説明

尿臭生成抑制用組成物

【課題】尿中に溶解又は分散したβ-グルクロニダーゼだけでなく、微生物の細胞内β-グルクロニダーゼに対してもβ-グルクロニダーゼ阻害剤を有効に作用させることによって、尿に由来する悪臭の生成を持続的に抑制できる組成物を提供する。
【解決手段】β-グルクロニダーゼ阻害剤と0.01〜10重量%のアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤とを含有する尿臭生成抑制用組成物、並びに、当該尿臭生成抑制用組成物を、対象物に尿が付着する前又は尿が付着してから乾燥する前に適用する尿臭の生成抑制方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β-グルクロニダーゼ阻害剤と0.01〜10重量%のアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤とを含有する尿臭生成抑制用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の衛生志向の高まりから、見た目の汚ればかりでなく汚れの存在を想起させる臭気についても除去することが強く望まれている。特に尿及び便に関しては存在を生活環境から切り離すことはできず、更に、その臭気は排泄物そのものを強く想起させることから、ヒトに与える不快感は生活環境悪臭の中でもとりわけ大きい。トイレにおいては、便は水洗により容易に屋外に排出することができるが、尿に関しては少量が飛沫として便器周辺部、又はトイレの床、内壁等に残り、その存在が目視で確認しづらいことから長期に渡ってその場に残り、悪臭の発生源となりやすい。また、下着やオムツ、生理用品などのサニタリー製品も、尿が付着した状態で生活環境中に一定期間存在する場面があり、尿を由来とした悪臭の発生源となりうる。
【0003】
一方、通常、排尿直後の尿の臭気は非常に弱く、尿に由来する悪臭成分の大部分は微生物由来の代謝酵素の作用によって時間の経過に伴い発生してくるものと考えられている。このため、尿からの悪臭成分の生成を元から持続的に抑制できる技術の開発が望まれている。
【0004】
このような尿由来の悪臭成分としては、尿素からウレアーゼによって生じるアンモニアが挙げられ、その生成抑制技術として、ウレアーゼ活性阻害剤を用いたアンモニアの発生抑制技術が提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0005】
しかしながら、アンモニアは悪臭成分としては閾値が高い(高濃度でないと臭いを感じない)ため、水洗式の普及により排泄物が即時的に屋外へ排出されるようになった現在においては、アンモニア臭が強く感じられる場面は非常に稀である。
【0006】
また、特許文献5では微生物由来のβ-グルクロニダーゼによって尿より代謝生成されるフェノール化合物及びインドール類が尿臭に大きく寄与するとして、β-グルクロニダーゼ阻害剤を用いた尿臭気の生成抑制技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-255290号公報
【特許文献2】特開2004-91338号公報
【特許文献3】特開平5-137774号公報
【特許文献4】特開2006-192127号公報
【特許文献5】国際公開第2009/037861号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献5の技術は、微生物由来のβ-グルクロニダーゼが細胞外に放出されている場合に特に有効であると考えられる。しかしながら、尿臭発生の現場においてβ-グルクロニダーゼは細胞外だけでなく、細胞内や、グラム陰性菌におけるペリプラズム空間等の外部から剤が作用しづらい領域にも存在するものと考えられ、このような細胞構造によって保持されたβ-グルクロニダーゼ(以下、「細胞内β-グルクロニダーゼ」という)に対しても有効な技術については知られていない。特に微生物の細胞膜を破壊しない場合、例えば殺菌剤を含まない場合、細胞内β‐グルクロニダーゼにβ‐グルクロニダーゼ阻害剤を有効に作用させることは極めて困難であると考えられる。
【0009】
即ち、本発明の課題は、尿中に溶解又は分散したβ-グルクロニダーゼだけでなく、微生物の細胞内β-グルクロニダーゼに対してもβ-グルクロニダーゼ活性を効果的に阻害することによって、尿に由来する悪臭の生成を効果的に抑制できる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定の界面活性剤は殺菌効果を発現しない、即ち細胞膜を破壊できない濃度であっても、驚くべきことに、β‐グルクロニダーゼ阻害剤と併用することによって、微生物の細胞内β-グルクロニダーゼに対するβ-グルクロニダーゼ阻害剤の効果を向上させることを見出した。また、これよりβ-グルクロニダーゼ阻害剤と特定の界面活性剤からなる組成物が不快な尿臭の発生を持続的に抑制し、該組成物を尿が関連する製品に使用することにより、これら製品に対して尿臭生成抑制効果を付与できることを見出した。
【0011】
即ち本発明は、β-グルクロニダーゼ阻害剤と0.01〜10重量%のアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤とを含有する尿臭生成抑制用組成物を提供するものである。
【0012】
更に本発明は、上記尿臭生成抑制用組成物を、吐出装置を備える容器に収容してなる吐出型製品を提供するものである。
【0013】
更に本発明は、上記尿臭生成抑制用組成物を、対象物に尿が付着する前又は尿が付着してから乾燥する前に適用する尿臭の生成抑制方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の尿臭生成抑制用組成物は、尿から時間の経過に伴い生成する臭気を持続的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】界面活性剤を併用することによる、菌体に対するβ-グルクロニダーゼ阻害剤の浸透量又は付着量への影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の尿臭生成抑制用組成物は、尿中に溶解又は分散したβ-グルクロニダーゼだけでなく、微生物、特に尿臭産生菌の細胞内β-グルクロニダーゼに対しても、その活性を効果的に抑制し、これによってトイレ環境、サニタリー製品、下着等の衣類又は肌、あるいは寝具等の尿が付着する恐れのあるあらゆる物品あるいは部位について、付着した尿から時間の経過に伴い生成する臭気を持続的に抑制する。このため本発明の尿臭生成抑制用組成物は優れた防臭効果を有する洗浄剤、消臭剤等の環境衛生製品、及びオムツ、生理用品、犬、猫等のペット用排泄物シート等の動物の排泄物関連品等のサニタリー製品において有用である。
【0017】
上記において尿臭産生菌とは、尿中又は尿に関連した環境に棲息する微生物の中でも特にβ-グルクロニダーゼ活性を有するものであり、ヒト等の動物の尿、便、若しくは尿と便の混合物、好ましくは便器やトイレ床等のトイレ環境内やサニタリー製品等の対象物に付着した尿、便、若しくは尿と便の混合物、又はこれらが付着若しくは接触した履歴を有する便器やトイレ床等のトイレ環境内やサニタリー製品等の付着物から抽出したβ−グルクロニダーゼ活性菌であり、例えばスタフィロコッカス属細菌、大腸菌等が挙げられる。
【0018】
また本発明において細胞内β-グルクロニダーゼとは、細胞内、細胞膜又はグラム陰性菌におけるペリプラズム空間等に存在し、このような細胞構造によって保持されたβ-グルクロニダーゼと定義され、細胞質中に存在するβ-グルクロニダーゼには限定されない。本発明において尿臭産生菌の細胞内β-グルクロニダーゼは、例えば尿臭産生菌をβ-グルクロニダーゼが発現する条件で培養し、遠心操作によって培養上清中に溶解又は分散したβ-グルクロニダーゼを除いた菌体部分を好適に用いることができる。
【0019】
また、本発明の尿臭生成抑制用組成物は、β-グルクロニダーゼ活性を効果的に抑制するものであることから、β-グルクロニダーゼの作用によって生じる尿臭以外の様々な課題を解決する手段にも用いることができ、例えば、揮発性ステロイドに由来する体臭の生成抑制剤、膀胱癌又は大腸癌の発生を低減させる薬剤又は食品としても用いることができる。
【0020】
〔β-グルクロニダーゼ阻害剤〕
β-グルクロニダーゼとは、各種のアルコール類、フェノール類、アミン類等がグルクロン酸抱合された化合物(グルクロニド)を加水分解する酵素であり、細菌、真菌、植物、動物など多くの生物に存在することが知られている。体外に排出された尿の分解には微生物の関与が大きいため、本発明においては、細菌及び真菌由来のβ-グルクロニダーゼが重要である。β-グルクロニダーゼを有することが知られる微生物としては、例えばEscherichia coliLactobacillus brevisPropionibacterium acnesClostridium perfringensStaphylococcus haemolyticusStreptococcus agalactiaeStreptococcus pyogenesHaemophilus somunusShigela sonneiAspergillus niger等が挙げられ、これら微生物に由来するβ-グルクロニダーゼはいずれも共通のドメインを有する酵素群に分類される。更にはヒト血漿由来のβ-グルクロニダーゼも同様のタンパク質群に分類される。
【0021】
即ち本発明においてβ-グルクロニダーゼ阻害剤とは、β-グルクロニダーゼに作用することによってグルクロニドの加水分解反応を抑制するものであり、細菌又は真菌由来のβ-グルクロニダーゼを用いた試験において抑制効果が示されるものが好ましく、更には大腸菌由来のβ-グルクロニダーゼを用いた試験において抑制効果が示されるものがより好ましい。
【0022】
以下に、このようなβ-グルクロニダーゼ阻害剤を列記するが、本発明において用いられるβ-グルクロニダーゼ阻害剤は上記の作用を有するものであればよく、以下に記載するものに限定されるものではない。
【0023】
1.次の一般式(1)で表される大環状ケトン。
【0024】
【化1】

【0025】
〔式中、n1は9〜13の整数を示し、m1は0〜2の整数を示し、破線部に一つの二重結合を含んでいてもよい。〕
【0026】
例えば、3-メチル-4(5)-シクロペンタデセン-1-オン(Firmenich社製品名;ムセノンデルタ)、3-メチルシクロペンタデカノン(Firmenich社製品名;ムスコン)、4-シクロペンタデセン-1-オン(Firmenich社製品名;エギザルテノン、IFF社製品名:ムスクZ-4)、5-シクロヘキサデセン-1-オン(曽田香料社製品名;ムスクTM2)、8-シクロヘキサデセン-1-オン(Symrise社製品名;グロバノン)、9-シクロヘプタデセン-1-オン(Firmenich社製品名;シベトン)、シクロペンタデカノン(Firmenich社製品名;エグザルトン)が挙げられる。
【0027】
一般式(1)で表される大環状ケトン化合物のうち、環状構造内に二重結合を一つ含むものが好ましく、例えば、3-メチル-4(5)-シクロペンタデセン-1-オン、4-シクロペンタデセン-1-オン、5-シクロヘキサデセン-1-オン、8-シクロヘキサデセン-1-オン、9-シクロヘプタデセン-1-オンが挙げられる。更に、この二重結合が、ケトンのカルボニル基から最も離れた位置の炭素−炭素結合、又はこれに隣接する炭素−炭素結合に存在することが好ましく、例えば、8-シクロヘキサデセン-1-オン、9-シクロヘプタデセン-1-オンが挙げられる。また、一般式(1)において、n1+m1は、9〜13であることが好ましく、n1は、11又は12であることが好ましい。
【0028】
2.次の一般式(2)で表される大環状ラクトン。
【0029】
【化2】

【0030】
〔式中、n2は9〜13の整数を示し、m2は0〜3の整数を示し、破線部に一つの二重結合を含む。ただし、n2+m2=9〜14を満たすものとする。〕
【0031】
例えば、4(5)-シクロペンタデセノライド(Firmenich社製品名:ハバノライド)、7-シクロヘキサデセノライド(アンブレットライド)が挙げられる。一般式(2)で表される大環状ラクトン化合物において、式中のn2が12であるものが好ましく、特に7-シクロヘキサデセノライドが好ましい。
【0032】
3.次の一般式(3)で表される大環状オキサラクトン。
【0033】
【化3】

【0034】
〔式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、pは6〜11の整数を示し、qは2〜6の整数を示す。ただし、p+q=10〜14を満たすものとする。〕
【0035】
例えば、10-オキサ-16-ヘキサデカノライド(高砂香料工業社製品名;オキサライド)、11-オキサ-16-ヘキサデカノライド(Quest社製品名;ムスクR1)、12-オキサ-16-ヘキサデカノライド(Quest社製品名:セルボライド)が挙げられる。一般式(3)で表される大環状オキサラクトン化合物において、p+qが13であるものが好ましく、特に10-オキサ-16-ヘキサデカノライドが好ましい。
【0036】
4.以下に列記するケトン類。
シクロペンタデカノン(Firmenich社製品名;エグザルトン)、3-メチルシクロペンタデカノン(Firmenich社製品名;ムスコン)、3-メチル-4(5)-シクロペンタデセン-1-オン(Firmenich社製品名;ムセノンデルタ)、4-シクロペンタデセン-1-オン(Firmenich社製品名;エギザルテノン、IFF社製品名:ムスクZ-4)、5-シクロヘキサデセン-1-オン(曽田香料社製品名;ムスクTM2)、8-シクロヘキサデセン-1-オン(Symrise社製品名;グロバノン)、9-シクロヘプタデセン-1-オン(Firmenich社製品名;シベトン)、2-ペンチルシクロペンテノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、シス-ジャスモン、2-ヘプチルシクロペンタノン、α-イオノン、β-イオノン、α-メチルイオノン、γ-メチルイオノン、7-メチル-3,4-ジヒドロ-(2H)-1,5-ベンゾジオキセピン-3-オン(Danisco社製品名:カロン)、ヌートカトン、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-アセトナフトン(IFF社製品名:イソイースーパー)。
【0037】
5.以下に列記するエステル類。
4(5)-シクロペンタデセノライド(Firmenich社製品名:ハバノライド)、7-シクロヘキサデセノライド(アンブレットライド)、10-オキサ-16-ヘキサデカノライド(高砂香料工業社製品名;オキサライド)、11-オキサ-16-ヘキサデカノライド(Quest社製品名;ムスクR1)、シトロネリルアセテート、リナリルアセテート、ターピニルアセテート、シンナミルアセテート、シス-3-ヘキセニルベンゾエート、メチル-2-ノニノエート(慣用名:メチルオクチンカーボネート)。
【0038】
6.以下に列記するアルデヒド類。
アニスアルデヒド、シンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、シクラメンアルデヒド、エチルバニリン、2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-プロパナール(IFF社製品名:ヘリオナール)、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール
(Givaudan社製品名;リリアール)、フェニルアセトアルデヒド、3-フェニルプロパナール、バニリン、4-(トリシクロ[5.2.1.02,6]デシリデン-8)ブテナール(IFF社製品名:デュピカール)、ジメチル テトラヒドロベンズアルデヒド(IFF社製品名:トリプラール、Quest社製品名;リグストラール)、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド(IFF社製品名:リラール)、4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド(IFF社製品名:マイラックアルデヒド)、2,6-ノナジエナール、2-メチルウンデカナール、ハイドロキシシトロネラール、シトラール。
【0039】
7.以下に列記するアルコール類。
シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、リナロールオキサイド、ターピネオール、シンナミックアルコール、オイゲノール、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール(Firmenich社製品名;フェニルヘキサノール)、ベチベロール。
【0040】
8.以下に列記するエーテル類。
エストラゴール、6,6,9α-トリメチル-3α-エチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン(IFF社製品名:グリサルバ)、p-クレジルメチルエーテル、フェニルエチルイソアミルエーテル、1-メトキシシクロドデカン(Symrise社製品名;パリサンディン)、1-メチル-1-メトキシシクロドデカン(Givaudan社製品名;マドロックス)、4,8,12-トリメチル-13-オキサビシクロ[10.1.0]トリデカ-4,8-ジエン(Firmenich社製品名:セドロキサイド)。
【0041】
9.以下に列記するテルペン類。
α-フェランドレン、シトロネリルニトリル。
【0042】
以上のβ-グルクロニダーゼ阻害剤は、動植物から単離したものを用いてもよいし、化学的に合成したものを用いてもよい。また、これらの化合物を含有する精油などの植物抽出物、例えば、ベチバー油、バジル油、クローブ油、シナモン油、グレープフルーツ油等をそのままβ-グルクロニダーゼ阻害剤として用いてもよい。
【0043】
また、グルクロン酸より誘導されるラクトン化合物であるD-グルカロ-1,4-ラクトンや、アセグラトン、D-グルクロン酸、D-ガラクツロン酸等のD-グルカロ-1,4-ラクトン類縁体;リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール等のリゾリン脂質;バイカリン等の生薬成分より見出された天然のグルクロニド型阻害剤;タンニン類、カチオン性高分子等のタンパク質吸着剤も本発明のβ-グルクロニダーゼ阻害剤として用いることができる。
【0044】
更には、オウゴン、ゴバイシ、チョウジ、クチナシ、シコン、シャクヤク、エンメイソウ、カミツレ、ツボクサ、コンフリー、アマチャ、カンゾウ、センブリ、冬虫夏草、チンピ、イラクサ、ハマメリス、アケビ等の植物若しくは菌類又はその抽出物も本発明のβ-グルクロニダーゼ阻害剤として用いることができる。
【0045】
上記の植物及び菌類は、その植物の全草、葉、根、根茎、果実、種子及び花、並びに菌類のうち1以上をそのまま、又は粉砕して用いることができる。抽出物とする場合は、上記植物若しくは菌類又はその粉砕物を、常温又は加温下にて溶媒抽出することにより得ることができる。抽出に際しては、ソックスレー抽出器等の抽出器具を用いることもできる。
【0046】
抽出に用いる溶剤としては水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ピリジン類などが挙げられ、これらを単独又は混合物として用いることができる。また、二酸化炭素等の超臨界流体を用いることもできる。
【0047】
得られた各種溶剤抽出液は、そのままで使用することもでき、その希釈液若しくは濃縮液として、又は濃縮若しくは凍結乾燥した後、粉末状又はペースト状として用いることもできる。また、液々分配等の技術により、上記抽出物から不活性な夾雑物を除去して用いることもでき、本発明においてはこのようなものを用いることが好ましい。これらは必要により公知の方法で脱臭、脱色等の処理を施してから用いてもよい。
【0048】
更に、本発明においてβ-グルクロニダーゼ阻害剤は、重量当りの阻害活性が高いものを選択して用いることがより好ましい。具体的には、反応液中0.1重量%の阻害剤が、1.6 units/mLの大腸菌由来β-グルクロニダーゼType VII-Aによるp-ニトロフェニル-β-D-グルクロニド(PNPG)の加水分解反応(400nm吸光度測定によって定量可能)を60%以上抑制するものが好ましく、更には反応中0.01重量%であっても上記反応を80%以上抑制するものがより好ましい。このような阻害剤として一般式(1)から(3)のいずれかで表される大環状化合物が挙げられ、これらを好適に用いることができる。更には一般式(1)で表される大環状ケトンが好ましく、この中でも8-シクロヘキサデセン-1-オン及び9-シクロヘプタデセン-1-オンがより好ましく、価格及び匂いの観点から8-シクロヘキサデセン-1-オンが特に好ましい。
また、以上に記載のβ-グルクロニダーゼ阻害剤は、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0049】
〔界面活性剤〕
本発明の尿臭生成抑制用組成物は、β-グルクロニダーゼ阻害剤とアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤を併用することによって、尿臭気の生成に関与する微生物の細胞内β-グルクロニダーゼに対してβ-グルクロニダーゼ阻害効果を向上させる。この効果はアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤による殺菌効果発現の有無に依らず得られる。阻害効果向上の詳細な機構は不明であるが、当該界面活性剤が微生物の菌体膜に作用することによってβ-グルクロニダーゼ阻害剤の菌体内への浸透を促進させ、あるいは菌体の膜構造そのものを破壊することによって細胞内β-グルクロニダーゼを外部に露出させ、又は上記以外の何らかの作用若しくはこれらを含む複数の作用により、細胞内β-グルクロニダーゼに対するβ-グルクロニダーゼ阻害剤の効果を向上させる効果を有するものと推測する。
【0050】
本発明で使用されるアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤としては、下記一般式(Surf-1)で示されるものが挙げられる。
【0051】
1−(OR2)ab (Surf-1)
【0052】
〔式中、R1は炭素数8〜16、好ましくは8〜14、より好ましくは8〜12、特に好ましくは10〜12のアルキル基を示し、R2は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、特に好ましくはエチレン基である。Gは還元糖に由来する残基を示し、好ましくはグルコース残基又はガラクトース残基であり、より好ましくはグルコース残基である。aはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す0〜6、特に好ましくは0〜1の数であり、a個のR2は同一でも異なっていても良い。bは還元糖の平均縮合度を示す1〜10、好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜2の数である。〕
【0053】
本発明の尿臭生成抑制用組成物には、上記のアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤に加え、その他の界面活性剤を併用しても構わない。併用できる界面活性剤としては、アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤以外の非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が挙げられ、菌への効果の点から、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤が好ましく、特にカチオン界面活性剤が好ましい。以下、本発明のアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤と併用することが可能な界面活性剤について詳細に述べる。
【0054】
・他の非イオン界面活性剤
非イオン界面活性剤としては、下記一般式(Surf-2)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤、下記一般式(Surf-3)で示されるアミンオキシド型非イオン界面活性剤を挙げることができる。
【0055】
3−(OR4)c−OH (Surf-2)
【0056】
〔式中、R3は炭素数8〜16、好ましくは10〜14の炭化水素基を示し、好ましくはアルキル基であり、R4は炭素数2又は3のアルキレン基を示し、好ましくはエチレン基であり、cはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す3〜20の数であり、c個のR4は同一でも異なっていても良い。〕
【0057】
【化4】

【0058】
〔式中、R5は炭素数8〜16、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜14の直鎖アルキル基を示し、R6は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、Xは−COO−又は−CONH−を示し、dは0又は1の数を示し、R7及びR8はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、好ましくはメチル基である。〕
【0059】
・両性界面活性剤
両性界面活性剤としては、スルホベタイン型両性界面活性剤及びカルボベタイン型両性界面活性剤が好適であり、具体的には下記一般式(Surf-4)で示される化合物が好ましい。
【0060】
【化5】

【0061】
〔式中、R9は炭素数8〜16、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜14の直鎖アルキル基を示し、R10は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、Yは−COO−又は−CONH−を示し、eは0又は1の数を示し、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、好ましくはメチル基であり、R13はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキレン基を示し。Z-は−SO3-又は−COO-を示す。〕
【0062】
・カチオン界面活性剤
カチオン界面活性剤としては、4級窒素原子に結合する4つの基のうち、1つ又は2つが炭素数8〜12のアルキル基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である4級アンモニウム塩型界面活性剤が好ましい。これら4級アンモニウム塩型界面活性剤の多くは抗菌活性を有する。このようなものとして、ジアルキル(好ましくは共に炭素数10)ジメチルアンモニウム塩や、モノアルキル(好ましくは炭素数12)ベンジルジメチルアンモニウム塩が好ましく、ジアルキル(好ましくは共に炭素数10)ジメチルアンモニウム塩がより好ましい。
【0063】
・アニオン界面活性剤
アニオン界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、α-スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩、脂肪酸塩を挙げることができる。
【0064】
〔尿臭生成抑制用組成物〕
本発明の尿臭生成抑制用組成物は、β-グルクロニダーゼ阻害剤と0.01〜10重量%のアルキルグリコシド型界面活性剤とを含有するものである。
【0065】
本発明の尿臭生成抑制用組成物におけるβ-グルクロニダーゼ阻害剤の含有量は、0.001〜10重量%となるようにするのが好ましく、更には0.005〜1重量%、更には0.01〜0.5重量%とするのが好ましい。また、本発明の尿臭生成抑制用組成物は尿成分との混合状態においてβ-グルクロニダーゼ阻害剤の濃度が0.0005〜5重量%となるように用いるのが好ましく、更には0.0025〜0.5重量%、更には0.005〜0.25重量%となるように用いるのが好ましい。
【0066】
本発明の尿臭生成抑制用組成物におけるアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤の含有量は、細胞内β-グルクロニダーゼに対する阻害効果、尿臭生成抑制効果をより向上させると共に、良好な感触を有するものとする観点より、0.01〜10重量%であり、0.05〜2.5重量%であることが好ましい。また、アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤に加え、その他の界面活性剤を併用する場合、本発明の尿臭生成抑制用組成物における界面活性剤の総含有量は、0.01〜10重量%が好ましく、更には0.1〜5重量%が好ましい。
アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤とβ-グルクロニターゼ阻害剤の重量比は、500:1〜1:10が好ましく、更には50:1〜1:5、特に10:1〜1:2が好ましい。
【0067】
(その他)
本発明の尿臭生成抑制用組成物には、更に、例えば抗菌剤、キレート剤、消臭基剤、有機溶剤、油分、アルコール類、pH調整剤、殺菌剤、防腐剤、増粘剤、色素類、香料、保湿剤、柔軟剤、角質保護剤、薬効剤、酸化防止剤、金属塩及び金属イオン類等の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意に配合して製剤化することができる。
【0068】
・抗菌剤
抗菌剤としては、本発明で用いる界面活性剤の1つであるカチオン界面活性剤以外に、木綿金巾#2003に該化合物1重量%を均一に付着させた布を用い、JIS L 1902「繊維製品の抗菌性試験法」の方法で抗菌性試験を行い、阻止帯が見られる化合物を用いることができる。このような化合物としては「香粧品、医薬品防腐・殺菌剤の科学」(吉村孝一、滝川博文著、フレグランスジャーナル社、1990年4月10日発行)の501頁〜564頁に記載されているものから選択することができる。
【0069】
好ましい抗菌性化合物としては、2-(4-チオシアノメチルチオ)ベンズイミダゾール、ポリリジン、ポリヘキサメチレンビグアニド及びグルクロン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、トリクロロカルバニリド、8-オキシキノリン、デヒドロ酢酸、安息香酸エステル類、クロロクレゾール類、クロロチモール、クロロフェン、ジクロロフェン、ブロモクロロフェン、ヘキサクロロフェンから選ばれる1種以上を挙げることができ、特にトリクロサンが抗菌効果の点で好ましい。また、特開平11-189975号公報に記載されているトリクロサン類自体も良好であり、具体的にはジクロロヒドロキシジフェニルエーテル、モノクロロヒドロキシジフェニルエーテルが好ましい。また、上記以外の銀、亜鉛等を含有する無機系抗菌剤も用いることができる。これらの抗菌剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使うこともできる。
【0070】
・キレート剤
キレート剤は、特に、本発明の尿臭生成抑制用組成物をトイレに対して用いる場合には、キレート剤によってトイレに付着する燐酸カルシウムなどの無機物質を除去することによって、尿臭生成抑制効果を向上させることができることから、好適に用いることができる。
【0071】
キレート剤としては、例えば以下に示すような化合物が挙げられる。
(1)フィチン酸などのリン酸系化合物、又はこれらのアルカリ金属塩若しくはアルカノールアミン塩;
(2)エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタンヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸などのホスホン酸、又はこれらのアルカリ金属塩若しくはアルカノールアミン塩;
(3)2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸などのホスホノカルボン酸、又はこれらのアルカリ金属塩若しくはアルカノールアミン塩;
(4)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシンなどのアミノ酸、又はこれらのアルカリ金属塩若しくはアルカノールアミン塩;
(5)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエンコル酸、アルキル(炭素数1〜3)グリシン-N,N-ジ酢酸、アスパラギン酸-N,N-ジ酢酸、セリン-N,N-ジ酢酸、グルタミン酸二酢酸、エチレンジアミンコハク酸などのアミノポリ酢酸、又はこれらの塩、好ましくはアルカリ金属塩、若しくはアルカノールアミン塩;
(6)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキメチル酒石酸などの有機酸、又はこれらのアルカリ金属塩、若しくはアルカノールアミン塩;
(7)アミノポリ(メチレンホスホン酸)若しくはそのアルカリ金属塩若しくはアルカノールアミン塩、又はポリエチレンポリアミンポリ(メチレンホスホン酸)若しくはそのアルカリ金属塩若しくはアルカノールアミン塩。
【0072】
これらの中で、上記(2)、(5)及び(6)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、上記(5)及び(6)からなる群より選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。最も好ましい成分は、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン-N,N-ジ酢酸、クエン酸である。これらのキレート剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使うこともできる。
【0073】
・消臭基剤
消臭基剤の例としては、
酸化鉄、硫酸鉄、塩化鉄、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化銀、酸化銅等の金属化合物;
リン酸、クエン酸、コハク酸等の酸と、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)等の塩基との組み合わせからなるpH緩衝効果を有する酸ないしはその塩;
乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸等のカルボン酸類;
ウンデシレン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール亜鉛などの脂肪酸金属類;
カテキン、ポリフェノール、緑茶抽出物、マッシュルームエキス、木酢液、竹酢液等の植物抽出物系の消臭剤;
鉄、銅などの金属クロロフィリンナトリウム,鉄、銅、コバルトなどの金属フタロシアニン,鉄、銅、コバルト等のテトラスルホン酸フタロシアニン,二酸化チタン、可視光応答型二酸化チタン(窒素ドープ型など)などの触媒型消臭剤;
α-、β-、又はγ-シクロデキストリン、そのメチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体等のシクロデキストリン類;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の悪臭の保留効果があるとされるアルキレングリコール類;
ミリスチン酸エステル類、パルミチン酸エステル類、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、セバシン酸エステル類、クエン酸エステル類等の悪臭の保留効果があるとされるエステル油剤;
多孔メタクリル酸ポリマー、多孔アクリル酸ポリマー等のアクリル酸系ポリマー、多孔ジビニルベンゼンポリマー、多孔スチレン−ジビニルベンゼン−ビニルピリジンポリマー、多孔ジビニルベンゼン−ビニルピリジンポリマー等の芳香族系ポリマー、それらの共重合体等の合成の多孔質ポリマー;キチン、キトサン等の天然の多孔質ポリマー;
活性炭、シリカ、二酸化ケイ素(シリカゲル)、ケイ酸カルシウム、ハイシリカゼオライト(疎水性ゼオライト)、セピオライト、カンクリナイト、ゼオライト、水和酸化ジルコニウム等の無機多孔質物質;
銀担持ゼオライト、銀担持カンクリナイト、銀担持多孔スチレン−ジビニルベンゼン−ビニルピリジンポリマー等の金属担持多孔質
等が挙げられる。これらの消臭基剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使うこともできる。
【0074】
・有機溶剤
有機溶剤としては、水溶性の有機溶剤が好ましく、例えば、
エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブチルアルコール等のアルコール類;
エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、ヘキシレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、グリセリン、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類;
エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル等のエーテル類
等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使うこともできる。
【0075】
〔尿臭生成抑制方法、製品形態〕
本発明の尿臭生成抑制用組成物を、家庭用及び施設用などの製品中に有効量含有させ、あるいはそのまま用いることにより、尿に由来する悪臭の生成に対し高い抑制効果、防臭効果を奏することができる。また、本発明の尿臭生成抑制用組成物を、対象物(尿臭の発生を抑制しようとする物)に、尿が付着する前又は尿が付着してから付着した尿が乾燥する前に、好ましくは尿が付着してから1時間以内、更に好ましくは10分以内に適用することにより、尿臭の生成を効果的に抑制することができる。
【0076】
上記尿とは、ヒト由来のものに限定されるものではなく、犬や猫を代表とするペット等の動物由来の尿であっても良い。また、上記の尿に由来する悪臭とは、尿単独から発生する悪臭に限定されるものではなく、例えばオムツ内などにおいて尿と便が混合された状態から発生する悪臭であってもよい。
【0077】
本発明の尿臭生成抑制用組成物によって制御可能な悪臭成分は、フェノール系化合物及びインドール類であり、具体的にはフェノール、p-クレゾール、4-ビニル-2-メトキシ-フェノール、4-ビニルフェノール、2-メトキシ-1,3-ベンゼンジオール、1,4-ベンゼンジオール、1,3-ベンゼンジオール、インドール等が挙げられるが、これに限定されず、尿にβ-グルクロニダーゼが作用することによって生じる揮発性成分であればよい。
【0078】
(製品形態)
製品形態としては、吐出型製品、塗布製品、拭き取り製品等の対象物に直接本発明の尿臭生成抑制用組成物を適用して付着させる製品、又は尿が回収される部分に本発明の尿臭生成抑制用組成物を保持させる吸収性製品を挙げることができる。
【0079】
吐出型製品は、トリガー式スプレーヤーを備える容器、ボタン式スプレー容器、エアゾール容器、スクイズ容器等の霧状又は泡状に吐出する吐出装置を備える容器、又は滴下型製品用容器に本発明の尿臭生成抑制用組成物を収容し、吐出装置によって対象物に適用する製品である。このうち、トリガー式又はボタン式スプレーの吐出装置を用いた製品が好ましい。滴下による吐出型製品としては、トイレのタンク上、又は便器内に設置されて、トイレの便器内に流れて適用されるものも含まれる。
吐出型製品とする場合、用いられる尿臭生成抑制用組成物における水の含有量は、好ましくは50〜99重量%、より好ましくは70〜98重量%、更に好ましくは80〜95重量%である。また、吐出型製品に収容された尿臭生成抑制用組成物の20℃におけるpHは、好ましくは5〜9、より好ましくは6〜8であり、pH調整は通常用いられるpH調整剤で行われる。
【0080】
塗布製品又は拭き取り製品は、多孔質部材又はシート材等の保持部材に本発明の尿臭生成抑制用組成物を含浸、又は保持させて対象物に塗布する製品であって、シート材に含浸させたシート製品が好ましい。
【0081】
吸収性製品は、尿等の排泄物が直接吸収される物品に、本発明の尿臭生成抑制用組成物を含浸又は保持させ、吸収された尿による尿臭生成を抑制する。吸収性製品においては、本発明の尿臭生成抑制用組成物がヒトの肌に直接ふれないが、吸収された尿に接触可能なものが好ましく、例えば、多層構造になったシート製品の中間層に用いられる吸水性ポリマー、パルプ、不織布及び/又は台紙に本発明の尿臭生成抑制用組成物を含浸又は保持させたものを挙げることができる。この中でも吸水性ポリマー及び/又はパルプに本発明の尿臭生成抑制用組成物を含浸又は保持させたものがより好ましく、更には吸水性ポリマーに含浸又は保持させたものが特に好ましい。
【実施例】
【0082】
下記の参考例及び実施例では、除菌用のフィルターとして0.2μmのフィルター(ミリポア社製、マイレックスGV、又はナルゲン社製のフィルターユニット)を用いた。また、特記しない限りβ-グルクロニダーゼは、大腸菌由来のβ-グルクロニダーゼType VII-A(シグマ社より購入)を使用した。また、吸光度測定には吸光マイクロプレートリーダー(TECAN社製、サンライズレインボーサーモRC)を使用し、各波長におけるサンプルの吸光度は96穴マイクロウェルプレート(NUNC社製、Nunclon Delta Surface)のウェル中でのサンプル200μLに対する測定値を使用した。
【0083】
参考例1 β-グルクロニダーゼ添加による尿からの揮発性化合物の生成
(1) 測定サンプルの調製
γ線滅菌済み容器中に、採取後すぐに0.2μmのフィルターにて除菌操作を行ったヒト尿サンプル(5人のヒト尿混合物)9.9mLを入れ、続いて250units/mLに調整したβ-グルクロニダーゼType VII-A水溶液0.1mLを添加混合し、25℃恒温槽に静置して22時間反応させた。酵素液の代わりに滅菌イオン交換水0.1mLを添加したものを初期尿サンプルとして同様に22時間恒温槽中に静置した。
反応終了後、反応液9mLに内部標準としてベンジルベンゾエート エタノール溶液を添加し、ジエチルエーテル10mLを用いて2回抽出を行った。抽出液は合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥を行った。乾燥後、固形物をろ別し、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮して測定サンプルとした。
【0084】
(2) 揮発性化合物の測定
測定にはガスクロマトグラフ質量分析計を用いた。検出された揮発性化合物の生成量は内部標準に対するピークエリア比として算出した。この結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
この結果より、β-グルクロニダーゼの作用により尿から種々のフェノール系化合物及びインドールが生成することが確認された。
【0087】
参考例2 特定化合物及び植物抽出物によるβ-グルクロニダーゼの活性阻害
γ線滅菌済み容器中にて2mM PNPG水溶液100μL、0.5Mリン酸緩衝液(pH6.8)40μL、イオン交換水38μL、各種化合物又は植物抽出物の10又は1重量%ジプロピレングリコール(DPG)溶液2μLを混合し、続いて16units/mLに調整したβ-グルクロニダーゼ水溶液20μLを加えて37℃恒温槽中で2時間酵素反応を行った。また一部の化合物については、更に0.1重量%DPG溶液についても同様の実験を行った。供した化合物及び植物抽出物の反応液中での濃度はそれぞれ、0.1、0.01、0.001重量%となる。また、上記化合物及び植物抽出物の代わりにDPGを加えたものをコントロールとし、各サンプル及びコントロールごとに酵素液の代わりにイオン交換水を加えたものをブランクとして、それぞれ同様に2時間反応を行った。
上記反応液を0.2Mグリシン-水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.4)を用いて希釈し、波長400nmにおける吸光度を測定した。得られた測定値より、次式に従ってβ-グルクロニダーゼの相対活性阻害率を求め、表2a及び表2bに示した。
【0088】
【数1】

【0089】
【表2a】

【0090】
【表2b】

【0091】
この結果より、供した化合物及び植物抽出物サンプルはβ-グルクロニダーゼ阻害活性を有することがわかる。
【0092】
参考例3 β-グルクロニダーゼ阻害剤による尿由来揮発性化合物の生成抑制
(1) サンプルの調製
γ線滅菌済み容器中に、採取後すぐに0.2μmのフィルターにて除菌操作を行ったヒト尿サンプル9.9mL(5人のヒト尿の混合物)、10重量% 8-シクロヘキサデセン-1-オンDPG溶液10μLを加え、続いて250units/mLに調整したβ-グルクロニダーゼ水溶液 0.1mLを添加混合し、25℃恒温槽に静置して22時間反応させた。8-シクロヘキサデセン-1-オンの反応液中での濃度は0.01重量%となる。また、除菌尿サンプル9.9mLに酵素液 0.1mLを加えたものをコントロール、除菌尿サンプル9.9mLにイオン交換水0.1mLを加えたものをブランクとして、それぞれ同様に22時間反応させた。
反応終了後、反応液9mLに内部標準としてベンジルベンゾエート エタノール溶液を添加し、ジエチルエーテル10mLを用いて2回抽出を行った。抽出液は合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥を行った。乾燥後、固形物をろ別し、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮して測定サンプルとした。
【0093】
(2) 揮発性化合物の生成抑制
測定にはガスクロマトグラフ質量分析計を用いた。検出された揮発性化合物の生成量は内部標準に対するピークエリア比として算出した。得られた値より、次式に従って揮発性成分ごとの生成抑制率を求め、表3に示した。
【0094】
【数2】

【0095】
【表3】

【0096】
この結果より、β-グルクロニダーゼの作用により尿より生成するフェノール系化合物及びインドールの全てについて、β-グルクロニダーゼ阻害剤(8-シクロヘキサデセン-1-オン)がその生成を抑制したことがわかる。
【0097】
実施例1-1〜1-4、比較例1-1〜1-3 β-グルクロニダーゼ阻害剤と界面活性剤の併用による阻害効果の向上
(1)尿臭産生菌の採取
3名のパネラー宅のトイレ便器フチ裏からβ-グルクロニダーゼ活性検出試薬(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド)を添加したSCDLP寒天平板培地(日本製薬株式会社製)を用いてβ-グルクロニダーゼ活性菌の採取、分離を行った。これら菌株を除菌尿中で培養したところ臭気の発生が確認され、この中でも特に強い臭気を発生させた菌株を本実施例における尿臭産生菌として用いた。また本菌株は16S rDNA部分塩基配列解析によって大腸菌に帰属されるものであることを確認した。
【0098】
(2)菌液の調製
上記の尿臭産生菌を3mMのPNPGを含むミュラーヒントン培地で培養し、遠心操作によって液部を除いた。残った菌体部分を生理食塩水に懸濁させ、再度、遠心操作によって液部を除き、この操作を2度行うことによって菌体部分の洗浄を行った。これをD-PBS(Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline)を用いて適宜希釈し、波長600nmにおける吸光度が0.4となるように調整した。
【0099】
(3)尿臭産生菌細胞内β-グルクロニダーゼ活性の抑制効果測定
2mMのPNPGを含む200mM リン酸緩衝液(pH6.8)200μLに、実施例1-1〜1-4としてアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤、比較例1-1としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤、比較例1-2及び1-3として水溶性有機溶剤の各1w/v%水溶液を40μL添加混合し、1w/v%β-グルクロニダーゼ阻害剤(8-シクロヘキサデセン-1-オン)エタノール溶液を4μL添加混合して、更にイオン交換水を加えて380μLとした。また、比較例1-4(阻害剤のみ)として2mMのPNPGを含む200mM リン酸緩衝液(pH6.8)200μLに1w/v%β-グルクロニダーゼ阻害剤エタノール溶液を4μL添加混合して、更にイオン交換水を加えて380μLとした溶液を調製した。
これら溶液に対して本実施例(2)で調製した尿臭産生菌菌液20μLを添加混合し、37℃恒温槽中で1時間反応させた。反応液中での濃度はそれぞれ、β-グルクロニダーゼ阻害剤は0.01w/v%、界面活性剤及び水溶性有機溶剤は0.1w/v%又は「なし」(比較例1-4)となる。また、比較例1-4の組成について阻害剤溶液に代えてエタノールを添加混合したものをコントロールとして同様に反応を行った。更に、コントロールの組成について菌液をD-PBSに換えて同様の操作を行ったものをブランクとした。
反応終了後、反応液の一部を0.2Mグリシン-水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.4)を用いて希釈し、10000rpmで2分間遠心操作を行い、遠心後の上清を用いて波長400nmにおける吸光度を測定した。得られた測定値より、次式に従って各サンプルにおける尿臭産生菌細胞内β-グルクロニダーゼの相対活性を求め、結果を表4に示した。
【0100】
また、アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤については、更に低濃度の領域についても評価を行うため、1w/v%水溶液の添加量を1/20(2μL)として同様の測定を行い、結果を表4に示した。なお、このとき反応液中での濃度はそれぞれ、β-グルクロニダーゼ阻害剤は0.01w/v%、活性剤は0.005w/v%となる。
【0101】
【数3】

【0102】
<添加成分>
ドデシルグルコシド:花王(株)製、マイドール12を使用
デシルグルコシド:花王(株)製、マイドール10を使用
イソデシルガラクトシド:特開2008-156271号公報に記載の手法に従い合成したものを使用
オクチルガラクトシド:特開2008-156271号公報に記載の手法に従い合成したものを使用
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート:花王(株)製、レオドールスーパーTW-O120を使用
グリセロール:片山化学工業(株)より購入したものを使用
プロピレングリコール:旭硝子(株)より購入したものを使用
【0103】
【表4】

【0104】
以上の結果に示したとおり、アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤はβ-グルクロニダーゼ阻害剤との併用により、阻害効果を向上させた。特に実施例1-1及び1-2に挙げたアルキルグルコシドは添加量を1/20とした場合(0.005w/v%)においても良好な阻害効果を発揮した。このような効果は他の非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート及び一般の水溶性有機溶剤の添加では得られなかった。すなわち、酵素活性阻害効果の向上はアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤の併用による特有の効果であり、単にβ‐グルクロニダーゼ阻害剤の水溶液中への可溶化能を向上させただけでは酵素活性阻害効果を向上しなかった。
【0105】
参考例4 界面活性剤によるβ-グルクロニダーゼ阻害剤の菌体浸透/付着量の増加
(1)菌液の調製
実施例1-1〜1-4及び比較例1-1〜1-3の(1)で得た尿臭産生菌をミュラーヒントン培地で培養し、遠心操作によって液部を除いた。残った菌体部分を生理食塩水に懸濁させ、再度、遠心操作によって液部を除き、この操作を2度行うことによって菌体部分の洗浄を行った。これをD-PBS(Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline)を用いて適宜希釈し、波長600nmにおける吸光度が8となるように調製した。
【0106】
(2)β-グルクロニダーゼ阻害剤の菌体浸透/付着量の測定
表5に示す処方により、D-PBS中にβ-グルクロニダーゼ阻害剤(8-シクロヘキサデセン-1-オン)を0.01w/v%、実施例1-1で用いたドデシルグルコシドを0、0.01若しくは0.1w/v%、又は比較例1-1で用いたポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを0.1w/v%、菌体を波長600nmにおける反応液中での吸光度が0.4又は0.8となるように含んだ各溶液を調製した。
この溶液を37℃恒温槽中において2時間静置後、遠心操作によって菌体部分を回収し、塩化ナトリウム水溶液によって数回洗浄を行った。続いて、少量の生理食塩水を加えて内容物を再懸濁させ、ガラス容器に移して密栓し、超音波処理を行うことによって菌体の破砕を行った。ここへ内部標準としてベンジルベンゾエート エタノール溶液を添加した後、ジエチルエーテルで阻害剤の抽出を行った。抽出液は無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、固形物をろ別後、ろ液を濃縮して測定サンプルとした。
測定にはガスクロマトグラフ質量分析計を用い、内部標準に対するピークエリア比として菌体からの阻害剤検出量を算出した。結果を図1に示す。
【0107】
【表5】

【0108】
以上の結果より、アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤は、β-グルクロニダーゼ阻害剤の菌体への浸透又は吸着を促進させていることがわかる。
【0109】
実施例2-1、2-2、比較例2-1〜2-4 β-グルクロニダーゼ阻害剤と界面活性剤の併用による阻害効果の向上及び尿臭気の生成抑制効果
(1)菌液の調製
実施例1-1〜1-4及び比較例1-1〜1-3の(1)で得た尿臭産生菌をヒト尿サンプル(除菌済み、2名の等量混合物)中で培養し、遠心操作によって液部を除いた。残った菌体部分を生理食塩水に懸濁させ、再度、遠心操作によって液部を除き、この操作を2度行うことによって菌体部分の洗浄を行った。これを生理食塩水を用いて適宜希釈し、波長600nmにおける吸光度が2となるように調製した。
【0110】
(2)尿臭産生菌細胞内β-グルクロニダーゼ活性の抑制効果測定
表6に示す組成(w/v%)のβ-グルクロニダーゼ阻害剤(8-シクロヘキサデセン-1-オン)及び/又は本発明のアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤(ドデシルグルコシド:花王(株)製、マイドール12)を含有する実施例2-1、2-2及び比較例2-1から2-4の尿臭生成抑制用組成物を調製し、各組成物とヒト尿サンプル(除菌済み、2名の等量混合物)を体積比1対4で混合した。これら組成物添加尿に対して1mMとなるようにPNPGを溶解させ、更に本実施例(1)で調製した尿臭産生菌菌液を1vol%添加混合し、得られた各サンプルを30℃恒温槽中で4時間反応させた。反応液中での濃度はそれぞれ、β-グルクロニダーゼ阻害剤は0.01w/v%、界面活性剤は0.005w/v%又は0.1w/v%となる。
また、各サンプルについて、菌液に換えて生理食塩水を加えたものをブランクとして、同様に4時間反応を行った。
反応終了後、反応液の一部を0.2Mグリシン-水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.4)を用いて希釈し、10000rpmで2分間遠心操作を行い、遠心後の上清を用いて波長400nmにおける吸光度を測定した。得られた測定値より、次式に従って各サンプルにおける尿臭産生菌細胞内β-グルクロニダーゼの相対活性を求め、結果を表6に示した。
【0111】
【数4】

【0112】
(4)抗菌効果測定
表6に示した各サンプルについて、30℃、4時間反応後、その一部をLP希釈液(日本製薬(株)製)を用いて希釈し、SCDLP寒天平板培地に接種して生菌数の測定を行った。また比較例2-4と同じ組成のサンプルを別途調製し、菌液添加直後に同様の手法で生菌数の測定を行い、これを初期添加菌数とした。測定は同じサンプルについて3回行い、その平均値により、サンプルの生菌数が初期添加菌数の1/10未満となったものを抗菌効果有り(○と記載)、1/10以上であったものを抗菌効果無し(×と記載)と判定し、結果を表6に示した。
【0113】
(5)臭気強度評価(臭気生成抑制効果測定)
表6に示した各サンプルについて、30℃、4時間反応させたものをそれぞれ等量、匂い紙先端に滴下し、これを臭気評価サンプルとした。臭気強度評価は臭気判定士の資格を有する2名の専門パネラーが携わり、0〜5の評価スコアによる6段階臭気強度表示法に準じて行った。即ち評価スコアは、「0」無臭、「1」やっと感知できるニオイ(検知閾値)、「2」尿臭であることわかるが弱いニオイ(認知閾値)、「3」楽に尿臭であると感じられるニオイ、「4」強い尿臭、「5」強烈な尿臭を示す。臭気強度の判定は0.5刻みで行い、2名の評価の平均値について、小数点以下の数値を0.25以上0.75未満は0.5とし、0.75以上は整数に切り上げ、0.25未満は整数に切り捨てた。得られた結果を表6に示した。
【0114】
【表6】

【0115】
以上の結果に示したとおり、界面活性剤のみでは抗菌効果の有無に関わらず尿臭産生菌に由来するβ-グルクロニダーゼの活性を抑制することができず、尿臭気の生成抑制効果も得られなかった。一方で本発明のβ-グルクロニダーゼ阻害剤とアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤からなる尿臭生成抑制用組成物は、抗菌効果の有無に関わらずβ-グルクロニダーゼ阻害剤を単独で用いた場合よりも細胞内β-グルクロニダーゼに対して優れた阻害活性を示し、尿臭気の生成についても、これをより効果的に抑制した。
【0116】
実施例3 スプレー型製品
表7に示す組成(重量%)のβ-グルクロニダーゼ阻害剤(8-シクロヘキサデセン-1-オン)及び各種界面活性剤を含有する尿臭生成抑制用組成物を調製し、これをトリガースプレー容器に入れて、スプレー型製品を作製した。組成物のpHは6.5〜7.5になるように調整した。
【0117】
<配合成分(界面活性剤)>
アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤1:ドデシルグルコシド(花王(株)製、マイドール12、グルコース平均縮合度1.3)
アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤2:デシルグルコシド(花王(株)製、マイドール10)
アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤3:イソデシルガラクトシド
アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤4:オクチルガラクトシド
非イオン界面活性剤1:N-ラウロイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシド
非イオン界面活性剤2:ポリオキシエチレン(平均8モル)ラウリルエーテル
両性界面活性剤1:N-ラウロイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムベタイン
両性界面活性剤2:N-ラウロイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-カルボシキメチルアンモニウムベタイン
カチオン界面活性剤1:ジデシルジメチルアンモニウムクロリド(花王(株)製、コータミンD-10E)
カチオン界面活性剤2:アルキルベンジルアンモニウムクロリド(花王(株)製、サニゾールC、アルキル基の炭素数は12)
アニオン界面活性剤1:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(アルキル基の炭素数は11〜15)
アニオン界面活性剤2:ラウリル硫酸ナトリウム
【0118】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-グルクロニダーゼ阻害剤と0.01〜10重量%のアルキルグリコシド型非イオン界面活性剤とを含有する尿臭生成抑制用組成物。
【請求項2】
β-グルクロニダーゼ阻害剤として、少なくとも一般式(1)〜(3)のいずれかで表される大環状化合物を含有する請求項1に記載の尿臭生成抑制用組成物。
【化1】

〔式中、n1は9〜13の整数を示し、m1は0〜2の整数を示し、破線部に一つの二重結合を含んでいてもよい。〕
【化2】

〔式中、n2は9〜13の整数を示し、m2は0〜3の整数を示し、破線部に一つの二重結合を含む。ただし、n2+m2=9〜14を満たすものとする。〕
【化3】

〔式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、pは6〜11の整数を示し、qは2〜6の整数を示す。ただし、p+q=10〜14を満たすものとする。〕
【請求項3】
β-グルクロニダーゼ阻害剤として、少なくとも一般式(1)で表される大環状ケトンを含有する請求項2に記載の尿臭生成抑制用組成物。
【請求項4】
アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤のアルキル基の炭素数が8〜12である請求項1〜3のいずれかに記載の尿臭生成抑制用組成物。
【請求項5】
アルキルグリコシド型非イオン界面活性剤の還元糖に由来する残基がグルコース残基及びガラクトース残基から選ばれる請求項1〜4のいずれかに記載の尿臭生成抑制用組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の尿臭生成抑制用組成物を、吐出装置を備える容器に収容してなる吐出型製品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の尿臭生成抑制用組成物を、対象物に尿が付着する前又は尿が付着してから乾燥する前に適用する尿臭の生成抑制方法。
【請求項8】
尿臭生成抑制用組成物の対象物への適用が、吐出装置を備える容器からの吐出、又は塗布による対象物への付着である請求項7に記載の尿臭の生成抑制方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−229894(P2011−229894A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139002(P2010−139002)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】