説明

尿酸値低下用組成物

【課題】優れた尿酸値低下作用を発揮し、痛風、高尿酸血症、痛風結節、尿路結石、腎不全、痛風腎、前立腺肥大、および浮腫などの病態の改善ができる、医薬品や健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、または病者用食品などで使用する組成物の提供。
【解決手段】オロト酸またはその塩、並びにアスパラギン、グルタミン、およびグルタミン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であるアミノ酸とを有効成分として含有する尿酸値低下用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿酸値低下用組成物、より詳しくは、オロト酸またはその塩、およびアミノ酸を有効成分として含有する、尿酸値低下用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
尿酸は、ヒトにおいてプリン体の最終代謝産物として存在する。尿酸の排泄能の低下や産生の過剰等の要因により、血中の尿酸値が7mg/dl以上になると、高尿酸血症と定義される。高尿酸血症発症者は増加しており、日本国内に900万人程度いると言われている。
【0003】
高尿酸血症状態が慢性化すると、痛風関節炎、尿路結石、痛風腎等の病状を発症する危険性が高まる。また、近年の疫学研究により、高尿酸血症は、心・脳血管障害の独立した危険因子であることが示唆されてきており、メタボリックシンドロームのバイオマーカーとしての重要性が指摘されてきている。以上のことから、血中尿酸値を適正にコントロールすることは、これら疾患を予防する観点から重要となり、高尿酸血症を改善する医薬品や食品が強く望まれている。
【0004】
これまでに、尿酸値低下用薬組成物として、尿酸産生抑制組成物のアロプリノールや尿酸排泄促進組成物のベンズブロマロン等が提供されている。しかし、これらの薬剤組成物は、効果がある半面、肝障害等の副作用を伴うことが多い。また、高尿酸血症を改善する食品素材も報告されているが、これらは全て、キサンチンオキシダーゼ阻害による尿酸産生抑制の機序によるものであり(特許文献1〜3等)、排泄低下型の高尿酸血症を改善する食品素材については開示されていない。
【0005】
オロト酸は、ピリミジンヌクレオチド合成の前駆物質であり、牛乳、粉ミルク、ホエー等の乳製品中に存在する。オロト酸は、日本国内では、滋養強壮、肝機能促進、および肌荒れ改善等を目的とする第2類医薬品、第3類医薬品、および医薬部外品に使用されている。また、海外では、医薬品や健康食品として使用されている。オロト酸により尿酸値が低下することは既に報告されており、1g、28日間のオロト酸摂取により、尿酸値が約0.6mg/dl有意に低下したという報告がある(非特許文献1)。また、6g、1週間のオロト酸摂取により、尿中尿酸の排泄量が有意に増加すること(非特許文献2)、及び、オロト酸は腎臓の尿酸トランスポーターURAT−1を競合的に阻害すること(非特許文献3)から、オロト酸は尿酸の再吸収を阻害し、尿酸値を低下させることが示唆される。更に、オロト酸を摂取すると、肝臓中の5−ホスホリボシル1−ピロリン酸(PRPP)を消費し、ピリミジンヌクレオチド合成が亢進することから、プリンの新規合成が抑制され、尿酸へ異化される量が減少し、尿酸値が低下することが考えられる。
【0006】
一方、アスパラギン酸やグルタミン等の一部のアミノ酸は、プリン及びピリミジンヌクレオチド合成に関与するが、アミノ酸自体の尿酸値低下作用は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−145875号公報
【特許文献2】特開2003−174857号公報
【特許文献3】特開2003−252776号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】The American Journal of Clinical Nutrition, 41, 605-608, 1985
【非特許文献2】Metabolism, 19, 1025-1035, 1970
【非特許文献3】NATURE, 417, 447-452, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のとおり、尿酸値が高く、高尿酸血症や痛風などの疾患を有する者、あるいは当該疾患の発症リスクを有する者に対して、尿酸値を低下させる医薬品や食品を提供することが強く望まれている。
従って、本発明の課題は、優れた尿酸値低下作用を発揮し、かつ安全かつ簡便に利用できる医薬品や食品等の組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、オロト酸にアミノ酸を併用することにより、オロト酸単独よりも有意に尿酸値を低下させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)オロト酸またはその塩、およびアミノ酸を有効成分として含有する尿酸値低下用組成物。
(2)組成物中のオロト酸またはその塩とアミノ酸との割合が、重量比で、10:1〜1:10である請求項1に記載の組成物。
(3)オロト酸またはその塩が、オロト酸フリー体(遊離体)である、(1)または(2)に記載の組成物。
(4)アミノ酸が、アスパラギン、グルタミン、およびグルタミン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)アミノ酸がアスパラギンおよび/またはグルタミン酸である、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(6)食品の形態で提供される、(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)食品が飲料の形態である、(6)に記載の組成物。
(8)食品が、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、または病者用食品である、(7)に記載の組成物。
(9)医薬品の形態で提供される、(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物。
(10)尿酸値低下により病態が改善される疾患の治療または予防に用いられる、(1)〜(9)のいずれかに記載の組成物。
(11)尿酸値低下により病態が改善される疾患が、痛風、高尿酸血症、痛風結節、尿路結石、腎不全、痛風腎、前立腺肥大、および浮腫からなる群から選択される、(10)に記載の組成物。
(12)尿酸値を低下させるための食品または医薬品の製造における、(1)〜(11)に記載の組成物の使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた尿酸値低下作用を有する組成物が提供される。本発明の組成物の尿酸値低下成分であるオロト酸およびアミノ酸は、安全性に優れ、長期に摂取しても副作用がない。従って、本発明の尿酸値低下用組成物は、高尿酸血症や通風の治療および予防に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、各被験物質投与群における血中尿酸値(10日間摂取後)を示す。*は、危険率5%未満で有意差があることを表す。
【図2】図2は、各被験物質投与群における血中アラントイン値(10日間摂取後)を示す。*は、危険率5%未満で有意差があることを表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の尿酸値低下用組成物は、有効成分として、(i) オロト酸またはその塩、および(ii) アミノ酸の2成分を含有する。オロト酸またはその塩と、アミノ酸は相乗的に作用して、優れた尿酸値低下作用を奏する。
【0015】
本願明細書において「尿酸値の低下」とは、正常な血清尿酸値を超える値となった尿酸値を下げること、好ましくは、正常な値以下に下げることを意味する。正常な値血清尿酸値は、7mg/dl以下である。血清尿酸値が降下したか否かは、血清中の尿酸値を測定することにより確認することができる。
【0016】
本発明において、オロト酸とはウラシル−4−カルボン酸を表し、オロト酸またはその塩は、微生物由来のもの、化学合成により得られるもの、市販のもの、乳清等食品から抽出したもの等のいずれを用いてもよい。微生物由来のオロト酸としては、例えばUS5,013,656記載の製造方法により取得されるオロト酸等が挙げられる。
【0017】
オロト酸またはその塩としては、オロト酸フリー体(遊離体)やオロト酸の塩が挙げられるが、オロト酸フリー体(遊離体)が好ましい。
【0018】
オロト酸の塩としては、例えば酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられる。有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩が挙げられる。アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩があげられ、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩または2つの塩を適宜組み合わせて用いるのが好ましい。
【0019】
本発明において用いられるアミノ酸としては、オロト酸との併用により尿酸値低下作用を有するものであれば限定はされないが、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、 グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンなどが挙げられる。これらのアミノ酸のなかでも、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミンが好ましく、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミンがより好ましく、アスパラギン、グルタミン酸が最も好ましい。また、上記アミノ酸は、1種でもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0020】
本発明の尿酸値低下用組成物中の、オロト酸またはその塩とアミノ酸との割合は、重量比で1:100〜100:1、好ましくは1:50〜50:1、より好ましくは10:1〜1:10である。
【0021】
本発明の尿酸値低下用組成物としては、オロト酸またはその塩、およびアミノ酸をそのまま投与することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を配合し、食品や医薬品等の各種組成物として提供することが好ましい。
【0022】
本発明の食品は、オロト酸またはその塩とアミノ酸を有効量含有した食品である。ここで「有効量含有した」とは、個々の食品において通常喫食される量を摂取した場合に、後述するような範囲で有効成分が摂取されるような含有量をいう。
【0023】
本発明の食品の形態は、飲料の形態であってもよい。また、食品の形状は、哺乳動物が摂取可能であり、かつ食用に適した形状であれば特に制限はないが、例えば、固形状、液状、半液体状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状が挙げられる。
【0024】
本発明の食品には、オロト酸またはその塩とアミノ酸を単独で配合してもよいが、通常は、各食品の形態に応じた他の成分とともに配合する。
【0025】
他の成分としては、本発明の効果を損なわない範囲のものであれば特に限定はされず、例えば、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、クエン酸や酢酸等の有機酸塩等が挙げられる。また、本発明の食品は、その種類に応じて食品において許容され、通常使用される添加剤、例えば、アスパルテーム、ステビア等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料、デキストリン、澱粉等の賦形剤のほか、着色料、香料、苦味料、緩衝剤、増粘安定剤、ゲル化剤、安定剤、ガムベース、結合剤、希釈剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、酸化防止剤、保存料、防腐剤、防かび剤、発色剤、漂白剤、光沢剤、酵素、調味料、香辛料抽出物等などを適宜添加してもよい。
【0026】
また、オロト酸またはその塩とアミノ酸を発酵食品の素材として用いることができる。より具体的には、本発明の食品は、オロト酸またはその塩とアミノ酸に酵母、乳酸菌、麹菌などの微生物が発酵するために必要なグルコースなどの糖源や酵母エキスなどの栄養源を添加して発酵させる発酵食品であってもよい。
【0027】
本発明において「食品」とは、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、病者用食品を含む意味で用いられる。なかでも、尿酸値降下機能を期待する消費者に適した食品、すなわち特定保健用食品として提供することが好適である。ここでいう「特定保健用食品」とは、高尿酸血症や痛風の改善等を目的として食品の製造または販売等を行う場合に、保健上の観点から法上の何らかの制限を受けることがある食品をいう。
【0028】
上記健康食品等は、通常の食品の形状であってもよいが、好ましくは、サプリメントの形状(錠剤、顆粒剤、細粒剤、タブレット、チュアブルタブレット、カプセル(軟カプセル、硬カプセル)など)であることが好ましい。
【0029】
本発明において、オロト酸またはその塩とアミノ酸の配合の対象となる食品としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳飲料などの飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む);飯類、麺類、パン類、およびパスタ類などの炭水化物含有飲食;クッキーやケーキなどの洋菓子類、饅頭や羊羹などの和菓子類、キャンディー類、ガム類、ヨーグルト、プリン、ゼリーなどの冷菓や氷菓などの各種菓子類;かまぼこ、ちくわ、ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料などを例示することができるが、これらに限定はされない。
【0030】
本発明の食品のより好ましい態様としては、飲料(例えば、茶飲料、ビール系飲料、コーヒー、ミネラルウォーター、乳飲料)やヨーグルトが挙げられる。
【0031】
ここで、茶飲料とは、ツバキ科の常緑樹である茶樹の葉(茶葉)、または茶樹以外の植物の葉もしくは穀類等を煎じて飲むための飲料をいい、発酵茶、半発酵茶、および不発酵茶のいずれもが包含される。茶飲料の具体例としては、日本茶(例えば、緑茶、麦茶)、紅茶、ハーブ茶(例えば、ジャスミン茶)、中国茶(例えば、中国緑茶、烏龍茶)、ほうじ茶等が挙げられる。
【0032】
ビール系飲料は、ビール、発泡酒、第3のビール及びアルコール不含のビール風炭酸飲料等が挙げられる。ミネラルウォーターは、発泡性及び非発泡性のミネラルウォーターが挙げられる。
【0033】
乳飲料とは、生乳、牛乳等またはこれらを原料として製造した食品を主原料とした飲料をいい、牛乳等そのもの材料とするものの他に、例えば、栄養素強化乳、フレーバー添加乳、加糖分解乳等の加工乳を原料とするものも包含される。
【0034】
またヨーグルトには、ハードタイプ、ソフトタイプ、ドリンクタイプのいずれのものも包含され、さらにヨーグルトを原料とする加工ヨーグルト製品も包含される。
【0035】
本発明において提供される飲料(飲料形態の健康食品や機能性食品を含む)の製造に当たっては、通常の飲料の処方設計に用いられている糖類、香料、果汁、食品添加剤などを適宜添加することができる。飲料の製造に当たってはまた、当業界に公知の製造技術を参照することができ、例えば、「改訂新版ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参考とすることができる。
【0036】
本発明の尿酸値低下用組成物中の有効成分であるオロト酸またはその塩とアミノ酸の配合量は、当該組成物の種類や当該組成物の投与により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、有効成分合計量が通常0.0001〜100重量%、好ましくは0.001〜70重量%、特に好ましくは0.01〜50重量%である。
【0037】
本発明の尿酸値低下用組成物を例えば飲食品の形態で提供する場合、飲食品への有効成分の配合量は、その尿酸値低下作用が発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量を考慮して、通常、成人1日当たりの摂取量が、オロト酸またはその塩、およびアミノ酸の合計として、1mg〜10g、好ましくは5mg〜5g、より好ましくは10mg〜1gとなる量とすればよい。
【0038】
本発明の食品は、例えば、生活習慣、体質、または遺伝などの要素によって尿酸値の高い傾向のある人はもとより、正常人であっても、痛風や高尿酸血症の予防または改善を目的として日常的に摂取することができる。
【0039】
また、本発明の組成物を医薬品として提供する場合は、オロト酸またはその塩とアミノ酸はそのままで、または医薬上許容され、かつ剤型に応じて適宜選択した適当な添加剤(例えば担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤等)を用いて、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。
【0040】
本発明の医薬は、経口または非経口的に投与することができるが、好ましくは経口投与である。本発明の医薬を経口投与する場合は、錠剤(糖衣錠を含む)、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等に製剤化するか、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬を非経口投与する場合は、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)などに製剤化し、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
【0041】
製剤は、例えば下記のようにして製造できる。経口剤は、有効成分に、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、デンプン、マンニトール)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム)、結合剤(例えば、α化デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース)、滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000)を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより製造することができる。コーティング剤としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびオイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)などを用いることができる。
【0042】
注射剤は、有効成分を分散剤(例えば、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO 60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、転化糖)などと共に水性溶剤(例えば、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液等)あるいは油性溶剤(例えば、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油などの植物油、プロピレングリコール)などに溶解、懸濁、または乳化することにより製造することができる。この際、所望により溶解補助剤(例えば、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン)等の添加物を添加してもよい。
【0043】
製剤化に当たっては、本発明による有効成分以外の1種以上の有効成分を更に配合してもよい。また本発明による有効成分の投与に当たっては、本発明による有効成分以外の1種またはそれ以上の医療上有効な有効成分を組み合わせて投与してもよい。
【0044】
本発明の医薬は、尿酸値低下によって病態が改善される疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いることができる。かかる疾患としては、例えば、痛風、高尿酸血症、痛風結節、尿路結石(腎結石、尿管結石、膀胱結石)、腎不全、痛風腎、前立腺肥大、および浮腫などが挙げられるが、これらに限定はされない。本発明の医薬は上記疾患の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、正常な状態に改善する治療薬として機能する。
【0045】
本発明の医薬は、前述の疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して経口または非経口的に安全に投与することができる。本発明の医薬の投与量は、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができる。例えば、痛風や高尿酸血症患者に経口投与する場合には、成人一日当り、オロト酸またはその塩、およびアミノ酸の合計として通常は10mg〜30g、好ましくは50mg〜10g、より好ましくは100mg〜3gとなるように一日一回ないし数回投与する。投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは1週間〜3ヶ月間である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
【0047】
(実施例1)ラットにおけるオロト酸とアミノ酸の尿酸値降下作用
被験物質としてオロト酸とアミノ酸を用い、その組み合わせによる尿酸値低下効果を調べた。
1.実験条件
6週齢の雄SDラットを日本チャールスリバー社より購入し、3日間馴化後、コントロール群(n=8、AIN93Gと表記)、オロト酸1%投与群(n=8、1%オロト酸と表記)、オロト酸1%+0.76%アスパラギン酸投与群(n=8、0.76%Aspと表記)、オロト酸1%+0.76%アスパラギン投与群(n=8、0.76%Asnと表記)、オロト酸1%+0.84%グルタミン酸投与群(n=8、0.84%Gluと表記)、オロト酸1%+0.84%グルタミン投与群(n=8、0.84%Glnと表記)の6群に群分けし、10日間飼育した。各被験物質は、上記記載の混餌比率により、自由摂取させた。餌組成は、下記表1に示したが、各被験物質の添加量はセルロースで置換した。10日間飼育後、非絶食下で解剖を行い、血液及び肝臓を採取した。
【0048】
【表1】

【0049】
2.測定項目
血中尿酸値と血中アラントインの分析については、採取した血漿を水で10倍に希釈し、分子量10000カットの遠心フィルター(アミコン、ミリポア社製)を6000回転、90分の遠心分離により通したものを検液として、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
【0050】
HPLCは以下の条件により実施した。
HPLCシステム:SHIMADZU LCsolution System(島津製作所社製)
カラム:Cadenza CD−C18 150X4.6mm
検出:尿酸:UV284nm、アラントイン:UV210nm
移動相A: 20mMリン酸バッファー(pH 4.0)
移動相B: メタノール
タイムプログラム
0-9min A: 0.495mL/min B: 0.005ml/min
9-11min A: 0.495ml/min→0.25ml/min B: 0.005ml/min→0.25ml/min
11-13min A: 0.25mL/min B: 0.25mL/min
13-15min A: 0.25ml/min→0.495ml/min B: 0.25ml/min→0.005ml/min
15-25min A: 0.495mL/min B: 0.005ml/min
注入量:10μl
カラムオーブン:40℃
流速:0.5mL/min
【0051】
3.結果
血中尿酸値の測定結果を図1に示す。1%オロト酸摂取により、尿酸値の低下傾向が示されたが、有意ではなかった。1%オロト酸にアミノ酸を併用投与した0.76%Asn群、0.84%Glu群、0.84%Gln群においては、コントロール群(AIN93G)に対して尿酸値が有意に低下した。特に、0.76%Asn群、0.84%Glu群においては、1%オロト酸単独投与群に対して尿酸値が有意に低下した。以上から、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミンはオロト酸と併用することにより、尿酸低下作用が認められ、特に、アスパラギン、グルタミン酸は、オロト酸の尿酸低下作用の増強効果が高いことが示された。
【0052】
血中アラントイン値の測定結果を図2に示す。1%オロト酸摂取により、血中アラントイン値の低下傾向が示されたが、有意ではなかった。1%オロト酸にアミノ酸を併用投与した0.76%Asp群、0.76%Asn群、0.84%Glu群、0.84%Gln群においては、コントロール群(AIN93G)に対して血中アラントイン値が有意に低下した。特に、0.76%Asn群、0.84%Glu群、0.84%Gln群においては、1%オロト酸単独投与群に対して血中アラントイン値が有意に低下した。以上から、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミンはオロト酸と併用することにより、いずれも血中アラントイン低下作用が認められ、特に、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミンは、オロト酸の血中アラントイン低下作用の増強効果が高いことが示された。
【0053】
アラントインはげっ歯動物におけるプリン体の最終代謝産物であり、血中尿酸低下作用及び血中アラントイン低下作用両方において、オロト酸とアミノ酸を組み合わせによる相乗効果が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、尿酸値低下を目的とした機能性食品やサプリメントなどの飲食品や医薬品の製造分野において利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オロト酸またはその塩、およびアミノ酸を有効成分として含有する尿酸値低下用組成物。
【請求項2】
組成物中のオロト酸またはその塩とアミノ酸との割合が、重量比で、10:1〜1:10である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
オロト酸またはその塩が、オロト酸フリー体(遊離体)である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
アミノ酸が、アスパラギン、グルタミン、およびグルタミン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
アミノ酸がアスパラギンおよび/またはグルタミン酸である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
食品の形態で提供される、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
食品が飲料の形態である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
食品が、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、または病者用食品である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
医薬品の形態で提供される、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
尿酸値低下により病態が改善される疾患の治療または予防に用いられる、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
尿酸値低下により病態が改善される疾患が、痛風、高尿酸血症、痛風結節、尿路結石、腎不全、痛風腎、前立腺肥大、および浮腫からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
尿酸値を低下させるための食品または医薬品の製造における、請求項1〜11に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−98896(P2011−98896A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253183(P2009−253183)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】