説明

少なくとも1つの疎水性基で官能化されたポリアミノ酸及びその応用、特に治療用応用

本発明は、有効成分(PA)の誘導に特に適した生分解性ポリアミノ酸に基づく新規物質に関する。本発明はさらに、前記ポリアミノ酸に基づく新規な製薬、化粧品、食品、植物衛生用組成物に関する。本発明の目的は、PAの誘導における使用のためのものであって、かかるタイプの全ての要求に最適な調和:生体適合性、生分解性、安定性、多数の有効成分と容易に結合するかまたはこれを溶解して前記有効成分をインビボにて遊離させる能力を備えた新規なポリマー性原材料を提供することである。前記目的は、アスパラギン酸ユニット及び/またはグルタミン酸ユニットを含み、前記ユニットの幾つかが少なくとも1つのグラフトを担持するポリアミノ酸であって、前記グラフトの少なくとも1つが、Leu、及び/またはILeu、及び/またはVal、及び/またはPheに基づくアミノ酸スペーサーによりアスパラギン酸もしくはグルタミン酸のユニットに結合しており、C6-C30を有する疎水性基がエステル結合によって前記スペーサーに結合していることを特徴とするポリアミノ酸によって達成される。前記特定のアミノ酸スペーサーは、従来の類似生成物と比較して、加水分解に対するより優れた安定性及びタンパク質とのより高い結合率を保証する。前記ポリマーは、有効成分のための誘導粒子に、容易且つ経済的に変換されるという利点を有し、前記粒子はそれ自体が安定な水性コロイド状懸濁物を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分(AP)の誘導に特に有用な生分解性ポリアミノ酸に基づく新規物質に関する。
【0002】
本発明はさらに、これらのポリアミノ酸に基づく新規な製薬、化粧品、食品、または植物衛生組成物に関する。これらの組成物は、APの誘導ができるタイプのものであり、且つ好ましくはエマルション、ミセル、粒子、ゲル、インプラント、またはフィルムの形態であってよい。
【0003】
懸かるAPは、有利には、経口、非経口、鼻、膣、眼、皮下、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、大脳内、口腔、または別の経路により動物または人の組織に投与可能な生物学的に活性な化合物である。
【0004】
本発明に関するAPは、限定を意図するものではないが、特にタンパク質、糖タンパク質、ペプチド、ポリサッカライド、リポサッカライド、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチド、及び有機分子である。しかしながら、これらは、化粧品または除草剤、殺虫剤、殺菌剤などの植物衛生製品であってもよい。
【背景技術】
【0005】
有効成分、特に医療用有効成分の誘導の分野では、多くの場合に、
・その作用部位に到達するまでの、これらの分解(加水分解、特定部位での沈降、酵素消化など)からの保護、及び/または
・規定の期間に亘って治療レベルを維持するための、その放出速度の制御、及び/または
・その作用部位への(保護を伴う)輸送、
が求められている。
【0006】
これらの目的のために、幾つかのタイプのポリマーが研究されており、市販されて入手可能なものもある。挙げて良い例は、ポリ乳酸、ポリ乳酸−グリコール酸、ポリオキシエチレン−オキシプロピレン、ポリアミノ酸、またはポリサッカライドタイプのポリマーである。これらのポリマーは、例えばマスインプラント、ミクロ粒子、ナノ粒子、小胞、ミセル、またはゲルの製造のための出発物質を構成する。これらポリマーがこうした系の製造に適切でなければならないという事実に加え、これらはさらに生体適合性、無毒性、非免疫抗原性、及び経済的でなければならず、また身体からの排出が容易及び/または生分解性でなければならない。
【0007】
AP誘導系の調製のための出発物質として使用されるポリマーに関する従来技術を詳説するために、様々な特許、特許出願、または科学文献を以下に挙げる。
【0008】
特許US-B-4652441は、ホルモンLH-RHをカプセル封入するポリラクチドミクロカプセルを開示する。これらのミクロカプセルは、水中油中水型エマルションの調製により製造され、ホルモンを含む水性内部相、前記ホルモンを固定するための物質(ゼラチン)、油性ポリラクチド相、及び水性外部相(ポリビニルアルコール)を含む。APは、皮下注射の2週間以上の期間に亘って放出可能である。
【0009】
特許US-B-6153193は、アドリアマイシンなどの抗ガン剤の誘導のための両親媒性ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ミセルに基づく組成物を開示する。
【0010】
Akiyoshiら(J. Controlled Release 1998, 54, 313-320)は、コレステロールのグラフト化により疎水性とされ、水中にナノ粒子を形成するプルランを開示する。これらのナノ粒子は、インスリンと可逆的に複合化することができ、安定なコロイド状懸濁物を形成する。
【0011】
特許US-B-4351337は、有効成分の制御付き放出のためのインプラントまたはミクロ粒子の形態で使用可能な、ロイシン及びグルタメートに基づく両親媒性コポリアミノ酸を開示する。ポリマーの分解速度によって、前記有効成分を非常に長期間に亘って放出可能である。
【0012】
特許US-B-4888398は、ポリグルタメートまたはポリアスパルテート、及び任意にポリロイシンに基づくポリマーであって、ポリアミノ酸鎖に沿ってランダムに位置するアルコキシカルボニルメチルタイプのペンダント基を有するものを開示する。側基、例えばメトキシカルボニルメチル基がグラフトしたこれらのポリアミノ酸は、APを含む持効性放出性生分解性インプラントの形態で使用可能である。
【0013】
特許US-B-5904936は、ポリロイシン−ポリグルタメートブロックポリマーから得られ、安定なコロイド状懸濁物を形成可能であり、且つ、生物学的に活性なタンパク質にこれを変性させることなく自然に結合可能であるナノ粒子を開示する。これは、長期間に亘り、制御方式にて、インビボで放出することが可能である。
【0014】
特許US-B-5449513は、ポリオキシエチレンブロックとポリアミノ酸ブロックとを含む両親媒性ブロックコポリマー、例えばポリ(ベータ-ベンジル-L-アスパルテート)を開示する。これらポリオキシエチレン−ポリベンジルアスパルテートポリマーは、アドリアマイシンまたはインドメタシンなどの疎水性活性分子をカプセル封入することができるミセルを形成する。
【0015】
特許出願WO-A-99/61512は、疎水性基(パルミチン酸がポリリシンまたはポリオルニチンに結合)及び親水性基(ポリオキシエチレン)で官能化されたポリリシン及びポリオルニチンを開示する。コレステロールの存在下で、これらポリマー、例えばポリオキシエチレン及びパルミトイル鎖がグラフト化したポリリシンは、ドキソルビシンまたはDNAをカプセル封入可能な小胞を形成する。ポリリシンに基づくこれらポリマーは、生理学的媒質中でカチオン性である。
【0016】
本出願人による特許出願WO-A-00/30618は、安定なコロイド状懸濁物を形成可能であり、且つ生物学的に活性なタンパク質にこれを変性させることなく自然に結合可能である、ポリ(ナトリウムグルタメート)−ポリ(メチル、エチル、ヘキサデシルもしくはドデシルグルタメート)ブロックまたはランダムポリマーを開示する。これは、インビボで、長期間に亘り制御された方式にて放出可能である。これら両親媒性コポリアミノ酸は、疎水性アルキル側鎖の存在により変性される。これらアルキル基は、エステル基を介してポリマーにグラフト共重合する。これらポリマーは、生理学的媒質中でアニオン性である。
【0017】
7/06/2002出願の未公開仏国特許出願02/07008は、1乃至4の「アミノ酸」残基、例えば1つのロイシン残基から成るスペーサーに結合した、アルファ-トコフェロールに基づくグラフトを担持するポリグルタメートを開示する。
【特許文献1】WO-A-00/30618
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
然るに、従来技術には、医薬品有効成分の誘導のために開発され、且つ提案されている、非常に多数の技術的解決策があるにも関わらず、全ての要求に回答を見出すことは困難であり、状況は依然として不満足なままである。とりわけ、有効成分との不可逆的な結合に適切な誘導粒子の安定なコロイド状水性懸濁物を形成可能であり、且つ安価である、疎水性基がグラフト化したポリアミノ酸の設計には、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような状況において、本発明の本質的な目的は、
ポリグルタメートとポリアスパルテートとに基づき、動物の生理学的pHにおいてアニオン性であり、且つ特許出願WO-A-00/30618に開示されたポリマーと比較して、とりわけ安定性及びタンパク質吸収性能について改善を示す、一群の新規なポリマーを提供することである。
【0020】
本発明の別の本質的な目的は、これらのポリマーがAPの誘導に使用可能であり、仕様書の全事項、すなわち、とりわけ、
(1)性能:
・安定な水性コロイド状懸濁物を容易且つ経済的に形成する、
・多数の有効成分に容易に結合する、さらに
・これらの有効成分をインビボにて放出する、
(2)生体適合性、
(3)生分解性、
(4)加水分解に対する安定性、
を最適に満たすことを可能にすることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
これと他の目的とが本発明によって達成されるが、このことはまず第一にアスパラギン酸ユニット及び/またはグルタミン酸ユニットを含み、前記ユニットの幾つかが少なくとも1つのグラフトを担持するむポリアミノ酸であって、これらグラフトの少なくとも1つが、
・アルファ位にアルキル基もしくはアリール基を有する「アミノ酸」ユニットから、好ましくはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、及びフェニルアラニンを含む群に属する「アミノ酸」ユニットから選択される1つ以上の「アミノ酸」ユニットから形成される、1つ以上の(オリゴ)アミノ酸を含むスペーサーにより主鎖のアスパラギン酸もしくはグルタミン酸のユニットに結合しており、且つ
・少なくとも1つの疎水性基を含み、前記疎水性基が、
−少なくとも6つの炭素原子、好ましくは6乃至30の炭素原子(例えば8乃至30の炭素原子)を含み、
−アルファ-トコフェロールとは異なり、
−少なくとも1つのエステル結合によってスペーサーに結合している、
ことを特徴とする、ポリアミノ酸に関する。
【0022】
発明者等は、驚くべきことに且つ予期せぬことに、アルコールタイプの前駆体から誘導される疎水性基を含むグラフトのグラフト化が、アルファ位で置換された「(オリゴ)アミノ酸」スペーサーを介する既知のポリアミノ酸への結合により行われ、水性媒質中でのエステル結合の安定性が非常に向上するとの発見によって、既知のポリアミノ酸を改善した。
【0023】
完全に賢明且つ有利な方法で、アルファ位にアルキルもしくはアリール基を有する「アミノ酸」によってポリAsp及び/またはポリGlu骨格に結合したグラフトを有する、特定の生分解性及びアニオン性のポリAsp及び/またはポリGluポリアミノ酸を結合させることに想到したのは、出願人の功績である。
【0024】
これら新規なコポリマーは、タンパク質の誘導に特に適当であることが判明している。
【0025】
本発明の好ましい実施態様においては、各グラフトはアミド結合によって主鎖のアスパラギン酸もしくはグルタミン酸のユニットに結合している。
【0026】
本発明に定義されるように、「ポリアミノ酸」なる語は、2乃至20の「アミノ酸」ユニットを含むオリゴアミノ酸のみならず、20より多くの「アミノ酸」ユニットを含むポリアミノ酸をも意味する。
【0027】
有利には、グラフトの幾つかまたは全てのオリゴアミノ酸または(オリゴ)アミノ酸(のそれぞれ)は、互いに同一の「アミノ酸」ユニットから成る。
【0028】
これらポリマーは、類似製品と比較して、1つ以上の有効成分と結合する且つ/またはこれをカプセル封入する驚くべき特性を有する。さらにまた、これらはくその存在下で無毒性のカタボライト/代謝産物(アミノ酸)に容易に分解される。
【0029】
本発明及び本明細書全般に定義されるように、1つ以上の有効成分とポリアミノ酸との間の関係を認定するために使用される「結合」なる語は、特に前記有効成分が、前記ポリアミノ酸に弱い結合、例えばイオン結合及び/または疎水性接触によって結合していること、及び/または前記ポリアミノ酸によってカプセル封入されていることを示す。
【0030】
好ましくは、本発明によるポリアミノ酸は、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸の反復ユニットを含むオリゴマーまたはホモポリマー、あるいはこれら2つのタイプの「アミノ酸」ユニットの混合物を含むコポリマーである。これらポリマー中の懸かるユニットは、D、L、またはD/L配置を有するアミノ酸であり、グルタメートもしくはグルタミン酸ユニットの場合にはそのアルファもしくはガンマ位を介して、アスパラギン酸もしくはアスパルテートユニットの場合にはそうおアルファもしくはベータ位を介して結合している。
【0031】
ポリアミノ酸主鎖の好ましい「アミノ酸」ユニットは、L配置及びアルファタイプの結合を有するものである。
【0032】
特に好ましくは、本発明のポリアミノ酸は、下記の一般式(I):
【化1】

[式中、
・R1は、H、直鎖状のC2-C10もしくは分枝状のC3-C10のアシル基、またはピログルタメートであり;
・R2は、H、直鎖状のC2-C10もしくは分枝状のC3-C10のアルキル基、ベンジル基、または末端「アミノ酸」ユニットであり;
・R3は、H、または好ましくは下記:
−金属カチオンであって、有利にはナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムを含むサブグループから選択されるもの、
−有機カチオンであって、有利には
・アミンに基づくカチオン、
・オリゴアミンに基づくカチオン、
・ポリアミン(特にポリエチレンイミンが好ましい)に基づくカチオン、及び
・有利にはリシンまたはアルギニンに基づくカチオンを含むクラスから選択されるアミノ酸に基づくカチオン、
を含むサブグループから選択されるもの;及び
−カチオン性ポリアミノ酸であって、有利にはポリリシン及びオリゴリシンを含むサブグループから選択されるもの;
を含む群より選択されるカチオン性構成体であり;
・互いに独立であるn個のBが、下式:
【化2】

(式中、
−R4は、メチル(アラニン)、イソプロピル(バリン)、イソブチル(ロイシン)、sec-ブチル(イソロイシン)、またはベンジル(フェニルアラニン)であり、括弧内に記載したアミノ酸はR4がかかるアルキルである場合に形成される「アミノ酸」ユニットに該当するものである;
−R5は、6乃至30(例えば8乃至30)の炭素原子を含む疎水性基であり、好ましくはエステル基によってポリマー(より正確にはスペーサー[-NH-CHR4-CO-]l)に結合しており;
−lは、1乃至6である)
の一価の基であり;
・Aは、独立に-CH2-(アスパラギン酸ユニット)または-CH2-CH2-(グルタミン酸ユニット)であり;
・n/(n+m)が、モルグラフト率として定義され、且つ0.5乃至100mol%で変化し;さらに
・n+mが、3乃至1000、好ましくは30乃至300で変化する]
を有する。
【0033】
非常に好ましくは、疎水性基で官能化された単一のアミノ酸(上記式Bにおいてl=1)が全てまたは幾つかのグラフトにおいてスペーサーとして用いられる。これによって、ポリアミノ酸と有効成分との結合の速度を特に改善可能なことが判明している。
【0034】
本発明の著しい特徴によれば、前記グラフトの疎水性基R5の全てまたは幾つかは、下記:
・6乃至30の炭素原子を含み、さらに少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO及び/またはN及び/またはS)及び/または少なくと1つの不飽和のユニットを含みうる直鎖状または分枝状のアルコキシ、
・6乃至30の炭素原子を含み、1つ以上の縮合炭素環を有し、さらに任意に少なくとも1つの不飽和ユニット及び/または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO及び/またはN及び/またはS)を含むアルコキシ、
・7乃至30の炭素原子を有し、さらに少なくとも1つの不飽和ユニット及び/または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO及び/またはN及び/またはS)を含みうるアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキル
を含む基の群から独立に選択される。
【0035】
さらに有利には、前記グラフトの疎水性基は、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、及びコレステロールを含む群から選択されるアルコール前駆体から誘導される。
【0036】
前記グラフトの「アミノ酸」ユニットとしては、本発明の範囲内で特に選択されるのは、L-ロイシン、L-バリン、及びL-フェニルアラニンを含む群から誘導される「アミノ酸」ユニットである。
【0037】
本発明の第一の実施態様においては、ポリアミノ酸の主鎖は、アルファ-L-グルタメートまたはアルファ-L-グルタミン酸ホモポリマーである。
【0038】
本発明の第二の実施態様においては、ポリアミノ酸の主鎖は、アルファ-L-アスパルテートまたはアルファ-L-アスパラギン酸ホモポリマーである。
【0039】
本発明の第三の実施態様においては、ポリアミノ酸の主鎖は、アルファ-L-アスパルテート/アルファ-L-グルタメートまたはアルファ-L-アスパラギン酸/アルファ-L-グルタミン酸コポリマーである。
【0040】
有利には、ポリアミノ酸主鎖のアスパラギン酸及び/またはグルタミン酸のユニットの分布は、ランダムまたはブロックタイプもしくはマルチブロックタイプのポリマーが得られるようなものである。
【0041】
別の定義によれば、本発明によるポリアミノ酸は、2000乃至100000g/mol、好ましくは5000乃至40000g/molの分子量を有する。
【0042】
疎水性ユニットを有する本発明によるポリアミノ酸のモルグラフト率は、2乃至70%であるとさらに好ましく、好ましくは5乃至40%である。
【0043】
とりわけ、本発明のポリアミノ酸は、グラフト率によって幾つかの方法で使用可能である。本発明によって与えられる様々な形態での有効成分のカプセル封入のためのポリマーの生成方法は、当業者には既知である。更なる詳細については、例えば下記の参考文献が特に適当なものとして挙げられる。
(参考文献)

【0044】
前記ポリアミノ酸はまた、3乃至30のオーダーの比較的低いグラフト率について、pH7.4で水中に分散して、ポリマー濃度及びグラフト率によってコロイド溶液または懸濁物またはゲルを生じることからも非常に貴重である。さらにまた、ポリアミノ酸(粒子または非粒子形態)は、タンパク質、ペプチド、または小分子などの有効成分をカプセル封入可能であるか、または容易にこれらと結合可能である。好ましい生成方法は、本出願人による特許出願WO-A-00/30618に開示されたものであり、水中に該ポリマーを分散させる工程及び前記溶液をAPの存在下でインキュベートする工程から成る。この、本発明によるポリアミノ酸からなる誘導粒子のコロイド溶液は、その後0.2μmのフィルターで濾過した後に患者に直接注射することができる。
【0045】
特許出願WO-A-00/30618によるこの特段の形態は、本願においては、30%を超えるグラフト率で、且つ選択したグラフトによって、想定可能である。然るに該ポリマーは、APと結合するまたはこれをカプセル封入することのできるミクロ粒子を形成可能である。この関係で、前記ミクロ粒子はAPとポリマーとを適当な有機溶媒中に共に溶解させた後、該混合物を水中に沈殿させることによって生成させることができる。該粒子を、引き続き濾過によって回収した後、経口投与(ゼラチンカプセルの形態、固型化及び/または被覆した形態、あるいはまたオイル中の分散物の形態)または水に再分散させた後に非経口投与に使用可能である。
【0046】
50%を超えるグラフト率では、水性相中の前記ポリマーの再分散は、イオン性カルボキシレート基がより少量になり、該ポリマーが沈殿するため、より困難になる。この場合は、該ポリマーをN-メチルピロリドンなどの生体適合性溶媒中またはMygliol(登録商標)等の適当なオイル中に溶解させた後、筋内もしくは皮下経路によって、または腫瘍に、注射することができる。溶媒またはオイルの拡散が注射部位でのポリマーの沈降をもたらし、よって沈着を形成する。かくしてこれらの沈着は、前記ポリマーの拡散及び/または浸食及び/または加水分解性もしくは酵素的分解による制御された放出を保証する。
【0047】
本発明によるポリアミノ酸のミクロ粒子形態が好ましいという事実とは別に、本発明のポリマーは、中和もしくはイオン化形態で、そのまま、または液体、固体、もしくはゲル組成物中、且つ水性もしくは有機媒質中で、より一般的に使用可能である。
【0048】
ポリアミノ酸に基づくポリマーが、当該組成物のpHによって中性(COOH形態)またはイオン化(COO-アニオン)のいずれかのカルボキシル基を含むことが理解される。このため、水性相への溶解度はポリマー中の遊離の(疎水性ユニットがグラフトしていない)COOHの割合とpHとの直接関数である。水性溶液中のカウンターカチオンとしては、ナトリウム、カルシウム、またはマグネシウム等の金属カチオン、あるいはトリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等の有機カチオン、あるいはポリエチレンイミン等のポリアミンが可能である。
【0049】
本発明のポリマーは、例えば当業者に既知の方法で得られる。ランダムポリアミノ酸は、予めアミノ酸スペーサーで官能化させた疎水性グラフトを定法のカップリング反応によってポリマーに直接グラフトさせることによって得られる。ブロックまたはマルチブロックポリアミノ酸は、対応するアミノ酸N-カルボキシ無水物(NCA)の引き続く重合化によって得られる。
【0050】
例えば、ホモポリグルタメートもしくはホモポリアスパルテートポリアミノ酸またはブロック、マルチブロック、もしくはランダムグルタメート/アスパルテートコポリマーは、定法によって調製される。
【0051】
アルファタイプのポリアミノ酸を得るための最も一般的な技術は、例えば文献"Biopolymers"1976, 15, 1869及びH.R.Kricheldorfによる"Alpha-amino acid N-carboxy anhydrides and related hterocycles", Springer Verlag(1987)と題される研究に開示されているアミノ酸N-カルボキシ無水物(NCA)の重合化に基づく。NCA誘導体は、好ましくはNCA-O-Me、NCA-O-...及び/またはNCA-O-Bz誘導体(Me=メチル、Et=エチル、及びBz=ベンジル)である。その後ポリマーは適当な条件下で加水分解されて、該ポリマーの酸形態を生じる。これらの方法は、本出願人による特許FR-A-2801226に記された説明に基づく。本発明によって使用可能な多数のポリマー、例えば様々な分子量のポリ(アルファ-L-アスパラギン酸)、ポリ(アルファ-L-グルタミン酸)、ポリ(アルファ-D-グルタミン酸)、及びポリ(ガンマ-L-グルタミン酸)タイプのものは、市販品として入手可能である。アルファ-ベータタイプのポリアスパラギン酸ポリマーは、アスパラギン酸の縮合(によりポリスクシンイミドを生じ、これ)に引き続く塩基性加水分解によって得られる(Tomida et al., Polymer 1997, 38, 4733-36)。
【0052】
ポリマーの酸基とのグラフトのカップリングは、カップリング剤としてのカルボジイミドの存在下で、また任意に4-ジメチルアミノピリジン等の触媒の存在下で、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、またはジメチルスルホキシド(DMSO)等の適当な溶媒中にてポリアミノ酸を反応させることによって容易に行われる。カルボジイミドは、すなわちジシクロヘキシルカルボジイミドまたはジイソプロピルカルボジイミドである。グラフト率は、構成成分及び反応物の化学量論によって、または反応時間によって制御される。アミノ酸で官能化された疎水性グラフトは、定法のペプチドカップリングにより、または酸触媒下での直接縮合によって得られる。これらの技術は当業者には周知である。
【0053】
【化3】

【0054】
ブロックもしくはマルチブロックコポリマーは、疎水性グラフトを用いて予め合成したNCA誘導体を用いて合成する。合成スキームは下記のとおりである。
【0055】
【化4】

【0056】
好ましくは、NCA/疎水性グラフト誘導体を、NCA-O-ベンジルと共重合させた後、ベンジル基を加水分解によって選択的に除去する。
【0057】
別の特徴により、本発明は、以上に定義される少なくとも1つのポリアミノ酸及び、治療用、化粧用、食用、または植物衛生用の有効成分であってよい少なくとも1つの有効成分を任意に含む、製薬品、化粧品、食品、または植物衛生組成物に関する。
【0058】
本発明の価値ある規定によれば、前記有効成分は、共有化学結合以外の1つ以上の結合によってポリアミノ酸と結合している。
【0059】
本発明によるグラフト化ポリアミノ酸と1つ以上のAPとを結合させる技術は、特に特許出願WO-A-00/30618に開示されている。これらは、少なくとも1つの有効成分を、粒子VPを含む液体媒質中に導入することであり、1つ以上の有効成分APと結合したまたはこれを担持したVPのコロイド状懸濁物を生じる。この導入は、VPによるAPの捕捉をもたらすものであるが、下記のように実行可能である。
・水性溶液中にAPを導入し、次いでVPを、コロイド状懸濁物の形態または単離したVPの形態(凍結または沈殿)のいずれかにて添加する;あるいは、
・溶液中または純粋もしくは予め処方された状態のAPを、水などの適当な溶媒中に乾燥VPを分散させることによって即時使用のために任意に調製された粒子VPのコロイド状懸濁物に添加する。
【0060】
好ましくは、前記有効成分はタンパク質、糖タンパク質、1つ以上のポリアルキレングリコール鎖(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖:「PEG修飾タンパク質」)に結合したタンパク質、ポリサッカライド、リポサッカライド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはペプチドである。
【0061】
1つの変形においては、前記有効成分は疎水性、親水性、または両親媒性の有機「小」分子である。
【0062】
本明細書中に定義されるように、「小」分子は、特に非タンパク質小分子である。
【0063】
以下は、ナノ粒子またはミクロ粒子の形態であるか否かによらず、本発明によるポリアミノ酸と結合可能なAPの例として挙げることができる。
(1)タンパク質、例えばインスリン、インターフェロン、成長ホルモン、インテーロイキン、エリスロポイエチン、またはサイトカインなど;
(2)ペプチド、例えばロイプロリド、またはシクロスポリン;
(3)小分子、例えばアントラサイクリン、タキソイド、またはカンプトテシン属に属するもの等;及び
(4)これらの混合物。
【0064】
1つの実施態様においては、本発明の組成物はゲル、溶液、懸濁物、エマルション、ミセル、ナノ粒子、ミクロ粒子、インプラント、パウダー、またはフィルムの形態である。
【0065】
特に好ましい形態の1つでは、有効成分を担持していてもいなくても、当該組成物は、水性相中のポリアミノ酸のナノ粒子及び/またはミクロ粒子及び/またはミセルの安定なコロイド状懸濁物である。
【0066】
別の実施態様では、本発明の組成物は生体適合性の溶媒中の溶液の形態であり、皮下または筋内の経路により、あるいは腫瘍中に、注射可能である。
【0067】
本発明による組成物が製薬組成物である場合は、これは経口、非経口、鼻、膣、眼、皮下、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、大脳内、または口腔の経路により投与可能である。
【0068】
皮下または筋内の経路により、あるいは腫瘍中に注射可能である、生体適合性溶媒中の溶液の形態の組成物を企図することも可能である。
【0069】
別の変形では、本発明による組成物は注射部位において沈着を形成可能なように製剤される。
【0070】
本発明は、さらに本発明によるポリアミノ酸及び有効成分を含む組成物に関し、これは、
・薬剤、とりわけ経口、鼻、膣、眼、皮下、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、または大脳内の経路による投与のための薬剤であって、これら薬剤の有効成分がタンパク質、糖タンパク質、1つ以上のポリアルキレングリコール鎖(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖、この場合は「PEG修飾」タンパク質なる語が使用される)に結合したタンパク質、ポリサッカライド、リポサッカライド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、及び疎水性、親水性、もしくは両親媒性の有機小分子であるもの;及び/または
・食品;及び/または
・化粧品または植物衛生製品;
の調製に使用可能である。
【0071】
さらに別の特徴に寄れば、本発明は、
・薬剤、とりわけ経口、鼻、膣、眼、皮下、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、または大脳内の経路による投与のための薬剤であって、これら薬剤の有効成分がタンパク質、糖タンパク質、1つ以上のポリアルキレングリコール鎖(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖、この場合は「PEG修飾」タンパク質なる語が使用される)に結合したタンパク質、ポリサッカライド、リポサッカライド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、及び疎水性、親水性、もしくは両親媒性の有機小分子であるもの;及び/または
・食品;及び/または
・化粧品または植物衛生製品;
の調製方法であって、本質的に以上に定義される少なくとも1つのポリアミノ酸及び/または以上に開示される組成物を使用する工程を含むことを特徴とする方法に関する。
【0072】
本発明はさらに、本明細書に開示されるように、前記組成物を本質的に経口、非経口、鼻、膣、眼、皮下、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、大脳内、または口腔の経路によって投与する工程を含む治療方法に関する。
【0073】
本発明の特定の変形においては、前記治療方法は、本質的に、上述の組成物を生体適合性溶媒中の溶液の形態で投与する工程、及びその後これを皮下もしくは筋内の経路により、または腫瘍中に、好ましくは注射部位に沈着を生成させるような方法で注射する工程を含む。
【0074】
本発明は、疎水性基でグラフト化されたポリアミノ酸の合成、及びそのAP誘導系(安定な水性コロイド状懸濁物)への転化を詳説し、さらにこうした系がタンパク質に結合して製薬組成物を形成する能力を示す、下記の実施例によってよりよく理解され、その利点及び変形がいっそう明らかになるであろう。
【実施例】
【0075】
(実施例1:ポリマーP1の調製)
グラフトLeuOC12でグラフト化したポリグルタメートの合成
1/グラフトの構造:
【化5】

この生成物は、特許US-A-4826818に開示された方法により、酸の存在下での縮合によってL-ロイシン及びドデカノールから合成される。
【0076】
2/ポリマーの合成:
アルファ-L-ポリグルタミン酸ポリマー(ポリオキシエチレン標準に対して約12000g/molに等しい分子量を有する)が、メチルグルタメートのN-カルボキシ無水物誘導体:NCAGluOMeからなるモノマーの重合化によって得られる。この重合化に次いで、特許出願FR-A-2801226に記載のように加水分解を行う。その後18gの該ポリマーを360mlのジメチルホルムアミド(DMF)に、80℃に2時間加熱することによって溶解させる。前記ポリマーが溶解したところで、温度を25℃に下げ、予め9mlのDMFに溶解させた5.0gのグラフトLeuOC12、予め5mlのDMFに溶解させた0.5gの4-ジメチルアミノピリジン、及び3.16gのジイソプロピルカルボジイミドを相次いで加える。25℃にて6時間撹拌した後、反応媒質を15%の塩化ナトリウム及び塩酸を含む720mlの水(pH2)中に注ぐ。沈殿するポリマーを濾過して回収し、0.1Nの塩酸に続いてジイソプロピルエーテルで洗う。引き続き、該ポリマーを真空下のオーブン中、40℃にて乾燥させて90%のオーダーの収率を得る。プロトンNMRにより推定されるグラフト率は、約11.6%である。
【0077】
(実施例2:ポリマーP2乃至P5、C1及びC2の調製)
ポリマーP2乃至P5並びに比較例C1及びC2を、ポリマーP1と同様のプロトコルに従って合成する。グラフトValCholについては、ジイソプロピルカルボジイミドの存在下にてBoc-バリンとコレステロールとをカップリングさせ、その後酸媒質中で該アミンを脱保護する(例えば、"Principles of peptide synthesis" by Bodanszky, Springer-Verlag 1984の研究参照)。
【0078】
(実施例3:ポリマーの特徴)
【表1】

[1]点線で表される結合は、ポリマーとの結合を表す。
[2]グラフトのmol%は、重水素化トリフルオロ酢酸中に溶解させたポリマーのプロトンNMRにより推定される。
[3]Mnは、溶離剤としてPBS(pH7.4)とアセトニトリルとの混合物を使用するゲル濾過クロマトグラフィーによって測定される数平均分子量であり、ポリオキシエチレン標準に対して表示される。
【0079】
(実施例4:インスリンとの結合の研究)
1ミリリットル当たり10mgのポリマー及び200IUのインスリン(7.4mg)を含むpH7.4の水溶液を調製する。前記溶液を室温にて2時間インキュベートし、限外濾過(100kDaにてカットオフ、18℃、10000Gの下で15分間)によって遊離のインスリンを結合インスリンから分離する。濾液から回収される遊離のインスリンを、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)により定量し、結合インスリンの量を減算する。結果を以下の表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
結果は、本発明のポリマーのインスリン結合率は、「アミノ酸」スペーサーを有しないポリマー(C1)または疎水性アミノ酸配列を有するが直鎖状もしくは多環式アルキルタイプの疎水性基を有しないポリマー(C2)よりも高いことを示す。
【0082】
(実施例5:水性媒質中のポリマーの安定性の研究)
ポリマーを20mg/mlで水中に溶解させ、pHを6.0に調整し、かかる透明な溶液を25℃または37℃に温度制御したオーブン中に1週間置く。企図する応用に有用なpH範囲は、しばしば6乃至7.4である。本研究のためには、分解速度を速めるためにpH6を選択した。様々な技術によるポリマーの分析は、これらの条件下のポリマーの唯一の分解経路はエステルグラフトの加水分解であることを示す。時間の関数としてのポリマーP1、P3、及びC1の加水分解速度を、以下の表3に示す。
【0083】
【表3】

【0084】
これらの結果は、高いインスリン吸収性能を有することに加え、P1及びP3は加水分解に対してより安定であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスパラギン酸ユニット及び/またはグルタミン酸ユニットを含み、前記ユニットの幾つかが少なくとも1つのグラフトを担持するポリアミノ酸であって、これらグラフトの少なくとも1つが、
・アルファ位にアルキル基もしくはアリール基を有する「アミノ酸」ユニットから、好ましくはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、及びフェニルアラニンを含む群に属する「アミノ酸」ユニットから選択される1つ以上の「アミノ酸」ユニットから形成される、1つ以上の(オリゴ)アミノ酸を含むスペーサーにより主鎖のアスパラギン酸もしくはグルタミン酸のユニットに結合しており、且つ
・少なくとも1つの疎水性基を含み、前記疎水性基が、
−少なくとも6つの炭素原子、好ましくは6乃至30の炭素原子を含み、
−アルファ-トコフェロールとは異なり、
−少なくとも1つのエステル結合によってスペーサーに結合している、
ことを特徴とする、ポリアミノ酸。
【請求項2】
前記グラフトの疎水性基が、6乃至30(例えば8乃至30)の炭素原子を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリアミノ酸。
【請求項3】
下記の一般式(I):
【化1】

[式中、
・R1は、H、直鎖状のC2-C10もしくは分枝状のC3-C10のアシル基、またはピログルタメートであり;
・R2は、H、直鎖状のC2-C10もしくは分枝状のC3-C10のアルキル基、ベンジル基、または末端「アミノ酸」ユニットであり;
・R3は、H、または好ましくは下記:
−金属カチオンであって、有利にはナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムを含むサブグループから選択されるもの、
−有機カチオンであって、有利には
・アミンに基づくカチオン、
・オリゴアミンに基づくカチオン、
・ポリアミン(特にポリエチレンイミンが好ましい)に基づくカチオン、及び
・有利にはリシンまたはアルギニンに基づくカチオンを含むクラスから選択されるアミノ酸に基づくカチオン、
を含むサブグループから選択されるもの;及び
−カチオン性ポリアミノ酸であって、有利にはポリリシン及びオリゴリシンを含むサブグループから選択されるもの;
を含む群より選択されるカチオン性構成体であり;
・互いに独立であるn個のBが、下式:
【化2】

(式中、
−R4は、メチル(アラニン)、イソプロピル(バリン)、イソブチル(ロイシン)、sec-ブチル(イソロイシン)、またはベンジル(フェニルアラニン)であり;
−R5は、6乃至30の炭素原子を含む疎水性基であり;
−lは、1乃至6である)
の一価の基であり;
・Aは、独立に-CH2-(アスパラギン酸ユニット)または-CH2-CH2-(グルタミン酸ユニット)であり;
・n/(n+m)が、モルグラフト率として定義され、且つ0.5乃至100mol%で変化し;さらに
・n+mが、3乃至1000、好ましくは30乃至300で変化する]
を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のポリアミノ酸。
【請求項4】
疎水性基R5の全てまたは幾つかが、
・6乃至30の炭素原子を含み、さらに少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO及び/またはN及び/またはS)及び/または少なくと1つの不飽和のユニットを含みうる直鎖状または分枝状のアルコキシ、
・6乃至30の炭素原子を含み、1つ以上の縮合炭素環を有し、さらに任意に少なくとも1つの不飽和ユニット及び/または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO及び/またはN及び/またはS)を含むアルコキシ、
・7乃至30の炭素原子を有し、さらに少なくとも1つの不飽和ユニット及び/または少なくとも1つのヘテロ原子(好ましくはO及び/またはN及び/またはS)を含みうるアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキル
を含む基の群から独立に選択されることを特徴とする、請求項2または3に記載のポリアミノ酸。
【請求項5】
前記グラフトの疎水性基が、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、及びコレステロールを含む群から選択されるアルコール前駆体から誘導されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリアミノ酸。
【請求項6】
前記グラフトの「アミノ酸」ユニットが、L-ロイシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリアミノ酸。
【請求項7】
主鎖が、アルファ-L-グルタメートまたはアルファ-L-グルタミン酸ホモポリマーからなることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリアミノ酸。
【請求項8】
主鎖が、アルファ-L-アスパルテートまたはアルファ-L-アスパラギン酸ホモポリマーからなることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリアミノ酸。
【請求項9】
主鎖が、アルファ-L-アスパルテート/アルファ-L-グルタメートまたはアルファ-L-アスパラギン酸/アルファ-L-グルタミン酸コポリマーからなることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリアミノ酸。
【請求項10】
グラフトを担持するアスパラギン酸/グルタミン酸ユニットの分布が、ランダムまたはブロックタイプもしくはマルチブロックタイプのポリマーが得られるようなものであることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリアミノ酸。
【請求項11】
分子量が、2000乃至100000g/mol、好ましくは5000乃至40000g/molであることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のポリアミノ酸。
【請求項12】
モルグラフト率が、2乃至70%、好ましくは5乃至40%であることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のポリアミノ酸。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリアミノ酸を含む、製薬、化粧品、食品、植物衛生用組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの有効成分を含むことを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記有効成分が、共有化学結合以外の1つ以上の結合によってポリアミノ酸と結合していることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記有効成分が、タンパク質、糖タンパク質、1つ以上のポリアルキレングリコール鎖(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖:「PEG修飾タンパク質」)に結合したタンパク質、ポリサッカライド、リポサッカライド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはペプチドであることを特徴とする、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
前記有効成分が、疎水性、親水性、または両親媒性の有機分子であることを特徴とする、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項18】
水性相中の、ポリアミノ酸のナノ粒子及び/またはミクロ粒子及び/またはミセルのコロイド状懸濁物であることを特徴とする、請求項13乃至17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
溶液、ゲル、懸濁物、エマルション、ミセル、ナノ粒子、ミクロ粒子、インプラント、パウダー、またはフィルムの形態であることを特徴とする、請求項13乃至18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
経口、非経口、鼻、膣、眼、皮下、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、大脳内、または口腔の経路により投与可能であることを特徴とする、請求項13乃至19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
生体適合性溶媒中の溶液の形態であり、且つ皮下もしくは筋内の経路によるかまたは腫瘍中に注射可能であることを特徴とする、請求項13乃至20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
注射可能であり、且つ注射部位において沈着を形成しうることを特徴とする、請求項13乃至21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
・薬剤、とりわけ経口、鼻、膣、眼、皮下、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、または大脳内の経路による投与のための薬剤であって、これら薬剤の有効成分がタンパク質、糖タンパク質、1つ以上のポリアルキレングリコール鎖(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖、この場合は「PEG修飾」タンパク質なる語が使用される)に結合したタンパク質、ポリサッカライド、リポサッカライド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、及び疎水性、親水性、もしくは両親媒性の有機小分子であるもの;及び/または
・食品;及び/または
・化粧品または植物衛生製品;
の調製を企図することを特徴とする、請求項13乃至22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
・薬剤、とりわけ経口、鼻、膣、眼、皮下、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、または大脳内の経路による投与のための薬剤であって、これら薬剤の有効成分がタンパク質、糖タンパク質、1つ以上のポリアルキレングリコール鎖(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖、この場合は「PEG修飾」タンパク質なる語が使用される)に結合したタンパク質、ポリサッカライド、リポサッカライド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、及び疎水性、親水性、もしくは両親媒性の有機小分子であるもの;及び/または
・食品;及び/または
・化粧品または植物衛生製品;
の調製方法であって、本質的に請求項1乃至12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリアミノ酸及び/または請求項13乃至22のいずれか一項に記載の組成物を使用する工程を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2007−501321(P2007−501321A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530446(P2006−530446)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050209
【国際公開番号】WO2004/108796
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505437321)フラメル・テクノロジーズ (14)
【Fターム(参考)】