説明

尿保存管

プラスチック製採集容器のために特に適当な尿安定化化合物を提供する。1つの実施形態では、容器を提供する工程と、マンニトール、ホウ酸、ギ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、水、グルタミン、および界面活性剤を含む調合物を提供する工程と、該容器中へ該調合物を配置する工程とを含む諸工程によって、管を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿サンプルの保存を提供する尿採集管に関する。
【背景技術】
【0002】
尿標本は、様々な分析試験に使用される。しかしながら、尿はバクテリアの増殖を支持する能力を有し、引き続く試験において不正確な結果をもたらす可能性がある。従って、尿標本は、特別な処理、例えば、採集の短い時間内での培養、採集に続く冷蔵、または尿標本中の安定化化合物のいずれかを必要とすることが認識されている。
【0003】
安定化調合物は、迅速な培養、および冷蔵の必要性を回避するため、所望の解決策であった。そのような安定化化合物は、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に示され、これによって、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる(特許文献1〜3参照)。
【0004】
しかしながら、そのような調合物は、主にガラス管における使用のために開発された。産業がガラスからプラスチックへ切り替わる時に、これらの調合物は、同様には働かない可能性があり、または全く働かない可能性がある。例えば、ガラスは優れた気体および水分バリア特性を有するが、プラスチックはその特性、具体的には水分保持/透過特性が多様である。従って、ガラス管に適当であろう液体添加物は、プラスチック管には必ずしも適当でない。
【特許文献1】米国特許第4,768,653号明細書
【特許文献2】米国特許第4,336,880号明細書
【特許文献3】米国特許第4,258,032号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、プラスチック製採集管における使用に適当な尿安定化調合物の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プラスチック製採集容器のために特に適当な尿安定化化合物に関する。1つの実施形態では、容器を提供する工程と、マンニトール、ホウ酸、ギ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、水、グルタミン、および界面活性剤を含む調合物を提供する工程と、調合物を容器中へ配置する工程とを含む諸工程によって、管を形成する。当技術分野においてよく知られているように、任意選択的に、調合物を凍結乾燥すなわちフリーズドライする。次いで、典型的には、特定容量の尿を管中へ吸い込む程度にまで、容器を排気する。調合物の量は、所望の添加物対尿比が達成されるように、この吸い込み容量に基づく。調合物の成分の典型的な範囲は、尿の吸い込み容量と調合物によって提供される容量との和(ミリリットル)あたりの成分(ミリグラム)で、マンニトール約2から約5、ホウ酸約2から約5、ギ酸ナトリウム約1から約4、およびホウ酸ナトリウム約1から約4である。グルタミンの典型的な量は、約0.1から約0.2である。
【0007】
プラスチック容器中で凍結乾燥された添加物においてしばしば見られる吸湿すなわち「メルトバック」による目に見える変色または不溶性を防止することに関する保存完全性を維持する点において優れた貯蔵寿命を提供することによって、該調合物は、プラスチック管、典型的にはPET(ポリエチレンテレフタレート)管の中で凍結乾燥される時に有利であることがわかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に従って、尿採集のために任意の容器を使用してもよい。典型的には、排気された管、より典型的には、PETのような材料から形成されたプラスチック管の中で、採集を行う。また、他のプラスチック材料も可能である。排気された管は、当技術分野においてよく知られており、および例えば血液採集において広く使用されている。
【0009】
1つの実施形態では、尿採集管を以下のように形成する。(単独の管に関する方法を記載しているが、しかし、典型的には多数の管に関してこれを行う。)安定化調合物を混合する。このバルク調合物は、典型的にはマンニトール、ホウ酸、ギ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、水、グルタミン、および界面活性剤(典型的には、非イオン性)を含有する。各添加物の量を以下に論じる。典型的な界面活性剤はTween(登録商標)80であるが、しかし、当業界で知られる他の界面活性剤もまた適当である。次いで、例えば慣用のバルブ機構を通して、このバルク調合物を管の中へ配置する。分配の量を、以下で論じる所望の比に基づいて、弁によって制御する。個々の添加物の若干量の複合体化が予想される。
【0010】
次いで、典型的には、管を排気室中に設置し、そこで管の中へ所望の吸い込みを提供する水準まで圧力を低下させる。しかしながら、管が排気されないままであることがあり得、その場合、管中に尿を得るための他の移送技術(すなわち、真空による助力なしの技術)を必要とする。排気室とは別個に、しかしより典型的には排気室内部でのいずれかで、調合物を最初に凍結乾燥すなわちフリーズドライすることが可能である。凍結乾燥は、食品安定化のような他の技術においてと同様に、標本採集容器の技術においてもよく知られている。
【0011】
排気室の場合、ひとたび圧力が所望の水準まで達したならば、典型的には、真空を維持するための気密栓を含むクロージャーを管上に設置する。排気された管のために、クロージャーは刺通可能なセプタムを有し、真空によって尿が中に吸い込まれるように、貯尿槽との流体接続部におけるカニューレの上方に管を配置することを可能にする。
【0012】
管が排気されているかどうかに関わらず、例えば、当技術分野で知られているようにコバルト60放射への曝露によって、管を滅菌する。滅菌されたならば、管は使用のための準備ができている。
【0013】
マンニトール、ホウ酸ナトリウム、およびホウ酸は、もとの状態またはそれに近い状態で微生物系を維持することに関与する主要成分であり、例えば、糞便連鎖球菌および緑膿菌を含有する系の保存を維持する。グルタミンは、シュードモナス属の種を維持するのに有効である。一般的に、ギ酸ナトリウムは緩衝機能を提供する。界面活性剤は、予想されるように、調合物の加工および分散を容易にする。
【0014】
一般的には、調合物の個々の成分の好適な量は、管の中へ吸い込まれる、すなわち分配される尿のmL(以下、「吸い込み容量」という」)あたりの成分の有効量に基づく。換言すれば、十分な調合物が尿と相互作用して所望の安定化を提供することを保証するように、本発明の容器を設計する。有用な範囲は、尿の吸い込み容量と調合物によって提供される容量との和のミリリットルあたりの成分のミリグラムで、マンニトール約2から約5、ホウ酸約2から約5、ギ酸ナトリウム約1から約4、およびホウ酸ナトリウム約1から約4を含むことが見出されている。グルタミン(典型的にはL−グルタミン)の量は、約0.1から約0.2である。
【0015】
特に有用な調合物は、繰り返しになるが、尿の吸い込み容量と調合物によって提供される容量との和のミリリットルあたりのミリグラムで、マンニトール約2から約5、ホウ酸約2から約4、ギ酸ナトリウム約1から約3、ホウ酸ナトリウム約1から約4、およびグルタミン約0.1から0.2を含有する。
【0016】
バルク調合物、すなわち管の中へ分配される水溶液において、水は、一般的に、全バルク調合物のmLあたり水約0.75から約0.85mLまでの範囲にわたる量で存在する。しかしながら、添加物の溶解度および採用する具体的なプロセス次第で、含水率に幅広い多様性が可能である。過度の水は、採集された尿を単に希釈するか、または凍結乾燥プロセスを長引かせるので、一般的には、溶解度を保証するのに十分な最少量の水を使用する。
【0017】
様々な界面活性剤が可能であるが、非イオン性の界面活性剤が最も有用である。Tween(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(一般的には、その1%溶液)の場合、比較的少量(例えば、全バルク調合物のmLあたりの100分の数mLの領域)が、バルク調合物において十分である。有用である可能性のある他の界面活性剤は、ポリソルベート、カルボキシレート基またはホスフェート基を含有する両性化合物、または、脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ソルビタンまたはスクロースのような、非イオン性化合物を含む。
【0018】
使用時には、典型的には、管(排気される場合)を、ふたと貯尿槽とを有する尿採集容器と共に使用する。ふたの1つの型は、貯尿槽と流体連結している鞘付カニューレを含む。カニューレの上方に、管クロージャー上の刺通可能なセプタムを設置し、および、真空によって、カニューレを通して管の中へ尿を吸い込む。あるいはまた、ふたがそのような特徴部を持たない場合、移送装置を使用してもよく、該装置は、一方の端に、貯尿槽に設置するためのストローを有し、および反対側の端に、ストローとの流体連絡している鞘付カニューレを有する管ホルダーを有する。ホルダーの中かつカニューレの上方に管を設置して、ストローを通して、および管の中へ、尿を吸い込む。また、貯尿槽から排気されていない管の中へ、他の技術、例えば、ピペットによるような手動移送も可能である。
【0019】
本発明の他の実施形態は、本明細書中に開示される本発明の詳述および実施例の検討から、当業者にとって明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿サンプルの採集および安定化のための容器を製作するための方法であって:
容器を提供する工程と、
マンニトール、ホウ酸、ギ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、水、グルタミン、および界面活性剤を含む調合物を提供する工程と、
該容器中へ該調合物を配置する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
該容器中へ該調合物を配置する工程に引き続いて、該調合物を凍結乾燥させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該容器を少なくとも部分的に排気する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該容器がプラスチックから形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該プラスチックがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該調合物が、マンニトール、ホウ酸、ギ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、水、グルタミン、および界面活性剤から本質的に構成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該容器がその上にクロージャーを有する管であり、該クロージャーは刺通可能なセプタムを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
尿サンプルの採集および安定化のための容器を製作するための方法であって:
容器を提供する工程と、
マンニトール、ホウ酸、ギ酸ナトリウム、およびホウ酸ナトリウムを含む調合物を提供する工程と、
該容器中へ該調合物を配置する工程と、
該容器を排気して、尿の概略の吸い込み容量を提供する工程と
を含み、該調合物が、該尿の概略の吸い込み容量と該調合物によって提供される容量との和のミリリットルあたりのミリグラムで、マンニトール約2から約5、ホウ酸約2から約5、ギ酸ナトリウム約1から約4、およびホウ酸ナトリウム約1から約4を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
該調合物が、グルタミンおよび界面活性剤をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該調合物がグルタミン約0.1から約0.2を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該調合物を凍結乾燥させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
該容器がプラスチックで形成されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
該プラスチックがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該容器がその上にクロージャーを有する管であり、該クロージャーは刺通可能なセプタムを有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項15】
尿サンプルの採集および安定化のための容器を製作するための方法であって:
容器を提供する工程と、
マンニトール、ホウ酸、ギ酸ナトリウム、およびホウ酸ナトリウムを含む調合物を提供する工程と、
該容器中へ該調合物を配置する工程と、
該容器を排気して、尿の概略の吸い込み容量を提供する工程と
を含み、該調合物が、該尿の概略の吸い込み容量と該調合物によって提供される容量との和のミリリットルあたりのミリグラムで、マンニトール約2から約5、ホウ酸約2から約4、ギ酸ナトリウム約1から約3、およびホウ酸ナトリウム約1から約4を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2006−513420(P2006−513420A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566448(P2004−566448)
【出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/033488
【国際公開番号】WO2004/062369
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】