説明

尿温度計および尿温度測定方法

【課題】被験者の尿温度を高い精度で測定することが可能な尿温度計を提供する。
【解決手段】尿温度計100は、感温部12を備える温度センサ10および尿受部材20を有している。そして、温度センサ10の感温部12は、排泄されて空中を落下する尿と尿受部材20に衝突した尿とがともに通過する位置であってかつ尿受部材20から流出する尿に浸漬しない位置に配置されている。そして、感温部12は、落下中の尿の温度を測定するよう構成されている。このため、流下する尿を感温部12と接触させて尿温度を高い精度で測定することができるとともに、尿受部材20によって尿を感温部12に案内することで感温部12と尿との接触不足が生じることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿温度計および尿温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体の深部体温を測定する方法として、尿温度を用いることが試みられている。これに対応して、被験者が排泄した尿の温度を測定する尿温度計が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、男子用便器の内面壁に装着されて尿が貯留される尿貯蔵部(採尿容器)と、尿貯蔵部に露出して設けられた温度測定用のサーミスタとを備える尿温検出部構造(尿温度計)が記載されている。尿貯蔵部の下方には、上方の開口部に比して細径に形成された縊れ部分や小孔が設けられており、尿貯蔵部からの尿の排出速度が抑制されている。このため、被験者が排泄した通常の流量の尿は尿貯蔵部に所定の深さで貯留され、この温度計は、貯留された尿に浸漬されたサーミスタで尿温度を測定する。
【0004】
特許文献2には、船底形の採尿容器の底部に形成された尿溜まり(採尿容器)と、この尿溜まりに面して設けられたサーミスタとを備えた尿温度計が記載されている。この尿溜まりには、小径の流出口がサーミスタの下方に開口形成されている。そして、特許文献2の温度計は、採尿容器に貯留された尿に浸漬されたサーミスタで尿温度を測定する。
【0005】
特許文献3には、尿を採集する採尿容器と、採尿容器の内部に貯留された尿の温度を検出するサーミスタとを備える測定装置(尿温度計)が記載されている。採尿容器の底部には細いスリットが設けられており、所定量の尿が貯留されて尿の自重が大きくなった場合にスリットが開口して尿が低速で排出される。そして、特許文献3の温度計もまた、採尿容器に貯留された尿に浸漬されたサーミスタで尿温度を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−171933号公報
【特許文献2】特開2008−73314号公報
【特許文献3】特開2010−48704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1から3に記載されたいずれの尿温度計も、採尿容器に貯留された尿の温度を測定するものである。これらの尿温度計は、採尿容器に貯留された尿を小孔やスリットから少しずつ排出させることで、新たに採取された尿に置き換えながら尿温度を測定することができるように構成されている。しかしながら、これらの尿温度計では、採尿容器に所定時間にわたって滞留した尿の温度が測定されることから、たとえ微量ずつ尿を置換したとしても、採尿容器と尿との熱交換の影響を無視することができない。このため、尿温度と雰囲気温度との乖離が大きい場合に、高い精度で尿温度を測定することができないという問題がある。具体的には、たとえば寒冷の冬期の場合、数秒から数十秒という尿の限られた排泄時間の中で採尿容器が尿と同等の温度に到達することは困難である。このため、貯留された尿は採尿容器によって常に熱を奪われながらその温度が測定されることとなる。また、採尿容器の下部に小孔やスリットを設けたとしても、液体である尿は、貯留された順番に排出されるとは限らず、採尿容器に長時間滞留する場合がある。このため、滞留して冷却された尿が後続の尿と混合されて、測定対象の尿温度が全体に低下することとなる。
【0008】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、被験者の尿温度を高い精度で測定することが可能な尿温度計および尿温度測定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の尿温度計は、感温部を備える温度センサおよび尿受部材を有する尿温度計であって、前記感温部が、排泄されて空中を落下する尿と前記尿受部材に衝突した尿とがともに通過する位置であってかつ前記尿受部材から流出する尿に浸漬しない位置に配置されて落下中の前記尿の温度を測定するよう構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の尿温度測定方法は、感温部を備える温度センサおよび尿受部材を有する尿温度計によって尿の温度を測定する方法であって、排泄されて空中を落下する尿と前記尿受部材に衝突した尿とがともに通過する位置であってかつ前記尿受部材から流出する尿に浸漬しない位置に配置した前記感温部によって、落下する前記尿の温度を測定することを特徴とする。
【0011】
上記発明によれば、空中を落下する尿と、尿受部材に衝突した尿とがともに通過する位置に温度センサの感温部が設けられているため、排泄された尿を感温部に対して効率的に導くことができる。このとき、感温部は尿受部材から流出する尿に浸漬しない位置に配置されているため、尿受部材との熱授受による尿の温度変化の影響を排除して、尿温度を高い精度で測定することができる。すなわち、上記発明によれば、流下する尿を感温部と接触させて尿温度を高い精度で測定することができるとともに、尿受部材によって尿を感温部に案内することで感温部と尿との接触不足が生じることがない。これにより、体の深部体温を近似するといわれる尿温度を維持した状態で、感温部と尿とを充分に接触させることができる。
【0012】
なお、上記発明において、対象物が尿に浸漬するとは、凹部に貯留された尿に対象物がひたされることを意味する。また、感温部が尿受部材から流出する尿に浸漬しない位置に配置されているとは、成人の標準的な尿流曲線パターンにしたがって排泄された尿の全量を尿受部材で受けたときに、尿が尿受部材に貯留されることなく感温部を流下するか、または尿受部材に貯留された尿が感温部に接触せずに流下することをいう。
【0013】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の尿温度計および尿温度測定方法によれば、被験者の尿温度を高い精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる尿温度計を示す斜視図である。
【図2】感温部および尿受部材の拡大図である。
【図3】第二実施形態の尿温度計の先端部を示す斜視図である。
【図4】第三実施形態の尿温度計の先端部を示す斜視図である。
【図5】第四実施形態の尿温度計の先端部を示す斜視図である。
【図6】第五実施形態の尿温度計の先端部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0017】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態にかかる尿温度計100を示す斜視図である。ただし、本体部70と、感温部12を除くアーム部30の一部に関しては、模式的に簡易的に図示している。
【0018】
はじめに、本実施形態の尿温度計100の概要について説明する。
尿温度計100は、感温部12を備える温度センサ10および尿受部材20を有している。そして、温度センサ10の感温部12は、排泄されて空中を落下する尿U1と尿受部材20に衝突した尿U2とがともに通過する位置であってかつ尿受部材20から流出する尿U3に浸漬しない位置に配置されている。そして、感温部12は、落下中の尿U1、U2の温度を測定するよう構成されている。
【0019】
次に、本実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の尿温度計100は全体に略棒状をなし、可搬性を有している。ユーザである被験者は、尿温度計100の基端側にあたる本体部70を手で把持した状態で、先端側の感温部12に対して尿を排出する。
【0020】
本体部70の先端側には、細長形状のアーム部30が形成されている。アーム部30は、尿U1の流下方向に対して交差する方向に延在している。
【0021】
アーム部30の内部には温度センサ10が設けられている。具体的には、温度センサ10の信号線16がアーム部30に挿通されており、アーム部30の最先端位置には感温部12が設けられて信号線16が接続されている。感温部12による温度測定結果にかかる信号は、信号線16を通じて本体部70に伝送される。
【0022】
本体部70の内部には制御部(図示せず)が設けられている。制御部の具体的な動作の説明は省略するが、感温部12から信号線16を通じて伝送された信号を読みとって温度データに換算し、この測定温度を表示部72に表示出力する。
【0023】
温度センサ10には、熱電対や、白金センサやサーミスタなどの測温抵抗式の温度センサを用いることができる。そして、熱電対や測温抵抗体が感温部12にあたる。
【0024】
本実施形態の表示部72は、小数点以下第二位までの摂氏温度の表示形式で測定温度を表示する(図示の例では、36度2分5厘)。かかる測定精度で尿温度を測定する場合、特許文献1から3のように採尿容器に尿を貯留して温度測定する方式では、貯留されている間の温度変化の影響が無視できなくなる。これに対し、本実施形態の尿温度計100は、流下中の尿U1、U2、すなわち排泄されてそのまま落下している尿U1および尿受部材20で反射してから落下している尿U2の温度を測定することができる。このため、排泄されてから温度測定されるまでの尿温度の変化を低減することが可能であり、小数点以下第二位のオーダーの測定精度を実現することができる。そして、このオーダーで尿温度を測定することで、たとえば病気の発症前の体調変化や、基礎体温の周期的な変化を検知することが可能となる。
【0025】
本体部70には、温度測定の動作を指示するための操作ボタンを備えている。本実施形態では、一例として、電源ボタン76とリセットボタン77とが本体部70に設けられている。
電源ボタン76を押下すると、制御部は温度センサ10に通電して、尿温度を測定可能なスタンバイ状態とする。また、リセットボタン77を押下すると、表示部72に表示された前回の温度測定結果がクリアされる。
このほか、本体部70には、温度測定結果を外部機器に出力するためのインタフェースや操作ボタンを任意で設けてもよい。
【0026】
尿温度計100の長手方向の中間部にはヒンジ74が設けられており、アーム部30を本体部70に対して折り畳むことが可能である。これにより本実施形態の尿温度計100の可搬性が高まり、また搬送時には温度センサ10の感温部12を本体部70によって保護することができる。
【0027】
本実施形態の尿温度計100は、尿受部材20を備えている。尿受部材20は、排泄された尿を受け止めて、その少なくとも一部を感温部12に向けて案内するための部材である。尿受部材20の具体的な形状は特に限定されず、半割筒状や本実施形態のような椀状などの曲面状のほか、後述する第三実施形態のような網状(メッシュ状)や、第四実施形態のような螺旋状、第五実施形態のような平板状など、種々の形態を採ることができる。
【0028】
尿受部材20は感温部12の周囲またはその上方に設けられている。本実施形態でいう上方とは、ユーザが本体部70を把持した場合に上側にあたる、尿の流入側を便宜的に規定するものである。
【0029】
尿受部材20は、無底の椀状または筒状をなしている。尿U3が流出する流出口24は、尿U1が流入する流入口22と略同径またはそれ以上である。
ここで、流出口24と流入口22とが略同径であるとは、流出口24の径が、流入口22より流入した尿の流れを実質的に阻害しない程度の径であることを意味し、具体的には、流出口24の開口面積が流入口22の開口面積の二分の一以上であるこという。流出口24は、流入口22よりも大径でもよい。流出口24を流入口22よりも小径とする場合、尿受部材20に流入した尿U1、U2が尿受部材20の内部で滞留しないよう、流出口24を充分な開口面積とする。
【0030】
尿受部材20は、成人の標準的な最大尿流率の尿が持続的に尿受部材20に供給された場合にも、尿受部材20に尿の滞留領域が形成されないか、またはこの滞留領域の外部に感温部12が設けられており、感温部12は尿に浸漬することがない。
流出口24の開口面積は、成人の標準的な尿の流束の断面積よりも大きい。より具体的には、流出口24は、成人の標準的な最大尿流率である15ml/秒の尿が持続的に通過可能な開口面積を有している。さらに、流出口24は、15ml/秒の流量の尿が、感温部12の位置を起点(速度ゼロ)として自由落下した場合にも、当該尿が尿受部材20の内部で滞留することなく通過可能なだけの開口面積を有している。
【0031】
本実施形態の尿受部材20は、下方(流出口24側)に向かって凸となる無底の椀状をなしている。尿受部材20はアーム部30の先端側に固定されており、感温部12は尿受部材20の内側に突出した位置に、かつ尿受部材20から離間して設けられている。
【0032】
図2は、感温部12および尿受部材20の拡大図である。アーム部30の一部と本体部70は図示を省略している。同図を用いて、本実施形態の尿温度計100による尿温度測定方法(以下、本方法という場合がある)を説明する。
【0033】
本方法は、感温部12を備える温度センサ10および尿受部材20を有する尿温度計100によって尿U1、U2の温度を測定する方法に関する。そして本方法は、排泄されて空中を落下する尿U1と尿受部材20に衝突した尿U2とがともに通過する位置であってかつ尿受部材20から流出する尿U3に浸漬しない位置に配置した感温部12によって、落下する尿U1、U2の温度を測定することを特徴とするものである。
【0034】
被験者が排泄した尿の一部(尿U1)は直接に感温部12に衝突し、他の一部(尿U2)は尿受部材20の内側面26で向きを変えられて飛散する。飛散した尿U2の少なくとも一部は感温部12と接触する。感温部12に接触した尿U1、U2は、感温部12の周囲で滞留することなく流出口24より尿U3として流下する。
【0035】
本実施形態の尿温度計100は可搬式であって位置が非固定であるため、尿の排泄位置と感温部12とを近接させることが可能である。また、空気は熱容量が小さいため、空中を落下する尿U1は、ほぼ深部体温を保ったままで感温部12に至る。尿受部材20で衝突した尿U2に関しても、尿受部材20との衝突時間は一瞬であるため、尿受部材20と尿U2との熱授受は僅かである。そして、感温部12を取り囲む尿受部材20に衝突した尿U2は全周囲から感温部12に向かって反射する。このため、ほぼ深部体温を保った尿U1、U2が感温部12に多量に供給されて尿温度が測定される。
【0036】
<第二実施形態>
図3は本実施形態にかかる尿温度計100の先端部を示す斜視図である。
【0037】
本実施形態の尿受部材20は無底の筒状をなし、その軸方向(同図の上下方向)が尿U1、U2の通過方向にあたる。
より具体的には、本実施形態の尿受部材20は、流入口22から流出口24に向かって縮径するテーパー管状をなしている。ただし、流出口24は、流下する尿U3の流量に比べて充分な開口面積を有しており、尿U3は尿受部材20の内部に貯留されることはない。また、尿U1、U2の流量が多く、流出口24の近傍に尿が滞留したとしても、感温部12は尿受部材20の略中央またはその上方に設けられているため、滞留した尿に感温部12が浸漬することはない。
【0038】
尿受部材20には、温度センサ10の先端部18が貫入している。温度センサ10の先端部18には感温部12が設けられており、感温部12は尿受部材20の内側に内包されている。
【0039】
尿受部材20の少なくとも一部は、尿U1の流入側に向かって凸状に形成されている。本実施形態の場合、テーパー管状の尿受部材20の内側面26は流入口22および内側に向かって凸状をなしている。これにより、尿U2は内側面26で反射したのち、尿受部材20の略中央に配置された感温部12に向かって飛散する。言い換えると、尿U2のうち、内側面26の表面に沿って流れ落ちる流量を低減し、内側面26で反射して感温部12に到達する流量を増大させることができる。
【0040】
本実施形態の尿温度計100は、感温部12の少なくとも一部が尿U1の流下方向に延在している。
尿U1の流下方向は上下方向であり、感温部12はアーム部30から尿受部材20の軸方向に沿って流入口22側または流出口24側の一方または両方に向かって延在している。図3に示す本実施形態の温度センサ10の場合、感温部12の全体を含む温度センサ10の先端部18が流入口22に向かって屈曲形成されている。
【0041】
これにより、空中を落下する尿U1と、内側面26で反射した尿U2が、ともに感温部12の延在方向(長手方向)に沿って流下することとなり、尿U1、U2と感温部12との接触時間を長くすることができる。これにより、尿受部材20によって尿U2を感温部12に案内する機能とあいまって、尿U1、U2を感温部12に対して充分に接触させることができるため、尿温度を高い精度で測定することが可能である。
【0042】
なお、本実施形態に代えて、温度センサ10の先端部18を流出口24に向けて屈曲形成してもよく、または先端部18をT字状として、流入口22および流出口24の双方に向かって感温部12を両側に延在させてもよい。
【0043】
<第三実施形態>
図4は本実施形態にかかる尿温度計100の先端部を示す斜視図である。
【0044】
本実施形態の尿受部材20は、感温部12を内部に収容する網状体である。より具体的には、本実施形態の尿受部材20は上方開口した椀状をなしている。流入口22は、開口部に周設されたフレーム部23によって画成されている。一方、網状体からなる本実施形態の尿受部材20は、椀状の周面の全体が流出口24となって尿U3を流下させる。
【0045】
尿受部材20は、所定の太さの線材を編組してなる。線材同士のピッチは線材の太さよりも大きい。言い換えると、尿受部材20の目開きの面積は、線材部分の面積よりも大きい。これにより、尿U1、U2が感温部12の周囲に滞留することなく尿U3として尿受部材20を通過することができる。
【0046】
また、尿受部材20に衝突した尿U2の一部の飛沫は反射して感温部12に到達し、空中を落下する尿U1とともに、感温部12で尿温度が測定される。
一方、尿U2の他の一部は尿受部材20の網目に付着して熱を授受し、尿受部材20および感温部12の周囲の雰囲気を被験者の体温に近づける。これにより、尿温度が測定される尿U1、U2と雰囲気との熱授受が低減される。つまり、本実施形態の尿受部材20では、尿受部材20と感温部12とが離間しているため、尿受部材20の網目に付着して雰囲気を加温(雰囲気が体温よりも高温の場合は冷却)する尿U2と、尿受部材20で反射して感温部12で温度測定に供される尿U1、U2とが区別される。これにより、尿受部材20および雰囲気と熱授受して温度降下(または温度上昇)した尿U2によって温度測定結果に測定誤差が生じることが防止される。
【0047】
<第四実施形態>
図5は本実施形態にかかる尿温度計100の先端部を示す斜視図である。
【0048】
本実施形態の尿受部材20は、温度センサ10の先端部18を螺旋状に巻成してなり、温度センサ10の感温部12は、螺旋状の尿受部材20の先端に設けられている。
すなわち、温度センサ10が内部に設けられたアーム部30の螺旋状の先端部が尿受部材20を構成している。
【0049】
尿受部材20は螺旋テーパー状をなし、先端側にあたる流出口24の径よりも、基端側にあたる流入口22の径の方が大きい。これにより、被験者が排泄した尿U1、U2は、大径の流入口22によって捕集され、小径の流出口24の略中央に位置する感温部12に向かって案内される。ここで、流入口22の径は、螺旋状の尿受部材20のもっとも基端側の周回の巻径であり、流出口24の径は、螺旋状の尿受部材20のもっとも先端側の周回の巻径である。
【0050】
尿U1は、空中を落下して感温部12に直接に到達する尿である。尿U2は、尿受部材20に衝突し、螺旋の内側に飛散して感温部12に到達する尿である。また、尿U4は、尿受部材20の螺旋に沿って流下して感温部12に到達する尿である。そして、尿U3は、尿受部材20から排出される尿である。
【0051】
本実施形態の尿受部材20は、尿U3が滞留することがないよう、流出口24が充分な開口面積を有している。これにより、感温部12では、流下中の尿U1、U2、U4の温度が測定される。尿受部材20に沿って渦状に流れる尿U4は尿受部材20の螺旋部分と接触して所定の熱授受がなされるものの、棒状のアーム部30は表面積が僅かであり尿U4の温度変化は限定的である。このため、貯留された尿の温度を測定する従来の尿温度計に比べて、高い測定精度で尿温度を測定することが可能である。
【0052】
本実施形態の尿温度計100によれば、螺旋テーパー状の尿受部材20によって被験者の尿を感温部12に向かって良好に案内することができる。また、尿受部材20には尿が貯留されないため、尿受部材20との熱授受が抑制された尿の温度を感温部12によって測定することができる。
【0053】
<第五実施形態>
図6は本実施形態にかかる尿温度計100の先端部を示す斜視図である。
【0054】
本実施形態の尿温度計100は、通孔28が形成された平板状の尿受部材20の内部に温度センサ10およびその信号線16が埋設されている。
温度センサ10の先端に位置する感温部12は、通孔28の内部に露出している。通孔28はテーパー孔であり、一方面側(同図の上側)の流入口22は、他方面側の流出口24よりも大径である。このため、流入口22と流出口24とを結ぶ内側面26は円錐台面であり、その法線方向は、流入口22に向かう上方成分をもつ。これにより、流入口22に尿U1、U2が流入すると、尿U2は内側面26で反射して通孔28の内側上方に飛散して感温部12に至り、尿U1は落下して感温部12に直接に接触する。
また、流出口24は流入口22と略同径であり、尿U3は通孔28に滞留することなく流出口24より排出される。
【0055】
これにより、本実施形態の尿温度計100でも、尿受部材20で案内された尿U2が尿U1とともに感温部12に供給され、かつ流下中の尿U1、U2の温度が感温部12で測定される。
【0056】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
たとえば、上記実施形態においては可搬式の尿温度計100を例示したが、本発明はこれに限られない。アーム部30を便器(図示せず)または便座に固定するための装着部をさらに有する、据置型の尿温度計としてもよい。
【0057】
そして、便器または便座に対して尿温度計100に常設しておくことにより、被験者は日常的に自身の尿温度を測定することができる。このため、腋下温度をあえて測定する動機づけに至らない未病状態などにおいても、僅かな体調の悪化を検知することができる。
【0058】
また、本発明の尿温度計100は、尿温度以外の生体パラメータを尿より取得してもよい。一例として、尿U1、U2に含まれる尿糖の量を計測する尿糖計の機能を有してもよい。具体的には、温度センサ10の感温部12と同位置に、尿糖値を測定するバイオセンサを並設するとよい。バイオセンサとしては、たとえば、尿中のグルコースを酵素によって過酸化水素に変え、その過酸化水素の量を測定する、いわゆる酵素電極法に基づく尿糖計を用いることができる。
【0059】
そして、尿温度計100の制御部では、温度センサ10による尿温度の測定結果を用いて、尿糖計の測定結果を温度補償してもよい。具体的には、制御部は、温度センサ10による測定温度を取得する尿温度取得部と、尿糖計で測定された尿糖値を取得する尿糖値取得部と、尿温度と補正係数とを対応付けた記憶部と、取得した測定温度に対応する補正係数を記憶部から呼び出して尿糖値(取得値)を補正する尿糖値補正部と、を備えるとよい。これにより、本発明による高精度の尿温度測定結果を用いて尿糖値を温度補償することができるため、尿糖値に関しても高い精度で測定することが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
10 温度センサ
12 感温部
16 信号線
18 先端部
20 尿受部材
22 流入口
23 フレーム部
24 流出口
26 内側面
28 通孔
30 アーム部
70 本体部
72 表示部
74 ヒンジ
76 電源ボタン
77 リセットボタン
100 尿温度計
U1〜U4 尿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温部を備える温度センサおよび尿受部材を有する尿温度計であって、
前記感温部が、排泄されて空中を落下する尿と前記尿受部材に衝突した尿とがともに通過する位置であってかつ前記尿受部材から流出する尿に浸漬しない位置に配置されて落下中の前記尿の温度を測定するよう構成されていることを特徴とする尿温度計。
【請求項2】
前記尿受部材が無底の椀状または筒状をなし、前記尿が流出する流出口が、前記尿が流入する流入口と略同径またはそれ以上である請求項1に記載の尿温度計。
【請求項3】
前記感温部の少なくとも一部が、前記尿の流下方向に延在している請求項1または2に記載の尿温度計。
【請求項4】
前記尿の流下方向に対して交差する方向に延在するアーム部をさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の尿温度計。
【請求項5】
前記尿受部材が前記温度センサの先端部を螺旋状に巻成してなり、前記感温部が螺旋状の前記尿受部材の先端に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の尿温度計。
【請求項6】
前記尿受部材が、前記感温部を内部に収容する網状体である請求項1から4のいずれか一項に記載の尿温度計。
【請求項7】
前記尿受部材の少なくとも一部が、前記尿の流入側に向かって凸形状をなしている請求項1から4のいずれか一項に記載の尿温度計。
【請求項8】
感温部を備える温度センサおよび尿受部材を有する尿温度計によって尿の温度を測定する方法であって、
排泄されて空中を落下する尿と前記尿受部材に衝突した尿とがともに通過する位置であってかつ前記尿受部材から流出する尿に浸漬しない位置に配置した前記感温部によって、落下する前記尿の温度を測定することを特徴とする尿温度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−252828(P2011−252828A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127807(P2010−127807)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】