが完全に変換したことが確認される(すなわち1時間30分後)まで反応混合物をアルゴン下で80℃で撹拌する。
変換率:≧ 95%
1H NMR:DP=80
GPC:Mn=16 000g/モル、PDI=1.11
【0052】
実施例2B
トルエン(6ml)中のトリメチレンカーボネート(550 mg, 80 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液中に、n−ペンタノール(7 μl, 1 eq.)およびリン酸ジフェニル(34mg, 2 eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが完全に変換したことが確認される(すなわち6時間後)まで反応混合物をアルゴン下で80℃で撹拌する。
変換率:≧ 95%
1H NMR:DP=60および0%の脱カルボキシル化
GPC:Mn=10 200g/モル、PDI=1.08
【0053】
実施例2C
トルエン(9ml)中のε−カプロラクトン(1 ml, 80 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液中に、n−ペンタノール(25 μl, 1 eq.)およびホスホロアミド酸のN-[(トリフルオロメチル)スルホニル]-ジフェニル エステル(85mg, 1 eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが完全に変換したことが確認される(すなわち5時間後)まで反応混合物をアルゴン下で80℃で撹拌する。
変換率:100%
1H NMR:DP=67
GPC:Mn=13 950g/モル、PDI=1.14
【0054】
実施例3
ポリラクトンをベースにしたコポリマーの製造
トルエン(3.6ml)中のε−カプロラクトン(400 μl, 40 eq., 0.9 mol.l-1)の溶液中に、ポリエチレングリコール(Mn = 2000, IP = 1.06) (75 mg, 1 eq.)およびホスホロアミド酸のN-[(トリフルオロメチル)スルホニル]-ジフェニル エステル(34 mg, 1 eq.)を連続して添加する。NMRでモノマーが完全に変換したことが確認される(すなわち1時間30分後)まで反応混合物をアルゴン下で30℃で撹拌する。
変換率:≧ 99%
GPC:Mn=6500g/モル、PDI=1.13

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[化1]の化合物の中から選択される置換リン含有化合物の存在下で、一種以上の環状モノマーを反応させる段階を含む、ラクトン、ラクタム、カーボネート、ラクチドおよびグリコリド、オキサゾリン、エポキシド、シクロシロキサンの中から選択される少なくとも一種の環状モノマーからコポリマーを製造する方法:
【化1】

【請求項2】
開始剤を用いる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ラクトンを4〜11個の炭素原子を有する飽和または不飽和の置換または非置換のβ−、γ−、δ−およびε−ラクトン、例えばε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、ラセミまたは非ラセミβ−ブチロラクトン、ラセミまたは非ラセミδ−カプロラクトンおよびγ−ブチロラクトンの中から選択する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ラクトンがε−カプロラクトンである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
カプロラクタム、エナントラクタム、ラウリルラクタム、ピロリジノンおよびピペリドンの中からラクタムを選択する請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
カーボネートが下記式(I)の環状カーボネートである請求項1または2に記載の方法:
【化2】

(ここで、Rはオキソ基およびハロ基、例えばフッ素、塩素、臭素または沃素の中から独立して選択される一種以上の置換基によって置換されていてもよい2〜20個の炭素原子を含む直鎖アルキル基または2〜20個の炭素原子を含む分岐鎖のアルキル基またはアルカリル基を表す)
【請求項7】
環状モノマーがラセミ体、エナンチオマー的に純粋かメゾ形のラクチドの中から選択される請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
環状モノマーがグリコリドである請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
開始剤が小分子、例えば水、ペンタノールまたは少なくとも一つのヒドロキシル官能基を有するポリマーである請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポリマーの開始剤が(アルコキシ)ポリアルキレングリコール、ポリ(アルキル)アルキレンアジペートジオール、水素化されていてもよいα−ヒドロキシル化またはα,ω−ジヒドロキシル化ポリジエン、モノ−またはポリ−ヒドロキシル化ポリアルキレン、末端ヒドロキシル基を有するポリラクチド、ポリヒドロキシアルカノエート、変性または未変性の多糖および小糖(単糖およびオリゴ糖)およびこれらの混合物の中から選択されるモノ−またはポリ−ヒドロキシル化されたオリゴマーまたはポリマーである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一つのヒドロキシル官能基を有する上記ポリマーが(メトキシ)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(2−メチル−1,3−プロピレンアジペート)ジオール、ポリ(l,4−ブチレンアジペート)ジオール、α,ω−ジヒドロキシル化ポリブタジエン、α,ω−ジヒドロキシル化ポリイソプレン、モノ−またはポリ−ヒドロキシル化ポリイソブチレン、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、デンプン、キチン、キトサン、デキストラン、セルロース、スクロースおよびイソマルツロースおよびこれらの混合物の中から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ポリマーの開始剤が少なくとも一つのチオール官能基を有するポリマーである請求項2〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ポリマーの開始剤がα−チオール化またはα,ω−チオール化ポリスチレン、α−チオール化またはα,ω−チオール化ポリ(メタ)アクリレート、α−チオール化またはα,ω−チオール化ポリブタジエンおよびこれらの混合物の中から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリマーの開始剤がアクリル、メタクリル、スチレンまたはジエンモノマーとヒドロキシル基またはチオール基を有する官能性モノマーとの共重合で得られるアクリル、メタクリル、スチレンまたはジエンポリマーのファミリのビニル共オリゴマーまたはコポリマーである請求項2〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
置換リン含有化合物がリン酸ジフェニルである請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
置換リン含有化合物が(R)-3,3'-ビス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1'-ビナフチル-2,2'-ジイル リン酸水素である請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
置換リン含有化合物がホスホロアミド酸のN-[(トリフルオロメチル)スルホニル]-ジフェニル エステルである請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ポリマー開始剤に対する環状モノマーのモル比が5〜500、好ましくは10〜200、より好ましくは40〜100である請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ポリマー開始剤の各ヒドロキシル官能基またはチオール官能基に対する置換リン含有化合物のモル比が1〜3である請求項2〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
0℃〜230℃の温度で実行する請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法で得られるポリマー組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の組成物の、帯電防止添加剤または樹脂の衝撃靭性を改良する添加剤またはPVCの可塑剤としての使用。

【公表番号】特表2013−513008(P2013−513008A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542600(P2012−542600)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052624
【国際公開番号】WO2011/070282
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【出願人】(505252333)サントル・ナシヨナル・ド・ラ・ルシエルシユ・シヤンテイフイク (24)
【Fターム(参考)】