説明

尿採取装置

【課題】 洋風大便器で普段通りの排泄をするだけで尿流量測定を行なうと共に、尿流量測定を行った排尿と同じタイミングの尿を採取とすることにより、尿流量測定と同じタイミングの特定成分濃度測定用の尿検体採取を可能とする。
【解決手段】 本発明では、被験者が洋風大便器のボウル内に排泄する尿の少なくとも一部を採取する尿採取装置において、前記洋風大便器に取り付けるための取付け部と、
前記洋風大便器に取り付けた状態で被験者の局部に対向して開口する開口部と、前記開口部に連設され、被験者が前記開口部に向けて排泄する尿を捕集する尿捕集部とを有し、前記尿捕集部は、捕集された尿のうち所定量を貯留する尿貯留部と、前記尿貯留部に貯留される尿以外の捕集された尿を前記尿捕集部の外部に漏出させる尿漏出部と、を備えたことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者が排泄行為で洋風大便器のボウル内に尿を排出するときの便器ボウル内の溜水量の変化量を計測することによって尿流量(排出される尿の量である尿量や、単位時間当たりに排泄される尿量で表わされる尿流率を併せて、以下ではこう呼ぶこともある)を測定する尿流量測定便器を使用する際に、尿流量を測定しながら、尿の一部を採取して特定成分濃度の測定をも同時に行なうことを可能とすることに好適な尿採取装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
泌尿器関係の診断に必要な排尿情報として、近年、被験者が排泄する尿(以下、この尿を「排尿」とも呼ぶ)の量である尿量や、その時間的変化状態を示すパラメータである尿流率が用いられている。その測定は、尿量では排尿を容器で集めてその重量や体積の計測で、また尿流率では特別に用意された容器に放尿を行ってその容器全体の重量変化を連続計測する方法が行なわれてきた。
【0003】
近年、これらの測定を、便器内に放尿させたときの便器ボウル内の溜水量の変化量を体積変化や重量変化を計測することによって行なう装置が考えられており、その一例として溜水の水位変化から体積変化を求める排尿情報測定便器なるものがある(特許文献1参照)。
【0004】
一方、疾病の原因を特定して治療方針を決定するためには、排尿の尿量や尿流率の測定情報だけでなく、特定成分濃度の測定情報も併せて必要とされる場合もある。
【0005】
例えば、尿流途絶状態が尿流率測定で確認される時に、排尿に含まれる特定成分である潜血や白血球・赤血球などの有無や濃度によって、尿路結石などの下部尿路障害の有無や程度を判断する場合である。
【0006】
ここで、ヒトの体内における尿への特定成分排出は内分泌の関係で常に一定ではなく刻々変動することから、測定対象となる排尿中の特定成分濃度も排尿時刻によって変動することとなる。そのため、前述したように尿量や尿流率の情報と特定成分濃度の情報とを併せて判断することが必要な場合は、医療的には両者の測定を実施するタイミングが重要で、可能な限り両者の測定の時間的間隔が短いことが好ましい。
【0007】
ところが、尿量測定や尿流率測定は被験者の膀胱にたまった尿の全量を排出させて計測することが前提のため、これらの測定のための排泄を行なった後、短時間の間に改めて特定成分濃度測定を行なうために再度の排泄を行なうことは困難である。
【0008】
従って、より正確な診断を行なうためには、尿量や尿流率の測定を行なう排尿行為の尿で特定成分濃度も測定することが必要となる。
【0009】
そして、排泄される尿に含まれる特定成分濃度の測定方法としては、排泄時に直接、成分測定を行うことも考えられるが、そのための装置が大掛かりとなるため、排尿の少なくとも一部を検体として採取して別に用意されている既存の技術を使用した分析装置で特定成分濃度を測定する方法が考えられる。
【0010】
検体を採取する方法としては、被験者自身が使い捨ての容器に排出して分取する方法(特許文献2参照)や、アームによって支持された再使用可能な採取容器を便器ボウル内に進出させて採取する方法(特許文献3参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−219977号公報
【特許文献2】実用新案登録第3084580号公報
【特許文献3】特開平09−229928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1のように便器内の溜水量の変化量を計測することによって行なう排尿情報測定装置では、特許文献2や特許文献3に記載されているような、ボウル内に排泄された尿が溜水と混入する前に少なくともその一部を特定成分濃度の測定のための検体として採取する方法を採用しようとすると、便器内の溜水量の変化状態が影響を受けるため、そのままでは正確な尿量や尿流率の測定結果が得られなくなる。
【0013】
そのため、被験者が排泄する尿の全量を対象とする尿量や尿流率の測定と、特定成分測定用の検体採取とは同時に行なうことが出来ないため、前述したような両方の測定結果を必要な場合には、それぞれ別途の排尿行為で測定を行なうしかなく、その結果として、より正確な診断情報の収集が出来ないという問題があった。そのため特に、両者の測定が行なわれる頻度の高い病院の外来という環境下では、特許文献1のような排尿情報測定装置の活用度が低下するという問題があった。
【0014】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、便器内の溜水量の変化量を計測することによって、尿量や尿流率の測定を行なう排尿情報測定便器を使用するに際して、普段通りの排泄をするだけで、特定成分濃度の測定に供する尿検体を採取する尿検体採取装置を供することによって、尿量や尿流率の測定と特定成分濃度の測定を同時に行なうことを可能として、排尿情報測定便器の活用度を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明のよれば、被験者が洋風大便器のボウル内に排泄する尿の少なくとも一部を採取する尿採取装置において、前記洋風大便器に取り付けるための取付け部と、前記洋風大便器に取り付けた状態で被験者の局部に対向して開口する開口部と、前記開口部に連設され、被験者が前記開口部に向けて排泄する尿を捕集する尿捕集部とを有し、前記尿捕集部は、捕集された尿のうち所定量を貯留する尿貯留部と、前記尿貯留部に貯留される尿以外の捕集された尿を前記尿捕集部の外部に漏出させる尿漏出部と、を備えたことを特徴とすることにより、
普段通りの排尿を行ったときに尿捕集部には所定量だけが尿貯留部に分取され、それ以外は溜水中に排出されるため、この所定量を特定成分濃度測定に使用する検体を採取可能な範囲の適宜な一定量と設定しておけば、洋風大便器のボウル内の溜水量の変化量を測定する方式の排尿情報測定装置によって尿流量測定を行なう場合に、排尿情報測定装置側で尿流量測定結果に対してこの所定量の影響量を考慮した補正処理を行なうことによって、本来の正しい尿流量測定結果が推定可能となるとともに、貯留された尿から特定成分濃度測定用の検体を採取することが可能となる。その結果、で尿流量測定と特定成分濃度測定とを同じ排泄行為の尿で同時に行なうことが可能となるため、より正確な診断ができる。
【0016】
また、請求項2記載の発明によれば、前記尿捕集部は、形状変形を容易にするための塑性変形部を備えたことを特徴とすることにより、
使用した後の本採取装置を廃却時に、押しつぶすなど変形させることによって体積を減らすことが可能となるため、ゴミの量を減らすことが出来る。
【0017】
また、請求項3記載の発明によれば、前記尿捕集部は、水に溶解する材質で形成されていることを特徴とすることにより、
使用後に前記溜水に投棄して便器洗浄行為で下水道に排出することが可能となるため、廃却処理することが容易になる。
【0018】
また、請求項4記載の発明によれば、被験者が洋風大便器のボウル内に排泄する尿の少なくとも一部を採取する尿採取装置において、前記洋風大便器に取り付けるための取付け部と、前記洋風大便器に取り付けた状態で被験者の局部に対向して開口する開口部と、前記開口部に連設されて被験者が前記開口部に向けて排泄する尿の全量を捕集する尿捕集部とを有し、前記尿捕集部は、使用時に前記溜水に没した状態で捕集される尿の質量によって変形可能な程度の柔軟性を持った素材で形成され、排泄される尿の全量を貯留する尿貯留部を備えたことを特徴とすることにより、
尿捕集部は使用時に、捕集された尿を収容している部分の全てが過不足なく前記溜水に没した状態で尿が捕集されることから、洋風大便器のボウル内の溜水量の変化量を測定する方式の排尿情報測定装置によって尿流量測定を行なう場合に、ボウル内の溜水量変化状態が尿採取装置を使用しない場合と異なることなく、かつ、排泄された尿が溜水と混入することがないため、尿捕集部に収集された尿から採取された尿検体は特定成分測定に供することができる。従って、排尿情報測定装置で行なう尿流量測定結果に支障を与えることなく尿検体を採取することが可能となる。
【0019】
また、請求項5記載の発明のよれば、貯留した尿の少なくとも一部を他の容器に分取するための排出口となる排出部を備えたことを特徴とすることにより、
尿特定成分測定用のスピッツ容器に衛生的かつ効率的に取り分けることが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の尿検体採取装置によれば、排尿情報測定装置で尿量や尿流率を含む排尿情報の測定を行なう場合に、簡易な構成で成分測定用の検体採取用の尿の採取をも同時に行なえるため、正確な診断に必要な、より多くの排尿情報を得ることが可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の尿採取装置を尿流量測定装置に使用した一例の概観を示す斜視図である。
【図2】本発明の尿採取装置の第一実施例の全体を示す斜視図である。
【図3】本発明の尿採取装置の第一実施例を使用した尿流量測定結果の模式図である。
【図4】本発明の尿採取装置の第ニ実施例を示す斜視図である。
【図5】本発明の尿採取装置の第二実施例を尿流量測定装置に取り付けた状態を示す断面図である。
【図6】本発明の尿採取装置の第三実施例を示す斜視図である。
【図7】本発明の尿採取装置の第四実施例を示す斜視図である。
【図8】本発明の尿採取装置の第五実施例を示す斜視図である。
【図9】本発明の尿採取装置の第五実施例を構成する展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1〜図3を用いて本発明の尿採取装置の第一実施例を説明する。
図1は、本発明の尿採取装置4を使用する尿流量測定便器の一例の概観を示す斜視図である。図1を使用して尿流量測定装置と本発明における尿採取装置の関連について以下に述べる。
【0023】
本実施例を使用する尿流量測定便器100は、洋風大便器1の上部に後述の便座21を含む衛生洗浄装置2が固定されており、測定手段一式は後部に設置されたキャビネット3の中に収納されている。そして、本発明の第一実施例である尿採取装置4は破線で示されているように、洋風大便器1の上方に着脱自在に載置された状態で使用される。
【0024】
洋風大便器1は陶器製もしくは樹脂製であり、ボール11の上部には樹脂製の便座21が回動自在に取り付けられ、また、使用者が大小便などの排泄物を排泄するボール11と図示しない便器洗浄機能部とを有している。このように、通常の排泄行為の用途にも使用できる構成となっている。また、使用者の上半身を支えることを配慮した背もたれ31を、キャビネット3に設置している。
【0025】
操作・表示部7は、衛生洗浄装置操作用リモコン71と排泄情報測定用リモコン72から構成され、壁に取り付けられている。測定結果はキャビネット3の上方に配置されたプリンター6から出力されるだけでなく、院内LANを介して電子情報として送信されるものであっても良い。
【0026】
尿流量測定装置100は、以上の構成で、被験者が通常の排泄行為と同じようにボール11に向けて放出する尿によってボール11に貯留されている溜水量が増加して水位が変化する量を水圧変化として計測し、それを予め記憶させている関係式に基づいて溜水量変化に換算することによって、排出される尿量や尿流率を測定するものである。
【0027】
図2は、本発明の尿採取装置の第一実施例である尿採取装置4を示す斜視図である。
【0028】
尿採取装置4は、特に尿流量測定装置100に座位で排尿する被験者に対して推奨されるものであり、被験者の排泄する排尿全てを確実に捕集できる充分な大きさの開口41を形成する鍔部42と、鍔部42に取り付けられた袋状の尿捕集部43とで形成され、鍔部42をリム13の上に載置し、便座21で挟み込んで使用するようになっている。
【0029】
本実施例の尿採取装置4では、尿捕集部43の下部の側面部には本発明における尿漏出部を構成する流出口44が形成されており、そのため、被験者が排出した尿は先ず尿捕集部43に入り、流出口44の下端に到達するまでは貯留されるが、到達した以降の尿は流出口44から溜水12に全て排出される。その結果、尿流量測定のための排尿が終わると、尿捕集部43の下部に一定量の尿が貯留された状態になる。このように、本実施例においては、尿捕集部43の流出口44の下端までの部分が、本発明における尿貯留部46に相当するように構成されている。
【0030】
被験者の尿流率(単位時間当たりの排尿量、mL/秒)は最大100mL/秒程度とされており、流出口44は単位時間当たり100mL/秒程度を滞留させることなく排出できる大きさに設定されている。このような設定にすると測定される尿流率も流出口44の影響を受けることがなくなり、流出を始めた以降に得られる計測データは尿採取装置4を使用しない場合と同じ挙動を示すこととなり、正確な測定が行なえる。
【0031】
鍔部42の流出口44と反対側には溝形状部を備えた排出部45が形成され、尿貯留部46に貯留された尿は図示しないスピッツ容器に移し替えて特定成分測定のための検体として利用することが容易となるよう配慮されている。尿貯留部46の体積としては、成分分析に必要な量を賄うだけであるから10〜20mL程度とごく少量の範囲から本発明の所定量として設定すればよい。
【0032】
次に、本実施例の尿採取装置4を使用した場合の尿流量測定便器100の測定について説明する。
図3は、その場合の尿流量測定結果を示した模式図であり、横軸に経過時間、縦軸に尿流率(単位時間当たりの排尿量、mL/秒)をとっている。
【0033】
被験者が排尿を開始すると、尿は先ず開口41から尿捕集部43に入り、尿貯留部46で所定量になるまで貯留された後、流出口44から溢れ出て溜水12に落下するようになる。その結果、溜水12の体積は尿貯留部46に排尿が貯留される間は変化せずに、流出口44から溢れ出始めると変化を開始しその状態が排尿終了まで継続する。
【0034】
そして、尿流量測定便器100の尿流率測定に関しては流出口44は被験者の最大尿流率を配慮した大きさに設定されているため、尿貯留部46で所定量を貯留するまでの時刻が経過した以降は、尿採取装置4の有無に関わらない尿流率波形が取得されるようになっている。
【0035】
また、尿量測定に関しては、尿貯留部46によって図示したように尿の一部が貯留尿として分取されるため、直接の計測対象から除外されることになるが、この分取量は一定量であるため尿量は算出時にこの一定量を和算するだけで簡便に推定できる。また、尿流率も溢れ出るまでの波形が除外されることになるが、波形カーブを延長補完することで本来の尿流量測定結果を推定できることになる。従って、本発明による尿採取装置4を使用すると尿流量測定結果に悪影響を及ぼすことなく、尿検体採取が可能となる。
【0036】
次に、図4及び図5を用いて本発明の尿採取装置の第二実施例とその測定原理を説明する。なお、尿採取装置以外は前述した第一実施例と同じため、同じ符号を使用するとともに詳細な説明は省略する。
図4は、本発明の尿採取装置の第ニ実施例である尿採取装置5を示す斜視図である。
【0037】
第二実施例の尿採取装置5は、被験者の排泄する排尿全てを確実に捕集できる充分な大きさの開口51を形成する鍔部52と、鍔部52に取り付けられた柔軟性のある袋状の尿捕集部53とを備えており、鍔部52をリム13の上に載置し、便座21で挟み込んで使用するようになっている。この実施例は座位・立位に関わらず推奨されるものである。また、鍔部52には溝形状の排出部55が形成され、採取された尿検体は特定成分測定のために図示しないスピッツ容器に移し替えが容易となるよう配慮されている。
【0038】
図5は、本発明の尿採取装置の第二実施例を尿流量測定装置に取り付けた状態を示す断面図である。
尿捕集部53は、リム13の上に載置した状態で測定が継続中に捕集される尿の自由表面水位と周囲の溜水12の自由表面水位との水位差が尿流量測定装置100の測定誤差として許容できる範囲内に収まるように、その柔軟性が考慮されて設計されている。またその大きさも、鍔部42をリム13の上に載置した状態で、例えば、一般的な最大尿量である800mLの尿が排泄されたときの溜水水位以下の容積が、800mL以上確保できるだけの大きさを持つように設計されている。
【0039】
本実施例での尿捕集部53は、厚さ0.03〜0.08mm程度のポリエチレン製の袋体であり、所定の柔軟性とを併せ持っている。使用時には、尿流を受ける前は素材の比重の関係で溜水12の上に浮いた状態にセットされ、開口部51が尿流を受けると尿捕集部53中に捕集されながら、尿が侵入した部分は溜水12中に没していく。その結果、捕集された尿は溜水12と混ざり合うことなく、尿捕集部53の下部に貯留されていくことによって、溜水12の体積変化が発生する。
【0040】
この場合、尿捕集部53の下部は測定時には溜水12の水面下に位置して捕集された尿の全量が貯留される本発明における尿貯留部56を形成する。また、鍔部52には溝形状の排出部55が形成され、採取された尿検体は特定成分測定のために図示しないスピッツ容器に移し替えが容易となるよう配慮されている。
【0041】
ここで、本実施例における尿捕集部53は、体積が無視できる程度に薄く、かつ、そこに捕集された尿の表面が周りの溜水の表面とほぼ同じ高さを保ちながら貯留される程度の柔軟性を持った素材で形成されているため、ここで発生する溜水12の体積変化は捕集される尿の重量分に見合う量と見なすことが出来る。従って、この溜水12の体積変化を尿流量測定装置100によって計測することによって尿流量を演算によって求めることが可能となる。
【0042】
以上述べたとおり、患者が普段通りの排尿を尿採取装置5に対して行ったときに、尿流量測定便器100の溜水量変化状態が尿採取装置4を使用しないときと比べて変化することがなく、尿流量測定に支障は発生しない。また、排泄された尿が溜水12と混入することがないため、尿貯留部46から採取された尿検体は特定成分測定に供することができる。これによって、尿流量測定を行った排尿からの尿検体を、尿流量測定結果に支障を与えることなく採取できることになる。
【0043】
図6は、本発明の尿採取装置の第三実施例を示す斜視図であり、第一実施例で示した尿貯留部46の定量性を向上させた事例である。
【0044】
前述した第一実施例では鍔部42を洋風大便器1のリム13の上に載置して使用するようになっているが、一般的な洋風大便器は陶器製であるため、便器設置時の施工基準面に対するリム13の平行度は一般的な機械加工品に比べて良くなく、さらに、施工基準面のばらつきも加わり、設置後のリム13の水平度は良くない場合も考えられる。このような場合に第一実施例を適用すると、鍔部42はリム13の水平度に倣って設置されるため、以下の内容積で形成される尿捕集部43の尿漏出部44の最下面で規定される水平面は設計上の位置と異なることになる。
【0045】
第一実施例では、この水平面が尿貯留部46に貯留される尿の表面(以下、この面を尿貯留面とも呼ぶ)となるため、尿貯留部46の容積はこの水平面の変動の影響を大きく受ける構造となっている。即ち、設置後のリム13の水平度のバラツキの結果として、尿貯留部46に採取される尿量にはバラツキが発生することになる。
【0046】
第三実施例においては、尿貯留部46を尿捕集部43の底面43aとは独立の凹形状部としてこの尿貯留面の面積を小さくすることにより、第一実施例と比較して分取される量をより正確にするよう配慮されている。分取される量の精度が特に要求されない場合は、当然、第一実施例で示した尿捕集部43と尿貯留部46が一体の形状を採用すればよい。
【0047】
図7は、本発明の尿採取装置の第四実施例を示す斜視図である。
第一実施例で示した尿採取装置は繰り返し使用を想定したものであり、使用後は洗浄・消毒・乾燥を行うことを想定している。しかし、医療機関の省力化と院内感染の防止を目指した場合、繰り返し使用を避けて、ディスポーザブルにしたいという要望もある。特に感染症患者の排泄物を検体とする場合は、その要望が高く、図7は単回使用の使い捨てを想定したものである。
【0048】
尿捕集部43の側面部には形状変形を容易にするための塑性変形部431を形成している。塑性変形部431は波板形状であり、かつ、上方側が広がる形状となっている。従って、上方から荷重を掛けた場合、尿採取装置4全体は容易に変形するようになっており、尿採取装置4を使用した後の廃却時に押しつぶすことで、かさばることがなく、ゴミの体積を減らすことが可能となるよう配慮されている。
【0049】
図8は、本発明を適用した第五実施例の尿採取装置80を示す斜視図である。
装置全体を水に溶解する材質として、尿採取装置80全体を便器内に廃棄することを可能とするものである。
【0050】
図9は、図8で示した尿採取装置80を単一部材で構成する場合の展開図である。
図9で示した展開図に従って、水溶性の例えば紙を所定の大きさにカットし、所定の位置で折り曲げ、所定の位置を水溶性の接着剤で貼りあわせることで、図8で示した斜視図の構造の尿採取装置が得られるようになっている。尿採取装置80は、使用後に便器の溜水に投棄して、便器洗浄を行なって下水配管に搬送することで、処理のための負荷や、院内感染の恐れを減少させた状態で廃却処理が可能となっている。
【符号の説明】
【0051】
1…洋風大便器
2…衛生洗浄装置
3…キャビネット
4…尿採取装置
5…尿採取装置
6…プリンター
7…操作・表示部
11…ボール
12…溜水
13…リム
21…便座
31…背もたれ
41…開口
42…鍔部
43…尿捕集部
43a…底面(尿捕集部)
431…塑性変形部
44…尿漏出部
45…排出部
46…尿貯留部
51…開口部
52…鍔部
53…尿捕集部
54…尿漏出部
55…排出部
56…尿貯留部
71…衛生洗浄装置操作用リモコン
72…排泄情報測定用リモコン
80…尿採取装置
82…鍔部
82a,82b…鍔部(展開図)
83…尿捕集部
83a…底面(尿捕集部)
83b,83c…側面(尿捕集部)
84…尿漏出部
100…尿流量測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が洋風大便器のボウル内に排泄する尿の少なくとも一部を採取する尿採取装置において、
前記洋風大便器に取り付けるための取付け部と、
前記洋風大便器に取り付けた状態で被験者の局部に対向して開口する開口部と、
前記開口部に連設され、被験者が前記開口部に向けて排泄する尿を捕集する尿捕集部とを有し、
前記尿捕集部は、捕集された尿のうち所定量を貯留する尿貯留部と、
前記尿貯留部に貯留される尿以外の捕集された尿を前記尿捕集部の外部に漏出させる尿漏出部と、を備えたことを特徴とする尿採取装置。
【請求項2】
前記尿捕集部は、形状変形を容易にするための塑性変形部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の尿採取装置。
【請求項3】
水に溶解する材質で全体が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の尿採取装置。
【請求項4】
被験者が洋風大便器のボウル内に排泄する尿の少なくとも一部を採取する尿採取装置において、
前記洋風大便器に取り付けるための取付け部と、
前記洋風大便器に取り付けた状態で被験者の局部に対向して開口する開口部と、
前記開口部に連設されて被験者が前記開口部に向けて排泄する尿の全量を捕集する尿捕集部とを有し、
前記尿捕集部は、使用時に前記溜水に没した状態で捕集される尿の質量によって変形可能な程度の柔軟性を持った素材で形成され、排泄される尿の全量を貯留する尿貯留部を備えたことを特徴とする尿採取装置。
【請求項5】
前記捕集部に貯留した尿の少なくとも一部を他の容器に分取するための排出口となる排出部を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいづれか1項に記載の尿採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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