少なくとも1種の有効薬剤成分を含有する多構成要素固相
【課題】基礎とされる薬剤分子の現存する固形の形状とは異なる、融点、溶解度、溶解速度、化学安定性、熱力学的安定性、および/またはバイオアベイラビリティのような特性を有する、広範な新規固相の提供。
【解決手段】2種以上の独立した分子実体間の分子間相互作用により維持される固相を含む多構成要素相組成物であって、該2種以上の独立した分子実体のうち少なくとも1種が薬剤分子である、多構成要素相組成物。また、望ましい超分子シントンを形成するために、相補的化学官能基を同定する方法。
【解決手段】2種以上の独立した分子実体間の分子間相互作用により維持される固相を含む多構成要素相組成物であって、該2種以上の独立した分子実体のうち少なくとも1種が薬剤分子である、多構成要素相組成物。また、望ましい超分子シントンを形成するために、相補的化学官能基を同定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年3月1日に出願された、米国特許仮出願第60/360,768号の恩典を主張するものであり、従ってあらゆる図、表、または図面を含む、その全体が本明細書に参照として組入れられている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
過去10年間で、分子および超分子集合体の理解、およびそれを操作する能力において途方もなく進歩した(Moulton, B.ら、Chem. Rev.、101:1629-1658(2001):非特許文献1)。新世代の機能性物質および分子のデザインおよび合成に関係する新たなパラダイムが存在する。このような進歩は、環境科学から分子生物学、薬学、材料科学までの、多くの分子の科学の局面における分子間相互作用、構造および協同性の基本的重要さの結果である。従って現在、特に非共有結合およびナノ技術に関連した領域における分子レベルでの物質の制御および操作に関する期待は、実に桁外れなものである。しかし、結晶構造決定は、1920年代から科学者により使用されてきた道具であるにもかかわらず、結晶構造予測には未だ対処されていない大きい目標がある(Ball, P.、Nature、381:648-650(1996):非特許文献2;Gavezzotti, A.、Acc. Chem. Res.、27:309-314(1994):非特許文献3)。更に、典型的には多形または溶媒和物の形での、所定の分子化合物の1種よりも多い結晶形の存在は、問題点と好機の両方を示している(Desiraju, G.R、Science、278:404-405(1997):非特許文献4;Bernstein, J.ら、Angew. Chem., Int. Ed Engl.、38:3441-3461(1999):非特許文献5)。これは、医薬品産業に関して特にあてはまる。
【0003】
結晶工学(Schmidt, G.M.J.、Pure Appl. Chem.、27:647-678(1971):非特許文献6;Desiraju, G.R、Crystal Engineering: the Design of Organic Solids、1989、Elsevier社、アムステルダム:非特許文献7)は、結晶は事実上の自己集合体の例であり、すなわち、結晶は一連の分子認識事象または「超分子シントン(supermolecular synthons)」で構成されるという仮説を述べている(Desiraju, G.R、Angew. Chem., Int. Ed. Engl.、34:2311-2327(1995):非特許文献8)。これは、デザインに依拠しており、および物質の慎重な選択を可能にするので、結晶構造予測よりもより信頼できる目標も提示し、すなわち、予測可能な自己集合された超構造を形成する素因のある物質を、研究の対象とすることができる。更に結晶工学において使用される原型となる分子は、機能外(exofunctional)分子認識部位を含み、およびこれらはそれら自身と相補的であるか(自己集合)(Boucher, E.ら、J. Org. Chem.、60:1408-1412(1995):非特許文献9)または他の分子と相補的である(モジュラー自己集合)(Zaworotko, M.J.、Chem. Soc. Rev.、23:283-288(1994):非特許文献10;Sharma, C.V.KおよびM.J. Zaworotko、Chem. Commun.、2655-2656(1996):非特許文献11)ことができる。同時に、ほとんどの薬剤分子も、外側の分子認識部位を含み、ならびにこのことはこれらの結晶多形および溶媒和物を形成しやすくするにもかかわらず、これらを結晶工学の研究にとって魅力的な候補にもしている。
【0004】
結晶自己集合体のボトムアップ手法(Feynman, R.、Engineering and Science、22-36(1960):非特許文献12)から構築される能力は、分子レベルでの新規相のデザインの優れた制御を提供することができる。これは、現在の最先端技術である「所定の化合物についてわかっている形状の数は、その化合物の研究に費やした時間と経費に比例する」(McCrone, W.C.、Polymorphism in Physics and Chemistry of the Organic Solid-State、726頁、Foxら編、Interscience社、ニューヨーク、1965:非特許文献13)とは対照的である。この陳述は、固体状態の薬剤化合物の組成および構造の管理を断言する必要性に取り組む場合に直面する窮状と好機を要約している。より詳細に述べると、結晶固形物の物理特性は、分子またはイオンの内部配置に非常に左右され、分子構造の知識から、組成、結晶構造および形態を予測することを、最高水準の科学的挑戦としている。しかし、結晶構造予測および更には組成の予測は、未だ対処されていない大きい目標である。しかしながら結晶工学は、分子構成要素の新規送達システムの開発に関する機能特性(溶解度、溶解速度および安定性など)を付与する能力のために、それらを使用する可能性を魅力的なものにしている。
【0005】
望ましくない物理化学特性、生理的障壁、または毒性の問題は、薬物の治療的利益を制限することが多い。このことは、溶解不良で、吸収不良でおよび不安定な物質のための薬物送達システムの研究の動機づけとなっている。結晶自己集合は、薬物の溶解度、溶解速度、安定性およびバイオアベイラビリティを改善するための有望な送達モダリティを提示している。加えて、封入複合体または分子被包の手段により、薬物活性の増強を実現することができる。これらのシステムは、デザインおよび安定性の両観点から非晶質高分子送達システムに勝る様々な利点をもたらす。この状況において、所定の化合物の1種よりも多い結晶形、典型的には多形または溶媒和物の形での存在は、問題点と好機の両方を表わしている。更にいくつかの要因が、状況を複雑化している。例えば、米食品医薬品局(FDA)の厳密な純度要求基準は、薬物の特定の結晶相が選択されなければならないこと、およびその組成は確定されなければならないことを事実上意味している。これは典型的には、一貫したX線粉末回折(XPD)パターンが必要であることを意味している(FDA、連邦官報(FR)、62:62893-62894(1997):非特許文献14)。多くの薬物分子は、多相を形成する傾向があり、ならびに結晶のサイズおよび形態は所定の相で変動し得るので、その加工処理が、純度および加工処理の容易さの両方を生じることを保証する必要性には、問題が多い。加工処理が信頼できおよび再現性があることを保証しないことの商業的および公のイメージに関わるコストは、最近のABBOTT LABORATORIES社によるNORVIRの撤収および再製剤により明らかにされるように、一番良くとも非常に高いものである。
【0006】
XPDパターンに品質管理を頼ることは、便利ではあるが、多くの場合は不首尾であり、その理由はXPDは、単独の結晶のX線結晶解析のように絶対確実なものではない(例えば、類似パターンを、異なる相について得ることができ、組成は、明白には決定されない)からであり、ならびにXPDは、結晶パッキングを決定しないからである。結晶パッキングの知識は、特定の相の溶解度および組成の説明を補助し、ならびに他の価値ある情報を提供するので、重要である。しかし、医薬品の物質特性および多形の存在は一般に、薬物開発過程の最終段階で調査される。
【0007】
従って、基礎とされる薬剤分子の現存する固形の形状とは異なる、融点、溶解度、溶解速度、化学安定性、熱力学的安定性、および/またはバイオアベイラビリティのような特性を有する、広範な新規固相を提供することは利点であろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Moulton, B.ら、Chem. Rev.、101:1629-1658(2001)
【非特許文献2】Ball, P.、Nature、381:648-650(1996)
【非特許文献3】Gavezzotti, A.、Acc. Chem. Res.、27:309-314(1994)
【非特許文献4】Desiraju, G.R、Science、278:404-405(1997)
【非特許文献5】Bernstein, J.ら、Angew. Chem., Int. Ed Engl.、38:3441-3461(1999)
【非特許文献6】Schmidt, G.M.J.、Pure Appl. Chem.、27:647-678(1971)
【非特許文献7】Desiraju, G.R、Crystal Engineering: the Design of Organic Solids、1989、Elsevier社、アムステルダム
【非特許文献8】Desiraju, G.R、Angew. Chem., Int. Ed. Engl.、34:2311-2327(1995)
【非特許文献9】Boucher, E.ら、J. Org. Chem.、60:1408-1412(1995)
【非特許文献10】Zaworotko, M.J.、Chem. Soc. Rev.、23:283-288(1994)
【非特許文献11】Sharma, C.V.KおよびM.J. Zaworotko、Chem. Commun.、2655-2656(1996)
【非特許文献12】Feynman, R.、Engineering and Science、22-36(1960)
【非特許文献13】McCrone, W.C.、Polymorphism in Physics and Chemistry of the Organic Solid-State、726頁、Foxら編、Interscience社、ニューヨーク、1965
【非特許文献14】FDA、連邦官報(FR)、62:62893-62894(1997)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、1種を上回る分子構成要素を含む新規薬剤相のデザインへの結晶工学の概念の適用に関する。
【0010】
本発明は、少なくとも1種の有効薬剤成分を有する多構成要素固形物に関する。本発明の多構成要素固形物中において有効薬剤成分として利用することができる薬剤分子の例は、アスピリン、一連のプロフェン類の1種または複数の構成員(例えば、イブプロフェンおよびフルルビプロフェン)、カルバマゼピン、フェニトイン、およびアセトアミノフェンを含むが、これらに限定されるものではない。これらの薬剤成分および相補的分子(以後「共結晶形成体」と称する)を含有する多構成要素結晶のような、多構成要素固形物は、様々な技術により特徴付けられており、代わりの分子認識パターンの直接の結果として、親薬剤成分と同じまたは異なる物理および/または化学特性を示すことができる。これらの新規結晶集合体は、改善された薬物溶解度、溶解定数、安定性およびバイオアベイラビリティをもたらすことができる。
【0011】
本発明は、超分子化学の意味において相補的である、すなわちこれらは薬剤分子またはイオンと超分子シントンを形成するような、共結晶形成体を使用する、多構成要素相のような、新規薬剤固相のデザインへの結晶工学の概念の適用にも関連している。共結晶形成体は、溶媒分子、他の薬物分子、GRAS化合物、または認可された食品添加物であることができるが、これらに限定されるものではない。薬剤分子またはイオンは、そのような結晶工学試験に関して固有の素因があり、その理由はこれらは既に、生体分子に選択的に結合する分子認識部位を含み、およびこれらは超分子の自己集合体となる傾向があるからである。有効薬剤成分において通常認められ、および超分子シントンを形成できる基の例は、酸、アミド、脂肪族窒素基部、不飽和芳香族窒素基部(例えば、ピリジン、イミダゾール)、アミン、アルコール、ハロゲン、スルホン、ニトロ基、S-複素環、N-複素環(飽和または不飽和)、およびO-複素環を含むが、これらに限定されるものではない。その他の例は、エーテル、チオエーテル、チオール、エステル、チオエステル、チオケトン、エポキシド、アセトネート、ニトリル、オキシム、および有機ハロゲン化物を含む。これらの基の一部は、例えば、酸およびアミドなどのように、類似したまたは異なる分子内の同一基と超分子シントンを形成することができ、ならびにホモシントンと称される。他の基は、例えば、酸/アミド;ピリジン/アミド;アルコール/アミンなどのように、異なる基と超分子シントンを形成することができ、ならびに、ヘテロシントンと称される。ヘテロシントンは、多構成要素結晶の形成に特に適しているのに対し、ホモシントンは時々多構成要素結晶を形成することができる。
【0012】
ひとつの局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成するための、相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、有効薬剤成分(API)の構造を評価する段階;そのAPIが、それ自身と超分子シントンの形成が可能な化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが知られている複数の化学官能基から、更なる超分子シントンを形成してAPIにより形成された超分子シントンとすると考えられる少なくとも1種の化学官能基を同定する段階であり、ここで同定された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントンにより形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することができず、ならびにここで選択された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントンと非共有結合を形成できる段階;ならびに、APIと相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。
【0013】
別の局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成するための相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、APIの構造を評価する段階;APIが、それ自身と超分子シントンの形成が可能な化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが知られている複数の化学官能基から、APIと超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であり、ここで、同定された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することが可能であり、ならびにここで選択された化学官能基は、API上の相補的化学官能基と非共有結合を形成できる段階;ならびに、APIと相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。その結果この方法に従い、薬剤部分間の分子間相互作用の破壊を目的とするホモシントンの形成を行うことができる。
【0014】
更に別の局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成するための相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、APIの構造を評価する段階;APIが、異なる分子と超分子シントンの形成が可能な化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、APIと超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であり、ここで、選択された化学官能基は、API上の相補的化学官能基と非共有結合を形成できる段階;ならびに、有効薬剤成分と相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。
【0015】
先に指摘したように、本発明のある局面は、同一官能基(ホモシントン)間の非共有結合を破壊し、および異なるが依然相補的である官能基(ヘテロシントン)間に非共有結合を形成できる化学官能基の選択;相補的官能基を含む複数の分子実体(好ましくは、GRAS化合物または承認された食品添加物)の選択;所望の超分子シントンの形成を妨害せず、および標的相へ所望の物理特性を付与するような分子実体に関する追加の化学的特徴の同定;ならびに、任意に、結晶物質を産出する溶媒中の反応、および/または無溶媒反応を含む結晶化技術による、薬剤部分および相補的分子実体で構成される新規固相(例えば、多構成要素相または2構成要素相)の調製に関与し得る。任意に、これらの方法は更に、形成された新規固相の構造を決定する段階;および、新規固相の物理特性を分析する段階の連続段階の少なくとも1種を含むことができる。
【0016】
本発明は更に、本明細書において確定された方法を使用し、同定されるかまたは生成された新規固相に関する。本発明は更に、いずれかの化学量比で、2種以上の独立した分子実体間の分子間相互作用により維持される固形物質(相)を含む多構成要素相組成物に関し、ここで独立した分子実体の少なくとも1種は、薬剤実体である。多構成要素相組成物は、例えば、個別の超分子実体または高分子構造であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】イブプロフェンの化学構造を示す。外側官能基は、イソプロピル基(青色、左側円内)およびカルボン酸(赤色、右側円内)である。
【図2】左側に純粋なイブプロフェンのシントン、および右側にこのシントンを含む超分子実体の概略を示し、これはイブプロフェンの純相は、カルボン酸-カルボン酸相互作用により維持されることを表わしている。標準の化学色相関は、色が使用される全ての図面において、明らかである(例えば、赤色=酸素;白色=酸素;暗青色=窒素;明青色=フルオレン;黄色=硫黄)。
【図3】イブプロフェンのカルボン酸-カルボン酸相互作用が、芳香族アミンとの共結晶化により破壊される概略を示している。具体的には、ジアミンを使用することにより、2:1の多構成要素相が生成される。
【図4】図4Aおよび図Bは、各々、アセトアミノフェン1-D重合鎖、およびアセトアミノフェン/4,4'-ビピリジン/水結晶を示している。報告された形は、単環(P21/n)多形(Haisa, M.ら、Acta Crystallogr., Sect B、30:2510(1974))および斜方晶(Pbca)多形(Haisa, M.ら、Acta Crystallogr., Sect B、32:1283(1976))多形である。単環多形型は、全ての水素結合の供与体および受容体相互作用により、プリーツシートを形成する。斜方晶多形型は、全ての供与体および受容体相互作用により、1-D重合鎖を形成する。
【図5】図5A〜図5Bは、各々、純粋なフェニトインおよびフェニトイン/ピリドンの共結晶を示している。フェニトインは、ひとつの純粋な形がわかっている(Carmerman, A.ら、Acta Crystallogr., Sect B、27:2207(1971))。この結晶構造は、カルボニルおよび2°アミンの両方の間の水素結合により形成された二次元高分子網状構造を明らかにしている。
【図6A】図6A〜図6Dは、純粋なアスピリンおよびアスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図3Aおよび図3Bは、各々、純粋なアスピリンのシントンを含有する超分子実体および対応する結晶構造を示している。アセチルサリチル酸の純相(Chiari, G.ら、Acta Crystallogr., Sect B、37:1623(1981))は、中心対称のカルボン酸ホモ二量体を有し、ならびに空間群P21/cで結晶化し、疎水面を伴う2D重合シート内にパッキングしている。
【図6B】図6A〜図6Dは、純粋なアスピリンおよびアスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図3Aおよび図3Bは、各々、純粋なアスピリンのシントンを含有する超分子実体および対応する結晶構造を示している。アセチルサリチル酸の純相(Chiari, G.ら、Acta Crystallogr., Sect B、37:1623(1981))は、中心対称のカルボン酸ホモ二量体を有し、ならびに空間群P21/cで結晶化し、疎水面を伴う2D重合シート内にパッキングしている。
【図6C】図6A〜図6Dは、純粋なアスピリンおよびアスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図6Cおよび図6Dは、各々、アスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する共結晶を示している。アセチルサリチル酸の純相(Chiari, G.ら、Acta Crystallogr., Sect B、37:1623(1981))は、中心対称のカルボン酸ホモ二量体を有し、ならびに空間群P21/cで結晶化し、疎水面を伴う2D重合シート内にパッキングしている。
【図6D】図6A〜図6Dは、純粋なアスピリンおよびアスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図6Cおよび図6Dは、各々、アスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する共結晶を示している。アセチルサリチル酸の純相(Chiari, G.ら、Acta Crystallogr., Sect B、37:1623(1981))は、中心対称のカルボン酸ホモ二量体を有し、ならびに空間群P21/cで結晶化し、疎水面を伴う2D重合シート内にパッキングしている。
【図7A】図7A〜図7Dは、純粋なイブプロフェン[2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸]およびイブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図7Aおよび図7Bは、各々、純粋なイブプロフェンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。報告されたイブプロフェン結晶構造は、ラセミ体(McConnell, J.F.、Cryst. Strucut. Commun.、3:73(1974))およびS(+)型(Freer, A.A.ら、Acta Crystallogr., Sect C(Cr. Str. Comm)、49:1378(1993))である。両者とも、水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含む。ラセミ二量体は、この二量体を横切る反転中心を有し、これは空間群P21/cで結晶化する。S(+)型は、不斉二量体を含み、これは空間群P21で結晶化する。両方の結晶は、π-πスタッキングおよび疎水性層内相互作用により維持された2-D重合シート内にパッキングする。
【図7B】図7A〜図7Dは、純粋なイブプロフェン[2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸]およびイブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図7Aおよび図7Bは、各々、純粋なイブプロフェンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。報告されたイブプロフェン結晶構造は、ラセミ体(McConnell, J.F.、Cryst. Strucut. Commun.、3:73(1974))およびS(+)型(Freer, A.A.ら、Acta Crystallogr., Sect C(Cr. Str. Comm)、49:1378(1993))である。両者とも、水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含む。ラセミ二量体は、この二量体を横切る反転中心を有し、これは空間群P21/cで結晶化する。S(+)型は、不斉二量体を含み、これは空間群P21で結晶化する。両方の結晶は、π-πスタッキングおよび疎水性層内相互作用により維持された2-D重合シート内にパッキングする。
【図7C】図7A〜図7Dは、純粋なイブプロフェン[2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸]およびイブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図7Cおよび図7Dは、各々、イブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンの超分子実体および対応する共結晶を示している。報告されたイブプロフェン結晶構造は、ラセミ体(McConnell, J.F.、Cryst. Strucut. Commun.、3:73(1974))およびS(+)型(Freer, A.A.ら、Acta Crystallogr., Sect C(Cr. Str. Comm)、49:1378(1993))である。両者とも、水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含む。ラセミ二量体は、この二量体を横切る反転中心を有し、これは空間群P21/cで結晶化する。S(+)型は、不斉二量体を含み、これは空間群P21で結晶化する。両方の結晶は、π-πスタッキングおよび疎水性層内相互作用により維持された2-D重合シート内にパッキングする。
【図7D】図7A〜図7Dは、純粋なイブプロフェン[2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸]およびイブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図7Cおよび図7Dは、各々、イブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンの超分子実体および対応する共結晶を示している。報告されたイブプロフェン結晶構造は、ラセミ体(McConnell, J.F.、Cryst. Strucut. Commun.、3:73(1974))およびS(+)型(Freer, A.A.ら、Acta Crystallogr., Sect C(Cr. Str. Comm)、49:1378(1993))である。両者とも、水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含む。ラセミ二量体は、この二量体を横切る反転中心を有し、これは空間群P21/cで結晶化する。S(+)型は、不斉二量体を含み、これは空間群P21で結晶化する。両方の結晶は、π-πスタッキングおよび疎水性層内相互作用により維持された2-D重合シート内にパッキングする。
【図8A】図8A〜図8Dは、純粋なフルルビプロフェン[2-(2-フルオロ-4-ビフェニル)プロピオン酸]およびフルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示す。図8Aおよび図8Bは、各々、純粋なフルルビプロフェンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。フルルビプロフェンは、ひとつの純粋な形が報告されており(Flippen, J.L.ら、Acta Crystallogr., Sect B、31:926(1975))、反転中心を伴う水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含み、空間群P-1で結晶化する。2-D重合シートは、フェニル環のπ-πおよび疎水性相互作用により形成される。
【図8B】図8A〜図8Dは、純粋なフルルビプロフェン[2-(2-フルオロ-4-ビフェニル)プロピオン酸]およびフルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示す。図8Aおよび図8Bは、各々、純粋なフルルビプロフェンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。フルルビプロフェンは、ひとつの純粋な形が報告されており(Flippen, J.L.ら、Acta Crystallogr., Sect B、31:926(1975))、反転中心を伴う水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含み、空間群P-1で結晶化する。2-D重合シートは、フェニル環のπ-πおよび疎水性相互作用により形成される。
【図8C】図8A〜図8Dは、純粋なフルルビプロフェン[2-(2-フルオロ-4-ビフェニル)プロピオン酸]およびフルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示す。図5Cおよび図5Dは、各々、フルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンの超分子シントンおよび対応する共結晶を示している。フルルビプロフェンは、ひとつの純粋な形が報告されており(Flippen, J.L.ら、Acta Crystallogr., Sect B、31:926(1975))、反転中心を伴う水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含み、空間群P-1で結晶化する。2-D重合シートは、フェニル環のπ-πおよび疎水性相互作用により形成される。
【図8D】図8A〜図8Dは、純粋なフルルビプロフェン[2-(2-フルオロ-4-ビフェニル)プロピオン酸]およびフルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示す。図5Cおよび図5Dは、各々、フルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンの超分子シントンおよび対応する共結晶を示している。フルルビプロフェンは、ひとつの純粋な形が報告されており(Flippen, J.L.ら、Acta Crystallogr., Sect B、31:926(1975))、反転中心を伴う水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含み、空間群P-1で結晶化する。2-D重合シートは、フェニル環のπ-πおよび疎水性相互作用により形成される。
【図9】図9Aおよび図9Bは、各々、フルルビプロフェン/trans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。
【図10】図10Aおよび図10Bは、各々、純粋なカルバマゼピンおよびカルバマゼピン/p-フタルアルデヒドの結晶構造を示している。カルバマゼピン[5H-ジベンズ(b,f)アゼピン-5-カルボキシアミド](CBZ)は、少なくとも3種の無水型および2種の溶媒和型(二水和物およびアセトネート)で存在することが示されている(Himes, V.L.ら、Acta Crystallogr.、37:2242-2245(1981);Lowes, M.M.J.ら、J. Pharm. Sci.、76:744-752(1987);Reck, G.ら、Cryst. Res. Technol.、21:1463-1468(1986))。これらの結晶形における主要な分子間相互作用は、中心対称二量体を形成する各CBZ分子のカルボキシアミド部分の間で形成された二量体である。無水結晶多形は、単斜晶、三方晶、および三斜晶である。これらの多形は、室温で最も熱力学的に安定している単斜晶形とエナンチオトロピー的に関連している。
【図11】カルバマゼピン/ニコチンアミド(ビタミンB3)の結晶構造を示している。
【図12】カルバマゼピン/ニコチンアミド共結晶をモデルとして使用し操作した、カルバマゼピン/サッカリンの結晶構造を示している。
【図13】図13A〜図13Cは、各々、イブプロフェン、フルルビプロフェン、およびアスピリンの化学構造を示している。
【図14】図14Aおよび図14Bは、各々、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/2,6-ピリジンジカルボン酸の結晶構造を示している。
【図15】図15Aおよび図15Bは、各々、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/5-ニトロイソフタル酸の結晶構造を示している。
【図16】図16Aおよび図16Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/酢酸の結晶構造を示している。
【図17】図17Aおよび図17Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/アダマンタンテトラカルボン酸の結晶構造を示している。
【図18】図18Aおよび図18Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/ベンゾキノンの結晶構造を示している。
【図19】図19Aおよび図19Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/酪酸の結晶構造を示している。
【図20】図20Aおよび図20Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/DMSOの結晶構造を示している。
【図21】図21Aおよび図21Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/ホルムアミドの結晶構造を示している。
【図22】図22Aおよび図22Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/ギ酸の結晶構造を示している。
【図23】図23Aおよび図23Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/トリメシン酸の結晶構造を示している。
【図24】本発明の多構成要素相組成物を調製する例証的概略を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも1種の有効な薬剤構成要素を有する、多構成要素結晶のような、新規多構成要素固相のデザインへの結晶工学の概念の適用に関する。本発明の多構成要素結晶の例は、アセトアミノフェン/4,4'-ビピリジン/水、フェニトイン/ピリドン、アスピリン/4,4'-ビピリジン、イブプロフェン/4,4'-ビピリジン、フルルビプロフェン/4,4'-ビピリジン、フルルビプロフェン/trans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン、カルバマゼピン/p-フタルアルデヒド、カルバマゼピン/ニコチンアミド(GRAS)、カルバマゼピン/サッカリン(GRAS)、カルバマゼピン/2,6-ピリジンジカルボン酸、カルバマゼピン/5-ニトロイソフタル酸、カルバマゼピン/酢酸、カルバマゼピン/1,3,5,7-アダマンタンテトラカルボン酸、カルバマゼピン/ベンゾキノン、カルバマゼピン/酪酸、カルバマゼピン/ジメチルスルホキシド(DMSO)、カルバマゼピン/ホルムアミド、カルバマゼピン/ギ酸、およびカルバマゼピン/トリメシン酸を含むが、これらに限定されるものではなく、これらは様々な技術により特徴決定され、および水素結合相互作用の直接の結果として、親薬剤成分とは異なる物理特性を示す。これらの結晶集合体は、例えば、改善された薬物溶解度、溶解速度、安定性およびバイオアベイラビリティをもたらすことができる。
【0019】
ひとつの局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成するために相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、有効薬剤成分(API)の構造を評価する段階;そのAPIが、それ自身と超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、更なる超分子シントンを形成してAPIにより形成された超分子シントンとすると考えられる少なくとも1種の化学官能基を同定する段階であり、ここで同定された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントンにより形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することができず、ならびにここで選択された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントンと非共有結合を形成できる段階;ならびに、APIと相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。
【0020】
別の局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成するための相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、APIの構造を評価する段階;APIが、それ自身と超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、APIと超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であり、ここで同定された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することが可能であり、ならびにここで選択された化学官能基は、API上の相補的化学官能基に非共有結合を形成できる段階;ならびに、APIと相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。従って、この方法により、薬剤部分間の分子間相互作用の破壊を目的とするホモシントンの形成を行うことができる。
【0021】
更なる別の局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成する相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、APIの構造を評価する段階;APIが、異なる分子と超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、APIと超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であり、ここで選択された化学官能基は、API上の相補的化学官能基への非共有結合を形成できる、段階;ならびに、有効薬剤成分と相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。
【0022】
前述の方法の3種の局面の各々において、これらの方法は更に、APIおよび少なくとも1種の同定された共結晶形成体からなる多構成要素固相組成物を調製することを含む。同定された共結晶形成体は、例えば、異なるAPI、GRAS化合物、食品添加物、毒性の低い有機物、または金属有機錯体であることができる。溶液からの結晶化、溶融物の冷却、昇華および摩砕のような様々な方法を、多構成要素固相組成物の調製に利用することができる。加えて、本発明の方法は更に、下記の段階のいずれかまたは両方を含むことができる:新規多構成要素固相組成物の構造を決定する段階、および新規多構成要素固相組成物の物理および/または化学特性を分析する段階。
【0023】
本発明は更に、本明細書において確定された方法を用い、同定または生成された新規固相に関する。本発明は更に、いずれかの化学量比である、2種以上の独立した分子実体間の分子間相互作用により維持される固形物質(相)を含む、多構成要素相組成物に関し、ここで独立した分子実体の少なくとも1種は、薬剤実体である。本発明の多構成要素相組成物は、例えば、個別の超分子実体または高分子構造であることができる。本発明の多構成要素相組成物は、融点、溶解度、溶解速度、安定性、および/またはバイオアベイラビリティのような特性を有することができ、これは、それらが基礎とした薬剤化合物、または化合物類とは異なる。
【0024】
例として図1に示したように、イブプロフェンの外側官能基は、イソプロピル基およびカルボン酸である。
【0025】
本発明の方法を使用し、この相互作用は、図2に示されるように、芳香族アミンとの共結晶化により破壊することができることが決定されている。より詳細に述べると、ジアミンを使用することにより、図3に示されたように、イブプロフェンの2:1の多構成要素相が、更には本明細書に例示された他の相が調製される。従って、本発明の方法を使用し、相補的化学官能基を同定し、ならびに各々、図13A-13Cに示されているように、イブプロフェン、フルルビプロフェンおよびアスピリンの構造と非常に異なる構造を伴うそれらの薬剤化合物を含む、様々な医薬品に関する多構成要素相組成物を作成することができる。
【0026】
本明細書において使用される用語「多構成要素相」は、いずれかの化学量比の、少なくとも2種の独立した分子実体の間で分子間相互作用により維持されるいずれかの固形物質(相)であり、ここで少なくとも1種の独立した分子実体は薬剤実体であるものを意味する。分子間相互作用の例は、以下の1種または複数を含むが、これらに限定されるものではない:水素結合(弱および/または強)、双極子相互作用(誘導性および/または非誘導性)、スタッキング相互作用、疎水性相互作用、ならびに他の分子間静電気的(inter-static)相互作用。例えば、独立した分子実体は各々、個別の超分子実体または高分子構造であることができる。好ましくは、1種または複数の独立した分子実体は、「GRAS」化合物、すなわち「FDAにより一般に安全と見なされる」化合物の分子を含む。GRAS化合物は、非薬剤実体であることがより好ましい。
【0027】
用語「薬剤実体」、「薬剤部分」、「薬剤成分」、「薬剤構成要素」、「薬剤分子」、および「有効薬剤成分(API)」ならびにそれらの文法上の変形は、本明細書において互換的に使用され、所定の病態に罹患しているヒトまたは動物に所定の濃度で投与された場合に、治療作用を有するいずれかの生物学的有効部分を意味する。従って本発明の多相固形物中の有効薬剤成分として有用な薬剤実体は、病態に罹患したまたはしていないヒトまたは動物に投与することができ、ならびにこの薬剤実体は、予防作用、緩和作用を有し、および/または治療的介入であることができる。本明細書において使用されるように、これらの薬剤実体は、それらの薬剤活性の全てまたは一部を維持している、所定の薬剤実体の薬剤として許容できる塩を含むことが意図されている。薬剤分子またはイオンは、生体分子に選択的に結合する分子認識部位を既に含み、および超分子自己集合体となる傾向があるので、これらはそのような結晶工学試験について固有の素因がある。有効薬剤成分において一般に認められ、および超分子シントンを形成できる基の例は、酸、アミド、脂肪族窒素基部、不飽和芳香族窒素基部(例えば、ピリジン、イミダゾール)、アミン、アルコール、ハロゲン、スルホン、ニトロ基、S-複素環、N-複素環(飽和または不飽和)、およびO-複素環を含むが、これらに限定されるものではない。他の例は、エーテル、チオエーテル、チオール、エステル、チオエステル、チオケトン、エポキシド、アセトネート、ニトリル、オキシム、および有機ハロゲンを含むが、これらに限定されるものではない。他の例は、エーテル、チオエーテル、チオール、エステル、チオエステル、チオケトン、エポキシド、アセトネート、ニトリル、オキシム、および有機ハロゲンを含む。これらの基の一部は、例えば酸およびアミドのように、類似したまたは異なる分子内の同一基と、超分子シントンを形成することができ、およびホモシントンと称される。他の基は、例えば、酸/アミド;ピリジン/アミド;アルコール/アミンのように、異なる基と超分子シントンを形成することができ、ヘテロシントンと称される。ヘテロシントンは、多構成要素結晶の形成に特に適しているのに対し、ホモシントンは時々多構成要素結晶を形成することができる。
【0028】
本明細書において使用される用語「超分子シントン」は、多構成要素非-共有的相互作用の構成要素の和を意味し、ここで非-共有的相互作用は、個別の分子実体または高分子構造の形成に寄与し、ここで各構成要素は化学官能基である。超分子シントンは、例えば、二量体、三量体、またはn-量体であることができる。
【0029】
多構成要素相組成物は、薬剤として有用な組成物の調製のための公知の方法に従い製剤することができる。このような薬剤組成物は、例えば経口、非経口、鼻腔内、外用、経皮などの、投与のための様々な形状に適合させることができる。本発明の多構成要素相固形物は、例えば、注射剤、丸剤、または吸入剤として、溶液または非晶質化合物へと生成することができる。任意に薬剤組成物は、薬剤として許容できる担体または希釈剤を含有することができる。製剤は、当業者に周知でありおよび容易に入手できる多くの情報源に説明されている。例えば、「Remington's Pharmaceutical Science」(Martin EW、[1995] Easton Pennsylvania、Mack Publishing社、第19版)は、本発明に組合せて使用することができる製剤を説明している。投与に適した製剤は、例えば、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、およびその製剤を意図されたレシピエントの血液と等張とする溶質を含有することができる、水性滅菌注射液;ならびに、懸濁化剤および増粘剤を含有することができる、水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。製剤は、例えば密閉したアンプルおよびバイアルのような、単位剤形または反復剤形用容器中に存在することができ、ならびに使用前に、例えば注射用水などの、滅菌液体担体の状態のみが必要とされる、凍らせ乾燥させた(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。用時調合の注射液および懸濁液を、例えば本発明の多構成要素相組成物の滅菌散剤、顆粒剤または錠剤から調製してもよい。本発明の製剤は、特に先に言及した成分に加え、問題の製剤の型に関して当該技術分野において慣習的な他の物質を含有することができることは理解されなければならない。
【0030】
超構造に関して、薬剤分子の他の分子との相互作用により形成された化合物の一般型は、以下の3種を含む:(1)超構造が、2種以上の分子により形成され、その両方が網状構造の不可欠な構成要素でありおよび相補的である、多構成要素化合物;(2)化合物の超構造が、1種または複数の分子の自己集合により形成され、およびゲスト分子が、超構造内に閉じ込められる、包接封入化合物;ならびに、(3)超構造が、事実上、オープンフレームワーク構造である、多孔性封入化合物。
【0031】
本発明は、多構成要素組成物に関し、および本明細書において、結晶工学および超分子シントンの概念が、理論的デザインを基に、広範な新規薬剤物質の調製に適用され得ることが明らかにされている。従って本発明の多構成要素化合物は、それらが所望の組成、構造および特性を有するような様式で形成することができる。より詳細に述べると、特に薬物分子が相補的分子と多構成要素相を形成する場合に形成され得る組成物の多様性、超構造および溶解度の、問題の薬剤組成物および加工処理に関連している問題点が、本発明により対処されている。下記の薬物に関連している多構成要素相が、本明細書において例証されている:アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン(および関連化合物)、フェニトインおよびカルバマゼピンならびに適当な分子添加剤。これらの新規相は、結晶工学の概念を詳述している「モデル多構成要素相」ならびに薬剤を「GRAS」化合物、すなわち、「FDAにより一般に安全と見なされる」化合物、および/または食品添加物と共に組込んでいる多構成要素相の両方を含む。
【0032】
有機固形物および薬剤固形物との関連において、本発明は、結晶工学が、予め定められた組成、および場合によっては予め決定されたトポロジーを有する広範な新規多構成要素相の超分子の合成パラダイム(Chang, Y.L.ら、J. Am. Chem. Soc.、115:5991-6000(1993))を提供することを明らかにすることにより、これらの問題点に対処している。このような分子または超分子の基本単位(module)から階層的構造を構築する能力は、固相の構造および機能の正確な制御を促進する。これらの多構成要素相は、単構成要素相および従来の多構成要素相(固形物分散体)に勝る、下記の利点を有する:高い熱力学的安定性(これにより、固相転移に関連した問題が低下する)、修飾されたバイオアベイラビリティ(細かく調整可能な溶解度および送達)、ならびに増強された加工可能性(結晶形態、力学的特性、吸湿性)。
【0033】
本発明は、科学的観点から下記の意味を有する:(a)プロトコールは、現時点で、超分子シントンにより維持される少なくとも2種の構成要素を含む薬剤相の新規世代の合理的デザインに利用可能である;(b)構造、結晶エネルギー、溶解度、溶解定数、および安定性の特徴決定による、新規薬剤相の構造および機能の相関が、現在可能である;ならびに、(c)ヒトおよび動物における病態を治療するために新規相の新たな範囲が利用可能である。
【0034】
本発明は、少なくとも3種の方式、すなわち、(1)新規の多構成要素結晶相のデザインのための、合理的超分子戦略を作成することにより;(2)この戦略を薬剤相へ拡大することにより;ならびに、(3)薬剤化合物の送達特性および安定性を制御するためにこの戦略を使用することにより、最新技術を拡大している。
【0035】
以下の頁は、単結晶X線結晶学および構造-感応性解析技術:FT-IR、XRPD、DSC、TGAを用い特徴付けられている、多構成要素結晶相の実施例を説明している。これらは全て、他の相補的官能基と超分子シントンを形成する固有の素因のある薬剤分子を基にしているので、これらは、本発明の典型例を表わしている。これらは、それらの溶解度/バイオアベイラビリティにおける周知の制限のために、研究のために選択された。各実施例において、純相の性質が考察され、およびこれは超分子ホモシントン(自己相補的官能基)により維持されている。調製された多構成要素相は、超分子ヘテロシントンを形成する素因のある第二の分子構成要素の賢明な選択により、ホモシントンを永続的かつ合理的に破壊する能力を確認している。これらの新規固相は、それらの純相とは異なる溶解度プロファイルを有することが、予想される。GRASと称されるものの例は、「FDAにより一般に安全と見なされる」第二の構成要素を使用するものである。
【実施例】
【0036】
実施例1−アセトアミノフェンの多構成要素結晶:アセトアミノフェン/4,4'-ビピリジン/水(化学量1:1:1)
アセトアミノフェン50mg(0.3307mmol)および4,4'-ビピリジン52mg(0.3329mmol)を、温水に溶解し、静置した。緩徐な蒸発は、図4Bに示されたような、1:1:1アセトアミノフェン/4,4'-ビピリジン/水共結晶の無色の針状物を生じた。
【0037】
結晶データ:
344パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0751、wR2=0.2082、ならびに全ての4481データについて、R1=0.1119、wR2=0.2377。
【0038】
結晶パッキング:これらの共結晶は、水分子が、網状構造のビピリジン部分とアセトアミノフェン間の水素結合橋として作用する二層シートを含む。ビピリジンゲストは、2個の網状構造ビピリジン間のπ-πスタッキング相互作用により維持される。これらの層は、アセトアミノフェン部分のフェニル基間のπ-π相互作用によりスタッキングしている。
【0039】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、57.77℃(吸熱);融点=58〜60℃(MEL-TEMP);(アセトアミノフェン融点=169℃、4,4'-ビピリジン融点=111〜114℃)。
【0040】
実施例2-フェニトインの多構成要素結晶:フェニトイン/ピリドン(化学量1:1)
フェニトイン28mg(0.1109mmol)および4-ヒドロキシピリドン11mg(0.1156mmol)を、アセトン2mLおよびエタノール1mLに、加熱および攪拌しながら溶解した。緩徐な蒸発は、図5Bに示されたような、1:1フェニトイン/ピリドン共結晶の無色の針状物を生じた。
【0041】
結晶データ:
247パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0560、wR2=0.1356、ならびに全ての4154データについて、R1=0.0816、wR2=0.1559。
【0042】
結晶パッキング:この共結晶は、四面体炭素に近接しているカルボニルとアミン間の隣接フェニトイン分子の水素結合により、ならびにピリドンカルボニル官能基とフェニトイン-フェニトイン相互作用には関与していないアミンの間の水素結合により、維持されている。ピリドンカルボニルは、隣接ピリドン分子とも水素結合し、一次元網状構造を形成する。
【0043】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、この共結晶に関する特徴的ピークの同定:3311cm-1に認められた2°アミン、1711cm-1に認められたカルボニル(ケトン)、1390cm-1に認められたオレフィン。
【0044】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、233.39℃(吸熱)および271.33℃(吸熱);融点=231〜233℃(MEL-TEMP);(フェニトイン融点=295℃、ピリドン融点=148℃)。
【0045】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度192.80℃で減量29.09%、開始温度238.27℃で減量48.72%、および開始温度260.17℃で減量18.38%、その後完全に分解。
【0046】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。XRPD:単結晶データに由来した模擬XRPDに類似したピークを示した。再結晶および固体状態の反応の全ての場合において、実験値(計算値):5.2(5.3);11.1(11.3);15.1(15.2);16.2(16.4);16.7(17.0);17.8(17.9);19.4(19.4);19.8(19.7);20.3(20.1);21.2(21.4);23.3(23.7);26.1(26.4);26.4(26.6);27.3(27.6);29.5(29.9)。
【0047】
実施例3-アスピリン(アセチルサリチル酸)の多構成要素結晶:アスピリン/4,4'-ビピリジン(化学量2:1)
アスピリン50mg(0.2775mmol)および4,4'-ビピリジン22mg(0.1388mmol)を、ヘキサン4mLに溶解した。この溶液に、エーテル8mLを添加し、1時間静置し、図6Dに示されたような、2:1アスピリン/4,4'-ビピリジン共結晶の無色の針状物を得た。あるいは、アスピリン/4,4'-ビピリジン(化学量2:1)を、これらの固形成分を、乳棒および乳鉢中で摩砕することにより作成することができる。
【0048】
結晶データ:
202パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0419、wR2=0.1358、ならびに全ての2433データについて、R1=0.0541、wR2=0.1482。
【0049】
結晶パッキング:この共結晶は、Pbcn空間群において結晶化するカルボン酸-ピリジンヘテロ二量体を含む。この構造は、溝(channel)内に無秩序な溶媒を含む、封入化合物である。このヘテロ二量体で支配的な水素結合の相互作用に加え、ビピリジンおよびアスピリンのフェニル基のπ-πスタッキングならびに疎水性相互作用が、全体のパッキング相互作用に寄与している。
【0050】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、1679cm-1の特徴的(-COOH)ピークは、1694cm-1へ上方にシフトし強度が低下したのに対し、ラクトンピークは、1750cm-1から1744cm-1へとわずかに下方シフトした。
【0051】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、95.14°(吸熱);融点=91〜96℃(MEL-TEMP);(アスピリン融点=1345℃、4,4'-ビピリジン融点=111〜114℃)。
【0052】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度22.62℃で減量9%、開始温度102.97℃で減量49.06%、その後開始温度209.37℃で完全に分解。
【0053】
実施例4-イブプロフェンの多構成要素結晶:イブプロフェン/4,4'-ビピリジン(化学量2:1)
ラセミ体イブプロフェン50mg(0.242mmol)および4,4'-ビピリジン18mg(0.0960mmol)を、アセトン5mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図7Dに示されたような、2:1イブプロフェン/4,4'-ビピリジン共結晶の無色の針状物を生じた。
【0054】
結晶データ:
399パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0964、wR2=0.2510、ならびに全ての3362データについて、R1=0.1775、wR2=0.2987。
【0055】
結晶パッキング:この共結晶は、2個の水素結合したカルボン酸ピリジン超分子シントンにより維持され、空間群P-1内にパッキングしているヘリボーン状モチーフ内に配置された、イブプロフェン/ビピリジンヘテロ二量体を含む。このヘテロ二量体は、拡大されたホモ二量体型であり、パッキングし、ビピリジンおよびイブプロフェンのフェニル基のπ-πスタッキングならびにイブプロフェン尾部からの疎水性相互作用により維持された二次元網状構造を形成している。
【0056】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。分析は、2899cm-1での芳香族C-H伸縮振動;1886cm-1でのN-H変角振動およびはさみ振動;1679cm-1のC=O伸縮振動;4,4'-ビピリジンおよびイブプロフェンの両方について808cm-1および628cm-1でのC-H面外変角振動を観察した。
【0057】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、64.85℃(吸熱)および118.79℃(吸熱);融点=113〜120℃(MEL-TEMP);(イブプロフェン融点=75〜77℃、4,4'-ビピリジン融点=111〜114℃)。
【0058】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、室温から100.02℃の間で減量13.28%、直後に完全に分解。
【0059】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。単結晶データに由来したXRPD、実験値(計算値):3.4(3.6);6.9(7.2);10.4(10.8);17.3(17.5);19.1(19.7)。
【0060】
実施例5-フルルビプロフェンの多構成要素結晶:フルルビプロフェン/4,4'-ビピリジン(化学量2:1)
フルルビプロフェン50mg(0.2046mmol)および4,4'-ビピリジン15mg(0.0960mmol)を、アセトン3mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図8Dに示されたような、2:1フルルビプロフェン/4,4'-ビピリジン共結晶の無色の針状物を生じた。
【0061】
結晶データ:
226パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0908、wR2=0.2065、ならびに全ての1634データについて、R1=0.1084、wR2=0.2209。
【0062】
結晶パッキング:この共結晶は、2個の水素結合したカルボン酸ピリジン超分子シントンにより維持され、空間群P21/n内にパッキングしているヘリボーン状モチーフに配置された、フルルビプロフェン/ビピリジンヘテロ二量体を含む。このヘテロ二量体は、拡大されたホモ二量体型であり、パッキングし、ビピリジンおよびフルルビプロフェンのフェニル基のπ-πスタッキングならびに疎水性相互作用により維持された二次元網状構造を形成している。
【0063】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、3057cm-1および2981cm-1での芳香族C-H伸縮振動;1886cm-1でのN-H変角振動およびはさみ振動;1690cm-1でのC=O伸縮振動;1418cm-1でのC=CおよびC=N環伸縮振動。
【0064】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、162.47℃(吸熱);融点=155〜160℃(MEL-TEMP);(フルルビプロフェン融点=110〜111℃、4,4'-ビピリジン融点=111〜114℃)。
【0065】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度31.13℃での減量30.93%、開始温度168.74℃での減量46.26%、その後完全に分解。
【0066】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。単結晶データに由来したXRPD、実験値(計算値):16.8(16.8);17.1(17.5);18.1(18.4);19.0(19.0);20.0(20.4);21.3(21.7);22.7(23.0);25.0(25.6);26.0(26.1);26.0(26.6);26.1(27.5);28.2(28.7);29.1(29.7)。
【0067】
実施例6-フルルビプロフェンの多構成要素結晶:フルルビプロフェン/trans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン(化学量2:1)
フルルビプロフェン25mg(0.1023mmol)およびtrans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン10mg(0.0548mmol)を、アセトン3mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図9Bに示されたような、2:1フルルビプロフェン/1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン共結晶を生じた。
【0068】
結晶データ:
238パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0686、wR2=0.1395、ならびに全ての2383データについて、R1=0.1403、wR2=0.1709。
【0069】
結晶パッキング:この共結晶は、2個の水素結合したカルボン酸-ピリジン超分子シントンにより維持され、空間群P21/n内にパッキングしているヘリボーン状モチーフ内に配置された、フルルビプロフェン/1,2-ビス(4-ピリジル)エチレンヘテロ二量体を含む。更に1,2-ビス(4-ピリジル)エチレンからのヘテロ二量体は、実施例5に対しホモ二量体を拡大し、パッキングし、ビピリジンおよびフルルビプロフェンのフェニル基のπ-πスタッキングならびに疎水性相互作用により維持された二次元網状構造を形成している。
【0070】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、2927cm-1および2850cm-1での芳香族C-H伸縮振動;1875cm-1でのN-H変角振動およびはさみ振動;1707cm-1でのC=O伸縮振動;1483cm-1でのC=CおよびC=N環伸縮振動。
【0071】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、100.01℃、125.59℃および163.54℃(吸熱);融点=153〜158℃(MEL-TEMP);(フルルビプロフェン融点=110〜111℃、trans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン融点=150〜153℃)。
【0072】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度133.18℃での減量91.79%、その後完全に分解。
【0073】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。単結晶データに由来したXRPD、実験値(計算値):3.6(3.7);17.3(17.7);18.1(18.6);18.4(18.6);19.1(19.3);22.3(22.5);23.8(23.9);25.9(26.4);28.1(28.5)。
【0074】
実施例7-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/p-フタルアルデヒド(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)およびp-フタルアルデヒド7mg(0.0521mmol)を、メタノールおよそ3mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図10Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/p-フタルアルデヒド共結晶の無色の針状物を生じた。
【0075】
結晶データ:
268パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0332、wR2=0.0801、ならびに全ての1559データについて、R1=0.0403、wR2=0.0831。
【0076】
結晶パッキング:これらの共結晶は、空間群C2/cにおいて結晶化する水素結合したカルボキシアミドホモ二量体を含む。ホモ二量体の1°アミンは、p-フタルアルデヒドのカルボニルに分岐(bifrucate)され、隣接ホモ二量体と鎖を形成している。これらの鎖は、CBZのフェニル環の間のπ-π相互作用により維持された、縮れたテープ部分にパッキングされている。
【0077】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。1°アミンの非対称および対称の伸縮振動は、3418cm-1へ下方シフトし;脂肪族アルデヒドおよび1°アミドのC=O伸縮振動は、1690cm-1へ上方シフトした;1669cm-1でのN-H平面内変角振動;2861cm-1でのC-Hアルデヒド伸縮振動および1391cm-1でのH-C=O変角振動。
【0078】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、128.46℃(吸熱)、融点=121〜124℃(MEL-TEMP)、(カルバマゼピン融点=190.2℃、p-フタルアルデヒド融点=116℃)。
【0079】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度30.33℃での減量17.66%、その後開始温度100.14℃での減量17.57%、それに続く完全な分解。
【0080】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。単結晶データに由来したXRPD、実験値(計算値):8.5(8.7);10.6(10.8);11.9(12.1);14.4(14.7);15.1(15.2);18.0(18.1);18.5(18.2);19.8(18.7);23.7(24.0);24.2(24.2);26.4(26.7);27.6(27.9);27.8(28.2);28.7(29.1);29.3(29.6);29.4(29.8)。
【0081】
実施例8-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/ニコチンアミド(GRAS)(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)およびニコチンアミド12mg(0.0982mmol)を、4mLのDMSO、メタノールまたはエタノールに溶解した。溶媒の緩徐な蒸発は、図11に示されたような、1:1カルバマゼピン/ニコチンアミド共結晶の無色の針状物を生じた。
【0082】
別法を用い、カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)およびニコチンアミド12mg(0.0982mmol)を、乳棒および乳鉢で一緒に摩砕した。この固形物は、1:1カルバマゼピン/ニコチンアミド微結晶(XPD)であることが決定された。
【0083】
結晶データ:
248パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0732、wR2=0.1268、ならびに全ての4041データについて、R1=0.1161、wR2=0.1430。
【0084】
結晶パッキング:これらの共結晶は、水素結合したカルボキシアミドホモ二量体を含む。1°アミンは、二量体の各側のニコチンアミドのカルボニルに分岐されている。各ニコチンアミドの1°アミンは、相接している二量体のカルボニルに水素結合されている。これらの二量体は、CBZのフェニル基からのπ-π相互作用により鎖を形成している。
【0085】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、非対称および対称伸縮振動は、1°アミンに対処し3443cm-1および3388cm-1へ下方シフトした;1690cm-1での1°アミドC=O伸縮振動;1614cm-1でのN-H平面内変角振動;C=C伸縮振動は、1579cm-1へと下方シフトし;芳香族Hは、800cm-1から500cm-1に存在した。
【0086】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、74.49℃(吸熱)および59.05℃(吸熱)、融点=153〜158℃(MEL-TEMP)、(カルバマゼピン融点=190.2℃、ニコチンアミド融点=150〜160℃)。
【0087】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度205.43℃で減量57.94%、その後完全な分解。
【0088】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。XRPD:単結晶データに由来した模擬XRPDに類似したピークを示した。XRPD分析、実験値(計算値):6.5(6.7);8.8(9.0);10.1(10.3);13.2(13.5);15.6(15.8);17.7(17.9);17.8(18.1);18.3(18.6);19.8(20.1);20.4(20.7);21.6(22.);22.6(22.8);22.9(23.2);26.4(26.7);26.7(27.0);28.0(28.4)。
【0089】
実施例9-カルバマゼピン多構成要素結晶:カルバマゼピン/サッカリン(GRAS)(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)およびサッカリン19mg(0.1037mmol)を、エタノールおよそ4mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図12に示されたような、1:1カルバマゼピン/サッカリン共結晶を無色の針状物として生じた。溶解度測定は、このカルバマゼピン多構成要素結晶が、これまでわかっているカルバマゼピン型に勝る改善された溶解度を有することを示している(例えば、増大した分子溶解度およびより長期の水溶液中の溶解性)。
【0090】
結晶データ:
283パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0458、wR2=0.1142、ならびに全ての4372データについて、R1=0.0562、wR2=0.1204。
【0091】
結晶パッキング:これらの共結晶は、水素結合したカルボキシアミドホモ二量体を含む。サッカリンの2°アミンは、各側のCBZのカルボニルに水素結合し、四量体を形成している。この結晶は、CBZのフェニル基およびサッカリンのフェニル基の間のπ-π相互作用により、空間群P-1を有する。
【0092】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、非対称および対称伸縮振動は、1°アミンに対処し、3495cm-1に上方シフトした;C=O脂肪族伸縮振動は、1726cm-1へ上方シフトした;1649cm-1でのN-H平面内変角振動;C=C伸縮振動は、1561cm-1へ下方シフトした;1330cm-1での(O=S=O)スルホニルピーク;1175cm-1でのC-N脂肪族伸縮振動。
【0093】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、75.31℃(吸熱)および177.32℃(吸熱)、融点=148〜155℃(MEL-TEMP)(カルバマゼピン融点=190.2℃、サッカリン融点=228.8℃)。
【0094】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度67.03℃で減量3.342%、および開始温度118.71℃で減量55.09%、その後完全に分解。
【0095】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。単結晶データに由来したXRPD、実験値(計算値):6.9(7.0);12.2(12.2);13.6(13.8);14.0(14.1);14.1(14.4);15,3(15.6);15.9(15.9);18.1(18.2);18.7(18.8);20.2(20.3);21.3(21.5);23.7(23.9);26.3(26.4);28.3(28.3)。
【0096】
実施例10-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/2,6-ピリジンジカルボン酸(化学量2:3)
カルバマゼピン36mg(0.1524mmol)および2,6-ピリジンジカルボン酸26mg(0.1556mmol)を、エタノールおよそ2mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図14Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/2,6-ピリジンジカルボン酸共結晶を透明な針状物として生じた。
【0097】
結晶データ:
271パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0425、wR2=0.0944。
【0098】
結晶パッキング:CBZ 1°アミン上の各水素は、異なる2,6-ピリジンジカルボン酸部分のカルボニル基に水素結合している。CBZカルボキシアミドのカルボニルは、1個の2,6-ピリジンジカルボン酸部分の2個の水酸化物基に水素結合している。
【0099】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、3439cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);1734cm-1(C=0);1649cm-1(C=C)。
【0100】
融点:214〜216℃(MEL-TEMP)、(カルバマゼピン融点=191〜192℃、2,6-ピリジンジカルボン酸融点=248〜250℃)。
【0101】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度215℃で減量69%および開始温度392℃で減量17%、その後完全な分解。
【0102】
実施例11-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/5-ニトロイソフタル酸(化学量1:1)
カルバマゼピン40mg(0.1693mmol)および5-ニトロイソフタル酸30mg(0.1421mmol)を、メタノールまたはエタノールおよそ3mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図15Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/5-ニトロイソフタル酸共結晶を黄色の針状物として生じた。
【0103】
結晶データ:
311パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0725、wR2=0.1801、ならびに全ての4459データについて、R1=0.1441、wR2=0.1204。
【0104】
結晶パッキング:これらの共結晶は、2個の5-ニトロイソフタル酸部分の間の水素結合したカルボン酸ホモ二量体、ならびにカルバマゼピンと5-ニトロイソフタル酸部分の間の水素結合されたカルボキシ-アミドヘテロ二量体により維持された。カルバマゼピン部分からの追加のN-H供与体へ水素結合した溶媒が存在する。
【0105】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、3470cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);3178cm-1(C-H伸縮伸長、アルケン);1688cm-1(C=0);1602cm-1(C=C)。
【0106】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、190.51℃(吸熱)、融点=NA(197〜200℃で分解)(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、5-ニトロイソフタル酸融点=260〜261℃)。
【0107】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度202℃で減量32.02%、開始温度224℃で減量12.12%、および開始温度285℃で減量17.94%、その後完全な分解。
【0108】
X線粉末回折:(Rigalcu Miniflex 回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。XRPD:単結晶データに由来した模擬XRPDに類似したピークを示した。XRPD分析、実験値(計算値):10.138(10.283), 15.291(15.607), 17.438(17.791), 21.166(21.685), 31.407(31.738), 32.650(32.729)。
【0109】
実施例12-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/酢酸(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)を、酢酸およそ2mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図16Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/酢酸共結晶を、黄色の針状物として生じた。
【0110】
結晶データ:
203パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0492、wR2=0.1335。
【0111】
結晶パッキング:この共結晶は、水素結合したカルボキシアミド-カルボン酸ヘテロ二量体により維持されている。各CBZからの第二の1°アミン水素は、2個のヘテロ二量体に、並んで連結し、四量体を形成している。
【0112】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、3462cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);1699cm-1(C=O);1629cm-1(C=C、CBZ);1419cm-1(COOH、酢酸)。
【0113】
融点:187℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、酢酸融点=16.6℃)。
【0114】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度104℃で減量20.62%、および開始温度200℃で減量77.05%、その後完全に分解。
【0115】
実施例13-カルバマゼピンの多構成要素:カルバマゼピン/1,3,5,7-アダマンタンテトラカルボン酸(化学量1:1)
カルバマゼピン15mg(0.1524mmol)および1,3,5,7-アダマンタンテトラカルボン酸20mg(0.1556mmol)を、メタノールおよそ1mLまたはエタノール1mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図17Bに示されたような、2:1カルバマゼピン/1,3,5,7-アダマンタンテトラカルボン酸共結晶を、透明な平面として生じた。
【0116】
結晶データ:
263パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0433、wR2=0.0913。
【0117】
結晶パッキング:これらの共結晶は、PtSトポロジーに類似した四角い平面により連結された、4個の四面体の単独の3D網状構造を形成する。これらの結晶は、水素結合により維持されている。
【0118】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、3431cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);3123cm-1(C-H伸縮振動、アルケン);1723cm-1(C=0);1649cm-1(C=C)。
【0119】
融点:(MEL-TEMP)。258〜260℃(カルバマゼピン融点=191〜192℃、アダマンタンテトラカルボン酸融点≧390℃)。
【0120】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度189℃で減量9%、開始温度251℃で減量52%、および開始温度374℃で減量31%、その後完全に分解。
【0121】
実施例14-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/ベンゾキノン(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)およびベンゾキノン11mg(0.1018mmol)を、メタノールまたはTHFの2mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図18Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/ベンゾキノン共結晶の黄色の結晶の平均収量を生じた。
【0122】
結晶データ:
199パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0545、wR2=0.1358、ならびに全ての3223データについて、R1=0.0659、wR2=0.1427。
【0123】
結晶パッキング:これらの共結晶は、水素結合されたカルボキシアミドホモ二量体を含む。CBZ上の各1°アミンは、ベンゾキノン部分のカルボニル基へ分岐している。これらの二量体は、無限鎖を形成している。
【0124】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3420cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);2750cm-1(アルデヒド伸縮振動);1672cm-1(C=O);1637cm-1(C=C、CBZ)。
【0125】
融点:170℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、ベンゾキノン融点=115.7℃)。
【0126】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度168℃で減量20.62%、開始温度223℃で減量78%、その後完全に分解。
【0127】
実施例15-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/酪酸(化学量1:1)
カルバマゼピン10mg(0.0423mmol)は、酪酸およそ1mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図19Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/酪酸共結晶の黄色/褐色結晶の平均収量を生じた。
【0128】
結晶データ:
217パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0499、wR2=0.1137、ならびに全ての3686データについて、R1=0.0678、wR2=0.1213。
【0129】
結晶パッキング:これらの共結晶は、カルバマゼピン部分と酪酸部分の間の水素結合したカルボキシアミド-カルボン酸ヘテロ二量体により維持される。各CBZ由来の第二の1°アミン水素は、並んで2個のヘテロ二量体に連結し、四量体を形成している。
【0130】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3486cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);3307cm-1(C-H伸縮振動、アルケン);1684cm-1(C=O);1540cm-1(C=C)。
【0131】
融点:63〜64℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、酪酸融点=-94℃)。
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度54℃で減量16%、開始温度134℃で減量16%、開始温度174℃で減量49%、その後完全に分解。
【0132】
実施例16-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/DMSO(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)を、DMSOおよそ1.5mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図20Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/DMSO共結晶の無色の平板を生じた。
【0133】
結晶データ:
209パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0929、wR2=0.3043。
【0134】
結晶パッキング:これらの共結晶は、水素結合したカルボキシアミドホモシントンにより維持されている。1°アミンは、DMSOのスルホキシドへ水素結合されている。結晶は、CBZの三環式アゼピン環システム基からのπ-π相互作用により安定化される。
【0135】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3369cm-1 (N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);1665cm-1 (C=O、伸縮振動);1481cm-1(C=C)。
【0136】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)。100℃、193℃(吸熱)。融点=189℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、DMSO融点=18.45℃)。
【0137】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度102℃で減量26%、開始温度212℃で減量64%、その後完全に分解。
【0138】
実施例17-カルバマゼピンの多構成要素:カルバマゼピン/ホルムアミド(化学量1:1)
カルバマゼピン10mg(0.0423mmol)を、およそ1mLホルムアミド/1mL THFまたは1mLホルムアミド/1mLメタノールの混合液に溶解した。この溶媒混合物の緩徐な蒸発は、図21Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/ホルムアミド共結晶の透明な針状物の平均収量を生じた。
【0139】
結晶データ:
379パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0766、wR2=0.1633。
【0140】
結晶パッキング:これらの共結晶は、2個のカルバマゼピン部分間の水素結合したカルボキシアミドホモ二量体および2個のホルムアミド部分の間のカルボン酸ホモ二量体により維持されている。無限鎖が、並んで連結したホモ二量体により形成され、CBZ分子の他のセット毎に鎖の側面で結合しているが、二量体を形成するようには結合していない。
【0141】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3392cm-1 (N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);2875cm-1 (C-H伸縮振動、アルケン);1653cm-1 (C=O);1590cm-1 (C=C)。
【0142】
融点:142〜144℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、ホルムアミド融点=-94℃)。
【0143】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度138℃で減量27%、開始温度195℃で減量67%、その後完全に分解。
【0144】
実施例18-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/ギ酸(化学量1:1)
カルバマゼピン40mg(0.1693mmol)を、ギ酸およそ2mLに溶解した。この溶媒混合物の緩徐な蒸発は、図22Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/ギ酸共結晶の乳白色の星状物を生じた。
【0145】
結晶データ:
190パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0533、wR2=0.1268。
【0146】
結晶パッキング:これらの共結晶は、中心対称の四量体中に配置された、水素結合したカルボン酸-アミンヘテロ二量体により維持された。
【0147】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3439cm-1 (1°アミン伸縮振動、CBZ);3026cm-1 (C-H伸縮振動、CBZ);1692cm-1 (1°アミド、C=O伸縮振動)。
【0148】
融点:187℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、ギ酸融点=8.4℃)。
【0149】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度123℃で減量14.60%、開始温度196℃で減量68.91%、その後完全に分解。
【0150】
実施例19-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/トリメシン酸(化学量1:1)
カルバマゼピン36mg(0.1524mmol)およびトリメシン酸31mg(0.1475mmol)を、およそメタノール2mLおよびジクロロメタン2mLの溶媒混合物に溶解した。この溶媒混合物の緩徐な蒸発は、図23Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/トリメシン酸共結晶の白色の星状物を生じた。
【0151】
結晶データ:
2777パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.1563、wR2=0.1887、ならびに全ての3601データについて、R1=0.1441、wR2=0.1204。
【0152】
結晶パッキング:これらの共結晶は、カルバマゼピンとトリメシン酸部分の間の水素結合したカルボン酸ホモ二量体ならびに積層されたはしご状に配置された2個のトリメシン酸部分の間の水素結合したカルボン酸-アミンヘテロ二量体により維持された。
【0153】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3486cm-1 (N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);1688cm-1 (C=O、1°アミド伸縮振動、CBZ);1602cm-1 (C=C、CBZ)。
【0154】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)。273℃(吸熱)。融点=NA、278℃で分解(MEL-EMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、トリメシル酸融点=380℃)。
【0155】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度253℃で減量62.83%、開始温度278℃で減量30.20%、その後完全に分解。
【0156】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。XRPD分析、実験値:10.736、12.087、16.857、24.857、27.857。
【0157】
本明細書において言及または引用された全ての特許、特許出願、先行する出願、および刊行物は、本明細書の明白な内容と矛盾しない程度に、全ての図面および表を含むそれら全体が参照として組入れられている。
【0158】
本明細書に説明された実施例および態様は、単に例証を目的としており、それらの様々な修飾および変更が当業者に示され、ならびに本出願の精神および範囲内に含まれることは、理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年3月1日に出願された、米国特許仮出願第60/360,768号の恩典を主張するものであり、従ってあらゆる図、表、または図面を含む、その全体が本明細書に参照として組入れられている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
過去10年間で、分子および超分子集合体の理解、およびそれを操作する能力において途方もなく進歩した(Moulton, B.ら、Chem. Rev.、101:1629-1658(2001):非特許文献1)。新世代の機能性物質および分子のデザインおよび合成に関係する新たなパラダイムが存在する。このような進歩は、環境科学から分子生物学、薬学、材料科学までの、多くの分子の科学の局面における分子間相互作用、構造および協同性の基本的重要さの結果である。従って現在、特に非共有結合およびナノ技術に関連した領域における分子レベルでの物質の制御および操作に関する期待は、実に桁外れなものである。しかし、結晶構造決定は、1920年代から科学者により使用されてきた道具であるにもかかわらず、結晶構造予測には未だ対処されていない大きい目標がある(Ball, P.、Nature、381:648-650(1996):非特許文献2;Gavezzotti, A.、Acc. Chem. Res.、27:309-314(1994):非特許文献3)。更に、典型的には多形または溶媒和物の形での、所定の分子化合物の1種よりも多い結晶形の存在は、問題点と好機の両方を示している(Desiraju, G.R、Science、278:404-405(1997):非特許文献4;Bernstein, J.ら、Angew. Chem., Int. Ed Engl.、38:3441-3461(1999):非特許文献5)。これは、医薬品産業に関して特にあてはまる。
【0003】
結晶工学(Schmidt, G.M.J.、Pure Appl. Chem.、27:647-678(1971):非特許文献6;Desiraju, G.R、Crystal Engineering: the Design of Organic Solids、1989、Elsevier社、アムステルダム:非特許文献7)は、結晶は事実上の自己集合体の例であり、すなわち、結晶は一連の分子認識事象または「超分子シントン(supermolecular synthons)」で構成されるという仮説を述べている(Desiraju, G.R、Angew. Chem., Int. Ed. Engl.、34:2311-2327(1995):非特許文献8)。これは、デザインに依拠しており、および物質の慎重な選択を可能にするので、結晶構造予測よりもより信頼できる目標も提示し、すなわち、予測可能な自己集合された超構造を形成する素因のある物質を、研究の対象とすることができる。更に結晶工学において使用される原型となる分子は、機能外(exofunctional)分子認識部位を含み、およびこれらはそれら自身と相補的であるか(自己集合)(Boucher, E.ら、J. Org. Chem.、60:1408-1412(1995):非特許文献9)または他の分子と相補的である(モジュラー自己集合)(Zaworotko, M.J.、Chem. Soc. Rev.、23:283-288(1994):非特許文献10;Sharma, C.V.KおよびM.J. Zaworotko、Chem. Commun.、2655-2656(1996):非特許文献11)ことができる。同時に、ほとんどの薬剤分子も、外側の分子認識部位を含み、ならびにこのことはこれらの結晶多形および溶媒和物を形成しやすくするにもかかわらず、これらを結晶工学の研究にとって魅力的な候補にもしている。
【0004】
結晶自己集合体のボトムアップ手法(Feynman, R.、Engineering and Science、22-36(1960):非特許文献12)から構築される能力は、分子レベルでの新規相のデザインの優れた制御を提供することができる。これは、現在の最先端技術である「所定の化合物についてわかっている形状の数は、その化合物の研究に費やした時間と経費に比例する」(McCrone, W.C.、Polymorphism in Physics and Chemistry of the Organic Solid-State、726頁、Foxら編、Interscience社、ニューヨーク、1965:非特許文献13)とは対照的である。この陳述は、固体状態の薬剤化合物の組成および構造の管理を断言する必要性に取り組む場合に直面する窮状と好機を要約している。より詳細に述べると、結晶固形物の物理特性は、分子またはイオンの内部配置に非常に左右され、分子構造の知識から、組成、結晶構造および形態を予測することを、最高水準の科学的挑戦としている。しかし、結晶構造予測および更には組成の予測は、未だ対処されていない大きい目標である。しかしながら結晶工学は、分子構成要素の新規送達システムの開発に関する機能特性(溶解度、溶解速度および安定性など)を付与する能力のために、それらを使用する可能性を魅力的なものにしている。
【0005】
望ましくない物理化学特性、生理的障壁、または毒性の問題は、薬物の治療的利益を制限することが多い。このことは、溶解不良で、吸収不良でおよび不安定な物質のための薬物送達システムの研究の動機づけとなっている。結晶自己集合は、薬物の溶解度、溶解速度、安定性およびバイオアベイラビリティを改善するための有望な送達モダリティを提示している。加えて、封入複合体または分子被包の手段により、薬物活性の増強を実現することができる。これらのシステムは、デザインおよび安定性の両観点から非晶質高分子送達システムに勝る様々な利点をもたらす。この状況において、所定の化合物の1種よりも多い結晶形、典型的には多形または溶媒和物の形での存在は、問題点と好機の両方を表わしている。更にいくつかの要因が、状況を複雑化している。例えば、米食品医薬品局(FDA)の厳密な純度要求基準は、薬物の特定の結晶相が選択されなければならないこと、およびその組成は確定されなければならないことを事実上意味している。これは典型的には、一貫したX線粉末回折(XPD)パターンが必要であることを意味している(FDA、連邦官報(FR)、62:62893-62894(1997):非特許文献14)。多くの薬物分子は、多相を形成する傾向があり、ならびに結晶のサイズおよび形態は所定の相で変動し得るので、その加工処理が、純度および加工処理の容易さの両方を生じることを保証する必要性には、問題が多い。加工処理が信頼できおよび再現性があることを保証しないことの商業的および公のイメージに関わるコストは、最近のABBOTT LABORATORIES社によるNORVIRの撤収および再製剤により明らかにされるように、一番良くとも非常に高いものである。
【0006】
XPDパターンに品質管理を頼ることは、便利ではあるが、多くの場合は不首尾であり、その理由はXPDは、単独の結晶のX線結晶解析のように絶対確実なものではない(例えば、類似パターンを、異なる相について得ることができ、組成は、明白には決定されない)からであり、ならびにXPDは、結晶パッキングを決定しないからである。結晶パッキングの知識は、特定の相の溶解度および組成の説明を補助し、ならびに他の価値ある情報を提供するので、重要である。しかし、医薬品の物質特性および多形の存在は一般に、薬物開発過程の最終段階で調査される。
【0007】
従って、基礎とされる薬剤分子の現存する固形の形状とは異なる、融点、溶解度、溶解速度、化学安定性、熱力学的安定性、および/またはバイオアベイラビリティのような特性を有する、広範な新規固相を提供することは利点であろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Moulton, B.ら、Chem. Rev.、101:1629-1658(2001)
【非特許文献2】Ball, P.、Nature、381:648-650(1996)
【非特許文献3】Gavezzotti, A.、Acc. Chem. Res.、27:309-314(1994)
【非特許文献4】Desiraju, G.R、Science、278:404-405(1997)
【非特許文献5】Bernstein, J.ら、Angew. Chem., Int. Ed Engl.、38:3441-3461(1999)
【非特許文献6】Schmidt, G.M.J.、Pure Appl. Chem.、27:647-678(1971)
【非特許文献7】Desiraju, G.R、Crystal Engineering: the Design of Organic Solids、1989、Elsevier社、アムステルダム
【非特許文献8】Desiraju, G.R、Angew. Chem., Int. Ed. Engl.、34:2311-2327(1995)
【非特許文献9】Boucher, E.ら、J. Org. Chem.、60:1408-1412(1995)
【非特許文献10】Zaworotko, M.J.、Chem. Soc. Rev.、23:283-288(1994)
【非特許文献11】Sharma, C.V.KおよびM.J. Zaworotko、Chem. Commun.、2655-2656(1996)
【非特許文献12】Feynman, R.、Engineering and Science、22-36(1960)
【非特許文献13】McCrone, W.C.、Polymorphism in Physics and Chemistry of the Organic Solid-State、726頁、Foxら編、Interscience社、ニューヨーク、1965
【非特許文献14】FDA、連邦官報(FR)、62:62893-62894(1997)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、1種を上回る分子構成要素を含む新規薬剤相のデザインへの結晶工学の概念の適用に関する。
【0010】
本発明は、少なくとも1種の有効薬剤成分を有する多構成要素固形物に関する。本発明の多構成要素固形物中において有効薬剤成分として利用することができる薬剤分子の例は、アスピリン、一連のプロフェン類の1種または複数の構成員(例えば、イブプロフェンおよびフルルビプロフェン)、カルバマゼピン、フェニトイン、およびアセトアミノフェンを含むが、これらに限定されるものではない。これらの薬剤成分および相補的分子(以後「共結晶形成体」と称する)を含有する多構成要素結晶のような、多構成要素固形物は、様々な技術により特徴付けられており、代わりの分子認識パターンの直接の結果として、親薬剤成分と同じまたは異なる物理および/または化学特性を示すことができる。これらの新規結晶集合体は、改善された薬物溶解度、溶解定数、安定性およびバイオアベイラビリティをもたらすことができる。
【0011】
本発明は、超分子化学の意味において相補的である、すなわちこれらは薬剤分子またはイオンと超分子シントンを形成するような、共結晶形成体を使用する、多構成要素相のような、新規薬剤固相のデザインへの結晶工学の概念の適用にも関連している。共結晶形成体は、溶媒分子、他の薬物分子、GRAS化合物、または認可された食品添加物であることができるが、これらに限定されるものではない。薬剤分子またはイオンは、そのような結晶工学試験に関して固有の素因があり、その理由はこれらは既に、生体分子に選択的に結合する分子認識部位を含み、およびこれらは超分子の自己集合体となる傾向があるからである。有効薬剤成分において通常認められ、および超分子シントンを形成できる基の例は、酸、アミド、脂肪族窒素基部、不飽和芳香族窒素基部(例えば、ピリジン、イミダゾール)、アミン、アルコール、ハロゲン、スルホン、ニトロ基、S-複素環、N-複素環(飽和または不飽和)、およびO-複素環を含むが、これらに限定されるものではない。その他の例は、エーテル、チオエーテル、チオール、エステル、チオエステル、チオケトン、エポキシド、アセトネート、ニトリル、オキシム、および有機ハロゲン化物を含む。これらの基の一部は、例えば、酸およびアミドなどのように、類似したまたは異なる分子内の同一基と超分子シントンを形成することができ、ならびにホモシントンと称される。他の基は、例えば、酸/アミド;ピリジン/アミド;アルコール/アミンなどのように、異なる基と超分子シントンを形成することができ、ならびに、ヘテロシントンと称される。ヘテロシントンは、多構成要素結晶の形成に特に適しているのに対し、ホモシントンは時々多構成要素結晶を形成することができる。
【0012】
ひとつの局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成するための、相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、有効薬剤成分(API)の構造を評価する段階;そのAPIが、それ自身と超分子シントンの形成が可能な化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが知られている複数の化学官能基から、更なる超分子シントンを形成してAPIにより形成された超分子シントンとすると考えられる少なくとも1種の化学官能基を同定する段階であり、ここで同定された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントンにより形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することができず、ならびにここで選択された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントンと非共有結合を形成できる段階;ならびに、APIと相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。
【0013】
別の局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成するための相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、APIの構造を評価する段階;APIが、それ自身と超分子シントンの形成が可能な化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが知られている複数の化学官能基から、APIと超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であり、ここで、同定された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することが可能であり、ならびにここで選択された化学官能基は、API上の相補的化学官能基と非共有結合を形成できる段階;ならびに、APIと相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。その結果この方法に従い、薬剤部分間の分子間相互作用の破壊を目的とするホモシントンの形成を行うことができる。
【0014】
更に別の局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成するための相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、APIの構造を評価する段階;APIが、異なる分子と超分子シントンの形成が可能な化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、APIと超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であり、ここで、選択された化学官能基は、API上の相補的化学官能基と非共有結合を形成できる段階;ならびに、有効薬剤成分と相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。
【0015】
先に指摘したように、本発明のある局面は、同一官能基(ホモシントン)間の非共有結合を破壊し、および異なるが依然相補的である官能基(ヘテロシントン)間に非共有結合を形成できる化学官能基の選択;相補的官能基を含む複数の分子実体(好ましくは、GRAS化合物または承認された食品添加物)の選択;所望の超分子シントンの形成を妨害せず、および標的相へ所望の物理特性を付与するような分子実体に関する追加の化学的特徴の同定;ならびに、任意に、結晶物質を産出する溶媒中の反応、および/または無溶媒反応を含む結晶化技術による、薬剤部分および相補的分子実体で構成される新規固相(例えば、多構成要素相または2構成要素相)の調製に関与し得る。任意に、これらの方法は更に、形成された新規固相の構造を決定する段階;および、新規固相の物理特性を分析する段階の連続段階の少なくとも1種を含むことができる。
【0016】
本発明は更に、本明細書において確定された方法を使用し、同定されるかまたは生成された新規固相に関する。本発明は更に、いずれかの化学量比で、2種以上の独立した分子実体間の分子間相互作用により維持される固形物質(相)を含む多構成要素相組成物に関し、ここで独立した分子実体の少なくとも1種は、薬剤実体である。多構成要素相組成物は、例えば、個別の超分子実体または高分子構造であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】イブプロフェンの化学構造を示す。外側官能基は、イソプロピル基(青色、左側円内)およびカルボン酸(赤色、右側円内)である。
【図2】左側に純粋なイブプロフェンのシントン、および右側にこのシントンを含む超分子実体の概略を示し、これはイブプロフェンの純相は、カルボン酸-カルボン酸相互作用により維持されることを表わしている。標準の化学色相関は、色が使用される全ての図面において、明らかである(例えば、赤色=酸素;白色=酸素;暗青色=窒素;明青色=フルオレン;黄色=硫黄)。
【図3】イブプロフェンのカルボン酸-カルボン酸相互作用が、芳香族アミンとの共結晶化により破壊される概略を示している。具体的には、ジアミンを使用することにより、2:1の多構成要素相が生成される。
【図4】図4Aおよび図Bは、各々、アセトアミノフェン1-D重合鎖、およびアセトアミノフェン/4,4'-ビピリジン/水結晶を示している。報告された形は、単環(P21/n)多形(Haisa, M.ら、Acta Crystallogr., Sect B、30:2510(1974))および斜方晶(Pbca)多形(Haisa, M.ら、Acta Crystallogr., Sect B、32:1283(1976))多形である。単環多形型は、全ての水素結合の供与体および受容体相互作用により、プリーツシートを形成する。斜方晶多形型は、全ての供与体および受容体相互作用により、1-D重合鎖を形成する。
【図5】図5A〜図5Bは、各々、純粋なフェニトインおよびフェニトイン/ピリドンの共結晶を示している。フェニトインは、ひとつの純粋な形がわかっている(Carmerman, A.ら、Acta Crystallogr., Sect B、27:2207(1971))。この結晶構造は、カルボニルおよび2°アミンの両方の間の水素結合により形成された二次元高分子網状構造を明らかにしている。
【図6A】図6A〜図6Dは、純粋なアスピリンおよびアスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図3Aおよび図3Bは、各々、純粋なアスピリンのシントンを含有する超分子実体および対応する結晶構造を示している。アセチルサリチル酸の純相(Chiari, G.ら、Acta Crystallogr., Sect B、37:1623(1981))は、中心対称のカルボン酸ホモ二量体を有し、ならびに空間群P21/cで結晶化し、疎水面を伴う2D重合シート内にパッキングしている。
【図6B】図6A〜図6Dは、純粋なアスピリンおよびアスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図3Aおよび図3Bは、各々、純粋なアスピリンのシントンを含有する超分子実体および対応する結晶構造を示している。アセチルサリチル酸の純相(Chiari, G.ら、Acta Crystallogr., Sect B、37:1623(1981))は、中心対称のカルボン酸ホモ二量体を有し、ならびに空間群P21/cで結晶化し、疎水面を伴う2D重合シート内にパッキングしている。
【図6C】図6A〜図6Dは、純粋なアスピリンおよびアスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図6Cおよび図6Dは、各々、アスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する共結晶を示している。アセチルサリチル酸の純相(Chiari, G.ら、Acta Crystallogr., Sect B、37:1623(1981))は、中心対称のカルボン酸ホモ二量体を有し、ならびに空間群P21/cで結晶化し、疎水面を伴う2D重合シート内にパッキングしている。
【図6D】図6A〜図6Dは、純粋なアスピリンおよびアスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図6Cおよび図6Dは、各々、アスピリン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する共結晶を示している。アセチルサリチル酸の純相(Chiari, G.ら、Acta Crystallogr., Sect B、37:1623(1981))は、中心対称のカルボン酸ホモ二量体を有し、ならびに空間群P21/cで結晶化し、疎水面を伴う2D重合シート内にパッキングしている。
【図7A】図7A〜図7Dは、純粋なイブプロフェン[2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸]およびイブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図7Aおよび図7Bは、各々、純粋なイブプロフェンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。報告されたイブプロフェン結晶構造は、ラセミ体(McConnell, J.F.、Cryst. Strucut. Commun.、3:73(1974))およびS(+)型(Freer, A.A.ら、Acta Crystallogr., Sect C(Cr. Str. Comm)、49:1378(1993))である。両者とも、水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含む。ラセミ二量体は、この二量体を横切る反転中心を有し、これは空間群P21/cで結晶化する。S(+)型は、不斉二量体を含み、これは空間群P21で結晶化する。両方の結晶は、π-πスタッキングおよび疎水性層内相互作用により維持された2-D重合シート内にパッキングする。
【図7B】図7A〜図7Dは、純粋なイブプロフェン[2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸]およびイブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図7Aおよび図7Bは、各々、純粋なイブプロフェンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。報告されたイブプロフェン結晶構造は、ラセミ体(McConnell, J.F.、Cryst. Strucut. Commun.、3:73(1974))およびS(+)型(Freer, A.A.ら、Acta Crystallogr., Sect C(Cr. Str. Comm)、49:1378(1993))である。両者とも、水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含む。ラセミ二量体は、この二量体を横切る反転中心を有し、これは空間群P21/cで結晶化する。S(+)型は、不斉二量体を含み、これは空間群P21で結晶化する。両方の結晶は、π-πスタッキングおよび疎水性層内相互作用により維持された2-D重合シート内にパッキングする。
【図7C】図7A〜図7Dは、純粋なイブプロフェン[2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸]およびイブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図7Cおよび図7Dは、各々、イブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンの超分子実体および対応する共結晶を示している。報告されたイブプロフェン結晶構造は、ラセミ体(McConnell, J.F.、Cryst. Strucut. Commun.、3:73(1974))およびS(+)型(Freer, A.A.ら、Acta Crystallogr., Sect C(Cr. Str. Comm)、49:1378(1993))である。両者とも、水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含む。ラセミ二量体は、この二量体を横切る反転中心を有し、これは空間群P21/cで結晶化する。S(+)型は、不斉二量体を含み、これは空間群P21で結晶化する。両方の結晶は、π-πスタッキングおよび疎水性層内相互作用により維持された2-D重合シート内にパッキングする。
【図7D】図7A〜図7Dは、純粋なイブプロフェン[2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸]およびイブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。図7Cおよび図7Dは、各々、イブプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンの超分子実体および対応する共結晶を示している。報告されたイブプロフェン結晶構造は、ラセミ体(McConnell, J.F.、Cryst. Strucut. Commun.、3:73(1974))およびS(+)型(Freer, A.A.ら、Acta Crystallogr., Sect C(Cr. Str. Comm)、49:1378(1993))である。両者とも、水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含む。ラセミ二量体は、この二量体を横切る反転中心を有し、これは空間群P21/cで結晶化する。S(+)型は、不斉二量体を含み、これは空間群P21で結晶化する。両方の結晶は、π-πスタッキングおよび疎水性層内相互作用により維持された2-D重合シート内にパッキングする。
【図8A】図8A〜図8Dは、純粋なフルルビプロフェン[2-(2-フルオロ-4-ビフェニル)プロピオン酸]およびフルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示す。図8Aおよび図8Bは、各々、純粋なフルルビプロフェンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。フルルビプロフェンは、ひとつの純粋な形が報告されており(Flippen, J.L.ら、Acta Crystallogr., Sect B、31:926(1975))、反転中心を伴う水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含み、空間群P-1で結晶化する。2-D重合シートは、フェニル環のπ-πおよび疎水性相互作用により形成される。
【図8B】図8A〜図8Dは、純粋なフルルビプロフェン[2-(2-フルオロ-4-ビフェニル)プロピオン酸]およびフルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示す。図8Aおよび図8Bは、各々、純粋なフルルビプロフェンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。フルルビプロフェンは、ひとつの純粋な形が報告されており(Flippen, J.L.ら、Acta Crystallogr., Sect B、31:926(1975))、反転中心を伴う水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含み、空間群P-1で結晶化する。2-D重合シートは、フェニル環のπ-πおよび疎水性相互作用により形成される。
【図8C】図8A〜図8Dは、純粋なフルルビプロフェン[2-(2-フルオロ-4-ビフェニル)プロピオン酸]およびフルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示す。図5Cおよび図5Dは、各々、フルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンの超分子シントンおよび対応する共結晶を示している。フルルビプロフェンは、ひとつの純粋な形が報告されており(Flippen, J.L.ら、Acta Crystallogr., Sect B、31:926(1975))、反転中心を伴う水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含み、空間群P-1で結晶化する。2-D重合シートは、フェニル環のπ-πおよび疎水性相互作用により形成される。
【図8D】図8A〜図8Dは、純粋なフルルビプロフェン[2-(2-フルオロ-4-ビフェニル)プロピオン酸]およびフルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示す。図5Cおよび図5Dは、各々、フルルビプロフェン/4,4'-ビピリジンの超分子シントンおよび対応する共結晶を示している。フルルビプロフェンは、ひとつの純粋な形が報告されており(Flippen, J.L.ら、Acta Crystallogr., Sect B、31:926(1975))、反転中心を伴う水素結合したカルボン酸ホモ二量体を含み、空間群P-1で結晶化する。2-D重合シートは、フェニル環のπ-πおよび疎水性相互作用により形成される。
【図9】図9Aおよび図9Bは、各々、フルルビプロフェン/trans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレンのシントンを含む超分子実体および対応する結晶構造を示している。
【図10】図10Aおよび図10Bは、各々、純粋なカルバマゼピンおよびカルバマゼピン/p-フタルアルデヒドの結晶構造を示している。カルバマゼピン[5H-ジベンズ(b,f)アゼピン-5-カルボキシアミド](CBZ)は、少なくとも3種の無水型および2種の溶媒和型(二水和物およびアセトネート)で存在することが示されている(Himes, V.L.ら、Acta Crystallogr.、37:2242-2245(1981);Lowes, M.M.J.ら、J. Pharm. Sci.、76:744-752(1987);Reck, G.ら、Cryst. Res. Technol.、21:1463-1468(1986))。これらの結晶形における主要な分子間相互作用は、中心対称二量体を形成する各CBZ分子のカルボキシアミド部分の間で形成された二量体である。無水結晶多形は、単斜晶、三方晶、および三斜晶である。これらの多形は、室温で最も熱力学的に安定している単斜晶形とエナンチオトロピー的に関連している。
【図11】カルバマゼピン/ニコチンアミド(ビタミンB3)の結晶構造を示している。
【図12】カルバマゼピン/ニコチンアミド共結晶をモデルとして使用し操作した、カルバマゼピン/サッカリンの結晶構造を示している。
【図13】図13A〜図13Cは、各々、イブプロフェン、フルルビプロフェン、およびアスピリンの化学構造を示している。
【図14】図14Aおよび図14Bは、各々、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/2,6-ピリジンジカルボン酸の結晶構造を示している。
【図15】図15Aおよび図15Bは、各々、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/5-ニトロイソフタル酸の結晶構造を示している。
【図16】図16Aおよび図16Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/酢酸の結晶構造を示している。
【図17】図17Aおよび図17Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/アダマンタンテトラカルボン酸の結晶構造を示している。
【図18】図18Aおよび図18Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/ベンゾキノンの結晶構造を示している。
【図19】図19Aおよび図19Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/酪酸の結晶構造を示している。
【図20】図20Aおよび図20Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/DMSOの結晶構造を示している。
【図21】図21Aおよび図21Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/ホルムアミドの結晶構造を示している。
【図22】図22Aおよび図22Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/ギ酸の結晶構造を示している。
【図23】図23Aおよび図23Bは、カルバマゼピンおよびカルバマゼピン/トリメシン酸の結晶構造を示している。
【図24】本発明の多構成要素相組成物を調製する例証的概略を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも1種の有効な薬剤構成要素を有する、多構成要素結晶のような、新規多構成要素固相のデザインへの結晶工学の概念の適用に関する。本発明の多構成要素結晶の例は、アセトアミノフェン/4,4'-ビピリジン/水、フェニトイン/ピリドン、アスピリン/4,4'-ビピリジン、イブプロフェン/4,4'-ビピリジン、フルルビプロフェン/4,4'-ビピリジン、フルルビプロフェン/trans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン、カルバマゼピン/p-フタルアルデヒド、カルバマゼピン/ニコチンアミド(GRAS)、カルバマゼピン/サッカリン(GRAS)、カルバマゼピン/2,6-ピリジンジカルボン酸、カルバマゼピン/5-ニトロイソフタル酸、カルバマゼピン/酢酸、カルバマゼピン/1,3,5,7-アダマンタンテトラカルボン酸、カルバマゼピン/ベンゾキノン、カルバマゼピン/酪酸、カルバマゼピン/ジメチルスルホキシド(DMSO)、カルバマゼピン/ホルムアミド、カルバマゼピン/ギ酸、およびカルバマゼピン/トリメシン酸を含むが、これらに限定されるものではなく、これらは様々な技術により特徴決定され、および水素結合相互作用の直接の結果として、親薬剤成分とは異なる物理特性を示す。これらの結晶集合体は、例えば、改善された薬物溶解度、溶解速度、安定性およびバイオアベイラビリティをもたらすことができる。
【0019】
ひとつの局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成するために相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、有効薬剤成分(API)の構造を評価する段階;そのAPIが、それ自身と超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、更なる超分子シントンを形成してAPIにより形成された超分子シントンとすると考えられる少なくとも1種の化学官能基を同定する段階であり、ここで同定された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントンにより形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することができず、ならびにここで選択された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントンと非共有結合を形成できる段階;ならびに、APIと相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。
【0020】
別の局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成するための相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、APIの構造を評価する段階;APIが、それ自身と超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、APIと超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であり、ここで同定された化学官能基は、APIにより形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することが可能であり、ならびにここで選択された化学官能基は、API上の相補的化学官能基に非共有結合を形成できる段階;ならびに、APIと相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。従って、この方法により、薬剤部分間の分子間相互作用の破壊を目的とするホモシントンの形成を行うことができる。
【0021】
更なる別の局面において、本発明は、所望の超分子シントンを形成する相補的化学官能基を同定する方法に関し、ここで、本方法は、その結晶構造を決定することを含むことができる、APIの構造を評価する段階;APIが、異なる分子と超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを決定する段階;超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、APIと超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であり、ここで選択された化学官能基は、API上の相補的化学官能基への非共有結合を形成できる、段階;ならびに、有効薬剤成分と相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階を含む。
【0022】
前述の方法の3種の局面の各々において、これらの方法は更に、APIおよび少なくとも1種の同定された共結晶形成体からなる多構成要素固相組成物を調製することを含む。同定された共結晶形成体は、例えば、異なるAPI、GRAS化合物、食品添加物、毒性の低い有機物、または金属有機錯体であることができる。溶液からの結晶化、溶融物の冷却、昇華および摩砕のような様々な方法を、多構成要素固相組成物の調製に利用することができる。加えて、本発明の方法は更に、下記の段階のいずれかまたは両方を含むことができる:新規多構成要素固相組成物の構造を決定する段階、および新規多構成要素固相組成物の物理および/または化学特性を分析する段階。
【0023】
本発明は更に、本明細書において確定された方法を用い、同定または生成された新規固相に関する。本発明は更に、いずれかの化学量比である、2種以上の独立した分子実体間の分子間相互作用により維持される固形物質(相)を含む、多構成要素相組成物に関し、ここで独立した分子実体の少なくとも1種は、薬剤実体である。本発明の多構成要素相組成物は、例えば、個別の超分子実体または高分子構造であることができる。本発明の多構成要素相組成物は、融点、溶解度、溶解速度、安定性、および/またはバイオアベイラビリティのような特性を有することができ、これは、それらが基礎とした薬剤化合物、または化合物類とは異なる。
【0024】
例として図1に示したように、イブプロフェンの外側官能基は、イソプロピル基およびカルボン酸である。
【0025】
本発明の方法を使用し、この相互作用は、図2に示されるように、芳香族アミンとの共結晶化により破壊することができることが決定されている。より詳細に述べると、ジアミンを使用することにより、図3に示されたように、イブプロフェンの2:1の多構成要素相が、更には本明細書に例示された他の相が調製される。従って、本発明の方法を使用し、相補的化学官能基を同定し、ならびに各々、図13A-13Cに示されているように、イブプロフェン、フルルビプロフェンおよびアスピリンの構造と非常に異なる構造を伴うそれらの薬剤化合物を含む、様々な医薬品に関する多構成要素相組成物を作成することができる。
【0026】
本明細書において使用される用語「多構成要素相」は、いずれかの化学量比の、少なくとも2種の独立した分子実体の間で分子間相互作用により維持されるいずれかの固形物質(相)であり、ここで少なくとも1種の独立した分子実体は薬剤実体であるものを意味する。分子間相互作用の例は、以下の1種または複数を含むが、これらに限定されるものではない:水素結合(弱および/または強)、双極子相互作用(誘導性および/または非誘導性)、スタッキング相互作用、疎水性相互作用、ならびに他の分子間静電気的(inter-static)相互作用。例えば、独立した分子実体は各々、個別の超分子実体または高分子構造であることができる。好ましくは、1種または複数の独立した分子実体は、「GRAS」化合物、すなわち「FDAにより一般に安全と見なされる」化合物の分子を含む。GRAS化合物は、非薬剤実体であることがより好ましい。
【0027】
用語「薬剤実体」、「薬剤部分」、「薬剤成分」、「薬剤構成要素」、「薬剤分子」、および「有効薬剤成分(API)」ならびにそれらの文法上の変形は、本明細書において互換的に使用され、所定の病態に罹患しているヒトまたは動物に所定の濃度で投与された場合に、治療作用を有するいずれかの生物学的有効部分を意味する。従って本発明の多相固形物中の有効薬剤成分として有用な薬剤実体は、病態に罹患したまたはしていないヒトまたは動物に投与することができ、ならびにこの薬剤実体は、予防作用、緩和作用を有し、および/または治療的介入であることができる。本明細書において使用されるように、これらの薬剤実体は、それらの薬剤活性の全てまたは一部を維持している、所定の薬剤実体の薬剤として許容できる塩を含むことが意図されている。薬剤分子またはイオンは、生体分子に選択的に結合する分子認識部位を既に含み、および超分子自己集合体となる傾向があるので、これらはそのような結晶工学試験について固有の素因がある。有効薬剤成分において一般に認められ、および超分子シントンを形成できる基の例は、酸、アミド、脂肪族窒素基部、不飽和芳香族窒素基部(例えば、ピリジン、イミダゾール)、アミン、アルコール、ハロゲン、スルホン、ニトロ基、S-複素環、N-複素環(飽和または不飽和)、およびO-複素環を含むが、これらに限定されるものではない。他の例は、エーテル、チオエーテル、チオール、エステル、チオエステル、チオケトン、エポキシド、アセトネート、ニトリル、オキシム、および有機ハロゲンを含むが、これらに限定されるものではない。他の例は、エーテル、チオエーテル、チオール、エステル、チオエステル、チオケトン、エポキシド、アセトネート、ニトリル、オキシム、および有機ハロゲンを含む。これらの基の一部は、例えば酸およびアミドのように、類似したまたは異なる分子内の同一基と、超分子シントンを形成することができ、およびホモシントンと称される。他の基は、例えば、酸/アミド;ピリジン/アミド;アルコール/アミンのように、異なる基と超分子シントンを形成することができ、ヘテロシントンと称される。ヘテロシントンは、多構成要素結晶の形成に特に適しているのに対し、ホモシントンは時々多構成要素結晶を形成することができる。
【0028】
本明細書において使用される用語「超分子シントン」は、多構成要素非-共有的相互作用の構成要素の和を意味し、ここで非-共有的相互作用は、個別の分子実体または高分子構造の形成に寄与し、ここで各構成要素は化学官能基である。超分子シントンは、例えば、二量体、三量体、またはn-量体であることができる。
【0029】
多構成要素相組成物は、薬剤として有用な組成物の調製のための公知の方法に従い製剤することができる。このような薬剤組成物は、例えば経口、非経口、鼻腔内、外用、経皮などの、投与のための様々な形状に適合させることができる。本発明の多構成要素相固形物は、例えば、注射剤、丸剤、または吸入剤として、溶液または非晶質化合物へと生成することができる。任意に薬剤組成物は、薬剤として許容できる担体または希釈剤を含有することができる。製剤は、当業者に周知でありおよび容易に入手できる多くの情報源に説明されている。例えば、「Remington's Pharmaceutical Science」(Martin EW、[1995] Easton Pennsylvania、Mack Publishing社、第19版)は、本発明に組合せて使用することができる製剤を説明している。投与に適した製剤は、例えば、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、およびその製剤を意図されたレシピエントの血液と等張とする溶質を含有することができる、水性滅菌注射液;ならびに、懸濁化剤および増粘剤を含有することができる、水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。製剤は、例えば密閉したアンプルおよびバイアルのような、単位剤形または反復剤形用容器中に存在することができ、ならびに使用前に、例えば注射用水などの、滅菌液体担体の状態のみが必要とされる、凍らせ乾燥させた(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。用時調合の注射液および懸濁液を、例えば本発明の多構成要素相組成物の滅菌散剤、顆粒剤または錠剤から調製してもよい。本発明の製剤は、特に先に言及した成分に加え、問題の製剤の型に関して当該技術分野において慣習的な他の物質を含有することができることは理解されなければならない。
【0030】
超構造に関して、薬剤分子の他の分子との相互作用により形成された化合物の一般型は、以下の3種を含む:(1)超構造が、2種以上の分子により形成され、その両方が網状構造の不可欠な構成要素でありおよび相補的である、多構成要素化合物;(2)化合物の超構造が、1種または複数の分子の自己集合により形成され、およびゲスト分子が、超構造内に閉じ込められる、包接封入化合物;ならびに、(3)超構造が、事実上、オープンフレームワーク構造である、多孔性封入化合物。
【0031】
本発明は、多構成要素組成物に関し、および本明細書において、結晶工学および超分子シントンの概念が、理論的デザインを基に、広範な新規薬剤物質の調製に適用され得ることが明らかにされている。従って本発明の多構成要素化合物は、それらが所望の組成、構造および特性を有するような様式で形成することができる。より詳細に述べると、特に薬物分子が相補的分子と多構成要素相を形成する場合に形成され得る組成物の多様性、超構造および溶解度の、問題の薬剤組成物および加工処理に関連している問題点が、本発明により対処されている。下記の薬物に関連している多構成要素相が、本明細書において例証されている:アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン(および関連化合物)、フェニトインおよびカルバマゼピンならびに適当な分子添加剤。これらの新規相は、結晶工学の概念を詳述している「モデル多構成要素相」ならびに薬剤を「GRAS」化合物、すなわち、「FDAにより一般に安全と見なされる」化合物、および/または食品添加物と共に組込んでいる多構成要素相の両方を含む。
【0032】
有機固形物および薬剤固形物との関連において、本発明は、結晶工学が、予め定められた組成、および場合によっては予め決定されたトポロジーを有する広範な新規多構成要素相の超分子の合成パラダイム(Chang, Y.L.ら、J. Am. Chem. Soc.、115:5991-6000(1993))を提供することを明らかにすることにより、これらの問題点に対処している。このような分子または超分子の基本単位(module)から階層的構造を構築する能力は、固相の構造および機能の正確な制御を促進する。これらの多構成要素相は、単構成要素相および従来の多構成要素相(固形物分散体)に勝る、下記の利点を有する:高い熱力学的安定性(これにより、固相転移に関連した問題が低下する)、修飾されたバイオアベイラビリティ(細かく調整可能な溶解度および送達)、ならびに増強された加工可能性(結晶形態、力学的特性、吸湿性)。
【0033】
本発明は、科学的観点から下記の意味を有する:(a)プロトコールは、現時点で、超分子シントンにより維持される少なくとも2種の構成要素を含む薬剤相の新規世代の合理的デザインに利用可能である;(b)構造、結晶エネルギー、溶解度、溶解定数、および安定性の特徴決定による、新規薬剤相の構造および機能の相関が、現在可能である;ならびに、(c)ヒトおよび動物における病態を治療するために新規相の新たな範囲が利用可能である。
【0034】
本発明は、少なくとも3種の方式、すなわち、(1)新規の多構成要素結晶相のデザインのための、合理的超分子戦略を作成することにより;(2)この戦略を薬剤相へ拡大することにより;ならびに、(3)薬剤化合物の送達特性および安定性を制御するためにこの戦略を使用することにより、最新技術を拡大している。
【0035】
以下の頁は、単結晶X線結晶学および構造-感応性解析技術:FT-IR、XRPD、DSC、TGAを用い特徴付けられている、多構成要素結晶相の実施例を説明している。これらは全て、他の相補的官能基と超分子シントンを形成する固有の素因のある薬剤分子を基にしているので、これらは、本発明の典型例を表わしている。これらは、それらの溶解度/バイオアベイラビリティにおける周知の制限のために、研究のために選択された。各実施例において、純相の性質が考察され、およびこれは超分子ホモシントン(自己相補的官能基)により維持されている。調製された多構成要素相は、超分子ヘテロシントンを形成する素因のある第二の分子構成要素の賢明な選択により、ホモシントンを永続的かつ合理的に破壊する能力を確認している。これらの新規固相は、それらの純相とは異なる溶解度プロファイルを有することが、予想される。GRASと称されるものの例は、「FDAにより一般に安全と見なされる」第二の構成要素を使用するものである。
【実施例】
【0036】
実施例1−アセトアミノフェンの多構成要素結晶:アセトアミノフェン/4,4'-ビピリジン/水(化学量1:1:1)
アセトアミノフェン50mg(0.3307mmol)および4,4'-ビピリジン52mg(0.3329mmol)を、温水に溶解し、静置した。緩徐な蒸発は、図4Bに示されたような、1:1:1アセトアミノフェン/4,4'-ビピリジン/水共結晶の無色の針状物を生じた。
【0037】
結晶データ:
344パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0751、wR2=0.2082、ならびに全ての4481データについて、R1=0.1119、wR2=0.2377。
【0038】
結晶パッキング:これらの共結晶は、水分子が、網状構造のビピリジン部分とアセトアミノフェン間の水素結合橋として作用する二層シートを含む。ビピリジンゲストは、2個の網状構造ビピリジン間のπ-πスタッキング相互作用により維持される。これらの層は、アセトアミノフェン部分のフェニル基間のπ-π相互作用によりスタッキングしている。
【0039】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、57.77℃(吸熱);融点=58〜60℃(MEL-TEMP);(アセトアミノフェン融点=169℃、4,4'-ビピリジン融点=111〜114℃)。
【0040】
実施例2-フェニトインの多構成要素結晶:フェニトイン/ピリドン(化学量1:1)
フェニトイン28mg(0.1109mmol)および4-ヒドロキシピリドン11mg(0.1156mmol)を、アセトン2mLおよびエタノール1mLに、加熱および攪拌しながら溶解した。緩徐な蒸発は、図5Bに示されたような、1:1フェニトイン/ピリドン共結晶の無色の針状物を生じた。
【0041】
結晶データ:
247パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0560、wR2=0.1356、ならびに全ての4154データについて、R1=0.0816、wR2=0.1559。
【0042】
結晶パッキング:この共結晶は、四面体炭素に近接しているカルボニルとアミン間の隣接フェニトイン分子の水素結合により、ならびにピリドンカルボニル官能基とフェニトイン-フェニトイン相互作用には関与していないアミンの間の水素結合により、維持されている。ピリドンカルボニルは、隣接ピリドン分子とも水素結合し、一次元網状構造を形成する。
【0043】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、この共結晶に関する特徴的ピークの同定:3311cm-1に認められた2°アミン、1711cm-1に認められたカルボニル(ケトン)、1390cm-1に認められたオレフィン。
【0044】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、233.39℃(吸熱)および271.33℃(吸熱);融点=231〜233℃(MEL-TEMP);(フェニトイン融点=295℃、ピリドン融点=148℃)。
【0045】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度192.80℃で減量29.09%、開始温度238.27℃で減量48.72%、および開始温度260.17℃で減量18.38%、その後完全に分解。
【0046】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。XRPD:単結晶データに由来した模擬XRPDに類似したピークを示した。再結晶および固体状態の反応の全ての場合において、実験値(計算値):5.2(5.3);11.1(11.3);15.1(15.2);16.2(16.4);16.7(17.0);17.8(17.9);19.4(19.4);19.8(19.7);20.3(20.1);21.2(21.4);23.3(23.7);26.1(26.4);26.4(26.6);27.3(27.6);29.5(29.9)。
【0047】
実施例3-アスピリン(アセチルサリチル酸)の多構成要素結晶:アスピリン/4,4'-ビピリジン(化学量2:1)
アスピリン50mg(0.2775mmol)および4,4'-ビピリジン22mg(0.1388mmol)を、ヘキサン4mLに溶解した。この溶液に、エーテル8mLを添加し、1時間静置し、図6Dに示されたような、2:1アスピリン/4,4'-ビピリジン共結晶の無色の針状物を得た。あるいは、アスピリン/4,4'-ビピリジン(化学量2:1)を、これらの固形成分を、乳棒および乳鉢中で摩砕することにより作成することができる。
【0048】
結晶データ:
202パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0419、wR2=0.1358、ならびに全ての2433データについて、R1=0.0541、wR2=0.1482。
【0049】
結晶パッキング:この共結晶は、Pbcn空間群において結晶化するカルボン酸-ピリジンヘテロ二量体を含む。この構造は、溝(channel)内に無秩序な溶媒を含む、封入化合物である。このヘテロ二量体で支配的な水素結合の相互作用に加え、ビピリジンおよびアスピリンのフェニル基のπ-πスタッキングならびに疎水性相互作用が、全体のパッキング相互作用に寄与している。
【0050】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、1679cm-1の特徴的(-COOH)ピークは、1694cm-1へ上方にシフトし強度が低下したのに対し、ラクトンピークは、1750cm-1から1744cm-1へとわずかに下方シフトした。
【0051】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、95.14°(吸熱);融点=91〜96℃(MEL-TEMP);(アスピリン融点=1345℃、4,4'-ビピリジン融点=111〜114℃)。
【0052】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度22.62℃で減量9%、開始温度102.97℃で減量49.06%、その後開始温度209.37℃で完全に分解。
【0053】
実施例4-イブプロフェンの多構成要素結晶:イブプロフェン/4,4'-ビピリジン(化学量2:1)
ラセミ体イブプロフェン50mg(0.242mmol)および4,4'-ビピリジン18mg(0.0960mmol)を、アセトン5mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図7Dに示されたような、2:1イブプロフェン/4,4'-ビピリジン共結晶の無色の針状物を生じた。
【0054】
結晶データ:
399パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0964、wR2=0.2510、ならびに全ての3362データについて、R1=0.1775、wR2=0.2987。
【0055】
結晶パッキング:この共結晶は、2個の水素結合したカルボン酸ピリジン超分子シントンにより維持され、空間群P-1内にパッキングしているヘリボーン状モチーフ内に配置された、イブプロフェン/ビピリジンヘテロ二量体を含む。このヘテロ二量体は、拡大されたホモ二量体型であり、パッキングし、ビピリジンおよびイブプロフェンのフェニル基のπ-πスタッキングならびにイブプロフェン尾部からの疎水性相互作用により維持された二次元網状構造を形成している。
【0056】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。分析は、2899cm-1での芳香族C-H伸縮振動;1886cm-1でのN-H変角振動およびはさみ振動;1679cm-1のC=O伸縮振動;4,4'-ビピリジンおよびイブプロフェンの両方について808cm-1および628cm-1でのC-H面外変角振動を観察した。
【0057】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、64.85℃(吸熱)および118.79℃(吸熱);融点=113〜120℃(MEL-TEMP);(イブプロフェン融点=75〜77℃、4,4'-ビピリジン融点=111〜114℃)。
【0058】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、室温から100.02℃の間で減量13.28%、直後に完全に分解。
【0059】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。単結晶データに由来したXRPD、実験値(計算値):3.4(3.6);6.9(7.2);10.4(10.8);17.3(17.5);19.1(19.7)。
【0060】
実施例5-フルルビプロフェンの多構成要素結晶:フルルビプロフェン/4,4'-ビピリジン(化学量2:1)
フルルビプロフェン50mg(0.2046mmol)および4,4'-ビピリジン15mg(0.0960mmol)を、アセトン3mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図8Dに示されたような、2:1フルルビプロフェン/4,4'-ビピリジン共結晶の無色の針状物を生じた。
【0061】
結晶データ:
226パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0908、wR2=0.2065、ならびに全ての1634データについて、R1=0.1084、wR2=0.2209。
【0062】
結晶パッキング:この共結晶は、2個の水素結合したカルボン酸ピリジン超分子シントンにより維持され、空間群P21/n内にパッキングしているヘリボーン状モチーフに配置された、フルルビプロフェン/ビピリジンヘテロ二量体を含む。このヘテロ二量体は、拡大されたホモ二量体型であり、パッキングし、ビピリジンおよびフルルビプロフェンのフェニル基のπ-πスタッキングならびに疎水性相互作用により維持された二次元網状構造を形成している。
【0063】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、3057cm-1および2981cm-1での芳香族C-H伸縮振動;1886cm-1でのN-H変角振動およびはさみ振動;1690cm-1でのC=O伸縮振動;1418cm-1でのC=CおよびC=N環伸縮振動。
【0064】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、162.47℃(吸熱);融点=155〜160℃(MEL-TEMP);(フルルビプロフェン融点=110〜111℃、4,4'-ビピリジン融点=111〜114℃)。
【0065】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度31.13℃での減量30.93%、開始温度168.74℃での減量46.26%、その後完全に分解。
【0066】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。単結晶データに由来したXRPD、実験値(計算値):16.8(16.8);17.1(17.5);18.1(18.4);19.0(19.0);20.0(20.4);21.3(21.7);22.7(23.0);25.0(25.6);26.0(26.1);26.0(26.6);26.1(27.5);28.2(28.7);29.1(29.7)。
【0067】
実施例6-フルルビプロフェンの多構成要素結晶:フルルビプロフェン/trans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン(化学量2:1)
フルルビプロフェン25mg(0.1023mmol)およびtrans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン10mg(0.0548mmol)を、アセトン3mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図9Bに示されたような、2:1フルルビプロフェン/1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン共結晶を生じた。
【0068】
結晶データ:
238パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0686、wR2=0.1395、ならびに全ての2383データについて、R1=0.1403、wR2=0.1709。
【0069】
結晶パッキング:この共結晶は、2個の水素結合したカルボン酸-ピリジン超分子シントンにより維持され、空間群P21/n内にパッキングしているヘリボーン状モチーフ内に配置された、フルルビプロフェン/1,2-ビス(4-ピリジル)エチレンヘテロ二量体を含む。更に1,2-ビス(4-ピリジル)エチレンからのヘテロ二量体は、実施例5に対しホモ二量体を拡大し、パッキングし、ビピリジンおよびフルルビプロフェンのフェニル基のπ-πスタッキングならびに疎水性相互作用により維持された二次元網状構造を形成している。
【0070】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、2927cm-1および2850cm-1での芳香族C-H伸縮振動;1875cm-1でのN-H変角振動およびはさみ振動;1707cm-1でのC=O伸縮振動;1483cm-1でのC=CおよびC=N環伸縮振動。
【0071】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、100.01℃、125.59℃および163.54℃(吸熱);融点=153〜158℃(MEL-TEMP);(フルルビプロフェン融点=110〜111℃、trans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン融点=150〜153℃)。
【0072】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度133.18℃での減量91.79%、その後完全に分解。
【0073】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。単結晶データに由来したXRPD、実験値(計算値):3.6(3.7);17.3(17.7);18.1(18.6);18.4(18.6);19.1(19.3);22.3(22.5);23.8(23.9);25.9(26.4);28.1(28.5)。
【0074】
実施例7-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/p-フタルアルデヒド(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)およびp-フタルアルデヒド7mg(0.0521mmol)を、メタノールおよそ3mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図10Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/p-フタルアルデヒド共結晶の無色の針状物を生じた。
【0075】
結晶データ:
268パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0332、wR2=0.0801、ならびに全ての1559データについて、R1=0.0403、wR2=0.0831。
【0076】
結晶パッキング:これらの共結晶は、空間群C2/cにおいて結晶化する水素結合したカルボキシアミドホモ二量体を含む。ホモ二量体の1°アミンは、p-フタルアルデヒドのカルボニルに分岐(bifrucate)され、隣接ホモ二量体と鎖を形成している。これらの鎖は、CBZのフェニル環の間のπ-π相互作用により維持された、縮れたテープ部分にパッキングされている。
【0077】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。1°アミンの非対称および対称の伸縮振動は、3418cm-1へ下方シフトし;脂肪族アルデヒドおよび1°アミドのC=O伸縮振動は、1690cm-1へ上方シフトした;1669cm-1でのN-H平面内変角振動;2861cm-1でのC-Hアルデヒド伸縮振動および1391cm-1でのH-C=O変角振動。
【0078】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、128.46℃(吸熱)、融点=121〜124℃(MEL-TEMP)、(カルバマゼピン融点=190.2℃、p-フタルアルデヒド融点=116℃)。
【0079】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度30.33℃での減量17.66%、その後開始温度100.14℃での減量17.57%、それに続く完全な分解。
【0080】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。単結晶データに由来したXRPD、実験値(計算値):8.5(8.7);10.6(10.8);11.9(12.1);14.4(14.7);15.1(15.2);18.0(18.1);18.5(18.2);19.8(18.7);23.7(24.0);24.2(24.2);26.4(26.7);27.6(27.9);27.8(28.2);28.7(29.1);29.3(29.6);29.4(29.8)。
【0081】
実施例8-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/ニコチンアミド(GRAS)(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)およびニコチンアミド12mg(0.0982mmol)を、4mLのDMSO、メタノールまたはエタノールに溶解した。溶媒の緩徐な蒸発は、図11に示されたような、1:1カルバマゼピン/ニコチンアミド共結晶の無色の針状物を生じた。
【0082】
別法を用い、カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)およびニコチンアミド12mg(0.0982mmol)を、乳棒および乳鉢で一緒に摩砕した。この固形物は、1:1カルバマゼピン/ニコチンアミド微結晶(XPD)であることが決定された。
【0083】
結晶データ:
248パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0732、wR2=0.1268、ならびに全ての4041データについて、R1=0.1161、wR2=0.1430。
【0084】
結晶パッキング:これらの共結晶は、水素結合したカルボキシアミドホモ二量体を含む。1°アミンは、二量体の各側のニコチンアミドのカルボニルに分岐されている。各ニコチンアミドの1°アミンは、相接している二量体のカルボニルに水素結合されている。これらの二量体は、CBZのフェニル基からのπ-π相互作用により鎖を形成している。
【0085】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、非対称および対称伸縮振動は、1°アミンに対処し3443cm-1および3388cm-1へ下方シフトした;1690cm-1での1°アミドC=O伸縮振動;1614cm-1でのN-H平面内変角振動;C=C伸縮振動は、1579cm-1へと下方シフトし;芳香族Hは、800cm-1から500cm-1に存在した。
【0086】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、74.49℃(吸熱)および59.05℃(吸熱)、融点=153〜158℃(MEL-TEMP)、(カルバマゼピン融点=190.2℃、ニコチンアミド融点=150〜160℃)。
【0087】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度205.43℃で減量57.94%、その後完全な分解。
【0088】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。XRPD:単結晶データに由来した模擬XRPDに類似したピークを示した。XRPD分析、実験値(計算値):6.5(6.7);8.8(9.0);10.1(10.3);13.2(13.5);15.6(15.8);17.7(17.9);17.8(18.1);18.3(18.6);19.8(20.1);20.4(20.7);21.6(22.);22.6(22.8);22.9(23.2);26.4(26.7);26.7(27.0);28.0(28.4)。
【0089】
実施例9-カルバマゼピン多構成要素結晶:カルバマゼピン/サッカリン(GRAS)(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)およびサッカリン19mg(0.1037mmol)を、エタノールおよそ4mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図12に示されたような、1:1カルバマゼピン/サッカリン共結晶を無色の針状物として生じた。溶解度測定は、このカルバマゼピン多構成要素結晶が、これまでわかっているカルバマゼピン型に勝る改善された溶解度を有することを示している(例えば、増大した分子溶解度およびより長期の水溶液中の溶解性)。
【0090】
結晶データ:
283パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0458、wR2=0.1142、ならびに全ての4372データについて、R1=0.0562、wR2=0.1204。
【0091】
結晶パッキング:これらの共結晶は、水素結合したカルボキシアミドホモ二量体を含む。サッカリンの2°アミンは、各側のCBZのカルボニルに水素結合し、四量体を形成している。この結晶は、CBZのフェニル基およびサッカリンのフェニル基の間のπ-π相互作用により、空間群P-1を有する。
【0092】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、非対称および対称伸縮振動は、1°アミンに対処し、3495cm-1に上方シフトした;C=O脂肪族伸縮振動は、1726cm-1へ上方シフトした;1649cm-1でのN-H平面内変角振動;C=C伸縮振動は、1561cm-1へ下方シフトした;1330cm-1での(O=S=O)スルホニルピーク;1175cm-1でのC-N脂肪族伸縮振動。
【0093】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、75.31℃(吸熱)および177.32℃(吸熱)、融点=148〜155℃(MEL-TEMP)(カルバマゼピン融点=190.2℃、サッカリン融点=228.8℃)。
【0094】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度67.03℃で減量3.342%、および開始温度118.71℃で減量55.09%、その後完全に分解。
【0095】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。単結晶データに由来したXRPD、実験値(計算値):6.9(7.0);12.2(12.2);13.6(13.8);14.0(14.1);14.1(14.4);15,3(15.6);15.9(15.9);18.1(18.2);18.7(18.8);20.2(20.3);21.3(21.5);23.7(23.9);26.3(26.4);28.3(28.3)。
【0096】
実施例10-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/2,6-ピリジンジカルボン酸(化学量2:3)
カルバマゼピン36mg(0.1524mmol)および2,6-ピリジンジカルボン酸26mg(0.1556mmol)を、エタノールおよそ2mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図14Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/2,6-ピリジンジカルボン酸共結晶を透明な針状物として生じた。
【0097】
結晶データ:
271パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0425、wR2=0.0944。
【0098】
結晶パッキング:CBZ 1°アミン上の各水素は、異なる2,6-ピリジンジカルボン酸部分のカルボニル基に水素結合している。CBZカルボキシアミドのカルボニルは、1個の2,6-ピリジンジカルボン酸部分の2個の水酸化物基に水素結合している。
【0099】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、3439cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);1734cm-1(C=0);1649cm-1(C=C)。
【0100】
融点:214〜216℃(MEL-TEMP)、(カルバマゼピン融点=191〜192℃、2,6-ピリジンジカルボン酸融点=248〜250℃)。
【0101】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度215℃で減量69%および開始温度392℃で減量17%、その後完全な分解。
【0102】
実施例11-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/5-ニトロイソフタル酸(化学量1:1)
カルバマゼピン40mg(0.1693mmol)および5-ニトロイソフタル酸30mg(0.1421mmol)を、メタノールまたはエタノールおよそ3mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図15Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/5-ニトロイソフタル酸共結晶を黄色の針状物として生じた。
【0103】
結晶データ:
311パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0725、wR2=0.1801、ならびに全ての4459データについて、R1=0.1441、wR2=0.1204。
【0104】
結晶パッキング:これらの共結晶は、2個の5-ニトロイソフタル酸部分の間の水素結合したカルボン酸ホモ二量体、ならびにカルバマゼピンと5-ニトロイソフタル酸部分の間の水素結合されたカルボキシ-アミドヘテロ二量体により維持された。カルバマゼピン部分からの追加のN-H供与体へ水素結合した溶媒が存在する。
【0105】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、3470cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);3178cm-1(C-H伸縮伸長、アルケン);1688cm-1(C=0);1602cm-1(C=C)。
【0106】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)、190.51℃(吸熱)、融点=NA(197〜200℃で分解)(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、5-ニトロイソフタル酸融点=260〜261℃)。
【0107】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度202℃で減量32.02%、開始温度224℃で減量12.12%、および開始温度285℃で減量17.94%、その後完全な分解。
【0108】
X線粉末回折:(Rigalcu Miniflex 回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。XRPD:単結晶データに由来した模擬XRPDに類似したピークを示した。XRPD分析、実験値(計算値):10.138(10.283), 15.291(15.607), 17.438(17.791), 21.166(21.685), 31.407(31.738), 32.650(32.729)。
【0109】
実施例12-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/酢酸(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)を、酢酸およそ2mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図16Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/酢酸共結晶を、黄色の針状物として生じた。
【0110】
結晶データ:
203パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0492、wR2=0.1335。
【0111】
結晶パッキング:この共結晶は、水素結合したカルボキシアミド-カルボン酸ヘテロ二量体により維持されている。各CBZからの第二の1°アミン水素は、2個のヘテロ二量体に、並んで連結し、四量体を形成している。
【0112】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、3462cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);1699cm-1(C=O);1629cm-1(C=C、CBZ);1419cm-1(COOH、酢酸)。
【0113】
融点:187℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、酢酸融点=16.6℃)。
【0114】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度104℃で減量20.62%、および開始温度200℃で減量77.05%、その後完全に分解。
【0115】
実施例13-カルバマゼピンの多構成要素:カルバマゼピン/1,3,5,7-アダマンタンテトラカルボン酸(化学量1:1)
カルバマゼピン15mg(0.1524mmol)および1,3,5,7-アダマンタンテトラカルボン酸20mg(0.1556mmol)を、メタノールおよそ1mLまたはエタノール1mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図17Bに示されたような、2:1カルバマゼピン/1,3,5,7-アダマンタンテトラカルボン酸共結晶を、透明な平面として生じた。
【0116】
結晶データ:
263パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0433、wR2=0.0913。
【0117】
結晶パッキング:これらの共結晶は、PtSトポロジーに類似した四角い平面により連結された、4個の四面体の単独の3D網状構造を形成する。これらの結晶は、水素結合により維持されている。
【0118】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)、3431cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);3123cm-1(C-H伸縮振動、アルケン);1723cm-1(C=0);1649cm-1(C=C)。
【0119】
融点:(MEL-TEMP)。258〜260℃(カルバマゼピン融点=191〜192℃、アダマンタンテトラカルボン酸融点≧390℃)。
【0120】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)、開始温度189℃で減量9%、開始温度251℃で減量52%、および開始温度374℃で減量31%、その後完全に分解。
【0121】
実施例14-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/ベンゾキノン(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)およびベンゾキノン11mg(0.1018mmol)を、メタノールまたはTHFの2mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図18Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/ベンゾキノン共結晶の黄色の結晶の平均収量を生じた。
【0122】
結晶データ:
199パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0545、wR2=0.1358、ならびに全ての3223データについて、R1=0.0659、wR2=0.1427。
【0123】
結晶パッキング:これらの共結晶は、水素結合されたカルボキシアミドホモ二量体を含む。CBZ上の各1°アミンは、ベンゾキノン部分のカルボニル基へ分岐している。これらの二量体は、無限鎖を形成している。
【0124】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3420cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);2750cm-1(アルデヒド伸縮振動);1672cm-1(C=O);1637cm-1(C=C、CBZ)。
【0125】
融点:170℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、ベンゾキノン融点=115.7℃)。
【0126】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度168℃で減量20.62%、開始温度223℃で減量78%、その後完全に分解。
【0127】
実施例15-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/酪酸(化学量1:1)
カルバマゼピン10mg(0.0423mmol)は、酪酸およそ1mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図19Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/酪酸共結晶の黄色/褐色結晶の平均収量を生じた。
【0128】
結晶データ:
217パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0499、wR2=0.1137、ならびに全ての3686データについて、R1=0.0678、wR2=0.1213。
【0129】
結晶パッキング:これらの共結晶は、カルバマゼピン部分と酪酸部分の間の水素結合したカルボキシアミド-カルボン酸ヘテロ二量体により維持される。各CBZ由来の第二の1°アミン水素は、並んで2個のヘテロ二量体に連結し、四量体を形成している。
【0130】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3486cm-1(N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);3307cm-1(C-H伸縮振動、アルケン);1684cm-1(C=O);1540cm-1(C=C)。
【0131】
融点:63〜64℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、酪酸融点=-94℃)。
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度54℃で減量16%、開始温度134℃で減量16%、開始温度174℃で減量49%、その後完全に分解。
【0132】
実施例16-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/DMSO(化学量1:1)
カルバマゼピン25mg(0.1058mmol)を、DMSOおよそ1.5mLに溶解した。この溶媒の緩徐な蒸発は、図20Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/DMSO共結晶の無色の平板を生じた。
【0133】
結晶データ:
209パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0929、wR2=0.3043。
【0134】
結晶パッキング:これらの共結晶は、水素結合したカルボキシアミドホモシントンにより維持されている。1°アミンは、DMSOのスルホキシドへ水素結合されている。結晶は、CBZの三環式アゼピン環システム基からのπ-π相互作用により安定化される。
【0135】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3369cm-1 (N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);1665cm-1 (C=O、伸縮振動);1481cm-1(C=C)。
【0136】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)。100℃、193℃(吸熱)。融点=189℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、DMSO融点=18.45℃)。
【0137】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度102℃で減量26%、開始温度212℃で減量64%、その後完全に分解。
【0138】
実施例17-カルバマゼピンの多構成要素:カルバマゼピン/ホルムアミド(化学量1:1)
カルバマゼピン10mg(0.0423mmol)を、およそ1mLホルムアミド/1mL THFまたは1mLホルムアミド/1mLメタノールの混合液に溶解した。この溶媒混合物の緩徐な蒸発は、図21Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/ホルムアミド共結晶の透明な針状物の平均収量を生じた。
【0139】
結晶データ:
379パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0766、wR2=0.1633。
【0140】
結晶パッキング:これらの共結晶は、2個のカルバマゼピン部分間の水素結合したカルボキシアミドホモ二量体および2個のホルムアミド部分の間のカルボン酸ホモ二量体により維持されている。無限鎖が、並んで連結したホモ二量体により形成され、CBZ分子の他のセット毎に鎖の側面で結合しているが、二量体を形成するようには結合していない。
【0141】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3392cm-1 (N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);2875cm-1 (C-H伸縮振動、アルケン);1653cm-1 (C=O);1590cm-1 (C=C)。
【0142】
融点:142〜144℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、ホルムアミド融点=-94℃)。
【0143】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度138℃で減量27%、開始温度195℃で減量67%、その後完全に分解。
【0144】
実施例18-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/ギ酸(化学量1:1)
カルバマゼピン40mg(0.1693mmol)を、ギ酸およそ2mLに溶解した。この溶媒混合物の緩徐な蒸発は、図22Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/ギ酸共結晶の乳白色の星状物を生じた。
【0145】
結晶データ:
190パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.0533、wR2=0.1268。
【0146】
結晶パッキング:これらの共結晶は、中心対称の四量体中に配置された、水素結合したカルボン酸-アミンヘテロ二量体により維持された。
【0147】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3439cm-1 (1°アミン伸縮振動、CBZ);3026cm-1 (C-H伸縮振動、CBZ);1692cm-1 (1°アミド、C=O伸縮振動)。
【0148】
融点:187℃(MEL-TEMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、ギ酸融点=8.4℃)。
【0149】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度123℃で減量14.60%、開始温度196℃で減量68.91%、その後完全に分解。
【0150】
実施例19-カルバマゼピンの多構成要素結晶:カルバマゼピン/トリメシン酸(化学量1:1)
カルバマゼピン36mg(0.1524mmol)およびトリメシン酸31mg(0.1475mmol)を、およそメタノール2mLおよびジクロロメタン2mLの溶媒混合物に溶解した。この溶媒混合物の緩徐な蒸発は、図23Bに示されたような、1:1カルバマゼピン/トリメシン酸共結晶の白色の星状物を生じた。
【0151】
結晶データ:
2777パラメータに関する最終残渣は、I>2σ(I)について、R1=0.1563、wR2=0.1887、ならびに全ての3601データについて、R1=0.1441、wR2=0.1204。
【0152】
結晶パッキング:これらの共結晶は、カルバマゼピンとトリメシン酸部分の間の水素結合したカルボン酸ホモ二量体ならびに積層されたはしご状に配置された2個のトリメシン酸部分の間の水素結合したカルボン酸-アミンヘテロ二量体により維持された。
【0153】
赤外分光法:(Nicolet Avatar 320 FTIR)。3486cm-1 (N-H伸縮振動、1°アミン、CBZ);1688cm-1 (C=O、1°アミド伸縮振動、CBZ);1602cm-1 (C=C、CBZ)。
【0154】
示差走査熱量測定:(TA機器2920 DSC)。273℃(吸熱)。融点=NA、278℃で分解(MEL-EMP)。(カルバマゼピン融点=191〜192℃、トリメシル酸融点=380℃)。
【0155】
熱重量分析:(TA機器2950高解像度TGA)。開始温度253℃で減量62.83%、開始温度278℃で減量30.20%、その後完全に分解。
【0156】
X線粉末回折:(Rigaku Miniflex回折計、Cu、Kα(λ=1.540562)、30kV、15mA使用)。この粉末データは、連続走査モードで、角度範囲3°〜40°2θについて、段階サイズ0.02°2θおよび走査速度2.0°/分で収集した。XRPD分析、実験値:10.736、12.087、16.857、24.857、27.857。
【0157】
本明細書において言及または引用された全ての特許、特許出願、先行する出願、および刊行物は、本明細書の明白な内容と矛盾しない程度に、全ての図面および表を含むそれら全体が参照として組入れられている。
【0158】
本明細書に説明された実施例および態様は、単に例証を目的としており、それらの様々な修飾および変更が当業者に示され、ならびに本出願の精神および範囲内に含まれることは、理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の独立した分子実体間の分子間相互作用により維持される固相を含む多構成要素相組成物であって、該2種以上の独立した分子実体のうち少なくとも1種が薬剤分子である、多構成要素相組成物。
【請求項2】
個別の超分子実体である、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項3】
高分子構造である、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項4】
薬剤分子がその純相中にある場合、該薬剤分子が、超分子ホモシントンにより維持される、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項5】
薬剤分子がその純相にある場合の該薬剤のものと異なった少なくとも1種の物理特性または化学特性を有する、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項6】
薬剤分子がその純相にある場合の該薬剤分子のものと同じである少なくとも1種の物理特性または化学特性を有する、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の物理特性または化学特性が、化学安定性、熱力学的安定性、溶解度、溶解、バイオアベイラビリティ、結晶形態、および吸湿性からなる群より選択される、請求項5記載の多構成要素相組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の物理特性または化学特性が、化学安定性、熱力学的安定性、溶解度、溶解、バイオアベイラビリティ、結晶形態、および吸湿性からなる群より選択される、請求項6記載の多構成要素相組成物。
【請求項9】
薬剤分子が、アスピリン、アセトアミノフェン、プロフェン、フェニトイン、およびカルバマゼピンからなる群より選択される、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項10】
2種以上の独立した分子実体が、アセトアミノフェン、4,4'-ビピリジン、および水;フェニトインおよびピリジン;アスピリンおよび4,4'-ビピリジン;イブプロフェンおよび4,4'-ビピリジン;フルルビプロフェンおよび4,4'-ビピリジン;フルルビプロフェン、trans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン;カルバマゼピン、p-フタルアルデヒド;カルバマゼピンおよびニコチンアミド;カルバマゼピンおよびサッカリン;カルバマゼピンおよび2,6-ピリジンジカルボン酸;カルバマゼピンおよび5-ニトロイソフタル酸;カルバマゼピンおよび酢酸;カルバマゼピンおよび1,3,5,7-アダマンタンテトラカルボン酸;カルバマゼピンおよびベンゾキノン;カルバマゼピンおよび酪酸;カルバマゼピンおよびジメチルスルホキシド;カルバマゼピンおよびホルムアミド;カルバマゼピンおよびギ酸;ならびに、カルバマゼピンおよびトリメシン酸からなる群より選択される、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項11】
分子間相互作用が、水素結合(弱および/または強)、双極子相互作用(誘導性および/または非誘導性)、スタッキング相互作用、疎水性相互作用、およびその他の分子間静電気的相互作用からなる群より選択される、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項12】
分子間相互作用が、2種以上の独立した分子実体上の相補的化学官能基間である、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項13】
相補的化学官能基が、酸、アミド、脂肪族窒素基部、不飽和芳香族窒素基部、アミン、アルコール、ハロゲン、スルホン、ニトロ基、S-複素環、N-複素環、O-複素環、エーテル、チオエーテル、チオール、エステル、チオエステル、チオケトン、エポキシド、アセトネート、ニトリル、オキシム、および有機ハロゲン化物からなる群より選択される、少なくとも1種の化学官能基を含む、請求項12記載の多構成要素相組成物。
【請求項14】
2種以上の独立した分子実体上の相補的化学官能基が同じである、請求項12記載の多構成要素相組成物。
【請求項15】
相補的化学官能基が酸である、請求項14記載の多構成要素相組成物。
【請求項16】
相補的化学官能基がアミドである、請求項14記載の多構成要素相組成物。
【請求項17】
2種以上の独立した分子実体上の相補的化学官能基が同じでない、請求項12記載の多構成要素相組成物。
【請求項18】
2種以上の独立した分子実体上の相補的化学官能基が、酸およびアミド;ピリジンおよびアミド;ならびに、アルコールおよびアミンからなる群より選択される、請求項17記載の多構成要素相組成物。
【請求項19】
2種以上の独立した分子実体が薬剤分子である、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項20】
アスピリンと少なくとも1種の独立した分子実体の間の分子間相互作用により維持された固相を含む、多構成要素相組成物。
【請求項21】
アセトアミノフェンと少なくとも1種の独立した分子実体の間の分子間相互作用により維持された固相を含む、多構成要素相組成物。
【請求項22】
プロフェンと少なくとも1種の独立した分子実体の間の分子間相互作用により維持された固相を含む、多構成要素相組成物。
【請求項23】
フェニトインと少なくとも1種の独立した分子実体の間の分子間相互作用により維持された固相を含む、多構成要素相組成物。
【請求項24】
カルバマゼピンと少なくとも1種の独立した分子実体の間の分子間相互作用により維持された固相を含む、多構成要素相組成物。
【請求項25】
所望の超分子シントンを形成するために相補的化学官能基を同定する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)有効薬剤成分の構造を評価する段階;
(b)有効薬剤成分が、それ自身との超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを判定する段階;
(c)超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、更なる超分子シントンを形成して有効薬剤成分により形成された超分子シントンとすると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であって、同定された化学官能基は、有効薬剤成分により形成された超分子シントンにより形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することができず、かつ、選択された化学官能基が、有効薬剤成分により形成された超分子シントンと非共有結合を形成できる段階;ならびに
(d)有効薬剤成分と相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階。
【請求項26】
多構成要素固相組成物を調製する段階を更に含む請求項25記載の方法であって、多構成要素固相組成物が、有効薬剤成分および少なくとも1種の同定された共結晶形成体を含む方法。
【請求項27】
少なくとも1種の共結晶形成体が、異なる有効薬剤成分、GRAS化合物、食品添加剤、毒性の低い有機物、および金属有機錯体からなる群より選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
多構成要素固相組成物が、溶液からの結晶化、溶融物の冷却、昇華、および摩砕からなる群より選択される1種または複数の方法により形成される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
所望の超分子シントンを形成するために、相補的化学官能基を同定する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)有効薬剤成分の構造を評価する段階;
(b)有効薬剤成分が、それ自身との超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを判定する段階;
(c)超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、有効薬剤成分により超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であって、同定された化学官能基は、有効薬剤成分により形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することができ、かつ、選択された化学官能基が、有効薬剤成分上に相補的化学官能基との非共有結合を形成できる段階;ならびに
(d)有効薬剤成分と相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階。
【請求項30】
多構成要素固相組成物を調製する段階を更に含む請求項29記載の方法であって、多構成要素固相組成物が、有効薬剤成分および少なくとも1種の同定された共結晶形成体を含む方法。
【請求項31】
少なくとも1種の共結晶形成体が、異なる有効薬剤成分、GRAS化合物、食品添加剤、毒性の低い有機物、および金属有機錯体からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
多構成要素固相組成物が、溶液からの結晶化、溶融物の冷却、昇華、および摩砕からなる群より選択された1種または複数の方法により形成される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
所望の超分子シントンを形成するために、相補的化学官能基を同定する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)有効薬剤成分の構造を評価する段階;
(b)有効薬剤成分が、別の分子との超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを判定する段階;
(c)超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、有効薬剤成分により超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であって、選択された化学官能基が、有効薬剤成分上に相補的化学官能基との非共有結合を形成できる段階;ならびに
(d)有効薬剤成分と相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階。
【請求項34】
多構成要素固相組成物を調製する段階を更に含む請求項33記載の方法であって、多構成要素固相組成物が、有効薬剤成分および少なくとも1種の同定された共結晶形成体を含む方法。
【請求項35】
少なくとも1種の共結晶形成体が、異なる有効薬剤成分、GRAS化合物、食品添加剤、毒性の低い有機物、および金属有機錯体からなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
多構成要素固相組成物が、溶液からの結晶化、溶融物の冷却、昇華、および摩砕からなる群より選択される1種または複数の方法により形成される、請求項34記載の方法。
【請求項1】
2種以上の独立した分子実体間の分子間相互作用により維持される固相を含む多構成要素相組成物であって、該2種以上の独立した分子実体のうち少なくとも1種が薬剤分子である、多構成要素相組成物。
【請求項2】
個別の超分子実体である、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項3】
高分子構造である、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項4】
薬剤分子がその純相中にある場合、該薬剤分子が、超分子ホモシントンにより維持される、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項5】
薬剤分子がその純相にある場合の該薬剤のものと異なった少なくとも1種の物理特性または化学特性を有する、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項6】
薬剤分子がその純相にある場合の該薬剤分子のものと同じである少なくとも1種の物理特性または化学特性を有する、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の物理特性または化学特性が、化学安定性、熱力学的安定性、溶解度、溶解、バイオアベイラビリティ、結晶形態、および吸湿性からなる群より選択される、請求項5記載の多構成要素相組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の物理特性または化学特性が、化学安定性、熱力学的安定性、溶解度、溶解、バイオアベイラビリティ、結晶形態、および吸湿性からなる群より選択される、請求項6記載の多構成要素相組成物。
【請求項9】
薬剤分子が、アスピリン、アセトアミノフェン、プロフェン、フェニトイン、およびカルバマゼピンからなる群より選択される、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項10】
2種以上の独立した分子実体が、アセトアミノフェン、4,4'-ビピリジン、および水;フェニトインおよびピリジン;アスピリンおよび4,4'-ビピリジン;イブプロフェンおよび4,4'-ビピリジン;フルルビプロフェンおよび4,4'-ビピリジン;フルルビプロフェン、trans-1,2-ビス(4-ピリジル)エチレン;カルバマゼピン、p-フタルアルデヒド;カルバマゼピンおよびニコチンアミド;カルバマゼピンおよびサッカリン;カルバマゼピンおよび2,6-ピリジンジカルボン酸;カルバマゼピンおよび5-ニトロイソフタル酸;カルバマゼピンおよび酢酸;カルバマゼピンおよび1,3,5,7-アダマンタンテトラカルボン酸;カルバマゼピンおよびベンゾキノン;カルバマゼピンおよび酪酸;カルバマゼピンおよびジメチルスルホキシド;カルバマゼピンおよびホルムアミド;カルバマゼピンおよびギ酸;ならびに、カルバマゼピンおよびトリメシン酸からなる群より選択される、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項11】
分子間相互作用が、水素結合(弱および/または強)、双極子相互作用(誘導性および/または非誘導性)、スタッキング相互作用、疎水性相互作用、およびその他の分子間静電気的相互作用からなる群より選択される、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項12】
分子間相互作用が、2種以上の独立した分子実体上の相補的化学官能基間である、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項13】
相補的化学官能基が、酸、アミド、脂肪族窒素基部、不飽和芳香族窒素基部、アミン、アルコール、ハロゲン、スルホン、ニトロ基、S-複素環、N-複素環、O-複素環、エーテル、チオエーテル、チオール、エステル、チオエステル、チオケトン、エポキシド、アセトネート、ニトリル、オキシム、および有機ハロゲン化物からなる群より選択される、少なくとも1種の化学官能基を含む、請求項12記載の多構成要素相組成物。
【請求項14】
2種以上の独立した分子実体上の相補的化学官能基が同じである、請求項12記載の多構成要素相組成物。
【請求項15】
相補的化学官能基が酸である、請求項14記載の多構成要素相組成物。
【請求項16】
相補的化学官能基がアミドである、請求項14記載の多構成要素相組成物。
【請求項17】
2種以上の独立した分子実体上の相補的化学官能基が同じでない、請求項12記載の多構成要素相組成物。
【請求項18】
2種以上の独立した分子実体上の相補的化学官能基が、酸およびアミド;ピリジンおよびアミド;ならびに、アルコールおよびアミンからなる群より選択される、請求項17記載の多構成要素相組成物。
【請求項19】
2種以上の独立した分子実体が薬剤分子である、請求項1記載の多構成要素相組成物。
【請求項20】
アスピリンと少なくとも1種の独立した分子実体の間の分子間相互作用により維持された固相を含む、多構成要素相組成物。
【請求項21】
アセトアミノフェンと少なくとも1種の独立した分子実体の間の分子間相互作用により維持された固相を含む、多構成要素相組成物。
【請求項22】
プロフェンと少なくとも1種の独立した分子実体の間の分子間相互作用により維持された固相を含む、多構成要素相組成物。
【請求項23】
フェニトインと少なくとも1種の独立した分子実体の間の分子間相互作用により維持された固相を含む、多構成要素相組成物。
【請求項24】
カルバマゼピンと少なくとも1種の独立した分子実体の間の分子間相互作用により維持された固相を含む、多構成要素相組成物。
【請求項25】
所望の超分子シントンを形成するために相補的化学官能基を同定する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)有効薬剤成分の構造を評価する段階;
(b)有効薬剤成分が、それ自身との超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを判定する段階;
(c)超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、更なる超分子シントンを形成して有効薬剤成分により形成された超分子シントンとすると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であって、同定された化学官能基は、有効薬剤成分により形成された超分子シントンにより形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することができず、かつ、選択された化学官能基が、有効薬剤成分により形成された超分子シントンと非共有結合を形成できる段階;ならびに
(d)有効薬剤成分と相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階。
【請求項26】
多構成要素固相組成物を調製する段階を更に含む請求項25記載の方法であって、多構成要素固相組成物が、有効薬剤成分および少なくとも1種の同定された共結晶形成体を含む方法。
【請求項27】
少なくとも1種の共結晶形成体が、異なる有効薬剤成分、GRAS化合物、食品添加剤、毒性の低い有機物、および金属有機錯体からなる群より選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
多構成要素固相組成物が、溶液からの結晶化、溶融物の冷却、昇華、および摩砕からなる群より選択される1種または複数の方法により形成される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
所望の超分子シントンを形成するために、相補的化学官能基を同定する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)有効薬剤成分の構造を評価する段階;
(b)有効薬剤成分が、それ自身との超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを判定する段階;
(c)超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、有効薬剤成分により超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であって、同定された化学官能基は、有効薬剤成分により形成された超分子シントン内の非共有結合を破壊することができ、かつ、選択された化学官能基が、有効薬剤成分上に相補的化学官能基との非共有結合を形成できる段階;ならびに
(d)有効薬剤成分と相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階。
【請求項30】
多構成要素固相組成物を調製する段階を更に含む請求項29記載の方法であって、多構成要素固相組成物が、有効薬剤成分および少なくとも1種の同定された共結晶形成体を含む方法。
【請求項31】
少なくとも1種の共結晶形成体が、異なる有効薬剤成分、GRAS化合物、食品添加剤、毒性の低い有機物、および金属有機錯体からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
多構成要素固相組成物が、溶液からの結晶化、溶融物の冷却、昇華、および摩砕からなる群より選択された1種または複数の方法により形成される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
所望の超分子シントンを形成するために、相補的化学官能基を同定する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)有効薬剤成分の構造を評価する段階;
(b)有効薬剤成分が、別の分子との超分子シントンを形成できる化学官能基を含むかどうかを判定する段階;
(c)超分子シントンを形成することが公知である複数の化学官能基から、有効薬剤成分により超分子シントンを形成すると考えられる少なくとも1種の官能基を同定する段階であって、選択された化学官能基が、有効薬剤成分上に相補的化学官能基との非共有結合を形成できる段階;ならびに
(d)有効薬剤成分と相補的である化学官能基を有する共結晶形成体を同定する段階。
【請求項34】
多構成要素固相組成物を調製する段階を更に含む請求項33記載の方法であって、多構成要素固相組成物が、有効薬剤成分および少なくとも1種の同定された共結晶形成体を含む方法。
【請求項35】
少なくとも1種の共結晶形成体が、異なる有効薬剤成分、GRAS化合物、食品添加剤、毒性の低い有機物、および金属有機錯体からなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
多構成要素固相組成物が、溶液からの結晶化、溶融物の冷却、昇華、および摩砕からなる群より選択される1種または複数の方法により形成される、請求項34記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−180239(P2010−180239A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89773(P2010−89773)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【分割の表示】特願2003−572946(P2003−572946)の分割
【原出願日】平成15年3月3日(2003.3.3)
【出願人】(504332089)ユニバーシティー オブ サウス フロリダ (11)
【出願人】(504332090)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ ミシガン (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【分割の表示】特願2003−572946(P2003−572946)の分割
【原出願日】平成15年3月3日(2003.3.3)
【出願人】(504332089)ユニバーシティー オブ サウス フロリダ (11)
【出願人】(504332090)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ ミシガン (5)
【Fターム(参考)】
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