説明

尿素誘導体およびチロシンキナーゼ阻害剤としてのその使用

新規な尿素誘導体は、チロシンキナーゼ、特にTIE−2、およびRafキナーゼの阻害剤であり、腫瘍の治療に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用な特性を有する新規な化合物、特に薬剤の調製に用いることのできる新規な化合物を発見することを目的とした。
【0002】
本発明は、キナーゼシグナル伝達、特にチロシンキナーゼおよび/またはRafキナーゼシグナル伝達の阻害、調節、および/または調整が役割を果たす化合物、さらにそれらの化合物を含む薬剤組成物、ならびにチロシンキナーゼ誘発性疾患を治療するためのそれらの化合物の使用に関する。
【0003】
特に本発明は、チロシンキナーゼシグナル伝達を阻害、調節、および/または調整する化合物、それらの化合物を含む組成物、ならびに哺乳動物において、血管新生、癌、腫瘍増殖、動脈硬化症、加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、炎症性疾患などのチロシンキナーゼ誘発性疾患および状態を治療するためのそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
チロシンキナーゼは、タンパク質基質においてチロシン残基へのアデノシン三リン酸の末端リン酸の転移を触媒する酵素の一種である。チロシンキナーゼは、基質リン酸化を介して、いくつかの細胞機能のシグナル伝達において重要な役割を果たすと考えられている。シグナル伝達の正確な機序は依然として不明であるが、チロシンキナーゼは、細胞増殖、発癌、および細胞分化における重要な促進要因であることが示されている。
【0005】
チロシンキナーゼは、受容体型チロシンキナーゼ、または非受容体型チロシンキナーゼに分類することができる。受容体型チロシンキナーゼは、細胞外部分、膜貫通部分、および細胞内部分を有し、非受容体型チロシンキナーゼは、すべて細胞内のみに存在する。
【0006】
受容体型チロシンキナーゼは、異なる生物活性を有する多数の膜貫通受容体からなる。例えば、受容体型チロシンキナーゼの約20種の異なるサブファミリーが同定されている。HERサブファミリーとして知られるあるチロシンキナーゼサブファミリーは、EGFR、HER2、HER3、およびHER4からなる。この受容体サブファミリーのリガンドには、上皮増殖因子、TGF−α、アンフィレグリン、HB−EGF、ベータセルリン、およびヘレグリンが含まれる。これらの受容体型チロシンキナーゼの別のサブファミリーは、インスリンサブファミリーであり、INS−R、IGF−IR、およびIR−Rが含まれる。PDGFサブファミリーには、PDGF−αおよび−β受容体、CSFIR、c−kit、ならびにFLK−IIが含まれる。さらに、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、胎児肝臓キナーゼ−1(FLK−1)、胎児肝臓キナーゼ−4(FLK−4)、およびfmsチロシンキナーゼ−1(fit−1)からなるFLKファミリーがある。PDGFおよびFLKファミリーは、これら2つの群が類似しているため、通常、まとめて論じられる。受容体型チロシンキナーゼに関する詳細な議論は、参照により本明細書の一部とする、Plowman等、DN&P7(6):334〜339、1994を参照されたい。
【0007】
非受容体型チロシンキナーゼも同様に、多数のサブファミリーからなり、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack、およびLIMKが含まれる。これらのサブファミリーはそれぞれ、種々の受容体にさらに再分類される。例えば、Srcサブファミリーは、もっとも大きなサブファミリーの1つである。これには、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、Fgr、およびYrkが含まれる。Srcサブファミリーの酵素は、腫瘍形成と関連づけられている。非受容体型チロシンキナーゼのより詳細な議論は、参照により本明細書の一部とする、Bolen、Oncogene、8:2025〜2031(1993)を参照されたい。
【0008】
受容体型チロシンキナーゼおよび非受容体型チロシンキナーゼは共に、癌、乾癬、および過剰免疫応答を含む、多数の病原性状態に至る細胞シグナリング経路に関与している。
【0009】
種々の受容体型チロシンキナーゼ、およびそれらに結合している増殖因子が、血管新生において役割を果たすことが提示されているが、一部は血管新生を間接的に促進する可能性がある(MustonenおよびAlitalo、J.Cell Biol.129:895〜898、1995)。それらの受容体型チロシンキナーゼの1つは、FLK−1とも称される胎児肝臓キナーゼ1である。FLK−1のヒトでの類似体は、キナーゼ挿入ドメイン含有受容体KDRであり、これはVEGFとの結合に高親和性を有することから、血管内皮細胞増殖因子受容体2、すなわちVEGFR−2としても知られている。最後に、この受容体のマウス型もNYKと称されている(Oelrichs等、Oncogene 8(1):11〜15、1993)。VEGFおよびKDRは、血管内皮細胞の増殖、ならびに血管形成および血管新生とそれぞれ称される血管の形成および発芽において重要な役割を果たすリガンド−受容体対である。
【0010】
血管新生は、血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰な活性を特徴とする。VEGFは、実際は、リガンドのファミリーからなる(KlagsburnおよびD’Amore、Cytokine&Growth Factor Reviews 7:259〜270、1996)。VEGFは、高親和性膜貫通チロシンキナーゼ受容体KDR、およびFit−1、または血管内皮増殖因子受容体1(VEGFR−1)としても知られる関連のfmsチロシンキナーゼ−1に結合する。細胞培養、および遺伝子ノックアウト実験は、それぞれの受容体が血管新生の種々の局面に寄与することを示唆している。KDRは、VEGFのマイトジェン機能を媒介し、Fit−1は、細胞接着に関連する機能など、非マイトジェン機能を調整すると考えられる。したがって、KDRを阻害することによって、VEGFのマイトジェン活性レベルが調整される。実際、腫瘍増殖は、VEGF受容体アンタゴニストの抗血管新生作用に感受性であることが示されている(Kim等、Nature 362、841〜844頁、1993)。
【0011】
したがって、固形腫瘍は、その増殖の支援に必要とされる血管の形成に関して血管新生に依存しているため、チロシンキナーゼ阻害剤で治療することができる。これらの固形腫瘍には、単球性白血病、ならびに脳、尿生殖路、リンパ系、胃および咽頭における癌、ならびに肺腺癌および小細胞肺癌を含む肺の癌が含まれる。さらなる例には、Raf活性化癌遺伝子(例えば、K−ras、erb−B)の過剰発現または活性化が観察される癌が含まれる。そのような癌には、膵臓癌、および乳癌が含まれる。したがって、これらのチロシンキナーゼの阻害剤は、それらの酵素に起因する増殖性疾患の予防および治療に適している。
【0012】
VEGFの血管新生活性は、腫瘍に限定されない。VEGFは、糖尿病性網膜症において網膜または網膜近傍で生じる血管新生活性の原因となる。この網膜での血管増殖は、視力低下をもたらし、最後には失明に至る。眼のVEGFmRNAおよびタンパク質レベルは、新生血管形成に至る、霊長類での網膜静脈閉塞、およびマウスでのpO2レベルの低下などの状態によって上昇する。抗VEGFモノクローナル抗体、またはVEGF受容体免疫融合体(immunofusion)の眼内注射は、霊長類モデルおよび齧歯類モデルの両方で、眼の新生血管形成を阻害する。ヒト糖尿病性網膜症におけるVEGFの誘発の原因に関係なく、眼のVEGFの阻害はこの疾患の治療に適している。
【0013】
VEGFの発現はまた、壊死部に隣接する動物およびヒト腫瘍の低酸素領域で著しく増加する。さらに、VEGFは、癌遺伝子Ras、Raf、Src、および変異型p53(いずれも癌治療に関連する)の発現によってアップレギュレートされる。抗VEGFモノクローナル抗体は、ヌードマウスにおいて、ヒト腫瘍の増殖を阻害する。同じ腫瘍細胞は培養においてVEGFを発現し続けるが、この抗体はその分裂速度を低減しない。それゆえ、腫瘍由来のVEGFは、自己分泌マイトジェン因子として機能しない。したがって、VEGFは、その傍分泌性の血管内皮細胞の走化性およびマイトジェン活性を介して血管新生を促進することによって、in vivoで腫瘍増殖に寄与する。これらのモノクローナル抗体はまた、無胸腺マウスで典型的に血管化が充分でないヒト結腸癌の増殖を阻害し、接種された細胞から生じる腫瘍数を低減する。
【0014】
細胞質チロシンキナーゼドメインを除去するが、膜アンカーを保持するように切断されたマウスKDR相同体、Flk−1およびFit−1のVEGF結合構築体のウイルスによる発現は、おそらくは膜貫通型の内皮細胞VEGF受容体とのヘテロダイマー形成による優性阻害の機序によって、マウスにおいて移植性膠芽細胞腫の増殖を実質的に停止する。
【0015】
ヌードマウスにおいて通常は固形腫瘍として増殖する胚幹細胞は、両方のVEGF対立遺伝子がノックアウトされている場合、検出可能な腫瘍を産生しない。総合すると、これらのデータは、固形腫瘍の増殖におけるVEGFの役割を示している。KDRまたはFit−1の阻害は、病的血管新生に関与し、腫瘍増殖は血管新生に依存することが知られているため、これらの受容体は、血管新生が病理全体の一部である疾患、例えば炎症、糖尿病性網膜血管形成、ならびに種々の形態の癌の治療に適している(Weidner等、N.Engl.J.Med.324、1〜8頁、1991)。
【0016】
内皮特異的受容体型チロシンキナーゼTIE−2のリガンドであるアンギオポイエチン1(Ang1)は、新規な血管新生因子である(Davis等、Cell、1996、87:1161〜1169;Partanen等、Mol.Cell Biol.12:1698〜1707(1992);米国特許第5,521,073号;第5,879,672号;第5,877,020号;および第6,030,831号)。頭字語TIEは、「IgおよびEGF相同ドメインを有するチロシンキナーゼ」の略語である。TIEは、血管内皮細胞および初期造血細胞においてのみ発現する受容体型チロシンキナーゼのクラスを識別するために用いられる。TIE受容体キナーゼは典型的に、EGF様ドメイン、および鎖間のジスルフィド橋結合によって安定化した細胞外フォールドユニットからなる免疫グロブリン(Ig)様ドメインの存在を特徴とする(Partanen等、Curr.Topics Microbiol.Immunol.1999、237:159〜172)。血管発生の初期段階にその機能を発揮するVEGFとは対照的に、Ang1およびその受容体TIE−2は、血管発生の後期段階、すなわち血管転換(血管内腔の形成に関連する転換)および成熟中に作用する(Yancopoulos等、Cell、1998、93:661〜664;Peters K.G.、Circ.Res.、1998、83(3):342〜3;Suri等、Cell 87、1171〜1180(1996))。
【0017】
したがって、TIE−2の阻害は、血管新生によって開始される新しい血管系の転換および成熟を中断するはずであり、それにより血管新生のプロセスを中断するはずであることが予期される。さらに、VEGFR−2のキナーゼドメイン結合部位における阻害は、チロシン残基のリン酸化を遮断し、血管新生の開始を阻止する働きをするであろう。したがって、TIE−2および/またはVEGFR−2の阻害は腫瘍の血管新生を妨げ、腫瘍増殖を遅延する、または完全に排除する働きをするはずであると仮定されなければならない。したがって、不適切な血管新生に関連する癌および他の疾患の治療を提供することができる。
【0018】
本発明は、調節されていないまたは障害のあるTIE−2活性に関連する疾患を予防および/または治療するために、TIE−2を調節、調整、または阻害する方法に関する。特に、本発明による化合物は、ある種の形態の癌の治療に用いることもできる。さらに、本発明による化合物は、ある種の現存する癌化学療法において付加的または相乗的効果を提供するために用いることができ、かつ/またはある種の現存する癌化学療法および放射線療法の効力を回復させるために用いることができる。
【0019】
本発明はさらに、Rafキナーゼの阻害剤としての化合物に関する。タンパク質のリン酸化は、細胞機能を調節するための基礎的なプロセスである。タンパク質キナーゼとホスファターゼの協調した働きは、リン酸化の程度を制御し、それゆえ特定の標的タンパク質の活性を制御する。タンパク質リン酸化の主たる役割の1つは、シグナル伝達にあり、ここで細胞外シグナルは、例えばp21ras/Raf経路のように、タンパク質リン酸化および脱リン酸化事象のカスケードによって増幅および伝播される。
【0020】
p21ras遺伝子は、ハーベイ(Harvey)(H−Ras)およびカーステン(Kirsten)(K−Ras)ラット肉腫ウイルスの癌遺伝子として発見された。ヒトでは、細胞Ras遺伝子(c−Ras)の特徴的な突然変異は、多くの異なる型の癌と関連づけられている。Rasを構成的に活性化するこれらの突然変異対立遺伝子は、培養において、例えばマウス細胞系NIH3T3などの細胞を形質転換することが示されている。
【0021】
p21ras癌遺伝子は、ヒト固形癌の発生および進行の主要原因であり、すべてのヒトの癌の30%で突然変異している(Bolton等(1994)Ann.Rep.Med.Chem.29、165〜74;Bos.(1989)Cancer Res Res.49、4682〜9)。その正常な非変異型では、Rasタンパク質は、ほぼすべての組織において、増殖因子受容体に導かれるシグナル伝達カスケードの主要な要素である(Avruch等(1994)Trends Biochem.Sci.19、279〜83)。
【0022】
生化学的に、Rasは、グアニンヌクレオチド結合タンパク質であり、GTP結合活性化型とGDP結合静止型とのサイクリングは、Ras内因性GTPアーゼ活性および他の調節タンパク質によって厳密に制御される。Ras遺伝子産物は、グアニン三リン酸(GTP)およびグアニン二リン酸(GDP)に結合し、GTPをGDPに加水分解する。Rasは、GTP結合状態で活性である。癌細胞のRas突然変異体において、Rasの内因性GTPアーゼ活性は低下し、その結果として、このタンパク質は、例えば酵素Rafキナーゼなどの下流のエフェクターに構成的増殖シグナルを伝達する。これによりこれらの突然変異体を有する細胞の癌性の増殖をもたらす(Magnuson等(1994)Semin.Cancer Biol.5、247〜53)。Ras癌原遺伝子は、高等真核生物において、受容体型および非受容体型チロシンキナーゼによって開始された増殖および分化シグナルを伝達するために、機能的に無傷のC−Raf−1癌原遺伝子を必要とする。
【0023】
活性化Rasは、C−Raf−1癌原遺伝子の活性化に必要であるが、それによりRasがRaf−1タンパク質(Ser/Thr)キナーゼを活性化する生化学的段階は充分に特徴が明らかにされている。Rafキナーゼに対する非活性化抗体を投与してRafキナーゼシグナリング経路を阻害することによって、あるいは優性阻害のRafキナーゼ、またはRafキナーゼの基質である優性阻害のMEK(MAPKK)の共発現によって、活性Rasの作用を阻害することにより形質転換細胞の正常な増殖表現型への復帰がもたらされることが示されている。Daum等(1994)Trends Biochem.Sci.19、474〜80;Fridman等(1994)J Biol.Chem.269、30105〜8;Kolch等(1991)Nature 349、426〜28、および概説としてWeinstein−Oppenheimer等、Pharm.&Therap.(2000)88、229〜279を参照されたい。
【0024】
同様に、Rafキナーゼの阻害(アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドによる)は、in vitroおよびin vivoで種々のヒト腫瘍型の増殖との相関が認められている(Monia等、Nat.Med.1996、2、668〜75)。
【0025】
Raf−セリンおよびトレオニン特異的タンパク質キナーゼは、種々の細胞系において細胞増殖を刺激する細胞質内酵素である(Rapp U.R.等(1988)The Oncogene Handbook;T.Curran、E.P.Reddy、およびA.Skalka(編)、Elsevier Science Publishers;The Netherlands、213〜253頁;Rapp U.R.等(1988)Cold Spring Harbor Sym.Quant.Biol.53:173〜184;Rapp U.R.等(1990)Inv Curr.Top.Microbiol.Immunol.PotterおよびMelchers(編)、Berlin、Springer−Verlag 166:129〜139)。
【0026】
3種のアイソザイムの特徴が明らかにされている。
【0027】
C−Raf(Raf−1)(Bonner T.I.等(1986)Nucleic Acids Res.14:1009〜1015)、A−Raf(Beck T.W.等(1987)Nucleic Acids Res.15:595〜609)、およびB−Raf(Qkawa S等(1998)Mol.Cell.Biol.8:2651〜2654;Sithanandam G等(1990)Oncogene:1775)。3種の酵素は、様々な組織における発現に差がある。Raf−1は、研究されたすべての器官およびすべての細胞系で発現し、A−RafおよびB−Rafは、それぞれ尿生殖組織および脳組織で発現する(Storm S.M.(1990)Oncogene 5:345〜351)。
【0028】
Raf遺伝子は、癌原遺伝子である。これらの遺伝子は、特異的に改変された形態で発現されたとき、細胞の悪性の形質転換を開始することができる。発癌活性化に至る遺伝子変化は、このタンパク質のN末端の負の調節ドメインを除去または妨げることによって、構成的活性なタンパク質キナーゼを生じる(Heidecker G等(1990)Mol.Cell.Biol.10:2503〜2512;Rapp U.R.等(1987)、Oncogenes and Cancer;S.A.Aaronson、J.Bishop、T.Sugimura、M.Terada、K.Toyoshima、およびP.K.Vogt(編)、Japan Scientific Press、Tokyo)。発癌的に活性化されているが、野生型ではない、大腸菌発現ベクターを用いて調製されたRafタンパク質のNIH3T3細胞へのマイクロインジェクションは、形態変換をもたらし、DNA合成を促進する(Rapp U.R.等(1987)、Oncogenes and Cancer;S.A.Aaronson、J.Bishop、T.Sugimura、M.Terada、K.Toyoshima、およびP.K.Vogt(編)、Japan Scientific Press、Tokyo;Smith M.R.等、(1990)Mol.Cell.Biol.10:3828〜3833)。
【0029】
したがって、活性化Raf−1は、細胞増殖の細胞内活性化因子である。Raf癌遺伝子は、細胞突然変異(Ras復帰突然変異細胞)による、または抗Ras抗体のマイクロインジェクションによる細胞Ras活性の遮断に起因する増殖停止に打ち勝つので、Raf−1タンパク質セリンキナーゼは、マイトジェンシグナル伝達の下流におけるエフェクターの候補である(Rapp U.R.等(1988)The Oncogene Handbook;T.Curran、E.P.Reddy、およびA.Skalka(編)、Elsevier Science Publishers;The Netherlands、213〜253頁;Smith M.R.等(1986)Nature(London)320:540〜543)。
【0030】
C−Raf機能は、種々の膜結合型癌遺伝子による形質転換、および血清に含有されるマイトジェンによる増殖刺激に必要とされる(Smith M.R.等(1986)Nature(London)320:540〜543)。Raf−1タンパク質セリンキナーゼ活性は、リン酸化を介してマイトジェンによって調節され(Morrison D.K.等(1989)Cell 58:648〜657)、これはさらに細胞内分布に影響を与える(Olah Z.等(1991)Exp.Brain Res.84:403;Rapp U.R.等(1988)Cold Spring Harbor Sym.Quant.Biol.53:173〜184)。Raf−1活性化増殖因子には、血小板由来増殖因子(PDGF)(Morrison D.K.等(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8855〜8859)、コロニー刺激因子(Baccarini M.等(1990)EMBO J.9:3649〜3657)、インスリン(Blackshear P.J.等、(1990)J.Biol.Chem.265:12115〜12118)、上皮増殖因子(EGF)(Morrison R.K.等、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8855〜8859)、インターロイキン−2(Turner B.C.等(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1227)およびインターロイキン−3、ならびに顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Carroll M.P.等、(1990)J.Biol.Chem.265:19812〜19817)が含まれる。
【0031】
細胞のマイトジェン処理後、一過性に活性化されたRaf−1タンパク質セリンキナーゼは、核周囲領域および核に移動する(Olah Z.等(1991)Exp.Brain Res.84:403;Rapp U.R.等(1988)Cold Spring Harbor Sym.Quant.Biol.53:173〜184)。活性化Rafを含有する細胞は、遺伝子発現パターンが変わり(Heidecker G.等(1989)Genes and signal transduction in multistage carcinogenesis、N.Colburn(編)、Marcel Dekker,Inc.New York、339〜374頁)、Raf癌遺伝子は、一過性トランスフェクションアッセイにおいて、Ap−I/PEA3依存性プロモーターからの転写を活性化する(Jamal S.等(1990)Science 344:463〜466;Kaibuchi K.等(1989)J.Biol.Chem.264:20855〜20858;Wasylyk C.等(1989)Mol.Cell.Biol.9:2247〜2250)。
【0032】
細胞外マイトジェンによるRaf−1活性化には少なくとも2つの独立した経路がある。1つは、タンパク質キナーゼC(KC)を伴い、もう1つは、タンパク質チロシンキナーゼによって開始される(Blackshear P.J.等、(1990)J.Biol.Chem.265:12131〜12134;Kovacina K.S.等(1990)J.Biol.Chem.265:12115〜12118;Morrison D.K.等(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8855〜8859;Siegel J.N.等(1990)J.Biol.Chem.265:18472〜18480;Turner B.C.等(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1227)。いずれの場合にも、活性化は、Raf−1タンパク質のリン酸化を伴う。Raf−1リン酸化は、自己リン酸化によって増幅されたキナーゼカスケードの結果であるか、またはジアシルグリセロールによるPKC活性化に類似した、推定の活性化リガンドとRaf−1調節ドメインとの結合によって開始された自己リン酸化がもっぱらの原因である可能性がある(Nishizuka Y.(1986)Science 233:305〜312)。
【0033】
細胞調節が達成される主要な機序の1つは、膜を通過する細胞外シグナルの伝達、それに続く細胞内の生化学的経路の調整によるものである。タンパク質のリン酸化は、細胞内シグナルが分子から分子に伝播され、最終的に細胞応答を引き起こす一過程である。これらのシグナル伝達カスケードは、高度に調節されており、多くのタンパク質キナーゼおよびタンパク質ホスファターゼの存在からわかるように、多くの場合重複している。タンパク質のリン酸化は、主としてセリン、トレオニン、またはチロシン残基で起こり、したがって、タンパク質キナーゼは、それらのリン酸化部位の特異性によって、すなわちセリン/トレオニンキナーゼ、およびチロシンキナーゼに分類されている。リン酸化は細胞内の非常に偏在的なプロセスであり、細胞表現型はこれらの経路の活性に大いに影響を受けるため、いくつかの疾病状態および/または疾患は、キナーゼカスケードの分子成分における異常活性化または機能的突然変異に起因すると現在考えられている。したがって、これらのタンパク質、およびそれらの活性を調整することのできる化合物の特徴を明らかにすることに、かなりの注目が向けられている(概説としてWeinstein−Oppenheimer等、Pharma.&Therap.2000、88、229〜279を参照されたい)。
【0034】
したがって、チロシンキナーゼおよび/またはRafキナーゼのシグナル伝達を特異的に阻害、調節、および/または調整する低分子化合物を同定することが望ましく、本発明の目的である。
【0035】
本発明による化合物およびそれらの塩は、充分に耐性でありながら、非常に有用な薬理学的特性を有することが見出された。特に、本発明による化合物およびそれらの塩は、チロシンキナーゼ阻害性を示す。
【0036】
さらに、本発明による化合物は、酵素Rafキナーゼの阻害剤であることが見出された。この酵素は、p21rasの下流のエフェクターであるため、この阻害剤は、Rafキナーゼ経路を阻害することが示唆されているヒトまたは動物の薬として用いるための薬剤組成物に適していることがわかっており、例えばRafキナーゼに媒介される腫瘍および/または癌性の細胞増殖の治療に適する。特に、ヒトおよび動物の固形癌、例えばマウス癌の進行は、Rasタンパク質シグナル伝達カスケードに依存しており、したがってカスケードの中断、すなわちRafキナーゼの阻害による治療に感受性であるため、これらの化合物は、これらの癌の治療に適している。したがって、本発明による化合物、または薬剤として許容されるその塩は、Rafキナーゼ経路に媒介される疾患、特に、固形癌を含む癌、例えば癌腫(例えば、肺、膵臓、甲状腺、膀胱、または結腸の癌腫)、骨髄疾患(例えば、骨髄性白血病)、または腺腫(例えば、絨毛状結腸腺腫)、病的血管新生、および転移性細胞遊走を治療するために投与される。これらの化合物はさらに、補体活性化依存性の慢性炎症(Niculescu等(2002)Immunol.Res.24:191〜199)、およびHIV−1(ヒト免疫不全ウイルス1型)誘発性の免疫不全(Popik等(1998)J Virol 72:6406〜6413)の治療に適している。
【0037】
意外なことに、本発明による化合物は、シグナリング経路、特に本明細書に記載のシグナリング経路、好ましくはRafキナーゼシグナリング経路と相互に作用できることが見出された。本発明による化合物は、好ましくは、酵素に基づくアッセイ、例えば本明細書に記載のアッセイで容易に実証される有利な生物活性を示す。そのような酵素に基づくアッセイにおいて、本発明による化合物は、適切な範囲、好ましくはマイクロモル範囲、より好ましくはナノモル範囲の通常はIC50値によって示される作用、好ましくは阻害作用を示す。
【0038】
本明細書に論じたように、これらのシグナリング経路は、種々の疾患に関連している。したがって、本発明による化合物は、1つまたは複数の前記シグナリング経路と相互に作用することによって、前記シグナリング経路に依存している疾患を予防および/または治療することに適している。
【0039】
したがって本発明は、本明細書に記載のシグナリング経路の促進剤または阻害剤、好ましくは阻害剤としての本発明による化合物に関する。したがって本発明は、好ましくは、Rafキナーゼ経路の促進剤または阻害剤、好ましくは阻害剤としての本発明による化合物に関する。したがって本発明は、好ましくは、Rafキナーゼの促進剤または阻害剤、好ましくは阻害剤としての本発明による誘導体に関する。本発明はさらに、好ましくは、A−Raf、B−Raf、およびC−Raf−1からなる群から選択された1種または複数のRafキナーゼの促進剤または阻害剤、好ましくは阻害剤としての本発明による化合物に関する。本発明は、特に好ましくは、C−Raf−1の促進剤または阻害剤、好ましくは阻害剤としての本発明による化合物に関する。
【0040】
本発明はさらに、Rafキナーゼによって引き起こされ、媒介され、および/または伝播される疾患、好ましくは本明細書に記載の疾患、特にA−Raf、B−Raf、およびC−Raf−1からなる群から選択されたRafキナーゼによって引き起こされ、媒介され、および/または伝播される疾患の治療および/または予防における、1種または複数の本発明による化合物の使用に関する。本明細書に論じた疾患は、通常2つの群、過剰増殖性疾患および非過剰増殖性疾患に分類される。これに関して、乾癬、関節炎、炎症、子宮内膜症、瘢痕、良性前立腺肥大、免疫疾患、自己免疫疾患、および免疫不全疾患は、非癌性疾患とみなされ、その中で関節炎、炎症、免疫疾患、自己免疫疾患、および免疫不全疾患は、通常、非過剰増殖性疾患とみなされる。これに関して、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、結腸直腸癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、食道癌、婦人科癌、甲状腺癌、リンパ腫、慢性白血病、および急性白血病は、癌性疾患とみなされ、そのすべてが、通常、過剰増殖性疾患とみなされる。特に癌性の細胞増殖、特にRafキナーゼに媒介される癌性の細胞増殖は、本発明の標的となる疾患である。したがって本発明は、前記疾患の治療および/または予防における、薬剤および/または薬剤活性成分としての本発明による化合物と、ならびに前記疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、本発明による化合物の使用と、ならびにそのような投与を必要としている患者に本発明による1種または複数の化合物を投与することを含む、前記疾患を治療する方法とに関する。
【0041】
本発明による化合物は、異種移植腫瘍モデルにおいて、in vivoで抗増殖作用を有することを示すことができる。本発明による化合物は、例えば腫瘍増殖を阻害する、リンパ増殖性疾患に伴う炎症を緩和する、移植拒絶または組織修復による神経障害を阻害するために、過剰増殖性疾患を有する患者に投与される。本発明の化合物は、予防または治療目的に適している。
【0042】
本明細書では、「治療」という用語は、疾患の予防および既存状態の治療の両方を指すために用いられる。増殖の予防は、例えば腫瘍の増殖を防ぐ、転移増殖を防ぐ、心臓血管手術に伴う再狭窄を減じるなどのために、顕性疾患の発症に先立って本発明による化合物を投与することによって達成される。あるいは、化合物は、患者の臨床症状を安定または改善することによって、進行中の疾患を治療するために用いられる。
【0043】
宿主および患者は、任意の哺乳動物種、例えば霊長類種、特にヒト、ならびにマウス、ラット、およびハムスターを含む齧歯動物、ウサギ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属することができる。動物モデルは、実験的研究に重要であり、ヒトの疾患治療のモデルを提供する。
【0044】
本発明の化合物による治療に対する特定の細胞の感受性は、in vitro試験によって判定することができる。典型的に、細胞の培養は、活性剤が細胞死を誘発する、または遊走を阻害するのに充分な期間、通常は約1時間から1週間、様々な濃度の本発明による化合物と組み合わせる。in vitro試験は、生検試料由来の培養細胞を用いて行うことができる。その後、処置後に残存する生存細胞をカウントする。
【0045】
用量は、用いられる特定の化合物、特定の疾患、患者の状態などに応じて異なる。治療用量は、典型的に、患者の生存性を維持しながら、標的組織において望ましくない細胞集団を大幅に減少するのに充分な量である。治療は、一般的に、大幅な低減が生じるまで、例えば細胞負荷が少なくとも約50%低減するまで継続され、または、望ましくない細胞が体内で本質的に検出されなくなるまで継続することができる。
【0046】
キナーゼ阻害剤を同定するために、種々のアッセイ系が使用可能である。シンチレーション近接アッセイ(Sorg等、J.of Biomolecular Screening、2002、7、11〜19)、およびフラッシュプレートアッセイでは、タンパク質またはペプチドを基質としてγATPでの放射性リン酸化を測定する。阻害化合物の存在下では、低減した放射性シグナルが検出されるか、まったく検出されない。さらに、ホモジニアス時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(HTR−FRET)、および蛍光偏光(FP)技法は、アッセイ法として適している(Sills等、J.of Biomolecular Screening、2002、7、191〜214)。
【0047】
他の非放射性ELISAアッセイ法は、特定のホスホ(phospho)−抗体(ホスホ−AB)を用いる。このホスホ−ABは、リン酸化基質にのみ結合する。この結合は、二次ペルオキシダーゼ複合抗ヒツジ抗体を用いて、化学発光によって検出することができる(Ross等、2002、Biochem.J.、まもなく発行、原稿BJ20020786)。
【0048】
細胞増殖の脱制御および細胞死(アポトーシス)に関連する多くの疾患がある。対象となる状態には、これに限定されるものではないが、以下が含まれる。本発明による化合物は、平滑筋細胞および/または炎症細胞の増殖および/または脈管の内膜層への遊走があり、例えば新生内膜閉塞性の病変の場合など、脈管の血流が制限される、いくつかの状態の治療に適している。対象となる閉塞性血管疾患には、アテローム性動脈硬化症、移植後の移植冠血管疾患(graft coronary vascular disease)、静脈移植血管狭窄、吻合周囲プロテーゼ再狭窄()、血管形成またはステント留置術後の再狭窄などが含まれる。
【0049】
本発明による化合物は、p38キナーゼ阻害剤としても適している。p38キナーゼを阻害する他のヘテロアリール尿素は、WO02/85859に記載されている。
【0050】
(従来技術)
WO02/44156は、TIE−2および/またはVEGFR2阻害剤以外のベンズイミダゾール誘導体を記載している。WO99/32436は、Rafキナーゼ阻害剤として、置換フェニル尿素を開示している。WO02/062763およびWO02/085857は、Rafキナーゼ阻害剤として、キノリル−、イソキノリル−、およびピリジル尿素誘導体を開示している。p38キナーゼ阻害剤としてのヘテロアリール尿素は、WO02/85859に記載されている。ω−カルボキシアリールジフェニル尿素は、Rafキナーゼ阻害剤としてWO00/42012に、p38キナーゼ阻害剤としてWO00/41698に記載されている。他のアリール−およびヘテロアリール−置換複素環尿素は、Rafキナーゼ阻害剤としてWO99/32455に、p38キナーゼ阻害剤としてWO99/32110に記載されている。他のジフェニル尿素誘導体は、WO99/32463から知られている。p38キナーゼ阻害剤としての置換複素環尿素誘導体は、WO99/32111に開示されている。
【発明の開示】
【0051】
(発明の概要)
本発明は、以下からなる群から選択された尿素誘導体、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、塩、溶媒和物、および立体異性体に関する。
【0052】
N−メチル−4−{4−[3−(フルオロトリフルオロメチルフェニル)ウレイド]フェノキシ}ピリジン−2−カルボキサミド、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]−尿素、
1−[4−(2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
7−{4−[3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]フェノキシ}ベンゾフラン−2−カルボキサミド、
1−[4−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(6−メトキシピリジン−3−イルオキシ)−フェニル]尿素、
メチル(5−{4−[3−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]フェノキシ}−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)カルバメート、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−イルオキシ)フェニル]尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(2−メチルベンゾチアゾール−5−イルオキシ)フェニル]尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(1H−インドール−6−イルオキシ)フェニル]−尿素、
1−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(イミダゾ[1,2−a]キノリン−9−イルオキシ)フェニル]尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(イミダゾ[1,2−a]キノリン−9−イルオキシ)フェニル]尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(1H−インドール−5−イルオキシ)フェニル]−尿素、
メチル 7−{4−[3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]フェノキシ}−ベンゾフラン−2−カルボキシレート、
1−[4−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルオキシ)フェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−4−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(6−メトキシピリジン−3−イルオキシ)−フェニル]尿素、
1−[4−(イミダゾ[1,2−a]キノリン−9−イルオキシ)フェニル]−3−(4−トリフルオロメトキシフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−2−メチルフェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−2−メチルフェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−3−フルオロフェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(2−アミノベンゾチアジアゾール−6−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(2−アミノ−4,7−ジメチルベンゾチアジアゾール−6−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
N−メチル−4−{4−[3−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]フェニルスルファニル}ピリジン−2−カルボキサミド。
【0053】
本発明はさらに、これらの化合物の光学活性形態(立体異性体)、エナンチオマー、ラセミ化合物、ジアステレオマー、ならびに水和物および溶媒和物に関する。化合物の溶媒和物という用語は、相互引力により形成される化合物への不活性溶媒化合物の付加を意味する。溶媒和物は、例えば一水和物、または二水和物、あるいはアルコキシドである。
【0054】
薬剤として使用可能な誘導体という用語は、例えば本発明による化合物の塩、およびいわゆるプロドラッグ化合物を意味する。プロドラッグ誘導体という用語は、例えばアルキル基またはアシル基、糖またはオリゴペプチドによって修飾されており、生体において迅速に開裂して本発明による有効な化合物を形成する、式Iの化合物を意味する。これらには、例えばInt.J.Pharm.115、61〜67(1995)に記載されているように、本発明による化合物の生分解性ポリマー誘導体も含まれる。
【0055】
「有効量」という表現は、組織、系、動物、またはヒトにおいて、例えば研究者または医師から求められるまたは望まれる生物学的または医学的応答を引き起こす薬剤または薬剤活性成分の量を意味する。
【0056】
さらに、「治療上有効量」という表現は、この量を与えられていない対応する対象と比較して、以下の結果を有する量を意味する。疾患、症候群、疾患状態、病訴、障害の治療の改善、治癒、予防、または除去、あるいは副作用の予防、あるいは疾患、病訴、障害または副作用の進行の低減、あるいは疾患、病訴または障害の進行の低減である。「治療上有効量」という表現は、正常な生理機能を増大するのに有効な量も包含する。
【0057】
本発明はまた、本発明による式Iの化合物の混合物、例えば2種のジアステレオマーの混合物であり、例えば1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100、または1:1000の比率である混合物に関する。これらは、特に好ましくは、立体異性化合物の混合物である。
【0058】
本発明による化合物、およびそれらを調製するための出発材料は、さらに文献(例えば、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie(有機化学の方法)、Gerog−Thieme−Verlag、Stuttgartなどの標準的な著作物)に記載されている、それ自体が知られている方法によって調製され、正確には、前記反応に適している既知の反応条件下で調製される。それ自体が知られているが、本明細書にはより詳細に述べられていない変形も用いることができる。
【0059】
所望であれば、出発原料は、反応混合物から単離されていないが、速やかに本発明による化合物に変換されるように、その場で形成することもできる。
【0060】
出発原料は、一般的に知られている。しかし、出発原料が新規である場合、それ自体が知られている方法で調製することができる。
【0061】
式Iの化合物は、好ましくは、アニリン誘導体とイソシアネートとの反応によって得ることができる。この反応は、当業者に知られている方法で行われる。
【0062】
最初に、反応は適切な溶媒中で行われ、必要であれば、例えばトリエチルアミンなどの有機塩基、あるいは例えばアルカリまたはアルカリ土類金属炭酸塩などの無機塩基の存在下で行われる。
【0063】
適切な不活性溶媒の例は、ヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンまたはキシレンなどの炭化水素;トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロメタン、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル;エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、あるいはエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)などのグリコールエーテル;例えばアセトン、ブタノンなどのケトン;例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド;例えばアセトニトリルなどのニトリル;例えばジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド;二硫化炭素;例えばギ酸、酢酸などのカルボン酸;例えばニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;例えば酢酸エチルなどのエステル;あるいは前記溶媒の混合物である。
【0064】
用いられる条件に応じて、反応時間は、数分から14日の間であり、反応温度は、約−30℃から140℃、通常は−10℃から90℃、特に約0℃から約70℃の間である。
【0065】
本発明による化合物の塩基は、例えば等量の塩基および酸をエタノールなどの不活性溶媒中で反応させ、その後、蒸発させることによって、酸を用いて関連する酸付加塩に転換することができる。この反応に適切な酸は、特に、生理的に許容される塩を提供する酸である。したがって、無機酸、例えば硫酸、硝酸、塩酸または臭化水素酸などのハロゲン化水素酸、正リン酸などのリン酸、スルファミン酸、さらに有機酸、特に脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族、または複素環式の一塩基または多塩基のカルボン酸、スルホン酸、または硫酸、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ピバリン酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタンまたはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノおよびジスルホン酸、ならびにラウリル硫酸を用いることができる。例えばピクリン酸塩などの生理的に許容されない酸との塩は、本発明による化合物の単離および/または精製のために用いることができる。
【0066】
本発明はさらに、特に非化学的方法によって、薬剤(薬剤組成物)を調製するための、化合物および/または生理的に許容されるそれらの塩の使用に関する。それらの薬剤は、少なくとも1種の固体、液体、および/または半液体の賦形剤またはアジュバントと共に、さらに所望であれば1種または複数のさらなる活性成分と組み合わせて、適切な投与形態に変換することができる。
【0067】
本発明はさらに、本発明による化合物、ならびに/または、あらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体の少なくとも1種、ならびに場合によって賦形剤および/またはアジュバントを含む薬剤に関する。
【0068】
薬剤製剤は、投与単位当たり所定量の活性成分を含む投与単位の形態で投与することができる。そのような単位は、治療される疾患状態、投与方法、患者の年齢、体重および状態に応じて、例えば0.5mgから1g、好ましくは1mgから700mg、特に好ましくは5mgから100mgの本発明による化合物を含むことができ、あるいは薬剤製剤は、投与単位当たり所定量の活性成分を含む投与単位の形態で投与することができる。好ましい投与単位の製剤は、前述のとおり、活性成分の日用量または部分用量、あるいはその相当する画分を含むものである。さらに、この種の薬剤製剤は、薬剤分野で一般に知られている方法を用いて調製することができる。
【0069】
薬剤製剤は、任意の所望の適切な方法、例えば経口(口腔または舌下を含む)、直腸、経鼻、局所(口腔、舌下、または経皮を含む)、膣内、あるいは非経口(皮下、筋内、静脈内、または皮内を含む)法によって投与するために適応させることができる。そのような製剤は、薬剤分野で知られているあらゆる方法を用いて、例えば活性成分を賦形剤または補助剤と組み合わせることによって調製することができる。
【0070】
経口投与用に適応された薬剤製剤は、別個の単位として投与することができ、例えばカプセル剤または錠剤、粉剤または顆粒剤、水性または非水性の溶液または懸濁剤、食用泡剤または泡状食品、あるいは水中油型液体エマルションまたは油中水型液体エマルションなどである。
【0071】
したがって、例えば、錠剤またはカプセル剤形態での経口投与の場合、活性成分は、経口、非毒性かつ薬剤として許容される不活性賦形剤、例えばエタノール、グリセロール、水などと組み合わせることができる。粉剤は、化合物を適切な微細粒度に粉砕し、それを同様に粉砕した薬剤賦形剤、例えばデンプンまたはマンニトールなどのような食用炭水化物と混合することによって調製される。同様に、香味剤、保存剤、分散剤、および染料も含有させてもよい。
【0072】
カプセル剤は、上述のとおり粉末混合物を調製し、成形したゼラチン外皮にそれを充填することによって製造される。流動促進剤および潤滑剤、例えば高分散性のケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、または固体形態のポリエチレングリコールなどを、充填操作前に、粉末混合物に添加することができる。崩壊剤または可溶化剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、または炭酸ナトリウムなども、カプセル摂取後の薬剤の有効性を向上させるために、同様に添加してもよい。
【0073】
さらに、所望であるか必要であれば、適切な結合剤、潤滑剤、および崩壊剤、ならびに染料を、同様に混合物に組み入れることができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、例えばグルコース、β−ラクトース、トウモロコシから作られた甘味剤などの天然糖、例えばアカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウムなどの天然および合成ゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウなどが含まれる。これらの投与形態に用いられる潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれるが、それらに限定されない。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、その混合物を粒状にするか、または乾燥圧縮し、潤滑剤および崩壊剤を添加し、全混合物を圧縮して錠剤を得ることによって製剤化される。
粉末混合物は、例えば糖ミツ、デンプン糊、アカディア(acadia)粘液、あるいはセルロースまたはポリマー材料の溶液などの結合剤を用いて湿潤させ、ふるいを通してそれを圧縮することによって粒状にすることができる。粒状化の別法として、粉末混合物を打錠機に通して、分解されて小粒を形成する不均一な塊を得ることができる。小粒は、錠剤鋳型に粘着するのを防ぐために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、または鉱油を添加することによって、潤滑にすることができる。その後、潤滑混合物を圧縮して、錠剤を得る。本発明による化合物は、流動性の不活性賦形剤と組み合わせ、粒状化または乾燥圧縮段階を行わずに、直接圧縮して錠剤を得ることもできる。シェラック密封層、糖またはポリマー材料層、およびロウの光沢層からなる透明または不透明保護層が存在してもよい。異なる投与単位を識別できるように、これらの被覆物に染料を添加することができる。
【0074】
例えば液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤などの経口液体は、所与の量が予め指定された量の化合物を含むような投与単位の形態で調製することができる。シロップ剤は、化合物を適切な香味剤と共に水溶液に溶解することによって調製することができ、エリキシル剤は、非毒性アルコール媒体を用いて調製される。懸濁剤は、化合物を非毒性媒体に分散することによって製剤化することができる。可溶化剤および乳化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、およびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなど、保存剤、香味添加剤、例えばハッカ油、あるいは天然甘味剤またはサッカリン、あるいは他の人工甘味剤なども同様に添加することができる。
【0075】
経口投与用の投与単位製剤は、所望であれば、マイクロカプセルに封入することができる。この製剤は、例えば粒状材料をポリマー、ロウなどで被覆または包埋することによって、放出が延長または遅延するように調製することもできる。
【0076】
本発明による化合物、その塩、溶媒和物、および生理的機能性誘導体は、例えば小さい単層ベシクル、大きい単層ベシクル、および多層ベシクルなどのリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、例えばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの種々のリン脂質から形成することができる。
【0077】
本発明による化合物、その塩、溶媒和物、および生理的機能性誘導体は、化合物分子が結合する個別の担体としてモノクローナル抗体を用いて送達することもできる。これらの化合物は、標的薬剤担体となる可溶性ポリマーに結合させることもできる。そのようなポリマーは、パルミトイル基のラジカルで置換された、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはポリエチレンオキシドポリリシンを含んでもよい。これらの化合物は、さらに薬剤の制御放出を達成するのに適したある種の生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロック共重合体に結合させることもできる。
【0078】
経皮投与用に適応された薬剤製剤は、受容者の表皮と密接に長期接触させるための個別の硬膏剤として投与することができる。したがって、例えば、活性成分は、Pharmaceutical Research、3(6)、318(1986)の一般項に記載されているように、イオン導入法によって硬膏剤から送達することができる。
【0079】
局所投与用に適応された薬剤化合物は、軟膏剤、クリーム、懸濁剤、ローション剤、粉剤、液剤、ペースト剤、ゲル、スプレー、エアロゾル、または油として製剤化することができる。
【0080】
眼または例えば口、皮膚などの他の外部組織の治療の場合、製剤は、好ましくは局所軟膏剤または局所クリームとして適用される。軟膏を提供する製剤の場合、活性成分は、パラフィン系または水混和性クリームベースと共に用いることができる。あるいは、活性成分は、水中油型クリームベースまたは油中水型ベースを用いてクリームを供せられて、製剤化することができる。
【0081】
眼への局所適用に適応された薬剤製剤には、点眼液が含まれ、この場合、活性成分は、適切な担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁される。
【0082】
口への局所適用に適応された薬剤製剤は、ロゼンジ、トローチ剤、およびマウスウォッシュを含む。
【0083】
直腸投与用に適応された薬剤製剤は、坐剤の形態または浣腸で投与することができる。
【0084】
担体物質が固体である経鼻投与用に適応された薬剤製剤は、例えば20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗い粉末を含み、この薬剤製剤は、鼻から吸入する様式、すなわち鼻に近接して保持された粉末を含有する容器から鼻道を経由して急速に吸入されることによって投与される。担体物質として液体を含む鼻用スプレーまたは点鼻薬として投与される適切な製剤には、活性成分の水溶液または油溶液が含まれる。
【0085】
吸引による投与に適応された薬剤製剤には、微細粒状ダストまたはミストが含まれ、これは噴霧器、ネブライザー、または注入器を備えた様々な型の加圧式ディスペンサによって発生させることができる。
【0086】
膣内投与用に適応された薬剤製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト剤、泡、またはスプレー製剤として投与することができる。
【0087】
非経口投与用に適応された薬剤製剤には、それによって製剤が治療される受容者の血液と等張となる、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および溶質を含む水性または非水性滅菌注射液と、ならびに懸濁媒質および増粘剤を含んでもよい水性または非水性滅菌懸濁液とが含まれる。これらの製剤は、単回用量または多回用量の容器、例えば密封アンプルおよびバイアルで投与することができ、凍結乾燥(freeze−dried)(凍結乾燥(lyophilised))状態で保存されることで、使用直前に滅菌担体液体、例えば注射目的用の水を添加するだけで投与できる。
【0088】
この製法に従って調製される注射液および懸濁液は、滅菌された粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0089】
特に上に述べた成分に加えて、これらの製剤は、その特定の種類の製剤に関して当分野で通例である薬剤も含んでもよいのは言うまでもなく、したがって、例えば経口投与に適している製剤は、香味剤を含んでもよい。
【0090】
本発明の化合物の治療上有効量は、例えば動物の年齢および体重、治療を要する正確な疾患状態、およびその重篤度、製剤の性質、ならびに投与方法を含む種々の要因によって決まり、最終的には治療を行う医師または獣医師によって決定される。しかしながら、例えば結腸癌または乳癌などの腫瘍性成長を治療するための、本発明による化合物の有効量は、一般に1日当たり、受容者(哺乳動物)の体重1kg当たり、0.1から100mgの範囲、特に典型的には1日当たり、体重1kg当たり、1から10mgの範囲である。したがって、体重70kgである成体哺乳動物の1日当たりの実際量は、通常70から700mgであり、この量を、総日用量が同一となるように、1日当たりの単回用量として、または通常1日当たり部分用量の連続(例えば、2、3、4、5、または6回など)で投与することができる。本発明による化合物の塩、または溶媒和物、あるいは生理的機能性誘導体の有効量は、それ自体の本発明による化合物の有効量の一部分として決定することができる。類似の用量が上に挙げた他の状態の治療にも適していることが推測され得る。
【0091】
本発明はさらに、本発明による少なくとも1種の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、塩、溶媒和物、および立体異性体、ならびに少なくとも1種のさらなる薬剤活性成分を含む薬剤に関する。
【0092】
本発明はまた、
(a)有効量の本発明による化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、塩、溶媒和物、および立体異性体と、ならびに
(b)有効量のさらなる薬剤活性成分との別個のパックからなるセット(キット)に関する。
【0093】
このセットは、適切な容器、例えば箱、個別ボトル、袋、またはアンプルなどを含む。このセットは、例えば、有効量の本発明による化合物と、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、塩、溶媒和物、および立体異性体と、ならびに有効量のさらなる薬剤活性成分とを、それぞれ溶解または凍結乾燥形態で含有する別個のアンプルを含むことができる。
【0094】
(使用)
本発明の化合物は、チロシンキナーゼ誘発性疾患の治療における、哺乳動物、特にヒトに対する薬剤活性成分として適している。これらの疾患には、腫瘍細胞の増殖、固形腫瘍の増殖を促進する病的新生血管形成(または血管新生)、眼の新生血管形成(糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性など)、および炎症(乾癬、関節リウマチなど)が含まれる。
【0095】
本発明は、癌を治療または予防する薬剤を調製するための、請求項1に記載の本発明による化合物、および/または生理的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用を包含する。治療に好ましい癌は、脳腫瘍、尿生殖路癌、リンパ系の癌、胃癌、咽頭癌、および肺癌の群に由来する。癌の好ましい形態の他の群は、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、および乳癌である。
【0096】
血管新生が関与する疾患を治療または予防する薬剤を調製するための、請求項1に記載の式Iの化合物、および/または生理的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用も包含される。血管新生が関与するそれらの疾患は、眼疾患、例えば網膜血管形成、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性などである。
【0097】
炎症性疾患を治療または予防する薬剤を調製するための、請求項1に記載の本発明による化合物、および/または生理的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用も本発明の範囲内である。そのような炎症性疾患の例には、関節リウマチ、乾癬、接触皮膚炎、遅延型過敏反応などが含まれる。
【0098】
哺乳動物においてチロシンキナーゼ誘発性疾患またはチロシンキナーゼ誘発性状態を治療または予防する薬剤を調製するための、請求項1に記載の本発明による化合物、および/または生理的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用であって、そのような治療を必要としている病気の哺乳動物に治療上有効量の本発明による化合物を投与する使用も包含される。治療量は、特定の疾患に応じて異なり、当業者によって過度な努力なしに決定され得る。
【0099】
本発明はまた、網膜血管形成を治療または予防する薬剤を調製するための、請求項1に記載の本発明による化合物、および/または生理的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用も包含する。
【0100】
例えば糖尿病性網膜症、および加齢性黄斑変性などの眼疾患を治療または予防する方法も、同様に本発明の一部である。例えば関節リウマチ、乾癬、接触皮膚炎、および遅延型過敏反応などの炎症性疾患を治療または予防、ならびに骨肉腫、変形性関節症、およびくる病の群の骨病変を治療または予防するための使用も、同様に本発明の範囲内である。
【0101】
「チロシンキナーゼ誘発性疾患または状態」という用語は、1種または複数のチロシンキナーゼの活性に依存する病的状態を指す。チロシンキナーゼは、増殖、接着、遊走、および分化を含む種々の細胞活動のシグナル伝達経路に、直接または間接的に関与する。チロシンキナーゼ活性に関連する疾患には、腫瘍細胞の増殖、固形腫瘍の増殖を促進する病的新生血管形成、眼の新生血管形成(糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性など)、および炎症(乾癬、関節リウマチなど)が含まれる。
【0102】
請求項1に記載の本発明による化合物は、癌の治療のために患者に投与することができる。本発明の化合物は、腫瘍血管新生を阻害し、それによって腫瘍の増殖に影響を及ぼす(J.Rak等、Cancer Researh、55:4575〜4580、1995)。請求項1に記載の本発明による化合物の血管新生阻害特性は、網膜血管形成に関連するある種の形態の失明の治療にも適している。
【0103】
請求項1に記載の化合物はまた、骨肉腫、変形性関節症、および腫瘍性骨軟化症としても知られる、くる病などのある種の骨病変の治療にも適している(Hasegawa等、Skeletal Radiol.28、41〜45頁、1999;Gerber等、Nature Medicine、Vol.5、No.6、623〜628頁、1999年6月)。VEGFは、成熟破骨細胞に発現するKDR/Flk−1によって破骨細胞の骨吸収を直接促進するので(FEBS Let.473:161〜164(2000);Endocrinology、141:1667(2000))、本発明の化合物は、骨粗鬆症、およびパジェット病など、骨吸収に関連する状態の治療および予防にも適している。本発明の化合物はまた、虚血後の脳水腫、組織損傷、および再潅流障害を低減することによって、脳卒中のような脳虚血事象後に起こる組織損傷を低減または予防するために用いることもできる(Drug News Perspect 11:265〜270(1998);J.Clin.Invest.104:1613〜1620(1999))。
【0104】
本発明はしたがって、キナーゼシグナル伝達の阻害、調節(regulation)、および/または調整(modulation)が役割を果たす疾患を治療する薬剤を調製するための、請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用に関する。
【0105】
チロシンキナーゼ、およびRafキナーゼからなる群から選択されたキナーゼが好ましい。
【0106】
チロシンキナーゼは、好ましくはTIE−2である。
【0107】
請求項1に記載の化合物によるチロシンキナーゼの阻害により影響を受ける疾患を治療する薬剤を調製するための、請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用が好ましい。
【0108】
請求項1に記載の化合物によるTIE−2の阻害により影響を受ける疾患を治療する薬剤を調製するための使用が特に好ましい。疾患が固形腫瘍である疾患を治療するための使用が特に好ましい。
【0109】
固形腫瘍は、好ましくは、脳腫瘍、尿生殖路の腫瘍、リンパ系の腫瘍、胃腫瘍、咽頭腫瘍、および肺腫瘍からなる群から選択される。
【0110】
固形腫瘍はさらに、好ましくは、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、および乳癌からなる群から選択される。
【0111】
本発明はさらに、血管新生が関与する疾患を治療するための、本発明による化合物の使用に関する。
【0112】
この疾患は、好ましくは、眼疾患である。
【0113】
本発明はさらに、網膜血管形成、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、および/または炎症性疾患を治療するための使用に関する。
【0114】
炎症性疾患は、好ましくは、関節リウマチ、乾癬、接触皮膚炎、および遅延型過敏反応からなる群から選択される。
【0115】
本発明はさらに、骨病変が、骨肉腫、変形性関節症、およびくる病の群に由来する、骨病変を治療するための本発明による化合物の使用に関する。
【0116】
請求項1に記載の式Iの化合物は、Rafキナーゼによって発生、媒介、および/または伝播される疾患であって、Rafキナーゼが、A−Raf、B−Raf、およびRaf−1からなる群から選択される疾患を治療する薬剤の調製に適している。好ましくは過剰増殖性疾患および非過剰増殖性疾患の群の疾患を治療するための使用が好ましい。これらは癌性疾患または非癌性疾患である。非癌性疾患は、乾癬、関節炎、炎症、子宮内膜症、瘢痕、良性前立腺肥大、免疫疾患、自己免疫疾患、および免疫不全疾患からなる群から選択される。
【0117】
癌性疾患は、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、結腸直腸癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、食道癌、婦人科癌、甲状腺癌、リンパ腫、慢性白血病、および急性白血病からなる群から選択される。
【0118】
本発明による化合物は、治療されている状態に対して特に有用であるように選択されるよく知られた他の治療剤と同時に投与してもよい。例えば、骨疾患の場合、好ましい組合せには、例えばアレンドロネートおよびリセドロネートなどの抗吸収性ビスホスホネート;例えばαvβ3アンタゴニストなどのインテグリン遮断薬(以下にさらに定義する);例えばPrempro(登録商標)、Premarin(登録商標)、およびEndometrion(登録商標)などのホルモン置換療法に用いられる結合型エストロゲン;例えばラロキシフェン、ドロロキシフェン、CP−336.156(Pfizer)、およびラソフォキシフェンなどの選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM);カテプシンK阻害剤;ならびにATPプロトンポンプ阻害剤;などとの組合せが含まれる。
【0119】
本発明の化合物はまた、知られている抗癌剤との組合せにも適している。これらの既知の抗癌剤には、以下が含まれる。エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性剤、抗増殖剤、プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、および他の血管新生阻害剤である。本発明の化合物は、放射線療法と同時に投与するのに特に適している。放射線療法と組み合わせたVEGF阻害の相乗効果は、当分野において記載されている(WO00/61186参照)。
【0120】
「エストロゲン受容体モジュレータ」とは、機序にかかわらず、エストロゲンの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体モジュレータの例には、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン、およびSH646が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
「アンドロゲン受容体モジュレータ」とは、機序にかかわらず、アンドロゲンの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体モジュレータの例には、フィナステリド、および他の5α−レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、および酢酸アビラテロンが含まれる。
【0122】
「レチノイド受容体モジュレータ」とは、機序にかかわらず、レチノイドの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。そのようなレチノイド受容体モジュレータの例には、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチンアミド、およびN−4−カルボキシフェニルレチンアミドが含まれる。
【0123】
「細胞毒性剤」とは、主として細胞機能に対する直接作用によって細胞死を引き起こすか、あるいは細胞減数分裂を阻害または妨害する化合物を指し、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレータ、ミクロチューブリン阻害剤、およびトポイソメラーゼ阻害剤が含まれる。
【0124】
細胞毒性剤の例には、チラパジミン(tirapazimine)、セルテネフ、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモダルシトール、ラニムスチン、フォテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、トシル酸インプロスルファン、トロフォスファミド(trofosfamide)、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム(dibrospidium chloride)、プミテパ(pumitepa)、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン(profiromycin)、シスプラチン、イロフルベン、デキシフォスファミド(dexifosfamide)、シス−アミンジクロロ(2−メチルピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルフォスファミド、GPX100、(トランス,トランス,トランス)−ビス−μ−(ヘキサン−1,6−ジアミン)μ−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン(diarisidinyl−spermine)、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン(zorubicin)、イダルビシン、ダウノルビシン、ビスアントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド(pinafide)、バルルビシン、アムルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アナマイシン、ガラルビシン(galarubicin)、エリナフィド、MEN10755、および4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニルダウノルビシンが含まれるが、これらに限定されない(WO00/50032を参照のこと)。
【0125】
ミクロチューブリン阻害剤の例には、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、アウリスタチン(auristatin)、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン(cryptophycin)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、およびBMS188797が含まれる。
【0126】
トポイソメラーゼ阻害剤のいくつかの例は、トポテカン、ヒカプタミン(hycaptamine)、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソベンジリデン−シャールトルーシン(chartreusin)、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ−[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルルトテカン(lurtotecan)、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシエトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン(asulacrine)、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン(one)、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]フェナンスリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソキノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン(one)、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン(one)、およびジメスナである。
【0127】
「抗増殖剤」には、アンチセンスRNAおよびDNAオリゴヌクレオチド、例えばG3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、およびINX3001など、ならびに代謝拮抗剤、例えばエノシタビン、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキサート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクホスフェート、フォステアビン(fosteabine)ナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド(paltitrexid)、エミテフール、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナシディン、トロキサシタビン(troxacitabine)、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b]−1,4−チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール(lometrexol)、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、および3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾンなどが含まれる。「抗増殖剤」にはさらに、トラスツズマブなど「血管新生阻害剤」の項に挙げたもの以外の増殖因子に対するモノクローナル抗体、および組換えウイルス媒介遺伝子転移を介して送達され得るp53などの腫瘍抑制遺伝子が含まれる(例えば、米国特許第6,069,134号を参照のこと)。
【0128】
(アッセイ)
実施例に記載の本発明の化合物を、以下に記載のアッセイによって試験し、キナーゼ阻害活性を有することを見出した。他のアッセイは文献から知られており、当分野の技術者は容易に実施することができる(例えば、Dhanabal等、Cancer Res.59:189〜197;Xin等、J.Biol.Chem.274:9116〜9121;Sheu等、Anticancer Res.18:4435〜4441;Ausprunk等、Dev.Biol.38:237〜248;Gimbrone等、J.Natl.Cancer Inst.52:413〜427;Nicosia等、In Vitro 18:538〜549を参照のこと)。
【0129】
(VEGF受容体キナーゼアッセイ)
ポリグルタミン酸、チロシンの4:1基質(pEY)への放射性標識リン酸の取り込みによって、VEGF受容体キナーゼ活性を測定する。そのリン酸化pEY生成物を濾過膜にトラップし、放射性標識リン酸の取り込みを、シンチレーションカウントによって定量する。
【0130】
材料
VEGF受容体キナーゼ
ヒトKDR(Terman、B.I.等、Oncogene(1991)Vol.6、1677〜1683頁)、およびFlt−1(Shibuya、M.等、Oncogene(1990)Vol.5、519〜524)の細胞内チロシンキナーゼドメインを、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子融合タンパク質としてクローン化した。これは、KDRキナーゼの細胞質ドメインを、GST遺伝子のカルボキシ末端においてインフレーム融合としてクローニングすることによって行った。可溶性組換えGST−キナーゼドメイン融合タンパク質を、バキュロウイルス発現ベクター(pAcG2T、Pharmingen)を用いて、Spodoptera frugiperda(Sf21)昆虫細胞(Invitrogen)に発現させた。
溶解緩衝液
50mMのトリスpH7.4、0.5MのNaCl、5mMのDTT、1mMのEDTA、0.5%のトリトンX−100、10%のグリセロール、それぞれ10mg/mlのロイペプチン、ペプスタチン、およびアプロチニン、ならびに1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(いずれもSigma)。
洗浄緩衝液
50mMのトリスpH7.4、0.5MのNaCl、5mMのDTT、1mMのEDTA、0.05%のトリトンX−100、10%のグリセロール、それぞれ10mg/mlのロイペプチン、ペプスタチン、およびアプロチニン、ならびに1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド。
透析緩衝液
50mMのトリスpH7.4、0.5MのNaCl、5mMのDTT、1mMのEDTA、0.05%のトリトンX−100、50%のグリセロール、それぞれ10mg/mlのロイペプチン、ペプスタチン、およびアプロチニン、ならびに1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド。
10×反応緩衝液
200mMのトリス、pH7.4、1.0MのNaCl、50mMのMnCl2、10mMのDTT、および5mg/mlのウシ血清アルブミン[BSA](Sigma)。
酵素希釈緩衝液
50mMのトリス、pH7.4、0.1MのNaCl、1mMのDTT、10%のグリセロール、100mg/mlのBSA。
10×基質
750μg/mlのポリ(グルタミン酸/チロシン4:1)(Sigma)。
停止溶液
30%のトリクロロ酢酸、0.2Mのピロリン酸ナトリウム(共にFisher)。
洗浄溶液
15%のトリクロロ酢酸、0.2Mのピロリン酸ナトリウム。
フィルタプレート
Millipore#MAFC NOB、GF/Cガラスファイバ96ウェルプレート。
【0131】
方法A−タンパク質精製
1.Sf21細胞を、5ウイルス粒子/細胞の感染多重度で組換えウイルスによって感染させ、27℃で48時間増殖させた。
2.すべてのステップを4℃で行った。感染細胞を1000×gの遠心分離によって収穫し、1/10容量の溶解緩衝液を用いて4℃で30分間溶解し、その後100.000×gで1時間遠心分離した。次いで、上澄みを、溶解緩衝液で平衡させたグルタチオンSepharoseカラム(Pharmacia)に通し、5容量の同じ緩衝液で洗浄、続いて5容量の洗浄緩衝液で洗浄した。組換えGST−KDRタンパク質を、洗浄緩衝液/10mM還元グルタチオン(Sigma)で溶出し、透析緩衝液で透析した。
【0132】
方法B−VEGF受容体キナーゼアッセイ
1.50%DMSO中のアッセイに阻害剤またはコントロール5μlを添加する。
2.10×反応緩衝液5μl、25mMのATP/10μCi[33P]ATP(Amersham)5μl、および10×基質5μlを含有する反応混合物35μlを添加する。
3.酵素希釈緩衝液中のKDR(25nM)10μlを添加して、反応を開始する。
4.混合し、室温で15分間インキュベートする。
5.停止溶液50μlを添加して、停止する。
6.4℃で15分間インキュベートする。
7.アリコート90μlをフィルタプレートに移す。
8.吸引し、洗浄溶液で3回洗浄する。
9.シンチレーションカクテル30μlを添加し、プレートを密封して、Wallac Microbetaシンチレーションカウンタでカウントする。
【0133】
ヒト臍静脈内皮細胞有糸分裂誘発アッセイ
増殖因子に対するマイトジェン応答を媒介するVEGF受容体の発現は、血管内皮細胞に主として限定される。培養中のヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)は、VEGF処理に応答して増殖し、VEGF刺激に対するKDRキナーゼ阻害剤の効果を定量するためのアッセイ系として用いることができる。記載のアッセイでは、静止状態のHUVEC単層を、ビヒクルまたは試験化合物で処理し、2時間後にVEGFまたは塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加する。VEGFまたはbFGFに対するマイトジェン応答を、細胞DNAへの[3H]チミジンの取り込みを測定することによって求める。
【0134】
材料
HUVEC
1次培養単離物として凍結したHUVECを、Clonetics Corp.から入手する。細胞を内皮増殖培地(EGM、Clonetics)に維持し、継代3〜7でマイトジェンアッセイに用いる。
培養プレート
NUNCLON96ウェルポリスチレン組織培養プレート(NUNC#167008)
アッセイ培地
1g/mlグルコース(低グルコースDMEM、Mediatech)および10%(v/v)ウシ胎児血清(Clonetics)を含有するダルベッコ改変イーグル培地
試験化合物
試験化合物の作業ストック溶液を、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)で連続希釈して、所望の最終濃度の400倍濃度とする。1倍濃度の最終希釈液は、細胞への添加の直前にアッセイ培地に加えて作製する。
10×[3H]チミジン
[メチル−3H]チミジン(20Ci/mmol、Dupont−NEN)を希釈して、低グルコースDMEM中80μCi/mlとする。
細胞洗浄培地
1mg/mlウシ血清アルブミン(Boehringer−Mannheim)を含有するハンクス平衡塩溶液(Mediatech)。
細胞溶解溶液
1NのNaOH、2%(w/v)Na2CO3
【0135】
方法1
EGMに維持したHUVEC単層をトリプシン処理によって収穫し、96ウェルプレートで、ウェル当たり、アッセイ培地100μl当たり細胞4000個の密度で平板培養する。5%CO2を含有する加湿雰囲気中37℃で24時間、細胞を増殖停止する。
【0136】
方法2
増殖停止培地を、ビヒクル(0.25%(v/v)DMSO)または所望の最終濃度の試験化合物を含有するアッセイ培地100μlと交換する。判定はすべて3重で行う。次いで、37℃、5%CO2で2時間インキュベートして、試験化合物を細胞に取り込ませる。
【0137】
方法3
2時間の前処理後、アッセイ培地、10×VEGF溶液、または10×bFGF溶液のいずれかをウェル当たり10μl添加することによって、細胞を刺激する。次いで、細胞を37℃、5%CO2でインキュベートする。
【0138】
方法4
増殖因子の存在下、24時間後に、10×[3H]チミジン(10μl/ウェル)を添加する。
【0139】
方法5
3H]チミジンを添加して3日後、培地を吸引によって除去し、細胞を細胞洗浄培地で2回洗浄する(400μl/ウェル、次いで200μl/ウェル)。洗浄した接着細胞を、細胞溶解溶液(100μl/ウェル)を添加し、30分間37℃に加温することによって溶解する。細胞溶解物を、水150μlを含有する7mlガラスシンチレーションバイアルに移す。シンチレーションカクテル(5ml/バイアル)を添加し、細胞関連放射能を液体シンチレーション分光分析法によって求める。
【0140】
これらのアッセイによれば、式Iの化合物はVEGFの阻害剤であり、したがって、例えば糖尿病性網膜症のような眼疾患の治療、および例えば固形腫瘍のような癌の治療などにおいて、血管新生の阻害に適している。本発明の化合物は、培養中のヒト血管内皮細胞のVEGF刺激による有糸分裂誘発を阻害し、IC50値は0.01〜5.0μMの間である。これらの化合物はさらに、関連するチロシンキナーゼに対して選択性を示す(例えば、FGFR1、およびSrcファミリー。SrcキナーゼおよびVEGFRキナーゼの関係に関しては、Eliceiri等、Molecular Cell、Vol.4、915〜924頁、1999年12月を参照のこと)。
【0141】
TIE−2試験は、例えばWO02/44156に記載の方法と同様に行うことができる。このアッセイは、放射性33P−ATPの存在下、TIE−2キナーゼによる基質ポリ(Glu、Tyr)のリン酸化における試験物質の阻害活性を求めるものである。リン酸化された基質は、インキュベーション時に「フラッシュプレート」マイクロタイタープレートの表面に結合する。反応混合物を除去した後、マイクロタイタープレートを多回数洗浄し、続いて表面上の放射性を測定する。測定される物質の阻害効果は、障害を受けていない酵素反応と比べて低い放射活性をもたらす。
【0142】
上記および下記において、すべての温度は℃で示される。以下の実施例において、「通常の後処理」は、必要であれば水を添加し、最終生成物の構成に応じて、必要であればpHを2から10に調整し、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させ、生成物をシリカゲルのクロマトグラフィおよび/または結晶化によって精製することを意味する。シリカゲル上のRf値;溶出液:酢酸エチル/メタノール9:1。
質量分析(MS):EI(電子衝撃イオン化)M+
FAB(高速原子衝撃)(M+H)+
ESI(エレクトロスプレーイオン化)(M+H)+(他に指定のない限り)
(実施例)
実施例1
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素(「A1」)
この調製は、以下のスキームと同様に行う。
【0143】
【化1】

【0144】
1.1 4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニルアミン(「A2」)の調製
ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−オール1.8gおよび4−フルオロニトロベンゼン1.3mlを、DMF25mlに溶解し、炭酸セシウム3.9gを添加する。この反応混合物を、85℃で一晩攪拌する。後処理のため、混合物に水を添加し、酢酸エチルで抽出する。回収した有機相を、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレータで蒸発させる。残渣をジエチルエーテルで粉砕し、2.8gの5−(4−ニトロフェノキシ)ベンゾ−1,2,5−チアジアゾールを得る。Rf(CH2Cl2)0.65;EI−MS(M+H)+274。
【0145】
このニトロ化合物を、ラネーニッケルを用いて水素化し、所望の化合物を得る。石油エーテル/酢酸エチルによるクロマトグラフィにより、1.3gの黄色固体物質(「A2」)を得る。Rf(石油エーテル/酢酸エチル 1/1)0.75;EI−MS(M+H)+244。
1.2 「A2」100mgおよび2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート0.1mlを、ジクロロメタン5mlに溶解し、トリエチルアミン0.12mlを添加する。この混合物を室温で一晩攪拌する。後処理のため、溶媒をロータベーパー(Rotavapor)で除去し、残渣を、分取HPLCを用いて精製する。
カラム:RP18(7μm)Lichrosorb250×25
溶離液:A:98 H2O、2 CH3CN、0.1%TFA
B:10 H2O、90 CH3CN、0.1%TFA
UV:225nm
流速:10ml/分
69mgの白色固体物質(「A1、トリフルオロ酢酸塩」)を得る。Rf(石油エーテル/酢酸エチル 1/1)0.63;EI−MS(M+H)+449。
以下の化合物を同様に得る。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
【表3】

【0149】
【表4】

【0150】
【表5】

【0151】
薬理試験結果
【0152】
【表6】

【0153】
以下の実施例は、薬剤製剤に関する。
【0154】
実施例A:注射バイアル
本発明の活性成分100gおよびリン酸水素二ナトリウム5gの再蒸留水3l中溶液を、2Nの塩酸を用いてpH6.5に調整し、無菌濾過し、注射バイアルに移し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で密封する。各注射バイアルは、5mgの活性成分を含有する。
【0155】
実施例B:坐剤
本発明の活性剤20gとダイズレシチン100g、カカオ脂1400gとの混合物を溶解し、鋳型に注入し、冷ます。各坐剤は、20mgの活性成分を含有す2る。
【0156】
実施例C:液剤
本発明の活性成分1g、NaH2PO4・2H2O9.38g、Na2HPO4・12H2O28.48g、および塩化ベンザルコニウム0.1gから再蒸留水940ml中の溶液を調製する。pHを6.8に調整し、溶液を1lとし、照射により滅菌する。この液剤は、点眼液の形態で用いることができる。
【0157】
実施例D:軟膏剤
本発明の活性成分500mgを、無菌条件下、ワセリン(Vaseline)99.5gと混合する。
【0158】
実施例E:錠剤
本発明の活性成分1kg、ラクトース4kg、ジャガイモデンプン1.2kg、タルク0.2kg、およびステアリン酸マグネシウム0.1kgの混合物を圧縮し、各錠剤が10mgの活性成分を含むように、通常の方法で錠剤を得る。
【0159】
実施例F:被覆錠剤
錠剤を実施例Eと同様に圧縮し、続いて、スクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカント、および染料の被覆物を用いて通常の方法で被覆する。
【0160】
実施例G:カプセル剤
本発明の活性成分2kgを、各カプセル剤が20mgの活性成分を含有するように、通常の方法で硬質ゼラチンカプセルに導入する。
【0161】
実施例H:アンプル
本発明の活性成分1kgの再蒸留水60l中溶液を、無菌濾過し、アンプルに移し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で密封する。各アンプルは、10mgの活性成分を含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−メチル−4−{4−[3−(フルオロトリフルオロメチルフェニル)ウレイド]フェノキシ}ピリジン−2−カルボキサミド、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]−尿素、
1−[4−(2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
7−{4−[3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]フェノキシ}ベンゾフラン−2−カルボキサミド、
1−[4−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(6−メトキシピリジン−3−イルオキシ)−フェニル]尿素、
メチル(5−{4−[3−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]フェノキシ}−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)カルバメート、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−イルオキシ)フェニル]尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(2−メチルベンゾチアゾール−5−イルオキシ)フェニル]尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(1H−インドール−6−イルオキシ)フェニル]−尿素、
1−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(イミダゾ[1,2−a]キノリン−9−イルオキシ)フェニル]尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(イミダゾ[1,2−a]キノリン−9−イルオキシ)フェニル]尿素、
1−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(1H−インドール−5−イルオキシ)フェニル]−尿素、
メチル 7−{4−[3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]フェノキシ}−ベンゾフラン−2−カルボキシレート、
1−[4−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルオキシ)フェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−4−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−3−[4−(6−メトキシピリジン−3−イルオキシ)−フェニル]尿素、
1−[4−(イミダゾ[1,2−a]キノリン−9−イルオキシ)フェニル]−3−(4−トリフルオロメトキシフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−l,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−2−メチルフェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−2−メチルフェニル]−3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−3−フルオロフェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(2−アミノベンゾチアジアゾール−6−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
1−[4−(2−アミノ−4,7−ジメチルベンゾチアジアゾール−6−イルオキシ)フェニル]−3−(2−フルオロ−5−トリフルオロメチルフェニル)尿素、
N−メチル−4−{4−[3−(2−フルオロ−4−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]フェニルスルファニル}ピリジン−2−カルボキサミド、
からなる群から選択された尿素誘導体、
ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、塩、溶媒和物、および立体異性体。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1種の化合物と、
ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、塩、溶媒和物、および立体異性体と、
ならびに場合によって賦形剤および補助剤とを含む薬剤。
【請求項3】
キナーゼシグナル伝達の阻害、調節、および/または調整が役割を果たす疾患を治療する薬剤を調製するための、
請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、塩、溶媒和物、および立体異性体の使用。
【請求項4】
キナーゼが、チロシンキナーゼおよび/またはRafキナーゼからなる群から選択される請求項3に記載の使用。
【請求項5】
チロシンキナーゼが、TIE−2である請求項1に記載の使用。
【請求項6】
式Iの化合物によるチロシンキナーゼの阻害により影響を受ける疾患を治療する薬剤を調製するための、
請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、塩、溶媒和物、および立体異性体の請求項4に記載の使用。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物によるTIE−2の阻害により影響を受ける疾患を治療する薬剤を調製するための請求項6に記載の使用。
【請求項8】
治療される疾患が、固形腫瘍である請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
固形腫瘍が、脳腫瘍、尿生殖路の腫瘍、リンパ系の腫瘍、胃腫瘍、咽頭腫瘍、および肺腫瘍の群に由来する請求項8に記載の使用。
【請求項10】
固形腫瘍が、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、および乳癌の群に由来する請求項8に記載の使用。
【請求項11】
血管新生が関与する疾患を治療するための請求項6または7に記載の使用。
【請求項12】
疾患が、眼疾患である請求項11に記載の使用。
【請求項13】
網膜血管形成、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、および/または炎症性疾患を治療するための請求項6または7に記載の使用。
【請求項14】
炎症性疾患が、関節リウマチ、乾癬、接触皮膚炎、および遅延型過敏反応の群に由来する請求項13に記載の使用。
【請求項15】
骨肉腫、変形性関節症、およびくる病の群に由来する骨病変を治療するための請求項6または7に記載の使用。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物、ならびに/または、あらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体、の少なくとも1種と、少なくとも1種のさらなる薬剤活性成分とを含む薬剤。
【請求項17】
(a)有効量の請求項1に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、塩、溶媒和物、および立体異性体と、
ならびに、
(b)有効量のさらなる薬剤活性成分と、
の別個のパックからなるセット(キット)。
【請求項18】
固形腫瘍を治療する薬剤を調製するための、請求項1に記載の化合物、ならびに/または生理的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用であって、
治療上有効量の請求項1に記載の化合物が、1)エストロゲン受容体モジュレータ、2)アンドロゲン受容体モジュレータ、3)レチノイド受容体モジュレータ、4)細胞毒性剤、5)抗増殖剤、6)プレニル‐タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、7)HMG‐CoAレダクターゼ阻害剤、8)HIVプロテアーゼ阻害剤、9)逆転写酵素阻害剤、および10)他の血管新生阻害剤の群の化合物と組み合わせて投与される使用。
【請求項19】
固形腫瘍を治療する薬剤を調製するための、請求項1に記載の化合物、ならびに/または生理的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用であって、
治療上有効量の請求項1に記載の化合物が、放射線療法、ならびに1)エストロゲン受容体モジュレータ、2)アンドロゲン受容体モジュレータ、3)レチノイド受容体モジュレータ、4)細胞毒性剤、5)抗増殖剤、6)プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、8)HIVプロテアーゼ阻害剤、9)逆転写酵素阻害剤、および10)他の血管新生阻害剤の群の化合物と組み合わせて投与される使用。
【請求項20】
TIE−2の活性障害に基づく疾患を治療する薬剤を調製するための、請求項3、4、または5に記載の使用であって、治療上有効量の請求項1に記載の化合物が、増殖因子受容体阻害剤と組み合わせて投与される使用。
【請求項21】
Rafキナーゼによって発生、媒介、および/または伝播される疾患を治療する薬剤を調製するための、
請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、塩、溶媒和物、および立体異性体の請求項3または4に記載の使用。
【請求項22】
Rafキナーゼが、A−Raf、B−Raf、およびRaf−1からなる群から選択される請求項21に記載の使用。
【請求項23】
疾患が、過剰増殖性疾患、および非過剰増殖性疾患からなる群から選択される請求項21に記載の使用。
【請求項24】
疾患が、癌性である請求項21または23に記載の使用。
【請求項25】
疾患が、非癌性である請求項21または23に記載の使用。
【請求項26】
非癌性疾患が、乾癬、関節炎、炎症、子宮内膜症、瘢痕、良性前立腺肥大、免疫疾患、自己免疫疾患、および免疫不全疾患からなる群から選択される請求項21、23、または25に記載の使用。
【請求項27】
疾患が、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、結腸直腸癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、食道癌、婦人科癌、甲状腺癌、リンパ腫、慢性白血病、および急性白血病からなる群から選択される請求項21、23、および24の一項に記載の使用。

【公表番号】特表2007−500136(P2007−500136A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521413(P2006−521413)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007224
【国際公開番号】WO2005/019192
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】