説明

少なくとも1種類のブロックコポリマーを含む熱硬化性ポリ(チオ)ウレタン調合物およびその光学分野への応用による改善した強靱性を持つ有機ガラスの生産

当発明は重合可能な液体混合物で:(a)重合可能な熱硬化性組成物でこれが、第1の熱硬化性ポリマー原料の、重合での前駆体で、前記組成物が、ポリチオールが好ましいが、少なくとも1種類のポリチオールおよび/または1種類のポリオール、および少なくとも1種類のポリイソ(チオ)シアネートを含む、重合可能な熱硬化性組成物;および(b)第2のポリマー原料で、前述の重合可能な熱硬化性組成物に溶解し、第2の原料は(i)少なくとも2種類のポリマーブロックAおよびB、すなわちエラストマーブロックAおよび親水性ブロックBを含む少なくとも1種類のブロックコポリマーを含み、重合可能な混合物の重合に続いて、(ii)エラストマーブロックAに富み、かつそれらが第1の原料全体に分散されている領域を形成し、前記領域が80ナノメートルより小さく、好ましくは50ナノメートルより小さい第2のポリマー原料、を含む重合可能な液体混合物に関す。さらに当発明は改善した強靱性を持つ透明な物品に関し、これは上述した重合可能な混合物の重合により生産され、前記物品のマトリックスを形成する第1の熱硬化性ポリマー原料のアロイおよび前記第1の原料全体に分散した第2の原料の混合物を含む。先に述べた物品は衝撃および亀裂伝播に対して改善された耐性を持つ。当発明は眼科用光学部品に用いるのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広く、熱硬化性ポリ(チオ)ウレタン調合物および少なくとも1つのブロックコポリマーを含む重合可能な混合物、改善された強靱性を持つ透明な鋳型物品、とりわけ上記の混合物を重合して得られたポリ(チオ)ウレタンガラス基材を含む光学物品、およびその様な物品を生産する方法に関する。これらの物品はその改善された強靱性のため、耐衝撃性および耐亀裂伝播性により優れている。より具体的には当発明は眼鏡レンズ分野に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に眼鏡レンズの様な光学物品を生産するために用いられている基材には2つのタイプがあり、無機ガラス基材および有機ガラス基材がそれである。今日、市場は無機ガラスに比べて主にその優れた耐衝撃性および軽さという2つの優位性を持つ有機ガラスに際だって優位に発展している傾向がある。最も多く採用されている有機ガラス基材はビスフェノールAポリカーボネートおよびジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーを重合して作られたもので、とりわけPPG工業から商品名CR39TMとして市販されている。その様なレンズはEssilorから商品名OrmaTMとして市販されている。他の、直鎖状または枝分かれした、脂肪族または芳香族ポリオールアリルカーボネート類も用いることができる。さらに適した有機ガラスとしては、フランスの特許出願FR2734827に記載されているチオ(メタ)アクリル酸モノマー類、出願WO00/26272および EP0645647に記載されているチオウレタン調合物を持つもの、メチルメタクリレートの様な C1〜C4 アルキル(メタ)アクリレートモノマー類、エトキシレート化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、とりわけ2,2−ビス[4−(メタクリルオキシ−ジエトキシ)−フェニル]プロパンの様なポリエトキシレート化芳香族ポリ(メタ)アクリレートモノマー類から得られたものがある。ここに用いた(メタ)アクリレート基はメタクリレートまたはアクリレート基を表す。ポリウレタンタイプの熱硬化性樹脂はとりわけ興味深く、それは一般に1.6から1.74、好ましくはn=1.67からn=1.74の高い屈折率に達することを可能とし、眼鏡がより薄く、より平らになることを示唆するからである。この様な性能はイオウ原子の様な重い原子、または芳香族基をポリマー鎖の中に組み込んでいることによる。
【0003】
最近は「穴あき」とか「縁なし」といわれる眼鏡フレーム、つまり眼鏡レンズの外周を取り巻く環状フレームを持たないものが非常によく売れている。この新しいフレームに眼鏡のつる部を固定するために機械加工によりガラスに穴が開けられる。次に穴に固定装置を取り込み、つる部分がこの固定装置と一体に組み立てられる。穴を開けた部分には特に通常の状態でフレームを用いているとき、とりわけつる部分を開閉する際にガラスは応力を受ける。しかしながら、ある知られた眼鏡レンズ用の有機基材を用いた場合、裸眼で見える亀裂は穴の外周から数ミリ伝播することが観察されている。このため、市販されている高屈折率ポリ(チオ)ウレタンガラス基材の耐衝撃性および耐亀裂伝播性の特性を向上させることは製造者がねらいとする代表的な目的である。
【0004】
ポリマーアロイはそれが含む相の数がなんであれ、化学的性質が異なる(したがってコポリマーも含まれる)少なくとも2種類のポリマーの混合物を表す。ポリマーアロイには主に3つの区分がある:(1)熱硬化性成分および熱硬化性成分から成るアロイ;(2)熱可塑性成分(および/またはエラストマー成分)および熱可塑性成分(および/またはエラストマー成分)から成るアロイ;(3)熱可塑性成分(および/またはエラストマー成分)および熱硬化性成分から成るアロイ。区分(1)は前記相互貫入網目構造(IPN)の範囲を包含する。区分(2)は文献で最も研究されている。一般的に言えば、2種類の熱可塑性素材は混和性がない。これらは、とりわけジブロック型のブロックコポリマーの方法により相溶性がある様にできる。界面力を下げ界面密着性を向上させることでより細かな形態をつくり出し特に相間の応力伝達機構を促進し、結果として機械的特性を向上させる。区分(3)はモジュール化できる特性、とりわけ光学的および機械的特性を持つ原料を包含しているが、それは熱硬化性の相の例えば耐溶剤性または高屈折率の様な優位性と熱可塑性(および/またはエラストマー)の例えば耐衝撃性の様な優位性を組み合わせることができるからである。第3のタイプのアロイはさらに都合のよいことに採用した原料の反応の遂行を容易にする場合があり、例えば熱硬化性の重合可能な組成物内の液体モノマーが熱可塑性原料用の反応性溶媒として用いられる様な場合である。
【0005】
しかしながら、透明なポリマーアロイの範囲は、とりわけ熱可塑性または熱硬化型アロイの場合には限られている。一般論として、液体の熱硬化性の重合可能な組成物および第2の原料から誘導された熱硬化性相から成るアロイがその様な特性を得るためには2つの条件が満たされなくてはならない:(a)第2の原料は熱硬化性の重合可能な組成物と良好な混和性を持ち、これによりその中に比較的容易に溶解されなければならない;(b)熱硬化性原料の重合中に偏析、すなわち成長中のマトリックスおよび第2の原料から成る相の間においての相のマクロ分離は回避されなければならない。
【0006】
単純化すると、すべての混合物の混和性の状態は混合物中の自由エネルギーΔGに依存する:
ΔG = ΔH−TΔS
ここにΔHは混合物のエンタルピーを、およびΔSは混合物のエントロピーを表す。
【0007】
混合物が混和性であるための必要(十分ではないが)条件はΔGが負数であることである。ΔGが正数である場合には混合物は2相に分離する。反応性のある混合物では、反応が進むにつれ相平衡状態図が変化するため、任意時間/任意転換率において新たな熱力学的平衡が定義される。成長中のマトリックス内の化学種の分子量が増加することは混合物のエントロピーΔSの減少、したがって同時にΔGの増加につながり、このことは相のマクロ分離として、すなわち第2の原料を含む相の排除を介して表われるかもしれない。熱硬化性相および第2の原料を含む相の屈折率が異なる場合、この相のマクロ分離は散乱材料になる。このポリマーアロイを含む物品は白濁した外観を呈する。
【0008】
前記物品が眼鏡レンズの光学ガラスの基材である場合、散乱は着用者の視界の質に影響を与える。
熱硬化性系を強化するために従来から主に2つの系統のポリマー添加物、すなわち「始めから混和性がある」といわれる添加物および予め形成されたコアシェルタイプ粒子、が用いられてきた。しかしながら、ここ数年、熱硬化性ネットワークの機械的特性を向上させるためにブロックコポリマーを熱可塑性添加物として用いることが増加している。
【0009】
熱硬化性系システムの補強の第1のそして最も頻繁に用いられてもいるコンセプトは、当初から混和性とされる形態に依存するもので、このため添加物は熱硬化性系システムの前駆体に溶解されている。重合される系の分子量が増大するため、相分離現象が起き、その結果最終の系は添加物に富む相および熱硬化性系に富む相を含む2相となる。したがって添加物の量が少ない場合は、最終の熱硬化性構造は分散した添加物含有物を含む。これらの添加物は2種類のタイプをとることが可能で、すなわち、エラストマー類か、または高いガラス転移温度を持つ熱可塑性素材の何れかである。最もよく知られているエラストマーはブタジェンおよびアクリロニトリルのランダムコポリマーで鎖の末端で官能基化されているものが含まれる。これらは末端アミン基(ATBN:Levita,G.;Marchetti,A.;Butta,E.Polymer1985,26,1110−1116)、カルボキシル基(CTBN:Manzione,L.T.;Gillham,J.K.J.Appl.Polym.Sci.1981,26,907−919)または末端エポキシ基(ETBN:Verchere,D.;Sautereau,H.;Pascault,J.P.J.Appl.Polym.Sci.1990,41,467−485)の場合がある。都合のよいことに、エラストマーはその粘度が低いため、系の加工性を変えることはない。反応後の形態は小さなエラストマー粒子(0.1から1μmの範囲)が分散しネットワークにくっついた2相タイプである。しかしながら、エラストマーには、添加物の一部が熱硬化性系成分に富む相に溶解したままになり得るという相分離の際の熱硬化性系の補強に関して決定的な限界がある。可塑化したネットワークのガラス転移温度はしたがって低下し、これは良好な熱機械特性(Tg≧70℃、好ましくは≧80℃、さらに好ましくは≧90℃)が期待されているために望ましいことではない。しかも、コンセプトが反応中に起きる相のマクロ分離現象に依存し、したがって乳濁した最終素材をもたらすことになり、これは光学分野にとっては大して興味が持てることではない。エラストマーの欠点を是正するため、ポリ(エーテル−イミド類)(PEI:Hourston,D.J.;Lane,J.M.;Zhang,H.X.Polym.Int.1997,42,349−355)またはポリ(エーテル−スルホン類)(PES:Raghava,R.S.J.Polym.Sci.B:Polym.Phys.1987,25,1017−1031)の様なガラス転移温度(Tg)の高い熱可塑性プラスチックを用いてマトリックス内に分散した硬く、延性のある粒子をベースとした系を作り出した。この場合、ガラス転移温度の低下はない。しかしながら熱可塑性濃度が小さい場合、PEIまたはPESの小塊は熱硬化性マトリックスの破壊強度を大きくは変更しない。反対に熱可塑性濃度が高い場合には、得られた両連続形態により耐亀裂伝播性に著しい改善が可能になる。先に述べた様に、コンセプトは重合中のマクロ分離に依存し、したがって乳濁した最終製品を作り出してしまう。熱硬化性系を補強するための第2のコンセプトは事前形成のコア−シェルタイプの粒子をマトリックス内に分散することから成り、コアは架橋した、または熱硬化性前駆体モノマーに不溶なグラフト性エラストマーで形成され、シェルは熱硬化性樹脂内の粒子を安定させるために用いられているコアの上にグラフトされている。寸法の調整は最初の粒子寸法の選択のみに依存する。このコンセプトにしたがって、PBA/PMMAと表記されるブチルポリ(アクリレート)コア粒子/ポリ(メチルメタクリレート)シェル粒子を用いたエポキシネットワーク補強に関してはAshida,T.;Katoh,A.;Handa,K.;Ochi,M.J.Appl.Polym.Sci.1999,14,2955−2962に記載された。それでも、満足な衝撃補強を与える事前形成した粒子の寸法は透明な素材の生産を可能にするには大きすぎた。この様に熱硬化性マトリックスの耐亀裂伝播特性はこれらのコンセプトのいずれを用いても改善される可能性がある。しかしながら、両者とも、得られたマトリックスは光学分野では決定的な要求性状である透明ではない。
【0010】
ブロックコポリマーをこれらの熱硬化性マトリックス内に導入することに依存する第3の衝撃補強のコンセプトに関しては、文献には最近のほんの幾つかの例が記載されているだけである。PCL−b−PDMS−b−PCLと表記されるポリ(カプロラクトン)−ブロック−ポリ(ジメチル−シロキサン)−ブロック−ポリ(カプロラクトン)トリブロックコポリマーをエポキシマトリックスに導入した結果、マトリックス内に均質に分布した直径が約20nmの粒子を形成できた。最終素材は透明で補強はコポリマーの重量の5%を含む混合物では100%を超え、その内容については「ポリシロキサン−ポリカプロラクトンで変性したエポキシ樹脂の最終特性」、Konczol,L.;Doll,W.;Buchholz,U.;Mulhaupt,R.J.Appl.Polym.Sci.1994,54,815−826、に見いだすことができる。同じタイプのマトリックスとして、「ポリエーテルエステルブロックコポリマーで変性したエポキシ樹脂の強化:機械特性に関する変性分子構造の影響」というHofflin,F.,Konczol,L.;Doll,W.;Morawiec,J.;Mulhaupt,R.J.Appl.Polym.Sci.2000,76,623−634の記事によると、さらにポリ(オキシテトラメチレン)の柔軟ブロックおよびポリ(ヘキサメチレンテレフタレート)の剛性ブロックを含むコポリマーを導入することによってもマトリックスの機械的特性を改善することが可能である。
【0011】
最後に、Arkema(旧Atofina)製のスチレン−(1,4−ブタジエン)−メチルメタクリレートタイプ(ABCタイプのSBMコポリマー類)のトリブロックコポリマーを熱硬化性エポキシマトリックス内に加えることにより最近の研究を引き起こすと共に、素材の機械的特性に関するの劇的な改善だけではなくさらに透明を保ち弾性率もわずかしか低下しないという結果を生じた。これらの研究は Ritzenthaler,S.;Court,F.;David,L.;Girard−Reydet,E.;Leibler,L.;Pascault,J.P.Macromolecules2002,35,6245−6254の「ABCトリブロックコポリマー類/エポキシ−ジアミンブレンド1。ナノ構造の熱硬化性樹脂を達成するためのカギ」、Ritzenthaler,S.;Court,F.;Girard−Reydet,E.;Leibler,L.;Pascault,J.P.Macromolecules2003,36,118−126の「ABCトリブロックコポリマー類/エポキシ−ジアミンブレンド2。形態および特性をコントロールするパラメータ」、Girard−Reydet,E.;Pascault,J.P.;Bonnet,A.;Court,F.;Leibler,L. Macromol.Symp.2003,198,309−322の「エポキシ熱硬化性樹脂の新区分」、およびブロックコポリマー類をより具体的に記載しているヨーロッパ特許出願 EP1290088 に記載されている。
【0012】
熱硬化性マトリックスの衝撃強化に関する第3のコンセプトはこれらのマトリックスにブロックコポリマーを導入するというもので、エポキシタイプのマトリックスについてのみ記載されている。しかし、以前から有効な新しい重合可能なポリ(チオ)ウレタンを手に入れることが望ましいと言われていて、そうなれば特に「穴開き眼鏡」に応用できる耐衝撃性および耐亀裂伝播性特性を兼ね備える高屈折率光学物品用の新しい透明な基材が得られる。ヨーロッパ特許 EP1290088に記載されている様なポリ(チオ)ウレタン調合物にSBMタイプのブロックコポリマー類を導入することから成る対策では不十分である。本発明者はこれが相のマクロ分離につながり、かつ完全に不透明な最終素材を生産することになることを発見した。その説明として、この結果はメチルメタクリレートブロックが「相溶性」ブロック(反応の始めから終わりまで混和性がある)として作用し、かくしてエポキシ調合物内にトリブロックナノ構造を可能にするという事実がポリ(チオ)ウレタン調合物内ではその様に作用しないためであろうとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって本発明の目的は透明性を奪うことなく第1の原料を含む将来のマトリックスに改善された強靱性を与えられる1種類(以上)のコポリマーを含む第2の原料が溶解している第1の原料の前駆体である熱硬化性ポリ(チオ)ウレタン調合物を含む重合可能な混合物を提供することである。強靱性は応力度限界係数(破壊靭性値)KIcを用いて測定し、これは耐衝撃性および亀裂伝播の制限に肯定的な影響がある。ブロックコポリマーの定義した範囲が、100℃における貯蔵弾性率E’の低下につながるガラス転移温度(Tg)の低下を全く招くことなくポリ(チオ)ウレタンマトリックスをナノ構造にすることを可能にする。
【0014】
本発明の別の目的は透明な物品、特に眼鏡レンズの様な光学物品を提供することであり、これは第1の熱硬化性ポリマー原料および第2のポリマー原料を含んで機械特性および/または光学特性を変性し、一方で得られる鋳型物品が透明である様に相のマクロ分離を防いでいるポリマーアロイを含む、先の重合可能な混合物を重合した結果得られるものである。最後に、その様な物品を作る方法を提供することが当発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
適切なブロックコポリマーを選定することにより先行技術による重合可能な混合物による問題点を相殺することが可能になる。出願者達は特定のブロックコポリマー類のおかげでエラストマー相を原位置に作り出すことができ、それが十分に小さいため透明性を妨げたりまたは100℃における素材のE’係数を低下させることがないことを見いだした。
【0016】
上に記載した目的は液体の重合可能な混合物で(a)第1の熱硬化性ポリマー原料の、重合での前駆体で、組成物が、少なくとも1種類のポリチオールが好ましいが、少なくとも1種類のポリチオールおよび/または少なくとも1種類のポリオール、ならびに少なくとも1種類のポリイソ(チオ)シアネートを含む熱硬化性の重合可能な組成物(b)前記熱硬化性の重合可能な組成物に溶解された第2のポリマー原料を含み、前記第2の原料が:
−ブロックAがエラストマーブロックでブロックBが親水性ブロックである少なくとも2種類のポリマーブロックAおよびBを含む少なくとも1種類のブロックコポリマーを含む。
−さらに重合可能な混合物の重合の後に、第1の原料内に分散したエラストマーブロックAに富んだ、領域の寸法が80ナノメートル未満、好ましくは50ナノメートル未満である領域を形成する。
【0017】
先に述べた重合可能な混合物において、ブロックBは少なくともその重量の2%、好ましくはその重量の3%から15%の量の水を吸収することができることが好ましい。
ブロックBは水溶性モノマーから作れる、つまりブロックBが水溶性モノマーから形成されたブロックホモポリマーであるかまたは少なくとも1種類の水溶性モノマーユニットを含むブロックコポリマーであることにより親水性にすることもできる。
【0018】
これはまた既に形成されている非親水性ブロックホモポリマーまたはコポリマーを処理して、例えばブロックホモポリマーまたはコポリマー内に既に存在する官能基を変換して得ることもできる。この様な方法は例えば「新規蛍光貼り付けされたポリカチオンからできた静電気的に自己集合した多層フィルムにおける強化されたForster共鳴エネルギー移動」Jean−Francois Baussard,Jean−Louis Habib−Jiwan,Andre Laschewsky Langmuir 2003,19,7963−7969 の記事に記載されている。
本願の残りの部分では、水溶性のモノマー類から始まる作り方についてより具体的に記載し、これが最も好ましい実施形態である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明による重合可能な混合物は重合の後、改善された強靱性を持つ透明物品をもたらし、これは前記物品のマトリックスを形成する第1の熱硬化性ポリマー原料、および前記第1の原料内に分散された第2のポリマー原料のアロイを含む。本開示は本質的に2つの範疇のポリマーブロック、AおよびBを含むブロックコポリマー類の特定の単純な場合について説明しているが、当発明における本重合可能な混合物がこの種のブロックコポリマー類に多少なりとも制約されるものではないことはここに言及しておくべきである。前記重合可能な混合物は少なくとも2種類のブロックAおよびBを含むすべてのブロックコポリマーを、とりわけ2つを超える範疇のブロックを含むブロックコポリマー、例えばBAB、ABC、BACまたはACBタイプのトリブロックを、ポリマーブロックAおよびBおよび本発明による重合可能な混合物の重合による素材が定義した特性を持っているという条件付で、含むことが可能である。
【0020】
本発明による重合可能な混合物は液体であるかまたはその重合反応条件の下で、随意的に加熱により、液体になったものでもよい。これは熱硬化性の重合可能な組成物を含み、これらの条件の下ではこれも液体であることが好ましい。ここで用いた「液体」とは物質の状態でこれが重力の下で流れる十分な流動性を示すが空間を自由に動けるほど十分ではないことを意味する。熱硬化性の重合可能な組成物は重量で本発明による重合可能な混合物の50から99%を占めることが好ましく、70から95%が好ましい。重合(または共重合)により、この組成物はポリ(チオ)ウレタンタイプの第1の熱硬化性ポリマー原料となる。ポリチオウレタンはイソシアネートとチオールの反応生成物である。第1の熱硬化性原料は1種類以上の架橋した(共)重合物を含むことができるが、1種類のみの架橋した(共)重合物が好ましい。熱硬化性の重合可能な組成物は少なくとも1種類のポリチオールが好ましいが、少なくとも1種類のポリチオールおよび/または少なくとも1種類のポリオール、および少なくとも1種類のポリイソ(チオ)シアネートを含む。ここに用いた「ポリチオール」とはその構造の中にジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサチオール化合物の様な少なくとも2種類のチオール基を持つすべての化合物を意味する。したがって随意的に少なくとも2種類のチオール基を持つテレキーリックポリマーまたはプレポリマーに関連づけることもできる。1つ以上のポリチオールは次の式(I)を持つことができる:
(SH)n1 (I)
ここにn1は2から6の範囲の整数、好ましくは2または3を表し、Rは脂肪族、脂環式、複素環式または芳香族ラジカルを表し、その結合価はn1である。Rは第1アミン、第2アミンおよびヒドロキシル基のような易動性水素原子を持った基を含む場合がある。Rはさらに1つ以上のヘテロ原子、例えばイオウ、酸素、セレンまたは窒素原子をその炭素鎖内に含む場合もある。Rがその構造内に複素環または芳香族基を含む場合、後者は1つ以上のClまたはBrの様なハロゲン原子で置換することができる。ポリチオール化合物はポリチオールモノマーで2つまたは3つのチオール基を含むことが好ましい。本発明に用いることができる適切なポリチオール類の例は特許 EP394495、US4775733、US4609762およびUS5225472に言及されている。ポリチオール類は、これらに限定されないが、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロプリオネート)、1−(1’−メルカプトエチルチオ)−2,3−ジメルカプトプロパン、1−(2’−メルカプトプロピルチオ)−2−(2’−メルカプトプロピルチオ)−2、3−ジメルカプト−プロパン、1−(3’−メルカプト−プロピルチオ)−2,3−ジメルカプトプロパン、1−(4’−メルカプトブチルチオ)−2,3−ジメルカプトプロパン、1−(5’−メルカプトペンチルチオ)−2,3−ジメルカプトプロパン、1−(6’−メルカプトヘキシルチオ)−2−(6’−メルカプトヘキシルチオ)−2,3−ジメルカプト−プロパン、1,2−ビス(4’−メルカプトブチルチオ)−3−メルカプトプロパン、1,2−ビス(5’−メルカプトペンチルチオ)−3−メルカプトプロパン、1,2−ビス(6’−メルカプトヘキシル)−3−メルカプトプロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3’−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2’−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(4’−メルカプトブチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(6’−メルカプト−ヘキシルチオ)プロパン、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,11−ウンデカンジチオール、1,12−ドデカンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、式(II)の1,2−ビス(2’−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン(または4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール、またはMDO)、1,2−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、2,2−ブタンジチオール、1,2−ヘキサンジチオール、2,5−ヘキサンジチオール、2,6−ヘプタンジチオール、2,4−ペンタンジチオール、3,3−ペンタンジチオール、7,8−ヘプタデカンジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、4−エチル−ベンゼン−1,3−ジチオール、1,18−オクタデカンジチオール、1,3−(4−クロロフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,1−シクロヘプタンジチオール、1,1−シクロペンタンジチオール、ジチオペンタエリスリトール、1,4−ジチオトレイトール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル−2’,3’−ジメルカプトプロピル−エーテル、2,3−ジヒドロキシプロピル−2’,3’−ジメルカプトプロピル−エーテル、2,6−ジメチルオクタン−2,6−ジチオール、2,6−ジメチルオクタン−3,7−ジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、3,3−ジメチルブタン−2,2−ジチオール、1,3−ジ(4−メトキシフェニル)−プロパン−2,2−ジチオール、10,11−ジメルカプトウンデカン酸、6,8−ジメルカプト−オクタン酸、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,2’−ジメルカプト−ビフェニル、4,4−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビベンジル、3,4−ジメルカプトブタノール、3,4−ジメルカプトブチルアセテート、2,3−ジメルカプト−プロパン−1−オール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、2,3−ジメルカプトプロピオン酸、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、3,4−チオフェンジチオール、ジメルカプトプロピル−2’,3’−ジメトキシプロピルエーテル、3,5,5−トリメチルヘキサン−1,1−ジチオール、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、ノルボルネン−2,3−ジチオール、ビス(2−メルカプトイソプロピル)エーテル、ビス(11−メルカプト−ウンデシル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(18−メルカプト−オクタデシル)スルフィド、ビス(8−メルカプト−オクチル)スルフィド、ビス(12−メルカプトデシル)スルフィド、ビス(9−メルカプトノニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトブチル)スルフィド、ビス(3−メルカプトプロピル)エーテル、ビス(3−メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(6−メルカプトヘキシル)スルフィド、ビス(7−メルカプトヘプチル)スルフィド、ビス(5−メルカプトペンチル)スルフィド、2,2’−ビス(メルカプトメチル)酢酸、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、ビス(メルカプトメチル)ジュレン、フェニルメタン−1,1−ジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、2−メチルシクロヒキサン−1,1−ジチオール、2−メチルブタン−2,3−ジチオール、エチレングリコールジチオグリコレート、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2,3−プロパントリチオール、1,2,4−ブタントリチオール、1,3,6−ヘキサントリチオール、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、1,3,5−ベンゼントリチオール、2,4,6−メシチレントリチオール、ネオペンタンテトラチオール、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、1,3,5−ベンゼントリチオール、2,4,6−トルエントリチオール、2,4,6−メチレントリチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトアセテート)、ジクロロネオペンチルグリコールビス(メルカプトプロピオネート)、ジブロモネオペンチルグリコールビス(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メルカプトアセテート)、ジメルカプトメチルジチアン、ジメルカプト−3−オキサペンタン、ジメルカプトジオキサオクタン、2−ブテン−1,4−ジチオール、3−ヘキシン−1,6−ジチオール、式(III)から(V)および(Va)に対応するポリエチレングリコールジチオール類およびポリチオール類、を含む群から選定することができる。
【0021】
【化1】

【0022】
ポリチオールはペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)ならびに式(II)および(Va)の化合物から選択されることが好ましい。当発明で用いられることが好ましいポリチオールは式(II)の1,2−ビス(2’−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン(MDO)である。
さらにポリチオールプレポリマー類も用いることができるが、モノマー類が好ましい。
【0023】
熱硬化性の重合可能な組成物は、少なくとも1種類のポリチオールが好ましいが、少なくとも1種類のポリチオール、および/または少なくとも1種類のポリオールに加えて、少なくとも1種類のポリイソ(チオ)シアネート、好ましくは少なくとも1種類のポリイソシアネートを含む。ここに用いた「ポリイソ(チオ)シアネート」は構造内に少なくとも2種類のイソチオシアネート基、または少なくとも2種類のシアネート基、または少なくとも1種類のイソチオシアネート基および少なくとも1種類シアネート基を含むすべての化合物を意味する。かくしてポリイソ(チオ)シアネートは随意的に上の定義を満たすテレキーリックポリマーまたはプレポリマーであってもよい。ポリイソ(チオ)シアネートは式(VI)で表すことができる:
(N=C=X)n2 (VI)
ここにXは酸素またはイオウ原子を表し、n2は2から6の範囲の整数を表し、さらにRは脂肪族、脂環式、複素環式または芳香族ラジカルを表し、その価数はn2に対応する。Rは第1アミン、第2アミンおよびヒドロキシル基の様な易動性水素原子を持つ基を含む場合がある。Rはさらにその炭素鎖内に例えばイオウ、酸素、セレンまたは窒素原子の様な1種類以上のヘテロ原子を含む場合もある。Rがその構造内に複素環式または芳香族基を含む場合、後者はClまたはBrの様な1種類以上のハロゲン原子で置換される場合がある。ポリイソ(チオ)シアネートはポリイソ(チオ)シアネートモノマーで2つまたは3つのイソ(チオ)シアネート基を含むことが好ましい。好ましいポリイソ(チオ)シアネート類は、これらに限定されないが、トリレンジイソ(チオ)シアネート類、とりわけ2,4−および2,6−異性体、フェニレンジイソ(チオ)シアネート類、とりわけメタ異性体、エチルフェニレンジイソ(チオ)シアネート類、イソプロピルフェニレンジイソ(チオ)シアネート類、キシレンジイソ(チオ)シアネート類、とりわけメタ−およびパラ−異性体、ジエチルフェニレンジイソ(チオ)シアネート類、ジイソプロピルフェニレンジイソ(チオ)シアネート類、ナフタレンジイソ(チオ)シアネート類、とりわけ1,5−異性体、ヘキサメチレンジイソ(チオ)シアネート類、ビス(イソ(チオ)シアナトメチル)−シクロヘキサン類、トリス(イソ(チオ)シアナトメチル)−シクロヘキサン類、トリメチルベンゼントリイソ(チオ)シアネート類、とりわけメシチレントリイソ(チオ)シアネート類、トリイソ(チオ)シアナト−ベンゼン類、とりわけ1,2,4−異性体、(ジイソ(チオ)シアナトジフェニル)−メタン類、とりわけ4,4’−異性体(式(VII)の化合物でここにZ=CHおよび n1=1である)、テトラメチレンジイソ(チオ)シアネート、シクロヘキサン−ジイソ(チオ)シアネート類、とりわけ1,4−異性体、1,2−ジイソ(チオ)シアナトプロパン、1,3−ジイソ(チオ)シアナトプロパン、エチレンジイソ(チオ)シアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソ(チオ)シアネート類、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソ(チオ)シアネート、ビフェニレンジイソ(チオ)シアネート類、とりわけ、2,2’−、2,4’−および 4,4’−異性体、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソ(チオ)シアネート、3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソ(チオ)シアネート、テトラメチルキシリレンジイソ(チオ)シアネート類、とりわけm−フェニレンジイソ−プロピリデンジイソシアネート(m−TMXDI)および p−フェニレンジイソ−プロピリデンジイソシアネート(p−TMXDI)、ビス(イソ(チオ)シアネートメチル)ビシクロヘプタン類、リシンエステルトリイソ(チオ)シアネート、トリフェニルメタントリイソ(チオ)シアネート類、ビシクロヘプタントリイソ(チオ)シアネート類、ヘキサメチレントリイソシアネート類、(ジイソ(チオ)シアネートジシクロヘキシル)−メタン類、とりわけ4,4’−異性体(式(VIII)の化合物で、ここに Z=CHおよびn1=1である)、ならびに2,2’−および2,4’−異性体、式(VII)、(VIII)、(IX)、(X)の化合物および式(XI)の化合物、とりわけイソフォロンジイソ(チオ)シアネート(式(XI)の化合物で、ここにX=0およびR=R=R=CHである)、を含む群から選択することができる。
【0024】
【化2】


ここにn1は0または1、n2は2から4の範囲の整数、n3は1から4の範囲の整数、n2+n3の合計 ≦6、n4は1から10の範囲の整数で好ましくは1から6、XはOまたはS、好ましくはOを表し、ZはO、S、Se、NH、C=O、SO、SO、SeO、CH、−CH=CH−または−C(R)−を表し、ここにRは水素原子またはC〜Cアルキルラジカル、好ましくはCHまたはCを表し、R、R、R、R、Rは互いに独立して水素原子またはC〜Cアルキルラジカル、好ましくはCHまたはCを表し、Rは水素原子、ハロゲン原子の好ましくはClまたはBr、もしくはC〜Cアルキルラジカル、好ましくはCHまたはCを表す。RおよびRが同じ、RおよびRが同じであることが好ましい。当発明で好んで用いられるポリイソ(チオ)シアネート類はキシレンジイソシアネート類である。
【0025】
ポリイソ(チオ)シアネートはその誘導体の形、例えば、その環式3量体(チオ)シアヌレート[1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリ(チ)オン]として、アロファネート誘導体(ウレタン化合物との反応の結果)の形として、ビウレット誘導体(尿素との反応の結果)の形として、またはポリイソ(チオ)シアネートそれ自体のポリチオールとの付加物の形もしくはこれらのイソ(チオ)シアヌレート、アロファネートまたはビューレット誘導体の形で用いることができることに言及しておくべきである。
【0026】
一般に、ポリチオール類およびポリイソ(チオ)シアネート類はチオ−ル基に対するイソ(チオ)シアネート基のモル比が0.8から1.2まで変化する様な量で用いられる。重合の後に結果として透明な熱硬化性ポリマー素材となるすべてのポリチオール/ポリイソ(チオ)シアネートの組合せが本発明では適切に用いることができる。
当発明による熱硬化性の重合可能な組成物は硬化を促進するために当業者にはよくしられている1種類以上の重合触媒を通常の量で含むことができる。慣例的に、ジラウリン酸スズジブチルの様なスズベースの触媒を用いることができる。
【0027】
さらに国際出願WO00/26272 に記載されている様な塩類も使用することができる。これらは単独でもまたは例えば重合禁止剤の様な他の硬化調整剤との混合物として、通常の量で用いることができる。さらに国際出願WO00/26272に記載されている様な電子供与化合物も特に熱硬化性の重合可能な組成物が反応性に乏しいチオール類および/またはイソ(チオ)シアネート類を含む場合には用いることもできる。一般に、電子供与化合物は触媒塩のカチオンを安定化させる。かくしてこれらはアニオン/カチオンのイオン対を分離することに寄与し、かくして重合媒体中のアニオンの反応性を向上させ、これにより重合反応を促進する。電子供与化合物はアセトニトリル誘導体から選択されることが好ましく、これにはマロノニトリル類、アミド類、アミン類、イミン類、ホスフィン類、スルホン類、スルホキシド類、トリアルキルホスフィット類、トリアリールホスフィット類、エチレングリコールエーテル類、クラウンエーテル類およびクリプタンド類の様なものがある。これらは重合可能な混合物の全重量に対し重量で0から5%を占めることが好ましく、0から1%がより好ましい。好まれる電子供与化合物はクラウンエーテル類、クリプタンド類、トリアルキルホスフィット類、トリアリールホスフィット類およびマロンニトリル類である。
【0028】
当発明による熱硬化性の重合可能な組成物はさらに光学物品、とりわけ鋳型物品、より具体的には眼鏡レンズ用の重合可能な組成物に慣例的に用いられる幾つかの添加物を通常量含む場合もある。添加物の例としては、これらに限定されないが、着色剤、光互変性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤および黄変防止剤の様な安定剤、芳香剤、防臭剤、離型剤、潤滑剤、接着促進剤およびカップリング剤がある。
【0029】
本発明により熱硬化性の重合可能な組成物で用いることができる適切なUV吸収剤(UV放射フィルターシステム)には、これらに限定されないが、4−アミノ安息香酸(PABA)およびその塩類、アントラニル酸およびその塩類、サリチル酸およびその塩類またはエステル類、とりわけアリールヒドロキシベンゾエート類、4−ヒドロキシケイ皮酸およびその塩類、ベンゾキサゾールスルホン酸誘導体、ベンゾイミダゾール類およびベンゾチアゾール類およびその塩類、ベンゾフェノン類、とりわけベンゾフェノンスルホン酸誘導体および2−ヒドロキシベンゾフェノン類およびその塩類、カンフルベンジリデンスルホン酸誘導体およびその塩類、第四アンモニウム基およびその塩類で置換したカンフルベンジリデン誘導体類、カンフルスルホン酸フタリリデン誘導体およびその塩類、ベンゾトリアゾール類、とりわけベンゾトリアゾールスルホン酸誘導体およびその塩類、オキサルアミド類、オキサニリド類、およびこれらの混合物が含まれる。
【0030】
本発明の中で適切に用いることができるUV吸収剤の例には、これらに限定されないが、2−(2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、PBSA(2−フェニル−ベンジミダゾール−5−スルホン酸のナトリウム塩、Givaudan−Roureから商品名PARSOLTMHSとして市販されている)、4−tert−ブチル−4’−メトキシ−ジベンゾイルメタン(Givaudan−Roureから商品名PARSOLTM1789として市販されている)、2−エチルヘキシル p−メトキシシナメートまたはアヴォベンゾン(Givaudan−Roureから商品名PARSOLTMMCXとして市販されている)、オクチル p−メトキシシナメート、UVINULTMMS40(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、BASF)、UVINULTMM40(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、BASF)、オクトクリレン(2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート)、2−エチルヘキシル 4−ジメチルアミノベンゾエート(オクチルジメチル−PABA)、トリエタノールアミンサリシレート、オクチルサリシレート、が含まれる。さらに、UV防止特性のあるポリマー類、とりわけベンジリデンカンフル基および/またはベンゾトリアゾール基を含むポリマー類でスルホン酸基または4級アンモニア基で置換されたものを用いることも可能である。これらは単独でまたは他のUV吸収剤と混合して用いることができる。
【0031】
3−メチル−ブタ−2−エン−1−オール(M−BOL)および特許US5442022、US5445828、US5702825、US5741831およびFR2699541 に記載されている様な黄変防止剤は、これらに限定されないが、単独または混合して用いることができる。
【0032】
当発明による熱硬化性の重合可能な組成物は全く溶媒を含まないことが好ましいことではあるが、それでも1種類の溶媒または溶媒の混合物を含むこともできる。溶媒は前記組成物内の塩、例えば塩の形の触媒の溶解を助けることができる。一般に溶媒混合物の濃度は重量で当発明による熱硬化性の重合可能な組成物の重量の0から2%を占め、0から0.5%が好ましい。アセトニトリル、テトラヒドロフランまたはジオキサンの様な極性溶媒を用いることができる。しかしながら、重合中の如何なる泡または濁りの発生をも避けるため、チオール類またはイソ(チオ)シアネート類に対し反応性のある溶媒を用いることが好ましい。ヒドロキシル基を持つ溶媒が好まれる。それらの中で、さらにチオールと反応できる二重結合を持った、および/またはイソ(チオ)シアネートと反応できる易動性水素(例えばNH、SH OH)を持つ別の官能基を持ったヒドロキシル化溶媒が最も興味ある。適切な溶媒にはメタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリルおよび3−メチル−ブタ−2−エン−1−オールが含まれ、黄変防止剤としても用いることができる。
【0033】
当発明による重合可能な混合物は前に定義した様な熱硬化性の重合可能な組成物に溶解された第2のポリマー原料を含む。このことは第2の原料が当初は前記熱硬化性の重合可能な組成物に、随意的に加熱により、可溶であることを要する。135℃未満の温度で可溶であることが好ましい。この第2の原料は少なくとも2種類のポリマーブロックAおよびBを含む少なくとも1種類のブロックコポリマーを含む。これは同時に両タイプのブロックによるすべての特性を示す。本発明においてタイプAのブロックおよびタイプBのブロックは技術上の特性が異なる2つの範疇のブロックである。これらは以後慣例的に「ブロックA」および「ブロックB」と呼び、それら自体幾つかのブロックを含む場合がある。AおよびBはランダムコポリマーであってもよい。
【0034】
当発明による重合可能な混合物の組成が、熱硬化性の重合可能な組成物の硬化中に相がマクロ分離するのを防止することを可能にしている。当発明によるブロックコポリマー類は前に定義したポリ(チオ)ウレタン熱硬化性マトリックスをナノ構造にすることが可能で、それは前記マトリックス内のその場所におよそ数10ナノメートルのエラストマー相を作ることによるもので、以下で説明する。当発明によると、第2原料は重合可能な混合物の重合の後に、第1熱硬化性原料中内に分散したエラストマーブロックAに富んだ領域を形成し、このエラストマー領域の大きさは80ナノメートル未満で、50ナノメートル未満が好ましく、20nm未満がさらに好ましい。時には大きさを10nm以下とすることさえ可能である。
【0035】
ここで用いた「領域の大きさ」はその最大の大きさを意味する。領域が球形の場合は領域の直径を意味する。領域が針状の場合は領域の長さを意味する。
【0036】
ブロックBは第1の熱硬化性原料(マトリックス)と相溶性があることが好ましく同時に、ブロックAは第1の熱硬化性原料と相溶性が無いことが好ましい。ブロックBに熱硬化性の重合可能な組成物と親和性があり、一旦重合可能な混合物の重合が起きてしまうと第1の熱硬化性原料で形成されたマトリックス内に第2の原料によるブロックAのナノ構造を得ることを可能にする場合に、前記第1の熱硬化性原料と「相溶性が無い」ブロックAとは対照的に、ブロックBは第1の熱硬化性原料と「相溶性がある」といわれる。相溶性ブロックBまたは「安定ブロック」の役割は、硬化中にマトリックス内にブロックAの領域、または「ナノ構造ブロック」の領域を安定化させることである。相溶性ブロックBは、ブロックAおよびBを含みさらに前記相溶性ブロックBを適切なモル量含むブロックコポリマーが、相のマクロ分離が全くなく、より具体的にはマトリックス内にブロックコポリマーが分散した物品を生産することを可能にする。
【0037】
ブロックBは一般に熱硬化性の重合可能な組成物に可溶である。すべて相溶性ポリマーブロックBのみから成る第2の原料は重合反応中に相のマクロ分離を全く生じさせない。対照的に、すべて非相溶性ブロックAのみから成る第2の原料は、例え当初は熱硬化性の重合可能な組成物に可溶であっても、重合反応中に相のマクロ分離を生じさせ結果として不透明な架橋した物品となる。ブロックの相溶性または非相溶性という性質は当初の熱硬化性の重合可能な組成物に対する前記ブロックの溶解性または前記ブロックを含むブロックコポリマーのそれに依存するものではない。
【0038】
より具体的には、物品が透明になるためには、第1の熱硬化性原料で形成されたマトリックスはブロックAに富んだ領域を介して数ナノメートル台のナノ構造になっていなくてはならない。前記領域の寸法が大きすぎると、物品は透明でなくなり乳濁すらしてしまう。当発明によると、ブロックAに富んだ領域の大きさは80ナノメートル未満であり、50ナノメートル未満が好ましく、これにより前記物品が不透明になることを防ぐ。したがってこれは相マイクロ分離現象といわれ、エラストマー領域の大きさが80ナノメートルを超える相マクロ分離現象に対している。ブロックが第1の熱硬化性原料と相溶性という事実は多くのパラメータ、とりわけ重合反応が起きる温度および重合可能な混合物内の第2の原料の重量パーセンテージに依存する。
【0039】
当発明による第2の原料は、最終素材の透明性を阻害しない様に通常は重量で重合可能な混合物の上限で50%までを占める。重量で重合可能な混合物の5から15%の重量を占めることがより好ましい。1種類のみのブロックコポリマーを含むことが好ましい。通常、当発明によるブロックコポリマーの数平均分子量は1000から500000g/モルまで変化するが、10000から500000g/モルが好ましく、20000から200000g/モルがより好ましい。それぞれのブロックは共有結合により直接に、またはブロックと一体化部分を形成せず、一方のブロックに共有結合で付加し、他方のブロックに別の共有結合で付加する中間分子によるかの何れかによりもう一方に付加する。しかしながらブロックの接合は直鎖状である必要はなく、ブロックが側鎖(テレブロック)を形成するグラフトポリマーの場合の様に放射状の場合もある。ブロックはステレオブロックのであってもよい。本発明に用いられるブロックコポリマー類には種々の立体規則性を伴うブロックを含む場合もある。それらはアタクチック、アイソタクチックまたはシンジオタクチックブロック、およびこれらの混合物を含む場合もある。前記ブロックは直鎖状に付加していることが好ましい。
【0040】
当発明のブロックコポリマーのブロックAはエラストマーブロックである。ここに用いた「エラストマー」は慣例的に天然ゴム(ポリイソプレン)の高い延性および高い弾性回復の様な特性を持つ合成ポリマーを意味する。エラストマーブロックは熱可塑性であってもまたは実質的に(例えば、通常の硬化手法を用いて)架橋していてもよい。本発明に用いられるエラストマー化合物の例には、これらに限定されないが、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、幾つかのポリウレタン類およびポリアクリレート類、これらのコポリマー類、およびブタジエンおよびアクリロニトリルコポリマー類の様なコポリマー類が含まれる。ここに用いた「コポリマー」とはブロックまたはグラフトがランダムであれ、交互であれ、すべてのコポリマーを意味する。ブロックAはこの様なエラストマー化合物で形成された幾つかのセグメントを含む場合もある。ブロックAは熱可塑性エラストマーブロックであることが好ましい。用いることができる熱可塑性エラストマー化合物には、これらに限定されないが、米国出願US2004209707に記載された様なイオノマー類、幾つかのポリウレタン類、ポリ(メタ)アクリレート類またはポリエステル類、ポリプロピレンおよびエチレン−プロピレン−モノマージエン(EPDM)もしくはSBSまたはポリ(スチレン−ブタジェン−スチレン)の様なブロックコポリマー類の混合物であるSantopreneTM、ポリブチレンテレフタレート剛性ブロックおよびポリテトラメチレンエーテルテレフタレート柔軟ブロックを含むHytrelTMの様なポリエーテル−エステルブロックコポリマー類、アタクチックおよびアイソタクチックブロックを含むプロピレンタイプブロックコポリマー類を、しかしさらにSarlinkTM、VyramTM、DytronTM、およびVistaflexTM も含む。
【0041】
ブロックAは少なくとも1つのモノマーユニットを含むブロックホモポリマーまたはコポリマーであることが好ましく、前記モノマーユニットは2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート類のブチル(メタ)アクリレート、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートの様なもの、ジエンのイソプレン、ブタジエン、イソブチレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3ブタジエンの様なものから選ばれている。
【0042】
ブロックAはポリ(ジエン類)、とりわけポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)およびそのランダムコポリマーもしくはポリ(ジエン類)の部分的または全体的に水素化したものから都合よく選択される。
ポリブタジエン類の中では、Tg(ガラス転移温度)が最も低いもの、例えばポリブタジエン−1,4が都合よく用いられ、そのTg(約−90℃)はポリブタジエン−1,2のそれ(約0℃)より低い。
ブロックAはまた水素化されていてもよい。この水素化は従来からある方法で実施される。
【0043】
より好ましくは、前記モノマーユニットは2−メトキシエチルアクリレート(MEA)、ブチルアクリレート(BA)、メチルアクリレート(MA)、ベンジルアクリレート(BnA)および2−フェノキシエチルアクリレート(PEA)から選択される。ここに用いた「モノマーユニット」はポリマーまたはオリゴマーの構造中の1つのモノマー分子のみからできた原子群を意味する。Tgが低いエラストマー化合物は衝撃強化特性があることで知られ、ブロックAのガラス転移温度は20℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることがさらにより好ましい。かくして、本発明に用いるのに適切なブロックAの中で、メチルポリアクリレートのTg≒5℃、エチルポリアクリレートのTg≒−24℃、ブチルポリアクリレートの Tg≒−54℃、2−エチルヘキシルポリアクリレートのTg≒−85℃、2−エチルヘキシルポリメタクリレートのTg≒−10℃、ベンジルポリアクリレートのTg≒6℃、2−フェノキシエチルポリアクリレートのTg≒−3℃、2−ヒドロキシエチルアクリレートのTg≒−15℃である。
【0044】
当発明によるブロックコポリマーのブロックBは親水性、すなわち本発明の文脈においては、これがその重量の少なくとも2%の量の水を、好ましくはその重量の少なくとも4%を、より好ましくはその重量の少なくとも8%の量の水を吸収できるということである。最適な親水性範囲はその重量の3から15%まで変化する。
【0045】
ブロックBは水溶性モノマーまたは少なくとも1種類の水溶性モノマーユニットを含むブロックコポリマーから形成されているブロックホモポリマーであることが好ましい。当発明によるブロックコポリマーのブロックBは熱可塑性ブロックであることが好ましく、熱可塑性コポリマーであることがより好ましい。ブロックAおよびBは、前に定義した様に少なくとも2種類のポリマーブロックAおよびBを含んでいる少なくとも1種類のコポリマーを含む第2のポリマー原料が少なくとも2つの条件、すなわち、当発明による熱硬化性の重合可能な組成物に当初は可溶であること、および、当発明による熱硬化性の重合可能な混合物が重合した後には、第1の原料内に分散するエラストマーブロックAに富んだ領域を形成しその領域の大きさが 80ナノメートル未満、好ましくは50ナノメートル未満であることを満たす様に選ばれなくてはならない。
【0046】
前に述べた様に、ブロックBは熱硬化性の重合可能な組成物に対して親和性があり、したがって重合可能な混合物の重合工程の終わりに第1の熱硬化性原料から成るマトリックス内の第2の原料中のブロックAをナノ構造にすることが可能になる。相溶性ブロックBまたは「安定化ブロック」の役割は硬化中のマトリックス内でブロックA領域、つまり「ナノ構造ブロック」を安定にすることである。
【0047】
ブロックBは水溶性モノマーまたは少なくとも1種類の水溶性モノマーユニットを含む(ブロックまたはグラフトコポリマーと、ランダム、交互である)ブロックコポリマーから形成されたブロックホモポリマーであることが好ましい。通常この様なブロックコポリマーは水溶性になる様に選定される。この様な親水性および水溶性の特性は無−位相マクロ分離が形成される硬化反応中を通して本発明による熱硬化性の重合可能な組成物に対する第2の原料の溶解性に効果的な影響を与える。換言すれば、ブロックB内に水溶性で高極性のモノマーユニットが特定量存在することによりこのブロックを第1の熱硬化性原料と相溶するものにしている。相溶性ブロックBが化学的に性質の異なる複数のモノマーユニットを含むコポリマーの場合、少なくともそれらの1つは第1の熱硬化性原料と相溶を呈するものでなくてはならない。これは水溶性モノマーユニットである。その様なユニットは「相溶性モノマーユニット」と呼ばれる。このタイプのコポリマーについては、決定的といわれる相溶性モノマーユニットのモルパーセンテージがあり、これを超えるとブロックは非相溶ブロックから相溶性ブロックに転換される。用いたブロックAのタイプにより、重合可能な混合物内のブロックコポリマーの初期混和性が変わることがあることには言及しておくべきである。ブロックAが初期には重合可能な混合物内で混和性があるなら、ミクロ相分離現象は重合中に観察することができる(反応中に80nm未満の大きさのエラストマー領域が現れる)。ブロックAが初期には重合可能な混合物内で混和性がないなら、重合開始前の重合可能な混合物内に小寸法領域が既に存在し反応中にブロックB内で安定化される。
【0048】
本発明に用いることができる水溶性モノマーユニットの例には、これらに限定されないが、(メタ)アクリルアミドユニット、低分子量N−アルキル−(メタ)アクリルアミドユニットでそのN−アルキル基がN−ヒドロキシエチルアクリルアミド、酸化エチレン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルピロリジン−2−オン、N−ビニルピロール、2−ビニルオキサゾリン、2−および4−ビニルピリジン、2−ビニル−4,4’−ジアルキルオキサゾリン−5−オン、ナトリウムスチレンスルホナート、スルホン酸ビニルナトリウム、アリルアルコール、3−トリメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロピル−(メタ)アクリレートクロリド、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、随意的に第4級グリセロール(メタ)アクリレート、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミドの様な水酸基で置換されたもの、低分子量アルキル(メタ)アクリレートユニットでそのアルキル基が水酸基、アミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アルキルアミノ基、または2−ヒドロキシエチルメタクリレートまたは4−ヒドロキシブチルアクリレートの様な(ポリアルキル)第4級アンモニウム基で置換されたもの、カルボン酸ユニットで合計3から5ヶの炭素原子を持ち、かつ、(メタ)アクリル酸、2−メタクリロイルオキシ−エチル−ホスホリルコリン、トリス−(トリメチルシロキシシリル)−プロピルビニルカルバマートの様なビニル基を保有するもの、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドユニットでN,N−ジメチルアクリルアミドの様なもの、N−アルキル(メタ)アクリルアミドユニットおよびエトキシ化(メタ)アクリレートで2−メトキシエチル(メタ)アクリレート類の様なもの、アルキルおよびビニールエーテルユニットでそのアルキル基が水酸基またはアミノ基で置換されたもの、ポリエチレングリコール(PEG)(メタ)アクリレートユニットでポリエチレングリコール基が400g/モルから10000g/モルまで変化するもの、およびポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレートユニットが含まれる。上のメタクリレート類またはメタアクリルアミド類は後者のこれらが当発明によるブロックコポリマーに期待通りの特性を与えるのに十分な水溶性であるならば、それぞれ(低級アルキル基または低級ヒドロキシアルキル基)アクリレート類および(低級アルキル基または低級ヒドロキシアルキル基)アクリルアミド類に置きかえることができる。ブロックBはこれらのモノマーユニットの混合物を含むブロックコポリマーであってもよい。
【0049】
ブロックBはポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニルピロリジン−2−オン)、ポリ(エチレンオキシド)のブロックホモポリマー類、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)モノマーユニットを含むブロックコポリマー類、N−ビニルピロリジン−2−オン(NVP)モノマーユニットを含むブロックコポリマー類、エチレンオキシドモノマーユニットを含むブロックコポリマー類およびこれらのモノマーユニットの混合物を含むブロックコポリマー類から選択されることが好ましい。実際、DMA、NVPおよびエチレンオキシドモノマーユニットが第1の熱硬化性原料に相溶する最良のモノマーユニットを代表する。ブロックBが水溶性モノマーユニットを100%未満のモルパーセンテージで含むブロックコポリマーである場合、残りから100%はアルキル(メタ)アクリレートユニットに該当することが好ましい。かくして、好ましい実施態様において、ブロックBはポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)(PDMA)ブロックホモポリマー類、ポリ(N−ビニルピロリジン−2−オン)ブロックホモポリマー類、ポリ(エチレンオキシド)ブロックホモポリマー類、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド−コ−メチルメタクリレート)ブロックコポリマー類、ポリ(N−ビニルピロリジン−2−オン−コ−メチルメタクリレート)ブロックコポリマー類およびポリ(エチレンオキシド−コ−メチルメタクリレート)ブロックコポリマー類から選択される。ブロックB内の水溶性モノマーユニットの量、さらにはブロックBおよび Aの相対分子量は反応中のポリ(チオ)ウレタンの形成のブロックコポリマーの組織構造の発生に主要な役割を果たし、このため素材の最終構造に強く影響する。
【0050】
とりわけ好まれるブロックBはメチルメタクリレート(MMA)および水溶性モノマーのコポリマーである。
MMAの量は水溶性モノマーが90から5%まで変化することにしたがって、10から95モル%となり得る。
ブロックコポリマーBのモノマーユニットの少なくとも40モル%は水溶性モノマーユニットであることが好ましく、それはN,N−ジメチルアクリルアミドモノマーユニット、N−ビニルピロリジン−2−オンモノマーユニット、酸化エチレンモノマーユニットおよびこれらの混合物であることが好ましい。このパーセンテージは先に述べた決定的なパーセンテージに対応する。
【0051】
ガラス転移温度(Tg)が第1の熱硬化性ポリマー原料のそれ以上のブロックBを用いることがとりわけ都合がよい。このことは結果としてTgが高い透明物品になることになる。Tgが高いほど素材の熱機械特性がよくなる。熱硬化性の重合可能な組成物の、ポリチオール類が好ましいが、ポリチオール類および/またはポリオール類に溶解したブロックBを用いることは重合工程で用いることができる温度においてとりわけ都合がよい。この溶解特性は重合反応中の相マクロ分離を無くする上で前向きの効果を持つ。ブロックB内に水溶性モノマーユニットが多量にあることによりポリチオール類内の溶解性を向上させる。
当発明によるブロックコポリマー内のBの重量パーセンテージは5から95%まで変わることが好ましく、15から85%までがより好ましい。
【0052】
当発明によるブロックコポリマーはABまたはBABタイプのものであることが好ましい。ここに用いた「BABタイプのブロックコポリマー」は両端のそれぞれのBタイプのブロックが同じであるコポリマーだけでなく、両端のそれぞれのBタイプのブロックがその重量のため、またはそのモノマーユニットの性質および連鎖の何れかのために異なるコポリマーをも意味する。当発明において好まれるブロックコポリマー類はBABブロックコポリマーで、ここにAは2−メトキシエチルポリアクリレート(PMEA)ブロックを表し、BはモルパーセンテージでN,N−ジメチルアクリルアミドモノマーユニットを58%、およびモルパーセンテージでメタクリレート(MMA)モノマーユニットを42%含むポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド−コ−メチルメタクリレート)ブロックを表す。上のBABブロックコポリマーに比べ、ブロックAのモル量は32%未満であることが好ましい。上のポリ[(DMA−コ−MMA)−b−MEA−b−(DMA−コ−MMA)]ブロックコポリマー類の内、当発明によってとりわけ好まれるものはArkemaから商品名DC58として市販されている。このためその安定化ブロックBはメチルメタクリレート構成要素(42モル%)および高パーセンテージ(58%モル%)のN,N−ジメチルアクリルアミド構成要素から形成されたランダムコポリマーである。これはPMEAブロックAを31.1%およびポリ(DMA−コ−MMA)ブロックBを68.9%含み、これらのモル量はNMRにより判定されている。
【0053】
当発明によるブロックコポリマーはさらにBACまたはACBトリブロックコポリマーの場合もあり、ここにAおよびBは先に定義した様なもので、ブロックCはPMMAホモポリマーまたはビニルモノマーまたはビニルモノマー混合物をベースとしたポリマーである。
ブロックCの適切な例にはスチレン、α−メチルスチレン、ビニル−トルエン類の様なビニル芳香族化合物から誘導されたもの、およびアルキル鎖に1から18ヶの炭素原子を持つアクリルおよび/またはメタクリル酸のアルキルエステルから誘導されたものを含む。BACトリブロックは1000から500000g/モル、好ましくは10000g/モルから500000g/モル、より好ましくは20000から200000g/モルの範囲をとり得る数平均分子量を持つ。
【0054】
BACトリブロックは全体を100%として重量濃度で表した次の組成を持つことが都合良い:
B+C:10から80%、好ましくは15から70%。
A:90から20%、好ましくは85から30%。
当発明によるブロックコポリマーは例えばヨーロッパ特許出願EP524054およびEP749987に記載された方法による陰イオン性重合により作ることが可能である。
【0055】
Bはすべての重合方法で、とりわけ制御されたラジカル重合で整えることができる。制御されたラジカル重合はよく知られている。通常のラジカル重合では構造的に制御されたポリマー類およびコポリマー類の生産はできないが、それはとりわけラジカルの寿命が短いため、反応性が高いためおよび中間種の立体化学が不足しているためである。ここに用いた「制御されたラジカル重合」とは通常のラジカル重合を意味するが、ここで制御が次に示す連鎖開始反応、生長反応、停止反応および伝達から選ばれる少なくとも1つの工程において行われるものを意味する。制御の例として、成長中のマクロラジカルの可逆的失活を挙げることができる。この可逆的失活は反応媒体に窒素酸化物を加えることにより引き起こすことができる。持続性のある窒素酸化物ラジカルは例えば、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ)で、これはマクロラジカルを捉え通常は非常に狭い多分子性のホモポリマーとなり、かくしてラジカル重合にいくらか「生きている」特性を与える。さらにベータ−リン酸化分子およびニトロオキシド基のアルファカーボンに水素が付加したものを持つものも含まれる。
【0056】
本発明はさらに当発明による重合可能な混合物を重合することで作られる改善された強靱性を持つ透明物体、好ましくは、ここでは「ポリ(チオ)ウレタンガラス」と称する透明の鋳型物品にも関する。前記物品はこの物品のマトリックス(アロイの主相)である第1の熱硬化性ポリマー原料、および前記第1の架橋済み原料中に分散した第2のポリマー原料のアロイを含む。当発明によると、第2のポリマー原料は第1の原料内に分散したエラストマーブロックAに富んだ領域を形成し、領域の大きさは80ナノメートル未満、好ましくは50ナノメートル未満である。
【0057】
第2のポリマー原料はポリ(チオ)ウレタンマトリックスの機械特性および/または光学特性を、都合の良いことに両タイプのブロックのそれぞれの特性を同時に持つものに変更する。かくして、当発明の物品の100℃の貯蔵弾性率E’およびガラス転移温度は好ましいことに第1の熱硬化性ポリマー原料のそれらより高い。貯蔵弾性率E’はRheometrics Solid Analyser RSAII装置を用いて測定したが、これは粘弾性素材の機械力学的特性を特徴づけるために慣例的に用いられるものである。装置は牽引モードで用いられる。サンプルには低振幅の動的正弦波の歪みを加える(まだ素材の線形弾性域内にある)。このテストにより(弾性エネルギーの)貯蔵弾性率E’と同時に(粘性)E”損失弾性率が決定する。E’は加えた力の影響による素材の変形性能の測定を可能にする。本発明において、E’は100℃で測定され、この温度はガラスの種々の製造工程および着色やラッカー塗り工程の様な随意的に後に続く処理で到達する温度である。当発明によるブロックコポリマー、とりわけBABタイプブロックコポリマーを適当量、ブロックコポリマーBのモノマーユニットの少なくとも40モル%がDMA、NVPまたはエチレンオキシドモノマーユニット、およびそれらの混合物から選ばれている、を組み入れることにより100℃において30から300MPa、好ましくは35から200MPaの貯蔵弾性率E’を得ることが可能となる。
【0058】
さらに、当発明による物品の応力度限界係数(破壊靭性値)KIcは第1の熱硬化性ポリマー原料のそれより高い。MPa・m1/2で表現される応力度限界係数KIcは切り欠き付素材の破壊強度の尺度である。これはASTME399またはASTM1820規格に準拠した標準切り欠き付疲労試験片に加える引っ張り強さで判定されている。
【0059】
発明はさらに有機ガラスの基材を含む光学物品にも関し、その有機ガラスの基材は当発明による透明物品である。前記光学物品はとりわけ眼鏡レンズを作ることに適応している。この物品は仕上げガラス、つまり鋳型終了時点でその両方の光学面が予定した幾何学的形状を持ったガラス、または半仕上げガラス、つまりその一つの面は既にその最終的な幾何学的形状を持ち、一つ面は最終的な幾何学的形状を持つまでの表面加工、同時に適切なツールによる平滑研削および研磨作業を行わなければならないガラスの場合がある。当発明により得た物品は透明で改善された強靱性(KIc)を持ち、このことがより優れた耐衝撃性および耐亀裂伝播性につながる。このため、当発明によるポリ(チオ)ウレタン素材はとりわけ穴開き眼鏡に相応しく、それはこの様に穴開け作業中および続く眼鏡フレーム取付中の亀裂伝播を制限しまたは防止することさえ可能とするからである。
【0060】
この様な光学物品、例えば基材が有機ガラスの眼鏡レンズの、とりわけ耐衝撃性、耐摩耗および耐引掻性、反射防止特性および耐汚れ性の様な幾つかの特性を改善するためにその主表面の少なくとも1つの面に1種類以上の機能性塗膜を塗工することが可能である。有機ガラスの主たる欠点である無機ガラスより硬度が低いということは耐引掻性に乏しいということである。かくして、基材の主表面に物品の耐衝撃性と同時に後に続く塗膜の基材との接着を増すことを目的とした耐衝撃性プライマーと呼ばれる第1塗膜を、次いでこの耐衝撃性プライマー塗膜の上に一般に耐摩耗塗膜または耐引掻塗膜と呼ばれその目的が光学物品の表面が機械的攻撃に耐える能力を増すことにあるハードコートを連続的に形成することは極めて一般的に行われていることである。耐摩耗塗膜の上に反射防止塗膜が重ねられ、次いで順番に汚れ防止塗膜が重ねられ、その目的は反射防止層と水またはグリースの間の界面張力を変え(それらの付着を減らすため)、同時に空隙を満たしてそこにグリースが入り込み残留することを防ぐことである。
【0061】
最後に当発明は先に説明した様な透明な物品を作る方法に関する。当発明による方法は少なくとも5つの工程を含む。第1の工程は、ポリチオール類が好ましいが、ポリチオール類および/またはポリオール類の中に、随意的に加熱およびかき混ぜにより、少なくとも1種類のブロックコポリマーを含む、第2原料を溶解することから成る。ブロックコポリマー類は粉末または顆粒状の形で用いられることが好ましい。第2の工程はかくして得られた均質溶液にポリイソ(チオ)シアネート類を、随意的に加熱しながら、加えることおよび得られた重合可能な混合物を均質にすることから成る。第1工程で得られた溶液の脱ガス処理が第2工程の前に、随意的に真空下で加熱しながら実施されることが好ましい。脱ガスの終点では偏析が起こる場合があり、これは2つの相を形成し、その中で一方はブロックコポリマー類に富み他方はポリチオールおよび/またはポリオールに富む。この脱ガス処理はかなり重要である。実際、水溶性モノマーユニットを含むブロックコポリマーは本質的に吸湿性である。PDMA自体が吸湿性ホモポリマーで粉末状態において多くの割合の水を含む。イソ(チオ)シアネート官能基は水に対して反応性があり、ポリイソ(チオ)シアネートの中に多数の水溶性モノマーユニットを持つブロックコポリマーを溶解することにより、粉末状ブロックコポリマー内に含まれる水を介して一部のイソ(チオ)シアネート官能基の加水分解を引き起こす(粉末状ブロックコポリマーをポリイソ(チオ)シアネート類に溶解した場合80℃で1/2時間持続する場合がある)。したがって、重合中の気泡の発生ならびにSHおよびNCO官能基間の定比性の問題が生じる。この調合物を作る最善の方法はポリチオール類が好ましいが、ポリチオール類および/またはポリオール類の中にブロックコポリマーを溶解し、次いでこの2成分混合物をポリイソ(チオ)シアネート類を導入する前に脱ガスすることである。工程2でポリイソ(チオ)シアネート類を加えることにより溶液全体を再均質化する。この段階の終わりで、重合可能な混合物を室温まで冷やすことができる。工程3(鋳型成形)の間に、型は随意的に冷却され随意的にろ過された重合可能な混合物で満たされる。型そのものは室温の場合もまたは重合が行われるオーブン内で予め加熱されている場合もある。ブロックコポリマーの含有量が重合可能な混合物内の重量で10%以下のものについては、溶液が室温(15〜25℃)である場合にこれを鋳型することができる。含有量が重量で10%を超える場合には、溶液を予熱することが推奨される。一般に約90℃の温度が最も適当である。工程4では、重合可能な混合物を好ましくはこれを80から140℃、より好ましくは110から130℃の範囲の温度のオーブン内で加熱することにより透明な物品が得られるまで重合する。単純な熱活性化が十分であるなら、重合反応は他のすべての適切な方法を用いて促進することができる。最後に、型の取り外しを行い鋳型した透明な物品を回収する。
【0062】
以下の実施例により重合可能な混合物、透明な物品および当発明の方法を説明するが、如何なる制約も受けない。
図1から4はポリウレタンマトリックス内のブロックコポリマーではなく、(コ)ポリマーの個々の「ブロック」の挙動を研究することを目的とした予備実験中に120℃で重合して作ったポリウレタンガラスサンプルの透過電子顕微鏡法(TEM、自然コントラスト)による観察写真を示している(尺度:全体の線(黒および白)が5μmを表す)。
【0063】
図5および6はそれぞれ実施例1および2において120℃で重合して作ったポリウレタンガラスサンプルに四酸化ルテニウムで15分間標識付けした後の透過電子顕微鏡法(TEM、自然コントラスト)による観察写真を示している(尺度:全体の線(黒および白)が200nmを表す)。
【0064】
<実施例>
以下の実施例において、熱硬化性の重合可能な組成物は「調合物A」と言及したポリウレタン調合物で、式(II)のポリチオールおよびキシレンジイソシアネートの混合物を含む(SH/NCOの理論混合比=1)。実施例に用いた「第2の原料」はArkemaによるブロックコポリマーDC58である。予備実験で用いたポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)はScientific Polymer Productsから提供された。その特性は以下の通り:Tg=120℃、M=100000g・mol−1(ポリエチレンオキシド原液を用いた水中の立体排除クロマトグラフィーにより判定した)
先ず、上の記述で与えられた教示を裏付ける幾つかの実験について記載する。
【0065】
<熱可塑性およびエラストマーブロックの相溶性解析>
分子量Mが約30000g/モルの種々の熱可塑性ポリマーおよび/またはエラストマーを熱硬化性調合物Aに溶解した後、重合を120℃で完了するまで(3時間)実施した。ポリマーを重合可能な混合物の全体重量に対し重量で5%および15%溶解した。成長中のポリウレタン鎖の分子量の増加により重合中に相のマクロ分離を、したがって熱硬化性マトリックス内に分散した熱可塑性および/またはエラストマーに富んだ相を引き起こすことができる。ポリマー含有量5%および10%の両方で同様の挙動が観察できた。
【0066】
<a.相溶性がないブロック類の挙動の解析>
ポリ(メタ)アクリル酸メチル(PMMA)、2−フェノキシエチルポリ(メタ)アクリレート、ベンジルポリ(メタ)アクリレートおよびフェニルポリ(メタ)アクリレートのホモポリマー類の混和性に関する挙動を評価した。式(II)によるポリチオール内においてはこれらの挙動は高温においてのみ全体の混和性と部分的な混和性が異なった。ブロックホモポリマーのグループ全体が初期には室温より高いすべての温度で式(II)のポリチオールおよびキシレンジイソシアネート(調合物A)の混合物を含む熱硬化性の重合可能な組成物内で混和性があった。しかしながら、この様にして形成した重合可能な混合物の重合は反応中に相マクロ分離を誘発し完全に不透明な最終素材をもたらす。このため、先に述べた8種類のブロックはすべて本発明の文脈で定義した第1の熱硬化性原料とは相溶性がないブロックである。
【0067】
実験1は重量で5%のPMMAを含む重合可能な混合物に対応し、これは前記混合物の重量に対するものである。実験1に関連する図1は系の最終形態を図解している。相のマクロ分離が熱硬化性マトリックス内に分散したマイクロメートル台の熱可塑性粒子を作りだす。
【0068】
<b.相溶性があるタイプBブロックの挙動分析>
ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)(PDMA)およびポリエチレンオキシド(POE)の分子量が10000g/モル未満の水溶性ホモポリマーは式(II)のポリチオール内、キシリレンジイソシアネート内および調合物A内に完全に混和性がある。さらに、これらは重合反応の最初から終わりまでこの様な熱硬化性の重合可能な組成物内に完全に混和性であり続けるので、かくして均質な構造および透明な素材につながる。PDMAおよびPOEブロックはしたがって第1の熱硬化性原料と相溶性があるブロックである。
【0069】
<c.ポリ(MMA−コ−DMA)ランダムブロックコポリマー類(タイプBブロック)の相溶性の解析:DMA モノマーユニットの決定的なモルパーセンテージの判定>
PMMAブロックホモポリマーはポリチオウレタンマトリックスと相溶性があるPDMAブロックとは対照的に、第1の熱硬化性原料とは相溶性がない。6種類のポリ(MMA−コ−DMA)ランダムコポリマー類を作ってそのポリウレタンマトリックスとの相溶性を調べた。
【0070】
表1は式(II)のポリチオール試薬内でコポリマーの混和性を得るために如何にランダムブロックコポリマー内のDMAモノマーユニットのパーセンテージが15%を超えることが必要であるかを示している。このパーセンテージはブロックBの分子量によるものであることに言及しておくべきでここでは約30000g/モル(数平均分子量)である。DMAモノマーユニットが15モル%を超える場合、コポリマー中のDMA本体のパーセンテージが高いほど、式(II)のポリチオール内でランダムコポリマーが混和性になる温度が低くなる。混合物の挙動はUCSTタイプ(上部臨界溶解温度=高温混和性)である。かくして、コポリマーが57%のDMAモノマーユニットを含むと仮定した場合、決定的な偏析温度は約80℃である。コポリマーが43%のDMAモノマーユニットを含むなら、決定的な偏析温度は約135℃である。コポリマーが25%のDMAモノマーユニットを含むなら、決定的な偏析温度は約180℃である。15%未満のDMAモノマーユニットを含むコポリマーは広い組成範囲内において200℃未満のすべての温度で式(II)のポリチオール内で混和性がない。さらに、0℃より高いすべての温度で式(II)のポリチオール内のコポリマーの混和性を得るためには、ランダムコポリマー内のDMAモノマーユニットが90%より高いモルパーセンテージであることが求められる。
【0071】
【表1】

TCP:熱硬化性の重合可能な組成物で式(II)のポリチオール混合物および理論混合比SH/NCO=1のキシレンジイソシアネートを含む。ここに示す混和性は初期の混和性と定義する。
【0072】
表1および2はポリ(MMA−コ−DMA)ランダムコポリマー類、言い換えるとタイプBブロックの式(II)のポリチオール内に混和性が無いことは重合反応中に相のマクロ分離を引き起こすことを示す。式(II)のポリチオールおよびキシレンジイソシアネートの混合物を含むポリチオウレタン調合物内でこのコポリマーの完全な混和性を重合反応の始めから終わりまで得るために必要とされるランダムコポリマー内のDMAの決定的なパーセンテージは、重合温度120℃で、40%である(表2参照)。
【0073】
【表2】

【0074】
実験2、3および4は重合可能な混合物の重量に対し、重量で5%のポリ(DMA−コ−MMA)コポリマーを含むに前記混合物対応し、前記コポリマーはDMAモノマーユニットをそれぞれ7.5%、15%および25モル%含む。
【0075】
図2から4は実験2から4に関連し、DMAモノマーユニットを40モル%満含んだ熱可塑性コポリマーを重量で5%含んだ系の最終形態を図示している。相のマクロ分離は熱硬化性マトリックス内に分散した熱可塑性粒子を誘発し、その寸法をランダムコポリマー内のDMAモノマーユニットの量により減少させる。DMAモノマーユニットを43モル%含んだコポリマーを用いることにより相のマクロ分離は観測されない:ランダムコポリマーは反応の終点までポリチオウレタンマトリックス内で完全に混和性がある。これらの観察は熱機械データにより確認された。
【0076】
<当発明による透明物品を作るための準備手順>
ブロックコポリマーDC58を顆粒状で式(II)のポリチオール内に取り込み、次いでかき混ぜながら全体が溶解に達し透明な溶液が得られるまで130℃に加熱する。これを110℃で真空の下で0.5時間脱ガスして偏析させる。2つの相が現れ、その中の最初のものはDC58に富み、2番目のものは式(II)のトリチオールに富む。化学量論的な量のキシレンジイソシアネートをこの混合物にモル比NCO/SH=1により110℃で加える。混合物を110℃に維持することで再び均質になる。これを80℃で5分間かき混ぜ、次いで20℃に冷却する。溶液は(ブロックコポリマー濃度が重合可能な混合物の全重量に対して重量で 10%以下の場合)20℃で、または(ブロックコポリマー濃度が重合可能な混合物の全重量に対して重量で10%より高い場合)予熱して、次いで型に注入されるが、それ自体は室温または重合が進むオーブン内で事前に加熱する。最後に、重合可能な混合物をオーブン内で4時間の間120℃で重合する。
【0077】
実施例1では、重合可能な混合物は調合物Aおよび重合可能な混合物の全重量に対して重量で5%のArkemaによるDC58を含む。実施例2では、重合可能な混合物は調合物Aおよび重合可能な混合物の全重量に対して重量で15%のArkemaによるDC58を含む。比較実施例C1では、重合可能な混合物は調合物Aのみを含む(純粋マトリックス)。
【0078】
重量で5%および15%に達するBABタイプのブロックコポリマーDC58は120℃より高いすべての温度でキシレンジイソシアネートに完全に混和性がありかつ式(II)のポリチオールに完全に混和性があることには言及しておくべきである。ブロックB内のDMAモノマーユニットの濃度はブロックBおよびAの相対分子量と共に式(II)のポリチオール内のブロックコポリマーの混和性に非常に重要な役割を演じる。
【0079】
<耐亀裂伝播性の改善およびTg特性>
表3は当発明の重要さを示している。これは第一に当発明によるブロックコポリマーをポリチオウレタンマトリックスに組み込むことにより応力度限界係数KIcで評価される前記マトリックスの耐亀裂伝播性が改善することを示している。それどころか、この改善により素材のガラス転移点温度(Tg)に影響を及ぼさない。この強靱性の増加は示差走査熱量測定(DSC)により判定されたとおり確かにTgの増加に関連していて、これはブロックBのTgが熱硬化性マトリックスのそれに比べて高いことによる。これら2つの改善はブロックコポリマーDC58の含有量が高いことから特に需要である。
【0080】
<100℃における貯蔵弾性率E’の増加>
表3はTgの増加が純マトリックス(C1)に比べてさらに100℃におけるE’係数の増加をもたらすことを示し、これは当発明による透明物品のもう1つの有利な点である。
【0081】
【表3】

【0082】
<形態>
図5および6は当発明によるBABタイプのトリブロックコポリマーを重量でそれぞれ5および15%含む重合可能な混合物を重合することにより最終素材にエラストマー領域の形成をもたらすことを示していて、このことは透過電子顕微鏡法により観察することができる。ポリチオウレタンマトリックス内に存在するこれらの領域は小さな寸法(約20nm)で、かつPMEAブロックAに富んだ(機械化学分析により確認済み)粒子に該当し、マトリックス内で完全に混和性のあるMMAおよびDMAモノマーユニットのランダムコポリマー類で形成されたブロックBを介して安定している。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】120℃で重合して作ったポリウレタンガラスサンプルの透過電子顕微鏡法(TEM、自然コントラスト)による観察写真である(尺度:全体の線(黒および白)が5μmを表す)。
【図2】120℃で重合して作ったポリウレタンガラスサンプルの透過電子顕微鏡法(TEM、自然コントラスト)による観察写真である(尺度:全体の線(黒および白)が5μmを表す)。
【図3】120℃で重合して作ったポリウレタンガラスサンプルの透過電子顕微鏡法(TEM、自然コントラスト)による観察写真である(尺度:全体の線(黒および白)が5μmを表す)。
【図4】120℃で重合して作ったポリウレタンガラスサンプルの透過電子顕微鏡法(TEM、自然コントラスト)による観察写真である(尺度:全体の線(黒および白)が5μmを表す)。
【図5】実施例1において120℃で重合して作ったポリウレタンガラスサンプルに四酸化ルテニウムで 15分間標識付けした後の透過電子顕微鏡法(TEM、自然コントラスト)による観察写真である(尺度:全体の線(黒および白)が200nmを表す)。
【図6】実施例2において120℃で重合して作ったポリウレタンガラスサンプルに四酸化ルテニウムで 15分間標識付けした後の透過電子顕微鏡法(TEM、自然コントラスト)による観察写真である(尺度:全体の線(黒および白)が200nmを表す)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の重合可能な混合物で:
(a)第1の熱硬化性原料の、重合での前駆体である熱硬化性の重合可能な組成物、
(b)前記重合可能な組成物に溶解されている第2のポリマー原料、
を含む、重合可能な液体混合物。
ここに熱硬化性の重合可能な組成物は、少なくとも1種類のポリチオールが好ましいが、少なくとも1種類のポリチオールおよび/または少なくとも1種類のポリオール、ならびに少なくとも1種類のポリイソ(チオ)シアネートを含み、さらにここに第2の原料は:
少なくとも2種類のポリマーブロックAおよびBを含み、前記ブロックAがエラストマーブロックでブロックBが親水性ブロックである、少なくとも1種類のブロックコポリマーを含み;
重合可能な混合物が重合した後に、第1の原料中に分散した領域の大きさが80ナノメートル未満、好ましくは50ナノメートル未満のエラストマーブロックAに富んだ領域を形成する。
【請求項2】
ブロックBがその重量の少なくとも2%、および好ましくはその重量の3から15%の量の水を吸収することができる、請求項1に記載の重合可能な混合物。
【請求項3】
ブロックBが水溶性モノマーまたは少なくとも1種類の水溶性モノマーユニットを含むブロックコポリマーから形成されているブロックホモポリマーである、請求項1または2に記載の重合可能な混合物。
【請求項4】
ブロックBが熱可塑性ブロックである、請求項1〜3のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項5】
ブロックBが、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニルピロリジン−2−オン)、ポリ(エチレンオキシド)のブロックホモポリマー類、N,N−ジメチルアクリルアミドのモノマーユニットを含むブロックコポリマー類、N−ビニルピロリジン−2−オンのモノマーユニットを含むブロックコポリマー類、エチレンオキシドモノマーユニットを含むブロックコポリマー類およびこれらモノマーユニットの混合物を含むブロックコポリマー類から選ばれる、請求項1〜5のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項6】
ブロックBが、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニルピロリジン−2−オン)、ポリ(エチレンオキシド)のブロックホモポリマー類、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド−コ−メチルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルピロリジン−2−オン−コ−メチルメタクリレート)および ポリ(エチレンオキシド−コ−メチルメタクリレート)のブロックホモポリマー類から選ばれる、請求項1〜5のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項7】
ブロックコポリマーBモノマーユニットの少なくとも40モル%が水溶性モノマーユニットであり、好ましくは N,N−ジメチルアクリルアミドモノマーユニット、N−ビニルピロリジン−2−オンのモノマーユニット、エチレンオキシドモノマーユニットおよびこれらの混合物から選ばれる、請求項の5および6のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項8】
ブロックAが第1の熱硬化性原料と相溶性がない、請求項1〜7のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項9】
ブロックBが第1の熱硬化性原料と相溶性がある、請求項1〜8のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項10】
ブロックAが熱可塑性エラストマーブロックである、請求項1〜9のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項11】
ブロックAのガラス転移温度が20℃以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項12】
ブロックAのガラス転移温度が0℃以下である、請求項11に記載の重合可能な混合物。
【請求項13】
ブロックBのガラス転移温度が第1の熱硬化性ポリマー原料以上である、請求項1〜12のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項14】
ブロックAが少なくとも1つのモノマーユニットを含むブロックホモポリマーまたはコポリマーで、前記モノマーユニットが2−メトキシエチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、ベンジルアクリレートおよび2−フェノキシエチルアクリレートから選ばれる、請求項1〜13のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項15】
ブロックBが熱硬化性の重合可能な組成物の、ポリチオール類が好ましいが、ポリチオール類および/またはポリオール類に溶解している、請求項1〜14のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項16】
ブロックコポリマーがABまたはBABタイプである、請求項1〜15のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項17】
ブロックコポリマーがBABブロックコポリマーで、ここにAが2−メトキシエチルポリ(アクリレート)ブロック、Bがモルパーセンテージで58%のN,N−ジメチルアクリルアミドモノマーユニットおよびモルパーセンテージで42%のメチルメタクリレートモノマーユニットを含むポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド−コ−メチルメタクリレート)ブロックである、請求項1〜16のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項18】
ブロックAのモル量がBABブロックコポリマーに比べて32%未満である、請求項17に記載の重合可能な混合物。
【請求項19】
ブロックコポリマーの数平均分子量が10000から500000g/モル、好ましくは20000から200000g/モルである、請求項1〜18のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項20】
第2の原料が重量で重合可能な混合物の50%までを占める、請求項1〜19のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項21】
第2の原料が重量で重合可能な混合物の5から15%までを占める、請求項20に記載の重合可能な混合物。
【請求項22】
熱硬化性の重合可能な組成物が重量で重合可能な混合物の70から95%までを占める、請求項1〜21のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項23】
ポリチオールが式(I)を持つ、請求項1〜22のいずれかに記載の重合可能な混合物:
(SH)n1 (I)
ここにn1は2から6の範囲の整数を表し、Rは脂肪族、脂環式、複素環式または芳香族のラジカルを表し、その価数はn1である。
【請求項24】
ポリチオールが、トリス(3−メルカプトプロピオネート)ペンタエリスリトール、テトラキス(チオグリコレート)ペンタエリスリトール、トリス(3−メルカプトプロピオネート)トリメチロールプロパン、トリス(メルカプトアセテート)トリメチロールプロパンならびに式(II)および(Va)の化合物から選ばれる、請求項1〜23のいずれかに記載の重合可能な混合物:
【化1】

【請求項25】
ポリチオールが式(II)である、請求項1〜24のいずれかに記載の重合可能な混合物:
【化2】

【請求項26】
ポリイソ(チオ)シアネートが式(VI)である、請求項1〜25のいずれかに記載の重合可能な混合物:
(N=C=X)n2 (VI)
ここにXは酸素またはイオウ原子を表し、n2は2から6の範囲の整数を表しさらにRは脂肪族、脂環式、複素環式または芳香族のラジカルを表し、その価数はn2に対応する。
【請求項27】
ポリイソ(チオ)シアネートが、トリレンジイソ(チオ)シアネート類、フェニレンジイソ(チオ)シアネート類、エチルフェニレンジイソ(チオ)シアネート類、イソプロピルフェニレンジイソ(チオ)シアネート類、キシレンジイソ(チオ)シアネート類、ジエチルフェニレンジイソ(チオ)シアネート類、ジイソプロピルフェニレンジイソ(チオ)シアネート類、ナフタレンジイソ(チオ)シアネート類、イソフォロンジイソ(チオ)シアネート、ヘキサメチレンジイソ(チオ)シアネート、ビス(イソ(チオ)シアネートメチル)−シクロヘキサン類、トリメチルベンゼントリイソ(チオ)シアネート類、トリイソ(チオ)シアネートベンゼン類、(4,4’−ジイソ(チオ)シアネートジフェニル)−メタン類、(4,4’−ジイソ(チオ)シアナトジシクロフェニル)−メタン類、ならびに式(VII)、(VIII)、(IX)、(X)および(XI)から選ばれる、請求項1〜26のいずれかに記載の重合可能な混合物:
【化3】


ここにn1は0または1、n2は2から4の範囲の整数、n3は1から4の範囲の整数、n2+n3の合計≦6、n4は1から10の範囲の整数、XはOまたはSを表し、ZはO、S、Se、NH、C=O、SO、SO、SeO、CH、−CH=CH−またはRが水素原子またはC〜Cのアルキルラジカルを表す−C(R)−を表し、R、R、R、R、Rは互いに独立して水素原子またはC〜Cのアルキルラジカルを表すし、Rは水素原子、ハロゲン原子、またはC〜Cのアルキルラジカルを表す。
【請求項28】
ポリイソ(チオ)シアネートがキシレンジイソシアネート類から選ばれる、請求項1〜27のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項29】
熱硬化性の重合可能な組成物が少なくとも1種類のポリチオールおよび少なくとも1種類のポリイソシアネートを含む、請求項1〜28のいずれかに記載の重合可能な混合物。
【請求項30】
改善された強靱性を持つ透明物体で、前記物体のマトリックスである第1の熱硬化性ポリマー原料、および前記第1の原料中に分散した第2のポリマー原料から成る混合物を含み、請求項1〜29のいずれかに記載の重合可能な混合物を重合することにより作られることを特徴とする、改善された強靱性を持つ透明物体。
【請求項31】
前記物品の応力度限界係数(破壊靭性値)が第1の熱硬化性ポリマー原料のそれより高い、請求項30に記載の透明物品。
【請求項32】
前記物品のガラス転移温度が第1の熱硬化性ポリマー原料のそれよりも高い、請求項30および31のいずれかに記載の透明物品。
【請求項33】
前記物品の100℃における貯蔵弾性率が第1の熱硬化性ポリマー原料のそれよりも高い、請求項30〜32のいずれかに記載の透明物品。
【請求項34】
鋳型されることを特徴とする、請求項30〜33のいずれかに記載の透明物品。
【請求項35】
有機ガラス基材として請求項30〜34のいずれかに記載の透明物品を含む光学物品。
【請求項36】
前記物品が眼鏡レンズである、請求項35に記載の光学物品。
【請求項37】
請求項30〜34のいずれかに記載の透明物品を作る方法で少なくとも:
i)第2の原料を、ポリチオール類が好ましいが、ポリチオール類および/またはポリオール類に溶解する;
ii)工程 i)で得られた溶液にポリイソ(チオ)シアネートを加え、できた重合可能な混合物を均質にする;
iii)工程 ii)で得られた重合可能な混合物で型を満たす;
iv)前記物品が得られるまで工程 iii)で得られた重合可能な混合物を重合する;および
v)型を外してから透明な物品を回収する;
工程を含む、請求項30〜34のいずれかに記載の透明物品を作る方法。
【請求項38】
工程ii)の前に、工程i)で得られた溶液を脱ガスする工程を含む、請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−534728(P2008−534728A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503560(P2008−503560)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050272
【国際公開番号】WO2006/103371
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(594116183)エシロール アテルナジオナール カンパニー ジェネラーレ デ オプティック (69)
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL COMPAGNIE GENERALE D’ OPTIQUE
【Fターム(参考)】