説明

尿検査用衛生材料およびその製造方法

【課題】採尿する際に尿成分が変化しにくく、容易に製造できる尿検査用衛生材料を提供する。
【解決手段】低金属吸収性部材2と、この低金属吸収性部材2が配設された不透液性裏面シート3とを具備する。低金属吸収性部材2は、通常の衛生材料に使用される吸収性材料を金属捕集剤に接触することにより、吸収性材料に含まれる金属を除去して形成される。この尿検査用衛生材料1は、吸収性材料の金属が金属捕集剤により除去されているため、尿を吸収させても吸収性材料に由来する金属が尿に溶出しにくく、採尿する際に尿成分が変化しにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿を回収して検査をするための尿検査用衛生材料およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新生児、特に未熟児の場合、電解質成分を配合した調整液を点滴する。このとき、生育が正常でないと点滴に配合されている電解質成分が身体に吸収されず、尿として排泄されてしまうことがあるので、新生児の体調管理のために尿を採取して検査する。
【0003】
そして、新生児の尿の検査のために採尿する際には、採尿バッグが使用される(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
採尿バッグには、開口部と、この開口部の周りに位置する粘着部とが設けられており、この粘着部を装着者の外陰部に貼り付けることによって装着されて採尿できる。
【0005】
しかしながら、このような排尿バッグを使用した場合、装着対象が外部からの刺激に影響を受けやすい新生児であるので、粘着部を外陰部に貼り付けるための粘着剤の影響により新生児の皮膚が荒れてしまうことや、採尿バッグを貼り付けたことによるストレスで排尿しなくなってしまう場合があった。
【0006】
そこで、採尿バッグ以外の採尿する手段として、液透過性身体側ライナーと、液不透過性外カバーと、これら液透過性身体側ライナーと液不透過性外カバーとの間に配置された吸収体と、股領域に配置された回収挿入体とを備え、回収挿入体と吸収体とが流体的に分離され、回収挿入体は、尿の大部分を吸収体で吸収する一方で、検査用に十分な量の尿を吸収して一時的に保持するように構成されているおむつが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2010−526564号公報(第4−7頁、図1)
【非特許文献1】[online]、アトムメディカル株式会社、[平成23年11月4日検索]、インターネット<URL:http://www.atomed.co.jp/product/pages/d_49001.html#bag>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献1の構成では、回収挿入体は、吸収体にて尿の大部分を吸収する一方で、検査用に十分な量の尿を吸収して一時的に保持するように形成されており、回収挿入体としてスポンジやセルロース系材料など種々のものを適宜使用できるとされているが、何れの材料にて回収挿入体が形成されていても、吸収体にて吸収した尿が一緒に回収されてしまい、吸収体に含まれていた金属などの成分が尿と一緒に回収されて尿成分が変化してしまう場合があった。特に、吸収性材料がガーゼおよび脱脂綿などの天然繊維材料にて形成された場合は、吸収性材料からCa(カルシウム)成分が溶出してしまう場合があった。このような場合には、実際の尿に含まれているCaより吸収性材料から回収された尿のカルシウムが高い濃度で検出されてしまい、新生児のCa検査を必要とする尿検査において、正確な結果が得られず結果に悪影響をあたえてしまうという問題があった。
【0009】
なお、特許文献1には、[0018]段落に回収挿入体は尿成分を変えないものが好ましいと記載されているが、その具体的な手段については記載されておらず、また、吸収性材料にて吸収された尿により尿成分が変化してしまう。
【0010】
また、回収挿入体と吸収体とを流体的に分離するには、構成が複雑で製造工程が煩雑になるため、容易に製造できない問題が考えられる。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、採尿する際に尿成分が変化しにくく、容易に製造できる尿検査用衛生材料、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載された尿検査用衛生材料は、衛生材料に使用される吸収性材料と金属捕集剤を含む溶液とを接触させて、前記吸収性材料に含まれる金属を除去した低金属吸収性部材を具備し、この低金属吸収性部材により尿を吸収するものである。
【0013】
請求項2に記載された尿検査用衛生材料は、請求項1記載の尿検査用衛生材料において、吸収性材料は、天然植物繊維由来の原料からなるガーゼ、脱脂綿および不織布のいずれかにて形成されているものである。
【0014】
請求項3に記載された尿検査用衛生材料は、請求項1または2記載の尿検査用衛生材料において、金属捕集剤は、キレート剤であり、このキレート剤の量は、吸収性材料に含まれる金属と前記キレート剤とが結合する量の理論値の100倍以上であるものである。
【0015】
請求項4に記載された尿検査用衛生材料は、請求項1ないし3いずれか記載の尿検査用衛生材料において、低金属吸収性部材が配設され、この低金属吸収性部材より外周が大きい不透液性裏面シートを具備し、前記低金属吸収性部材と前記不透液性裏面シートとは、少なくとも一部が熱融着または超音波接着により接合されたものである。
【0016】
請求項5に記載された尿検査用衛生材料の製造方法は、衛生材料として使用される吸収性材料と金属捕集剤を含む溶液とを接触させて前記溶液中に前記吸収性材料を浸漬する接触浸漬工程と、前記吸収性材料を前記溶液から取り出して洗浄する洗浄工程と、洗浄した吸収性材料を乾燥して低金属吸収性部材を得る乾燥工程とを具備したものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載された発明によれば、吸収性材料の金属が金属捕集剤により除去された低金属吸収性部材を具備するため、この低金属吸収性部材に尿を吸収させても、吸収性材料に由来する金属が尿に溶出しにくく、採尿する際に尿成分が変化しにくい。
【0018】
また、金属捕集剤により吸収性材料の金属が除去された低金属吸収性部材を具備する構成であるため、簡単な構成であり容易に製造できる。
【0019】
請求項2に記載された発明によれば、吸収性材料が天然植物繊維由来の原料で形成されているため、装着した新生児の肌への影響を少なくできる。
【0020】
請求項3に記載された発明によれば、吸収性材料と溶液とを接触させる際に金属捕集剤であるキレート剤が過剰であるため、吸収性材料に含まれる金属を確実に除去でき、採尿する際に尿成分が変化しにくい。
【0021】
請求項4に記載された発明によれば、低金属吸収性部材が配設された不透液性裏面シートを具備するため、低金属吸収性部材にて吸収した尿が染み出ることを防止できるとともに、低金属吸収性部材を不透液性裏面シートに配設するだけであるため、簡単な構成であり容易に製造できる。
【0022】
また、低金属吸収性部材が内側となり不透液性裏面シートが外側となるように折り畳んだ状態で尿を絞り出すことができ、低金属吸収性部材に触れることなく尿を回収できるため、回収作業が容易である。
【0023】
請求項5に記載された発明によれば、吸収性材料に含まれる金属を金属捕集剤にて除去して低金属吸収性部材を形成しているため、この低金属吸収性部材に尿を吸収させても、吸収性材料に由来する金属が尿に溶出しにくく、採尿する際に尿成分が変化しにくい。
【0024】
また、通常の衛生材料として使用される吸収性材料を用いて、接触浸漬工程と、洗浄工程と、乾燥工程とを加えるだけであるため、特殊な工程を加えることなく、容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る尿検査用衛生材料を示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る尿検査用衛生材料の裏面側を示す平面図である。
【図4】(a)は同上尿検査用衛生材料から尿を回収する際に不透液性裏面シートを折り畳んだ状態を示す斜視図であり、(b)は同上尿検査用衛生材料から尿を回収する際に切取部を切り取った状態を示す斜視図である。
【図5】(a)は本発明の第3の実施の形態に係る尿検査用衛生材料を示す構成図であり、(b)は本発明の第3の実施の形態に係る尿検査用衛生材料を示す断面図である。
【図6】(a)は同上尿検査用衛生材料から尿を回収する際に不透液性裏面シートを折り畳んだ状態を示す構成図であり、(b)は同上尿検査用衛生材料から尿を回収する際に不透液性裏面シートを折り畳んだ状態を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例における試験の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成について図1および図2を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
図1および図2において、1は尿検査用衛生材料であり、この尿検査用衛生材料は、尿検査において、主に未熟児などのような通常の採尿が難しい新生児の尿を回収する際に用いられる。
【0028】
また、尿検査用衛生材料1は、吸収性材料に金属捕集剤を含む溶液を接触させて形成された低金属吸収性部材2と、この低金属吸収性部材2が配設された不透液性裏面シート3とを備えている。
【0029】
吸収性材料は、通常、例えばおむつなどの使い捨て吸収性物品のような衛生材料に使用されるものを用いる。
【0030】
また、吸収性材料は、新生児の採尿に使用することを考慮し、吸収量が1ml以上10ml以下程度であり、大きさが2cm×2cm以上10cm×10cmの略正方形状である。
【0031】
このような吸収性材料は、通常の衛生部材に使用するには全く問題がない程度であるが、尿検査の結果に悪影響を及ぼすカルシウムなどの金属が極微量で含まれている。
【0032】
そこで、吸収性材料と金属捕集剤を含む溶液とを接触させて、吸収性材料に含まれる金属を除去することにより、金属の含有率が低い低金属吸収性部材2が形成される。
【0033】
また、吸収性材料は、尿検査用衛生材料1を装着した新生児の肌への影響が少ないように、天然植物由来の原料からなるガーゼ、脱脂綿および不織布のいずれかで形成されることが好ましい。
【0034】
なお、通常の衛生材料に使用される場合があるポリエステル系またはポリオレフィン系などの合成樹脂不織布は、疎水性であり水溶物を吸収しにくいため、一般的に吸収性を向上させることを目的として界面活性剤が付加されている。
【0035】
このような合成樹脂不織布を吸収性材料として使用すると、吸収した尿に界面活性剤が溶出し、その後の尿検査の結果に悪影響を及ぼす可能性があるので、界面活性剤が使用された合成樹脂不織布を吸収性材料として用いることは好ましくない。
【0036】
吸収性材料として化学繊維を用いる場合には、例えばレーヨンやキュプラなどのように原料が天然繊維で、界面活性剤が使用されていないものを用いることが好ましい。
【0037】
ここで、吸収性材料に含まれる金属としてカルシウムが含まれている場合には、このカルシウムが尿に溶出してしまい、尿検査において、装着者本来の尿である原尿に含まれているカルシウムより多くのカルシウムが検出され、尿検査の結果に悪影響を及ぼしてしまう。
【0038】
したがって、金属捕集剤は、吸収性材料からカルシウムを正確に除去できるものが好ましい。具体的には、金属捕集剤としては、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA・2Na)などのキレート剤や、リン酸または二種類のリン酸化合物を混合したリン酸緩衝成分などが好ましい。
【0039】
金属捕集剤としてキレート剤を用いる場合におけるキレート剤の量は、吸収性材料に含まれる金属に対してキレート剤が過剰になる量が好ましい。具体的には、吸収性材料に含まれる金属に結合するキレート剤の量の理論値の100倍以上のキレート剤を用いるとより好ましい。
【0040】
不透液性裏面シート3は、低金属吸収性部材2より外周が大きい略正方形状であり、この不透液性裏面シート3の略中央に低金属吸収性部材2が配設されている。
【0041】
また、不透液性裏面シート3は、例えば疎水性または撥水性の合成樹脂フィルムおよび合成樹脂不織布などのように、尿の接触によって金属が溶出しない素材で形成されている。
【0042】
低金属吸収性部材2を不透液性裏面シート3に配設する際には、低金属吸収性部材2の少なくとも一部を不透液性裏面シート3に接合して接合部4を形成して配設する。
【0043】
低金属吸収性部材2の一部を不透液性裏面シート3に接合する場合には、低金属吸収性部材2の中央部または周縁部を不透液性裏面シート3に接合する。接合部4の形状は、図1に示すような連続した矩形状だけでなく、間欠的なドット状にしてもよい。
【0044】
ここで、低金属吸収性部材2と不透液性裏面シート3との接合にホットメルト接着剤などの接着剤を使用すると、接着剤の成分が尿に溶出してしまう可能性があるので、接着剤を使用しないことが好ましく、熱融着または超音波接着により低金属吸収性部材2と不透液性裏面シート3とを接合することが好ましい。
【0045】
なお、接合方法と素材との相性によっては、低金属吸収性部材2と不透液性裏面シート3との接合強度が弱くなり、低金属吸収性部材2が不透液性裏面シート3から離間または脱落してしまう可能性が考えられる。このような場合には、低金属吸収性部材2を覆うように不透液性裏面シート3から低金属吸収性部材2の外側に図示しないカバーシートを配設する構成にしてもよい。
【0046】
このようにカバーシートが配設された構成にする場合には、カバーシートは、不透液性裏面シート3と熱融着または超音波接着可能であり、低金属吸収性部材2と同様に金属捕集剤によって金属が除去されたシート体を用いる。
【0047】
次に、上記第1の実施の形態における作用および効果を説明する。
【0048】
上記尿検査用衛生材料1にて尿を回収する際には、まず、低金属吸収性部材2が装着者である新生児の排泄部位に接触するように、尿検査用衛生材料1を、装着者の股下に直接敷くか、または、おむつなどの使い捨て吸収性物品内に敷いて装着する。
【0049】
低金属吸収性部材2にて尿を吸収した後に、尿検査用衛生材料1を回収し、低金属吸収性部材2から尿を回収する。
【0050】
低金属吸収性部材2から尿を回収する際には、例えば不透液性裏面シート3を半分に折り畳み、不透液性裏面シート3の内側に低金属吸収性部材2が位置した状態にする。
【0051】
また、折り畳んだ状態の不透液性裏面シート3を外側から圧迫して、低金属吸収性部材2を圧縮させることにより、低金属吸収性部材2から尿を絞り出し、不透液性裏面シート3の折り畳まれた箇所の端部から流出させて回収する。
【0052】
そして、上記尿検査用衛生材料1によれば、金属捕集剤により吸収性材料の金属が除去された低金属吸収性部材2を具備するため、この低金属吸収性部材2に尿を吸収させても、吸収性材料に由来する例えばカルシウムなどの金属が尿に溶出しにくい。したがって、採尿する際に原尿の尿成分が変化しにくく、尿検査用衛生材料1にて回収した尿について正確に尿検査を実施できる。
【0053】
また、金属捕集剤により吸収性材料の金属が除去された低金属吸収性部材2を具備する簡単な構成であるため、例えば低金属吸収性部材2を不透液性裏面シート3に配設する際に煩雑な作業が不要であり、容易に製造できる。
【0054】
低金属吸収性部材2は、吸収性部材が天然植物繊維由来の原料で形成されることにより、装着物や付着物などから影響を受けやすい新生児の肌への影響を少なくできる。
【0055】
また、低金属吸収性部材2は、吸収性材料が天然植物繊維由来の原料で形成され合成樹脂が用いられていないことにより、合成樹脂に由来する界面活性剤が尿に溶出することがないため、原尿の尿成分が変化しにくく、吸収した尿について正確に尿検査を実施できる。
【0056】
低金属吸収性部材2は、金属捕集剤としてキレート剤を用いることにより、吸収性材料に含まれる金属、特にカルシウムを正確に除去できるので、原尿の尿成分が変化しにくい。
【0057】
また、キレート剤の量を、吸収性材料に含まれる金属に結合するキレート剤の量の理論値の100倍以上にすることにより、吸収性材料と溶液とを接触させる際にキレート剤が金属に対して過剰な状態になるため、吸収性材料に含まれる金属を確実に除去でき、原尿の尿成分が変化しにくい。
【0058】
また、尿検査用衛生材料1は、低金属吸収性部材2が不透液性裏面シート3に配設されているため、低金属吸収性部材2にて吸収した尿が尿検査用衛生材料1から染み出てしまうことを防止でき、衛生的に良好であるとともに、尿を確実に回収できる。
【0059】
また、低金属吸収性部材2にて吸収した尿を回収する際に、低金属吸収性部材が不透液性裏面シート3の内側に位置するように折り畳んで尿を絞り出すことができ、低金属吸収性部材2に触れることなく尿を回収できるため、回収作業が容易であるとともに、回収者が尿に触れることによる尿成分の変化を防止できる。
【0060】
さらに、低金属吸収性部材2と不透液性裏面シート3とが熱融着または超音波接着により接合され、接着剤が用いられていないことにより、低金属吸収性部材2に吸収された尿に接着剤の成分が溶出することがなく、接着剤による尿成分の変化を防止できる。
【0061】
次に、上記尿検査用衛生材料の製造方法を説明する。
【0062】
尿検査用衛生材料1を製造する際には、まず低金属吸収性部材2を形成する。この低金属吸収性部材2を形成する際には、吸収性材料と金属捕集剤を含む溶液とを接触させて、吸収性材料を溶液中に浸漬する(接触浸漬工程)。
【0063】
吸収性材料を溶液中に浸漬した状態にて所定時間静置して吸収性材料に含まれる金属を金属捕集剤により十分に除去した後、吸収性材料を溶液から取り出す。
【0064】
また、取り出した吸収性材料から溶液を洗い出すように洗浄液にて吸収性材料を洗浄して脱水する(洗浄工程)。
【0065】
この洗浄工程にて用いられる洗浄液としては、例えばイオン交換水が好ましい。なお、イオン交換水にカルシウムなどの金属が含まれている可能性が考えられるが、イオン交換水に含まれている金属の量は、尿検査に影響がない程の極微量のため、尿検査に悪影響を及ぼしにくい。
【0066】
また、接触浸漬工程にて金属を除去した金属捕集剤が吸収性材料に残留すると、この残留した金属捕集剤により、尿検査の結果に悪影響を及ぼす可能性が考えられるため、洗浄工程では、洗浄と脱水とを繰り返して、金属捕集剤を含む溶液を吸収性材料から確実に洗い出すことが好ましい。
【0067】
洗浄工程にて洗浄した吸収性材料を乾燥して、低金属吸収性部材2を得る(乾燥工程)。
【0068】
そして、低金属吸収性部材2を不透液性裏面シート3に熱融着または超音波接着により接合し、不透液性裏面シート3に低金属吸収性部材2を配設して、尿検査用衛生材料1とする。
【0069】
上記尿検査用衛生材料1の製造方法によれば、低金属吸収性部材2は、吸収性材料に含まれる金属を金属捕集剤により除去して低金属吸収性部材2を形成しているため、この低金属吸収性部材2に尿を吸収させても、吸収性材料に由来する金属が原尿に溶出しにくく、採尿する際に尿成分が変化しにくい。
【0070】
また、通常の衛生材料に使用される吸収性材料を用いて、接触浸漬工程と、洗浄工程と、乾燥工程とを加えるだけであるため、吸収性材料の製造方法を根本的に変更する必要がなく、特殊な工程を加えることなく容易に製造できる。
【0071】
さらに、接触浸漬工程と、洗浄工程と、乾燥工程とにより形成した低金属吸収性部材2を不透液性裏面シート3に配設するだけであるため、例えば低金属吸収性部材2を不透液性裏面シート3に配設する際に煩雑な作業などが不要であり、容易に製造できる。
【0072】
また、通常の衛生材料に使用される吸収性材料を用いているため、吸収性材料として特殊な素材を用いる必要がなく、通常の衛生材料と同様に装着者の肌への影響や吸収量に応じて、様々な素材から吸収性材料を選択できる。
【0073】
なお、上記第1の実施の形態では、低金属吸収性部材2が不透液性裏面シート3に配設された構成としたが、このような構成には限定されず、低金属吸収性部材2が不透液性裏面シート3に配設されていない構成にしてもよい。
【0074】
また、低金属吸収性部材2および不透液性裏面シート3は、略正方形状の構成としたが、このような構成には限定されず、これら低金属吸収性部材2および不透液性裏面シート3の形状は、尿検査用衛生材料1の装着状態における密着性や装着感などを考慮して適宜設計できる。
【0075】
また、尿検査用衛生材料1を製造する際には、低金属吸収性部材2を形成した後、低金属吸収性部材2を不透液性裏面シート3に配設したが、このような方法には限定されない。例えば不透液性裏面シート3に金属が含まれており、不透液性裏面シート3から尿へ金属が溶出する可能性が考えられる場合などには、吸収性材料を不透液性裏面シート3に配設した後、金属捕集剤を含む溶液に接触さて、吸収性材料および不透液性裏面シート3の金属を除去する方法としてもよい。
【0076】
次に、第2の実施の形態を図3および図4を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同一の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0077】
この第2の実施の形態に係る尿検査用衛生材料11は、図3に示すように、不透液性裏面シート12の略中央部に円形状の切取可能部13が設けられている。
【0078】
切取可能部13は、いわゆる切取線のように間欠的に設けられた貫通孔にて構成され、引っ張ることにより不透液性裏面シート3から切り取りやすく形成されている。
【0079】
尿検査用衛生材料11において、低金属吸収性部材2にて吸収した尿を回収する際には、まず、図4(a)に示すように、低金属吸収性部材2が不透液性裏面シート3の内側に位置し、切取可能部13が外側でかつ先端に位置するように、不透液性裏面シート12の周縁同士を近付けて袋状に折り畳む。
【0080】
次いで、図4(b)に示すように、不透液性裏面シート12から切取可能部13を切り取って流出開口部14を形成する。
【0081】
そして、低金属吸収性部材2にて吸収した尿を流出開口部14へ向かって絞り出すように、不透液性裏面シート12を圧迫し低金属吸収性部材2を圧縮させ、尿を流出開口部14から尿検査用衛生材料1外へ流出させて回収する。
【0082】
このような尿検査用衛生材料11によれば、不透液性裏面シート12に切取可能部13が設けられているため、低金属吸収性部材2にて尿を吸収した後に、切取可能部13を切り取るだけで流出開口部14を容易に形成でき、尿を容易に回収できる。
【0083】
また、流出開口部14が形成されることにより、流出開口部14へ向かって尿を絞りだせばよいので、尿を回収する際に尿が他の部分から不意に漏出しにくく、正確に回収できるとともに、回収する際に回収者が尿に触れることを防止できる。
【0084】
なお、上記第2の実施の形態では、切取可能部13が円形状の構成としたが、このような構成には限定されず、切取可能部13の形状は適宜設計できる。
【0085】
次に、第3の実施の形態を図5および図6を参照して説明する。なお、上記実施の形態と同一の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0086】
この第3の実施の形態に係る尿検査用衛生材料21は、図5(a)および図5(b)に示すように、不透液性裏面シート22は、折り畳み可能な長方形状である。
【0087】
また、この不透液性裏面シート22は、長手方向の中心に位置する折畳線23にて折り畳まれた状態における略中央部に低金属吸収性部材2が配設されている。
【0088】
尿検査用衛生材料21を装着する際には、図5(a)および図5(b)に示すような低金属吸収性部材2が外側に位置した状態にて装着される。
【0089】
また、低金属吸収性部材2にて吸収した尿を回収する際には、図6(a)および図6(b)に示すように、不透液性裏面シート22の内側に低金属吸収性部材2が位置するように折畳線23を基準にして不透液性裏面シート22を折り返す。
【0090】
そして、このような折返状態の不透液性裏面シート22にて低金属吸収性部材2を挟み込んだ状態にて、不透液性裏面シート3を圧迫し低金属吸収性部材2を圧縮させ、低金属吸収性部材2に吸収されている尿を絞り出して回収する。
【0091】
このような尿検査用衛生材料21によれば、低金属吸収性部材2にて吸収した尿を回収する際に、不透液性裏面シート22にて低金属吸収性部材2を挟み込むように不透液性裏面シート22を折り返すことができるので、回収者が低金属吸収性部材2や尿に触れることを防止できる。
【実施例】
【0092】
以下、本実施例および比較例について説明する。
【0093】
まず、比較例である未処理ガーゼを用い、吸収前後における尿のカルシウム濃度比較試験を行った。
【0094】
この未処理ガーゼによる試験では、ビニール袋内で原尿A4mlに、0.65gの未処理ガーゼを浸漬させた。
【0095】
また、浸漬させて1時間静置した後、ビニール袋の端を切り取って未処理ガーゼから回収尿Bを絞り出して回収し、回収尿Bのカルシウム濃度を測定した。
【0096】
なお、以下の各試験におけるカルシウム濃度はICP発光分光光度計で測定した。また、未処理ガーゼによるカルシウム濃度比較試験では、同じ条件で検体を10個作成し、それぞれのカルシウム濃度を測定した。この回収尿Bおよび原尿Aのカルシウム濃度を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
表1に示すように、回収尿Bと原尿Aと比較すると、各検体におけるカルシウム濃度が2.2〜9.2ppm増加し、平均4.2ppm増加した。すなわち、原尿Aより回収尿Bのカルシウム量が増加しており、未処理ガーゼに含まれているカルシウム成分が尿と共に絞り出されたと考えられる。
【0099】
次に、実施例である金属捕集剤としてのクエン酸水溶液を用いてクエン酸処理したクエン酸処理ガーゼを用い、吸収前後における尿のカルシウム濃度比較試験を行った。
【0100】
クエン酸処理では、0.05M濃度のクエン酸水溶液230ml(約20℃)にガーゼ15gを浸し、ガーゼがクエン酸水溶液内で均等に浸漬されるように、ガラス棒でガーゼを押しながら攪拌し静置した。
【0101】
90分静置後、クエン酸水溶液からガーゼを取り出し、洗浄して乾燥させてクエン酸処理ガーゼを形成した。
【0102】
そして、ビニール袋内で、原尿A4mlに0.65gのクエン酸処理ガーゼを浸漬させた。
【0103】
また、浸漬させて1時間静置した後、ビニール袋の端を切り取ってクエン酸処理ガーゼから回収尿Cを絞り出して回収し、回収尿Cのカルシウム濃度を測定した。なお、クエン酸処理ガーゼによるカルシウム濃度比較試験では、同じ条件で検体を10個作成し、それぞれのカルシウム濃度を測定した。この回収尿Cおよび原尿Aのカルシウム濃度を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
表2に示すように、回収尿Cと原尿Aとを比較すると、各検体におけるカルシウム濃度が−5.8〜2.3ppm変化し、平均0.6ppm減少した。
【0106】
すなわち、回収尿Cと原尿Aとはカルシウム濃度が略同等であり、クエン酸処理ガーゼからは、ほとんど尿にカルシウム成分が溶出していなかった。
【0107】
上記実施例および比較例のカルシウム濃度比較試験の結果より、金属捕集剤であるクエン酸の水溶液にガーゼを接触させることにより、ガーゼのカルシウム成分を除去できることが分かる。
【0108】
また、カルシウム濃度比較試験に用いた原尿A(検体1〜20)のカルシウム濃度は0.4〜180.55ppmで、平均値が4.3ppmである。平均値に基づいて判断すると、実施例であるクエン酸処理ガーゼを使用した場合の回収尿Cは、カルシウム濃度が3.7ppm(原尿A(4.3ppm)+原尿C(−0.6ppm))となる。よって、回収尿Cは、原尿と略同等の濃度であり検査結果にそれほど影響が出ない。これに対して、比較例である未処理ガーゼを使用した場合の回収尿Bは、カルシウム濃度が8.5ppm(原尿A(4.3ppm)+原尿B(4.2ppm))となるので、検査結果への影響が大きく、正確に検査を実施できない可能性がある。
【0109】
次に、複数種類の吸収性材料を用いてクエン酸処理を行い、クエン酸処理後のクエン酸処理液のカルシウム濃度を測定して、吸収性材料の違いによるカルシウム濃度比較試験を行った。
【0110】
吸収性部材としては、ガーゼA(白十字株式会社製、製品名テトラーゼ)と、ガーゼB(スズラン株式会社製)と、脱脂綿(白十字株式会社製、製品名カットメン)と、コットン不織布(日清紡テキスタイル株式会社製、製品名オイコス、白十字株式会社製、製品名シングルガーゼ)とを用いた。
【0111】
図7に示すように、まず、0.05M濃度のクエン酸水溶液230ml(約20℃)に各吸収性材料15gを浸し、吸収性材料がクエン酸水溶液内で均等に浸漬されるように、ガラス棒で吸収性材料を押しながら攪拌し、90分間静置する。クエン酸水溶液から吸収性材料を取り出し、クエン酸溶液をろ過してクエン酸処理液(検体I)を得た。
【0112】
また、この検体Iを回収した各吸収性材料をイオン交換水1000mlによる洗浄および脱水を4回繰り返した後、各吸収性材料を乾燥させた。
【0113】
この乾燥した各吸収性材料を再度クエン酸処理し、クエン酸処理後の浸漬液(検体II)を得た。すなわち、再度クエン酸処理後に吸収性材料が取り出されたクエン酸水溶液が浸漬液である。
【0114】
そして、このように各吸収性材料をクエン酸処理した後のクエン酸処理液および浸漬液におけるカルシウム濃度を測定し、この結果を表3に示す。
【0115】
【表3】

【0116】
表3に示すように、各吸収性材料をクエン酸処理した後の検体Iのカルシウム濃度は、0.50〜17.00ppmであった。
【0117】
吸収性材料の種類によってカルシウムの含有量が異なるため、クエン酸処理により溶出するカルシウム量が異なるが、各吸収性材料から除去されたカルシウムがクエン酸水溶液に溶出していることが分かる。なお、同じ吸収性部材であっても原料の産地、生産方法や生産場所およびロットなどが異なればカルシウム含有量が異なると考えられる。
【0118】
また、各吸収性材料を再度クエン酸処理した後の検体IIのカルシウム濃度は、0.33〜0.39ppmと低濃度で各吸収性材料で略同等であった。
【0119】
再度クエン酸処理する場合には、各吸収性材料をそれぞれクエン酸水溶液に浸す前にイオン交換水で洗浄しているが、イオン交換水に含まれるカルシウム濃度は0.06ppmであったので、検体IIに溶出したカルシウムはイオン交換水での洗浄によって吸収性部材に取り込まれたカルシウムを若干含んでいる可能性がある。
【0120】
このようなイオン交換水から若干カルシウムが取り込まれたことも考慮し、検体Iと検体IIとのカルシウム濃度を比較すると、検体IIは検体Iに比べてカルシウム濃度が非常に低く、また、吸収性材料の種類によるカルシウム濃度の違いもほとんどなかったので、再度クエン酸処理を行う際には各吸収性材料から溶出するカルシウム成分がほとんど無かったと考えられる。
【0121】
よって、各吸収性材料によって含有するカルシウムの量が異なっていてもクエン酸処理により同等の量までカルシウムを除去できるとともに、クエン酸処理によって尿検査に影響がない程度までカルシウムを除去できることが分かった。
【0122】
次に、吸収性材料からカルシウムを除去する溶液の違いによるカルシウム濃度比較試験を行った。
【0123】
この試験では、吸収性部材は、上記吸収性材料の違いによるカルシウム濃度比較試験と同じものを用いた。
【0124】
また、吸収性材料を処理する処理溶液としては、実施例である0.05M濃度のクエン酸水溶液と、実施例である0.05M濃度のEDTA溶液と、実施例である0.1M濃度のリン酸緩衝液(リン酸二水素ナトリウム(19%)+リン酸水素二ナトリウム(81%))と、比較例である熱水とを用いた。
【0125】
これら各処理溶液を用いて、上記吸収性材料の違いによるカルシウム濃度比較試験と同様に各吸収性材料を処理し、処理後の処理液である検体Iを得た。
【0126】
そして、各処理溶液に基づく検体Iそれぞれのカルシウム濃度を測定し、この結果を表4に示す。
【0127】
【表4】

【0128】
表4に示すように、実施例であるEDTA溶液は、クエン酸水溶液と略同等のカルシウムが溶出していた。
【0129】
また、実施例であるリン酸緩衝液は、吸収性材料からカルシウムが十分に溶出していたものの、クエン酸水溶液およびEDTA溶液に比べてカルシウムの溶出量が若干少なかった。
【0130】
一方、比較例である熱水は、吸収性材料からほとんどカルシウムが溶出していなかった。
【0131】
これらの結果より、吸収性材料からカルシウムを除去するには、熱水では効果が無く、クエン酸水溶液、EDTA溶液およびリン酸緩衝液を用いることが効果的であり、特に、クエン酸水溶液およびEDTA溶液が効果的であることが分かった。
【0132】
次に、異なる濃度のクエン酸水溶液を用い、クエン酸水溶液の濃度の違いによるカルシウム濃度比較試験を行った。
【0133】
吸収性材料としては、上記吸収性材料の違いによるカルシウム濃度比較試験に用いた各吸収性材料のうち、最もカルシウム含有量が多かった不織布を用いた。
【0134】
クエン酸水溶液としては、0.05M濃度のクエン酸水溶液と、0.025M濃度のクエン酸水溶液と、0.0125M濃度のクエン酸水溶液とを用いた。
【0135】
上記吸収性材料の違いによるカルシウム濃度比較試験と同様に、吸収性材料を各クエン酸水溶液にてクエン酸処理し、クエン酸処理後のクエン酸処理液である検体Iを得た。
【0136】
そして、各濃度のクエン酸水溶液に基づく検体Iそれぞれのカルシウム濃度を測定し、この結果を表5に示す。
【0137】
【表5】

【0138】
上記吸収性材料の違いによるカルシウム濃度比較試験における不織布の場合にも示すように、0.05M濃度のクエン酸水溶液を用いた場合には、尿検査にほとんど影響がない程度にカルシウムを除去できる。
【0139】
また、この0.05M濃度のクエン酸水溶液による結果を基準に他の濃度の結果を検討すると、半分の濃度である0.025M濃度のクエン酸水溶液を用いた場合には、検体Iのカルシウム濃度が若干低下した。すなわち不織布から除去できなかった残留カルシウム量が若干増加したと考えられる。
【0140】
しかしながら、この残留カルシウム量は、0.7ppm(17.00ppm−16.27ppm)程度であり、原尿Aのカルシウム濃度の平均は4.3ppmなので、尿検査の結果にほとんど影響ない程度の量と考えられる。
【0141】
一方、さらに半分の濃度である0.0125M濃度のクエン酸水溶液を用いた場合には、検体Iのカルシウム濃度が12.67ppmであり、0.05M濃度のクエン酸水溶液を用いた場合に比べて、残留カルシウム量は4.3ppm(17.00ppm−12.67ppm)増加した。原尿のカルシウム濃度は4.3ppmであるので、この程度の量のカルシウムが溶出してしまうと、尿検査の結果に影響が出てしまう可能性がある。
【0142】
したがって、吸収性材料として不織布を用いた場合には、0.025M濃度のクエン酸水溶液で尿検査の結果に影響が出ない程度にカルシウムを除去できるので、クエン酸水溶液は、吸収性材料15gあたりで、0.025(mol/L)×0.23(L)=0.00575(mol)以上とすることが好ましい。
【0143】
この結果から、カルシウムを除去するためのクエン酸の量について検討する。
【0144】
クエン酸処理後の0.05M濃度のクエン酸水溶液のカルシウム濃度は17.00ppmだったので、カルシウムは、17.00(ppm)×230(mL)/40=0.0000977(mol)となる。クエン酸は、カルシウムと結合してCa(C(クエン酸カルシウム)を生成するので、クエン酸1molに対してカルシウムが1.5mol結合する。したがって、カルシウム0.000097molと結合するクエン酸は理論上、0.000097(mol)/1.5=0.00006.51(mol)となる。これに対して0.05M濃度のクエン酸水溶液におけるクエン酸は0.05(mol/L)×0.23(L)=0.0115molである。よって、使用されたクエン酸は、カルシウムに対して0.0115mol/0.000065mol≒177当量となる。
【0145】
同様に、0.025M濃度のクエン酸水溶液の場合は、クエン酸処理後のカルシウム濃度が16.27ppmだったので、使用されたクエン酸の量は(0.025(mol/L)×0.23(L))/(16.27(ppm)×230(mL)/40/1.5)≒92当量となる。
【0146】
また、0.0125M濃度のクエン酸水溶液の場合は、クエン酸処理後のカルシウム濃度が12.67ppmだったので、使用されたクエン酸の量は(0.0125(mol/L)×0.23(L))/(12.67(ppm)×230(mL)/40/1.5)≒59当量となる。
【0147】
これらの結果から、吸収性材料は、カルシウムと結合するクエン酸の理論値の59倍程度のクエン酸で処理するとカルシウムが除去しきれない場合があるが、92倍または177倍のクエン酸で処理すると尿検査に影響がでにくい程度にカルシウムが除去される。
【0148】
したがって、金属捕集剤であるキレート剤としてのクエン酸は、吸収性材料に含まれる金属としてのカルシウムに結合するクエン酸の理論値の100倍以上であれば、カルシウムを確実に除去できる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、通常の採尿が難しい例えば未熟児などの新生児の尿検査に用いられる尿検査用衛生材料として利用することができる。
【符号の説明】
【0150】
1 尿検査用衛生材料
2 低金属吸収性部材
3 不透液性裏面シート
11 尿検査用衛生材料
12 不透液性裏面シート
21 尿検査用衛生材料
22 不透液性裏面シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生材料に使用される吸収性材料と金属捕集剤を含む溶液とを接触させて、前記吸収性材料に含まれる金属を除去した低金属吸収性部材を具備し、
この低金属吸収性部材により尿を吸収する
ことを特徴とする尿検査用衛生材料。
【請求項2】
吸収性材料は、天然植物繊維由来の原料からなるガーゼ、脱脂綿および不織布のいずれかにて形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の尿検査用衛生材料。
【請求項3】
金属捕集剤は、キレート剤であり、
このキレート剤の量は、吸収性材料に含まれる金属と前記キレート剤とが結合する量の理論値の100倍以上である
ことを特徴とする請求項1または2記載の尿検査用衛生材料。
【請求項4】
低金属吸収性部材が配設され、この低金属吸収性部材より外周が大きい不透液性裏面シートを具備し、
前記低金属吸収性部材と前記不透液性裏面シートとは、少なくとも一部が熱融着または超音波接着により接合された
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の尿検査用衛生材料。
【請求項5】
衛生材料として使用される吸収性材料と金属捕集剤を含む溶液とを接触させて前記溶液中に前記吸収性材料を浸漬する接触浸漬工程と、
前記吸収性材料を前記溶液から取り出して洗浄する洗浄工程と、
洗浄した吸収性材料を乾燥して低金属吸収性部材を得る乾燥工程と、
を具備したことを特徴とする尿検査用衛生材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108963(P2013−108963A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256681(P2011−256681)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(391047503)白十字株式会社 (64)
【Fターム(参考)】