説明

少なくとも1つのシフトパドルを備えたステアリングホイール、及び自動車

【課題】ステアリングホイール上でシフトパドルを動かす場合の操作のし易さを改善したステアリングホイールを提供する。
【解決手段】少なくとも1つのシフトパドル4を備えたステアリングホイールに関し、このシフトパドルは、非接触の態様でシフト動作を起動するために、ステアリングホイール1に対して移動可能な態様でステアリングホイール1に連結される。ステアリングホイールは、ステアリングホイール上でシフトパドルを動かす場合の操作のし易さを改善するために、シフトパドル4の移動時にスロット付き案内機構によってシフト感覚が発生することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのシフトパドルを備えたステアリングホイールに関し、このシフトパドルは、シフト動作を非接触の態様で起動するために、ステアリングホイールに対して移動可能な態様でステアリングホイールに連結される。本発明はさらに、このタイプのステアリングホイールを備えた自動車に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】独国特許出願公開 DE 601 32 289 T2
【特許文献2】独国特許出願公開 DE 603 09 999 T2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、請求項1の前段部分によるステアリングホイール上でシフトパドルを動かす場合の操作のし易さを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
その目的は、シフト動作を非接触の態様で起動するために、ステアリングホイールに対して移動可能な態様でステアリングホイールに連結された少なくとも1つのシフトパドルを備えたステアリングホイールにおいて、シフトパドルの移動時にシフト感覚が生じるスロット付き案内機構によって達成される。シフトパドルを使用してギヤをシフトさせる場合、シフト動作が非接触で起動するということは、何ら抵抗を感じることができない、すなわち、シフト動作を触覚的に検出できないということである。シフトパドルを使用してギヤをシフトする場合に、増設したスロット付き案内機構によって抵抗が人工的に発生し、前記抵抗は、直接ギヤをシフトする場合に、シフト動作が行われつつある、または行われたことを運転者に触覚的に伝える。シフトパドルとは、ステアリングホイールの一端に、好ましくは回転可能に取り付けられた一種のシフトレバーである。
【0005】
ステアリングホイールの好ましい例示的な実施形態は、スロット付き案内機構が、スロット付き案内機構に対し圧縮応力をかけられたスライダと相互作用することを特徴とする。スライダは、圧縮応力によってスロット付き案内機構と、好ましくは一端で、接触した状態に維持される。シフトパドルがステアリングホイールに対して移動するときの抵抗を、スロット付き案内機構および/またはスライダの構造または形状により変えることができる。
【0006】
ステアリングホイールの別の好ましい例示的な実施形態は、スライダは、スプリングによってスロット付き案内機構に対し圧縮応力をかけられることを特徴とする。スプリングは、例えば、圧縮コイルスプリングとして設計することができる。代替方法として、前記スライダに流体圧力をかけることでスロット付き案内機構に対しスライダに圧縮応力をかけることも可能である。
【0007】
ステアリングホイールの別の好ましい例示的な実施形態は、スライダが、シフトパドルに取り付けられた案内体内で往復移動できるように案内されることを特徴とする。案内体の構造は、スライダの構造と一致するのが好ましい。
【0008】
ステアリングホイールの別の好ましい例示的な実施形態は、スロット付き案内機構が、ステアリングホイールに取り付けられることを特徴とする。スロット付き案内機構は、例えば、金属またはプラスチックで作ることができる。
【0009】
ステアリングホイールの別の好ましい例示的な実施形態は、スライダが先細の先端部を有することを特徴とする。この先端部は、例えば、円錐の態様で設計され、端部に丸みをつけられるのが好ましい。スライダ先端の円錐または先を切り取った円錐は、テーパ角が約40°〜約50°であるのが好ましい。
【0010】
ステアリングホイールの別の好ましい例示的な実施形態は、スロット付き案内機構が、少なくも1つの初期傾斜部を有することを特徴とする。シフトパドルが非作動状態にあるとき、初期傾斜部が、スライダの往復移動軸に対して角度約50°で配置されるのが好ましい。シフトパドルが初期位置から移動した場合に、初期傾斜部によって初期抵抗が発生する。
【0011】
ステアリングホイールの別の好ましい例示的な実施形態は、初期傾斜部が、傾斜角が異なる2つの傾斜部分に分割されることを特徴とする。第1の傾斜部分は、例えば、シフトパドルが非作動状態にあるときに、スライダの往復移動軸に対して角度約50°で配置される。第2の傾斜部分の対応する角度は約70°であるのが好ましい。
【0012】
ステアリングホイールの別の好ましい例示的な実施形態は、スロット付き案内機構が、初期傾斜部から離れる方向に傾斜した中央傾斜部を有することを特徴とする。中央傾斜部は、90°よりも大きい角度で初期傾斜部から離れる方向に傾斜するのが好ましい。中央傾斜部が離れる方向に傾斜しているということは、運転者に、例えば、シフト動作が行われつつある、または行われたことを伝えるために、シフトパドルの移動時に抵抗が突然大きく増加することを意味する。
【0013】
ステアリングホイールの別の好ましい例示的な実施形態は、中央傾斜部が初期傾斜部に対して角度約100°で配置されることを特徴とする。この値は、本発明の中で特に有益であると分かった。
【0014】
ステアリングホイールの別の好ましい例示的な実施形態は、中央傾斜部が最終傾斜部から1段だけ離間することを特徴とする。この段部は、例えば、特定のシフト動作、特にキックダウンが行われつつある、または行われたことを運転者に伝える一種のラッチ係止点を形成する。
【0015】
ステアリングホイールの別の好ましい例示的な実施形態は、最終傾斜部が中央傾斜部に対してほぼ平行に配置されることを特徴とする。最終傾斜部は、中央傾斜部に対して若干傾けて配置してもよい。
【0016】
ステアリングホイールの別の好ましい例示的な実施形態は、少なくとも1つの光バリアと相互作用する少なくとも1つの接触センサ(コンタクトセンサ、ピックアップなど)が、シフトパドルに取り付けられることを特徴とする。接触センサは、複数の光バリアと相互作用することができる。複数の接触センサがシフトパドルに取り付けられてもよい。代替方法として、少なくとも1つの誘導トリガ機構(誘導アクチュエータ、電磁アクチュエータなど)を使用することもできる。
【0017】
本発明はさらに、上記のステアリングホイールを備えた自動車に関する。2つのシフトパドルがステアリングホイールに取り付けられるのが好ましい。2つのシフトパドルは、正反対に配置されるのが好ましい。
【0018】
本発明の他の利点、特徴、および細部が、様々な例示的実施形態を図面を参照して詳細に記載した以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】シフトパドルを備えたステアリングホイールの斜視図を示している。
【図2】シフトパドル用のスロット付き案内機構の領域のステアリングホイールを横断する断面図を示している。
【図3】シフトパドルを用いたシフト動作用のトリガ機構の領域のステアリングホイールを横断する断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ハブ体2を備えたステアリングホイール1が図1に斜視図で示されている。シフトパドル4は、ステアリングホイール1のハブ体2に移動可能に、特に回転可能に取り付けられている。シフトパドル4は、ステアリングホイール1のハブ体2に一方の端部で連結されたレバー要素5を含む。2つの作動アーム6、7は、レバー要素5の他端から反対方向に離れるように傾斜している。
【0021】
図2は、スロット付き案内機構25の領域のステアリングホイール1を横断する断面図である。シフトパドル4のレバー要素5が、連結点10でステアリングホイール1に回転可能に取り付けられているのが断面図から分かる。シフトパドル4は、連結点10のまわりで連結体12と係合し、この連結体12は、図示した例示的な実施形態では、レバー要素5と一体に連結されている。
【0022】
スライダ16がその中で往復移動できるように案内される、スライダ16用の案内体14は連結体12に留められている。スライダ16は、一方の端部で案内体14から外に突出している。先端部18は、スライダ16の突出端に形成され、先端が丸くなった円錐の形態で設計されている。円錐のテーパ角は約45°である。
【0023】
スライダ16の他端は、内側が中空構造になっている。スライダ16は、スプリング20によってスロット付き案内機構25に対し圧縮応力をかけられている。スプリング20は、圧縮コイルスプリングとして設計され、案内体14のベース部とスライダ16との間で押し付けられている。
【0024】
スロット付き案内機構25は、2つの傾斜部分31、32がある初期傾斜部30を有する。第1の傾斜部分31は、シフトパドル4が非作動状態にあるときに、スライダ16の移動軸に対して角度約50°で配置されている。第2の傾斜部分32は、シフトパドル4が非作動状態にあるときに、スライダ16の移動方向に対して角度約70°で配置されている。
【0025】
シフトパドル4が、図示した非作動状態にあるときに、スライダ16の先端部18は、その丸い端部で初期傾斜部30の第1の傾斜部分31に当接している。初期傾斜部30は2つの傾斜部分31、32と共に、シフトパドル4が誤って作動するのを防止することを第1に意図されている。第2に、傾斜部分31、32は、若干の初期抵抗のみがシフトパドル4の作動に対抗する態様で配置されている。シフトパドルの移動時に、移動を続けたことでシフト動作が起動されつつあることが、2つの傾斜部31、32間の屈折交点によって触覚的に伝えられる。
【0026】
中央傾斜部34は、初期傾斜部30の第2の傾斜部分32から離れる方向に角度約100°で傾斜している。中央傾斜部34のこの配置によって、スライダ16が中央傾斜部34に当接するとすぐに、シフトパドルのそれ以上の移動に対する抵抗が大幅に、すなわち、認識可能なほど大きくなる。その結果、シフト動作が行われつつある、または行われたことが運転者に触覚的に伝えられる。
【0027】
次に最終傾斜部36がそこから出現する段部35は、初期傾斜部30から離れる方向に向いた、中央傾斜部34の端部に形成されている。最終傾斜部36は、中央傾斜部34に対してほぼ平行に配置されている。若干丸みの付いた構造とすることができる段部35は、例えば、キックダウンなどの特定のシフト動作を触覚的に伝えることができる一種のラッチ係止点を形成している。
【0028】
図3は、シフトパドル4に取り付けられた接触センサ40の領域のステアリングホイール1を横断する断面図を示している。接触センサ40は、ステアリングホイール1に取り付けられた光バリア42と相互作用する。様々なシフト動作を示すために、接触センサ40は、複数の光バリアと相互作用することができる。複数の接触センサ40が、シフトパドル4に設けられてもよい。
【0029】
様々な傾斜部30、34、36および段部35を備えたスロット付き案内機構25の構造または形状による、シフトパドル4の移動に対抗する抵抗の変化から、様々なシフト動作を運転者に触覚的に伝えることができる。
【0030】
スライダ16とスロット付き案内機構25との間の相互作用により、シフト動作が起動されつつあるかまたは起動されたかどうか、およびシフトパドル4の移動でどの動作が起動されたかが運転者に認識可能に伝えられる。動作、特にシフト動作は、実際には接触センサ40と光バリア42との間の相互作用によって、非接触の態様で、すなわち、認識できる抵抗がない状態で起動される。
【符号の説明】
【0031】
1 ステアリングホイール
4 シフトパドル
25 スロット付き案内機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシフトパドル(4)を備えたステアリングホイールであって、非接触の態様でシフト動作を起動するために、前記シフトパドル(4)が、前記ステアリングホイール(1)に対して移動可能な態様で前記ステアリングホイール(1)に連結されたステアリングホイールにおいて、
シフトパドル(4)の移動時に、スロット付き案内機構(25)によってシフト感覚が生じることを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記スロット付き案内機構(25)は、前記スロット付き案内機構(25)に対し圧縮応力をかけられたスライダ(16)と相互作用することを特徴とする、請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記スライダ(16)は、スプリング(20)によって前記スロット付き案内機構(25)に対し圧縮応力をかけられることを特徴とする、請求項2に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記スライダ(16)は、前記シフトパドル(4)に取り付けられた案内体(14)内で往復移動できるように案内されることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記スロット付き案内機構(25)は、前記ステアリングホイール(1)に取り付けられることを特徴とする、請求項4に記載のステアリングホイール。
【請求項6】
前記スライダ(16)は、先細の先端部(18)を有することを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項7】
前記スロット付き案内機構(25)は、少なくとも1つの初期傾斜部(30)を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項8】
前記初期傾斜部(30)は、傾斜角が異なる2つの傾斜部分(31、32)に分割されることを特徴とする、請求項7に記載のステアリングホイール。
【請求項9】
前記スロット付き案内機構(25)は、前記初期傾斜部(30)から離れる方向に傾斜した中央傾斜部(34)を有することを特徴とする、請求項7または請求項8に記載のステアリングホイール。
【請求項10】
前記中央傾斜部(34)は、前記初期傾斜部(30)に対して角度約100°で配置されることを特徴とする、請求項9に記載のステアリングホイール。
【請求項11】
前記中央傾斜部(34)は、最終傾斜部(36)から段部(35)により離間することを特徴とする、請求項9または請求項10に記載のステアリングホイール。
【請求項12】
前記最終傾斜部(36)は、前記中央傾斜部(34)に対してほぼ平行に配置されることを特徴とする、請求項11に記載のステアリングホイール。
【請求項13】
少なくとも1つの光バリア(42)と相互作用する少なくとも1つの接触センサ(40)が、前記シフトパドル(4)に取り付けられることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のステアリングホイール(1)を備えた自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−63260(P2011−63260A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−187979(P2010−187979)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】