説明

尿温測定装置

【課題】便器の交換などを必要とすることなく、利用者の尿温を適切に測定することが可能な尿温測定装置を提供する。
【解決手段】尿温測定装置100は、洋式便器200の辺縁部210を辺縁保持部70で保持した状態で、温度センサを湾曲自在なフレキシブルアーム30で便器内部の任意の位置に配置することができる。従って、便器を交換するような大規模な工事を必要とすることなく、既存の洋式便器200の内部に温度センサを配置することができる。しかも、様々な利用者ごとに尿水が適切に供給される位置に温度センサを配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿水の温度である尿温を測定する尿温測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
より正確な体の深部体温を測定する方法として、尿水の温度である尿温を用いることが試みられている。これに対応して、利用者が排泄した尿水の温度を測定する尿温測定装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、船底形の採尿容器の底部に形成された尿溜まり(採尿容器)と、この尿溜まりに面して設けられたサーミスタとを備えた尿温測定装置が記載されている。
【0004】
この尿溜まりには、小径の流出口がサーミスタの下方に開口形成されている。そして、特許文献1の温測定装置は、採尿容器に貯留された尿水に浸漬されたサーミスタで尿温を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−73314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された尿温測定装置は、洋式便器に一体に内蔵されている。このため、既存の一般的な便器の利用者は利用することができず、利用するためには便器を交換する大規模な工事が必要となる。
【0007】
しかも、特許文献1の尿温測定装置では、出没自在なアーム機構で温度センサを便器内部の所定位置に配置する。しかし、いわゆる洋式便器の利用者だけでも、例えば、立ち姿勢の男性、着座姿勢の男性、着座姿勢の女性、前後逆様の着座姿勢の男性幼児、前後逆様の着座姿勢の女性幼児、が想定される。
【0008】
これらの利用者では、尿水の排泄が開始される位置も、排泄された尿水が洋式便器に投入される軌跡も、相違している。従って、特許文献1の尿温測定装置では、利用者によっては尿水が温度センサに適切に供給されず、尿温が正確に測定されない可能性が高い。
【0009】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、便器の交換を必要とすることもなく、利用者の尿温を適切に測定することが可能な尿温測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の尿温測定装置は、感温部を備える温度センサと、少なくとも洋式便器の辺縁部を保持する辺縁保持部と、温度センサで検出された尿温を表示出力する尿温表示部と、辺縁保持部に末端部が固定されていて先端部に装着されている温度センサの位置が可変自在な可変支持機構と、を有する。
【0011】
従って、本発明の尿温測定装置では、温度センサが感温部を備える。少なくとも洋式便器の辺縁部を着脱自在に辺縁保持部が保持する。温度センサで検出された尿温を尿温表示部が表示出力する。辺縁保持部に末端部が固定されている可変支持機構の先端部に装着されている温度センサの位置が可変自在である。このため、本実施の形態の尿温測定装置では、少なくとも洋式便器の辺縁部を辺縁保持部で保持した状態で、温度センサが可変支持機構で便器内部の任意の位置に配置される。
【0012】
また、上述のような尿温測定装置において、可変支持機構が、湾曲自在なフレキシブルアームからなってもよい。
【0013】
また、上述のような尿温測定装置において、フレキシブルアームが伸縮自在に形成されていてもよい。
【0014】
また、上述のような尿温測定装置において、可変支持機構は、排泄される尿水が供給されるとともに洋式便器の洗浄水で洗浄される位置に温度センサを配置してもよい。
【0015】
また、上述のような尿温測定装置において、排泄される尿水が供給される位置に配置された温度センサに洋式便器の洗浄水を誘導する導水部材を、さらに有してもよい。
【0016】
また、上述のような尿温測定装置において、辺縁保持部が、洋式便器の辺縁部を上方から挟持するコ字状の断面形状に形成されており、尿温表示部が、辺縁保持部の上面に配置されていてもよい。
【0017】
また、上述のような尿温測定装置において、辺縁保持部が、洋式便器の辺縁部を上方から挟持するコ字状の断面形状に形成されており、尿温表示部が、辺縁保持部から側方に突出していてもよい。
【0018】
また、上述のような尿温測定装置において、辺縁保持部が、開閉自在で弾発的に閉止されるコ字状に形成されていてもよい。
【0019】
また、上述のような尿温測定装置において、辺縁保持部が、洋式便器のU型便座の先端の間隙に位置する形状に形成されていてもよい。
【0020】
また、上述のような尿温測定装置において、利用者による利用開始を検出する利用検出部と、検出された利用開始に対応して温度センサと尿温表示部とを起動する処理制御部と、を有してもよい。
【0021】
また、上述のような尿温測定装置において、利用開始が検出されてから所定時間が経過しても温度センサで尿温が検出されないとエラー音を報知出力するエラー報知部を、さらに有してもよい。
【0022】
また、上述のような尿温測定装置において、利用検出部は、利用者の接近を検出する人感センサからなってもよい。
【0023】
また、上述のような尿温測定装置において、利用検出部は、洋式便器の便座の圧力を検出する感圧センサからなってもよい。
【0024】
また、上述のような尿温測定装置において、排泄されて空中を落下する尿水を受け止めてから流出させる尿受部材を、さらに有し、感温部が、空中を落下する尿水と尿受部材に衝突した尿水とがともに流動して尿受部材から流出する尿水に浸漬しない位置に配置されていてもよい。
【0025】
なお、上記発明において、対象物が尿水に浸漬するとは、凹部に貯留された尿水に対象物がひたされることを意味する。また、感温部が尿受部材から流出する尿水に浸漬しない位置に配置されているとは、成人の標準的な排尿の軌跡で排泄された尿水の全量を尿受部材で受けたときに、尿水が尿受部材に貯留されることなく感温部を流下するか、または尿受部材に貯留された尿水が感温部に接触せずに流下することをいう。
【0026】
また、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の尿温測定装置では、少なくとも洋式便器の辺縁部を辺縁保持部で保持した状態で、温度センサを湾曲自在なフレキシブルアームで便器内部の任意の位置に配置することができる。従って、便器を交換するような大規模な工事を必要とすることなく、既存の洋式便器の内部に温度センサの感温部を配置することができる。しかも、様々な利用者ごとに尿水が適切に供給される位置に温度センサの感温部を配置することができるので、様々な利用者の利用形態に対応して尿温を適切に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる尿温測定装置を示す斜視図である。
【図2】感温部および尿受部材を拡大した斜視図である。
【図3】第二実施形態の尿温測定装置の先端部を示す斜視図である。
【図4】第三実施形態の尿温測定装置の先端部を示す斜視図である。
【図5】第四実施形態の尿温測定装置の先端部を示す斜視図である。
【図6】一変形例の尿温測定装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0030】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態にかかる尿温測定装置100を示す斜視図、図2は尿温測定装置100の先端部を示す拡大した斜視図、である。
【0031】
本実施の形態の尿温測定装置100は、図1に示すように、感温部12を備える温度センサ10と、少なくとも洋式便器200の辺縁部210を着脱自在に保持する辺縁保持部70と、温度センサ10で検出された尿温を表示出力する尿温表示部72と、辺縁保持部70に末端部が固定されていて先端部に装着されている温度センサ10の位置が可変自在な可変支持機構であるフレキシブルアーム30と、を有する。
【0032】
さらに、本実施の形態の尿温測定装置100では、フレキシブルアーム30が湾曲自在かつ伸縮自在に形成されている。このため、フレキシブルアーム30は、排泄される尿水が供給されるとともに洋式便器200の洗浄水で洗浄される位置に温度センサ10を配置することができる。
【0033】
また、辺縁保持部70が、洋式便器200の辺縁部210を上方から挟持するコ字状の断面形状に形成されており、尿温表示部72が、辺縁保持部70の上面に配置されている。
【0034】
さらに、本実施の形態の尿温測定装置100は、図2に示すように、排泄されて空中を落下する尿水U1を受け止めてから流出させる尿受部材20も有する。そして、感温部12が、空中を落下する尿水U1と尿受部材20に衝突した尿水U2とがともに流動して尿受部材20から流出する尿水に浸漬しない位置に配置されている。そして、感温部12は、落下中の尿水U1,U2の温度を測定するよう構成されている。
【0035】
次に、本実施形態について詳細に説明する。本実施形態の尿温測定装置100は、図1に示すように、いわゆるU型便座220の洋式便器200での使用を想定されている。U型便座220は、文字通り後端部に間隙221が拡開している。
【0036】
そこで、本実施の形態の尿温測定装置100では、一般的なU型便座220の間隙221の位置で洋式便器200の辺縁部210に上方から装着される構造に辺縁保持部70が形成されている。
【0037】
辺縁保持部70の前面には、細長形状のフレキシブルアーム30が装着されている。フレキシブルアーム30は、いわゆる蛇腹構造に形成されており、湾曲自在であるとともに伸縮自在である。
【0038】
フレキシブルアーム30の内部には温度センサ10が設けられている。具体的には、温度センサ10の信号線16がフレキシブルアーム30に挿通されており、フレキシブルアーム30の最先端位置には感温部12が設けられて信号線16が接続されている。感温部12による温度測定結果にかかる信号は、信号線16を通じて辺縁保持部70に伝送される。
【0039】
辺縁保持部70の内部には制御部(図示せず)が設けられている。制御部の具体的な動作の説明は省略するが、感温部12から信号線16を通じて伝送された信号を読みとって温度データに換算し、この測定温度を尿温表示部72に表示出力する。
【0040】
温度センサ10には、熱電対や、白金センサやサーミスタなどの測温抵抗式の温度センサを用いることができる。そして、熱電対や測温抵抗体が感温部12にあたる。
【0041】
本実施形態の尿温表示部72は、小数点以下第二位までの摂氏温度の表示形式で測定温度を表示する。かかる測定精度で尿温を測定する場合、特許文献1のように採尿容器に尿水を貯留して温度測定する方式では、貯留されている間の温度変化の影響が無視できなくなる。
【0042】
これに対し、本実施形態の尿温測定装置100は、流下中の尿水U1,U2の温度を測定することができるため、排泄されてから温度測定されるまでの尿温の変化を低減することが可能であり、小数点以下第二位のオーダーの測定精度を実現することができる。そして、このオーダーで尿温を測定することで、例えば、病気の発症前の体調変化や、基礎体温の周期的な変化を検知することが可能となる。
【0043】
辺縁保持部70には、温度測定の動作を指示するための操作ボタンを備えている。本実施形態では、一例として、利用検出部である電源ボタン76とリセットボタン77とが辺縁保持部70の上面に尿温表示部72とともに配列されている。
【0044】
電源ボタン76を押下すると、制御部は温度センサ10に電力を供給し、尿温を測定可能なスタンバイ状態とする。また、リセットボタン77を押下すると、尿温表示部72に表示された前回の温度測定結果がクリアされる。
【0045】
このほか、辺縁保持部70には、温度測定結果を外部機器に出力するためのインタフェースや操作ボタンを任意で設けてもよい。また、尿温表示部72の表示出力は所定時間の経過により自動的に消灯されてもよい。
【0046】
本実施形態の尿温測定装置100は、尿受部材20を備えている。尿受部材20は、排泄された尿水を受け止めて、その少なくとも一部を感温部12に向けて案内するための部材である。尿受部材20は、熱伝導率が低く、撥水性が良好で水滴が滞留しにくく、尿石などの汚損が滞積しにくい、樹脂やセラミックなどで形成される。
【0047】
尿受部材20の具体的な形状は特に限定されず、半割筒状や本実施形態のような椀状などの曲面状のほか、後述する第三実施形態のような網状(メッシュ状)や、第四実施形態のような螺旋状など、種々の形態を採ることができる。
【0048】
尿受部材20は感温部12の周囲またはその上方に設けられている。本実施形態でいう上方とは、ユーザが辺縁保持部70を把持した場合に上側にあたる、尿水の流入側を便宜的に規定するものである。
【0049】
尿受部材20は、無底の椀状または筒状をなしている。尿水U3の流出口24は、尿水U1の流入口22と略同径またはそれ以上である。ここで、流出口24と流入口22と略同径であるとは、流出口24の開口面積が流入口22の開口面積の二分の一以上であるこという。
【0050】
流出口24は、流入口22よりも大径でもよい。流出口24を流入口22よりも小径とする場合、尿受部材20に流入した尿水U1,U2が尿受部材20の内部で滞留しないよう、流出口24を充分な開口面積とする。
【0051】
尿受部材20は、成人の標準的な最大尿流率の尿水が持続的に尿受部材20に供給された場合にも、尿受部材20に尿水の滞留領域が形成されないか、またはこの滞留領域の外部に感温部12が設けられており、感温部12は尿水に浸漬することがない。
【0052】
流出口24の開口面積は、成人の標準的な尿水の流束の断面積よりも大きい。より具体的には、流出口24は、成人の標準的な最大尿流率である15ml/秒の尿水が持続的に通過可能な開口面積を有している。
【0053】
さらに、流出口24は、15ml/秒の流量の尿水が、感温部12の位置を起点(速度ゼロ)として自由落下した場合にも、当該尿水が尿受部材20の内部で滞留することなく通過可能なだけの開口面積を有している。
【0054】
本実施形態の尿受部材20は、下方(流出口24側)に向かって凸となる無底の椀状をなしている。尿受部材20はフレキシブルアーム30の先端部に固定されており、感温部12は尿受部材20の内側に突出した位置に、かつ尿受部材20から離間して設けられている。
【0055】
図2は、感温部12および尿受部材20の拡大図である。フレキシブルアーム30の一部と辺縁保持部70は図示を省略している。同図を用いて、本実施形態の尿温測定装置100による尿温測定方法(以下、本方法という場合がある)を説明する。
【0056】
本方法は、感温部12を備える温度センサ10および尿受部材20を有する尿温測定装置100によって尿水U1,U2の温度を測定する方法に関する。そして本方法では、排泄されて空中を落下する尿水U1と尿受部材20に衝突した尿水U2とがともに通過する位置で尿受部材20から流出する尿水U3に浸漬しない位置の感温部12によって、落下する尿水U1,U2の温度を測定する。
【0057】
利用者が排泄した尿水の一部(尿水U1)は直接に感温部12に衝突し、他の一部(尿水U2)は尿受部材20の内側面26で向きを変えられて飛散する。飛散した尿水U2の少なくとも一部は感温部12と接触する。感温部12に接触した尿水U1,U2は、感温部12の周囲で滞留することなく流出口24より尿水U3として流下する。
【0058】
また、空気は熱容量が小さいため、空中を落下する尿水U1は、ほぼ深部体温を保ったままで感温部12に至る。尿受部材20で衝突した尿水U2に関しても、尿受部材20との衝突時間は一瞬であるため、尿受部材20と尿水U2との熱授受は僅かである。
【0059】
そして、感温部12の取り囲む尿受部材20に衝突した尿水U2は全周囲から感温部12に向かって反射する。このため、ほぼ深部体温を保った尿水U1,U2が感温部12に多量に供給されて尿温が測定される。
【0060】
また、本実施の形態の尿温測定装置100は、洋式便器200に常設しておくことができるので、利用者は日常的に自身の尿温を測定することができる。このため、腋下温度をあえて測定する動機づけに至らない未病状態などにおいても、僅かな体調の悪化を検知することができる。
【0061】
そして、本実施の形態の尿温測定装置100では、洋式便器200の辺縁部210を辺縁保持部70で保持した状態で、温度センサ10を湾曲自在なフレキシブルアーム30で便器内部の任意の位置に配置することができる。従って、便器を交換するような大規模な工事を必要とすることなく、既存の洋式便器200の内部に温度センサ10を配置することができる。
【0062】
しかも、立ち姿勢の男性、着座姿勢の男性、着座姿勢の女性、前後逆様の着座姿勢の男性幼児、前後逆様の着座姿勢の女性幼児、等の様々な利用者ごとに尿水が適切に供給される位置に温度センサ10の感温部12を配置することができるので、様々な利用者の利用形態に対応して尿温を適切に測定することができる。
【0063】
さらに、上述のように尿水が適切に供給されるような位置でありながらも、洋式便器200の洗浄水で洗浄される位置に、温度センサ10の感温部12や尿受部材20を配置することができる。
【0064】
この場合、感温部12や尿受部材20を利用するごとに自動的に洗浄することができるので、手作業で感温部12や尿受部材20を洗浄せずとも、常時衛生的に尿温測定装置100を利用することができる。
【0065】
<第二実施形態>
図3は本実施形態にかかる尿温測定装置100の先端部を示す斜視図である。本実施形態の尿受部材20は無底の筒状をなし、その軸方向(同図の上下方向)が尿水U1,U2の通過方向にあたる。
【0066】
より具体的には、本実施形態の尿受部材20は、流入口22から流出口24に向かって縮径するテーパー管状をなしている。ただし、流出口24は、流下する尿水U3の流量に比べて充分な開口面積を有しており、尿水U3は尿受部材20の内部に貯留されることはない。
【0067】
また、尿水U1,U2の流量が多く、流出口24の近傍に尿水が滞留したとしても、感温部12は尿受部材20の略中央またはその上方に設けられているため、滞留した尿水に感温部12が浸漬することはない。
【0068】
尿受部材20には、温度センサ10の先端部18が貫入している。温度センサ10の先端部18には感温部12が設けられており、感温部12は尿受部材20の内側に内包されている。
【0069】
尿受部材20の少なくとも一部は、尿水U1の流入側に向かって凸状に形成されている。本実施形態の場合、テーパー管状の尿受部材20の内側面26は流入口22および内側に向かって凸状をなしている。
【0070】
これにより、尿水U2は内側面26で反射したのち、尿受部材20の略中央に配置された感温部12に向かって飛散する。言い換えると、尿水U2のうち、内側面26の表面に沿って流れ落ちる流量を低減し、内側面26で反射して感温部12に到達する流量を増大させることができる。
【0071】
本実施形態の尿温測定装置100は、感温部12の少なくとも一部が尿水U1の流下方向に延在している。尿水U1の流下方向は上下方向であり、感温部12はフレキシブルアーム30から尿受部材20の軸方向に沿って流入口22側または流出口24側の一方または両方に向かって延在している。図3に示す本実施形態の温度センサ10の場合、感温部12の全体を含む温度センサ10の先端部18が流入口22に向かって屈曲形成されている。
【0072】
これにより、空中を落下する尿水U1と、内側面26で反射した尿水U2が、ともに感温部12の延在方向(長手方向)に沿って流下することとなり、尿水U1,U2と感温部12との接触時間を長くすることができる。
【0073】
従って、尿受部材20によって尿水U2を感温部12に案内する機能とあいまって、尿水U1,U2を感温部12に対して充分に接触させることができるため、尿温を適切に測定することが可能である。
【0074】
なお、本実施形態に代えて、温度センサ10の先端部18を流出口24に向けて屈曲形成してもよく、または先端部18をT字状として、流入口22および流出口24の双方に向かって感温部12を両側に延在させてもよい。
【0075】
なお、上述のような形状に尿受部材20を形成しても、やはり排泄される尿水が良好に供給される位置でありながら、洋式便器200の洗浄水で洗浄される位置に、温度センサ10の感温部12や尿受部材20を配置することができる。
【0076】
このため、感温部12や尿受部材20を利用するごとに自動的に洗浄することができるので、手作業で感温部12や尿受部材20を洗浄せずとも、常時衛生的に尿温測定装置100を利用することができる。
【0077】
<第三実施形態>
図4は本実施形態にかかる尿温測定装置100の先端部を示す斜視図である。本実施形態の尿受部材20は、感温部12を内部に収容する網状体である。より具体的には、本実施形態の尿受部材20は上方開口した椀状をなしている。
【0078】
流入口22は、開口部に周設されたフレーム部23によって画成されている。一方、網状体からなる本実施形態の尿受部材20は、椀状の周面の全体が流出口24となって尿水U3を流下させる。
【0079】
尿受部材20は、所定の太さの線材を編組してなる。線材同士のピッチは線材の太さよりも大きい。言い換えると、尿受部材20の目開きの面積は、線材部分の面積よりも大きい。
【0080】
これにより、尿水U1,U2が感温部12の周囲に滞留することなく尿水U3として尿受部材20を通過することができる。また、尿受部材20に衝突した尿水U2の一部の飛沫は反射して感温部12に到達し、空中を落下する尿水U1とともに、感温部12で尿温が測定される。
【0081】
一方、尿水U2の他の一部は尿受部材20の網目に付着して熱を授受し、尿受部材20および感温部12の周囲の雰囲気を利用者の体温に近づける。これにより、尿温が測定される尿水U1,U2と雰囲気との熱授受が低減される。
【0082】
つまり、本実施形態の尿受部材20では、尿受部材20と感温部12とが離間しているため、尿受部材20の網目に付着して雰囲気を加温(雰囲気が体温よりも高温の場合は冷却)する尿水U2と、尿受部材20で反射して感温部12で温度測定に供される尿水U1,U2とが区別される。これにより、尿受部材20および雰囲気と熱授受して温度降下(または温度上昇)した尿水U2によって温度測定結果に測定誤差が生じることが防止される。
【0083】
なお、上述のような形状に尿受部材20を形成しても、やはり排泄される尿水が良好に供給される位置でありながら、洋式便器200の洗浄水で洗浄される位置に、温度センサ10の感温部12や尿受部材20を配置することができる。
【0084】
このため、感温部12や尿受部材20を利用するごとに自動的に洗浄することができるので、手作業で感温部12や尿受部材20を洗浄せずとも、常時衛生的に尿温測定装置100を利用することができる。
【0085】
<第四実施形態>
図5は本実施形態にかかる尿温測定装置100の先端部を示す斜視図である。本実施形態の尿受部材20は、温度センサ10の先端部18を螺旋状に巻成してなり、温度センサ10の感温部12は、螺旋状の尿受部材20の先端に設けられている。
【0086】
すなわち、温度センサ10が内部に設けられたフレキシブルアーム30と一体に形成されている螺旋状の先端部が尿受部材20を構成している。尿受部材20は螺旋テーパー状をなし、先端側にあたる流出口24の径よりも、基端側にあたる流入口22の径の方が大きい。
【0087】
これにより、利用者が排泄した尿水U1,U2は、大径の流入口22によって捕集され、小径の流出口24の略中央に位置する感温部12に向かって案内される。ここで、流入口22の径は、螺旋状の尿受部材20のもっとも基端側の周回の巻径であり、流出口24の径は、螺旋状の尿受部材20のもっとも先端側の周回の巻径である。
【0088】
尿水U1は、空中を落下して感温部12に直接に到達する尿である。尿水U2は、尿受部材20に衝突し、螺旋の内側に飛散して感温部12に到達する尿である。また、尿水U4は、尿受部材20の螺旋に沿って流下して感温部12に到達する尿である。そして、尿水U3は、尿受部材20から排出される尿である。
【0089】
本実施形態の尿受部材20は、尿水U3が滞留することがないよう、流出口24が充分な開口面積を有している。これにより、感温部12では、流下中の尿水U1,U2,U4の温度が測定される。
【0090】
尿受部材20に沿って渦状に流れる尿水U4は尿受部材20の螺旋部分と接触して所定の熱授受がなされるものの、棒状のフレキシブルアーム30は表面積が僅かであり尿水U4の温度変化は限定的である。このため、貯留された尿水の温度を測定する従来の尿温測定装置に比べて、高い測定精度で尿温を測定することが可能である。
【0091】
本実施形態の尿温測定装置100によれば、螺旋テーパー状の尿受部材20によって利用者の尿水を感温部12に向かって良好に案内することができる。また、尿受部材20には尿水が貯留されないため、尿受部材20との熱授受が抑制された尿水の温度を感温部12によって測定することができる。
【0092】
なお、上述のような形状に尿受部材20を形成しても、やはり排泄される尿水が良好に供給される位置でありながら、洋式便器200の洗浄水で洗浄される位置に、温度センサ10の感温部12や尿受部材20を配置することができる。
【0093】
このため、感温部12や尿受部材20を利用するごとに自動的に洗浄することができるので、手作業で感温部12や尿受部材20を洗浄せずとも、常時衛生的に尿温測定装置100を利用することができる。
【0094】
<第五実施形態>
図6は、本発明の第一実施形態にかかる尿温測定装置300を示す斜視図である。本実施の形態の尿温測定装置300では、辺縁保持部70が、洋式便器200の辺縁部210を上方から挟持するコ字状の断面形状に形成されており、尿温表示部72が、辺縁保持部70から側方である後方に突出している。
【0095】
次に、本実施形態について詳細に説明する。本実施形態の尿温測定装置100は、いわゆるO型便座410の洋式便器400での使用に適用できるものである。本実施の形態の尿温測定装置100の辺縁保持部70を洋式便器400の辺縁部210に装着してから、O型便座410を着座位置に配置しても、同図(b)に示すように、このO型便座410から外側に尿温表示部72が電源ボタン76およびリセットボタン77とともに突出する。
【0096】
このため、本実施の形態の尿温測定装置300は、洋式便器400のO型便座410を着座位置に配置しても、尿温表示部72と電源ボタン76とリセットボタン77とを問題なく利用することができる。
【0097】
なお、本実施の形態の尿温測定装置300は、前述したU型便座220の洋式便器200の左方や右方の辺縁部210に辺縁保持部70を装着する場合にも利用することができる(図示せず)。
【0098】
そして、本実施の形態の尿温測定装置300でも、洋式便器400の辺縁部210を辺縁保持部70で保持した状態で、温度センサ10を湾曲自在なフレキシブルアーム30で便器内部の任意の位置に配置することができる。従って、便器を交換するような大規模な工事を必要とすることなく、既存の洋式便器400の内部に温度センサ10を配置することができる。
【0099】
しかも、立ち姿勢の男性、着座姿勢の男性、着座姿勢の女性、前後逆様の着座姿勢の男性幼児、前後逆様の着座姿勢の女性幼児、等の様々な利用者ごとに尿水が適切に供給される位置に温度センサ10を配置することができるので、様々な利用者の利用形態に対応して尿温を適切に測定することができる。
【0100】
なお、上述のような形状に尿受部材20を形成しても、やはり排泄される尿水が良好に供給される位置でありながら、洋式便器200の洗浄水で洗浄される位置に、温度センサ10の感温部12や尿受部材20を配置することができる。
【0101】
このため、感温部12や尿受部材20を利用するごとに自動的に洗浄することができるので、手作業で感温部12や尿受部材20を洗浄せずとも、常時衛生的に尿温測定装置100を利用することができる。
【0102】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。例えば、上記形態では一般的な洋式便器200等の辺縁部210の板厚が略一定であることを前提として、尿温測定装置100,300の辺縁保持部70が固定的なコ字状に形成されていることを例示した。
【0103】
しかし、尿温測定装置の辺縁保持部が開閉自在で弾発的に閉止されるコ字状に形成されていてもよい(図示せず)。この場合、洋式便器200等の辺縁部210の各種の板厚に対応することができ、より確実に洋式便器200等の辺縁部210に尿温測定装置の辺縁保持部を装着することができる。
【0104】
また、本実施の形態の尿温測定装置100等では、電源ボタン76の手動操作により起動することを例示した。しかし、このような尿温測定装置が、利用者による利用開始を検出する利用検出部として人感センサや感圧センサなどを有し、検出された利用開始に対応して温度センサと尿温表示部とを処理制御部(図示せず)で自動的に起動してもよい(図示せず)。
【0105】
さらに、本実施の形態の尿温測定装置100等では、フレキシブルアーム30により所望の位置に温度センサ10が配置されることにより、その感温部12に尿水が適切に供給されるものとして説明した。
【0106】
しかし、それでも尿水が適切に供給されないこともある。このような場合に尿温測定装置がエラー音を出力したり、尿水が適切に供給されているときに所定音を出力することなどにより、尿水の排泄方向の修正を誘導してもよい(図示せず)。
【0107】
また、上述のように人感センサや感圧センサで人間を検出してから所定時間が経過しても温度センサ10が尿温を検出しないときに、エラー音を発生して尿水の排泄方向の修正を誘導してもよい(図示せず)。
【0108】
また、上記形態では温度センサ10で尿温のみ直接に検出することを例示した。しかし、起動時などに温度センサ10で雰囲気温度を検出してから尿温を検出し、この検出される尿温を雰囲気温度に対応して補正してもよい。
【0109】
また、上記形態では尿受部材20が、排泄されて空中を落下する尿水U1を受け止めてから流出させるとともに、温度センサ10の感温部12に誘導する形状に形成されていることのみ例示した。
【0110】
しかし、前述のように尿受部材20と温度センサ10の感温部12との部分を、洋式便器200等の洗浄水で洗浄される位置に配置することもできる。そこで、このような洗浄水で感温部12などが適切に洗浄される形状に、尿受部材が形成されていてもよい(図示せず)。
【0111】
例えば、洋式便器200等には、洗浄水を螺旋状に流動させる方式と略垂直に流動させる方式がある。そこで、このような洗浄水を良好に受水するように、尿受部材の形状を工夫してもよい(図示せず)。
【0112】
さらに、上記形態では排泄される尿水が供給されるとともに洋式便器200の洗浄水で洗浄される位置に、温度センサ10をフレキシブルアーム30で配置することを例示した。
【0113】
しかし、排泄される尿水が供給される位置にフレキシブルアーム30で配置された温度センサ10に導水部材(図示せず)で洗浄水を誘導してもよい。この場合、尿水は適切に供給されるが洗浄水は供給されない位置に温度センサ10を配置しても、その温度センサ10に洗浄水を供給して洗浄することができる。
【0114】
このような導水部材は、例えば、尿受部材と一体に形成することができる。例えば、図2に示すように、感温部12の周囲を椀状に包囲する尿受部材20ならば、これを利用して洗浄水を感温部12に誘導することができる。
【0115】
この場合、尿受部材20は、尿温の測定時には、尿水を感温部12に誘導することになり、洗浄時には、洗浄水を感温部12に誘導することになる。つまり、尿受部材と導水部材とを一個の部材で形成することができる。
【0116】
さらに、本実施の形態の尿温測定装置100,300は、少なくとも洋式便器200,400の辺縁部210に装着されることを必須としている。しかし、このような尿温測定装置100,300を和式便器に装着することも不可能ではない(図示せず)。
【0117】
また、本発明の尿温測定装置100は、尿温以外の生体パラメータも尿水より取得してもよい。一例として、尿水U1,U2に含まれる尿糖の量を計測する尿糖計の機能を有してもよい。
【0118】
具体的には、温度センサ10の感温部12と同位置に、尿糖値を測定するバイオセンサを並設するとよい。バイオセンサとしては、例えば、尿中のグルコースを酵素によって過酸化水素に変え、その過酸化水素の量を測定する、いわゆる酵素電極法に基づく尿糖計を用いることができる。
【0119】
そして、尿温測定装置100の制御部では、温度センサ10による尿温の測定結果を用いて、尿糖計の測定結果を温度補償してもよい。具体的には、制御部は、温度センサ10による測定温度を取得する尿温取得部と、尿糖計で測定された尿糖値を取得する尿糖値取得部と、尿温と補正係数とを対応付けた記憶部と、取得した測定温度に対応する補正係数を記憶部から呼び出して尿糖値(取得値)を補正する尿糖値補正部と、を備えるとよい。これにより、本発明による高精度の尿温測定結果を用いて尿糖値を温度補償することができるため、尿糖値に関しても適切に測定することが可能となる。
【符号の説明】
【0120】
10 温度センサ
12 感温部
16 信号線
18 先端部
20 尿受部材
22 流入口
23 フレーム部
24 流出口
26 内側面
30 フレキシブルアーム
70 辺縁保持部
72 尿温表示部
76 電源ボタン
77 リセットボタン
100 尿温測定装置
200 洋式便器
210 辺縁部
220 U型便座
221 間隙
300 尿温測定装置
400 洋式便器
410 O型便座
U1 尿水
U2 尿水
U3 尿水
U4 尿水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温部を備える温度センサと、
少なくとも洋式便器の辺縁部を保持する辺縁保持部と、
前記温度センサで検出された尿温を表示出力する尿温表示部と、
前記辺縁保持部に末端部が固定されていて先端部に装着されている前記温度センサの位置が可変自在な可変支持機構と、
を有する尿温測定装置。
【請求項2】
前記可変支持機構が、湾曲自在なフレキシブルアームからなる請求項1に記載の尿温測定装置。
【請求項3】
前記フレキシブルアームが伸縮自在に形成されている請求項2に記載の尿温測定装置。
【請求項4】
前記可変支持機構は、排泄される尿水が供給されるとともに前記洋式便器の洗浄水で洗浄される位置に前記温度センサを配置する請求項1ないし3の何れか一項に記載の尿温測定装置。
【請求項5】
排泄される尿水が供給される位置に配置された前記温度センサに前記洋式便器の洗浄水を誘導する導水部材を、さらに有する請求項1ないし3の何れか一項に記載の尿温測定装置。
【請求項6】
前記辺縁保持部が、前記洋式便器の前記辺縁部を上方から挟持するコ字状の断面形状に形成されており、
前記尿温表示部が、前記辺縁保持部の上面に配置されている請求項1ないし5の何れか一項に記載の尿温測定装置。
【請求項7】
前記辺縁保持部が、前記洋式便器の前記辺縁部を上方から挟持するコ字状の断面形状に形成されており、
前記尿温表示部が、前記辺縁保持部から側方に突出している請求項1ないし5の何れか一項に記載の尿温測定装置。
【請求項8】
前記辺縁保持部が、開閉自在で弾発的に閉止される前記コ字状に形成されている請求項6または7に記載の尿温測定装置。
【請求項9】
前記辺縁保持部が、前記洋式便器のU型便座の先端の間隙に配置される形状に形成されている請求項1ないし8の何れか一項に記載の尿温測定装置。
【請求項10】
利用者による利用開始を検出する利用検出部と、
検出された前記利用開始に対応して前記温度センサと前記尿温表示部とを起動する処理制御部と、
を有する請求項1ないし9の何れか一項に記載の尿温測定装置。
【請求項11】
前記利用開始が検出されてから所定時間が経過しても前記温度センサで尿温が検出されないとエラー音を報知出力するエラー報知部を、さらに有する請求項10に記載の尿温測定装置。
【請求項12】
前記利用検出部は、前記利用者の接近を検出する人感センサからなる請求項9ないし11の何れか一項に記載の尿温測定装置。
【請求項13】
前記利用検出部は、前記洋式便器の便座の圧力を検出する感圧センサからなる請求項9ないし11の何れか一項に記載の尿温測定装置。
【請求項14】
排泄されて空中を落下する尿水を受け止めてから流出させる尿受部材を、さらに有し、
前記感温部が、空中を落下する前記尿水と前記尿受部材に衝突した前記尿水とがともに流動して前記尿受部材から流出する尿水に浸漬しない位置に配置されている請求項1ないし13の何れか一項に記載の尿温測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−17548(P2012−17548A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153550(P2010−153550)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】