説明

尿吸収パッド

【課題】吸収体の形状が下着の動きに追従した変形が起こりにくく、かつ、大量の尿が生じた場合においても、モレを生じにくい尿吸収パッドを提供する。
【解決手段】尿吸収パッドにおいて、少なくとも長手方向中間部CLで、吸収体3両側部の裏面側にサイドシート5を直接的または間接的に固定する。両サイドシート5,5は、幅方向中央を挟んで離間するように、長手方向に平行な線に沿って裏面側に折り返され、折り返された部分のバックシート2側の面が直接的または間接的にバックシート2に固定される一方で、他の部分はバックシート2に対して非固定の状態とする。幅方向に伸縮性を有するトップシート1を幅方向に伸長した状態で、表面側の両サイドシート5,5にわたるように配し、当該サイドシート5,5に直接的または間接的に固定し、トップシート1の幅方向の収縮力が、吸収体3の側部をバックシート2から離間して表面側に立ち上がる方向に働くように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿吸収パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
尿吸収パッド等の使い捨て尿吸収パッドは、表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置されたバックシートとの間に吸収体が介在された構造が一般的である。
【0003】
この種の尿吸収パッドにおいて、排泄口当接部に別途吸収体を設ける、圧搾溝を付与する、等により中高の構造とし、排泄口と尿吸収パッドの間に空隙が生じにくい構成とし、空隙を伝って液漏れが生じるのを軽減する技術が知られている(例えば、特許文献1,2)。また、尿吸収パッドの長手方向中間部分に幅方向外側に延出しするウイングを設け、ウイング裏面の固定手段を介して幅方向外側を下着に固定することにより、脚圧により生じる吸収体の幅方向中央へのヨレと当該ヨレにより生じる横モレを軽減する技術も広く知られている(例えば、特許文献3,4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−112590号公報
【特許文献2】特開2010−119743号公報
【特許文献3】特表平11−507287号公報
【特許文献4】特開2005−288197号公報
【特許文献5】特開2001−70346号公報
【特許文献6】特開2007−135943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、尿吸収パッドについて吸収体を中高の構造とした場合、一度に大量の尿が生じた場合に、吸収体の吸収速度が排泄速度に追いつかず、また、尿は粘性が低いため、吸収体表面を伝って前後モレや横モレが生じる可能性がある。特にウイングつきの尿吸収パッドの場合、下着の動きに追従して吸収体が変形しやすく、特に前方視で逆V字状や、これに類似した形状となりやすい。そのため、吸収体の幅方向外側において、身体との間に空隙が生じ、大量の尿が生じた場合、排泄口に当接する吸収体では尿を吸収しきれず、当該空隙から横モレが生じるおそれがあった。
【0006】
本発明の課題は、吸収体の形状が下着の動きに追従した変形が起こりにくく、かつ、大量の尿が生じた場合においても、モレを生じにくい尿吸収パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置された不透液性バックシートとの間に吸収体が介在されてなる尿吸収パッドであって、
少なくとも長手方向中間部において、前記吸収体と前記バックシートの間にサイドシートを有し、
前記サイドシートは、前記吸収体の裏面両側部に直接的または間接的に固定され、
両サイドシートは、幅方向中央線を挟んで互いに離間するように、吸収体側端よりも幅方向中央寄りの長手方向に略平行な線に沿って幅方向外側に折り返され、折り返された部分のバックシート側の面が前記バックシートに直接的または間接的に固定され、サイドシートの残りの部分は、少なくとも長手方向中間部において前記バックシートに対して非固定であり、
前記吸収体の裏面側の幅方向中間部が前記バックシートに固定されて吸収体固定部を形成し、
前記トップシートは、少なくとも長手方向中間部において、幅方向に伸縮性を有し、幅方向に伸長した状態でサイドシートに直接的または間接的に固定され、
前記トップシートが、吸収体側部をバックシートから離間させて肌当接面側に立ち上げる方向に収縮するように構成された、
ことを特徴とする尿吸収パッド。
【0008】
(作用効果)
吸収体の、少なくとも長手方向中間部の両側部がバックシートに対して非固定な構成とすることにより、下着の動きに追従して吸収体の側部が変形しにくい構成とした。
また、トップシートは伸長した状態でその側端がサイドシートに固定され、かつ、サイドシートの当該部分がバックシートに対して非固定であることにより、サイドシートはバックシートに対して肌側に立ち上がる。そのため、サイドフラップの立ち上がりに追従して、吸収体の少なくとも長手方向中間部の両側部がバックシートに対して立ち上がる。一方で、吸収体の幅方向中央部分はバックシートに固定される。すなわち、当該部分において、吸収体は肌当接面に対して凹な構造、すなわち前方視でV字状やU字状となる。この凹部分において尿を一時貯留することができ、これにより、大量の尿が排出された場合においても、物品内にその液を留め、モレを生じにくい構成とした。
さらに、トップシートは、下着の動き、及びこれに追従するバックシートの動きにはほとんど影響を受けることなく肌に接触し続けることができ、肌を伝って生じる前後方向の伝いモレを防ぐことができる。
【0009】
<請求項2記載の発明>
前記トップシートは、少なくとも排泄口当接部に直径1.0〜4.0mmの開口を有し、開口配設部の開口率が40〜80%である、請求項1記載の尿吸収パッド。
【0010】
(作用効果)
通常、尿吸収パッドは、トップシートと吸収体との間に空間を有さないように配されており、トップシートに付着した尿が素早く吸収体側へ移行する構成となっている。本願の請求項1記載の尿吸収パッドは、トップシートと吸収体の間に空間を有するため、尿の吸収体への移行がスムーズに行われないおそれがある。そこで、トップシートの排泄口当接部において、直径1.0〜4.0mmという大きな開口を配し、かつ開口率を40〜80%とした。尿は粘性が低く、この程度の開口を有するトップシートであれば、スムーズに通過し、吸収体側へ移行することができる。
【0011】
<請求項3記載の発明>
前記トップシートは不織布であり、前記不織布は吸水繊維を10〜70重量%含む、請求項1または2に記載の尿吸収パッド。
【0012】
(作用効果)
例えば汗等の少量の水分がトップシートに付着した場合、水分の吸収体への移行は、大量に排泄された尿のようにはスムーズには行われず、着用者にベタつき感を生じやすい、という問題がある。
トップシートに吸水性繊維を使用することで、少量の水分であればトップシートで吸収することができ、着用者に不快感を生じにくくすることができる。
【0013】
<請求項4記載の発明>
少なくとも長手方向中間部において、前記トップシートと前記吸収体との間の幅方向中間部に透液性のスペーサーを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の尿吸収パッド。
【0014】
(作用効果)
請求項1〜3に記載の発明は、トップシートと吸収体の間に尿を保持できる凹部を有する構成であるが、着用時において、吸収体側部の立ち上がりが潰れ、凹部が確保できないこともある。そこで、トップシートと吸収体との間の空間を保持するためのスペーサーを配する。また、凹部に受け止めた尿が、吸収前に逆戻りによりサイドシート外部に流れ出るのを抑えることができる。スペーサーとしては、尿の吸収体への移行を妨げないよう、透液性の素材を使用する。
【0015】
<請求項5記載の発明>
前記吸収体の少なくとも長手方向中間部において、前記吸収体固定部の両側端縁近傍に、長手方向に延在する圧搾溝を有し、かつ、前記圧搾溝はトップシート上に配されていない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の尿吸収パッド。
【0016】
(作用効果)
前記吸収体の、吸収体固定部の側端縁近傍に圧搾溝(エンボス)を配することにより、当該圧搾溝が吸収体の側部の立ち上がりの起点となり、吸収体が安定した凹形状に保たれやすくなる。なお、トップシートと吸収体との間は離間している必要があるため、圧搾溝はトップシートには配さないこととする。
【0017】
<請求項6記載の発明>
前記吸収体の、排泄口当接部の前端部及び後端部の少なくとも一方に、幅方向に延在する圧搾溝を有し、かつ、前記圧搾溝はトップシート上に配されていない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の尿吸収パッド。
【0018】
(作用効果)
尿の前後方向のモレを軽減するためには、尿吸収パッドの前後端が立ち上がる構成とすることが好ましい。排泄口当接部前後端に圧搾溝を配することで、当該圧搾溝が前後端の立ち上がりの起点となり、安定した形状で立ち上がりやすい。
なお、トップシートと吸収体との間は離間している必要があるため、圧搾溝はトップシートには配さないこととする。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、吸収体の側端部がバックシートに対して非固定の状態となっているため、下着の動きに合わせて起こる吸収体の不要な変形を軽減することができる。また、吸収体を表面に対して凹状にすることにより、一度に大量の尿を受けても、当該凹部に尿を一時貯留することができ、これにより、液のモレ、特に横方向のモレを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の尿吸収パッドの上面図である。
【図2】本発明の尿吸収パッドの底面図である。
【図3】本発明の尿吸収パッドより、トップシートを省略した状態での上面図である。
【図4】A−A線矢視図である。
【図5】B−B線矢視図である。
【図6】図4の要部拡大断面図である。
【図7】第2実施形態の要部拡大断面図である。
【図8】第2実施形態のトップシートを省略した状態での上面図である。
【図9】第3実施形態の要部拡大断面図である。
【図10】第4実施形態の肌当接面側からの平面図である。
【図11】第4実施形態のトップシートの別の例を示す平面図である。
【図12】トップシートとサイドシートの多様な位置関係を示す要部断面図である。
【図13】本発明の尿吸収パッドの使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本発明において「前方」とは着用者が着用した際に、前側となる方であり、「後方」はその反対側を指す。「長手方向」とは、前後方向を指し、「幅方向」は上面図において前後方向に垂直な方向を指す。また、「上部」「上層」「表面」とは肌当接面側を指し、「下部」「下層」「裏面」とはその反対側を指すものとする。
【0022】
〔第1実施形態〕
第1実施形態を図1〜図6及び図14に示す。図1は本実施形態に係る尿吸収パッド10の実施形態の一例を示した上面図である。図2は図1の尿吸収パッドの底面図(裏面)である。図3は図1の尿吸収パッド10よりトップシート1を省略したものを示しており、図4は図1のA−A線矢視図、図5は図1のB−B矢視図、図6は図4の要部拡大図である。
【0023】
尿吸収パッド10の基本構造は、不織布よりなる透液性のトップシート1、吸収体3及びポリエチレンシート等の不透液性シートからなるバックシート2がこの順に積層され、さらに側部にサイドシート5,5が配された構造である。トップシート1と吸収体3との間に不繊布等からなるセカンドシートを積層し、体液の拡散性向上を図ることもできる。さらに、両側部上に、体液の横モレ防止機能を有する起立ギャザーを設けてもよい。
【0024】
トップシート1及びバックシート2は、吸収体3の前後方及び両側方で延出している。この延出部分において、トップシート1及びバックシート2は、ホットメルト等の接着剤やヒートシール等によって接合され、エンドフラップ部EFを形成している。
【0025】
バックシート2及びサイドシート5の延出は、長手方向中間部において幅方向に長くし、この長くなった部分で、肌着の裏側(外面側)に折り返されて止着される、いわゆるウイング状フラップWを有する構成としてもよい。
【0026】
バックシート2としては、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。バックシート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0027】
バックシート2の裏面側には、通常、ショーツ等の肌着に対する止着部S1が設けられる。また、ウィングフラップWにも止着部S2が設けられる。この止着部S1,S2は、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体やスチレン・オレフィン共重合体等からなる粘着剤を、前後方向に帯状に塗布して形成することができる。この止着部は、装着時において尿吸収パッド10を肌着に止着するためのものであるが、本尿吸収パッド10を需要者に提供する段階においては、個別包装のための剥離シートなどを止着しておくこともできる。この剥離シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリエチレンテレフタレートシート、ラミネート紙、等からなり、止着部に対して剥離可能とされる。
【0028】
吸収体3を構成する吸収体の素材としては、体液を吸収・保持し得るものであればいずれも使用でき、パルプ等の天然繊維の他、合成繊維を用いることもでき、または体液の吸収量を増やすために、吸水性ポリマーを用いたり、これらを適宜併用できる。合成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができ、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。吸収体中に混合される合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。なお、通常は、フラッフ状パルプ中に吸水性ポリマー粉末を混入したものが吸収機能および価格の点から好適に使用される。
【0029】
吸収体3は、その形状を保持するために、包装シート4で囲繞するのが望ましい。包装シート4は、透液性を有していれば、その素材は特に限定されないが、クレープ紙等の水解性シートを好適に使用できる。
【0030】
吸収体3の長手方向中間部には、幅方向中央を挟んで離間する一対の長手方向に延在する圧搾溝E1を設けることが好ましい。図示例において、圧搾溝E1は幅方向中央側に凸となるように緩やかに湾曲した曲線状に付されているが、長手方向に平行な直線状に付されていてもよい。左右の圧搾溝E1の離間距離は、吸収体の幅方向の長さの20〜75%、特に30〜60%とすることが好ましい。さらに、吸収体3には、排泄口当接部(図示例においては長手方向中間部CL)の長手方向の前後端部に、それぞれ幅方向に延在圧搾溝E2を設けることが好ましい。圧搾溝E2は、図示例のように長手方向外側に向かって凸な弧状としてもよい。圧搾溝E2を配することにより、吸収体の前後端部が身体の形状に合わせて立ち上がりやすくなる。圧搾溝E1,E2は、吸収体3の上面、若しくは包装シート4の上面から付与され、トップシート1には付されない。トップシート1の表面から圧搾溝E1,E2を付してしまうと、吸収体の幅方向中央付近でトップシート1が吸収体と一体化してしまい、本発明の目的を達成することが困難となるためである。なお、圧搾溝E2を設ける場合は、吸収体の前後端部が下着等より独立して立ち上がりやすくするため、前方の圧搾溝E2より前方、後方の圧搾溝Eより後方の裏面には、止着部S1を設けないことが好ましい。
【0031】
吸収体3は、幅方向中間部のみが、包装シート4を介して、ホットメルト接着剤等でバックシート2に固定される。図示例においては、2本の圧搾溝E1の間の部分のみが、バックシート2に固定される。これにより、後述のように、固定されていない、圧搾溝E1より幅方向外側の吸収体が、圧搾溝E1を起点として、バックシート2から離間して上方に立ち上がりやすくなる。
【0032】
トップシート1としては、不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。トップシート1を形成する不織布としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0033】
トップシート1には、多数の開口を設けることが好ましい。後述のように、本実施形態の尿吸収パッドにおいては、トップシート1と吸収体との間には空隙があるため、トップシート1の液体透過性が低いと、尿が吸収体側へ移行し難く、トップシート上に残りやすい。特に尿は排泄量が多く、粘性も低いため、トップシート上に保持されにくく、モレが生じやすい。トップシート1に開口を形成した場合には、尿が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとすることができる。本実施形態においては、特に開口の大きさを1.0〜4.0mm、特に1.5〜3.5mmとすることが好ましい。開口は、トップシート1全体に配されていてもよく、排泄口に当接する長手方向中間部にのみ配されていてもよい。開口が設けられた部分(開口配設部)の開口率は、40〜80%、特に50〜65%とすることが好ましい。
【0034】
トップシート1は、幅方向への伸縮性を有するものとする。トップシート1は、少なくとも長手方向中間部CLにおいては、幅方向に105〜300%、特に110〜200%の伸長率を有することが好ましい。後に詳述するように、トップシート1は、幅方向外側から中央側にかかる力を奏することを要するためである。なお、用語「伸長率」とは、自然長を100%としたときの値を意味する。
【0035】
このような伸長性を持たせるため、トップシート1のシート材は、多孔性プラスチックシートを使用する場合は、伸縮性を有する素材、例えばポリウレタンフィルム、エラストマーフィルム等を使用することが好ましい。また、不織布を使用する場合は、捲縮性、伸縮性を有する繊維のみからなるものを使用してもよく、伸縮性を有する繊維を伸長した状態で非伸縮性の繊維と混紡して形成したものを使用してもよい。
【0036】
一方、トップシート1のシート材として、それ自体は伸縮性を有しない不織布、多孔性プラスチックフィルム等を使用してもよい。この場合、トップシート1の裏面側に複数の糸状弾性体11を幅方向に延在するように、伸長させた状態で固定し、幅方向に伸縮性を持たせる。図示例において、糸状弾性体11は、長手方向中間部CLにのみ配されているが、長手方向全体に配してもよい。
【0037】
トップシート1のシート材として非伸縮性の不織布を使用する場合、構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維の他、綿等の吸水性の繊維を使用することが好ましい。トップシート1を形成する不織布に占める吸水性繊維の割合は、10〜70重量%、特に15〜50重量%とすることが好ましい。吸水性繊維を10重量%以上とすることで、汗等の少量の水分をトップシート1で吸収することができる、という利点を有する。しかし、吸水性繊維の配合量が70重量%を超えるとトップシート1自体の保水性が高くなりすぎてしまい、水分が吸収体へ移行しにくくなってしまう。
【0038】
サイドシート5としては、尿が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布を用いることができる。また、サイドシート5とバックシート2を同じシートとしてもよい。サイドシート5を構成する不織布としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を18〜23g/m2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系や、パラフィン系等の撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0039】
サイドシート5は、図2〜図5に示されるように、吸収体両側端部に配され、吸収体側端を包むようにして、吸収体裏面側に折り返されている。さらに、両サイドシート5,5が吸収体裏面側において幅方向中央を挟んで離間するように、前後方向に略平行な線に沿って裏面側に折り返され、図示例においては、その側端は吸収体側端より外側に延在し、さらに、バックシートの側端の位置と一致している。つまり、サイドシート5は、それぞれ、前後方向から見てZ字に近い形状で配されている。折り畳まれる前のバックシート5の吸収体側の面にはホットメルト接着剤等が配され、当接する部材、すなわち、吸収体3または包装シート4、バックシート2等に全体的に固定される。長手方向中間部CLにおいては、サイドシート同士が折り畳まれて当接する面51、52には接着剤等を配さず、互いに非固定の状態とする。一方で、図5に示すように、長手方向前部FW、長手方向後部BKの部分においては、サイドシート同士の当接面51、52にもホットメルト接着剤等を配し、サイドシート5全体が直接的または間接的にバックシート2に固定された状態としている。なお、長手方向全体にわたって、
【0040】
両サイドシート5,5の吸収体裏面側の幅方向中央離間距離は、吸収体の幅方向の長さの20〜80%とすることが好ましい。また、圧搾溝E1を付す場合においては、圧搾溝よりも幅方向外側にサイドシート5,5の折り返しとするのが、吸収体側部の立ち上がりを補助しやすくなるため好ましい。
【0041】
トップシート1は、吸収体表面側の吸収体幅全体にわたって配され、図2〜4の形態においては、吸収体表面側端部のサイドシートの上にホットメルト接着剤等で固定されている。トップシート1は、前後方向両端部、及び幅方向両端部のみが固定され、中間部は固定されていない。前述のように、トップシート1は、少なくとも長手方向中間部CLにおいて、幅方向に伸縮性を有する。図示例において、トップシート1は、長手方向中間部CLにおいて幅方向に引っ張られた状態で、サイドシート5に固定されている。したがって、当該部分において、トップシート1には、幅方向中央に収縮する力が働き、これにより、サイドシート5のトップシート1に固定されている部分が、幅方向外側から内側に引っ張られ、これに追従して、サイドシートに間接的に固定された吸収体3の側部が上方に持ち上げられる。吸収体3の側部裏面側に間接的に固定されたサイドシート5の裏面はバックシート2に対して非固定であるため、バックシート2は、トップシート1の収縮によっては持ち上げられない。一方、吸収体3の幅方向中間部は包装シート4を介してバックシート2に固定されているため、トップシート1の収縮に追従して持ち上がることはない。このため、吸収体3の両側部がバックシート2から上方に離間して持ち上がり、吸収体全体は前方視で略V字状となる。
【0042】
トップシート1とサイドシート5の組み合わせの多様性を、図4及び図12に示す。図4示されるトップシート1は、上面においてサイドシート5にホットメルト接着剤等で固定されている。当該形態は、製造が容易である、という利点を有するが、一方で、トップシート1として、開口の大きなシートを使用した場合、開口部より、接着剤が肌当接面に露出しやすい、という問題がある。図12(A)の例においては、トップシート1の上にサイドシート5が固定されている。この場合、接着剤の染み出しは少ないものの、伸縮性を有するトップシート1が包装シート4に直接固定されているため、トップシート1収縮時に包装シート4が破断されやすい、という問題がある。また、サイドシート5が直接排泄口近傍に触れやすくなり、着用感を損ないやすいため、可能な限りサイドシート5が吸収体の表面側に露出しないようにすることが好ましい。図12(B)の例において、トップシート1は、吸収体裏面側まで延在してサイドシート5に固定されている。この場合、トップシート1の部材として大きなシートを必要とし、コストがかかるものの、トップシート1の開口から露出した接着剤が肌に触れるという問題はなく、また、吸収体側部の立ち上がりがより起こりやすい、というメリットがある。なお、図12(C)のように、トップシート1とサイドシート5とを直接接着させず、別部材としてサイド補助シート13を設けて、ここにトップシート1及びサイドシート5を固定する構成としてもよい。
【0043】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態を図7,8に示す。図7,8の例において、尿吸収パッドは、トップシート1と吸収体の間の幅方向中央部にスペーサー12を有する。スペーサー12は、図示例のように長手方向中間部に限局的に配してもよく、また長手方向全体に延在させてもよい。
【0044】
スペーサー12としては、図7(A)のようなΩ字状や、図7(B)のような複数の三角波を有する形状、蛇腹状(図示せず)などに折り曲げられたエアスルー不織布等のシート材や、それ自体が厚みを有する発泡ウレタン、スポンジ状セルロース等のシートや、伸長した糸状弾性体を配したエアスルー不織布等を好適に使用できる。スペーサー12は、トップシート1を通過した尿がスムーズに吸収体に移行できるように、液透過性の高いものを使用する必要がある。
【0045】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態を図9に示す。図9の例において、吸収体4のバックシート2に対して非固定な側部が、長手方向に平行な線に沿って複数回(図示例では2回)折り返されている。このように吸収体を蛇腹状の形状とすることで、幅方向中間部におけるトップシート1と吸収体4をより離間させることができ、当該離間スペースにより多量の尿を貯留することが可能となる。また、吸収体の液吸収面積が大きくなるため、より多くの尿を吸収することができる。特に、一度トップシート1の下方に移行した尿が側端から流出することを効果的に防止することができる。
【0046】
本実施形態の吸収体は、折り畳み構造をとりやすいシート状のものを使用することが好ましい。
【0047】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態を図10,11に示す。図10の例において、トップシート1の裏面側には、複数の糸状弾性体11が幅方向外側と内側に頂点を有する波状に、伸長した状態(テンションをかけた状態)で固定されている。糸状弾性体11のこのような形状により、トップシート1は幅方向のみならず、長手方向にも伸縮させることができる。糸状弾性体11の呈する波形の波長を短く、波高を高くすることにより、幅方向に伸縮しやすくすることができ、また、波長を長く、波高を低くすることによって、長手方向に伸縮しやすくすることができる。部位によって波長、波高を変えて、部位によって異なる伸縮性を有するようにしてもよい。
【0048】
糸状弾性体11を固定するに際し、例えば長手方向中間部においては強いテンションをかけ、長手方向前後端部においてはテンションを弱くする、等の処置を施すことによって、部位によって伸縮率が異なる構成としてもよい。他にも、伸縮性を要しない部分には接着剤を配さない、複数の糸状弾性体11にそれぞれ異なるテンションをかけ、糸状弾性体ごとに止着位置を変えることによって、伸縮性を部分的に調整することができる。なお、図示例においては、複数の糸状弾性体11をその波形全体が重なるように配しているが、例えばこれらを互いに重ならない構成としてもよく、一部のみ重なる構成としてもよい。図示例のように糸状弾性体11の波形を重ねた場合、上記のように部位ごとにシートの伸縮性を変える場合に調整が容易となる、という利点を有する。
【0049】
第4実施形態の他の例を図11に示す。糸状弾性体11は、メッシュ状(図11(A))、三角波状(図11(B))等にしてもよく、また、長手方向外側と内側に頂点を有する波状としてもよい(図11(C))。
【0050】
前後方向に伸長性を持たせることにより、長手方向前端部FW及び後端部BKを立ち上がりやすくすることができる。特に、図4の圧搾溝E2を配すると、圧搾溝E2を起点として吸収体がスムーズに立ち上がりやすいため好ましい。吸収体は、トップシート1の伸縮により、V字溝またはU字溝のような形状となりやすく、長手方向全体にわたってこのような形状であると当該溝を伝って液が長手方向に移行しやすく、前モレ、後モレを生じるおそれがあるが、前後方向を立ち上げることにより、これらを生じにくくすることができる。なお、前側の圧搾溝E2の前方、及び後側の圧搾溝E2の後方の両方、またはいずれか一方に立ち上がった吸収体の形状の保持を補助するように圧搾溝を配することもできる(図示せず)。
【符号の説明】
【0051】
10…尿吸収パッド、1…トップシート、2…バックシート、3…吸収体、4…包装シート、5…サイドシート、11…糸状弾性体、12…スペーサー、13…サイド補助シート、S1,S2…止着部、E1,E2…圧搾溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に配置された透液性トップシートと裏面側に配置された不透液性バックシートとの間に吸収体が介在されてなる尿吸収パッドであって、
少なくとも長手方向中間部において、前記吸収体と前記バックシートの間にサイドシートを有し、
前記サイドシートは、前記吸収体の裏面両側部に直接的または間接的に固定され、
両サイドシートは幅方向中央線を挟んで互いに離間するように、吸収体側端よりも幅方向中央寄りの長手方向に略平行な線に沿って幅方向外側に折り返され、折り返された部分のバックシート側の面が前記バックシートに直接的または間接的に固定され、サイドシートの残りの部分は、少なくとも長手方向中間部において前記バックシートに対して非固定であり、
前記吸収体の裏面側の幅方向中間部が前記バックシートに固定されて吸収体固定部を形成し、
前記トップシートは、少なくとも長手方向中間部において、幅方向に伸縮性を有し、幅方向に伸長した状態でサイドシートに直接的または間接的に固定され、
前記トップシートが、吸収体側部をバックシートから離間させて肌当接面側に立ち上げる方向に収縮するように構成された、
ことを特徴とする尿吸収パッド。
【請求項2】
前記トップシートは、少なくとも排泄口当接部に直径1.0〜4.0mmの開口を有し、開口配設部の開口率が40〜80%である、請求項1記載の尿吸収パッド。
【請求項3】
前記トップシートは不織布であり、前記不織布は吸水繊維を10〜70重量%含む、請求項1または2に記載の尿吸収パッド。
【請求項4】
少なくとも長手方向中間部において、前記トップシートと前記吸収体との間の幅方向中間部に透液性のスペーサーを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の尿吸収パッド。
【請求項5】
前記吸収体の少なくとも長手方向中間部において、前記吸収体固定部の両側端縁近傍に、長手方向に延在する圧搾溝を有し、かつ、前記圧搾溝はトップシート上に配されていない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の尿吸収パッド。
【請求項6】
前記吸収体の、排泄口当接部の前端部及び後端部の少なくとも一方に、幅方向に延在する圧搾溝を有し、かつ、前記圧搾溝はトップシート上に配されていない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の尿吸収パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−200296(P2012−200296A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65151(P2011−65151)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】