説明

尾ヒレ型振動推進装置

【課題】簡素な機構で大きな推力を得ることができ、スクリュウプロペラ推進器の機能を超越した駆動力の伝達効率性、省エネルギー性、環境安全性、走行安全性、量産性に優れた水上航走船における尾ヒレ型振動推進器の提供。
【解決手段】航走船において、垂直方向の基準軸方向に摺動する上下往復振動及び基準軸回りに往復回動が可能な二軸振動可動体の中心位置を基準面として、前進方向及び後進方向並びに舵取り方向に推力を発生する尾ヒレ弾性体(水平型あるいは横型)1及び同{縦型あるいは垂直型}2を各尾ヒレ重心点の合力が基準軸線上に一致するように配置する。二軸振動可動体はフレミングの法則に従って重力方向に摺動往復振動する上下駆動手段と基準軸を回転軸として往復軸回転する回動駆動手段と回動駆動手段に目標とする舵取り方位に対する変移角を制御する回転変移制御手段で尾ヒレ弾性体1と尾ヒレ弾性体2に運動機能手段を協調的に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[技術分野]本発明は水平{横}型尾ヒレ弾性体と垂直{縦}型尾ヒレ弾性体の1対の尾ヒレを介して推進する尾ヒレ型振動推進装置。
【背景技術】
【0002】
従来、尾ヒレで推進する船舶に関する特許出願はドルフィンキック型の開示が多く見当たる。
【0003】
尾ヒレは推進力を得る為に極めて重要なものであり、形状と材質、揺動運動奇跡、角度は推進力に大きな影響を及ぼす。調べると尾ヒレの形状はかつお、まぐろに見られるアスペクト比6−10の大きな三日月のものと、鯉、フナに見られるアスペクト比1の小さなヘラ型のタイプがある。
【0004】
三日月形のものは瞬間速度35m/sec,推進効率は80%と高効率で高速推進ができ、ヘラ形は低速である。理由は、流体力学的に見て、高速揺動する尾ヒレの後部に、円柱状ジェット流が発生し、推進するからとある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、以下に述べる技術的課題があった。
【0006】
尾ヒレ推進方式の有効性は各々特許で開示されているが、駆動方式のメカニズムについては実現可能なものが具体的に開示されていない。尾ヒレ推進型の船舶はエネルギー効率が80%とスクリュウによる駆動方式に比べて極めて高いのに、実用化には至っていない。その理由としては、重心安定性に欠けていたり、動力伝達経路が複雑で、製作、メンテナンス、コスト等に問題があった。
【0007】
本発明の目的は従来の技術に鑑みてなされたもので、第一の目的は機構が簡単で、イルカに似せた理想的に高い水平型の尾ヒレの運動軌跡をメカニカルに再現し航走体の重心位置で振動する水平型尾ヒレの反力を受けて推力を得ると共に、航走体を安定化する垂直型尾ヒレを一対にした構成で前後推進のみならず舵取りも行えるようにした尾ヒレ弾性体推進装置を考案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決する為、本発明の尾ヒレ振動推進器は構成要素の二軸振動可動体に枢着した横型尾ヒレ弾性体の上下往復振動と縦型の回転往復回動により舵取り制御を伴う前後推進を可能とするアクチュエーターを備える。前期の上下往復振動と回転往復回動の基準軸は二軸振動可動体の重心位置兼中心位置を成し、前記動作を相互の強調制御しつつ、基準軸に対する上下往復振動並びに回転往復回動に伴う横型並びに縦型尾ヒレ弾性体の振幅、周波数、振動中心及び横型と縦型の尾ヒレ弾性体の相互間における舵取り方位設定の為の制御信号を出力する振動コマンド発生器と同振動コマンド発生器から出力された制御信号とその信号と協調した前記各動作に係る信号を制御して各基準軸を規定して動作する上記アクチュエータを制御する往復軸摺動サーボドライバと往復回動サーボドライバと方位角度サーボドライバとからなる尾ヒレ弾性体動作制御装置が設けられて動作する簡単な構成のフレミングの法則で可動するアクチュエータがその動力を所望の動作に変換する事が出来るのが特徴である。
その構成要素は尾ヒレ振動推進器を船内に搭載、あるいは船外に固定した航走船であって前記尾ヒレ振動推進器の二軸振動可動体に連結され、振動力と回転力を駆動源として伝達する駆動アームと
前記駆動アームの動作を垂直方向の振動と水平方向の回転を二軸振動可動体に動作規定を与える基準軸と
前記動作規定を与えられる水平型の尾ヒレと垂直型の尾ヒレと
二軸振動可動体を二軸方向に駆動するアクチュエーターと
前記アクチュエーターはマグネットと相対する位置に電磁コイルと前記各サーボドライブコントローラーで前後推進及び舵取り制御を行う電磁駆動制御装置と
前記航走船の所要電力は内臓したバッテリボックスと収納したバッテリと
前記バッテリを非常時充電する発電原動機とその燃料タンクまたはソーラーパネルと
これらの構成要素を連動した設計で水上を推進する尾ヒレ振動推進器は、魚の尾びれのようにしなやかに振動または回動し所要の推力の発生及び舵取りが行われるので、従来のスクリュウプロペラのような巻き込みの危険性を回避できる航走船を提供する。
【0009】
尾ヒレは推進力を得る為に重要なパーツであり、形状、材質、揺動運動軌跡、角度等は推進力を左右するファクターである。尾ヒレの材質は合成ゴム、シリコンゴム、プラスチック製の柔軟性と耐久性ある物が最適で、特に形状はアスペクト比6−10の大きな三日月形で船体重量、積載重量、船体形状に応じた対応設計を講じる。
【0010】
また尾ヒレ振動推進器において、駆動力伝達アームと尾ヒレは着脱自在に締結具で装着されるので耐用年数を経た、あるいは傷んだ尾ヒレは容易に交換することが可能で保守管理は簡単である。
【0011】
【発明の効果】
【0012】
以上詳述したように、本発明の尾ヒレ振動推進器付き前記航走体によれば次のような効果が得られる。
(1)現在、船舶の推進器の主流はスクリュープロペラであるが、推進の浅い水域での汚泥の巻上げによる水質汚染やスクリュープロペラの回転に伴う魚網や水草などの巻き込み、そしてプロペラとの接触による死傷事故の発生等、安全性と環境保全についての問題点を解決できる効果が期待される。
(2)尾ヒレ振動弾性体が魚の尾ヒレのようにしなやかに揺動し、所要の推力の発生及び舵取りが行われるようになり、高い推進効率が発揮される。
(3)機構が簡単で、イルカ、鰹に似せた理想的な水平型の尾ヒレの運動軌跡をメカニカルに再現し、尾ヒレによる高い推進効率を発揮し、省エネ効果の実現から、高い環境貢献を期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態としての尾ヒレ振動推進器の内部構成を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明の第一実施形態としての尾ヒレ振動推進器の内部構成を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の第一実施形態としての、図1、2、3の尾ヒレ振動推進器の尾ヒレ弾性体A型、B型の制御を表した模式的ブロック図である。
【図4】本発明の第一実施形態としての尾ヒレ振動推進器の内部構成を模式的に示す正面図である。
【図5】本発明の第一実施形態で、電磁駆動部の第2設計(別考案)の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面により本発明の実施形態について説明すると図1は本発明の実施形態としての尾ヒレ型推進装置による航走体の内部構成を模式的に示す平面図、図2はその側面図、図3は図1,2の尾ヒレ型推進装置による水上及び水中航走体における尾ヒレ振動弾性体の制御系を示すブロック図である。
【0014】
図1、2に示すように、この第1実施形態では、二軸振動可動体と一体かされた軸摺動アームに一対の尾ヒレ弾性体A型とB型を枢着し、二軸振動可動体が二軸アクチュエータとなり、前期尾ヒレ弾性体A型を水平と直行方向に基準軸方向に往復振動させて前進推力を、一方前記尾ヒレ弾性体B型を基準軸回りに往復回転させて後進推力と所定の回転角度で固定して前記往復振動と往復回転をして所望の舵取り推進を発揮する。
【0015】
基準軸方向を往復振動させるアクチュエータと基準軸回りに往復回動させるアクチュエータを備えた尾ヒレ制御装置が尾ヒレ型振動推進器に設けられ、同装置の所要電力はバッテリから供給される。
【0016】
尾ヒレ型振動推進器は図3に示すように、振動軸(上下動)アクチュエータの他回動軸アクチュエータが各尾ヒレ弾性体を相互に協調制御出来る様に、各アクチュエータを作動させる角度サーボドライバ、振動サーボドライバを備え各尾ヒレ弾性体の振幅、周波数、位相及び振動中心について制御を行えるように角度サーボドライバ、振動サーボドライバに制御信号を送信する尾ヒレ弾性体コマンド発生器は、センサ{速度等}入力のフィードバック信号から操縦者が操作指令を出し所望のコントロールを実行する。
【符号の説明】
1、尾ヒレ弾性体A型
2、尾ヒレ弾性体B型
3、基準軸
4、軸摺動アーム
5、磁石{前記1駆動用}
6、磁石(前記2駆動用)
7、ヨーク
8、駆動コイル{前記1駆動用}
9、駆動コイル{前記2駆動用}
10、ダンパ
11、尾ヒレ制御装置
12、振動伝達、角度サーボドライバ
13、上下動、回動アクチュエータ
14、4+5+6+7、二軸振動可動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航走船において、水平面に対して垂直方向に基準軸を設け、その基準軸を規定して摺動する上下{重力方向}往復振動及び前記基準軸回りに回転往復回動並びに基準軸回りに回転変移制御が可能な二軸振動可動体の中心位置{重心位置}を基準面として、前進方向及び後進方向並びに舵取り方向に推進力を発生するイルカや鰹等の擬似尾ヒレ弾性体A型及び同B型の種々の組み合わせを一対とし、前記尾ヒレ弾性体のA型及びB型の各重心点の合力が前記基準軸線上に一致するように一体的に枢着し、前記二軸振動可動体はフレミングの法則に従って重力方向に摺動往復で振動する上下駆動手段と前記基準軸を回転軸として往復で軸回転する回動駆動手段と前記回動駆動手段に目標とする舵取り方位に対する変移角を制御する回転変移制御手段で前記尾ヒレ弾性体A型と尾ヒレ弾性体B型に運動機能手段を連動制御構成で成し、前記尾ヒレ弾性体A型を上下駆動手段を介して一前方推進機能を、又基準軸回りに前記尾ヒレ弾性体B型を回動駆動手段を介して一後方推進機能を、更に前記尾ヒレ弾性体A型及び同B型を前記回転変移制御手段を介して目標方位の角度を制御しつつ、前記尾ヒレ弾性体A型を前記上下駆動手段を介して舵取り前方推進機能を、また同じく前記尾ヒレ弾性体A型及び同B型を前記回転変移制御手段を介して目標方位の角度を制御しつつ、前記尾ヒレ弾性体B型を前記回動駆動手段を介して舵取り後方推進機能を可能とした電磁駆動式アクチュエータを動力とする尾ヒレ型振動推進器。
【請求項2】
一対の魚の尾ヒレ弾性体とこの前記尾ヒレ弾性体と一体に駆動する二軸振動可動体は水平面に対して重力方向に基準軸が設定され、該基準軸に規定されて軸摺動による水平基準面の平行上下振動により、一水平{横}型尾ヒレ弾性体は二軸振動可動体の後方向きの位置に枢着すると前方推進力をまた二軸振動可動体の前方向きの位置に枢着すると後方推進力を得ることが出来ることを特徴とする請求項1記載の尾ヒレ型振動推進器。
【請求項3】
一対の魚の尾ヒレ弾性体とこの前記尾ヒレ弾性体と一体に駆動する二軸振動可動体は水平面に対して重力方向に基準軸が設定され、該基準軸に規定されて該基準軸回りに回転振動する水平基準面の水平回動振動により、一垂直{縦}型尾ヒレ弾性体は二軸振動可動体の基準軸の後方位置に枢着すると前方推進力をまた二軸振動可動体の基準軸の前方位置に枢着すると後方推進力を得ることが出来ることを特徴とする請求項1、2記載の尾ヒレ型振動推進器。
【請求項4】
一対の魚の尾ヒレ弾性体とこの前記尾ヒレ弾性体と一体に駆動する二軸振動可動体は水平面に対して重力方向に基準軸が設定され、この基準軸回りに回転振動する水平基準面の回転変移制御により、一水平型尾ヒレ弾性体は目標とする方位角度位置に制御された状態において、上下駆動手段を介して目標とする方位に前進{または後進}推進力を得ることが出来ることを特徴とする請求項1,2,3記載の尾ヒレ型振動推進器。
【請求項5】
一対の魚の尾ヒレ弾性体とこの前記尾ヒレ弾性体と一体に駆動する二軸振動可動体は水平面に対して重力方向に基準軸が設定され、この基準軸回りに回転振動する水平基準面の回転変移制御により、一垂直型尾ヒレ弾性体は目標とする方位角度位置に制御された状態において、回動駆動手段を介して目標とする方位に前進{または後進}推進力を得ることが出来ることを特徴とする請求項1,2,3、4記載の尾ひれ型振動推進器。
【請求項6】
一対の魚の尾ヒレ弾性体と一体に駆動する二軸振動可動体は、構成要素の一つである基盤に磁石が装着され、磁石の磁極面が相対する固定面側にはコイルが水平面に平行に巻かれて配置され、その相互のフレミングの電磁作用の駆動力により水平面に対して平行方向の振動を得ることを特徴とする請求項1,2,3,4,5、記載の尾ヒレ型振動推進器。
【請求項7】
一対の魚の尾ヒレ弾性体と一体に駆動する二軸振動可動体は、構成要素の一つである基盤に磁石が装着され、磁石の磁極面が相対する固定面側にはコイルが水平面に垂直に巻かれて配置され、その相互のフレミングの電磁作用の駆動力により水平面に対して垂直方向の回転力を得ることを特徴とする請求項1,2,3,4,5、6記載の尾ヒレ型振動推進器。
【請求項8】
一対の魚の尾ヒレ弾性体と一体に駆動する二軸振動可動体は、構成要素の一つである基盤にコイルが水平面に平行に装着され、コイルが相対する固定面側には磁石が磁極面を水平面に対して垂直に配置され、その相互のフレミングの電磁作用の駆動力により水平面に対して垂直方向の回転力を得ることを特徴とする請求項1,2,3,4,5、6、7記載の尾ヒレ型振動推進器。
【請求項9】
一対の魚の尾ヒレ弾性体と一体に駆動する二軸振動可動体は、構成要素の一つである基盤にコイルが水平面に垂直に装着され、コイルが相対する固定面側には磁石が磁極面を水平面に対して平行に配置され、その相互のフレミングの電磁作用の駆動力により水平面に対して平行方向の振動を得ることを特徴とする請求項1,2,3,4,5、6、7、8記載の尾ヒレ型振動推進器。
【請求項10】
一対の魚の尾ヒレ弾性体と一体に駆動する二軸振動可動体は前記基準軸の往復摺動による上下振動と前記基準軸を往復回動による回転振動と回転角変位する二軸アクチュエータを備えこれらの動作に伴う一対の尾ヒレ弾性体をコントロールする振幅、周波数、振動中心及び回転角の制御信号を出力する振動コマンド発生器と同振動コマンド発生器から出力された制御信号とその信号と協調した前記各動作に係る信号を制御して各基準軸を規定して動作する上記アクチュエータを制御する往復軸摺動サーボドライバと往復回動サーボドライバと方位角度サーボドライバとからなる尾ヒレ弾性体動作制御装置が設けられたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9記載の尾ヒレ型振動推進器。
【請求項11】
一対の魚の尾ヒレ弾性体と一体に駆動する二軸振動可動体を一ユニットとし、該ユニットを複数個直列あるいは並列に配置したことを特徴とする請求項1から10記載の尾ヒレ型振動推進器。
【請求項12】
二軸振動可動体は少なくとも一対以上の魚の尾ヒレ弾性体と一体に枢着して駆動することで所望の推力を得ることを特徴とする請求項1から11記載の尾ヒレ型振動推進器。
【請求項13】
二軸振動可動体と一体に振動する少なくとも一対以上の魚の尾ヒレ弾性体の該振動による慣性モーメントの総和は+−が0となる基点(モーメント0の点)を前記基準軸とすることを特徴とする請求項1から12記載の尾ヒレ型振動推進器
【請求項14】
一対の魚の尾ヒレ弾性体と一体に駆動する二軸振動可動体を駆動するアクチュエータの動力源を発電原動機、蓄電池、蓄電池と発電原動機、ソーラーパネルの蓄電による太陽電池、又は前記動力源要素の組み合わせで行うこととしたことを特徴とする請求項1から13記載の尾ヒレ型振動推進器。
【請求項15】
2個の磁石の同極をセンターヨークで対極して接着し、該2個磁石のもう一方の磁極に夫々ヨークを接着して二軸振動可動体を形成し、前記センターヨークの周囲に近接して二軸方向にフレミングの電磁駆動させるコイルが配置されて、水平面に対して水平方向の振動と垂直方向の回転力を得ることを特徴とする請求項1から14記載の尾ヒレ型振動推進器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−95411(P2013−95411A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251089(P2011−251089)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(397042425)