説明

尿検査装置

【課題】従来の尿検査装置は、試薬や試験片を必要とするため、測定に手間やコストがかかる虞があった。
【解決手段】照射する光の波長が700〜1500nmを有す光源部と、尿を支持する支持部と、尿を透過した光から吸光光度法によって尿を検査する測定部とからなる尿検査装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、吸光光度法を利用した尿検査装置に関する。特に近赤外光を光源とする尿検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、溶液などを定性又は定量分析する方法として、吸光光度法が挙げられる。これは一定条件下で物質がその物質特有の光吸収強度を有することを利用して分析する方法である。吸光光度法では、吸収される光の強度はランバートベールの法則により求められる。そこでこのような吸光光度法を利用した測定装置としては、ヘモグロビン測定装置が特開平8−322822号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、先に述べたヘモグロビン測定装置には、次のような問題がある。つまり、このヘモグロビン測定装置は生体組織に向けて光を照射し、透過した光からヘモグロビンの濃度を測定するものであるため、生体組織を侵襲することがないものの、尿の検査には用いることができなかった。また、尿を検査する装置としては、試薬を塗布した試験片と尿を反応させ、試験片の発色度合いから測定するものがあるが、試薬や試験片を必要とするため手間やコストがかかるという問題がある。
【0004】この発明の目的は、このような欠点を除き、吸光光度法を用いて容易に尿を検査することのできる尿検査装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】その目的を達成するため、請求項1記載の尿検査装置は、照射する光の波長が700〜1500nmを有す光源部と、尿を支持する支持部と、尿を透過した光から吸光光度法によって尿を検査する測定部とから構成される。
【0006】ここで、光源部はLEDなどの単色光であっても、タングステンランプ、ハロゲンランプ又はキセノンランプなどの連続スペクトルを有するものであっても、通常の白色光であってもよい。吸光光度法におけるランバートベールの法則を用いるためには、理論的に単色光が望ましいことから、連続スペクトルを有する光源を用いた場合は、光学フィルタを設けて波長幅の狭い光を尿に照射できるようにするのが好ましい。また、例えば白色光などの光源からの光をそのまま尿に照射し透過した光を光学フィルタにて分光する方法でもよい。光学フィルタには、色ガラスフィルタ、及びゼラチンフィルタなどがあるが、特に干渉フィルタは、透過する光の波長幅が狭く、且つ光の透過度も大きいので好ましい。
【0007】尿の検査には、例えばヘモグロビン、ミオグロビンの他にタンパク質やグルコースなどの検出があるが、これらの物質は、光の波長が700nm〜1500nmのところに特徴的な吸光度特性を有している。従って照射する光の波長は、700nm〜1500nmとするのが好ましい。特に、ヘモグロビンに対しては900nm〜1000nmの波長を有する光の吸光度が大きいので、照射する光の波長は900nm〜1000nmとするのがより好ましい。
【0008】また、ヘモグロビンには、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、一酸化炭素ヘモグロビン、メトヘモグロビンなどがあるが、これら各ヘモグロビンの吸光度を調べてもよいし、任意に選択したヘモグロビンを調べてもよい。ミオグロビンなどについても同様である。
【0009】支持具には、例えば吸収セルがあり、材質としては、光の波長700から1500nmで特徴的な吸収が無くフラットな特性を有する物質によるものがよい。例えば、光が透過可能なガラス、メタクリル酸系合成樹脂、及びテフロンなどが挙げられるが、特に光の透過性からすると石英が好ましい。
【0010】測定部は、尿を透過した光を検出することができるが、これは受光素子や光電管など従来技術を用いて構成すればよい。また、尿の検査は、求められた吸光度から尿に含まれる成分を算出式等を用いて推定する方法や、予め収集したデータと求められた吸光度とを比較して尿に含まれる成分を求める方法などがある。測定結果は画面に表示したり印刷するようにしてもよいし、データと保存しておいてもよい。また、この尿検査装置を便器と一体型にし、排尿時に尿の検査が行えるようにすればより好ましい。
【0011】請求項2記載の尿検査装置は、請求項1記載の尿検査装置であって、前記支持部が光を透過可能である容器からなることを特徴とするものである。
【0012】ここで、支持具は容器状であり、材質についても上述したものがよい。
【0013】請求項3記載の尿検査装置は、請求項1又は2記載の尿検査装置であって、尿を採取し、前記支持部に尿を供給する供給部が便器に設けられていることを特徴とするものである。
【0014】ここで、供給部はロートのような何らかの受け部で尿を採取し支持部に尿を供給するようにしてもよいし、支持部を便器の開口部に搬送し直接支持部で尿を受けるようにしてもよい。また、連続して使用できるように、支持部や供給部を水で洗浄しその後の付着した水分を圧縮空気で除去するような洗浄部を設けるとより好ましく、洗浄する手間も省くことができる。尿検査装置全体は便器や便所内に設けるなどすればよい。
【0015】
【作用】請求項1又は2記載の尿検査装置により、近赤外光である波長が700nm〜1500nmを有す光を尿に照射し、尿を透過した光から吸光光度法によって尿を調べることによって、例えば尿中のヘモグロビン、ミオグロビン、タンパク質やグルコースなどを検知するすることができる。
【0016】請求項3記載の尿検査装置により、供給部にて尿を便器近傍で採取し、支持部に供給することができる。従って排尿時に自動的に尿を採取し、尿の検査することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
[発明の実施の形態1]次に、この発明の実施の形態1について説明する。この発明の実施の形態1である尿検査装置のブロック図を図1に示す。図1の尿検査装置は、光源部1である光源11及び光学フィルタ12と、試料である尿2と、尿2を支持する吸収セル3と、尿を透過した光から吸光光度法にて尿を検査する測定部4とから構成される。また、図2はヘモグロビン及びミオグロビンの吸光度と光の波長の関係を示すグラフである。
【0018】光源部1は光源11と光学フィルタ12とからなる。光源11は、近赤外光である波長が700〜1500nmの光を照射できるハロゲンランプを用いている。また、光源11の前面には光学フィルタ12を設けており、光学フィルタ12によって、必要な波長に分光するようにしている。波長の収束性や透過度の大きいことが好ましいことから干渉フィルタを用いている。光学フィルタ12によって分光された光の波長は700nm、770nm、930nm、950nm、1000nm及び1250nmである。波長700nmは酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光度特性が大きく異なる波長である。また、波長770nmは酸化ヘモグロビンの吸光度が大きいところの波長であり、波長930nmは還元ヘモグロビンの吸光度が大きいところの波長である。また、波長950nmは還元ミオグロビンの吸光度が大きいところの波長であり、波長1000nmは酸化ミオグロビンの吸光度が大きいところの波長である。さらに、波長1250nmは水の吸光度が著しく大きいところの波長である。光源11は光源部1内部の図示していない制御回路にてON・OFF制御される。
【0019】その他に光源部1としては、単色光を照射することのできるLEDを用いるものがある。この場合、上述したのと同様にLEDは波長が700nm、770nm、930nm、950nm、1000nm及び1250nmの光を発光する6個からなる。
【0020】吸収セル2は吸光光度法に用いられる一般的な容器であって、尿を支持することができるものである。材質は、光の各波長に対する透過度の関係から石英としている。また、照射された光が透過可能なように設けられている。
【0021】測定部4は、受光素子とA/D変換器とコンピュータとディスプレイから構成される。測定部4は、まず吸収セル2及び尿3を透過してきた光を検知する。光を検知する手段として受光素子を用いており、光源部1及び吸収セル2に対向するように設けられている。受光素子はゲルマニウムダイオードであり、透過した光を電気信号に変換するものである。
【0022】次に、この電気信号はA/D変換器にて離散信号に変換され、コンピュータに送られる。コンピュータは、予め上述した6つの光の波長における統計的に収集された尿中のヘモグロビン及びミオグロビンの吸光度に関するデータをメモリ内に記憶しており、このデータと測定した尿の吸光度とを比較するようにプログラミングされている。
【0023】上述の比較する処理としては、予め収集した、尿中のヘモグロビン及びミオグロビンの量が正常であるものの吸光度のデータをしきい値として、測定した吸光度がこのしきい値を越えているかそうではないかを判断するようにしている。またこの判断結果より、尿中潜血やミオグロビン尿症と診断することも行うことができる。その他にも、予め収集した吸光度と測定した吸光度を比較して尿中のヘモグロビン及びミオグロビンの量を推定する処理方法がある。さらに、測定した吸光度から直接定量的にヘモグロビン及びミオグロビンの量を推定する処理方法も考えられる。また、近赤外光のうち、吸光度特性を考慮に入れて適当な波長を選択し、尿中のタンパク質やグルコースを同様に測定することも考えられる。
【0024】このような測定結果は、測定部3に設けられたディスプレイに表示され確認することができるようになっている。
【0025】上述した実施の形態では分光した光を尿に照射するものであったが、その他の実施の形態としては、連続スペクトルを有する光をそのまま尿に照射し透過した光を分光し測定するものもある。具体的には光学フィルタ12を吸収セル3と測定部4との間に設ければよい。
【0026】[発明の実施の形態2]次に、この発明の実施の形態2について説明する。この尿検査装置は、上述した光源部、支持部及び測定部が便器と一体になったものである。また、尿を採取し、支持部である吸収セル3に供給する供給部5が便器と一体に設けられている。
【0027】供給部は伸縮自在のアームと、アームの先端に取り付けられた上面開放の容器状をした吸収セルとからなる。アームが収縮した通常の状態では、吸収セルは光源と受光素子との間に収納されている。また、アームが伸長した尿を採取する状態では、吸収セルは便器の開口部下方の尿溜まり部に位置するようになっている。また、便器には尿の測定毎に供給部を洗浄する洗浄部が内蔵されている。洗浄部は、供給部のアーム及び吸収セルを水で洗浄し圧縮空気にて供給部に付着した水分を除去する機能を有している。供給部にて尿を採取した後は、上述したようにして尿の検査が行われる。
【0028】
【発明の効果】以上、説明したように、請求項1又は2記載の尿検査装置により、波長700〜1500nmを有す光を光源とした吸光光度法を用いているので、手間やコストをかけることなく容易に尿の検査、例えば尿潜血やミオグロビン尿症などの診断を行うことができる。
【0029】また、請求項3記載の尿検査装置により、排尿時に尿の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の尿検査装置の実施の形態1を示すブロック図である。
【図2】ヘモグロビン及びミオグロビンの吸光度と光の波長の関係を示すグラフである。
【図3】この発明の尿検査装置の実施の形態2を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 光源部
11 光源
12 光学フィルタ
2 尿
3 吸収セル(支持部)
4 測定部
5 供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】照射する光の波長が700〜1500nmを有す光源部と、尿を支持する支持部と、尿を透過した光から吸光光度法によって尿を検査する測定部とからなることを特徴とする尿検査装置。
【請求項2】前記支持部が光を透過可能である容器からなることを特徴とする請求項1記載の尿検査装置。
【請求項3】尿を採取し、前記支持部に尿を供給する供給部が便器に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の尿検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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