説明

少なくとも1つのバルブを有する再帰反射物品、およびその製造方法

【課題】衣服等に視認性を増加させるために設けられる再帰反射材料の通気性を改善する。
【解決手段】少なくとも1つのバルブ20を有する再帰反射物品を開示する。各バルブは、再帰反射材料12の第1の主面14から第2の主面16まで延在するチャネル28と、チャネルに近接した少なくとも1つの可動部材22とを含むことができる。少なくとも1つの可動部材は、閉位置と開位置との間で可動である。閉位置にあるとき、少なくとも1つの可動部材は、チャネルの少なくとも一部を遮断する。少なくとも1つのバルブを有する再帰反射物品を製造する方法も開示する。バルブは、汗および水分などの流体の輸送を可能にし、衣服で使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、再帰反射物品の分野に関し、特に、少なくとも1つのバルブを有する再帰反射物品、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路標識、ナンバープレート、履物、および衣類パッチを含むさまざまな用途における使用のために、再帰反射材料が開発されている。再帰反射材料は、しばしば、着用者の視認性を増加させるために、衣類中の高視認性トリム材料として使用される。たとえば、再帰反射材料は、しばしば、消防士、救助員、EMS技術者などによって着用される保護衣服に加えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,153,128号明細書
【特許文献2】米国特許第5,888,618号明細書
【特許文献3】米国特許第5,837,347号明細書
【特許文献4】米国特許第5,674,605号明細書
【特許文献5】米国特許第6,306,459号明細書
【特許文献6】米国特許第4,102,562号明細書
【特許文献7】米国特許第5,916,399号明細書
【特許文献8】米国特許第5,344,705号明細書
【特許文献9】米国特許第3,700,478号明細書
【特許文献10】米国特許第4,648,932号明細書
【特許文献11】米国特許第3,700,305号明細書
【特許文献12】米国特許第4,763,985号明細書
【特許文献13】米国特許第1,175,224号明細書
【特許文献14】米国特許第2,461,011号明細書
【特許文献15】米国特許第2,726,161号明細書
【特許文献16】米国特許第2,842,446号明細書
【特許文献17】米国特許第2,853,393号明細書
【特許文献18】米国特許第2,870,030号明細書
【特許文献19】米国特許第2,939,797号明細書
【特許文献20】米国特許第2,965,921号明細書
【特許文献21】米国特許第2,992,122号明細書
【特許文献22】米国特許第3,468,681号明細書
【特許文献23】米国特許第3,946,130号明細書
【特許文献24】米国特許第4,192,576号明細書
【特許文献25】米国特許第4,367,919号明細書
【特許文献26】米国特許第4,564,556号明細書
【特許文献27】米国特許第4,758,469号明細書
【特許文献28】米国特許第4,772,511号明細書
【特許文献29】米国特許第4,931,414号明細書
【特許文献30】米国特許第5,200,262号明細書
【特許文献31】米国特許第5,283,101号明細書
【特許文献32】米国特許第5,450,235号明細書
【特許文献33】米国特許第3,712,706号明細書
【特許文献34】米国特許第4,025,159号明細書
【特許文献35】米国特許第4,202,600号明細書
【特許文献36】米国特許第4,243,618号明細書
【特許文献37】米国特許第4,349,598号明細書
【特許文献38】米国特許第4,576,850号明細書
【特許文献39】米国特許第4、588,258号明細書
【特許文献40】米国特許第4,775,219号明細書
【特許文献41】米国特許第4,895,428号明細書
【特許文献42】米国特許第5,840,405号明細書
【特許文献43】実開昭62−132112号
【特許文献44】特開2000−154411号
【特許文献45】実開昭61−199517号
【特許文献46】特開平8−284009号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再帰反射材料は、夜間および夕暮れ時に、消防員および救助員の視認性を増加させるのに特に有用であり得る。しかし、いくつかの状況において、消防士衣服が火災の間極端な温度に曝されると、いくつかの不透過性または半透過性再帰反射材料が、衣服の内側の熱および/または流体の蓄積に寄与することがある。特定の条件下で、閉じ込められた熱は、消防士の皮膚への不快またはさらには負傷をもたらすことがある。
【0005】
特に、衣服が火災からの極端な温度に曝されると、不透過性または半透過性再帰反射材料の下に集まった水分が、急速に膨張または気化することがある。膨張した水分が迅速に逃げることができない場合、消防士は有害な温度に曝されることがある。衣服の外側の不透過性または半透過性材料は、加熱された水分蒸気の急速な逃げを抑制することがあり、蒸気を消防士の皮膚の方に向けることができる。いくつかの場合、これは、皮膚への蒸気やけどまたは他の熱傷をもたらすことがある。
【0006】
いくつか穴のあいた再帰反射材料を含む従来の再帰反射材料が、一般に、この現象を示す。そのような従来の穴のあいた再帰反射材料は、ニードルパンチ穴、レーザパンチ穴、スリット、またはペーパーパンチで作られた比較的大きい穴の標準再帰反射トリムを含む。さらに、再帰反射材料に穴をあけてそれらを透過性にすることは、再帰反射材料の実質的な部分を除去し、それにより、潜在的に、材料の顕著性を減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、本開示は、少なくとも1つのバルブを有する再帰反射物品を提供する。少なくとも1つのバルブは、流体および/または熱が再帰反射物品を通ってベントすることを可能にすることができる。
【0008】
一態様において、本開示は、第1の主面および第2の主面を有する再帰反射材料と、少なくとも1つのバルブとを含む再帰反射物品を提供する。少なくとも1つのバルブは、再帰反射材料の第1の主面から第2の主面まで延在するチャネルと、閉位置と開位置との間で可動である、チャネルに近接した少なくとも1つの可動部材とを含む。少なくとも1つの可動部材は、閉位置にあるとき、チャネルの少なくとも一部を遮断する。
【0009】
別の態様において、本開示は、保護外層と、保護外層に取付けられた少なくとも1つの再帰反射物品とを含む再帰反射衣服を提供する。少なくとも1つの再帰反射物品は、第1の主面および第2の主面を有する再帰反射材料と、少なくとも1つのバルブとを含む。少なくとも1つのバルブは、再帰反射材料の第1の主面から第2の主面まで延在するチャネルと、閉位置と開位置との間で可動である、チャネルに近接した少なくとも1つの可動部材とを含む。少なくとも1つの可動部材は、閉位置にあるとき、チャネルの少なくとも一部を遮断する。
【0010】
別の態様において、本開示は、ベント付再帰反射物品を製造する方法を提供する。この方法は、第1の主面および第2の主面を有する再帰反射材料を提供する工程を含む。この方法は、少なくとも1つのバルブを再帰反射材料に形成する工程をさらに含み、少なくとも1つのバルブを形成する工程は、再帰反射材料の第1の主面から第2の主面まで延在するチャネル、および開位置と閉位置との間で可動である少なくとも1つの可動部材であって、閉位置にあるとき、チャネルを実質的に遮断する少なくとも1つの可動部材を形成するように、少なくとも第1のスリットを再帰反射材料に形成することを含む。
【0011】
本開示の上記要約では、本開示の各々の開示された実施形態またはあらゆる実施実現を説明することを意図していない。次の図および詳細な説明は、例示的な実施形態をより特定的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】再帰反射材料と、少なくとも1つのバルブとを含む再帰反射物品の一実施形態の概略平面図である。
【図2】図1の再帰反射物品の1つのバルブの概略平面図である。
【図3】図1の再帰反射物品の1つのバルブの概略斜視図である。
【図4A】バルブの実施形態の概略平面図である。
【図4B】バルブの実施形態の概略平面図である。
【図4C】バルブの実施形態の概略平面図である。
【図4D】バルブの実施形態の概略平面図である。
【図4E】バルブの実施形態の概略平面図である。
【図4F】バルブの実施形態の概略平面図である。
【図5】ビーズ再帰反射材料と、少なくとも1つのバルブとを含む再帰反射物品の一実施形態の概略断面図である。
【図6】ビーズ再帰反射材料と、少なくとも1つのバルブとを含む再帰反射物品の別の実施形態の概略断面図である。
【図7】マイクロプリズム再帰反射材料と、少なくとも1つのバルブとを含む再帰反射物品の一実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、少なくとも1つのバルブを有する再帰反射物品を提供する。そのようなバルブは、物品の一方の表面に近接したところから他方の表面に近接したところへの流体の輸送を可能にする。さらに、そのようなバルブは、また、物品の一方の表面に近接したところから他方の表面に近接したところへの熱の輸送を可能にすることができる。少なくとも1つのバルブは、最小量の再帰反射材料が物品から除去されるように、物品中に位置決めされるか形成される。
【0014】
蛍光視認性向上および再帰反射視認性向上の両方が、消防士および他の緊急応答者の安全に重要である。反射トリム材料が、しばしば、視認性を向上させるために、緊急作業および他の作業によって着用される衣服に取付けられる。一般に、現在のトリム材料は、通常中断または開口部のない連続材料片である。かかる材料は、いかなる流体または熱もあまり通さない。緊急現場において、消防士などの最初の応答員が、衣服の外側からの水分、および衣服の内側からの汗水分に曝される。さらに、最初の応答員は、時には、外部源からの強い熱エネルギー、および肉体的活動によって内部に発生した熱に曝される。増加された、衣服を通る流体および熱の輸送が、安全を向上させるであろう。
【0015】
本開示の再帰反射物品は、さまざまなタイプの用途のために、およびさまざまなタイプの基材上に使用することができる。たとえば、現在説明される再帰反射物品をランニングアパレル上に使用して、着用者への加えられた快適さのために、それを通る汗および熱のベントをもたらすことができる。あるいは、説明される再帰反射物品を、緊急員によって着用されるベストまたは保護衣服に取付けて、着用者に近接したところから保護衣服の外側への流体および/または熱のベントをもたらすことができる。そのような衣服は、消防士装備または多層熱制御装備のアウターシェルなどの保護外層を含むことができる。ここで説明される再帰反射物品を、任意の適切な技術を用いて保護衣服上に取付けるか配置することができ、たとえば、接着する、縫う、ステープルで留めることなどができる。さらに、説明される再帰反射物品を保護衣服上に任意の望ましいパターンで形成して、昼間照明条件(すなわち、拡散照明)または夜間照明条件(たとえば、安全ライト、ヘッドランプなどから)の両方に際して、向上した視認性をもたらすことができる。
【0016】
図1は、再帰反射物品10の一実施形態の概略平面図である。物品10は、再帰反射材料12と、再帰反射材料12中に位置決めされた少なくとも1つのバルブ20とを含む。
【0017】
再帰反射材料12は、第1の主面14と、第2の主面16とを有する。再帰反射材料12は、任意の適切なタイプの1つまたは複数の再帰反射材料を含むことができる。いくつかの実施形態において、再帰反射材料12は、米国特許第6,153,128号明細書(ライトル(Lightle)ら)[特許文献1]に記載された材料などのビーズ再帰反射材料を含むことができる。ここでさらに説明されるように、そのようなビーズ再帰反射材料は、再帰反射材料12の第1の主面14に近接して位置決めされた再帰反射微小球の層を含むことができる。
【0018】
他の実施形態において、再帰反射材料12は、米国特許第5,888,618号明細書(マーティン(Martin)ら)[特許文献2]に記載された材料などのマイクロプリズム再帰反射材料を含むことができる。ここでまたさらに説明されるように、マイクロプリズム再帰反射材料は、再帰反射材料12の第2の主面16に近接したマイクロプリズム要素の層を含むことができる。
【0019】
少なくとも1つのバルブ20は、再帰反射材料12中に位置決めされる。任意の適切な数のバルブ20を、再帰反射材料12中に位置決めすることができる。いくつかの実施形態において、バルブ20をアレイ内に位置決めすることができる。他の実施形態において、バルブ20を任意の適切なパターンで形成することができる。あるいは、バルブ20を再帰反射材料12中にランダムに位置決めすることができる。バルブ20は、また、バルブ20が、第2の主面16に近接した流体および/または熱を、再帰反射材料12の第1の主面14に近接したところにベントするように動作可能であるような、任意の適切なサイズまたは形状であることができる。
【0020】
図2と図3にさらに示されているように、図1の1つのバルブ20は、再帰反射材料12の第1の主面14から第2の主面16まで延在するチャネル28を含む。チャネル28は、ここでさらに説明されるように、任意の適切な形状およびサイズであることができる。
【0021】
バルブ20は、また、可動部材22を含む。各可動部材22は、チャネル28に近接して位置決めされ、閉位置(図2に見られるような)と開位置(図3に見られるような)との間で可動である。閉位置にあるとき、少なくとも1つの可動部材22がチャネル28の少なくとも一部を遮断する。
【0022】
各可動部材22は、任意の形状、たとえば、矩形、三角形、円形、多角形をとることができる。さらに、各可動部材22は、任意の適切な1つまたは複数の材料、たとえば、ポリマー、金属などから製造することができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、可動部材22がバルブ20のチャネル28に近接したままであるように、可動部材22を再帰反射材料12に連結することができる。任意の適切な技術を用いて、各可動部材22を再帰反射材料12に連結することができる。たとえば、適切な接着剤または取付けデバイス、たとえば、ステープル、ピンなどを使用して、1つ以上の可動部材22を再帰反射材料12に接着するか取付けることができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のヒンジを使用して、1つ以上の可動部材22を再帰反射材料12に連結することができる。他の実施形態において、1つ以上の可動部材22が再帰反射材料12と同じ1つまたは複数の材料であるように、1つ以上の可動部材22を再帰反射材料12から形成することができる。たとえば、再帰反射材料12が分離されて可動部材22を形成するように、1つ以上のスリット26または分離を再帰反射材料12に形成することができる。そのような実施形態において、可動部材22と再帰反射材料12との間に形成されたリビングヒンジ24によって、可動部材22を再帰反射材料12に連結することができる。
【0024】
バルブ20は、当該技術において知られている任意の適切なバルブであることができる。いくつかの実施形態において、バルブ20は、再帰反射材料12に取付けられた機械的バルブ(たとえば、ボタンバルブ)を含むことができる。他の実施形態において、ここでさらに説明されるような任意の適切な技術を用いて、バルブ20を再帰反射材料12から形成することができる。図2に示された実施形態において、2つのスリット26が交差するように、2つのスリット26がX形状に形成される。2つのスリット26は、各々が実質的に三角形の形状を有する4つの可動部材22を形成する。たとえば、レーザ切断、ダイカット、またはウォータジェット切断などの、任意の適切な技術を用いて、再帰反射材料12にスリット26を形成することができる。再帰反射材料12のスリッティングによって1つ以上のバルブ20を設けることによって、再帰反射材料12が単に穴をあけられて開いた穴を形成した場合より少ない再帰反射材料12を除去することができる。さらに、再帰反射材料12に形成された穴は、常に開いており、したがって、望ましくなく、第1の主面14に近接した流体が、再帰反射材料12の第2の主面16に近接したところに向けられることを可能にする。
【0025】
少なくとも1つのバルブ20は、任意の適切な形状をとることができる。たとえば、図4A〜図4Fは、さまざまなバルブの例示的な実施形態を示す。図4Aのバルブ120aは、バルブ120aが、各々が実質的に三角形の形状を有する3つの可動部材122aを含むように、再帰反射材料112aに形成された3つのスリット126aを含む。可動部材122aがチャネルに近接しているように、ヒンジ124aが可動部材122aを再帰反射材料112aに取付ける。さらに、再帰反射材料112aに形成されたチャネルは、実質的に矩形の形状を有する。
【0026】
図4Bのバルブ120bは、再帰反射材料112bに、1つの点で交差する4つのスリット126bを設けることによって形成される。4つのスリット126bは、ヒンジ124bによって再帰反射材料112bに取付けられた8つの三角形可動部材122b、および八角形チャネルを形成する。図4Cは、ヒンジ124cによって再帰反射材料112cに取付けられた2つの矩形可動部材122c、および矩形チャネルを設ける3つのスリット126cから形成されたバルブ120cを示す。図4Dは、4つのスリット126dから形成され、それにより、ヒンジ124dによって再帰反射材料112dに取付けられた4つの矩形可動部材122d、および矩形チャネルを設けるバルブ120dを示す。図4Eは、7つのスリット126eから形成され、それにより、4つの矩形可動部材122e、および矩形チャネルを設けるバルブ120eを示す。また、図4Fは、1つの実質的に円形のスリット126fから形成され、したがって、ヒンジ124fによって再帰反射材料112fに取付けられた1つの円形可動部材122f、および円形チャネルを設けるバルブ120fを示す。本開示のバルブは、図4A〜図4Fに示された実施形態に限定されない、任意の適切なチャネル形状および可動部材形状を含むことができる。
【0027】
図1〜図3に示された実施形態において、バルブ20は、閉位置にあるとき、再帰反射材料12の第2の主面16に近接した流体および/または熱を、第1の主面14に近接したところにベントするように動作可能である。十分な量の流体または熱が再帰反射材料12の第2の主面16に近接しているとき、流体または熱により、可動部材22の少なくとも1つが閉位置から開位置(図3に示されているような)に動く。開位置にあるとき、可動部材22は、もはやチャネル28の少なくとも一部を遮断せず、それにより、第2の主面16に近接した流体および/または熱が、再帰反射材料12の第1の主面14に近接しているように、チャネル28を通って向けられることを可能にする。
【0028】
可動部材22によって行われるこのバルブ作用は、過剰の熱が負傷を引起すことがある環境において有利であり得る。たとえば、再帰反射材料12の第2の主面16が衣服基材に近接しているように、再帰反射物品10を防火コート(fire coat)または他の保護衣服に取付けることができる。衣服の内側と着用者の皮膚との間に集まることがある流体は、火災によって生じる極端な温度に曝されると、急速に膨張することがある。この閉じ込められた流体は、着用者に激しいやけどを起すことがある蒸気に変えられることがある。再帰反射物品10のバルブ20は、そのような閉じ込められた流体が衣服基材および再帰反射物品10を通ってベントすることを可能にすることができる。
【0029】
閉位置にあるとき、可動部材22は、チャネル28の少なくとも一部を遮断する。この遮断は、流体が、再帰反射材料12の第1の主面14に近接したところから再帰反射材料12の第2の主面16に近接したところにベントするのを実質的に防止することができる。これは、再帰反射物品10が防火コートまたは他の保護衣服に取付けられた状況において有利であり得る。現場において、消防士は、再帰反射物品10に衝突することがある水または他の液体に曝されることがある。可動部材22によってもたらされる一方向バルブ作用は、そのような流体が、再帰反射物品10を通って向けられ、物品10と衣服基材との間に閉じ込められるようになるのを実質的に防止することができる。
【0030】
任意の適切な再帰反射材料を本開示で使用して、ベント付再帰反射物品を形成することができる。たとえば、米国特許第6,153,128号明細書(ライトル(Lightle)ら)[特許文献1]に記載された材料などのビーズ再帰反射材料は、流体および/または熱に対してより透過性になるように、その中に配置または形成された1つ以上のベントを有することができる。本開示の実施形態で使用することができる他のタイプのビーズ再帰反射材料が、次の米国特許第5,837,347号明細書[特許文献3];米国特許第5,674,605号明細書[特許文献4];米国特許第6,306,459号明細書[特許文献5];米国特許第4,102,562号明細書[特許文献6];米国特許第5,916,399号明細書[特許文献7];および米国特許第5,344,705号明細書[特許文献8]に記載されている。
【0031】
ビーズ再帰反射材料は、一般に、入射光を再帰反射するために、ガラスまたはセラミック微小球の単層を使用する。典型的には、微小球はバインダー層に部分的に埋込まれ、鏡面反射層が微小球の層とバインダー層との間に配置される。反射層は、金属層(たとえば、米国特許第3,700,478号明細書[特許文献9]および米国特許第4,648,932号明細書[特許文献10]に開示されているようなアルミニウムコーティング)、または、異なった屈折率を有する無機材料の1つ以上の層から構成された無機誘電体鏡(米国特許第3,700,305号明細書[特許文献11]および米国特許第4,763,985号明細書[特許文献12]に開示されているような)であることができる。ビーズ材料のカテゴリーは、露出レンズタイプ、密閉レンズタイプ、およびカプセル化レンズタイプを含む。露出レンズビーズ材料は、環境に露出された微小球の層を有する。密閉レンズビーズ材料は、微小球の前側と接触し、微小球の前側を囲む透明なポリマー樹脂などの保護層を有する。カプセル化レンズ材料は、微小球を、水、塵、または他の環境要素から保護するために、微小球の前側を囲む空気間隙を有し、かつ支持フィルムに密封された透明なフィルムを有する。
【0032】
図5は、ビーズ再帰反射材料212と、再帰反射材料212中に位置決めされた1つ以上のベント220とを含む再帰反射物品200の一実施形態の概略断面図である。再帰反射微小球の層218が、再帰反射材料212の第1の主面214に近接して位置決めされる。再帰反射微小球218aを含む再帰反射微小球の層218は、バインダー層213に部分的に埋込まれる。再帰反射微小球218aがバインダー層213中に任意の適切な深さにあるように、再帰反射微小球の層218をバインダー層213に部分的に埋込むことができる。さらに、再帰反射微小球の層218は、また、再帰反射微小球の層218の少なくとも一部の後ろに、再帰反射微小球218aの埋込まれた部分の近くに位置決めされた反射層219を含む。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態に使用される微小球は、最も均一なかつ効率的な再帰反射をもたらすために、形状が実質的に球形である。微小球は、大きいパーセンテージの入射光が再帰反射されるように、光の吸収を最小にするように実質的に透明であることができる。微小球は、しばしば、実質的に無色であるが、染めるか着色することができる。微小球は、ガラス、非ガラス質セラミック組成物、または合成樹脂から製造することができる。一般に、ガラス微小球が好ましい。なぜなら、それらは、合成樹脂から製造された微小球より高価でなく、硬く、耐久性のある傾向があるからである。本発明に有用であり得る微小球の例が、次の米国特許第1,175,224号明細書[特許文献13]、米国特許第2,461,011号明細書[特許文献14]、米国特許第2,726,161号明細書[特許文献15]、米国特許第2,842,446号明細書[特許文献16]、米国特許第2,853,393号明細書[特許文献17]、米国特許第2,870,030号明細書[特許文献18]、米国特許第2,939,797号明細書[特許文献19]、米国特許第2,965,921号明細書[特許文献20]、米国特許第2,992,122号明細書[特許文献21]、米国特許第3,468,681号明細書[特許文献22]、米国特許第3,946,130号明細書[特許文献23]、米国特許第4,192,576号明細書[特許文献24]、米国特許第4,367,919号明細書[特許文献25]、米国特許第4,564,556号明細書[特許文献26]、米国特許第4,758,469号明細書[特許文献27]、米国特許第4,772,511号明細書[特許文献28]、および米国特許第4,931,414号明細書[特許文献29]に開示されている。
【0034】
本開示に使用される微小球は、典型的には、約30から200μmの範囲内の平均直径を有する。本開示に使用される微小球は、典型的には、約1.7から約2.3の屈折率を有する。
【0035】
ここで述べられるように、再帰反射微小球の層218は、再帰反射微小球の層218の埋込まれた部分上に配置された鏡面反射層219を有することができる。鏡面反射層219は、任意の適切なタイプの反射体、たとえば、反射金属層、誘電体鏡などを含むことができる。「反射金属層」という用語は、入射光を反射するために、好ましくは、入射光を鏡面反射するために、有効量の金属を含む反射層を意味するように、ここで使用される。さまざまな金属を使用して、鏡面反射金属層を提供することができる。これらの金属としては、アルミニウム、銀、クロム、ニッケル、マグネシウム、金、およびそれらの合金が挙げられる。アルミニウムおよび銀は、反射層での使用のための好ましい金属であることができる。金属層219は、入射光を反射するのに十分厚くなければならない。典型的には、金属層219は、厚さ約50から150nmである。反射金属層219は、任意の適切な技術(たとえば、米国特許第6,153,128号明細書に記載された技術)を用いて形成することができる。
【0036】
反射層219は、再帰反射微小球の層218の埋込まれた部分上に配置される。いくつかの実施形態において、反射層219は、再帰反射微小球の層218の埋込まれた部分全体の上に配置される。他の実施形態において、ここでさらに説明されるように、反射層219を、再帰反射微小球の層218の埋込まれた部分の一部の上にのみ配置することができる。
【0037】
再帰反射材料212のバインダー層213は、典型的には、可撓性ポリマー材料を含有する。バインダー層213は、また、安定剤(たとえば、熱安定剤および加水分解安定剤)、酸化防止剤、難燃剤、および流れ調節剤(たとえば、界面活性剤)、粘度調整剤(たとえば、有機溶剤)、レオロジー調節剤(たとえば、増粘剤)、および凝集剤、可塑剤、粘着付与剤などの任意の添加剤を含有することができる。一般に、バインダー層は、約70重量パーセントから約99重量パーセントまでのポリマー材料を含有し、残りは、有効量の任意の添加剤である。
【0038】
バインダー層213のポリマー材料は、エラストマーを含むがこれに限定されないポリマーであることができる。いくつかの実施形態において、ポリマー材料としては、架橋されたまたは事実上架橋されたエラストマーが挙げられる。ポリマー架橋の例としては、鎖間のビニル基間のフリーラジカル結合などの炭素−炭素結合形成;イソシアネートまたはエポキシ官能基化ポリマーの場合ジオール;アミンおよびアルコール官能基化ポリマーの場合ジイソシアネートまたは活性化エステル;ならびにカルボン酸または無水物官能基化ポリマーの場合エポキシドおよびジオールなどのカップリング剤での反応または加硫などによる剤カップリングまたは基カップリングが挙げられる。事実上の架橋の例としては、ポリアミドに見出されるようなアミド水素結合、または、スチレンおよびアクリロニトリルのブロックコポリマーに見出されるような結晶領域およびアモルファス領域相互作用が挙げられる。
【0039】
バインダー層213に使用することができるポリマーの例示的な例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエポキシド、天然および合成ゴム、ならびにそれらの組合せが挙げられる。架橋されたポリマーの例としては、エポキシド基、オレフィン基、イソシアネート基、アルコール基、アミン基、または無水物基などの架橋性基で置換されたポリマーの先の例が挙げられる。ポリマーの官能基と反応する多官能性モノマーおよびオリゴマーも、架橋剤として使用することができる。
【0040】
バインダー層材料の具体的な例が、米国特許第5,200,262号明細書[特許文献30]および米国特許第5,283,101号明細書[特許文献31]に開示されている。本開示のバインダー層に使用することができる市販のポリマーの例としては、次のものが挙げられる:オハイオ州アクロンのグッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー(Goodyear Tire and Rubber Company, Akron, Ohio)から入手可能なビテル(Vitel)(商標)VPE 5545およびVPE 5833ポリエステル;ペンシルバニア州フィラデルフィアのローム・アンド・ハース(Rohm and Haas, Philadelphia, Pa.)から入手可能なロプレックス(Rhoplex)(商標)HA−8およびNW−1845アクリル樹脂;シドロタン(Cydrothane)(商標)、ニュージャージー州ウェストパターソンのサイテック・インダストリーズ・オブ・アメリカン・シアナミド(Cytec Industries of American Cyanamide, West Patterson, N. J.)から入手可能なポリウレタン;オハイオ州クリーブランドのBFグッドリッチ(B.F. Goodrich, Cleveland, Ohio)から入手可能なエスタン(Estane)(商標)5703および5715;ならびにイリノイ州ローリングメドウズのゼオン・ケミカルズ・インコーポレイテッド(Zeon Chemicals, Inc., Rolling Meadows, Ill)から入手可能なニポール(Nipol)(商標)1000。
【0041】
バインダー層213は、典型的には、約50から250μmの厚さを有する。これらの範囲外の厚さを有するバインダー層を使用することができるが、バインダー層が薄すぎる場合、それが、微小球に十分な支持を与えないことがあり、それらが外れてしまうことを理解すべきである。
【0042】
いくつかの実施形態において、接着剤層(図示せず)を、再帰反射材料212の第2の主面216に近接したバインダー層213の後面または第2の主面の上にコーティングして、物品200を衣服または他の基材に取付けることができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、バインダー層213を着色することができる。バインダー層213を、その中に染料または顔料を組入れることによって着色することができる。使用することができるそのような染料および顔料の例としては、下記が挙げられる。
【0044】
【表1】

【0045】
いくつかの実施形態において、着色剤は、非常に目立つ蛍光染料および/または蛍光顔料である。蛍光染料および/または蛍光顔料は、昼間照明条件下で向上した顕著性をもたらすことができる。バインダー層を着色するために本発明に使用することができる蛍光染料または蛍光顔料の例としては、オハイオ州クリーブランドのデイグロ・カラー・コーポレーション(Day−Glo Color Corp., Cleveland, Ohio)の、デイグロ(Day−Glo)(商標)ファイヤーオレンジ(Fire Orange)T−14、ロケットレッド(Rocket Red)GT、ブレーズオレンジ(Blaze Orange)GT、およびサターンイエロー(Saturn Yellow)T−17;オハイオ州アクロンのクリーブランド・ピグメント&カラー・カンパニー(Cleveland Pigment & Color Co., Akron, Ohio )のフレア(Flare)(商標)911;ニュージャージー州クリフトンのBASFコーポレーションの、ルモゲン(Lumogen)(商標)Fレッド300、Fイエロー083、およびイエローS0790(ピグメントイエロー101、C.I.No.48052)が挙げられる。
【0046】
図5に示されているように、再帰反射物品200は、この示された実施形態において再帰反射材料212に形成されるバルブ220を含む。再帰反射物品200は、また、ここでさらに説明されるように、2つ以上のバルブを含むことができる。バルブ220は、ここで説明される任意の適切なバルブであることができる。バルブ220は、可動部材222と、再帰反射材料212の第1の主面214から第2の主面216まで延在するチャネル228とを含む。1つの可動部材222を有するように示されているが、バルブ220は、ここでさらに説明されるように、2つ以上の可動部材を含むことができる。可動部材222は、チャネル228に近接して位置決めされ、閉位置から開位置に可動である。示されているように、バルブ220は開位置にある。閉位置にあるとき、可動部材222はチャネル228の少なくとも一部を遮断する。可動部材222は、ここでさらに説明されるように、任意の適切な形状およびサイズであることができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、可動部材222の上面が、再帰反射材料212の第1の主面214に近接して位置決めされた再帰反射微小球の層218の一部を含むことができる。再帰反射微小球を可動部材222の上面上に設けることは、再帰反射物品200の成角を増加させることによって、再帰反射物品200を着用する人の視認性を増加させることができる。換言すれば、可動部材222を、物品200の第1の主面214とわずかに異なった方向に配向することができる。この配向は、新たな組の観察者位置からの高視認性をもたらすことができる。物品200に対する多くの異なった配向における多くのそのような可動部材222の合された効果は、衣服着用者の視認性の成角における向上をもたらすことができる。
【0048】
任意の適切な技術を用いて、可動部材222をチャネル228に近接して位置決めすることができる。示された実施形態において、可動部材222は、再帰反射材料212と一体であり、それにより、再帰反射材料212とリビングヒンジ(図示せず)を形成する。
【0049】
任意の適切な技術を用いて、バルブ220を形成することができる。いくつかの実施形態において、バルブ220は、可動部材222を設けるために再帰反射材料212に形成された1つ以上のスリットを含む。たとえば、レーザ切断、ダイカット、またはウォータジェット切断などの、任意の適切な技術を用いて、再帰反射材料212にスリットを形成することができる。
【0050】
任意の適切なビーズ再帰反射材料を、本開示の教示で使用することができる。たとえば、本開示のバルブ付再帰反射物品は、異なる特性を有する2つ以上のセグメントを有する再帰反射材料を含むことができ、たとえば、米国特許第6,153,128号明細書(ライトル(Lightle)ら)[特許文献1]を参照されたい。
【0051】
図6は、再帰反射材料312と、少なくとも1つのバルブ320とを含む再帰反射物品300の一実施形態の概略断面図である。再帰反射物品300は、多くの点で、図5の再帰反射物品200と同様である。再帰反射材料312は、微小球318aを含む再帰反射微小球の層318を含み、微小球318aのいくつかは、それらの上に反射層319が配置される。再帰反射微小球の層318は、再帰反射材料312の第1の主面314に近接して配置され、かつ着色バインダー層313に部分的に埋込まれる。再帰反射材料312は、また、第2の主面316を含む。
【0052】
再帰反射材料312は、反射層319が、埋込まれた部分の後ろに機能的に配置された、再帰反射微小球の層318の部分を含む第1のセグメント330を含む。再帰反射材料312は、また、反射層が上に配置されない、再帰反射微小球の層318の部分を含む第2のセグメント332および334を含む。換言すれば、第2のセグメント332および334は、再帰反射微小球の層318の埋込まれた部分の後ろに機能的に配置された反射層319がない。ここで使用されるように、「後ろに機能的に」という用語は、反射層319が、微小球318aを通過する入射光を反射することができるように、反射層319が、微小球318aの埋込まれた部分上またはその後ろに位置決めされることを意味する。したがって、微小球318aを通過して反射層319に当たる入射光は、セグメント332および334に対して、セグメント330によってより強く再帰反射される。第2のセグメント332および334内の微小球318aの後ろに機能的に配置された反射層319がなければ、そのようなセグメントの再帰反射性は、典型的には、ASTM E 810−03に従ってテストされたとき、5から15cd/l/mのオーダであり、一方、第1のセグメント330は、典型的には、同様にテストされたとき、400から600cd/l/mのオーダの再帰反射性を実証する。
【0053】
再帰反射物品300は、再帰反射性である第1および第2のセグメントを含み、第1のセグメント330は、微小球318aの埋込まれた部分の後ろに機能的に配置された反射層319を有し、第2のセグメント332および334は、微小球318aの埋込まれた部分の機能的に後ろの反射層がない。反射層の位置に関して、「微小球の層の埋込まれた部分上に配置された」という言葉は、反射層319が、微小球318aと直接接触する(埋込まれた部分上で)か、別の反射層(たとえば、誘電体鏡)または薄い非反射性無色層を介して微小球318aと接触することを意味する。非反射性無色層が微小球318aと反射層319との間に配置される場合、その厚さは、20μm以下(これは、「薄い」ことを意味する)、好ましくは10μm未満、より好ましくは5μm未満である。薄い層が物品の再帰反射性に著しく寄与しない場合、それは、非反射性であるとみなされる。
【0054】
第1のセグメント330内の微小球318aの後ろに機能的に配置され、かつ第2のセグメント332および334内の微小球318aの後ろに機能的に配置されない反射層319を有することによって、第1および第2のセグメントは、再帰反射目視条件下で見たとき、実質的に異なった再帰反射性度をもたらすことができる。「実質的に異なった再帰反射性度」は、すべての照明条件が本質的に等しく、第1および第2の主セグメントが著しく異なった量の光を再帰反射することを意味する。第2の主セグメント332および334が、反射層319より良好に働く、微小球の後ろの反射体を所有しない限り、第1のセグメント330は実質的により良好な再帰反射効率を有し、すなわち、それは著しくより大きい量の入射光を再帰反射する。典型的には、第1の主セグメント330は、高度の再帰反射性が達成されることを可能にする。「高度」とは、再帰反射物品が、0.2度の観察角度および−4度の入射角度を用いて、ASTM E 810−03に従ってテストされたとき、再帰反射の係数Rが100cd/l/mを超えることを意味する。「ASTM E 810−03」は、再帰反射物品の再帰反射性を測定するための標準テストであり、観察角度および入射角度パラメータが上で提供された通りであるASTM E 810−03を意味するようにここで使用される。いくつかの実施形態において、第1のセグメント330のRは300cd/l/mを超える。他の実施形態において、ASTM E 810−03に従ってテストされたとき、第1のセグメント330のRは500cd/l/mを超える。いくつかの実施形態において、第1および第2のセグメントは、少なくとも25cd/l/mのRの差を実証する。他の実施形態において、第1および第2のセグメントは、少なくとも100cd/l/mのRの差を実証する。
【0055】
拡散照明、すなわち、昼間照明条件下で、第1のセグメント330は、典型的には灰色がかったまたは銀色がかった(ここでまとめて灰色がかったと呼ぶ)、反射層319の色を表示し、第2のセグメント332および334は、いくつかの実施形態において蛍光である、下にある着色バインダー層313の色を表示する。第1のセグメント330において、反射層319は、不透明であり、下にあるバインダー層313を見ることから遮る。しかし、第2のセグメント332および334において、着色バインダー層313の色は微小球318aを通して見られ、したがって、第2のセグメント332および334は、拡散照明下で、第1のセグメント330の色と著しく異なった色を表示する。「着色バインダー層」という用語は、第2のセグメント(および存在する場合、おそらくは他のセグメント、たとえば、第3のセグメント、第4のセグメント、第5のセグメントなど)が拡散照明下で第1のセグメント330と著しく異なった色を表示することを可能にするなんらかの手段によって、バインダー層313が着色されることを意味するようにここで使用される。その用語がここで使用されるように、「著しく異なった色」は、色によって説明することができる視知覚の属性が、普通の観察者によって、異なっていると認識されることを意味する。同じ色の異なった濃淡または色合いが、この定義下で著しく異なった色であり得る。2つの異なったセグメントの間の色コントラストを、各セグメントの刺激値Yを定義し、より高い刺激値をより低い刺激値で割って、色コントラスト比Cに到達することによって定めることができる。したがって、たとえば、CはY/Yに等しく、Yは第1のセグメントの刺激値を表し、Yは第2のセグメントの刺激値を表し、この場合のYはYより大きい。刺激値Yは、米国特許第6,153,128号明細書(ライトル(Lightle)ら)[特許文献1]に記載されているように定めることができる。
【0056】
バインダー層313は、その中に有効量の染料または顔料が組入れられることによって、着色することができる。あるいは、バインダー層313は、着色バインダー層を提供するために、透明なポリマーマトリックスに埋込まれるか透明なポリマーマトリックスの下に配置された着色フィルムまたは着色ファブリックを有することができる。拡散照明において、第1のセグメントと第2のセグメントのとの間の色のコントラストは、第1のセグメント330の画像または構成が鮮明に表示されることを可能にする。夜間照明条件において、第1のセグメント330は、第2の主セグメント332および334より著しく大きい程度に光を再帰反射して、第1のセグメント330の画像を、再帰反射物品300に向けられた光源の近くに位置する人に識別可能にすることができる。
【0057】
再帰反射物品300は、また、再帰反射材料312に形成されたバルブ320を含む。ここで説明される任意の適切なバルブを、図6に示された実施形態で使用することができる。ここで説明される任意の適切な技術を用いて、バルブ320を形成することができる。たとえば、少なくとも1つのスリット326を再帰反射材料312に形成して、少なくとも1つの可動部材322およびチャネル(図示せず)を設けることができる。
【0058】
第2のセグメント334に形成されているように示されているが、バルブ320を、再帰反射材料312中の任意の適切な位置に形成することができる。さらに、2つ以上のバルブを再帰反射材料312に形成して、再帰反射材料312を通る流体および/または熱のさらなるベントをもたらすことができる。
【0059】
先に述べられたように、任意の適切なタイプの再帰反射材料を、本開示の実施形態で使用することができる。たとえば、マイクロプリズム構造を含む再帰反射材料(たとえば、米国特許第5,450,235号明細書(スミス(Smith)ら)[特許文献32]に記載された再帰反射材料)が、再帰反射材料を通る流体および/または熱のベントをもたらすために、その中に少なくとも1つのバルブが形成されることができる。
【0060】
マイクロプリズム材料は、典型的には、入射光を再帰反射するために、多数のマイクロプリズム要素を使用する。マイクロプリズム要素は、本体層の後面から突出する。この構成において、入射光は、前面でシートに入り、本体層を通過してマイクロプリズムの面によって内部反射され、その後、前面を出て光源の方に戻される。マイクロプリズム面における反射は、マイクロプリズム要素がより低い屈折率の媒体(たとえば、空気)で覆われる場合、全内部反射によって、または、蒸着アルミニウムフィルムなどの鏡面反射コーティングからの反射によって、生じることができる。マイクロプリズムシーティングまたはキューブコーナシーティングの例示的な例が、米国特許第3,712,706号明細書[特許文献33];米国特許第4,025,159号明細書[特許文献34];米国特許第4,202,600号明細書[特許文献35];米国特許第4,243,618号明細書[特許文献36];米国特許第4,349,598号明細書[特許文献37];米国特許第4,576,850号明細書[特許文献38];米国特許第4、588,258号明細書[特許文献39];米国特許第4,775,219号明細書[特許文献40];および米国特許第4,895,428号明細書[特許文献41]に開示されている。
【0061】
図7は、マイクロプリズム再帰反射材料412と、少なくとも1つのバルブ420とを含む再帰反射物品400の概略断面図である。任意の適切なマイクロプリズム再帰反射材料、たとえば、米国特許第5,450,235号明細書(スミス(Smith)ら)[特許文献32]に記載されたものを使用することができる。再帰反射材料412は、本体層413と、再帰反射材料412の第2の主面416に近接して位置決めされたマイクロプリズム要素の層418とを含む。マイクロプリズム要素の層418は、1つ以上のマイクロプリズム要素418aを含む。
【0062】
本体層413は、任意の適切な1つまたは複数の材料、たとえば、米国特許第5,450,235号明細書(スミス(Smith)ら)[特許文献32]に記載されたものを含むことができる。いくつかの実施形態において、本体層413は光透過性ポリマー材料を含む。
【0063】
マイクロプリズム要素の層418は、再帰反射材料412の第2の主面416に近接して本体層413から突出する。任意の適切な1つまたは複数の材料、たとえば、米国特許第5,450,235号明細書(スミス(Smith)ら)[特許文献32]に記載された材料を使用して、マイクロプリズム要素の層418を形成することができる。いくつかの実施形態において、マイクロプリズム要素の層418は光透過性ポリマー材料を含む。さらに、いくつかの実施形態において、マイクロプリズム要素の層418および本体層413は、同様のまたは同じ種類の材料から製造される。
【0064】
マイクロプリズム要素の層418はランド層(図示せず)を含むことができる。ランド層は、典型的には、マイクロプリズム要素418のベースにすぐ隣接して配置される。いくつかの実施形態において、再帰反射材料412はランド層を含まず、したがって、マイクロプリズム要素の層418は、本体層413から突出するいくつかの別々のマイクロプリズムを含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、再帰反射材料412は、マイクロプリズム要素の層418上に配置された反射層419を含む。たとえば、金属、ポリマーなどの、任意の適切な1つまたは複数の材料を使用して、反射層を形成することができる。
【0066】
マイクロプリズム要素の層418は、米国特許第5,450,235号明細書[特許文献32]に記載されているように、すべてが同じサイズおよび傾斜を有するマイクロプリズムのアレイを含むことができる。他の実施形態において、マイクロプリズム要素の層418は、隣のマイクロプリズムと異なって配向された1つ以上のマイクロプリズム、たとえば、米国特許第5,840,405号明細書(シュスタ(Shusta)ら)[特許文献42]に記載されたマイクロプリズムアレイを含むことができる。
【0067】
バルブ420は、再帰反射材料412中に位置決めされる。バルブ420は、少なくとも1つの可動部材422と、再帰反射材料412の第1の主面414から第2の主面416まで延在するチャネル428とを含む。ここで説明される任意の適切な1つまたは複数のバルブを、図7に示された実施形態で使用することができる。さらに、任意の適切な数のバルブを、再帰反射材料412中に位置決めすることができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、図7に示されているように、可動部材422は、その主面から突出する再帰反射マイクロプリズム要素を含むことができる。可動部材422が、ここで説明される技術を用いて、再帰反射材料412から形成される場合、可動部材422は、再帰反射材料412の第2の主面416に近接しているマイクロプリズム要素の層418の一部を含む。
【0069】
一般に、再帰反射材料412の第1の主面414に衝突する光が、本体層413を通過し、1つ以上のマイクロプリズム要素418aの1つ以上の内面に入射する。要素418aは、入射光を再帰反射して、本体層413を通して、再帰反射材料412から、一般に入射光源の方の方向に戻す。部材422が開位置にあるとき、光が可動部材422に当たると、そのような光は、入射光源から離れた方向に反射されることがある。これは、再帰反射光の角度の広がりを増加させることができ、それにより、再帰反射物品400の顕著性を増加させる。
【0070】
本開示の例示的な実施形態を説明し、本開示の範囲内の可能な変更に言及した。本開示のこれらおよび他の変更および修正は、本開示の範囲から逸脱することなく、当業者には明らかであり、本開示はここに記載された例示的な実施形態に限定されないことを理解すべきである。したがって、本開示は、特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面および第2の主面を含む再帰反射材料と、
少なくとも1つのバルブであって、
前記再帰反射材料の第1の主面から第2の主面まで延在するチャネルと、
閉位置と開位置との間で可動である、前記チャネルに近接した少なくとも1つの可動部材であって、前記閉位置にあるとき、前記チャネルの少なくとも一部を遮断する少なくとも1つの可動部材とを含む少なくとも1つのバルブとを含む再帰反射物品。
【請求項2】
前記再帰反射材料が、
バインダー層と、
前記再帰反射材料の第1の主面に近接して位置決めされた再帰反射微小球の層であって、前記バインダー層に部分的に埋込まれた再帰反射微小球の層とを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記バインダー層が着色バインダー層を含む、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記再帰反射物品が第1および第2のセグメントに分けられ、前記第1のセグメントが、前記再帰反射微小球の層の埋込まれた部分の後ろに機能的に配置された反射層を含み、さらに、前記第2のセグメントが、前記再帰反射微小球の層の埋込まれた部分の後ろに機能的に配置された反射層がない、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記反射層が反射金属層を含む、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記第1および第2のセグメントが、拡散照明下で見たとき、実質的に異なった再帰反射性度を示し、かつ著しく異なった色を表示する、請求項4に記載の物品。
【請求項7】
前記第1のセグメントが、拡散照明下で灰色を表示し、さらに、前記第2のセグメントが蛍光である、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記再帰反射材料が、
本体層と、
前記再帰反射材料の第2の主面に近接して位置決めされ、かつ前記本体層から突出するマイクロプリズム要素の層とを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記マイクロプリズム要素の層が、別々のマイクロプリズム要素の層を含む、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記本体層が光透過性ポリマー材料を含む、請求項8に記載の物品。
【請求項11】
前記物品が、前記マイクロプリズム要素の層上に配置された反射層をさらに含む、請求項8に記載の物品。
【請求項12】
マイクロプリズム要素の層が、ランダムに配向されたマイクロプリズム要素の層を含む、請求項8に記載の物品。
【請求項13】
前記少なくとも1つの可動部材が前記再帰反射材料と一体である、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記少なくとも1つの可動部材が、前記再帰反射材料とリビングヒンジを形成する、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記少なくとも1つのバルブが一方向バルブを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記少なくとも1つのバルブが、前記第2の主面に近接した流体を、前記再帰反射材料の第1の主面に近接したところにベントするように動作可能である、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
前記少なくとも1つのバルブが、流体が、前記第1の主面に近接したところから前記再帰反射材料の第2の主面に近接したところにベントするのを実質的に防止するように動作可能である、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記チャネルが多角形形状を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記チャネルが矩形形状を含む、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記チャネルが三角形形状を含む、請求項18に記載の物品。
【請求項21】
前記チャネルが円形形状を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項22】
前記少なくとも1つの可動部材が多角形形状を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項23】
前記少なくとも1つの可動部材が矩形形状を含む、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記少なくとも1つの可動部材が三角形形状を含む、請求項22に記載の物品。
【請求項25】
前記少なくとも1つの可動部材が円形形状を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項26】
前記物品が複数のバルブを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項27】
前記複数のバルブがアレイを形成する、請求項26に記載の物品。
【請求項28】
前記複数のバルブがランダムに分配される、請求項26に記載の物品。
【請求項29】
保護外層と、前記保護外層に取付けられた少なくとも1つの再帰反射物品とを含む再帰反射衣服であって、前記少なくとも1つの再帰反射物品が、
第1の主面および第2の主面を含む再帰反射材料と、
少なくとも1つのバルブであって、
前記再帰反射材料の第1の主面から第2の主面まで延在するチャネルと、
閉位置と開位置との間で可動である、前記チャネルに近接した少なくとも1つの可動部材であって、前記閉位置にあるとき、前記チャネルを実質的に遮断する少なくとも1つの可動部材とを含む少なくとも1つのバルブとを含む、再帰反射衣服。
【請求項30】
前記再帰反射衣服が、消防士装備のアウターシェルを含む、請求項29に記載の再帰反射衣服。
【請求項31】
前記再帰反射衣服が、多層熱制御装備のアウターシェルを含む、請求項29に記載の再帰反射衣服。
【請求項32】
ベント付再帰反射物品を製造する方法であって、
第1の主面および第2の主面を含む再帰反射材料を提供する工程と、
少なくとも1つのバルブを前記再帰反射材料に形成する工程と、を含み、前記少なくとも1つのバルブを形成する工程が、前記再帰反射材料の第1の主面から第2の主面まで延在するチャネル、および開位置と閉位置との間で可動である少なくとも1つの可動部材であって、前記閉位置にあるとき、前記チャネルを実質的に遮断する少なくとも1つの可動部材を形成するように、少なくとも第1のスリットを前記再帰反射材料に形成することを含む、方法。
【請求項33】
前記再帰反射材料が、
バインダー層と、
前記再帰反射材料の第1の主面に近接した再帰反射微小球の層であって、前記バインダー層に部分的に埋込まれた再帰反射微小球の層とを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記バインダー層が着色バインダー層を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記再帰反射材料が、
本体層と、
前記再帰反射材料の第2の主面に近接し、かつ前記本体層から突出するマイクロプリズム要素の層とを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記第1のスリットを形成する工程が、前記第1のスリットを前記再帰反射材料にレーザ切断することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のスリットを形成する工程が、前記第1のスリットを前記再帰反射材料にダイカットすることを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のスリットを形成する工程が、前記第1のスリットを前記再帰反射材料にウォータジェット切断することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のスリットと交差するように、第2のスリットを前記再帰反射材料に形成する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記第1および第2のスリットがXパターンを形成する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第1および第2のスリットがVパターンを形成する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記第1のスリットが円形可動部材を形成する、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記第1のスリットが矩形可動部材を形成する、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
前記第1のスリットと実質的に平行な第2のスリット、ならびに前記第1のスリットおよび前記第2のスリットに実質的に直交し、かつ前記第1のスリットおよび前記第2のスリットの両方と交差する第3のスリットを形成する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
第2のスリット、第3のスリット、および第4のスリットを形成する工程であって、前記第1のスリット、前記第2のスリット、前記第3のスリット、および前記第4のスリットが、すべて、1つの点で交差し、さらに、前記第1のスリット、前記第2のスリット、前記第3のスリット、および前記第4のスリットが、8つの三角形可動部材を形成する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−47835(P2013−47835A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−233017(P2012−233017)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2007−541174(P2007−541174)の分割
【原出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】