説明

尿サンプリング装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の目的】
【産業上の利用分野】本発明は、尿分析に当たり住宅やオフィスその他のトイレットにおいて個人が排泄した尿をその場でサンプリングするための装置に関する。より詳しくは、本発明は、市販の標準型の水洗便器を備えたトイレットにおいて効率良く尿をサンプリングすることの可能な尿サンプリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】人々の長寿高齢化に伴い、健康管理に関する各人の関心が高まっている。尿は個人の健康状態に関する重要な情報源であり、尿糖、尿蛋白、ウロビリノーゲン、潜血、その他の尿成分を定量分析することにより、糖尿病のようなすい臓障害や肝臓障害や腎臓障害その他の機能障害を非侵襲方式で検査することができる。そこで、家庭や職場その他のトイレットを利用して尿のサンプリングと分析を行い、個人の健康チェックを支援することの可能な、尿分析機能を備えたトイレットが提案されている。
【0003】例えば、特開昭59-217844号、特開昭63-184057号、特開昭63-290961号、特開平1-178866号、特開平4-191660号には、洋式便器のボウル面に採尿部を形成し、ボウル面に排泄された尿を採尿部に集めてサンプリングすることが提案されている。採取された尿サンプルは、液体クロマトグラフ法、試験紙法、或いはポーラログラフ法により分析される。ボウル面の採尿部を利用したこのサンプリング方式の利点は、ボウル面に排泄された尿を放尿方向や落下位置に関係なくかなり広い面積から集めて採取することができるということである。
【0004】しかしながら、このサンプリング方式の難点は、標準型の便器や既設の便器を利用することができず、ボウル面に採尿部が形成された尿サンプリング目的の特殊便器を必要とすることである。斯る特殊便器は、標準型の便器とは別個に特別に製造しなければならず、従って大量生産によるコストダウンが難かしいので、一般家庭や職場やオフィスに普及させるには余りに高価である。また、通常のボウル形状の標準型の便器を備えた既設のトイレットを尿分析ができるように改造するためには、先ず既存の便器を撤去し、次に尿分析目的の特殊便器を設置しなければならないので、工事に多大な費用と手数を要すると共に、既存設備の廃棄を招く。更に、便器洗浄後にはボウル面の採尿部には洗浄水や古い尿や排泄物が残留し、サンプリングすべき新たな尿を希釈し或いは汚染するので、良好な検体をサンプリングできないおそれがある。
【0005】実開平1-136573号および実開平5-30764号には、可動アームに担持された採尿容器を備え、便座に着座した使用者から排泄された尿をボウル空間内の空中で受け取ってサンプリングするようになったサンプリング装置が開示されている。この種の装置は、特製の便器を必要とせず、標準型の便器を利用して尿をサンプリングすることができるという利点がある。上記の実開平1-136573号には、男女の別に応じた最も好ましい採尿位置に採尿容器を位置決めし、この状態で小用をさせて採尿容器に尿を受け取ることが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、本発明者が行った実験によれば、便座に着座した個人が排泄した尿の落下位置は、男性の場合には便座の先端から後方に測って約80〜150mmの範囲に分布し、女性の場合には同じく便座の先端から約120〜240mmの範囲に分布することが判明した。この実験結果から明らかなように、尿の落下位置には、男女の差に加えて、かなり大きな個人差がある。
【0007】従って、実開平1-136573号に開示されたように男女の別に応じて採尿容器の位置を変えただけでは、変動幅のかなり大きな個人差に採尿容器の位置を適合させることができない。その結果、尿柱が具合良く採尿容器に命中しない場合には、サンプリングの機会を失することになる。特に、尿分析の必要性の高い高齢者の場合には1回当たりの排尿量が少ないので、一層採尿のチャンスが少ない。
【0008】斯る不具合に対処するためには、採尿容器のサイズを大きくすれば良いのであろうが、トイレットは通常の用便の目的にも使用しなければならないので、採尿容器には、非使用時に便座の下などの邪魔にならない場所に容易に収納できる程度に充分に小型でなければならないという要請が課されている。
【0009】採尿容器が小型になればなる程、使用者は、採尿の都度、尿を採尿容器に命中させるべく相当の努力なければならない。男性の場合でも標的(採尿容器)を狙うのは不可能でないまでもかなり面倒である。女性の場合には、尿は比較的臀部の真下に落下し、目視しにくいので、標的を意図的に狙うのは一層面倒であり、一般にはかなりの困難が伴う。
【0010】従って、本発明の目的は、標準型の便器を利用して尿をサンプリングするにあたり、個人に応じた最適の位置に採尿容器を適確に位置決めすることが可能で、容易かつ確実に尿をサンプリングすることの可能な尿サンプリング装置を提供することにある。
【0011】他の観点においては、本発明の目的は、非使用時に容易に収納可能な小型の採尿容器を使用しながらも、容易かつ確実に尿をサンプリングすることの可能な尿サンプリング装置を提供することにある。
【0012】
【発明の構成】
【課題を解決するための手段および作用の概要】本発明は、制御部により制御される駆動部によって採尿容器をその休止位置から便器のボウル空間内の採尿位置へと移動させることにより、便座に着座した個人から排泄された尿をサンプリングするようになった尿サンプリング装置において、制御部は個人の最適の採尿位置を個人に関連づけて登録する記憶手段を備え、採尿時には登録された最適採尿位置に採尿容器を位置決めすることを特徴とする。
【0013】このように、採尿に際しては、個人に応じた最適の採尿位置に採尿容器が位置決めされるので、使用者は必要な最小限の微調整をするだけで、或いは場合によっては微調整を全く行うことなく、採尿容器に向かって気楽に放尿しても、高い確率で採尿させることができる。従って、本発明の尿サンプリング装置は使い勝手が良い。尿は確実にサンプリングされるので、サンプリングの機会を失することがない。
【0014】便座への着座位置はその都度多少変わることがあるので、実際の尿の落下位置が個人毎に登録された最適採尿位置から多少ずれることが起こり得るであろう。しかし、本発明者の調査によれば、着座姿勢には個人に固有のほぼ一定した癖があり、平均的には安定しているので、最適採尿位置から大幅にずれることは少ない。従って、放尿を開始した後に慌てて採尿容器を大幅に移動させたり姿勢を変えたりしているうちに、必要量の尿が採取される前に放尿が終ってしまう、といった事態を回避することができる。
【0015】好ましい実施態様においては、個人の最適採尿位置を登録するに際しては、制御部は所定の暫定的採尿位置に採尿容器を予め位置決めし、次に、個人の指令に応じて採尿容器の位置を微調整し、微調整後の位置を個人の最適採尿位置として登録する。
【0016】暫定的採尿位置としては、男女の別に応じて、男性用平均的採尿位置と女性用平均的採尿位置の2種類を採用するのが好ましい。この場合には、個人の選択に応じて男性用平均的採尿位置および女性用平均的採尿位置のいづれかに採尿容器を予め位置決めし、次に、個人の指令に応じて採尿容器の位置を微調整し、微調整後の位置を個人の最適採尿位置として登録する。このようにすれば、微調整をより容易かつ迅速に行うことができる。
【0017】採尿に際しては、制御部は、先ず、登録された最適採尿位置に採尿容器を予め位置決めする。使用者は、必要に応じて採尿容器の位置を微調整することができる。使用後は採尿位置を更新することができる。
【0018】本発明の上記特徴や効果、ならびに、他の特徴や利点は、以下の実施例の記載に従い明らかにする。
【0019】
【実施例】最初に、図1から図5を参照しながら、本発明の尿サンプリング装置の構成の概略について説明する。図1は本発明の尿サンプリング装置を備えた尿分析装置をトイレットの標準型の便器に取付けたところを示し、図2は図1に示したハウジングを分解したところを示す。これらの図面を参照するに、トイレット10は便器12を有し、この便器12はボウル(便鉢)部14と洗浄水供給部16を有する。図示した実施例では、洗浄水供給部はシスターン取付け部16からなり、この取付け部16にはシスターン18が取付けてある。
【0020】便器12にはハウジング20が固定してあり、このハウジング20には尿分析装置22の主要部が収蔵してあると共に、便座24が回動可能に装着してある。この便座24には本発明の尿サンプリング装置26が組み込んである。
【0021】ハウジング20は、図2に示したように、フレーム28と、上部ハウジング30と、左右の下部ハウジング32および34とで構成することができる。ハウジング20のこれらの部品は樹脂の射出成形により別々に製造し、ビスなどにより互いに一体に締結することができる。ハウジング20は2本のTボルト36とナット38により便器12に固定される。ハウジング20は、中央部分20Cと左右の側方部分20Lおよび20Rを有することができる。
【0022】図2に示したように、ハウジングの左側方部分20Lには、尿サンプリング装置26によってサンプリングされた尿サンプルを分析する尿分析ユニット40と、尿サンプルやキャリヤ液を尿分析ユニット40に搬送するロータリバルブ付き電動シリンジポンプ42と、キャリヤ液タンク44と、較正液タンク46を収容することができる。尿分析ユニット40にはポーラログラフ方式のフローセル48が採用されている。
【0023】ハウジング左側方部分20Lには、また、指血圧計ユニット50を配置し、被験者の左第2指に係合させることにより血圧を測定するようにしてもよい。図示した実施例では、ハウジング中央部分20Cには、洗浄ノズル52を備えた従来型のビデ装置54と、従来型の温風乾燥装置56と、オゾナイザーからなる従来型の脱臭装置58が配置してあり、尿分析装置22を備えたトイレットを通常の目的で使用する際に夫々の機能を提供するようになっている。しかし、これらの追加的機能は不可欠ではなく、省略することができる。ハウジングの右側方部分20Rには、分析装置22の電源装置60やビデ装置の操作盤62を収納することができる。トイレットの側壁には、尿分析装置22を制御し、かつ、分析結果を出力するための制御ユニット64を設置することができる。
【0024】次に図3から図5を参照しながら、便座24に組込まれた尿サンプリング装置26を説明する。尿サンプリング装置26はフレーム66を備え、このフレームはビス等により便座24の下面に適宜取付けられる。フレーム66にはスイングアーム68が回動可能に支持してあり、ステッピングモータのようなモータ70とベルト72によって図5に示したように揺動せられるようになっている。
【0025】スイングアーム68の下端には採尿容器74が設けてある。図4からよく分かるように、採尿容器74は浅い船底形を呈し、その底部には尿溜まり76が形成されている。採尿容器74には尿溜まり76の底に向かって開口するL字形の採尿管78が設けてあり、尿溜まり76に溜まった尿を気泡を取り込むことなく吸引するようになっている。尿溜まり76に面して採尿容器74には1対の電極80が設けてあり、流体の電気抵抗を監視することにより尿溜まり76内に所望のレベルまで尿が溜まったかどうかを検出するようになっている。
【0026】L字形採尿管116はスイングアーム72の中空内部を延長する可撓性の尿吸引チューブ82に接続されており、この吸引チューブ82の他端はシリンジポンプ42に接続されている。尿検知電極80のリード線84も同様にスイングアームの内部を延長させてあり、尿分析ユニット40の基板86などに設けた制御回路88に接続することができる。採尿容器74の入口開口はステンレス鋼などからなる金網90によって覆われており、採尿容器74に異物が侵入するのを防止するようになっている。
【0027】図3および図5からよく分かるように、フレーム66にはボウル16に向かって下向きに開口したチャンネル形状の収納洗浄室92が形成してあり、非使用時に採尿容器74とスイングアーム68を収納するようになっている。収納洗浄室92には噴射ノズル94が指向させてあり、図5に実線で示した位置に収納された採尿容器74に向かって圧力水を噴射して、使用後に採尿容器74とスイングアーム72を洗浄するようになっている。噴射ノズル94には電磁弁(後述)を介して水道管に接続されたホース96から圧力水が供給される。
【0028】図6には、制御ユニット64と制御回路88の構成の一例を示す。トイレットの壁に設置された制御ユニット64は、プログラムされたマイクロコンピュータ100と、尿分析開始スイッチ102と、ユーザーに対する指示や尿分析結果を表示する液晶表示パネル104と、液晶表示パネル104に重ねて配置されたタッチ入力パネル106と、尿分析結果やデータ・トレンドを出力するプリンタユニット107と、尿分析データや位置決めデータを格納するフラッシュメモリ108などで構成することができる。
【0029】フローセル48の近傍に配置された制御回路88は、尿分析装置22の構成要素を後述のフローチャートの如く制御するべくプログラムされたマイクロコンピュータ110を有する。ポーラログラフ・フローセル48の作用極と対極との間を流れる電流は増幅回路112により増幅された後、マイクロコンピュータ110のA/D変換回路に入力される。尿検知電極80間を流れる電流値の信号もA/D変換回路に入力される。マイクロコンピュータ110は、夫々のドライバを介して、スイングアーム駆動用ステッピングモータ70、ロータリバルブ駆動用モータ114、シリンジポンプ42のピストンを駆動するためのモータ116、および、洗浄ノズル94への洗浄水の供給を制御する電磁弁118を駆動する。マイクロコンピュータ100と110とは通信ケーブルによって接続されており、トランシーバを介してシリアル通信によりデータの伝送を行う。
【0030】次に、図7から図17を併せて参照しながら、尿サンプリング装置26と尿分析装置22の作動の一態様を説明する。非使用時には、採尿容器74は図5に実線で示したように収納洗浄室92内に収納されており、この状態で便座24は尿サンプリング装置26と共に回動させることができる。
【0031】被験者が便座に着座し、尿分析開始スイッチ102を押すと(S1)、制御ユニット64の液晶表示パネル104には図12に示したようなモード選択画面が表示され(S2)、これまでに登録された位置決めデータに基づいて採尿容器74を自動的に位置決めするモードと手動により位置決めするモードとのいづれかを選択するよう被験者に促す。その被験者がこの装置を利用して尿分析を行うのが初めてであり、従って、最適採尿位置に関する登録データが存在しない場合には、被験者は手動モードを選択するであろう。初めての場合で被験者が誤って自動モードを選択したときには、エラー表示がなされ、手動モードを選択するよう勧告される。
【0032】初めての被験者がタッチ入力パネル106を操作することにより手動位置決めモードを選択すると(S4)、図13に示したような男女選択画面が表示され(S20)、被験者が男性か女性かを指定するよう督促する。タッチ入力パネル106の操作により男性が指定された場合(S22)には、マイクロコンピュータ110はスイングアーム駆動用ステッピングモータ70に所定パルス数の駆動信号を送り、モータ70を所定角度回転させて、採尿容器74を男性用平均的採尿位置(例えば、図5の位置A)に暫定的に位置決めする(S23)。女性が指定された場合には、採尿容器は女性用平均的採尿位置(図5の位置B)に位置決めされる(S24)。
【0033】図5に示したように、男性用暫定的位置Aおよび女性用暫定的位置Bは、夫々、男女夫々の尿が落下する頻度が統計上最も高い位置に定めることができ、男性用位置Aはボウルの前寄りに位置し、女性用位置Bはこれよりやゝ後方に位置する。従って、放尿方向に著しい個人差がなければ、尿は図5に矢印で示したような弾道を描いて落下し、採尿容器74に命中するであろう。しかし、前述したように、実際には尿の弾道にはかなりの個人差があるので、男女夫々の平均的位置からかなりずれることがある。
【0034】そこで、次に、図14に示したように採尿容器の位置を微調整するかどうかの対話画面が表示され(S25)、微調整が選択された場合(S27)には、図15の操作画面が表示される(S28)。被験者は、暫定的位置A(女性の場合には位置B)が最適でないと考える場合には、タッチ入力パネル106を操作することにより採尿容器の位置を前後に微調整することができる(S31、S32)。被験者が自己に最適と考える位置に採尿容器74が位置決めされると、採尿準備が完了したことが表示され(S33)、放尿するよう勧告される。
【0035】最適位置に採尿容器74が持ち来された時に被験者が採尿容器74に向かって放尿し(S7)、尿が採尿容器に命中すると、尿は図5にハッチング領域で示したように尿溜まり76に集積するであろう。マイクロコンピュータ110は尿検知電極80の出力をチェックし、電極80間の電気抵抗を監視することにより、尿溜まり76に尿が溜まったかどうかを監視する。電極80間の電気抵抗の増加が検知されると、尿溜まり76内に所望のレベルまで尿が集積したと判断し(S8)、シリンジポンプ42を作動させて、L字形採尿管78と尿吸引チューブ82を介して例えば約2mlの尿サンプルを吸引させる(S9)。
【0036】次に、シリンジポンプのエア抜きが行われた後、例えば約10〜20μlの尿サンプルが搬送管路を介してフローセル48に向かって打ち込まれ(S10)、余剰の尿サンプルは便器に廃棄される。尿サンプルの打ち込みが終わると、シリンジポンプのポンプ室を洗浄水によって洗浄した後、キャリヤ液タンク44から緩衝液を添加したキャリヤ液を吸引し(S11)、フローセルに向かって例えば約2〜4mlのキャリヤ液を射出する(S12)。
【0037】これにより、尿サンプルはキャリヤ液と混合されながらポーラログラフ・セル48に送られる。フローセル48には、グルコース酸化酵素などの固定化膜で被覆された作用極を備えたボルタンメトリー(ポーラログラフ)方式のフローセルを使用することができる。作用極が酵素固定化膜を備えていないポーラログラフ・フローセルを使用することも可能であり、その場合には尿サンプルは酵素試薬と共にフローセルに送られる。
【0038】尿サンプルとキャリヤ液との混合物がフローセル48を通過するに伴い、フローセルは検査対象成分(例えば、尿糖)の濃度に応じた電流を出力し、この電流は増幅回路112により増幅され、マイクロコンピュータ110のA/D変換回路に入力され、電流値に変換される。マイクロコンピュータ110は得られた電流値のデータをシリアル通信により制御ユニット64のマイクロコンピュータ100に伝送する。マイクロコンピュータ100は電流値データに基づいて尿糖値を演算し、表示パネル104に表示する(S13)。尿糖値のデータは、また、フラッシュメモリ108に格納される。マイクロコンピュータ100には被験者の指示に応じて尿糖値のトレンドを演算させ、プリンタユニット106から出力させることができる。
【0039】尿分析が終わると、図17に示したような登録選択画面が表示され(S14)、最適の採尿位置を登録するかどうかが問われる。この尿分析装置を初めて使用した被験者が登録を選択すると、図16に示したような個人識別用入力画面が表示される(S15)。この尿分析装置22を備えたトイレットがオフィスなどのように多数の個人が使用する場所に設置される場合には、図16R>6に示したような家族用の入力画面に代えて、テンキーによる入力画面を表示させ、個人識別番号を数値入力させることができる。ID入力が終わると、採尿容器を収納洗浄室92内の初期位置から最適採尿位置まで駆動するに要したステッピングモータ70の駆動パルス数が位置決めデータとしてフラッシュメモリ108に格納される(S16)。
【0040】登録が終わると、スイングアーム駆動モータ70が再び駆動され、採尿容器74は収納洗浄室92に戻される(S17)。次に、電磁弁120が開かれ、洗浄ノズル94に圧力水を供給することにより採尿容器74とスイングアーム68が洗浄される。使用済みの洗浄水はボウル14内に落下する。採尿容器の収納と洗浄は尿サンプルの吸引(S9)後何時の時点で行ってもよい。
【0041】このようにして、特定の個人について最適の採尿位置が登録されると、次回からは、その個人は自動位置決めモードを選択することができる(S5)。その場合には、図11のフローチャートに示したように、先ずID入力画面が表示され(S40)、IDが入力されるとメモリ108からこの個人に関する前回の位置決めデータが読み出され(S42)、前回の最適位置に対応する駆動パルス数の信号がモータ70に送られ、採尿容器は前回の最適位置に位置決めされる(S43)。
【0042】次に、微調整選択画面が表示され(S44)、必要に応じ微調整を選択すると(S45)、前述したところと同様に採尿容器の微調整が行われた後(S46)、採尿準備完了の表示がなされる(S47)。次いで、前述したのと同様に尿のサンプリングや分析が行われる(S7〜S13)。分析後は登録画面が表示され(S14)、今回の微調整後の最終位置を最適位置として更新するかどうかが質問される。更新登録を選択すると、IDの指定を待って(S15)、データが更新される(S16)。データの更新は、今回と過去の複数回のデータの平均値に基づいて行うこともできるし、平均値を著しく逸脱するデータは無視することもできる。
【0043】このように、各個人毎に微調整後の最適採尿位置が登録され、尿のサンプリングに際しては採尿容器74は自動的に最適採尿位置に位置決めされるので、確実かつ容易に尿をサンプリングすることができる。
【0044】図18には本発明の尿サンプリング装置を備えた尿分析装置の変化形を示す。前述した実施例の構成要素と共通する構成要素は同じ参照番号で示し、説明は省略する。この変化形は、尿分析装置22を便器のリム120に引っ掛けて使用するように構成したことを特徴としており、尿サンプリング装置26は同一の構成を有する。
【0045】図18を参照するに、尿分析装置22はハウジング122を有し、このハウジングは互いにスナップ嵌めされた上下2つの半体で形成することができる。ハウジング122にはフックとして作用する垂直ラグ124が形成してあり、ハウジングを便器のリム120の側部に鉤掛けできるようになっている。ハウジング122内には、前述した実施例と同様のポーラログラフ・セルなどからなる分析ユニット(図示せず)、電動シリンジポンプ42、キャリヤ液タンク44、較正液タンク(図示せず)、制御演算回路(図示せず)、および採尿容器洗浄水の供給を制御するための電磁弁(図示せず)が収蔵してある。スタートスイッチ102とタッチ入力パネル106付きの表示部104はハウジング122の上面に設けることができる。制御演算回路は、図6に示した2つのマイクロコンピュータを共通化することにより構成することができる。
【0046】ハウジング122の上部には採尿容器74を担持したスイングアーム68が軸支してあり、ハウジング内に収蔵されたステッピングモータ(図示せず)により揺動されるようになっている。収納洗浄室92を形成する収納ケース66はハウジング122と一体成形することができ、その荷重の一部はリム120に支承される。この変化形における尿サンプリング装置26の採尿容器の位置決めの態様は、図7から図17に基づいて前述したところと基本的に同様である。
【0047】以上には本発明の特定の実施例を記載したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の設計変更を施すことができる。例えば、フローチャートのシーケンスは変えることができる。また、液晶表示パネルに表示される画面は異なる態様を取り得る。採尿容器やスイングアームの形状は適宜変更することができる。
【0048】
【発明の効果】本発明の尿サンプリング装置によれば、男女差だけでなく個人差をも考慮した最適の採尿位置が登録され、採尿に際しては採尿容器は最適位置に自動的に位置決めされるので、個人が平素の姿勢で便座に着座した状態で、必要最小限の微調整をするだけで、或いは場合によっては微調整を全く行うことなく、確実に尿をサンプリングすることができる。このようにサンプリングの機会を失することなく確実に採尿が行われるので、健康管理に寄与することができる。
【0049】また、無理に標的を狙わなくとも確実にサンプリングが行われるので、本発明の尿サンプリング装置は使い勝手が良い。
【0050】本発明の好ましい実施態様に従い、個人の最適採尿位置を登録するにあたり、男女別々の暫定的採尿位置に採尿容器を予め位置決めし、個人の選択に応じて採尿容器の位置を微調整させ、微調整後の位置を最適採尿位置として登録するようにした場合には、登録を容易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の尿サンプリング装置を備えた尿分析装置をトイレットに組み込んだところを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示したトイレットのハウジングの分解斜視図である。
【図3】図3は、図1に示した尿サンプリング装置の斜視図で、収納洗浄室は1部切欠いて示してある。
【図4】図4は、図3に示した採尿容器の拡大斜視図で、1部切欠いて示してある。
【図5】図5は、図3のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図6は、図1に示した尿分析装置の制御ユニットと制御回路の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、尿分析装置の作動を示すフローチャートである。
【図8】図8は、図7のフローチャートの続きを示す。
【図9】図9は、手動位置決めモードのフローチャートである。
【図10】図10は、図9のフローチャートの続きを示す。
【図11】図11は、自動位置決めモードのフローチャートである。
【図12】図12は、モード選択画面を示す。
【図13】図13は、男女選択画面を示す。
【図14】図14は、微調整選択画面を示す。
【図15】図15は、微調整操作画面を示す。
【図16】図16は、ID入力画面を示す。
【図17】図17は、登録選択画面を示す。
【図18】図18は、尿分析装置の変化形を便器のリムに取り付けたところを示す1部切欠き斜視図である。
【符号の説明】
12: 標準型便器
16: 便器のボウル
24: 便座
26: 尿サンプリング装置
64/88: 制御部
68: スイングアーム
70: 駆動部
74: 採尿容器
108: 制御部のメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 制御部により制御される駆動部によって採尿容器をその休止位置から便器のボウル空間内の採尿位置へと移動させることにより、便座に着座した個人から排泄された尿をサンプリングするようになった尿サンプリング装置において、前記制御部は個人の最適の採尿位置を個人に関連づけて登録する記憶手段を備え、前記制御部は、個人の最適採尿位置を登録するにあたり、所定の暫定的採尿位置に採尿容器を予め位置決めし、次に、個人の指令に応じて採尿容器の位置を微調整し、微調整後の位置を個人の最適採尿位置として登録し、前記制御部は、採尿時には登録された最適採尿位置に採尿容器を位置決めすることを特徴とする尿サンプリング装置。
【請求項2】 個人の最適採尿位置を登録するにあたり、前記制御部は、個人の選択に応じて男性用平均的採尿位置および女性用平均的採尿位置のいづれかに採尿容器を予め位置決めし、次に、個人の指令に応じて採尿容器の位置を微調整し、微調整後の位置を個人の最適採尿位置として登録することを特徴とする請求項1に基づく尿サンプリング装置。
【請求項3】 採尿にあたり、前記制御部は、採尿容器を前記最適採尿位置に予め位置決めし、次に、個人の指令に応じて採尿容器の位置を微調整することを特徴とする請求項1又は2に基づく尿サンプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【特許番号】特許第3456298号(P3456298)
【登録日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【発行日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−88731
【出願日】平成7年3月22日(1995.3.22)
【公開番号】特開平8−262018
【公開日】平成8年10月11日(1996.10.11)
【審査請求日】平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【参考文献】
【文献】特開 平6−258315(JP,A)
【文献】特開 平5−192269(JP,A)
【文献】特開 平5−220061(JP,A)