説明

尿温度計

【課題】被験者の尿温度を高い精度で測定することが可能な尿温度計を提供する。
【解決手段】尿温度計100は、感温部12と、電源部52と、温度制御部(電源制御部)を備えている。感温部12は雰囲気温度に応じて電気抵抗が変化する抵抗体14を含み、尿と接触させてこの電気抵抗に基づいて尿の温度を測定する。電源部52は抵抗体14に電流を印加する。そして、温度制御部(電源制御部)は電源部52を制御して、感温部12を所定の体温近似温度に加熱または冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿温度計に関する。
【背景技術】
【0002】
体の深部体温を測定する方法として、尿温度を用いることが試みられている。これに対応して、被験者が排泄した尿を採尿容器で採取してその温度を測定する尿温度計が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
また、特許文献2には、尿中のグルコース濃度を尿センサーで測定する測定装置において、排泄された尿の温度を測定することが記載されている。この測定装置の尿センサーは、センサー部の裏面に装着されたヒーター部と、このヒーター部と異なる位置に設けられた温度検出部とを備えており、温度検出部で検出した尿温度のデータに基づいてセンサー部を校正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−48704号公報
【特許文献2】特開2002−48787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の尿温度計の場合、尿温度を高い精度で測定することが困難である。たとえば寒冷の冬期などは、雰囲気温度によって冷やされた採尿容器によって、尿温度が測定中に顕著に低下してしまうためである。
特許文献2の測定装置も同様であり、測定対象の尿が尿センサーと熱授受をするため、尿温度を高い精度で測定することが困難である。この測定装置は、グルコース濃度を測定するセンサー部をヒーター部によって所定温度に加熱して校正することはできるものの、ヒーター部は温度検出部を加熱するものではなく、温度検出部と尿との熱授受を抑えることができないからである。
【0006】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、被験者の尿温度を高い精度で測定することが可能な尿温度計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の尿温度計は、雰囲気温度に応じて電気抵抗が変化する抵抗体を含み、尿と接触させて前記電気抵抗に基づいて前記尿の温度を測定する感温部と、前記抵抗体に電流を印加する電源部と、前記電源部を制御して、前記感温部を所定の体温近似温度に加熱または冷却する温度制御部と、を備える。
【0008】
上記発明によれば、尿の温度を測定する感温部を所定の体温近似温度に温度調整することができるため、尿温度の測定中に尿と感温部との間の熱授受の発生を抑制することができる。
【0009】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の尿温度計によれば、尿温度を測定するための抵抗体を用いて感温部を体温近似温度に温度調整することができるため、被験者の尿温度を高い精度で測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態にかかる尿温度計の正面図であり、(b)はその内部構造を示す機器配置図である。
【図2】実施形態の尿温度計の機能ブロック図である。
【図3】距離情報の例を示す図である。
【図4】実施形態にかかる尿温度測定方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、たとえば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与されたデータ処理装置、コンピュータプログラムによりデータ処理装置に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。
また、本発明の構成要素がデータを記憶するとは、本発明の装置が、データを記憶する機能を少なくとも有することを意味しており、当該データが現に格納されていることを必ずしも要しない。
さらに、本発明の尿温度計は、コンピュータプログラムを読み取って対応する処理動作を実行できるように、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)ユニット、等の汎用デバイスで構築されたハードウェア、所定の処理動作を実行するように構築された専用の論理回路、これらの組み合わせ、等として実施することができる。
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
図1(a)は本発明の実施形態にかかる尿温度計100の正面図であり、同図(b)はその内部構造を示す機器配置図である。
図2は尿温度計100の機能ブロック図である。
【0015】
はじめに、本実施形態の尿温度計100の概要について説明する。
尿温度計100は、雰囲気温度に応じて電気抵抗が変化する抵抗体14を含み、尿と接触させて電気抵抗に基づいて尿の温度を測定する感温部12と、抵抗体14に電流を印加する電源部52と、電源部52を制御して、感温部12を所定の体温近似温度に加熱または冷却する温度制御部(電源制御部54)と、を備えている。
【0016】
次に、本実施形態についてより詳細に説明する。
本実施形態の尿温度計100は全体に略棒状をなし、可搬性を有している。図1(a)に示すように、尿温度計100は、基端側にあたる太径の筐体部74と、その先端側の細径のアーム部75とを備えている。筐体部74には、測定された尿温度を表示する表示出力部22と、尿温度計100の電源のオン・オフを切り替える電源ボタン24と、被験者からの各種の入力を受け付ける操作ボタン26が設けられている。ユーザである被験者は、筐体部74を手で把持した状態で、感温部12に対して尿を排出する。
【0017】
本実施形態の表示出力部22は、小数点以下第二位までの摂氏温度の表示形式で測定温度を表示する(図示の例では、36度2分5厘)。本実施形態の尿温度計100は、感温部12を体温近似温度に予備的に温度調整することで、温度測定中の尿と感温部12との熱授受が抑えられるため、小数点以下第二位のオーダーの測定精度を実現することができる。そして、このオーダーで尿温度を測定することで、たとえば病気の発症前の体調変化や、基礎体温の周期的な変化を検知することが可能となる。
【0018】
感温部12を温度調整する体温近似温度としては、36℃以上38℃以下を少なくとも含む温度範囲を採用することができる。後述するように、本実施形態の尿温度計100では、体温近似温度の設定値がユーザ(被験者)ごとに可変であり、ユーザ個々の平熱温度に対応して感温部12を種々の設定温度に温度調整することができる。
【0019】
また、図1(b)に示すように、筐体部74には電源部52や基板76が設けられている。筐体部74の先端側には細径のアーム部75が形成されている。アーム部75の先端には感温部12が設けられ、アーム部75の内部には感温部12に接続された給電線13が挿通されている。給電線13の基端は基板76に接続されている。
【0020】
基板76には、制御ユニット78と記憶装置79が搭載されている。基板76には電源部52より電圧が供給されて制御ユニット78および記憶装置79が駆動される。
【0021】
温度調整部50は、感温部12を加熱または冷却して、これを所定の体温近似温度に温度調整する手段である(図2を参照)。
【0022】
本実施形態の感温部12は、雰囲気温度に応じて電気抵抗が変化する抵抗体14を含む。この種の感温部12には、半導体温度センサであるサーミスタや、測温抵抗体である白金センサなどを用いることができる。電源制御部54の機能は、具体的には制御ユニット78により実現される。
本実施形態の尿温度計100は、給電線13を通じて感温部12に微弱な電流を印加して抵抗体14の電気抵抗を測定することにより、感温部12の温度を計測する。一方、給電線13により大きな電流を印加して抵抗体14を発熱させることで、感温部12を所望の温度に加熱する。
【0023】
すなわち、電源制御部54は、抵抗体14に電流を印加して感温部12を体温近似温度に温度調整する待機状態と、この電流を低減させて抵抗体14で尿の温度を測定する測温状態と、に電源部52を制御する。
【0024】
感温部12には、PTC(positive temperature coefficient)サーミスタとNTC(negative temperature coefficient)サーミスタをいずれも用いることができるが、温度上昇に対して抵抗が減少する性質をもつNTCサーミスタがより好ましい。雰囲気温度が低温で感温部12を大幅に加熱する必要がある場合に、抵抗体14の抵抗が大きく発熱率が高いことが好ましいためである。これにより、雰囲気温度を初期温度とする感温部12を所望の体温近似温度まで迅速に加温することができ、さらに体温近似温度に近づいた抵抗体14の発熱率が低減することで感温部12をきめこまかく温度調整することができる。なお、NTCサーミスタにはCTR(critical temperature resistor)サーミスタを含む。
【0025】
電源制御部54は、抵抗体14に大電流を印加して感温部12を加熱する加熱モードと、この電流を微弱に低減して感温部12の電気抵抗を計測して感温部12の温度を測定する温度測定モードと、を連続的に切り替える。これにより、一式の給電線13および抵抗体14を用いて感温部12を所望の体温近似温度に温度調整することができる。言い換えると、本実施形態の尿温度計100は、感温部12、給電線13および電源制御部54により構成される温度センサ10を加熱部56としても用いることで、少ない部品点数により感温部12を所望の体温近似温度に加温する。
【0026】
また、本実施形態の尿温度計100は、感温部12を除熱する冷却部58を任意で備えている。本実施形態の冷却部58は、ペルチェ素子581と、ペルチェ素子581に電流を供給する給電線582と、ペルチェ素子581の放熱用のヒートシンク583およびファン584とで構成されている。ヒートシンク583はペルチェ素子581の廃熱側に接続された棒状の金属材料からなり、アーム部75から筐体部74に亘って設けられている。ファン584は電源部52より給電されて回転動作し、ヒートシンク583を空冷する。電源制御部54は、抵抗体14の電気抵抗に基づく感温部12の温度を測定しつつ、給電線582およびペルチェ素子581に供給する電流量を制御することで、感温部12を所望の体温近似温度に冷却することができる。
【0027】
すなわち、本実施形態の温度調整部50は、感温部12を加熱する加熱部56および感温部12を冷却する冷却部58を含む。
これにより、尿温度計100の雰囲気温度が尿温度よりも高い季節および地域においても、感温部12を所望の体温近似温度に温度調整することができる。また、抵抗体14を加熱源とする加熱部56と、ペルチェ素子581を冷却源とする冷却部58とを併用することで、感温部12を所望の温度に高い精度で温度調整することができる。
【0028】
図2に示すように、本実施形態の尿温度計100は温度設定部20を備えている。温度設定部20は、体温近似温度を可変に設定する手段である。温度設定部20は、操作ボタン26と制御ユニット78とで実現される(図1を参照)。
【0029】
より具体的には、ユーザは操作ボタン26を操作して体温近似温度を設定する。温度設定部20は、ユーザにより入力された平熱温度を体温近似温度として受け付ける。また、温度設定部20は、複数のユーザごとに異なる体温近似温度を受け付けて、当該ユーザを識別するユーザ番号に対応づけて体温近似温度の設定値を保持してもよい。
【0030】
後述するように、本実施形態の温度設定部20は、尿温度の測定結果に応じて体温近似温度を設定する。すなわち、温度設定部20は、ユーザの尿温度の測定結果を、当該ユーザの次回の体温近似温度として設定することができる。
【0031】
尿温度計100は、感温部12による温度の測定結果を記憶しておく記憶部30を備えている。記憶部30は、ユーザごとの体温近似温度をユーザ番号に対応づけて記憶する。記憶部30は記憶装置79により実現される(図1を参照)。
【0032】
尿温度計100は、感温部12の雰囲気温度を測定する雰囲気温度測定部40を備えている。また、尿温度計100は、感温部12による測定結果と雰囲気温度とに基づいて測定結果を温度補償する補償演算部60を備えている。
【0033】
雰囲気温度測定部40には、尿温度測定用の温度センサ10を共用してもよく、または他の温度センサ(図示せず)を用いてもよい。本実施形態では、雰囲気温度の測定タイミングと尿温度の測定タイミングとを異ならせることで、一式の温度センサ10によって雰囲気温度と尿温度とをいずれも測定することができる。
【0034】
すなわち、感温部12と雰囲気温度測定部40とは共通の温度センサ10からなる。そして、本実施形態の尿温度計100は、感温部12が体温近似温度に温度調整されたことを示す測温状態表示部42を備えている。本実施形態の測温状態表示部42は、表示出力部22に視覚的に表示されるアイコンである。このほか、測温状態表示部42には、発光状態(点灯・消灯を含む)を変化させる発光体や、ブザーなどの発音体を用いてもよい。
【0035】
図1(b)および図2に示す液体検出部19は、感温部12を含むアーム部75の先端に尿が接触したことを検知する手段である。液体検出部19としては、電解質を含む尿の電導性を利用した導通検知器を用いることができる。
【0036】
本実施形態の尿温度計100は、排泄されてから感温部12に至るまでの尿の落下距離に対応する距離情報を記憶しておく距離情報記憶部32を備えている。そして、補償演算部60は、感温部12による測定結果、雰囲気温度および距離情報に基づいて測定結果を温度補償する。
【0037】
距離情報記憶部32および補償演算部60は、制御ユニット78および記憶装置79により実現される(図1(b)を参照)。
【0038】
距離情報は、ユーザによる操作ボタン26の操作によって入力される。
距離情報記憶部32にテーブル形式で記憶される距離情報の例を図3に示す。距離情報は、ユーザ(被験者)の身長、男女の性別、年齢などの入力情報に基づいて補償演算部60に決定される。距離情報は、複数段階に区分されて距離情報記憶部32に記憶されている。例えば、ユーザ番号1は高身長の男性であり、尿の落下距離は大きな値(段階5)が記憶されている。すなわち、距離情報の数値が大きい場合、当該ユーザの尿は感温部12に至るまでの雰囲気中の落下距離が大きいことを意味する。
【0039】
補償演算部60は、雰囲気温度と測定結果との乖離量に応じて、測定結果を増減修正する。より具体的には、記憶部30に予め記憶された正の比例係数を乖離量(雰囲気温度−測定結果)に乗じた補正値を測定結果に加算する。
さらに、本実施形態の補償演算部60は、距離情報の数値が大きい場合に雰囲気温度に起因する尿の温度変動が大きいと推定し、距離情報と正の相関をもつ修正係数を上記の補正値に乗じたうえで測定結果に加算する。
【0040】
これにより、本実施形態の尿温度計100は、空中を落下している間の尿の温度変動を補償し、さらに感温部12による熱授受を抑制して尿温度を測定することができる。このため、感温部12の熱容量を小さくして尿温度に対する検知感度を鋭敏にすることができる。
【0041】
図2に戻り、データ送信部84は、温度補償された尿温度の測定結果を尿温度計100の外部に送信するインタフェースである。具体的には、測定結果を携帯電話機に赤外線またはメールで送信する無線送信部や、USB(Universal Serial Bus)端子などを例示することができる(図1各図には図示省略)。
【0042】
以下、本実施形態の尿温度計100による尿温度測定方法(以下、本方法)について説明する。図4は、本方法のフローチャートである。
【0043】
はじめに、本方法の概要について説明する。
本方法は、感温部12に尿を接触させて尿の温度を測定する方法に関する。
そして本方法は、温度調整工程S30と尿温度測定工程S60を含む。
温度調整工程S30では、感温部12を加熱または冷却して、予め設定された所定の体温近似温度に温度調整する。
尿温度測定工程S60では、温度調整された感温部12に対して、排泄されて空中を落下する尿を接触させて尿の温度を測定する。
【0044】
温度調整工程S30と尿温度測定工程S60とは、温度調整工程S30が先に終了するかぎり、互いに時間的に一部同士が重複してもよい。
【0045】
以下、図2および図4を用いて本方法をより詳細に説明する。
【0046】
本方法では、電源ボタン24(図1(a)を参照)を押下して尿温度計100に電源を投入すると、初期処理S10をおこなう。初期処理S10では、ユーザ番号の入力を受け付け、当該ユーザに関する体温近似温度を呼び出す。本方法の初回実行時には、予め記憶部30に記憶された初期設定値(例えば36.9℃)などの値を用いてもよい。二回目以降の尿温測定の場合は、後述するように過去のいずれかの測定結果を呼び出して当該ユーザの体温近似温度としてもよい。
【0047】
次に、尿温度計100では、雰囲気温度測定部40により感温部12の雰囲気温度を測定する雰囲気温度測定工程S20をおこなう。そして、雰囲気温度の測定後に、感温部12を体温近似温度に温度調整する(温度調整工程S30)。
【0048】
より具体的には、雰囲気温度測定工程S20では、電源制御部54は、抵抗体14を実質的に加温することのない程度に微弱な電流を抵抗体14に印加して、その電気抵抗値を求めることで感温部12の雰囲気温度を測定する。雰囲気温度が測定されると、続けて尿温度計100は感温部12の温度調整をおこなう(温度調整工程S30)。
【0049】
温度調整工程S30では、温度調整部50は、感温部12に電流を印加して感温部12を体温近似温度に温度調整する。温度調整部50は、必要に応じて冷却部58を併用して感温部12を体温近似温度とする。
【0050】
感温部12が所望の体温近似温度になったことを温度調整部50が検知すると、温度調整部50は測温状態表示部42を動作させ、尿温度計100が温度測定のスタンバイ状態になったことをユーザに告知する(ステップS40)。
【0051】
測温状態表示部42により温度調整の完了が告知されたのち、ユーザは感温部12に尿を接触させて尿温度を測定する。
【0052】
具体的には、スタンバイ状態において液体検出部19が感温部12への尿の接触を検知すると(ステップS50:YES)、温度調整部50による感温部12の加熱または冷却は停止し、感温部12は尿の温度測定をおこなう(尿温度測定工程S60)。これにより、尿温度が測定される瞬間まで感温部12が体温近似温度を維持することが可能である。そして、尿温度を測定する際には、温度調整部50による温度調整が自動的に停止しているため、温度調整部50が測定結果に誤差を与えることはない。
【0053】
なお、液体検出部19が尿を検知しない間は(ステップS50:NO)、測温状態表示部42によるスタンバイ表示を継続する。
【0054】
尿温度の測定結果は、補償演算部60により上述のように補償演算がなされて(ステップS70)、記憶部30に記録される(ステップS80)。
【0055】
本実施形態の記憶部30は、複数のユーザを互いに識別するユーザ番号に対応づけて測定結果を記憶する。
つぎに、尿温度計100では、体温近似温度の再設定をおこなう(ステップS90)。具体的には、温度設定部20は、記憶された測定結果に応じて当該ユーザごとに体温近似温度を個別に設定する。
【0056】
更新された体温近似温度は、当該ユーザのユーザ番号に対応づけて記憶部30に格納される。そして、本方法の次回実行時における初期処理S10にて、更新された体温近似温度が当該ユーザに関する感温部12の温度調整の設定値となる。
【0057】
これにより、平熱温度が互いに異なる複数人のユーザに対して、個別に感温部12を高精度に温度調整することができる。
【0058】
また、温度補償された測定結果は、表示出力部22(図1(a)を参照)にて表示出力される(ステップS100)。
【0059】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0060】
上記実施形態においては可搬式の尿温度計100を例示したが、本発明はこれに限られない。アーム部75を便器(図示せず)または便座に固定するための装着部をさらに有する、据置型の尿温度計としてもよい。
【0061】
そして、便器または便座に対して尿温度計100に常設しておくことにより、被験者は日常的に自身の尿温度を測定することができる。このため、腋下温度をあえて測定する動機づけに至らない未病状態などにおいても、僅かな体調の悪化を検知することができる。
【0062】
また、本発明の尿温度計100は、尿温度以外の生体パラメータを尿より取得してもよい。一例として、尿に含まれる尿糖の量を計測する尿糖計の機能を有してもよい。具体的には、温度センサ10の感温部12と同位置に、尿糖値を測定するバイオセンサを並設するとよい。バイオセンサとしては、たとえば、尿中のグルコースを酵素によって過酸化水素に変え、その過酸化水素の量を測定する、いわゆる酵素電極法に基づく尿糖計を用いることができる。
【0063】
そして、尿温度計100の制御部では、温度センサ10による尿温度の測定結果を用いて、尿糖計の測定結果を温度補償してもよい。具体的には、制御部は、温度センサ10による測定温度を取得する尿温度取得部と、尿糖計で測定された尿糖値を取得する尿糖値取得部と、尿温度と補正係数とを対応付けた記憶部と、取得した測定温度に対応する補正係数を記憶部から呼び出して尿糖値(取得値)を補正する尿糖値補正部と、を備えるとよい。これにより、本発明による高精度の尿温度測定結果を用いて尿糖値を温度補償することができるため、尿糖値に関しても高い精度で測定することが可能となる。
【0064】
上記実施形態に示した尿温度計100は、以下の技術思想を包含する。
(付記1)
前記温度制御部が、前記感温部を加熱する加熱部および前記感温部を冷却する冷却部を含む尿温度計。
(付記2)
前記感温部と前記尿とが接触したことを検出する液体検出部をさらに備え、
前記液体検出部による検出結果に基づいて前記感温部が前記尿の温度測定を開始する尿温度計。
(付記3)
前記液体検出部による前記検出結果に基づいて前記温度調整部による感温部の加熱または冷却が停止する尿温度計。
【符号の説明】
【0065】
10 温度センサ
12 感温部
13 給電線
14 抵抗体
19 液体検出部
20 温度設定部
22 表示出力部
24 電源ボタン
26 操作ボタン
30 記憶部
32 距離情報記憶部
40 雰囲気温度測定部
42 測温状態表示部
50 温度調整部
52 電源部
54 電源制御部
56 加熱部
58 冷却部
581 ペルチェ素子
582 給電線
583 ヒートシンク
584 ファン
60 補償演算部
74 筐体部
75 アーム部
76 基板
78 制御ユニット
79 記憶装置
84 データ送信部
100 尿温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気温度に応じて電気抵抗が変化する抵抗体を含み、尿と接触させて前記電気抵抗に基づいて前記尿の温度を測定する感温部と、
前記抵抗体に電流を印加する電源部と、
前記電源部を制御して、前記感温部を所定の体温近似温度に加熱または冷却する温度制御部と、を備える尿温度計。
【請求項2】
前記温度制御部が、前記抵抗体に電流を印加して前記感温部を前記体温近似温度に温度調整する待機状態と、前記電流を低減させて前記抵抗体で前記尿の温度を測定する測温状態と、に前記電源部を制御する請求項1に記載の尿温度計。
【請求項3】
前記体温近似温度を可変に設定する温度設定部をさらに備える請求項1または2に記載の尿温度計。
【請求項4】
前記感温部による温度の測定結果を記憶しておく記憶部をさらに備え、
前記温度設定部が、前記測定結果に応じて前記体温近似温度を設定することを特徴とする請求項3に記載の尿温度計。
【請求項5】
前記記憶部が、複数のユーザを互いに識別するユーザ番号に対応づけて前記測定結果を記憶し、
前記温度設定部が、記憶された測定結果に応じて前記ユーザごとに前記体温近似温度を個別に設定する請求項4に記載の尿温度計。
【請求項6】
前記感温部の雰囲気温度を測定する雰囲気温度測定部と、
前記感温部による測定結果と前記雰囲気温度とに基づいて前記測定結果を温度補償する補償演算部と、をさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の尿温度計。
【請求項7】
前記感温部と前記雰囲気温度測定部とが共通の温度センサからなり、
前記感温部が前記体温近似温度に温度調整されたことを示す測温状態表示部をさらに備える請求項6に記載の尿温度計。
【請求項8】
排泄されてから前記感温部に至るまでの前記尿の落下距離に対応する距離情報を記憶しておく距離情報記憶部をさらに備え、
前記補償演算部が、前記感温部による測定結果、前記雰囲気温度および前記距離情報に基づいて前記測定結果を温度補償する請求項6または7に記載の尿温度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−252829(P2011−252829A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127808(P2010−127808)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】