説明

少なくとも2種の有効成分を含有する、注射可能無菌薬物配合物

【課題】水中に完全に可溶性であり、最大安定性を有する有効成分を含有する薬物配合物の製造方法の提供。
【解決手段】塩化形態又は非塩化酸形態の同じ有効成分を含有する有機溶液から沈殿された、少なくとも1種がナトリウム塩である、少なくとも2種の有効成分の混合物。有効成分の少なくとも1種は、炭酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラートからなる群から選択されたナトリウム塩によって塩化されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
最も広く使用されている抗生物質は、紛れもなく、β−ラクタムの種類に関係するものである。長年に亘って、これらの抗生物質を臨床治療で使用するとき、それらの「インビボ」有効性は、β−ラクタム環を分解することができるβ−ラクタマーゼ酵素のために、次第に減少することが知られている。幸いにも、上記の酵素の活性を阻害することができるある種の物質の発見によって、単独で使用する場合には効力のない、ある種のβ−ラクタム抗生物質を、該阻害剤と会合状態にすることによって、なお使用することが可能になった。これらの抗生物質には、ナトリウム塩として注射により投与されるピペラシリンが含まれる。上記の理由のためのこの治療的効果の減衰に続いて、ピペラシリンはタゾバクタムナトリウム(tazobactam sodium)と会合された。特許文献1及び特許文献2に記載されているように、ピペラシリンナトリウムは、通常、凍結乾燥によって製造され、得られる非常に軟質の凍結乾燥物は、迅速な可溶化を確実にする。従って、ピペラシリン又はこの中にピペラシリンが一般的なパーセンテージで存在している会合物の凍結乾燥は、まさに、この操作を非常に希薄な溶液中で実施しなくてはならないので、低い生産性である。他方、ピペラシリンナトリウムを、別個に凍結乾燥したタゾバクタムナトリウムと混合することは、この2種の成分の異なった密度によって引き起こされる問題を示す。この点で、この混合物中で、ピペラシリンナトリウムよりも大きい密度のタゾバクタムナトリウムが、混合物の下の層内で分離する傾向があるという意味で、粉末の不均質な分布が起こる。
【0002】
特許文献3には、タゾバクタムの結晶性ナトリウム塩が特許請求されているが、この結晶性塩を使用しても、ピペラシリンナトリウム塩とタゾバクタムナトリウム塩との機械的混合物の均質性の問題は、凍結乾燥したピペラシリンナトリウムの低い密度のために、明らかに解決できない。この事実は、明らかに、ピペラシリンナトリウム及びタゾバクタムナトリウム混合物を、単一注射可能用量のものよりも大きい量で製造できないことを意味している。
【特許文献1】米国特許第4,477,452号明細書
【特許文献2】米国特許第4,534,977号明細書
【特許文献3】米国特許第5,763,603号明細書
【発明の開示】
【0003】
完全に一般的であり、ピペラシリンナトリウム+タゾバクタムナトリウム会合物に限定され得ない、上記の種類の問題のために、解決法が本発明者らによって最終的に見出された。本発明者らは、驚くべきことに、塩化された形態であり、無菌条件下で沈殿され、従って水溶液中ではないが、水中に完全に可溶性であり、最大安定性を有する有効成分を含有する薬物配合物を製造できることを見出した。本発明に従った固体無菌薬物配合物は、少なくとも2種の有効成分から形成され、有効成分の少なくとも1種は、炭酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラートからなる群から選択されたナトリウム塩によって塩化されている。
【0004】
この配合物は、少なくとも1種の有効成分を、酸形態で、−10℃から+25℃の温度で、水、アセトン、メタノール、エタノールからなる群から選択された少なくとも1種からなる溶媒中に溶解すること、次いでこの混合物を、炭酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラートからなる群から選択された適切なナトリウム塩を添加することによって塩化すること、得られた溶液を無菌的に濾過すること、この無菌溶液を、少なくとも1種の、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、塩化メチレンからなる群から選択された有機溶媒の中に、0℃から50℃の温度で、滴下により供給し塩化した混合物を沈殿させること、得られた塩混合物を濾過すること、最後にこれを真空下で20℃から75℃の温度で乾燥することに従った方法によって得られる。
【0005】
有効成分の沈殿は同時に実施されることは必要ではなく、これが続いた時点であっても同じ反応器内で行われることのみが必要である。ピペラシリン+タゾバクタム会合の場合に、得られる生成物は無定形態で安定であり、あたかも単一成分からなっているように見え、挙動し、個々の成分の間の密度差によって起こされる問題無しに、一回用量又は多数回用量に於ける区別無しに、それを包装することが可能である。
【実施例1】
【0006】
7gの2−エチルヘキサン酸ナトリウムを、0℃に冷却した17mLの水及び30mLのメタノールの混合物中に溶解させる。次いで、20gの酸ピペラシリン一水和物を添加し、この混合物を完全に溶解するまで攪拌下に維持する。1.5gの2−エチルヘキサン酸ナトリウムを添加し、続いて2.5gのタゾバクタム酸を添加する。この混合物を攪拌下で90分間、0℃から+5℃に維持し、得られる懸濁液を濾過し、同じ温度に維持しながら、35℃に維持した400mLのイソプロピルアルコールの中に、少なくとも30分間かけて滴下により供給する。攪拌を35℃で30分間続け、この混合物を濾過し、生成物をイソプロピルアルコールで洗浄し、真空下で75℃で24時間乾燥する。
【0007】
下記の分析データで、18.6gが得られる。
【0008】
14.47gの酸に当量のピペラシリンナトリウム;
1.73gの酸に当量のタゾバクタムナトリウム;
K.F.:3.5%。
イソプロピルアルコール:実質的に不存在。
再構成された水溶液のpH:5.6。
【実施例2】
【0009】
6.9gの2−エチルヘキサン酸ナトリウムを、0℃に冷却した20mLの水及び20mLのメタノールの混合物中に溶解させる。次いで、20gの酸ピペラシリン一水和物を添加し、この混合物を完全に溶解するまで攪拌下に維持する。2.5gのタゾバクタム酸を添加し、続いて1.5gの2−エチルヘキサン酸ナトリウムを添加する。反応フラスコの壁を、10mLのメタノールで0℃で洗浄する。この混合物を攪拌下で90分間、0℃から+5℃に維持し、得られる溶液を濾過し、これを同じ温度に維持しながら、35℃に維持した400mLのイソプロピルアルコールの中に、45分間かけて滴下により供給する。攪拌を35℃で30分間続け、この混合物を+15℃に冷却し、30分間攪拌する。これを濾過し、生成物を30mLのイソプロピルアルコールで洗浄し、真空下で70℃で90分間乾燥する。
【0010】
下記の分析データで、18.6gが得られる。
【0011】
14.47gの酸に当量のピペラシリンナトリウム;
1.73gの酸に当量のタゾバクタムナトリウム;
K.F.:3.5%。
イソプロピルアルコール:実質的に不存在。
再構成された水溶液のpH:5.6。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の有効成分から形成され、有効成分の少なくとも1種が、炭酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラートからなる群から選択されたナトリウム塩によって塩化された、固体無菌薬物配合物。
【請求項2】
少なくとも1種の酸形の有効成分を、−10℃から+25℃の温度で、水、アセトン、メタノール、エタノールからなる群から選択された少なくとも1種からなる溶媒中に溶解すること、この混合物を、炭酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラートからなる群から選択された適切なナトリウム塩を添加することによって塩化すること、得られた溶液を無菌的に濾過すること、この無菌溶液を、少なくとも1種の、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、塩化メチレンからなる群から選択された有機溶媒の中に、0℃から50℃の温度で、滴下によりして塩化した混合物を沈殿させること、得られた塩混合物を濾過すること、最後にこれを真空下で20℃から75℃の温度で乾燥することにより特徴づけられる、請求項1に記載の配合物の製造方法。
【請求項3】
有効成分の少なくとも1種が抗生物質であることを特徴とする、請求項1に記載の薬物配合物。
【請求項4】
前記有効成分が、少なくとも1種の抗生物質及びβ−ラクタム阻害剤であることを特徴とする、請求項1に記載の薬物配合物。
【請求項5】
前記抗生物質がピペラシリンであり、前記β−ラクタム阻害剤がタゾバクタムであることを特徴とする、請求項4に記載の薬物配合物。
【請求項6】
有効成分の少なくとも1種を有機塩基の塩として溶解させ、無菌濾過及び続く沈殿の前に、混合物にこのまま添加することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記有機塩基がトリエチルアミンであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。

【公開番号】特開2007−70341(P2007−70341A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−205688(P2006−205688)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(594135140)
【Fターム(参考)】