説明

尿温測定装置およびそれを備えたトイレシステム

【課題】尿から周囲の空気への放熱等の様々な影響因子による影響を考慮して、被験者の体温とほぼ等しい温度である排泄口近傍での尿温度を知ることが可能な尿温測定装置を提供すること。
【解決手段】被験者の排泄口から体外に排泄された排泄尿の温度である排泄尿温を測定する尿温測定装置において、被験者の排泄する尿の温度を計測する尿温計測手段と、尿温計測手段の計測値に影響を与える影響因子の状態を取得する影響因子状態取得手段と、影響因子状態取得手段により取得された影響因子の状態に基いて、尿温計測手段の計測値に対する温度補正量を算出し、尿温計測手段の計測値を、温度補正量によって補正することにより、排泄直後の尿温である排泄尿温を算出する排尿温度補正手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の排泄口から体外に排泄された排泄尿の温度である尿温を測定する尿温測定装置および尿温測定装置を備えたトイレシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人の体温は身体内部の生理学的な活動によって作り出されるものであり、そのため、健康状態を判断するために重要な指標として取り扱われてきた。そして、体温の測定方法としては、体温計による脇下や舌下や直腸での測定が行われている。また、これらの測定方法以外にも、尿は体内に蓄積されているためその温度は体温と関係があることから、体温測定に代えて被験者の局部の排泄口から体外に排泄された尿(排尿)の温度を測定する尿温測定装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高熱伝導性の金属や断熱材で被覆されたサーミスタ等の感温体を備えた尿温計測手段を、便器の内壁に配設し、この尿温計測手段によって被験者の排泄する尿を受けて、その温度を計測する尿温測定装置が開示されている。
【0004】
また、その他の例として、排尿を受ける受尿容器を可動式に便器内の空間に配設し、この受尿容器内に尿温計測手段を設けて尿の温度を計測する尿温測定装置も考えられる。
【特許文献1】特開昭63−176536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、健康状態の変化による体温の変化は1℃以下の場合も多く、体温変化によって詳細な健康状態の判断を行うためには0.1℃程度の高精度の測定が必要となるが、前述した脇下や舌下や直腸での測定は測定再現性や測定利便性において問題があった。そのため本発明者らは、簡便に測定できて被験者に負担の少ない体温情報として尿温度を活用することを考え、被験者の体温と体外に排泄される尿の温度との相関関係を改めて詳しく調査した。
【0006】
その結果、被験者の排泄口から体外に排泄された直後、すなわち、排泄口近傍での排泄尿の温度は、被験者の体温とほぼ等しくなっており、健康状態の変化によって、尿の温度も体温と高い相関関係を持って変化することが確かめられた。言い換えれば、尿の温度が0.1℃程度の高精度で測定出来れば、詳細な健康状態の判断のための体温情報として尿温を使用することが可能となることが判明した。
【0007】
ところが、同じく本発明者らの研究によって、特許文献1に開示された尿温測定装置を含めて以上で紹介した尿温測定装置のように、排尿の温度を計測する尿温計測手段が被験者の排泄口から比較的に離れた位置に配設されていると、この尿温計測手段で計測される温度値は、排泄口直後の位置で計測される温度とは異なることが判明した。即ち、被験者の排泄口から放出された排泄尿が排泄口から離れた位置に置かれた尿温計測手段まで到達する間に周囲の空気(雰囲気)との間で熱の授受現象を生じるため、尿温計測手段により計測される尿温はこの授受現象の影響を受けて、被験者の排泄口から排泄された直後の尿温、すなわち排泄口近傍での尿温と異なる温度となる。
【0008】
さらに、本発明者らが種々の温度の雰囲気で確認試験を行ったところ、この授受現象の影響度は本発明が測定対象とする被験者の体調変化による排泄尿の温度変動幅に対して無視できない大きさであることが確かめられた。そして、その影響度は熱の授受現象によるため排泄尿と雰囲気との温度差や、排泄尿が通過する経路(以下、「排尿軌跡」とする)の長さ(距離)や、排泄尿の放出速度や流量、等によって異なることが判った。
【0009】
そこで、本発明は、尿から周囲の空気への放熱等の様々な影響因子による影響を考慮して、被験者の体温とほぼ等しい温度である排泄口近傍での尿温度、即ち、本発明における排泄尿温(排泄口近傍での尿温を、他の位置で測定する尿温と区別して以下では「排泄尿温」と呼ぶ)を知ることが可能な尿温測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、被験者の排泄口から体外に排泄された尿の温度である排泄尿の温度を測定する尿温測定装置において、前記被験者の排泄する尿の温度を計測する尿温計測手段と、前記尿温計測手段の計測値に影響を与える影響因子の状態を取得する影響因子状態取得手段と、前記影響因子状態取得手段により取得された前記影響因子の状態に基いて、前記尿温計測手段の計測値に対する温度補正量を算出し、前記尿温計測手段の計測値を、前記温度補正量によって補正することにより、排泄直後の尿温である排泄尿温を算出する排尿温度補正手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記影響因子は、少なくとも排尿軌跡近傍の空気温度である環境温度を含むものであることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記影響因子は、少なくとも前記被験者の排泄口の位置から尿温計測手段の位置までの距離である放尿距離を含むものであることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記影響因子は、少なくとも単位時間当りの排尿量たる尿流率を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記影響因子は、被験者の性別及び年齢たる個人身体情報、及び排尿軌跡近傍の空気温度たる環境温度であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の尿温測定装置を備えたトイレシステムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、被験者の排泄口から体外に排泄された尿である排泄尿の温度を測定する尿温測定装置において、被験者の排泄する尿の温度を計測する尿温計測手段と、尿温計測手段の計測値に影響を与える影響因子の状態を取得する影響因子状態取得手段と、影響因子状態取得手段により取得された影響因子の状態に基いて、尿温計測手段の計測値に対する温度補正量を算出し、尿温計測手段の計測値を、温度補正量によって補正することにより、排泄直後の尿温である排泄尿温を算出する排尿温度補正手段と、を有するので、尿温計測手段と被験者の排泄口との距離が比較的に離れていても、尿温計測手段の計測値が、尿周囲の空気の温度変化等種々の影響因子の状態に基いて補正されることにより、影響因子による影響を受けることなく、正確な尿温度を測定することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、影響因子は、少なくとも排尿軌跡近傍の空気温度たる環境温度を含むものであることを特徴とするので尿周囲の空気との温度差によって異なる熱の伝導速度の違いの影響を受けることなく、より正確な尿温度を測定することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、影響因子は、少なくとも前記被験者の排泄口の位置から尿温計測手段の位置までの距離である放尿距離を含むものであることを特徴とするので、大人と子供、男性と女性等身体的な特徴によって異なる被験者の排泄口の位置の違いの影響を受けることなく、より正確な尿温度を測定することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、影響因子は、少なくとも単位時間当りの排尿量である尿流率を含むものであることを特徴とするので、体調や身体的な個人差によって異なる被験者の排尿速度の違いの影響を受けることなく、より正確な尿温度を測定することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、影響因子は、少なくとも被験者の性別及び年齢たる個人情報、及び排尿軌跡近傍の空気温度たる環境温度であることを特徴とするので、被験者の性別及び年齢によって異なる身体的な特徴の違いの影響を受けることなく、正確な尿温度の測定をすることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の尿温測定装置を備えたトイレシステムであるので、尿温計測手段と被験者の排泄口との距離が比較的に離れていても、尿温計測手段の計測値が、尿周囲の空気の温度変化等種々の影響因子の状態に基いて補正されることにより、影響因子による影響を受けることなく、正確な尿温度を測定することができる尿温測定装置を備えたトイレシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[1.第1実施形態]
[1.1 トイレシステムの構成]
以下、本発明を適用した尿温測定装置の第1の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施形態に係る尿温測定装置及び尿温測定装置を備えたトイレシステムを示す外観斜視図であり、図2は、図1に示すトイレシステムが備えた便器の側断面図であり、図3は、図1に示す尿温測定装置が備えたリモコン装置の外観斜視図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、トイレシステム1は、トイレブース2に設置されている便器3と、便器3に取り付けられた尿温測定装置4と、を有している。なお、本実施形態では、尿温測定装置4の尿温測定装置本体6には人体の局部を洗浄するための局部洗浄装置9(図4参照)が組み込まれている。そのため、リモコン装置5は後述するように、尿温測定装置4だけでなく便器3及び局部洗浄装置9を操作する機能も併せ持っている。
【0024】
[1.1.1 尿温測定装置の概観]
尿温測定装置4は、被験者Pの排泄口Dから体外に排泄された排泄尿の温度である排泄尿温を測定するものであり、図1及び図2に示すように、便器3の後上部に載置された尿温測定装置本体6と、この尿温測定装置本体6に回動自在に設けられた便座7と、同じく尿温測定装置本体6に回動自在に設けられた便蓋8と、トイレの壁面に設けられたリモコン装置5と、を有している。
【0025】
リモコン装置5には、尿温測定装置本体6の機能だけでなく、これらの局部洗浄装置9や便器3のそれぞれの機能をも、被験者がそれらの実行を指示するための操作ボタン群と、測定結果や各種メッセージを表示する表示部と、が設けられている。
【0026】
なお、尿温測定装置本体6の内部には、図示を省略するが、被験者Pの局部を自動洗浄する局部洗浄装置や便座暖房装置等の便器3の利便性を向上するための各種装置が収納配設されており、局部洗浄機能や便座暖房機能等のそれぞれの機能を実行できるように構成されている。
【0027】
また、尿温測定装置本体6には、被験者Pの排泄する尿の温度と本発明における環境温度とを計測する温度測定ユニット10と、本発明における被験者の放尿距離を計測するための図示しない放尿距離測定ユニットと、本発明における被験者の単位時間当たりの放尿量である尿流率を測定するための図示しない尿流率測定ユニットと、が設けられている。
【0028】
[1.1.2 尿温測定装置本体の詳細]
温度測定ユニット10は、便器3のリム部3aに設けられスイングアーム駆動部22(図4参照)を内蔵した支持ボックス16と、一端を支持ボックス16内に設けられたスイングアーム駆動部22に回動自在に支持されたスイングアーム18と、スイングアーム18の他端に連設された受尿容器20と、受尿容器20の内部に設けられた温度センサ11と、を有している。
【0029】
ここで、温度センサ11は、温度によってその抵抗値が変化する抵抗体であるサーミスタを感温体として保護管に封止した構成であり、この保護管を受尿容器20の尿貯留部に固定した構造となっている。
【0030】
そして、温度測定ユニット10は、スイングアーム18を回動動作させて受尿容器20を支持ボックス16内から便器3のボール3b側の、被験者Pから排泄された尿を受ける位置に進出させ、被験者Pから排泄された尿を受尿容器20で受けて、この尿の温度を受尿容器20内に設けた温度センサ11によって計測し、計測終了後、再び受尿容器20を支持ボックス16の内部に収納するように構成されている。
【0031】
また、支持ボックス16の内部には、温度センサ洗浄部24(図4参照)が設けられており、スイングアーム18、受尿容器20、及び温度センサ11は、尿温計測を行った後に支持ボックス16に収納された状態で、温度センサ洗浄部24によって洗浄される。
【0032】
このような構成とした温度センサ11の受ける尿の温度は、被験者Pの排泄口Dと温度センサ11との間の距離が比較的に離れているため、被験者Pの局部の排泄口Dから排泄された尿が温度センサ11に到達するまでの間に、様々な影響因子による温度的な影響を受けて排泄口Dから排泄された直後の尿温(排泄尿温)とは異なる温度となる。例えば、本発明を適用した本実施例が設置されるトイレルームの環境下では、排尿される便器3のボール内の温度は通常の排尿の温度より低い場合が多いが、その場合は周囲に放熱することによって、尿の温度は排泄尿温よりも低下する。
【0033】
即ち、温度センサ11の受ける尿の温度の計測値(以下、これを温度センサ11の計測値と言う。)は、本発明の測定対象である、排泄口Dから排泄された直後の尿温、とは異なっている。
【0034】
そこで、かかる影響因子による温度センサ11への影響を解消するために、本実施形態に係る尿温測定装置4は、温度センサ11の計測値に影響を与えるこれらの影響因子の状態を取得する影響因子状態取得手段と、影響因子状態取得手段により取得された影響因子の状態に基いて、温度センサ11の計測値に対する温度補正量を算出し、温度センサ11の計測値をこの温度補正量によって補正することにより、排泄尿温を算出する排尿温度補正手段と、を有している。
【0035】
そのため、尿温測定装置4は、尿温計測開始前で被験者の尿が当たり始める直前の温度センサ11の出力値を計測して相当する温度を求めることによって排尿軌跡近傍の雰囲気温度をも計測するように構成している。即ち、温度センサ11は尿温計測手段として機能すると共に、本発明における影響因子として、排尿軌跡近傍の空気温度である環境温度を測定する影響因子状態取得手段としても機能することとなる。
【0036】
このようにボール3b内に配設された尿温計測手段である温度センサ11で本発明における影響因子としての環境温度をも測定することにより、別個に環境温度を測定するための温度計測手段を設ける必要がなくなり、尿温測定装置のコストダウンが図れる。また、排尿雰囲気による尿温計測値への影響量をより正確に求めることが可能である。以下、その理由を説明する。
【0037】
本実施形態でのトイレシステム1の場合は、被験者Pが放尿した排泄尿が通過する空間は、便器3のボール3bと便座7と被験者Pの臀部によって囲まれた閉空間であり、この閉空間の温度はトイレシステム1を使用していない使用待機時は、トイレブース内の室温とほぼ同じと考えても差し支えないが、以下に述べるようにトイレブース内の室温とは異なる場合がある。
【0038】
即ち、被験者Pが便座7に着座しているため、その体温により暖められる場合や、排泄後の局部を洗浄した後に温風によって乾燥させる機能(以下、温風乾燥機能と呼ぶ)が尿温測定装置本体6に備えられているときに、被験者Pの前の被験者が前記乾燥機能を使用した後において、その動作の余熱による影響を受ける場合などである。
【0039】
このように、被験者Pの前の被験者が本装置を使用した直後に被験者Pが本装置を使用する場合は、前記閉空間の温度は前記閉空間以外の、例えば、トイレブースの室温よりも大幅に高い温度となっている。従って、本実施形態のように、この閉空間の温度として排尿軌跡近傍の空気の温度を、環境温度として採用する方が、トイレブースの室温を環境温度とするより、より安定して正確な排泄尿温を求めることが可能となる。また、尿温計測手段である温度センサ11の出力特性も周囲の温度から影響を受けるが、この影響も少なくなり、より高精度の測定が可能となる。
【0040】
さらに、前記閉空間内においても温度分布は一様でないため、本実施形態のように排尿軌跡近傍の位置として、排尿軌跡上に温度センサ11を設けると、少なくともその感温部は被検体(本実施例では排泄尿)の雰囲気により近い雰囲気に設置されることになり、より精度の良い計測が可能となる。
【0041】
本発明者らの鋭意研究の結果、さらに、前述した排尿軌跡近傍の空気温度たる環境温度以外の影響因子としては、被験者Pの排泄口Dの位置から温度センサ11の位置までの距離である放尿距離、及び単位時間当たりの排尿量である尿流率が上記した温度センサ11の計測値に大きな影響を与えることが分かった。
【0042】
そのため、本実施形態に係る尿温測定装置4は、影響因子状態取得手段の一例として、被験者Pまでの距離を検知する距離センサ12と、ボール3b内に貯留した溜水の水位を測定する水位センサ14と、を有しており、尿温測定装置4全体の動作を制御し、また排尿温度補正手段としても機能する制御部40(図4参照)を尿温測定装置本体6の内部に備えている。この制御部40の具体的な構成については、後述で詳説する。
【0043】
距離センサ12は、支持ボックス16に設けられており、高周波数の電磁波を被験者Pに向けて送信し、その電磁波が被験者Pに反射した反射波を受信して、被験者Pまでの距離を計測するパルスレーダにより構成されている。
【0044】
そして、尿温測定装置4は、距離センサ12によって被験者Pまでの距離を計測すると、この被験者Pまでの距離と、予め設定された距離センサ12と温度センサ11との間の距離とに基いて、本発明における影響因子状態としての放尿距離を算出し取得するように構成されている。
【0045】
水位センサ14は、便器3のボール3b底部に設けられており、水圧の変化を電気信号に変換する感圧素子により構成されている。
【0046】
そして、尿温測定装置4は、水位センサ14によってボール3b内の水位を経時的に測定し、この水位の時間的な変化に基いて、単位時間当たりの尿量変化量である尿流率を本発明における影響因子の状態として算出し取得するように構成されている。
【0047】
そして、尿温測定装置4は、上記した方法で取得された本発明における影響因子の状態である環境温度、放尿距離、及び尿流率に基いて、温度センサ11の計測値に対する温度補正量を算出し、温度センサ11の計測値を温度補正量によって補正することにより、排泄尿温を算出するようになっている。
【0048】
また、尿温測定装置本体6の内部には、リモコン装置5から送信される各種操作信号を受信する操作信号受信手段として機能する通信部36(図4参照)を備えている。
【0049】
そして、尿温測定装置本体6は、通信部36を介してリモコン装置5から受信した各種操作信号に基づいて、それぞれの操作信号に応じた動作を実行するようになっている。
【0050】
[1.1.3 リモコン装置の詳細]
リモコン装置5は、図3に示すように、薄型略矩形箱形状の筐体5aと、トイレシステム1が備えている各種の機能を遠隔制御するために被験者が操作する複数の操作ボタン群と、トイレシステム1の各種の機能の設定状態や尿温測定装置4による尿温測定結果等を表示する液晶表示部5fと、を備えている。
【0051】
この操作ボタン群は、筐体5aの前面上部に設けられ、尿温測定装置4に併設された便器3の各種機能を遠隔制御するために被験者が操作する複数の便器操作ボタン5bと、複数の局部洗浄装置9(図4参照)の各種機能を遠隔制御するために被験者が操作する複数の局部洗浄装置操作ボタン5cと、筐体5aの前面略中央に設けられ、尿温測定装置4に尿温測定を実行させるための尿温測定実行ボタン5dと、同じく筐体5aの前面略中央に設けられ、尿温測定装置4に個人識別させるための複数の個人選択ボタン5eと、液晶表示部5fの左側に設けられ、トイレシステム1の各種機能の設定や個人情報の入力及び決定を行うための複数の個人情報設定ボタン5g、とを有している。
【0052】
[1.2. トイレシステムの電気的構成]
[1.2.1 尿温測定装置本体の電気的構成]
次に、尿温測定装置4の電気的構成について説明する。図4は、尿温測定装置本体の電気的構成を示すブロック図である。
【0053】
尿温測定装置4は、前述したように、尿温測定装置本体6と尿温測定装置本体6の各種動作を指示したり、測定結果等を表示したりするリモコン装置5とを有している。そして、尿温測定装置本体6は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)30と、ROM(Read Only Memory)32と、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)33と、RAM(Random Access Memory)34と、通信部36と、スイングアーム駆動部22と、温度センサ洗浄部24と、温度センサ11と、距離センサ12と、水位センサ14と、を有しており、これらは全てバスを介してCPU30に接続している。
【0054】
CPU30は、ROM32に記憶している各種プログラムやEEPROM33に記憶されている各種のデータを読み出して実行することにより、尿温測定装置4の全体の動作を統括制御する演算処理装置である。
【0055】
ROM32は、CPU30が尿温測定装置4の全体の動作を統括制御するために実行する各種プログラムを記憶している記憶装置である。
【0056】
また、このROM32には、距離センサ12と温度センサ11との間の距離情報、ボール3b内の水位とボール3b内の溜水量との関係を示した溜水量変換テーブル、後述で詳説する環境温度、放尿距離、及び尿流率をパラメータとした温度補正量を算出するための補正式、同じく後述で詳説する個人情報に応じた温度補正量を算出するためのデータで構成される補正量算出テーブル等が記憶されている。
【0057】
EEPROM33は、被験者の各種測定データや尿温測定装置4全体の動作履歴などを、元電源の切断時にも維持管理するために記憶して保存する記憶装置である。
【0058】
RAM34は、CPU30がROM32から読み出した各種プログラムやEEPROM33に記憶されているデータに基づいて演算処理する際に、作業領域として用いる記憶装置である。
【0059】
そして、本実施形態では、これらCPU30とROM32とEEPROM33とRAM34とによって、制御部40を構成しており、この制御部40は、尿温測定装置4全体の動作を統括制御するだけでなく、CPU30がROM32に記憶された影響因子状態取得プログラム、排尿温度補正プログラムを読み出して実行することにより、それぞれ影響因子状態取得手段、排尿温度補正手段として機能する。
【0060】
(影響因子状態取得手段)
本実施形態では温度センサ11の計測値に影響を与える影響因子として環境温度、放尿距離、尿流率を採用しており、影響因子状態取得手段は、その影響因子の状態を取得する。
【0061】
すなわち、影響因子状態取得手段は、尿温測定時に温度センサ11に排尿がかからない状態で温度センサ11を動作させて温度を計測し、温度センサ11から送信された温度の情報を含む出力信号を受信すると、この出力信号を温度に換算し、この温度値を影響因子としての環境温度の状態として取得する。
【0062】
また、影響因子状態取得手段は、距離センサ12を動作させて被験者Pまでの距離を計測し、距離センサ12から送信されたこの距離情報を含む出力信号を受信すると、被験者Pまでの距離と、ROM32から読み出した距離センサ12と温度センサ11との間の距離情報とに基いて、被験者Pの局部の放尿口から温度センサ11までの距離を算出し、この距離値を影響因子としての放尿距離の状態として取得する。
【0063】
さらに、影響因子状態取得手段は、水位センサ14によってボール3b内の水位を経時的に測定し、ROM32から読み出したボール3b内の水位とボール3b内の溜水量との関係を示すテーブルに基いて、ボール3b内の溜水量を算出し、被験者Pの尿量を経時的に算出する。そして、影響因子状態取得手段は、この尿量データから単位時間当たりの排尿量である尿流率を算出し、この算出値を影響因子としての尿流率の状態として取得する。
【0064】
(排尿温度補正手段)
排尿温度補正手段は、影響因子状態取得手段により取得された影響因子の状態である環境温度、放尿距離、及び尿流率に基いて、ROM32に記憶されている補正式を使用して温度センサ11の計測値に対する温度補正量を算出する。次に、この温度補正量によって温度センサ11の計測値を補正することにより、排泄直後の尿温である本発明における排泄尿温を算出する。
【0065】
排泄尿温を算出すると、排尿温度補正手段は、この排泄尿温の情報に基いてリモコン装置5に送信するための制御信号である結果表示信号を生成し、バスを介して通信部36へ出力する。排尿温度補正手段による補正についての詳細は、後述する。
【0066】
通信部36は、リモコン装置5との間で各種操作信号を送受信する送受信回路を備えており、制御部40による制御に従って動作する。そして、通信部36は、リモコン装置5から送信される各種の操作信号を受信し、バスを介して制御部40へ送信する。
【0067】
この操作信号を受信した制御部40は、受信した操作信号に対応したプログラムを実行することにより、被験者によるリモコン装置5の操作に対応した機能を作動させる。
【0068】
また、制御部40から結果表示信号を受信すると、通信部36は、この結果表示信号をリモコン装置5へ向けて送信する。
【0069】
スイングアーム駆動部22は、前述したように、温度測定ユニット10を構成するもので、スイングアーム18を回転駆動するためのスイングアーム駆動モータを有している。
【0070】
そして、スイングアーム駆動部22は、リモコン装置5から送信される尿温測定実行信号を通信部36を介して受信した制御部40の制御に従って動作して、スイングアーム駆動モータを駆動してスイングアーム18の回動動作を行う。
【0071】
すなわち、スイングアーム駆動部22は、受尿容器20が便器3のボール3b内部の測定位置と、受尿容器20が支持ボックス16内に収納される待機位置との間でスイングアーム18の回動動作を行う。
【0072】
温度センサ洗浄部24は、所定の水源に連通し洗浄水を噴出するためのポンプ装置と、ポンプ装置が噴出させた洗浄水を待機位置にあるスイングアーム18、受尿容器20、及び温度センサ11に向けて噴射させる噴射ノズルと、を有している。
【0073】
そして、温度センサ洗浄部24は、制御部40の制御に従って動作して、待機位置にあるスイングアーム18、受尿容器20、及び温度センサ11を洗浄する。
【0074】
そして、温度センサ11は、制御部40の制御に従って動作して、被験者Pの排泄する尿の温度情報を含む出力信号を制御部40に出力することによって被験者Pの排泄する尿の温度を計測する。
【0075】
また、温度センサ11は、制御部40が影響因子状態プログラムを実行することによって影響因子状態取得手段の一部として動作し、環境温度の温度情報を含む出力信号を制御部40に出力することにより環境温度を計測する。
【0076】
距離センサ12は、高周波数の電磁波を被験者に向けて送信し、その電磁波が被験者Pに反射した反射波を受信して、被験者までの距離を計測するパルスレーダにより構成されている。
【0077】
そして、距離センサ12は、制御部40が影響因子状態取得プログラムを実行することによって影響因子状態取得手段の一部として動作し、距離情報を含む出力信号を制御部40に出力することにより被験者Pまでの距離を計測する。
【0078】
水位センサ14は、水圧の変化を電気信号に変換する感圧素子により構成している。
【0079】
そして、水位センサ14は、制御部40が影響因子状態取得プログラムを実行することによって影響因子状態取得手段の一部として動作し、水位情報を含む出力信号を制御部40に出力することにより便器3のボール3b内に貯留した溜水の水位を計測する。
【0080】
[1.2.2 リモコン装置の電気的構成]
次に、リモコン装置5の電気的構成について説明する。図5は、リモコン装置5の電気的構成を示すブロック図である。
【0081】
リモコン装置5は、図4に示すように、CPU42と、ROM44と、EEPROM45と、RAM46と、表示部52と、操作ボタンユニット54と、設定ボタンユニット56と、通信部58と、を有しており、
これらは、全てバスを介してCPU42に接続している。
【0082】
また、リモコン装置5は、トイレシステム1を構成する尿温測定装置本体6と便器3と局部洗浄装置9との間で、通信部58を介して情報の授受を各々行うように構成されているが、以下では主として、尿温測定装置4との情報の授受に関係することについて説明する。
【0083】
CPU42は、ROM44に記憶している各種プログラムやEEPROM45に記憶されている各種のデータを読み出して実行することにより、リモコン装置5の全体の動作を統括制御する演算処理装置である。
【0084】
EEPROM45は、被験者毎の個人情報や測定履歴等のデータを記憶保存するために用いる記憶装置である。
【0085】
このEEPROM45には、後述するように、被験者Pにより設定ボタンユニット56が操作されることによって入力される被験者Pの性別及び年齢である個人身体情報や測定結果情報等の一時保存が必要な各種のデータが記憶される。なお、いったん記憶されたこれらの情報は、上書き入力されない限り、元電源の切断時にも保存されて、次回の測定時等に利用される。
【0086】
ROM44は、CPU42がリモコン装置5の全体の動作を統括制御するために実行する各種プログラムを記憶している記憶装置である。
【0087】
RAM46は、CPU42がROM44から読み出した各種プログラムやEEPROM45から読み出した各種データを演算処理する際に、作業領域として用いる記憶装置である。
【0088】
そして、本実施形態では、これらCPU42とROM44とEEPROM45とRAM46とによって、リモコン装置5全体の動作を統括制御する制御部50を構成している。
【0089】
表示部52は、文字情報を表示する液晶表示装置と、液晶表示装置を駆動する液晶表示装置駆動回路とを備え、制御部50の制御に従って動作して、液晶表示部5fにトイレシステム1が備えている各種の機能の設定状態や尿温測定装置4による尿温測定結果等を示す文字情報を表示する。
【0090】
操作ボタンユニット54は、被験者Pによりトイレシステム1が備えている各種の機能を動作させるために操作されるボタン類であり、具体的には複数個の便器操作ボタン5bと、局部洗浄装置操作ボタン5cと、尿温測定実行ボタン5dと、個人選択ボタン5eとを備えており、それらの操作に対応した信号を制御部50に入力するものである。
【0091】
そして、制御部50は、操作ボタンユニット54から信号が入力されると、その信号に対応したプログラムを実行することにより、通信部58を作動させて尿温測定装置本体6へそれぞれのボタンに対応した動作の実行信号を送信させる制御を行う。
【0092】
例えば、制御部50は、尿温測定装置4において個人選択ボタン5eから操作された信号が入力されると、EEPROM45にその信号に対応する個人情報が記憶されているか否かを判定する。そして、EEPROM45に対応する個人情報が記憶されていると判定すると、制御部50はその対応した個人情報に基づく個人情報表示データを作成して表示部52に送り、被験者Pに内容を確認させるために表示させる。
【0093】
その後、被験者Pが尿温測定実行ボタン5dを操作すると、制御部50は通信部58を作動させて尿温測定装置本体6へ、この個人情報を含んだ測定動作の実行信号を送信させる制御を行う。
【0094】
設定ボタンユニット56は、トイレシステム1が備えている各種の機能や動作の一部をカスタマイズ設定するために、被験者Pによる個人情報設定ボタン5gの操作に対応した信号を制御部50に入力するものである。
【0095】
即ち、制御部50は、設定ボタンユニット56から送られてくる操作信号に設定ボタン5gの中の「登録」ボタンからの信号が入力されていると、トイレシステム1の動作モードを個人情報登録モードに設定する。そして制御部50は、個人情報登録モード設定後に、「登録」ボタン以外の個人情報設定ボタン5gや選択された個人選択ボタン5eとによって入力された信号が設定ボタンユニット56から送られてくると、個人情報データを作成し、それをEEPROM45に記憶させる制御を行う。
【0096】
尿温測定装置4においてこの個人情報登録モードが設定された場合に、制御部50は、入力された被験者Pの性別と年齢とを個人選択ボタン5eに対応付けて個人身体情報としてEEPROM45に記憶させる制御を行う。
【0097】
また、制御部50は、「登録」ボタンからの信号が入力されていない状態、即ち、トイレシステム1での通常動作モード設定時に、「登録」ボタン以外の個人情報設定ボタン5gからの信号が設定ボタンユニット56から送られてくると、通信部58を作動させてトイレシステム1を構成する便器3、局部洗浄装置、尿温測定装置本体6へ、設定ボタン5gの操作に対応した動作実行信号を送信させる制御を行う。
【0098】
尿温測定装置4においてこの通常動作モードの場合に、制御部50は、例えば受尿容器20の位置を指定するために「登録」ボタン以外の個人情報設定ボタン5gの操作を行うと、制御部50は通信部58を作動させて、設定ボタン5gの操作に対応した動作実行信号を尿温測定装置本体6へ送信させる制御を行う。
【0099】
通信部58は、トイレシステム1を構成する便器3と局部洗浄装置と尿温測定装置本体6との間で各種信号を送受信する送受信回路を備えており、被験者Pによる操作に基づく動作実行信号を各装置に送信することによって、各装置は制御部50の制御に従って動作する。また、通信部58は、これら各装置から送信される信号を受信すると、バスを介して制御部50へ送信する。
【0100】
この場合、尿温測定装置4においては、通信部58は、被験者Pによる尿温測定実行ボタン5dの押下げ操作が行われた場合には、測定実行信号を通信部36を介して尿温測定装置本体6へ送信したり、測定終了後に尿温測定装置本体6から通信部36を介して送られてくる測定結果表示信号を受信したりする。
【0101】
[1.3 排尿温度補正手段による補正について]
次に、尿温測定装置4の排尿温度補正手段による補正について、図6及び図7を参照して説明する。なお、以下の説明では、被験者Pの排泄口Dから放出された直後の排尿温度は、被験者Pの体温とほぼ等しい37℃であり、被験者Pが男性である場合の放尿距離が50mm、被験者Pが女性である場合の放尿距離が100mmであるとする。
【0102】
図6は、一例として尿流率が15ml/sである場合における、放尿距離に対する排尿温度と温度センサ11による尿温の計測値との差(以下、温度センサ11の計測誤差という。)との関係を示した説明図である。図6に示すように、放尿距離に着目すれば、例えば、温度センサ11によって計測された環境温度が20℃であるときには、放尿距離が0mm、50mm(被験者が男性の場合)、100mm(被験者が女性の場合)のように増加するのに伴って、温度センサ11の計測誤差は、それぞれ、0、ΔT50、ΔT100のように増加する傾向を示す。温度センサ11によって計測された環境温度が5℃、35℃であるときも同様の傾向を示す。
【0103】
すなわち、放尿距離の増加に伴って、被験者Pの排泄口Dから排出された尿が温度センサ11に到達するまでの時間が長くなり、その間に尿から周囲空気へ放熱する放熱量が大きくなるので、温度センサ11の計測誤差は増加するのである。
【0104】
また、図6に示すように、環境温度に着目すれば、例えば、放尿距離が50mm(被験者が男性の場合)であるときには、環境温度が35℃、20℃、5℃のように低下するのに伴って、温度センサ11の計測誤差は、それぞれ、ΔTa50、ΔT50、ΔTb50のように増加する傾向を示す。放尿距離が100mm(被験者が女性の場合)であるときも同様の傾向を示す。
【0105】
すなわち、環境温度の低下に伴って、被験者Pの排泄口Dから排出された尿が温度センサ11に到達するまでの間に尿から周囲空気へ放熱する放熱量が大きくなるので、温度センサ11の計測誤差は増加するのである。
【0106】
このように、温度センサ11の計測値は放尿距離や環境温度によって計測誤差を含んだものとなるが、その計測誤差は放尿距離や環境温度と一定の関係があることが判った。言い換えれば、放尿距離や環境温度を計測すれば、各々による温度センサ11の計測誤差は一義的に決定される。従って、この温度センサ11の計測誤差を温度センサ11の計測値に対する温度補正量として温度センサ11の計測値に加算することによって排泄尿温を算出することができることになる。例えば、放尿距離及び環境温度と、温度補正量との関係を、図6に示す一次式の線形グラフとして近似した補正式を予め設計し、この補正式に放尿距離及び環境温度を代入することによって、温度補正量を算出することができ、この温度補正量を温度センサ11の計測値に加算することによって排泄尿温を算出することができる。
【0107】
ところで、図6では、一例として尿流率が15ml/sである場合における、温度センサ11の計測誤差について説明したが、温度センサ11の計測誤差は、尿流率によっても影響を受けることがある。
【0108】
図7は、一例として放尿距離が50mm(被験者が男性である場合)、環境温度が20℃である場合における、尿流率に対する温度センサ11の計測誤差との関係を示した説明図である。なお、放尿距離が50mm、環境温度が20℃である場合には、放尿距離及び環境温度に対する温度補正量は、図6で示すΔT50である。
【0109】
図7に示すように、尿流率が所定値(ここでは、12ml/s)以上である場合には、温度センサ11の計測誤差は、一定値ΔT50となっており、尿流率による影響を受けることはなく、放尿距離及び環境温度に対して算出される温度補正量ΔT50をそのまま温度補正量として採用することができる。
【0110】
ところが、尿流率が所定値(ここでは、12ml/s)よりも小さい場合には、尿流率の減少に伴って、温度センサ11の計測誤差は増加する傾向を示す。このため、図6に示す関係から算出される温度補正量ΔT50は、正しい温度補正量として採用することができない。
【0111】
そこで、尿流率が所定値(ここでは、12ml/s)よりも小さい場合には、例えば、図7に示すように、尿流率と、温度センサ11の計測誤差との関係を一次式の線形グラフとして近似した補正式を予め設計し、この補正式に尿流率を代入することによって、正しい温度補正量を算出することができる。
【0112】
そして、本実施形態に係る尿温測定装置4では、排尿温度補正手段が、環境温度、放尿距離、及び尿流率に基いて、温度センサ11の計測値に対する温度補正量を算出し、温度センサ11による尿温の計測値を、温度補正量によって補正することにより、排泄直後の尿温である本発明における排泄尿温を推定する。
【0113】
具体的には、尿温測定装置4では、環境温度、距離、及び尿流率をパラメータとした温度補正量データがROM32に予め記憶されており、排尿温度補正手段は、ROM32から読み出した温度補正量データに、環境温度、距離、及び尿流率を代入することによって、温度センサ11の計測値に対する温度補正量を算出し、算出した温度補正量と温度センサ11の計測値とを加算することによって補正を行い、排泄尿温を推定するのである。
【0114】
ここで、環境温度、距離、及び尿流率をパラメータとした温度補正量データとは、環境温度、放尿距離、及び尿流率をパラメータとした補正式、補正テーブル等を含むデータであり、例えば、図6及び図7に示す関係に対応する補正式もこれに含まれる。
【0115】
[1.4 尿温測定装置及びリモコン装置の動作]
次に、尿温測定装置4及びリモコン装置5及を用いて尿温を測定する動作の一例について、図8及び図9を参照して具体的に説明する。図8は、尿温測定装置4の制御部40が実行する制御を示すフローチャート、図9は、リモコン装置5の制御部50が実行する制御を示すフローチャートである。
【0116】
(尿温測定装置の制御部が行う処理)
図8に示すように、尿温測定装置本体6の制御部40は、ステップS1において、リモコン装置5から送られてくる尿温測定実行信号を受信すると、それに含まれる個人情報信号に基づいて被験者を特定する個人特定処理を行い、ステップS2に移行する。
【0117】
ステップS2において、制御部40は、被験者により個人選択ボタン5eが操作されたことを示す個人測定モード選択信号をリモコン装置5から受信したか否かの判断を行う。
【0118】
この処理において、制御部40は、個人測定モード選択信号を受信したと判定すると(ステップS1:Yes)、処理をステップS3に移行し、受信していないと判定すると(ステップS2:No)、処理をステップS11に移行する。
【0119】
ステップS3において、制御部40は、スイングアーム駆動部22を作動させてスイングアーム18を待機位置から受尿位置まで回動動作し、受尿容器20の位置決めをする。この時は個人測定モードのため、この受尿容器20は被験者が登録している個人位置に位置決めされる。この処理が終了すると、制御部40は、処理をステップS4に移行する。
また、ステップS11において、制御部40は、スイングアーム駆動部22を作動させてスイングアーム18を待機位置から受尿位置まで回動動作し、受尿容器20の位置決めをする。この時は一般測定モードのため、受尿容器20は標準位置に位置決めされる。この処理が終了すると、制御部40は、処理をステップS4に移行する。
【0120】
ステップS4において、制御部40は、環境温度計測処理を実行する。具体的には、制御部40は、温度センサ11から送信される出力信号のうち、被験者Pが放尿を開始してから排尿が温度センサ11に当たり始めるまでの間の出力信号は、環境温度情報を含むものであるため、この出力信号から環境温度を算出し、その値をRAM34の所定領域にこの尿温測定における環境温度として記憶する。この処理が終了すると、制御部40は処理をステップS5に移行する。
【0121】
ステップS5において、制御部40は、放尿距離及び尿流率を計測する処理を実行する。具体的には、制御部40は、距離センサ12から送信される被験者Pまでの距離情報を含む出力信号を受信すると、被験者Pまでの距離情報と、ROM32から読み出した距離センサ12と温度センサ11との間の距離情報とに基いて、放尿距離を算出しRAM34の所定領域にこの尿温測定における放尿距離として記憶する。また同時に、制御部40は、水位センサ14から時々刻々送信されるボール3b内の水位の情報を受信し、予め求められている水位−水量の検量線によってその時の水量を算出する。この処理を被験者Pの排尿中継続して行うことにより、単位時間当たりの排尿量である尿流率を算出しRAM34の所定領域にこの尿温測定における尿流率として記憶する。
【0122】
ステップS6において、制御部40は、尿温計測処理を実行する。具体的には、被験者がスイングアーム18の先端部に設けられた受尿容器20に向って放尿を開始して受尿容器20に設けられた温度センサ11に排尿が当たり始めると、温度センサ11から送信される信号は排尿温度情報を含むものとなる。制御部40は、温度センサ11から送信されるこの温度情報を含む出力信号を受信することによって、尿温を算出しRAM34の所定領域に排尿温度として記憶する。この処理が終了すると、制御部40は、処理をステップS7に移行する。
【0123】
ステップS7において、制御部40は、温度補正量算出処理を実行する。具体的には、制御部40は、ROM32から環境温度、距離、及び尿流率をパラメータとした温度補正量データを読み出して、この温度補正量データに、ステップS4及びステップS5においてRAM34に記憶した本発明における尿温測定に影響を及ぼす影響因子としての環境温度、放尿距離、及び尿流率と、ステップS6において記憶した排尿温度を代入することによって、温度センサ11のこの尿温測定における計測値である前記排尿温度に対する温度補正量を算出する。この処理が終了すると、制御部40は、処理をステップS8に移行する。
【0124】
ステップS8において、制御部40は、前記排尿温度に対する温度補正処理を実行する。具体的には、制御部40は、ステップS7において算出した温度補正量を、ステップS5においてRAM34に記憶した温度センサ11の計測値に加算することによって補正を行い、排泄尿温を算出する。制御部40は排泄尿温を算出すると、この排泄尿温と被験者の情報に基いてリモコン装置5に測定結果を被験者個人と関連付けて表示するための制御信号である結果表示信号を生成する。この処理が終了すると、制御部40は、処理をステップS9に移行する。
【0125】
ステップS9において、制御部40は、結果表示信号送信処理を実行する。具体的には、制御部40は、ステップS8において生成した結果表示信号をリモコン装置5へ送信する処理を行う。この処理が終了すると、制御部40は、処理をステップS10に移行する。
【0126】
ステップS10において、制御部40は、受尿容器収納洗浄処理を実行する。具体的には、制御部40は、スイングアーム駆動部22を作動させてスイングアーム18を受尿位置から待機位置まで回動し受尿容器20及び温度センサ11を支持ボックス16の内部に収納する。その後、制御部40は、温度センサ洗浄部24を作動してスイングアーム18、受尿容器20、及び温度センサ11を洗浄した後、処理をステップS1へ戻す。
【0127】
(リモコン装置の制御部が行う処理)
次に、本実施例におけるリモコン装置5が行う処理について、以下に説明する。
図9に示すように、ステップS20において、リモコン装置5の制御部50は、まず、尿温測定装置本体6から結果表示信号を受信したか否かの判断を行う。
【0128】
この処理において、制御部50は、尿温測定装置本体6から結果表示信号を受信したと判定すると(ステップS20:Yes)、処理をステップS21に移行し、尿温測定装置本体6から結果表示信号を受信していないと判定すると(ステップS20:No)、処理をステップS22に移行する。
【0129】
ステップS21において、制御部50は、結果表示処理を実行する。すなわち、制御部50は、表示部52を動作して、尿温測定装置4による尿温測定結果としての排泄尿温を示す情報を液晶表示部5fに表示する。この処理が終了すると、制御部50は、処理をステップS20へ戻す。
【0130】
ステップS22において、制御部50は、尿温測定実行ボタン5dが押下されたか否かを判定し、尿温測定実行ボタン5dが押下されたと判定すると(ステップS22:Yes)、被験者を特定しないで尿温測定を行なう一般測定モードとして処理をステップS23に移行し、尿温測定実行ボタン5dが押下されていないと判定すると(ステップS22:No)、処理をステップS24に移行する。
【0131】
ステップS23において、制御部50は、一般測定モードとして尿温測定実行信号送信処理を実行する。すなわち、制御部50は、尿温測定装置4へ尿温測定装置4が一般測定モードを実行するための尿温測定実行信号を送信する。この処理が終了すると、制御部50は、処理をステップS20へ戻す。
【0132】
ステップS24において、制御部50は、個人選択ボタン5eが押下されたか否かを判定し、個人選択ボタン5eが押下されたと判定すると(ステップS24:Yes)、被験者を特定して尿温測定を行なう個人測定モードとして処理をステップS25に移行し、個人選択ボタン5eが所定時間内に押下されていないと判定すると(ステップS25:No)、処理をステップS20へ戻す。
【0133】
ステップS25において、制御部50は、RAM46に個人情報が記憶(登録)されているか否かを判定し、個人情報が登録されていると判定すると(ステップS25:Yes)、処理をステップS28に移行し、個人情報が登録されていないと判定すると(ステップS25:No)、処理をステップS26に移行する。
【0134】
ステップS25において、個人測定モードで尿温測定を実行するために必要な個人情報が登録されていないと判明した場合は、ステップS26において、制御部50は、個人情報の入力・登録のための操作を行う個人情報設定ボタン5gが押下されたか否かを判定し、押下されたと判定した場合は(ステップS26:Yes)、ステップS27に移行して個人情報設定ボタン5gによって入力される個人情報の登録処理を実行する。すなわち、制御部50は、被験者Pによって操作ボタンユニット54及び設定ボタンユニット56が操作されることにより入力される少なくとも被験者Pの性別及び年齢を含む情報を個人情報としてRAM46に記憶(登録)する処理を行った後、処理をステップS29に移行する。
【0135】
ステップS27において、被験者が複数人の場合には、任意の個人選択ボタン5e及び設定ボタン5gが操作されることによって、各被験者の少なくとも性別及び年齢を含む個人情報を個人選択ボタン5eの各々に関連付けてRAM46に記憶する。例えば、図3に示すように、個人選択ボタン5eのうち、1番のボタンと関連付けて45歳の男性、2番のボタンと関連付けて44歳の女性、3番のボタンと関連付けて15歳の男性等のように、個人情報がRAM46に記憶される。この処理が終了すると、制御部50は、処理をステップS29に移行する。
【0136】
ステップS28において、制御部50は、RAM46から読み出された当該個人情報を液晶表示部5fに表示して、処理をステップS29に移行する。
【0137】
ステップS29において、制御部50は、尿温測定実行ボタン5dが押下されたか否かを判定し、押下されたと判定するとステップS30に移行して、尿温測定実行信号送信処理を実行する。この場合は前述したステップS23においての尿温測定実行信号送信処理とは異なって、制御部50は、尿温測定装置本体6へ尿温測定装置4が個人測定モードを実行するための個人測定モードとして被験者の個人情報を含んだ形の尿温測定実行信号を送信する。この処理が終了すると、制御部50は、処理をステップS20へ戻す。
【0138】
このように、本実施形態に係る尿温測定装置4によれば、温度センサ11の計測値に影響を与える影響因子である環境温度、放尿距離、及び尿流率に基いて、温度センサ11の計測値に対する温度補正量を算出し、温度センサ11の計測値を、温度補正量によって補正することにより、排泄尿温を算出するので、温度センサ11と被験者の排泄口との距離が比較的に離れていても、影響因子による影響を受けることなく、正確な尿温度を測定することができる。
【0139】
なお、本実施形態の尿温測定装置4では、環境温度、放尿距離、及び尿流率に基いて、温度センサ11の計測値に対する温度補正量を算出するように構成したが、この構成に限られない。尿温度の要求される測定精度や装置の構成等によっては、例えば、環境温度、放尿距離、尿流率のうちいずれかの影響因子あるいは複数の影響因子の組合せに基いて、温度センサ11の計測値に対する温度補正量を算出するように構成しても良い。
【0140】
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0141】
例えば、本実施形態においては、温度センサ11、距離センサ12、及び水位センサ14を備え、制御部40は、影響因子状態取得手段として、温度センサ11、距離センサ12、及び水位センサ14を動作することによって、それぞれ、環境温度、放尿距離、及び尿流率を算出し、取得するように構成したが、かかる構成に加えて、画像解析装置を適所に備える構成としても良い。
【0142】
この構成では、制御部40のROM32に被験者の排泄する尿の横断面積に応じた温度補正量算出テーブルを予め記憶しておく。
【0143】
このように構成することによって、制御部40は、影響因子状態取得手段として、画像解析装置を動作することによって、被験者の排泄する尿の横断面積を画像解析することにより算出する。その後、制御部40は、排尿温度補正手段として、被験者の排泄する尿の横断面積を、ROM32から読み出した、被験者の排泄する尿の横断面積に応じた温度補正量算出テーブルに代入することによって、温度センサ11の計測値に対する温度補正量を算出するのである。
【0144】
[2.第2実施形態]
以下、本発明を適用した尿温測定装置の第2の実施形態について説明する。本実施形態では環境温度と被験者の個人身体情報とに基いて、温度センサ11の計測値に対する温度補正量を算出して、本発明における排泄尿温を推定するように構成されている。従って、本実施形態では、排泄尿温を測定するに際して必要な被験者の個人身体情報が予め入力されていることが必要になる。また、本実施形態では、個人身体情報として性別及び年齢を使用した例について説明する。
【0145】
図10は本実施形態におけるトイレシステム及び尿温測定装置の基本構成とその電気的関係とを示すブロック図である。
このように本実施形態を用いたトイレシステム101は、尿温測定装置104と、便器103と、便器103に組み込まれて人体局部を温水で洗浄する局部洗浄装置209と、を備えている。そして本実施形態における尿温測定装置104は、トイレブースの壁に取り付けられるリモコン装置105と、トイレブースの床面に設置された便器103に一体的に組み込まれた尿温測定装置本体106と、で構成されている。
【0146】
本実施形態における尿温測定装置104においては、距離センサ12と水位センサ14とを備えていない点が、第1の実施形態における尿温測定装置4と異なる。また、リモコン装置105の各操作ボタンの配置は、第1の実施形態におけるリモコン装置5と同じでスイッチボタン5b、5c、5d、5eを有している点は同じであるが、その機能が異なる。その他の構成は第1の実施形態における尿温測定装置4と共通するため、以下では、主として第1の実施形態と異なる部分について説明する。なお、用いる符号は第1の実施形態と同じ構成のものは同じ符号を使用してその詳細説明を省略する。
【0147】
[2.1.リモコン装置の構成及び動作]
リモコン装置105は、トイレシステム101を構成する尿温測定装置104と、便器103と、局部洗浄装置209と、を機能させるために必要な操作や、尿温測定結果やメッセージの表示等を行なうためにトイレブース内の壁面に設けられているものであり、その外観及び操作ボタン類の構成は前述したように、第1の実施形態における図3と同じものを使用している。
【0148】
リモコン装置105は、トイレシステム101を構成する各装置の動作を被験者Pが指示するための操作ボタン群からなる操作部160と、測定結果や各種のメッセージを表示するための表示部52と、トイレシステム101を構成する各装置との情報通信を行うための通信部58と、トイレシステム101を統括管理するための制御部150と、を有している。
【0149】
表示部52と通信部58とは第1の実施形態と同じ構成のものであり、表示部52は尿温測定結果やメッセージ等の表示を行ない、通信部58は尿温測定装置本体106との間で動作制御情報や測定結果情報をやりとりする。
【0150】
制御部150は、記憶部151と演算部152とを有しており、その具体的構成は第1の実施形態における制御部50と同じ構成である。
なお、被験者Pによる測定指示操作方法や温度補正量算出方法等が第1の実施形態と一部異なる部分があるので、制御部150の制御動作については後述する。
【0151】
操作部160は、トイレシステム101を構成する各装置の動作を指示するための動作指示ボタンユニット162と、個人情報の呼出し動作を指示する個人選択ボタン5eと、個人選択ボタン5e各々に記憶させる個人情報を入力したり、トイレシステム101を構成する各装置の機能を個人単位で調節する際に使用される個人情報設定ボタン5gを備えている。
【0152】
個人選択ボタン5eは第1の実施形態における図3と同様に、1〜3の番号を付したボタンから構成され、各々のボタンには、複数の被験者の個人情報が各々登録される。この個人情報には、本発明における個人身体情報としての性別及び年齢や、測定データの個人管理に必要な個人管理情報としての測定日時や名前等や、トイレシステム101を構成する各装置の動作、例えば局部洗浄装置のノズルの位置や水勢などのカスタマイズ情報が想定される。そして、これらの個人情報は個人選択ボタン5eの各々のボタンと対応付けて記憶部141に記憶されており、これらのボタンの操作に対応した信号が制御部150に送信される構成となっている。
【0153】
個人情報設定ボタン5gは第1の実施形態における図3と同様の構成であるが、この中で「登録」ボタンは、押し下げることによってリモコン装置105の動作モードを各種の個人情報を設定する「個人情報設定モード」に切り替えるときに使用する。また、その他の個人情報設定ボタン5gは、「個人情報設定モード」時に表示部52の表示を参照しながら適宜操作することによって、少なくとも個人身体情報としての被験者の性別及び年齢を含む各種の個人情報を入力するときに使用する。入力された被験者の個人情報は、個人選択ボタン5eと対応付けされて制御部150の記憶部151に記憶される。
【0154】
さらに、動作指示ボタンユニット162は、第1の実施形態における図3と同様に、トイレシステム101が備えている各装置の動作を指示する複数のボタンで構成される。即ち、便器103の動作を指示する複数の便器操作ボタン5bと、局部洗浄装置209の動作を指示する複数の局部洗浄装置操作ボタン5cと、尿温測定装置104の測定動作を指示する尿温測定実行ボタン5dと、で構成されている。
【0155】
排尿温度を測定する際には、まず被験者Pが自分の個人情報を登録したいずれかの個人選択ボタン5eを選択して押し下げると、そのボタンに対応して記憶部151に記憶されている被験者Pの個人身体情報を含む個人情報が呼び出されて表示部52に表示される。次に、被験者Pが尿温測定実行ボタン5dを押し下げるとこの呼び出された個人情報が、尿温測定実行信号の一部として通信部58を介して尿温測定装置本体106に送られ、通信部36を介して制御部140の記憶部141に記憶される。
【0156】
[2.2.尿温測定装置本体の構成]
尿温測定装置本体106は、温度測定ユニット10と、通信部36と、制御部140と、を備えているが、温度測定ユニット10と、通信部36はいづれも第1の実施形態と同じ構成のため説明は省略する。制御部140は、記憶部141と演算部142とを有しており、夫々の具体的構成は第1の実施形態と同じであるが、計測結果の補正処理方法等の制御動作が第1の実施形態と異なる部分があるので後述する。
なお、本実施形態の場合は、排尿温度計測結果の補正処理に使用する温度補正量算出テーブルとして、被験者の性別、年齢及び環境温度と温度補正量との関係を予め求めて尿温測定装置本体106の制御部140の記憶部141に登録したものを使用している。
【0157】
すなわち、本実施形態に係る尿温測定装置104では、環境温度をパラメータとした温度補正量データ及び個人身体情報に応じた温度補正量算出テーブルが記憶部141に予め記憶されている。そして、排尿温度補正手段は、記憶部141から読み出した温度補正量データに、計測した環境温度を代入することによって、温度センサ11の計測値に対する第1の温度補正量を算出し、かつ、記憶部141から読み出した温度補正量算出テーブルに個人身体情報を代入することによって、温度センサ11の計測値に対する第2の温度補正量を算出する。
【0158】
ここで、環境温度をパラメータとした温度補正量データとは、環境温度をパラメータとした補正式、補正テーブル等を含むデータである。
【0159】
また、個人身体情報に応じた温度補正量算出テーブルとは、個人身体情報として含まれる被験者Pの年齢及び性別に対応した温度補正量を示したテーブルであり、個人身体情報を代入することによって、それぞれの個人身体情報に応じた第2の温度補正量が算出されるものである。例えば、被験者Pが45歳の男性である場合には、第2の温度補正量が+0.02℃であると算出される。
【0160】
そして、排尿温度補正手段は、第1の温度補正量と第2の温度補正量とを加算することによって温度センサ11の計測値に対する温度補正量を算出し、算出した温度補正量と温度センサ11の計測値とを加算することによって、本発明における排泄尿温を算出する補正を行う。
【0161】
[2.3 尿温測定装置の動作]
次に、尿温測定装置104を用いて尿温を測定して排泄尿温を求める動作の一例について、図11及び図12を用いて具体的に説明する。ここで図11は、尿温測定装置104のリモコン装置105の制御部150が、被験者Pの操作ボタンの操作によって行う制御動作の流れを示すフローチャートである。また図12は、尿温測定装置本体106の制御部140が、リモコン装置105からの尿温測定実行信号を受信してから尿温を計測して排泄尿温を求めるまでに行う制御動作の流れを示すフローチャートである。
【0162】
[2.3.1 リモコン装置の動作]
図11で示すステップS101、S102において、制御部150は尿温測定装置本体106からの測定結果表示信号を受信すると、リモコン装置105の表示部に測定結果を表示する。
【0163】
ステップS103において、制御部150は、個人選択ボタン5eのいずれかのボタンが押下されたか否かを判定し、個人選択ボタン5eが押下されたと判定すると(ステップS103:Yes)、処理をステップS104に移行し、個人選択ボタン5eが所定時間内に押下げされていないと判定すると(ステップS103:No)、処理をステップS101へ戻す。
【0164】
ステップS104において、制御部150は、選択された個人選択ボタン5eの種類(番号)に対応した個人身体情報が記憶部151に記憶(登録)されているか否かを判定し、個人身体情報が登録されていると判定すると(ステップS104:Yes)、処理をステップS105に移行し、記憶部151に記憶されている個人身体情報を液晶表示部5fに表示する。この時、液晶表示部5fには表示内容の確認と、被験者Pによって操作すべき次の操作とを促すメッセージを併せて表示してステップS109に移行する。
【0165】
ステップS104において、個人身体情報が登録されていないと判定された場合(ステップS104:No)はステップS106において、制御部150は、個人情報設定ボタン5gの「登録」ボタンが押下されたか否かを判定し、押下されたと判定した場合は(ステップS106:Yes)、動作モードを個人情報登録モードに設定するとともに、被験者Pの個人身体情報を含む各種の個人情報の入力操作を促すメッセージを液晶表示部5fに表示してS107に移行する。なお、以下では前述の各種の個人情報の中、本発明に関係する個人身体情報の登録処理について説明する。
【0166】
ステップS107では、液晶表示部5fの表示内容に従って行われる被験者Pの個人情報設定ボタン5gの操作による個人身体情報に関する設定信号の受付けを行った後、ステップS108において個人情報登録処理を実行する。すなわち、制御部150は、被験者Pによって個人選択ボタン5e及び個人情報設定ボタン5gが操作されることにより入力される、少なくとも被験者Pの性別及び年齢を個人身体情報として含む個人情報を、選択された個人選択ボタン5eの種類(番号)に対応させて記憶部131に記憶(登録)する処理を行う。
【0167】
即ち、被験者が複数人の場合には、例えば、図3に示すように、個人選択ボタン5eのうち、1番のボタンと関連付けて45歳の男性、2番のボタンと関連付けて44歳の女性、3番のボタンと関連付けて15歳の男性等のように、個人身体情報が記憶部131に記憶される。この処理が終了すると、制御部50は、処理をステップS109に移行する。
【0168】
ステップS109において、制御部50は、尿温測定実行ボタン5d(図3の「測定」ボタン)が押下されたか否かを判定し、押下されたと判定するとステップS110に移行して、ステップS103で選択された個人選択ボタン5eの種類(番号)及び個人身体情報を含んだ個人情報信号と、尿温測定動作を実行させる制御信号とを含んだ尿温測定実行信号を作成して、尿温測定装置本体106へこの尿温測定実行信号の送信処理を実行する。この処理が終了すると、制御部150は、処理をステップS101へ戻す。
【0169】
[2.3.2 尿温測定装置本体の動作]
次に、尿温測定装置本体106の制御部140が行う制御動作の流れを図12を用いて以下に説明する。
【0170】
ステップS131において、制御部140はリモコン装置105から送られてくる尿温測定実行信号を通信部36を介して受信すると、個人情報特定処理を実行する。
この個人情報特定処理で特定される個人情報は以下の2種類に分けて特定される。
即ち、制御部140は、尿温測定実行信号に含まれる被験者Pの性別及び年齢を特定して個人身体情報として、また、選択された個人選択ボタン5eの種類(番号)とその時の時刻情報等とを個人データ管理情報として、両者を対応付けて記憶部141に記憶する。従って、このとき制御部140は、本発明における影響因子取得手段としても機能する。
【0171】
また、この処理によって、複数の被験者の各測定毎の測定データ等の情報が個人選択ボタン5eの種類(番号)と関係付けて記憶されるため、複数の被験者毎の測定データの履歴管理も可能となる。この処理が終了すると、処理をステップS132に移行する。
【0172】
ステップS132において、制御部140は、スイングアーム駆動部22を作動させてスイングアーム18を待機位置から受尿位置まで回動させ、受尿容器20の位置決めをする。この時、ステップS131において特定された被験者Pの個人身体情報に基づいて、性別及び年齢に対応した受尿容器の位置を規定して記憶部141に記憶されている受尿容器位置設定テーブルを参照することによって、被験者Pの排泄口Dの位置に最適な位置に受尿容器20、言い換えれば温度センサ11、が固定される。この処理が終了すると、制御部140は、処理をステップS133に移行する。
【0173】
ステップS133において、制御部140は、ステップS4と同様の処理によって、温度計測処理を実行し、この時の計測値を環境温度として記憶する。なお、この時は被験者Pが排泄を開始する前で、受尿容器20にはまだ排尿が当たらない状態であるとする。この処理が終了すると、制御部140は、処理をステップS134に移行する。
【0174】
ステップS134において、被験者Pが排泄を開始して受尿容器20に排尿が当たっている状態になると、制御部140は、ステップS6と同様の処理によって、尿温計測処理を実行し、この時の計測値を排尿温度として記憶する。この処理が終了すると、処理をステップS135に移行する。
【0175】
ステップS135において、制御部140は、ステップS131において特定されて記憶されている個人身体情報に応じた温度補正量算出処理を実行する。具体的には、制御部140は、ステップS131において特定した被験者Pの性別及び年齢を、予め記憶されている、個人身体情報に応じた温度補正量算出テーブルに入力することによって温度補正量を算出し、この温度補正量を第1の温度補正量として記憶する。この処理が終了すると、制御部140は、処理をステップS136に移行する。
【0176】
ステップS136において、制御部140は、環境温度に応じた温度補正量算出処理を実行する。具体的には、記憶部141から環境温度と排尿温度とをパラメータとした温度補正量テーブルを読み出して、この温度補正量テーブルに、ステップS133において記憶した環境温度と、ステップS134において記憶した排尿温度と、を入力することによって、温度センサ11の排尿温度の計測値に対する第2の温度補正量を算出し、この温度補正量を第2の温度補正量として記憶する。この処理が終了すると、制御部140は、処理をステップS137に移行する。
【0177】
ステップS137において、制御部140は、排泄尿温算出処理を実行する。具体的には、ステップS135において算出された第1の温度補正量と、ステップS136において算出された第2の温度補正量とを加算することによって、温度センサ11の排尿温度の計測値に対する温度補正量を算出する。その後、制御部140は、算出したこの温度補正量とステップS134において記憶した温度センサ11の計測値とを加算する。この処理によって、本発明における影響因子である環境温度と個人情報の両者を加味した尿温測定値の補正処理が完了して、本発明における排泄尿温が求められる。
【0178】
排泄尿温を算出すると、制御部140は、この排泄尿温の情報と個人特定情報とに基いて、リモコン装置5に送信するための制御信号である結果表示信号を生成する。この処理が終了すると、制御部140は、処理をステップS138に移行する。
【0179】
ステップS138において、制御部140は、結果表示信号送信処理を実行する。具体的には、制御部40は、ステップS137において生成した結果表示信号をリモコン装置105へ送信する処理を行う。この処理が終了すると、制御部140は、処理をステップS139に移行する。
【0180】
ステップS139において、制御部140は、受尿容器収納洗浄処理を実行する。この処理が終了すると、制御部140は、処理をステップS131へ戻し、尿温測定動作は全て終了する。
【0181】
なお、本実施形態の補正処理フローでは、ステップS135及びS136で夫々求めた補正量を、ステップS137で合算して補正を行っているが、本実施形態の影響因子である環境温度と性別と年齢から、温度補正テーブルを使用して、一ステップで補正量を求めるような処理フローとしても良い。
【0182】
また、本実施形態に係る尿温測定装置104では、被験者の個人身体情報として性別及び年齢を用いたが、この他にも被験者の排尿状態に関係する身体情報、例えば身長やBMIなどの体形に関係する指標なども含めた因子から適宜選択される因子を使用することが考えられる。
【0183】
本実施形態に係る尿温測定装置104によれば、個人情報と環境温度とに基いて温度補正量を求めるので、環境温度による影響、及び被験者の性別及び年齢による影響を受けることなく、正確な尿温度の測定をすることができる。
【0184】
また、第1実施形態における距離センサ12や水位センサ14などの特別な構成を必要としないため、より安価な尿温測定装置とすることが出来る。
【0185】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る尿温測定装置及び尿温測定装置を備えたトイレシステムを示す外観斜視図である。
【図2】図1に示すトイレシステムが備えた便器の側断面図である。
【図3】図1に示すトイレシステムが備えたリモコン装置の外観斜視図である。
【図4】第1の実施形態における尿温測定装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施形態におけるリモコン装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】放尿距離に対する排尿温度と温度センサによる尿温の計測値との差との関係を示した説明図である。
【図7】尿流率に対する温度センサの計測誤差との関係を示した説明図である。
【図8】第1の実施形態における尿温測定装置の制御部が実行する制御を示すフローチャートである。
【図9】第1の実施形態におけるリモコン装置の制御部が実行する制御を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る尿温測定装置及び尿温測定装置を備えたトイレシステムの構成を示すブロック図である。
【図11】第2の実施形態におけるリモコン装置が実行する制御動作を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態における尿温測定装置本体が実行する動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0187】
1 トイレシステム
2 トイレブース
3 便器
3a リム部
3b ボール
4 尿温測定装置
5 リモコン装置
5a 筐体
5b 便器操作ボタン
5c 局部洗浄装置操作ボタン
5d 尿温測定実行ボタン
5e 個人選択ボタン
5f 液晶表示部
5g 個人情報設定ボタン
6 尿温測定装置本体
7 便座
8 便蓋
9 局部洗浄装置
10 温度測定ユニット
11 温度センサ
12 距離センサ
14 水位センサ
16 支持ボックス
18 スイングアーム
20 受尿容器
22 スイングアーム駆動部
30 CPU
32 ROM
33 EEPROM
34 RAM
36 通信部
40 制御部
42 CPU
44 ROM
45 EEPROM
46 RAM
50 制御部
52 表示部
54 操作ボタンユニット
56 設定ボタンユニット
58 通信部
101 トイレシステム
103 便器
104 尿温測定装置
105 リモコン装置
106 尿温測定装置本体
140 制御部
141 演算部
142 記憶部
150 制御部
151 演算部
152 記憶部
160 操作部
162 動作指示ボタンユニット
209 局部洗浄装置
D 排泄口
P 被験者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の排泄口から体外に排泄された尿である排泄尿の温度を測定する尿温測定装置において、
前記被験者の排泄尿の温度を計測する尿温計測手段と、
前記尿温計測手段の計測値に影響を与える影響因子の状態を取得する影響因子状態取得手段と、
前記影響因子状態取得手段により取得された前記影響因子の状態に基いて、前記尿温計測手段の計測値に対する温度補正量を算出し、前記尿温計測手段の計測値を前記温度補正量によって補正することにより、排泄直後の尿温である排泄尿温を算出する排尿温度補正手段と、を有することを特徴とする尿温測定装置。
【請求項2】
前記影響因子は、少なくとも排尿軌跡近傍の空気温度である環境温度を含むことを特徴とする請求項1に記載の尿温測定装置。
【請求項3】
前記影響因子は、少なくとも前記被験者の排泄口の位置から尿温計測手段の位置までの距離である放尿距離を含むことを特徴とする請求項1に記載の尿温測定装置。
【請求項4】
前記影響因子は、少なくとも単位時間当りの排尿量である尿流率を含むことを特徴とする請求項1に記載の尿温測定装置。

【請求項5】
前記影響因子は、被験者の性別及び年齢たる個人身体情報、及び排尿軌跡近傍の空気温度たる環境温度であることを特徴とする請求項1に記載の尿温測定装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の尿温測定装置を備えたトイレシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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