説明

少なくとも1つのアドレナリン作動性化合物を含む安定化された組成物

少なくとも1つのアドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む安定化された組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、光誘起、熱及び酸化による分解に対する感受性を実質的に低下させ、顕著に改善された貯蔵期間の安定性を有する安定化された組成物に関する。より具体的には、本発明は、少なくとも1つのアドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む安定化された組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
アドレナリン作動性化合物、特にエピネフリン及びその変性物の溶液は、医療目的のための幅広い用途を見出す。エピネフリンは、心臓、血圧、気道抵抗、及びエネルギー代謝の調節を担う中性ホルモンの1つである。
【0003】
エピネフリンは、筋収縮効果を起こさせ(ここで、筋収縮効果は心拍数、心臓の収縮力を上げる)、血管を狭めて、その結果血圧を上げ、呼吸をよりし易くするために気道抵抗を低下させ、そしてストレスの間身体にエネルギーを供給するために血糖及び血中の脂肪酸を増加させる。
【0004】
その使用は、出血性、アレルギー性又はアナフィラキシー性のショックの際、低血圧に対処すること;喘息性の発作の際に気道を開くこと;局部麻酔のような局部に投与される医薬の分配の制限;鼻詰りの軽減;及び/又は緊急事態における救済の実施を少なくとも含む。
【0005】
エピネフリンのようなカテコール化合物はo−キノンへの酸化に敏感であり、o−キノンは濃く着色された化合物を形成するためにさらに反応することができる。このため、エピネフリンはアドレノクロム、即ち、濃く着色されたインドール誘導体を形成するために反応することができる。
【0006】
この反応の速度はpH、温度と共に、そして様々なゴムからのアルミニウム及び琥珀色のガラス製品からの鉄のような金属イオンの存在により速くなる。エピネフリン溶液はラセミ化の結果、効力を失ってしまうこともあり、そして光からの保護はこの不安定な形態を最小限に抑える。
【0007】
カテコールアミンの変性又は分解は多くの理由により望ましくはない。カテコールアミンの変性は活性成分の力価の喪失、望ましくはない生理学的効果を有し得る化合物の形成、そして暗色の外観をもたらし、前記外観は溶液を不快にし、そして商品価値をなくさせる。
【0008】
そのような溶液の製造及びパッケージングの際の自動酸化(auto-oxidation)による活性化合物の初期の喪失は、そのような手順が実際にはできるだけ不活性な雰囲気内で行われるという事実にもかかわらず実質的であり、そのような溶液は、化合物の分解速度を遅らせ、その結果その貯蔵期間を延ばすのに、冷蔵しつつ保存されなければならない。
【0009】
カテコールアミンのようなアドレナリン作動性化合物を自動酸化に対して安定化させるのに、それらに酸化防止剤を組み合わせることが標準的な手法である。エアゾル、点眼薬、注入剤等のような様々な製剤中で、カテコールアミン溶液を安定化させるのに使用されてきた種々の酸化防止剤は、メタ重亜硫酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、アスコルビン酸、チオグリコレート、チオグリセロール、システイン、没食子酸プロピル及びホルムアルデヒドスルホキシル酸塩を含む。
【0010】
商業的に入手可能なエピネフリン製剤はエピペン(商標)製剤である。0.3mlの注入量中のエピネフリン0.3gの最低量を配達するように設計された、エピペン(商標)製剤の組成は、次のとおりである:
エピネフリン 1.1mg
塩化ナトリウム 6.0mg
メタ重亜硫酸ナトリウム 1.7mg
塩酸 pH3.4に
注入用の水 1mlに。
【0011】
GB 425,678は、麻酔剤の酸性塩、安定に保つために酸を通常必要とするエピネフリン又は生理学的な均等物、及び酸化防止剤を含む、局部麻酔用の実質的に安定な麻酔溶液を製造するための方法であって、方法が、溶液が約5.7から約中性の範囲内のpH値を有するように、溶液のpH値を緩衝剤で調整することを含む方法を開示する。重亜硫酸ナトリウムは酸化防止剤として記載されている。
【0012】
GB 930,452及びUS 3,149,035は、オキシン、ホウ酸、及び重亜硫酸ナトリウムと一緒のカテコールアミンの水性溶液を含む、カテコールアミンの安定な医薬溶液であって、前記溶液が6.5〜6.8のpHを有する医薬溶液を開示する。
【0013】
US 3,966,905は、カテコールアミン、ポリビニルピロリドン、ホウ酸塩、並びにアスコルビン酸、エリソルビン酸、アセチルシステイン、及びチオグリセロールからなる群から選択される生理学的に許容な酸化防止剤を含み、実質的に中性であるか、又は弱塩基性のpHである、安定化させたカテコールアミン溶液を開示する。
【0014】
CA 981182は、3つの特定の酸化防止剤、即ち、重亜硫酸塩、アスコルビン酸及びチオグリセロールの組み合わせを使用することによる、局部麻酔溶液中のl−エピネフリンの安定化であって、前記溶液が、メピバカイン、ブピバカイン及びリドカインから選択される局所麻酔剤、l−エピネフリン、重亜硫酸塩、アスコルビン酸並びにチオグリセロールを含み、そして前記溶液のpHが約4である安定化を開示する。
【0015】
US 2008/0269347 A1は、エピネフリン、EDTA、及び少なくとも1つの酸化防止剤を含み、酸化防止剤がシステイン、クエン酸、チオグリセロール、アセチルシステイン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるエピネフリン製剤を開示する。
【0016】
DD−A1−150 694は酒石酸水素エピネフリン及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む製剤を開示する。
【0017】
WO 94/13274はドブタミン塩酸塩及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む製剤を開示する。
【0018】
WO 97/16196はエピネフリン及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む製剤を開示する。
【0019】
WO 98/20869はエピネフリン及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む製剤を開示する。
【0020】
US−A−4 734 438はノルエピネフリン及び重亜硫酸ナトリウムを含む製剤を開示する。
【0021】
光誘起、熱及び酸化による分解に対する感受性を実質的に低下させ、改善された貯蔵期間の安定性を有する安定化された組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
発明の課題
アドレナリン作動性化合物を含み、改善された安定性、及びその結果向上した貯蔵期間を有する医薬組成物を提供することが、本発明の実施態様の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の要約
本発明者(ら)によって、改善された安定性、特に自動酸化に対する安定性及び熱安定性が、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、又は亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤の使用を通じて得られ得り、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比、及びpHが特定の範囲内であることが見出された。
【0024】
従って、第1の態様において、本発明は、アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である液体医薬組成物に関する。
【0025】
本発明は、アドレナリンの安定性が、通常の市販の製品及びその他の先行技術の製剤において使用される比率と比べて、0.70〜1.30のアドレナリン/亜硫酸塩の比率の範囲内で高められるという、驚くべき実験事実をベースとする。
【0026】
第2の態様において、本発明は、
i)アドレナリン作動性化合物の溶液を供給し、
ii)重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤を加え、
iii)そのpHを、任意に酸又は塩基を加えて、2.0〜5.0の範囲内の値に調整する工程を含み、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内である、アドレナリン作動性化合物を含む液体医薬組成物を安定化させるための方法に関する。
【0027】
第3の態様において、本発明は、アドレナリン作動性化合物を含む液体医薬組成物の安定化のための、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤の使用であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である使用に関する。
【0028】
第4の態様において、本発明は、
i)アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である液体医薬組成物、及び
ii)投与デバイス
を含むキットに関する。
【0029】
第5の態様において、本発明は、アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物を特定の人に投与することを含み、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、アドレナリン作動性化合物の必要な特定の人の、アドレナリン作動性化合物を必要とする病状の少なくとも1つの症状を改善する方法に関する。
【0030】
第6の態様において、本発明は、アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物を特定の人に投与することを含み、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、特定の人のアナフィラキシーを治療する方法に関する。
【0031】
第7の態様において、本発明は、アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、アドレナリン作動性化合物の必要な特定の人の、アドレナリン作動性化合物を必要とする病状の少なくとも1つの症状を改善することで使用するための液体医薬組成物に関する。
【0032】
第8の態様において、本発明は、アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物の使用であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、特定の人のアナフィラキシーの治療用医薬の製造のための使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図の説明
【図1】図1は、メタ重亜硫酸塩/エピネフリンのモル比に対する、60℃で、4週間かけて貯蔵した際の、エピネフリンの含量の変化を示すグラフであり;
【図2】図2は、メタ重亜硫酸塩/エピネフリンのモル比に対する、60℃で、4週間かけて貯蔵した際の、エピネフリンの含量の合計を示すグラフであり;
【図3】図3は、メタ重亜硫酸塩/エピネフリンのモル比に対する、60℃で、4週間かけて貯蔵した際の溶液のpHの変化を示すグラフであり;
【図4】図4は、0、1、2及び4週間のそれぞれについての、60℃、異なったメタ重亜硫酸塩/エピネフリンのモル比での、熱ストレス(thermal stress)の間のアドレナリンの含量の変化を示すダイアグラムであり;
【図5】図5は、0、1、2及び4週間のそれぞれについての、60℃、異なったメタ重亜硫酸塩/エピネフリンのモル比での、光ストレス(photo-stress)の間のアドレナリンの含量の変化を示すダイアグラムであり;
【図6】図6は、0、1、2及び4週間のそれぞれについての、60℃、異なったメタ重亜硫酸塩/エピネフリンのモル比での、熱ストレスの際の不純物含量の合計の変化を示すダイアグラムであり;
【図7】図7は、0、1、2及び4週間のそれぞれについての、60℃、異なったメタ重亜硫酸塩/エピネフリンのモル比での、光ストレスの間の不純物含量の合計の変化を示すダイアグラムであり;
【図8】図8は、0、1、2及び4週間のそれぞれについての、60℃、異なったメタ重亜硫酸塩/エピネフリンのモル比での、熱ストレスの間のアドレナリンの含量の変化を示すダイアグラムであり;そして
【図9】図9は、0、1、2及び4週間のそれぞれについての、60℃、異なったメタ重亜硫酸塩/エピネフリンのモル比での、スルホン酸エピネフリン(epinephrine sulfonic acid)(ESA)の形成を示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
表現「アドレナリン作動性化合物」は、エピネフリンと同一又は類似の効果と共にアドレナリン作用性神経を刺激し得るいずれかの化合物を意味する。本発明による使用のためのアドレナリン作動性化合物の作用メカニズムは、特定の受容体との相互作用による直接作用であり、それらは、α−及びβ−アドレナリン受容体を刺激するアドレナリン受容体作用薬としてか、又はD1レセプターを刺激するドーパミン作用薬として分類される。
【0035】
表現「エピネフリン」は、(R)−4−(1−ヒドロキシ−2−(メチルアミノ)エチル)ベンゼン−1,2−ジオールをいい、表現「アドレナリン」と区別なく使用される。
【0036】
表現「酸化防止剤」は、その他の物質の酸化を遅らせるか、又は防ぐことができる物質をいう。酸化反応は遊離ラジカルを発生させることができ、遊離ラジカルは不利になり得る連鎖反応を開始する。酸化防止剤は遊離ラジカルの中間体を除去することでこれらの連鎖反応を停止し、そして自身が酸化されることでその他の酸化反応を阻害する。
【0037】
表現「重亜硫酸塩」は、アニオンHSO3-を含むいずれかの塩を意味する。
【0038】
表現「メタ重亜硫酸塩」は、アニオンS252-を含むいずれかの塩を意味する。
【0039】
表現「亜硫酸塩」は、アニオンSO32-を含むいずれかの塩を意味する。
【0040】
表現「亜硫酸塩の当量(sulfite equivalents)」は、重亜硫酸、メタ重亜硫酸又は亜硫酸の塩の使用を通じて発生する亜硫酸イオンのモル当量を意味する。従って、重亜硫酸又はメタ重亜硫酸の塩はそれぞれの化合物の1分子当たり2亜硫酸塩の当量を生じさせ、他方、亜硫酸塩は亜硫酸塩の1分子当たり1亜硫酸塩の当量を生じさせる。
【0041】
表現「自動注入装置(auto-injector)」は、自動の針の配置機構(automatic needle deployment mechanism)を含む注入装置又はデバイスをいい、それらは自動注入装置の使用者に手動で動かされてもよい。
【0042】
表現「アンプル」は、医薬組成物を収容するために作られた、封止された小さなガラスのバイアルをいう。
【0043】
発明の詳細な開示
医薬組成物
本発明による液体医薬組成物は、前記で定義したようなアドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含み、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHは、約2.0〜5.0の範囲内である。
【0044】
本発明は、アドレナリンの濃度と比べても、従来の商業的に入手可能なエピペン(商標)製剤よりも低濃度の酸化防止剤を用いて、医薬組成物の安定性と、その結果、貯蔵期間の向上を提供する。
【0045】
本発明の医薬組成物は、組成物を冷蔵して保存することが不可能であるか、又はかなり非現実的な用途、例えばアナフィラキシーショックのような、利用者が緊急時の迅速な投与を可能とするために、全てのタイプの気候でいつも組成物を一緒に持ち運ぶ、予備的な緊急時の使用に特に有利である。
【0046】
本発明の医薬組成物のもう1つの有利さは、それが酸化防止剤の濃度を下げることを可能とすることである。特に、患者が実際に高濃度の重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩をベースとする酸化防止剤に過敏な場合、このことは有利である。
【0047】
アドレナリン受容体作用薬の具体例は、以下に限定されることなく、エピネフリン、ノルエピネフリン、フェニレフリン、α−メチルノルエピネフリン、ドーパミン、アルブテロール、ドブタミン、メトキサミン、キシロメタゾリン、オキシメタゾリン、クレンブテロール、デクスメデトミジン、ミバゼロール、メチルドーパ、クロニジン、プレナルテロール、イソプロテレノール、フェノテロール、メタプロテレノール、テルブタリン、リトドリン、キサモテロール、サルブタモール、サルメテロール、及びジンテロールを含む。ドーパミン作用薬の具体例は、以下に限定されることなく、フェノルドパムを含む。
【0048】
本発明の実施態様において、アドレナリン作動性化合物は、エピネフリン、ノルエピネフリン、フェニレフリン、α−メチルノルエピネフリン、ドーパミン、メトキサミン、クロニジン、ドブタミン、プレナルテロール、イソプロテレノール、フェノテロール、アルブテロール、テルブタリン、及びメタプロテレノール、並びにそれらの生理学的に許容な塩からなる群から選択される。
【0049】
本発明の実施態様において、アドレナリン作動性化合物は、エピネフリン、ノルエピネフリン、イソプロテレノール、及びドーパミン、並びにそれらの生理学的に許容な塩からなるカテコールアミンの群から選択される。
【0050】
本発明の実施態様において、アドレナリン作動性化合物は、エピネフリン又はその生理学的に許容な塩である。
【0051】
生理学的に許容な塩の非限定的な例には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ギ酸、及びムチン酸のような、無機酸又は有機酸の付加塩を挙げてもよい。
【0052】
この明細書を通じて使用されているように、用語重亜硫酸及びメタ重亜硫酸は、それぞれ、いずれかの医薬的に許容なソース又は前駆体(そのようなソース又は前駆体は、先のものに限定することなく、アンモニウム、アルカリ土類金属、アルカリ土類、及びアミン塩、並びにアルカリ金属と有機化合物との混合塩により示される)から誘導される、重亜硫酸イオン(HSO3-)及びメタ重亜硫酸イオン(S252-)を意味すると理解される。
【0053】
アルカリ金属塩はナトリウム及びカリウムの塩を含み、アルカリ土類金属塩はカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及びバリウムの塩を含み、そしてアミン塩はアミンの塩を含み、アミンはメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のような、1級、2級又は3級の低級アルキルアミンである。
【0054】
重亜硫酸及びメタ重亜硫酸の塩の非限定的な例は、重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)及びメタ重亜硫酸ナトリウム(Na225)、並びにアセトン重亜硫酸ナトリウム[(CH32C(OH)OSO3Na]のようなアセトン重亜硫酸アルカリ金属のような塩を含む。
【0055】
本発明の実施態様において、少なくとも1つの酸化防止剤は重亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸ナトリウムである。
【0056】
本発明の実施態様において、少なくとも1つの酸化防止剤はメタ重亜硫酸ナトリウムである。
【0057】
本発明の実施態様において、少なくとも1つのアドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比は0.75〜1.25の範囲内である。
【0058】
本発明の実施態様において、少なくとも1つのアドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比は0.80〜1.20の範囲内である。
【0059】
本発明の実施態様において、少なくとも1つのアドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比は、好ましくは0.85〜1.15の範囲内である。
【0060】
本発明の実施態様において、少なくとも1つのアドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比は0.90〜1.10の範囲内である。
【0061】
本発明の実施態様において、少なくとも1つのアドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比は0.95〜1.05の範囲内である。
【0062】
本発明の実施態様において、医薬組成物のpHは2.5〜4.5、好ましくは3.0〜4.0、より好ましくは3.1〜3.7、そして最も好ましくは3.2〜3.6の範囲内である。
【0063】
本発明の実施態様において、pHは3.3〜3.5の範囲内、より好ましくは約3.4である。
【0064】
アドレナリン作動性化合物、特にエピネフリンは、アドレナリン−o−キノンの形成を伴う自動酸化により分解し易く、アドレナリン−o−キノンは順にアドレノクロムに変化する。この反応の速度はpHで速くなり、溶液中のエピネフリンの最大安定性のためのpHは約3.4であることが見出された。
【0065】
さらに、重亜硫酸塩及びメタ重亜硫酸塩は生物学的に不活性なスルホン酸誘導体を形成するのにアドレナリン作動性化合物と反応するため、重亜硫酸塩及びメタ重亜硫酸塩自体は、自動酸化プロセスとは独立してアドレナリン作動性化合物の分解に寄与する。
【0066】
本発明によれば、それらの形成速度はアドレナリン作動性化合物の酸化防止剤に対するモル比に依存し、高い比率は形成を抑制する傾向があることが示された。本発明に従えば、その結果、アドレナリン作動性化合物と酸化防止剤との最適な比率は異なった影響間で注意深く選択されたバランスである。
【0067】
本発明の実施態様は、
酒石酸エピネフリン 2.0mg/ml
塩化ナトリウム 6.0mg/ml
メタ重亜硫酸ナトリウム 0.57mg/ml
HCl/NaOH 約(q.s.)pH3.4
注入のための水 約(q.s.)1.0ml
を含む医薬組成物である。
【0068】
本発明の実施態様において、医薬組成物は1以上の賦形剤又は添加剤をさらに含む。それらの非限定的な例は、浸透圧調整剤、pH調整剤、EDTA(エチレンジアミン4酢酸)のようなキレート剤、担体等を含む。
【0069】
医薬組成物を安定化する方法
本発明の実施態様は、
i)アドレナリン作動性化合物の溶液を供給し、
ii)重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤を加え、
iii)そのpHを、任意に酸又は塩基を加えて、2.0〜5.0の範囲内の値に調整する工程を含み、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内である、アドレナリン作動性化合物を含む液体医薬組成物を安定化させるための方法である。
【0070】
安定化のための酸化防止剤の使用
本発明の実施態様は、アドレナリン作動性化合物を含む液体医薬組成物の安定化のための、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤の使用であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である使用である。
【0071】
医薬組成物を含むデバイス
本発明は、
iii)アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である液体医薬組成物、及び
iv)投与デバイス
を含むキットを提供する。
【0072】
本発明の実施態様において、投与デバイスはアンプル又は自動注入装置である。
【0073】
特定の実施態様において、自動注入装置は単回投与量を配達する。その他の実施態様において、自動注入装置の一部又は全てが使い捨て可能、及び/又は持ち運び可能である。自動注入装置は、もう1つの実施態様において、医薬組成物とは別に提供される。
【0074】
自動注入装置、又はいずれかの注入デバイスは、挿入物、カートリッジ、バイアル等のような、医薬組成物を置き換えるための交換可能な容器を含んでいてもよい。そのような交換可能な容器は、例えばガラス又はプラスチックであってよい。自動注入装置は注入される医薬組成物の容量を含む。一般的に、そのような注入装置は溶液を保持するためのリザーバ(reservoir)を含み、それは、針を配置し、患者内に針を挿入し、そして患者内に投与量を配達するための機構のみならず、医薬を配達するための針を備えた流体連通(fluid communication)の中にもある。
【0075】
特定の実施態様において、本発明のキットは医薬組成物でプレフィルされた(prefilled)、使い捨て可能な自動注入装置である。
【0076】
治療の方法
本発明の実施態様は、アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物を特定の人に投与することを含み、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、アドレナリン作動性化合物の必要な特定の人の、アドレナリン作動性化合物を必要とする病状の少なくとも1つの症状を改善する方法である。
【0077】
本発明による組成物は、エピネフリンのようなアドレナリン作動性化合物が有用な、いずれかの病状に用いられてもよい。特殊な実施態様において、アドレナリン作動性化合物は、例えばアナフィラキシー、心不全、又は喘息のために使用される。
【0078】
本発明の実施態様は、アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物を特定の人に投与することを含み、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、特定の人のアナフィラキシーを治療する方法である。
【0079】
本発明の実施態様は、アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、アドレナリン作動性化合物の必要な特定の人の、アドレナリン作動性化合物を必要とする病状の少なくとも1つの症状を改善することで使用するための液体医薬組成物である。
【0080】
本発明の実施態様は、アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物の使用であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、特定の人のアナフィラキシーの治療用医薬の製造のための使用である。
【実施例】
【0081】
実施例
実施例1
次の製剤が製造される。
【表1】

【0082】
原液(1.2%塩化ナトリウム)の最終容量の半分をガラスのビーカーの中にピペットで入れ、メタ重亜硫酸ナトリウムを加え、ゆっくりと攪拌して溶解させた。酒石酸エピネフリンを加え、溶液をゆっくりと攪拌して溶解させ、そして混合し、pHを、必要に応じて、3.4±0.2に調整した。溶液を脱気水で注入用の容量に作り、溶液を10分間ゆっくりと攪拌して混合した。
【0083】
実施例2
異なった比率のメタ重亜硫酸塩:エピネフリンの安定性試験
酒石酸塩の形態で、pH3.4で、そして0.6%の塩化ナトリウムを含む、1.1mg/mlのアドレナリン溶液(6.004×10-3M)を使用した。キレート剤としての0.25%のエデト酸二ナトリウムと混合したか、あるいは混合していないメタ重亜硫酸塩酸化防止剤の濃度の範囲を試験した。
【0084】
試験したメタ重亜硫酸塩/アドレナリンのモル比は0.1、0.2、0.5、1.0及び1.5であり、それらは、それぞれ、0.2、0.4、1.0、2.0及び3.0の亜硫酸塩/アドレナリンの比率に対応する。一般的な記載及び本明細書の請求項への言及の容易さのために、前記値は、それぞれ、5.0、2.5、1.0、0.5及び0.33のアドレナリンの亜硫酸塩に対するモル比に対応する。
【0085】
加速試験の温度は60℃で、光から保護し、サンプルを0、7、14、21及び28日に取り出した。各取り出し点において、試験溶液の外観を評価し、pHを測定し、溶液をアドレナリンの含量についてアッセイした。分解生成物の出現を面積%として書き留めた。
【0086】
図1は、メタ重亜硫酸塩/アドレナリンのモル比に対してプロットした、T=0とT=4週間との間のアドレナリンの含量の差、即ち、d[ADR]を示す。[adr]+は0.025%のエデト酸二ナトリウムを含むサンプルをいい、他方、[adr]はキレート剤を含まないサンプルをいう。
【0087】
図2は、メタ重亜硫酸塩/アドレナリンのモル比に対する、60℃で4週間貯蔵後のアドレナリンの含量の合計を示す。図3は、メタ重亜硫酸塩/アドレナリンのモル比に対してプロットした、T=0とT=4週間との間の、溶液のpHの変化を示す。dpH+は0.025%のエデト酸二ナトリウムを含むサンプルをいい、他方、dpHはキレート剤を含まないサンプルをいう。
【0088】
図1、2及び3から、0.5以下のメタ重亜硫酸塩/アドレナリンのモル比に生じた屈折点又は最小値があることが分かる。2モルの亜硫酸イオン−実際の酸化防止剤種−がメタ重亜硫酸ナトリウム1モル当たりから生じるため、メタ重亜硫酸塩/アドレナリンについての0.5のモル比は、亜硫酸塩/アドレナリンについての1.0のモル比に対応する。
【0089】
言い換えれば、60℃の課題に対するアドレナリン溶液の安定性について、最適なメタ重亜硫酸塩/アドレナリンのモル比がある。さらに、この比率より高く、より高いメタ重亜硫酸塩の濃度で、4週間の貯蔵期間後のpHの上昇はメタ重亜硫酸塩濃度に直接的に関係する。
【0090】
本願中で報告した結果は、低い(メタ重亜硫酸塩/アドレナリンのモル比≦0.5)メタ重亜硫酸塩の濃度(ここで、溶液のpH及びアドレナリンは安定であるが、(推定される)アデノクロムを形成する傾向はより大きい)及び高い(メタ重亜硫酸塩/アドレナリンのモル比>0.5)メタ重亜硫酸塩の濃度(ここで、溶液のpHは増加し、アドレナリンの含量は減少し、(推定される)アデノクロムの形成はなかった)の2つの機構を示す。
【0091】
溶液中でメタ重亜硫酸塩を含む起こりそうな反応を考えることは興味深い。水中で、メタ重亜硫酸ナトリウムはナトリウムイオンと亜硫酸イオンとに解離する。
【化1】

【0092】
亜硫酸イオンはカルボニル及びアルコール基を還元し、スルホン酸エピネフリン(ESA)錯体、1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−メチル−アミノ−メタンスルホン酸の推定構造は以下に示すとおりである。
【化2】

【0093】
亜硫酸イオンの消費はpHを上昇させるようであり、そのことは本願中で見られる。メタ重亜硫酸ナトリウム1モル当たりから生じた、2モルの亜硫酸イオンがあることに気付くであろう。
【0094】
従って、例えば0.5に近いメタ重亜硫酸塩:アドレナリンのモル比を示す様々なプロットは、1に近い亜硫酸塩:アドレナリンのモル比としても解釈される。この後者の比率は実際の酸化防止種及びESA製剤中に含まれる種の濃度をベースとするため、このことは間違いなくより関連性がある。
【0095】
観察されたメタ重亜硫酸塩の濃度では、エデト酸二ナトリウムのようなキレート剤を用いる場合、全く有利ではないようである。
【0096】
実施例3
異なった比率のメタ重亜硫酸塩:エピネフリンのさらなる安定性試験
以下の試験は、アドレナリンの安定性について、メタ重亜硫酸ナトリウムのアドレナリンに対する最適なモル比に関するさらなる情報を開示する。
【0097】
加えられる様々なモル比(0.25−0.59)のメタ重亜硫酸ナトリウムを使用して、(酒石酸塩の形態の)アドレナリン1.0mg/mlの濃度、pH3.4で、0.6%の塩化ナトリウムを含む製剤溶液を調製した。
【0098】
試験したメタ重亜硫酸塩/アドレナリンのモル比は0.25、0.34、0.42、0.5及び0.59であり、それらは、それぞれ、0.5、0.68、0.84、1.0及び1.18の亜硫酸塩/アドレナリンの比率に対応する。一般的な記載及び本明細書の請求項への言及の容易さのために、前記値は、それぞれ、2.0、1.47、1.19、1.0及び0.85のアドレナリンの亜硫酸塩に対するモル比に対応する。
【0099】
各サンプル溶液を2つのロットに分割した。各サンプル溶液について、一方のロットを60℃の加速試験温度に置き、光から保護し、その他のロットを13400luxの可視光、1.50W.h/m2のUVをもたらす、25℃の光安定性キャビネット(photo-stability cabinet)内に置いた。サンプルを両方の状態から0、7、14及び28日に取り出した。各取り出し点において、試験溶液の外観を評価し、pHを測定し、アドレナリンの含量を不純物と共に測定した。
【0100】
図4はT=0に対する、60℃での熱ストレスの間のアドレナリンの含量を示し、他方、図5はT=0に対する、光ストレスの間のアドレナリンの含量を示す。
【0101】
いずれかのストレスによって生じる、アドレナリンの喪失に対するメタ重亜硫酸塩の保護効果が明白に見られ得る。両方のストレスを見ると、本願で研究された比率をベースとするメタ重亜硫酸塩の含量の最初の選択は、アドレナリンに対して半分のモルであった。
【0102】
図6は60℃での熱ストレスの間の、不純物含量の合計、即ち分解生成物の含量を示し、他方、図7は光ストレスの間の不純物含量の合計を示す。
【0103】
光ストレスを受けた(photo-stressed)サンプル中の不純物含量についての結果は、低いメタ重亜硫酸塩の含量での不純物含量の時間に依存する増加は、少なくとも定性的には、時間に依存するアドレナリンの喪失を反映するという点で、アドレナリンの対応する喪失についてのものとよく一致する。
【0104】
熱ストレスを受けたサンプルについて、アドレナリンの喪失と不純物の出現との間の相関は余り明白ではない。酸化防止剤を含まずに熱ストレスを受けたサンプルは最も低い全不純物の濃度の間を有するが、最も大きなアドレナリンの喪失を有し、最も高い全不純物の濃度は、M 0.59、即ち、貯蔵での最も低いアドレナリンの喪失の1つを示すサンプルであった。
【0105】
熱ストレスからの不純物の合計に基づいて、最良のメタ重亜硫酸塩:アドレナリンの比率は0.42であり、光ストレスからの不純物の合計に基づいては0.5であった。
【0106】
図8は実施例2及び3において開示された結果を総括し、T=0に対する、60℃での熱ストレスの間のアドレナリンの含量を示す。図9は、60℃、異なったメタ重亜硫酸塩:アドレナリンのモル比率での、スルホン酸エピネフリン(ESA)、即ちメタ重亜硫酸塩/アドレナリンの主要な分解生成物の1つの形成を示す。
【0107】
図8及び9は高いメタ重亜硫酸塩濃度の有害な効果を明白に示す。もちろん、溶液中、2モルの亜硫酸イオン、即ち、実際の酸化防止種及びESAの形成に関与する種がメタ重亜硫酸ナトリウム1モル当たりに生じるため、重要なことは、約1.0の最適値を有することが見出された、基本的な亜硫酸塩:アドレナリンの比率であるように思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である液体医薬組成物。
【請求項2】
アドレナリン作動性化合物が、エピネフリン、ノルエピネフリン、フェニレフリン、α−メチルノルエピネフリン、ドーパミン、メトキサミン、クロニジン、ドブタミン、プレナルテロール、イソプロテレノール、フェノテロール、アルブテロール、テルブタリン、メタプロテレノール、及びそれらの生理学的に許容な塩からなる群から選択される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
アドレナリン作動性化合物が、エピネフリン、ノルエピネフリン、イソプロテレノール及びドーパミン、並びにそれらの生理学的に許容な塩からなる群から選択される請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
アドレナリン作動性化合物が、エピネフリン又はその生理学的に許容な塩である請求項1〜3のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項5】
酸化防止剤が、重亜硫酸ナトリウム及びメタ重亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される請求項1〜4のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項6】
酸化防止剤が、メタ重亜硫酸ナトリウムである請求項1〜5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのアドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.75〜1.25、好ましくは0.80〜1.20、より好ましくは0.85〜1.15、さらに好ましくは0.90〜1.10、そして最も好ましくは0.95〜1.05の範囲内である請求項1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項8】
2.5〜4.5、好ましくは3.0〜4.0、より好ましくは3.1〜3.7、そして最も好ましくは3.2〜3.6の範囲内のpHを有する請求項1〜7のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項9】
pHが、3.3〜3.5の範囲内、より好ましくは約3.4である請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
1以上の賦形剤又は添加剤をさらに含む請求項1〜9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項11】
酒石酸エピネフリン 2.0mg/ml
塩化ナトリウム 6.0mg/ml
メタ重亜硫酸ナトリウム 0.57mg/ml
HCl/NaOH 約pH3.4
注入のための水 約1.0ml
を含む請求項1〜10のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項12】
i)アドレナリン作動性化合物の溶液を供給し、
ii)重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤を加え、
iii)そのpHを、任意に酸又は塩基を加えて、2.0〜5.0の範囲内の値に調整する工程を含み、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内である、アドレナリン作動性化合物を含む液体医薬組成物を安定化させるための方法。
【請求項13】
アドレナリン作動性化合物を含む液体医薬組成物の安定化のための、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤の使用であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である使用。
【請求項14】
v)アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である液体医薬組成物、及び
vi)投与デバイス
を含むキット。
【請求項15】
投与デバイスが、アンプル又は自動注入装置である請求項14に記載のキット。
【請求項16】
アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物を特定の人に投与することを含み、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、アドレナリン作動性化合物の必要な特定の人の、アドレナリン作動性化合物を必要とする病状の少なくとも1つの症状を改善する方法。
【請求項17】
アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物を特定の人に投与することを含み、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、特定の人のアナフィラキシーを治療する方法。
【請求項18】
アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、アドレナリン作動性化合物の必要な特定の人の、アドレナリン作動性化合物を必要とする病状の少なくとも1つの症状を改善することで使用するための液体医薬組成物。
【請求項19】
アドレナリン作動性化合物と、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩及び亜硫酸塩の化合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤とを含む液体医薬組成物の使用であって、
亜硫酸塩の当量として測定される、アドレナリン作動性化合物の少なくとも1つの酸化防止剤に対するモル比が、0.70〜1.30の範囲内であり、そして
前記液体組成物のpHが、約2.0〜5.0の範囲内である、特定の人のアナフィラキシーの治療用医薬の製造のための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−528831(P2012−528831A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513622(P2012−513622)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057772
【国際公開番号】WO2010/139752
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511294246)アルク アーゲー (2)
【氏名又は名称原語表記】ALK AG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 30, CH−8604 Volketswil, Switzerland
【Fターム(参考)】