説明

尿閉を治療するためのオピオイド拮抗薬の使用

本発明は、尿閉の治療のためのオピオイド拮抗薬の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿閉の治療のオピオイド拮抗薬の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
尿閉は、相当数の患者が罹患し、異なる、しばしば無関係の根本的な原因に起因する状態である。
【0003】
尿閉は、間欠排尿、排尿時いきみ、切迫及び不完全排尿を伴う尿の流れの減少という症状によって定義される。急性尿閉と慢性尿閉は、区別しなければならない。
【0004】
尿閉は、尿意促迫又は溢流性尿失禁を引き起こし得る。尿閉は、腹部膨満及び疼痛を引き起こすことがある。長期尿閉は、尿路感染(UTI)の素因となり、膀胱圧力を増加させ、閉塞性尿路障害をもたらし得る。したがって、慢性尿閉の結果は、膀胱結石の発生、排尿筋緊張の喪失、水腎症、排尿筋の肥大及び膀胱壁における憩室を含み得る。特に、急性尿閉は、非常に有痛性であり得る。
【0005】
いくつかの理由、疾患、状態は、尿閉の発現の基礎としての役割を果たし得る。これは、例えば、良性前立腺肥大、前立腺癌又は他の骨盤癌、尿道弁異常のような先天性異常、排尿筋共同運動障害、環状切除、膀胱の損傷、尿道の閉塞、人前での排尿不能、宿便、急性又は慢性前立腺炎、膀胱における血塊、後傾妊娠子宮、脊髄麻酔又は術後状態、脊髄損傷、尿道破裂、肛門痛、尿管結石であり得る。抗コリン作用薬、抗うつ薬、オピオイドのような薬物もニューロン系及び平滑筋の作用に起因する尿閉を引き起こし得る。
【0006】
尿閉は、尿は産生されるが、排泄できないので、一般的に腎臓機能が正常であるが起こる。したがって、治療の目的は、通常、尿の産生を増加させることではなくて、その排泄を容易にすることである。
【0007】
急性尿閉と慢性尿閉の治療は、異なり得る。急性尿閉では、尿道を介しての膀胱内カテーテル法又は恥骨上膀胱瘻設置術が第1の治療介入であり得る。例えば、前立腺肥大に基づく慢性尿閉については、アルファレダクターゼ阻害薬などの薬物治療又は観血前立腺摘除術若しくは経尿道切除術(TURP)による前立腺の実用可能な切除が第一選択であり得る。
【0008】
これらの原則は一般的な治療手段として確立されているが、治療選択肢は、異なる可能性があり、尿閉の異なる病態生理学的原因によって適応しなければならない。言及したように、尿閉に用いられている医薬品は、例えば、アルファ1受容体遮断薬(ドキサゾシン、プラゾシン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、タムスロシン、アルフゾシン及びテラゾシン)又は5アルファレダクターゼ阻害薬(フィナステリド、デュタステリド)である。オピオイド誘発性尿閉について利用可能な特異的療法は存在しない。
【0009】
それにもかかわらず、さらなる医薬剤形及び治療レジメンの継続的な必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ヒトにおける尿閉の治療を可能にする新たな医薬剤形を提供することが本発明の1つの目的である。
【0011】
さらに、尿閉の治療のための公知の医薬製剤の新規な使用を提供することが目的である。
【0012】
本発明の他の目的は、ヒトにおける尿閉を治療する方法を提供することである。
【0013】
これらの目的及び後に続く記述から明らかになる他の目的は、独立請求項の主題により達成される。本発明の好ましい実施形態の一部は、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態において、本発明は、尿閉を治療するための少なくとも1つのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。
【0015】
他の実施形態において、本発明は、尿閉を治療するための医薬組成物の製造における少なくとも1つのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、少なくとも1つのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することによって尿閉に罹患しているヒトを治療する方法に関する。
【0017】
本発明に従って使用及び/又は製造することができる医薬組成物は、好ましくは、ナロキソン、メチルナルトレキソン、ナルトレキソン又はナルブフィンからなる群から選択されるオピオイド拮抗薬を含む。
【0018】
好ましくは、オピオイド拮抗薬は、ナロキソンである。ナロキソンの好ましい薬学的に許容される塩は、ナロキソン塩酸塩である。
【0019】
特に好ましい実施形態は、唯一のオピオイド拮抗薬として、又は唯一の薬学的に活性な薬剤としてナロキソン又は塩酸塩などのその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。
【0020】
本発明による医薬組成物は、非オピオイド誘発性尿閉を治療するために用いることができる。
【0021】
本発明による医薬組成物は、オピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩を即時に又は制御された形で放出することができる。
【0022】
少なくとも1つのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩を含む放出制御医薬組成物は、即時放出用に処方された約30%までの少なくとも1つのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩を含んでいてよく、それにもかかわらず、放出制御剤形として分類することができる。
【0023】
少なくとも1つのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩を含む放出制御医薬組成物は、放出制御特性をもたらすためのマトリックス及び/又はコーティングを含んでいてよい。
【0024】
本発明による医薬組成物は、少なくとも1つのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩に加えて、追加の薬学的に活性な薬剤を含んでいてよい。そのような薬剤は、特に患者が罹患している尿閉が中等度から重度の疼痛を引き起こす場合、オピオイド鎮痛薬又はその薬学的に許容される塩を好ましくは含み得る。オピオイド鎮痛薬は、好ましくはオキシコドン、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシモルホン、ブルレノルフィン、ノルオキシモルホン、トラマドール又は同様なものを含む群から選択される。
【0025】
好ましい追加の薬学的に活性な薬剤は、オキシコドンである。好ましいその薬学的に許容される塩は、オキシコドン塩酸塩である。
【0026】
好ましい実施形態における本発明による剤形は、ナロキソン塩酸塩及びオキシコドン塩酸塩を1:2の重量比で含む。好ましくは該剤形は、前述の活性薬を唯一の薬学的に活性な薬剤として含む。
【0027】
本発明による医薬組成物は、好ましくは経口適用のために処方することができる。したがって、それらは、液体、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、回転楕円体などの形態をとることができる。医薬剤形は、多粒子性剤形であってよい。
【0028】
本発明の他の実施形態は、尿閉の発現のためにオピオイドベースの疼痛療法を中止しなければならない患者における疼痛の治療のための少なくともオキシコドン又はその薬学的に許容される塩及びナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含み、放出制御剤形である経口医薬組成物に関する。
【0029】
好ましくはそのような医薬組成物は、オキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を含む。
【0030】
一実施形態において、そのような医薬組成物は、オキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を2:1の重量比で含む。
【0031】
該組成物は、オキシコドン又は塩酸塩などのその薬学的に許容される塩及び唯一の薬学的に活性な薬剤としてのナロキソン又は塩酸塩などのその薬学的に許容される塩を含んでいてよい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の発明者らは、活性薬オキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を含む放出制御組成物の形でのナロキソンの経口投与がオピオイド誘発性尿閉の有意な減少をもたらすことを発見した。これらの所見に基づいて、本発明は、ヒト患者における非オピオイド誘発性尿閉を含む尿閉を治療するためのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩の使用を対象とする。
【0033】
上で言及した特定の態様及び好ましい実施形態のいくつかをさらに詳細に述べる前に、各文脈により別なふうに明確に示されない限り、本発明の記述を通して示す意味を有するものとする以下の定義を記載する。
【0034】
下文で実例により述べる本発明は、本明細書で具体的に開示されていない1つ又は複数の制限に関する1つ又は複数の要素がない場合には適切に実施することができる。
【0035】
本発明は、特定の実施形態に関して記述するものとするが、本発明は、それに制限されるのではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【0036】
「含む」という用語を本記述及び特許請求の範囲で用いる場合、これは、他の要素を除外しない。本発明の目的のために、「からなる」という用語は、「含む」という用語の好ましい実施形態であるものとする。下文で群を少なくとも特定の数の実施形態を含むと定義する場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示するとも理解すべきである。
【0037】
単数名詞に言及するときに不定又は定冠詞、すなわち、「a」、「an」又は「the」を用いる場合、何か他のものを具体的に述べない限り、これは、複数の当該名詞を含む。本発明の状況における「約」及び「おおよそ」という用語は、当業者が問題の特徴の技術的効果を保証するために理解する正確さの区間を意味する。該用語は、一般的に±10%、好ましくは±5%の示された数値からの偏りを示す。
【0038】
既に上で言及したように、本発明は、尿閉を治療するための少なくとも1つのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関する。
【0039】
本発明によれば、「オピオイド拮抗薬」は、オピオイド作動薬の作用に拮抗するような化合物を含み、後者は、オピオイド鎮痛薬とも呼ばれている。そのような化合物は、WHOのATC分類にも見いだすことができる。本発明によるオピオイド拮抗薬は、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルメメフェン、ナロルフェン、ナルブフェン、ナロキソネアゼネン、メチルナルトレキソン、ケチルシクラゾセン、ノルベナルトルフィネン、ナルトレンドール、6−β−ナロキソール及び6−β−ナルトロキソンを含む群から選択することができる。
【0040】
オピオイド拮抗薬又は下文で言及する他の薬学的に活性な薬剤のいずれかは、本発明の医薬剤形に遊離塩基として存在してよい。しかし、オピオイド拮抗薬又は下文で言及する他の薬学的に活性な薬剤のいずれかは、その薬学的に許容される塩の形で存在してもよい。そのような塩は、例えば、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、重酒石酸塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩などである。下文で言及する薬学的に活性な薬剤は、リチウム、ナトリウム及びカリウムを含むアルカリ金属の金属塩などの塩基付加塩としても存在してよい。薬学的に活性な薬剤は、もちろん遊離塩基の誘導体の形でも存在してよい。そのような誘導体は、例えば、エステルなどである。
【0041】
好ましい実施形態において、本発明は、オピオイド拮抗薬としてナロキソン塩酸塩を使用する。本発明のさらなる好ましい実施形態において、医薬剤形は、オピオイド拮抗薬、好ましくはナロキソン、より好ましくはナロキソン塩酸塩を唯一の薬学的に活性な薬剤として使用する。
【0042】
医薬剤形は、追加の薬学的に許容される賦形剤を含んでいてよい。これらの医薬賦形剤並びに製造方法は、本発明による医薬剤形に特定の放出特性をもたらすように選択することができる。放出特性によって、本発明による医薬剤形は、即時放出剤形又は放出制御剤形と分類することができる。
【0043】
「即時放出剤形」という用語は、投与後30分以内にオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩などの薬学的に活性な薬剤の約70重量%を放出する医薬剤形を記述するのに一般的に用いられる。放出は、一般的に900mlの0.1N HCl pH1.2中270nmにおけるUV検出を用いた50rpmでの欧州薬局方パドル試験を用いて測定する。
【0044】
「放出制御剤形」という用語は、医薬剤形が即時放出(IR)医薬剤形でなくて、長時間の治療活性が達成されるような上記より長い時間にわたり剤形から活性薬(単数又は複数)を放出することを強調するために一般的に用いられる。この場合、放出制御剤形は、「徐放性剤形」とも呼ばれている。
【0045】
「放出制御」及び「徐放性」という用語は、したがって、長時間にわたる剤形からの薬学的に活性な化合物の放出を意味する。一般的に、本発明の状況における放出制御剤形は、オピオイド拮抗薬若しくはその薬学的に許容される塩及び/又は本明細書で言及するような追加の薬学的に活性な薬剤若しくはそれらの薬学的に許容される塩が少なくとも4時間の期間にわたり医薬剤形から放出されることを意味する。好ましくは、剤形からの薬学的に活性な薬剤の放出は、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間又は少なくとも14時間の期間にわたり起こり得る。
【0046】
上記の欧州薬局方パドル試験は、活性薬(単数又は複数)の放出を測定するのに用いることができる。in vitro放出データとの関連での欧州薬局方パドル試験への参照は、測定の方法のみに適用するが、たとえそのような評価アプローチが薬局方で言及されていても測定データを評価することに決して適用しない。したがって、示される放出値は、別の方法で示さない限り、そのような測定の平均値に関連しない。
【0047】
本発明による放出制御医薬剤形は、即時放出剤形と比較して該剤形を低い頻度で投与することができるような長時間にわたって薬学的に活性な薬剤を放出することができる。投与頻度によって、本発明による放出制御医薬製剤は、1日3回、1日2回又は1日1回剤形と分類することができる。1日2回又は1日1回剤形が好ましい。
【0048】
「放出制御医薬剤形」という用語はそれ自体で剤形を意味することを理解すべきである。したがって、制御された放出をもたらすものとしての剤形の分類は、完全な剤形のin vitro放出データに基づいて決定すべきである。したがって、上記及び下文でさらに詳細に述べるように剤形が長時間にわたって活性薬(単数又は複数)を放出する場合、たとえそれがさらに即時放出特性をもたらすように処方された薬学的に活性な薬剤(単数又は複数)の一部を含むとしても、それは、放出制御剤形であるとみなされる。一般的に、即時放出のために処方することができる剤形内の薬学的に活性な薬剤の量は、最大30%であってよく、剤形全体は、依然として放出制御剤形と分類される。そのような即時放出相は、治療効果の速やかな達成を可能にし得るが、放出制御部分は、治療効果が純粋に即時放出剤形の場合よりも長い時間にわたって維持されるように活性薬が長時間にわたって放出されることを保証する。
【0049】
放出制御特性は、種々の処方アプローチによって達成することができる。
【0050】
例えば、医薬剤形は、該剤形の徐放特性を達成するために薬学的に活性な薬剤が組み込まれている放出制御マトリックスを含んでいてよい。
【0051】
他の実施形態において、医薬剤形の放出制御特性を保証するために、コーティングアプローチを用いることができる。
【0052】
活性薬の制御放出を達成するためのこれらのアプローチ、すなわち、マトリックスの使用又はコーティングの使用は、もちろん組み合わせることもできる。当業者は、例えば、浸透圧により駆動される放出制御剤形を含む剤形の持続放出を達成するための他の技術的アプローチをさらに知っている。
【0053】
好ましい実施形態において、本発明は、例えば、拮抗薬及び/又はその薬学的に許容される塩の制御放出を達成するためのマトリックスを含む医薬剤形を予期する。この目的を達成するために、放出制御マトリックスは、剤形内に存在する実質的な量のオピオイド拮抗薬を含んでいてよい。一般的に、放出制御マトリックス系を用いる場合、オピオイド拮抗薬などの薬学的に活性な薬剤をマトリックス形成材料中に分散させる。
【0054】
マトリックス形成材料は、浸食性マトリックス、拡散マトリックス又は浸食性及び拡散マトリックスの特性を兼ね備えたマトリックス系を達成するように選択することができる。放出制御マトリックスに含めるのに適切な材料は、以下の通りである。
(a)ゴム、セルロースエーテル、アクリル樹脂及びタンパク質由来材料などの親水性又は疎水性ポリマー。これらのポリマーのうち、セルロースエーテル、特にアルキルセルロースが好ましい。製剤は、適宜1%から80%(重量)までの1つ又は複数の親水性又は疎水性ポリマーを好都合に含んでいてよい。
(b)脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸のグリセロールエステル、鉱及び植物油並びにワックスなどの消化性長鎖(C〜C50、特にC12〜C40)置換又は非置換炭化水素。25〜90℃の融点を有する炭化水素が好ましい。これらの長鎖炭化水素材料のうち、脂肪(脂肪族)アルコールが好ましい。製剤は、適宜60%(重量)までの少なくとも1つの消化性長鎖炭化水素を好都合に含んでいてよい。
(c)ポリアルキレングリコール。製剤は、60%(重量)までの1つ又は複数のポリアルキレングリコールを適切に含んでいてよい。
【0055】
好ましい実施形態において、本発明で述べる医薬剤形は、医薬剤形からのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩の持続放出を達成するために拡散マトリックスを使用するものとする。
【0056】
この目的を達成するために、拡散マトリックスは、疎水性ポリマー及び/又はC12〜C36脂肪アルコール製であってよい。
【0057】
疎水性ポリマーについては、疎水性セルロースエーテル及び特にエチルセルロースの使用が好ましい可能性がある。
【0058】
脂肪アルコールについては、ラウリル、ミリスチル、ステアリル、セチルステアリル、セリル及び/又はセチルアルコールの使用を考慮することが好ましい。ステアリルアルコールの使用が特に好ましい。
【0059】
特に好ましい実施形態は、オピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩の放出制御特性がエチルセルロース及び脂肪アルコールなどの疎水性ポリマー製である拡散マトリックスによってもたらされる医薬剤形に関する。例えば、エチルセルロース及びステアリルアルコールの前述の組合せから調製される、本発明の好ましい実施形態のいくつかのマトリックスは、実質的に非膨潤性拡散マトリックスである。
【0060】
「実質的に非膨潤性拡散マトリックス」という用語は、マトリックスが実質的に非膨潤性であること、すなわち、マトリックスのサイズが液との接触により有意に増加しないことを示す。一般的に、実質的に非膨潤性の拡散マトリックスの容積は、水溶液と接触することにより最大で100%まで、好ましくは最大で75%まで、より好ましくは最大で50%まで、より好ましくは最大で25%まで、最も好ましくは最大で10%まで又は最大で5%まで増加する。
【0061】
疎水性ポリマーを含み、エチルセルロースなどの疎水性セルロースエーテルが放出制御(非膨潤性)拡散マトリックスを形成するための唯一又は1つの成分として好ましい、医薬剤形は、5〜20%、好ましくは6〜15重量%、より好ましくは7〜10重量%の量のそのようなポリマーを使用する。パーセントは、医薬剤形の全重量に対するマトリックス形成材料の量を示す。
【0062】
放出制御拡散マトリックスを形成するための唯一又は1つの成分としての脂肪アルコールを含む、医薬剤形は、10〜40%、好ましくは15〜35%、より好ましくは17〜25重量%の量のマトリックス中脂肪アルコールを使用する。これらのパーセントは、再び剤形の全重量に基づく脂肪アルコールの量を示す。
【0063】
当業者は、そのような放出制御マトリックスが、希釈剤、滑沢剤、充填剤、結合剤、流動化剤、着色剤、着香料、界面活性剤、pH調整剤、粘着防止剤などの製薬技術分野で標準となっている他の薬学的に許容される成分及び賦形剤も含んでいてよいことをさらに知っている。これらの賦形剤は、一般的に医薬剤形の全体的な放出挙動に実質的な影響を及ぼさない。
【0064】
充填剤の一般的な例は、乳糖、グルコース、サッカロース、デンプン及びそれらの加水分解物、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウムのようなカルシウム塩等を含む。造粒助剤は、とりわけポビドンを含む。流動化剤及び滑沢剤は、とりわけ高度分散シリカ、タルク、酸化マグネシウム及びステアリン酸マグネシウムを含む。マトリックスベースの剤形は、例えば、コスメティックコーティングを含んでいてよい。
【0065】
上記のように、医薬剤形の放出制御特性は、剤形からの活性薬の放出を制御するフィルムコーティングによっても達成することができる。この目的を達成するために、医薬剤形は、オピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩と結合する担体を含んでいてよい。例えば、薬学的に活性な薬剤が上及び/又は内部に配置されたノンパレイユビーズ、糖ビーズ等を用いることができる。
【0066】
そのような活性薬結合担体は、次に、放出制御特性をもたらすコーティングでオーバーコーティングすることができる。適切な放出制御コーティング材料は、セルロースエーテル及び/又はアクリルポリマー樹脂などの疎水性ポリマーなどである。エチルセルロースが好ましい可能性がある。
【0067】
放出制御コーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール等のような親水性ポリマーを含む親水性物質などの他の成分を含んでいてよい。これらの成分は、コーティングの放出制御特性を調節するのに用いることができる。例えば、HPMCの場合、該物質は、細孔形成剤として作用し得る。コーティングは、もちろん追加の薬学的に許容される賦形剤も含んでいてよい。
【0068】
長時間の放出をもたらすためのコーティングを使用する放出制御剤形は、コーティングの上の活性薬の即時放出相を含んでいてよく、一般的に放出制御剤形と分類される。
【0069】
さらに、当業者は、上記のような放出制御マトリックス及びコーティングだけでなく、全体としての医薬剤形も、上記の薬学的に許容される賦形剤も含んでいてよいことを認識するであろう。
【0070】
上記のように、本発明による医薬剤形は、尿閉を治療するために用いることができる。尿閉は、種々の、また場合によって無関係の基礎をなす原因に起因する可能性がある。一実施形態において、本発明による医薬剤形は、非オピオイド誘発性尿閉の治療に用いられる。
【0071】
尿閉は、膀胱機能不全及び背景技術の項で述べたような他の基礎をなす原因に起因する可能性がある。
【0072】
上記のように、好ましいオピオイド拮抗薬は、ナロキソンであり得る。本発明による製剤に用いることができるオピオイド拮抗薬の好ましい薬学的に許容される塩は、ナロキソン塩酸塩であってよい。
【0073】
一般的に、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩は、約1〜約80mg、約1〜約40mg、好ましくは約2mg、約4mg、約6mg、約8mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg又は約30mgのナロキソン塩酸塩に相当する剤形中の量で用いることができる。これらの量は、剤形中のナロキソン又はナロキソン塩酸塩などのその薬学的に許容される塩の量を意味する。剤形は並列で(in multiples)投与される可能性があるので、ナロキソン又はその塩の投与量は、より高い可能性がある。
【0074】
好ましくは、本発明による剤形は、放出制御剤形であり、経口投与用に製剤化される。
【0075】
特に好ましい実施形態は、単位用量につき1〜40mgのナロキソン塩酸塩を含み、経口投与用に製剤化されている、尿閉の治療用の放出制御医薬製剤に関する。
【0076】
本発明は、その最も好ましい実施形態の1つにおいて、尿閉の治療用の放出制御経口医薬剤形に関し、該医薬剤形は、その薬学的に許容される塩を単位用量につき2.5〜20mgのナロキソン塩酸塩に相当する量で含み、該放出制御剤形は、900mlの0.1N HCl pH1.2中270nmでのUV検出を用いた50rpmでの欧州薬局方パドル試験により測定したとき、ナロキソン又はその薬学的に許容される塩を以下のin vitro溶解率により放出する:
15分目に10〜30重量%のナロキソン又はその前記塩、
1時間目に30〜50重量%のナロキソン又はその前記塩、
2時間目に45〜65重量%のナロキソン又はその前記塩、
4時間目に60〜85重量%のナロキソン又はその前記塩、
7時間目に70〜95重量%のナロキソン又はその前記塩、及び
10時間目に≧80重量%のナロキソン又はその前記塩。
【0077】
他の実施形態において、該医薬剤形は、270nmでのUV検出を用いたpH1.2での米国薬局方バスケット法に従って測定したとき、以下のin vitro溶解率を示す可能性がある:
15分目に15〜30重量%のナロキソン又はその前記塩、
2時間目に45〜70重量%のナロキソン又はその前記塩、
7時間目に≧80重量%のナロキソン又はその前記塩、
12時間目に≧90重量%のナロキソン又はその前記塩。
【0078】
尿閉は、それに罹患している患者にとって通常有痛性の状態であることを考慮すると、追加の薬学的に活性な薬剤としてオピオイド鎮痛薬を含めることを考慮してよい。もちろん、その薬学的に許容される塩を追加の薬学的に活性な薬剤として用いることもできる。
【0079】
「オピオイド作動薬」という用語は、当技術分野で公知であるように用いる。本発明の目的のために、それは、「オピオイド鎮痛薬」という用語と同等であるとみなされる。一般的に、薬学的に活性な薬剤は、世界保健機関(WHO)の解剖治療化学分類法(Anatomical Therapeutic Chemical classification)(ATC分類)によるオピオイド鎮痛薬のNO2Aクラスに属する場合、オピオイド鎮痛薬又はオピオイド作動薬であるとみなされる。好ましくは、オピオイド作動薬は、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルホン、プロポキシフェン、ニコモルフィン、ジヒドロコデイン、ジアモルフィン、パパベレタム、コデイン、エチルモルヒネ、フェニルピペリジン及びその誘導体、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ブルレノルフィン、ペンタゾシン、チリジン、トラマドール、ヒドロコドンを含む群から選択することができる。本発明による使用可能な鎮痛薬のさらなる例は、メペリジン、オキシモルホン、アルファプロジン、アニレリジン、デキストロモラミド、メトポン、レボルファノール、フェナゾシン、エトヘプタジン、プロピラム、プロファドール、フェナムプロミド、チアムブテン、ホルコデイン、コデイン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、3−トランスジメチルアミノ−4−フェニル−4−トランスカルベトキシ−Λ’−シクロヘキセン、3−ジメチルアミノ−0−(4−メトキシフェニルカルバモイル)−プロピオフェノンオキシム、(−)β−2’−ヒドロキシ−2,9−ジメチル−5−フェニル−6,7−ベンゾモルファン、(−)2’−ヒドロキシ−2−(3−メチル−2−ブテニル)−9−メチル−5−フェニル−6,7−ベンゾモルファン、ピリニトラシド、(−)α−5,9−ジエチル−2’ヒドロキシ−2−メチル−6,7−ベンゾモルファン、1−(2−ジメチルアミノエチル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−3−メチル−4−オキソ−6−フェニルインドール−2−カルボン酸エチル、1−ベンゾイルメチル−2,3−ジメチル−3−(m−ヒドロキシフェニル)−ピペリジン、N−アリル−7α(1−R−ヒドロキシ−1−メチルブチル)−6,14−エンドエタノテトラヒドロノロリパビン、(−)2’−ヒドロキシ−2−メチル−6,7−ベンゾモルファン、ノルアシルメタドール、フェノペリジン、α−dl−メタドール、α−1−メタドール、β−dl−アセチルメタドール、α−1−アセチルメタドール及びβ−1−アセチルメタドールである。本発明による好ましいオピオイド作動薬は、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、モルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシモルホン及びフェンタニルである。オピオイド作動薬オキシコドンが特に好ましいことがあり得る。
【0080】
特に好ましい薬学的に許容される塩は、オキシコドン塩酸塩である。
【0081】
当業者は、尿閉がオピオイド治療による副作用として起こることを避けると同時にオピオイド作動薬が尿閉に起因する疼痛を治療することができるようなオピオイド作動薬の量を選択し、オピオイド作動薬と拮抗薬の比を選択することを知るであろう。
【0082】
一般的に、オキシコドンを追加の薬学的に活性な薬剤としてのオピオイド鎮痛薬として用いる場合、それは、単位用量につき5、10、20、40、60、80、100、120又は160mgのオキシコドン塩酸塩に相当する量で含めるものとする。
【0083】
オピオイド拮抗薬がナロキソン塩酸塩であり、オピオイド作動薬がオキシコドン塩酸塩である場合、これらの薬学的に活性な薬剤は、ナロキソン塩酸塩対オキシコドン塩酸塩の1:2の重量比で併用することができる。そのような場合、本発明による医薬剤形は、単位用量につき5、10、20、40、80、100、120又は160mgまでのオキシコドン塩酸塩に相当する量のオキシコドン及び単位用量につき2.5、5、10、20、40、50又は80mgまでのナロキソン塩酸塩に相当する量のナロキソンを含んでいてよい。これらの剤形は、好ましくは放出制御剤形であり、経口投与用に製剤化されていてよい。
【0084】
本発明は、1つのその最も好ましい実施形態において、尿閉及びそれによって引き起こされる疼痛を治療するための放出制御経口医薬剤形に関し、該医薬剤形は、2:1の重量比のオキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を含み、オキシコドン塩酸塩は、単位用量につき10〜40mgの量で存在し、ナロキソン塩酸塩は、単位用量につき5〜20mgの量で存在する。
【0085】
好ましくは、そのような放出制御剤形は、900mlの0.1N HCl pH1.2中270nmでのUV検出を用いた50rpmでの欧州薬局方パドル試験により測定したとき、オキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を以下のin vitro溶解率により放出する:
15分目に10〜30重量%のオキシコドン塩酸塩、
1時間目に30〜50重量%のオキシコドン塩酸塩、
2時間目に40〜65重量%のオキシコドン塩酸塩、
4時間目に60〜85重量%のオキシコドン塩酸塩、
7時間目に70〜95重量%のオキシコドン塩酸塩、
10時間目に≧80重量%のオキシコドン塩酸塩、
15分目に10〜30重量%のナロキソン塩酸塩、
1時間目に30〜50重量%のナロキソン塩酸塩、
2時間目に45〜65重量%のナロキソン塩酸塩、
4時間目に60〜85重量%のナロキソン塩酸塩、
7時間目に70〜95重量%のナロキソン塩酸塩、及び
10時間目に≧80重量%のナロキソン塩酸塩。
【0086】
他の実施形態において、該医薬剤形は、270nmでのUV検出を用いたpH1.2での米国薬局方バスケット法に従って測定したとき、以下のin vitro溶解率を示す可能性がある:
15分目に15〜30重量%のオキシコドン塩酸塩、
2時間目に45〜70重量%のオキシコドン塩酸塩、
7時間目に≧80重量%のオキシコドン塩酸塩、
12時間目に≧90重量%のオキシコドン塩酸塩、
15分目に15〜30重量%のナロキソン塩酸塩、
2時間目に45〜70重量%のナロキソン塩酸塩、
7時間目に≧80重量%のナロキソン塩酸塩、
12時間目に≧90重量%のナロキソン塩酸塩。
【0087】
本発明の他の実施形態は、尿閉の発現のためにさもなければオピオイドベースの疼痛治療を中止しなければならない患者における疼痛の治療用の少なくともオキシコドン又はその薬学的に許容される塩及びナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含む経口医薬組成物に関し、前記組成物は、経口放出制御剤形である。
【0088】
中等度から重度の疼痛のオピオイドベースの治療が副作用としての尿閉を引き起こし得ることが認められた。一部の患者では、この副作用の影響は、オピオイド療法を中止しなければならない程度に達し得る。
【0089】
しかし、オピオイド作動薬オキシコドン及びオピオイド拮抗薬又はナロキソン又はそれらの薬学的に許容される塩を併用することにより、唯一の薬学的に活性な薬剤としてのオピオイド作動薬に基づく疼痛治療をさもなければ中止しなければならない疼痛に苦しむ患者を治療することが可能である。したがって、そのような医薬剤形は、尿路系の活動の障害に罹患している高齢者のような患者を治療するのに特に用いることができる。
【0090】
好ましくはそのような医薬組成物は、オキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を含む。
【0091】
一実施形態において、そのような医薬組成物は、オキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を2:1の重量比で含む。
【0092】
そのような製剤は、好ましくは中等度から重度の疼痛の治療に用いる。
【0093】
組成物は、オキシコドン又は塩酸塩などのその薬学的に許容される塩及び唯一の薬学的に活性な薬剤としてのナロキソン又は塩酸塩などのその薬学的に許容される塩を含んでいてよい。
【0094】
製剤は、放出制御製剤であり、放出制御マトリックス、放出制御コーティング又は他の放出制御機能に基づくものであってよい。オキシコドン及びナロキソンを含むそのような放出制御製剤の構造、組成、賦形剤、in vitro放出データ、活性薬の量等に関しては、前記の諸項を参照すること。
【0095】
一般的に、オキシコドンを追加の薬学的に活性な薬剤としてのオピオイド鎮痛薬として用いる場合、それは、単位用量につき5、10、20、40、60、80、100、120又は160mgのオキシコドン塩酸塩に相当する量で含めるものとする。
【0096】
オピオイド拮抗薬がナロキソン塩酸塩であり、オピオイド作動薬がオキシコドン塩酸塩である場合、これらの薬学的に活性な薬剤は、ナロキソン塩酸塩対オキシコドン塩酸塩の1:2の重量比で併用することができる。そのような場合、本発明による医薬剤形は、単位用量につき5、10、20、40、80、100、120又は160mgまでのオキシコドン塩酸塩に相当する量のオキシコドン及び単位用量につき1、2、4、6、8、10、20、40、50又は80mgまでのナロキソン塩酸塩に相当する量のナロキソンを含んでいてよい。これらの剤形は、好ましくは放出制御剤形であり、経口投与用に製剤化されていてよい。
【0097】
本発明は、1つのその最も好ましい実施形態において、尿閉及びそれによって引き起こされる疼痛を治療するための放出制御経口医薬剤形に関し、該医薬剤形は、2:1の重量比のオキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を含み、オキシコドン塩酸塩は、単位用量につき10〜40mgの量で存在し、ナロキソン塩酸塩は、単位用量につき5〜20mgの量で存在する。好ましくは、放出制御剤形は、900mlの0.1N HCl pH1.2中270nmでのUV検出を用いた50rpmでの欧州薬局方パドル試験により測定したとき、オキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を以下のin vitro溶解率により放出する:
15分目に10〜30重量%のオキシコドン塩酸塩、
1時間目に30〜50重量%のオキシコドン塩酸塩、
2時間目に40〜65重量%のオキシコドン塩酸塩、
4時間目に60〜85重量%のオキシコドン塩酸塩、
7時間目に70〜95重量%のオキシコドン塩酸塩、
10時間目に≧80重量%のオキシコドン塩酸塩、
15分目に10〜30重量%のナロキソン塩酸塩、
1時間目に30〜50重量%のナロキソン塩酸塩、
2時間目に45〜65重量%のナロキソン塩酸塩、
4時間目に60〜85重量%のナロキソン塩酸塩、
7時間目に70〜95重量%のナロキソン塩酸塩、及び
10時間目に≧80重量%のナロキソン塩酸塩。
【0098】
他の実施形態において、該医薬剤形は、270nmでのUV検出を用いたpH1.2での米国薬局方バスケット法に従って測定したとき、以下のin vitro溶解率を示す可能性がある:
15分目に15〜30重量%のオキシコドン塩酸塩、
2時間目に45〜70重量%のオキシコドン塩酸塩、
7時間目に≧80重量%のオキシコドン塩酸塩、
12時間目に≧90重量%のオキシコドン塩酸塩、
15分目に15〜30重量%のナロキソン塩酸塩、
2時間目に45〜70重量%のナロキソン塩酸塩、
7時間目に≧80重量%のナロキソン塩酸塩、
12時間目に≧90重量%のナロキソン塩酸塩。
【0099】
特に好ましい実施形態において、該剤形は、10mgのオキシコドン若しくはその薬学的に許容される塩及び5mgのナロキソン若しくはその薬学的に許容される塩、20mgのオキシコドン若しくはその薬学的に許容される塩及び10mgのナロキソン若しくはその薬学的に許容される塩又は40mgのオキシコドン若しくはその薬学的に許容される塩及び20mgのナロキソン若しくはその薬学的に許容される塩を含む可能性がある。
【0100】
オキシコドン及びナロキソン又はそれらの薬学的に許容される塩を2:1の重量比で含む、本発明によるそのような経口放出制御医薬剤形は、健常志願者に単回投与した後の約1〜約17時間、約2〜約15時間、約3〜約8時間又は約4〜約5時間のオキシコドンの平均tmaxをもたらす。
【0101】
そのような剤形は、健常志願者に単回投与した後の約100ng・h/mL〜約600ng・h/mL、約400ng・h/mL〜約550ng・h/mL又は約450ng・h/mL〜約510ng・h/mLのオキシコドンの平均AUCt値をもたらす可能性もある。
【0102】
他の実施形態において、そのような剤形は、健常志願者に単回投与した後の約5ng/mL〜約50ng/mL、約30ng/mL〜約40ng/mL又は約35ng/mLのオキシコドンの平均Cmaxをもたらす。
【0103】
max値は、活性薬、すなわち、オキシコドン及び/又はナロキソン(又はそれらの塩)の最高血漿中濃度を示す。
【0104】
max値は、Cmax値に到達する時点を示す。言い換えれば、tmaxは、最大観測血漿中濃度の時点である。
【0105】
AUC(曲線下面積)値は、濃度曲線の面積に対応する。AUC値は、全体で血液循環に吸収された活性薬、すなわち、オキシコドン及びナロキソンの量に比例し、したがって、生物学的利用能の尺度である。
【0106】
AUCt値は、投与時から最終測定可能濃度までの血漿中濃度−時間曲線の下の面積の値である。AUCt値は、通常、線形台形法を用いて計算する。可能な場合、終末相速度定数である、ラムダZを終末ロック線形(lock-linear)相にあると判断されるポイントを推定する。見かけの終末相半減期であるt1/2Zは、一般的にln2とラムダZとの比から求める。最終測定ポイントと無限大の間の血漿中濃度−時間曲線下面積は、最終観測血漿中濃度(Clast)とラムダZとの比から計算することができる。次に、これをAUCtに加えて、投与時から無限大までの血漿中濃度−時間曲線下面積であるAUCinfを得る。
【0107】
「生物学的利用能」という用語は、本発明の目的のためにオキシコドン及びナロキソン又はそれらの薬学的に許容される塩が単位剤形から吸収される程度と定義する。
【0108】
1/2という用語は、本発明の目的のためにオピオイド作動薬、好ましくはオキシコドン及びオピオイド拮抗薬、好ましくはナロキソンの吸収可能な用量の二分の一が血漿に輸送されるのに必要な時間と定義する。この値は、「見かけ」の吸収半減期でなく、「真」の値(消失過程の影響を考慮に入れているような)として計算することができる。
【0109】
血漿曲線を記述するパラメーターは、臨床試験においてオキシコドン及びナロキソンなどの活性薬の何人かの被験者への最初の1回だけの投与により得ることができる。個々の被験者の血漿値を平均し、例えば、平均AUC、Cmax及びtmax値を得る。本発明との関連で、AUC、Cmax及びtmaxなどの薬物動態パラメーターは、平均値を指す。さらに、本発明との関連で、AUC、Cmax、tmaxの値又は鎮痛効力などのin vivoパラメーターは、ヒト患者及び/又は健常ヒト被験者への定常状態での又は1回の投与後に得られたパラメーター又は値を指す。
【0110】
平均tmax、Cmax及びAUCなどの薬物動態パラメーターを健常ヒト被験者について測定する場合、それらは、一般的に約16〜24例の健常ヒト被験者の試験集団におけるある期間にわたる血漿値の発生を測定することによって得る。欧州医薬品審査庁(European Agency for the Evaluation of Medicinal Products)(EMEA)又は食品医薬品局(FDA)などの規制機関は、例えば、20又は24例の被験者から得られたデータを通常受け入れる。しかし、より少数の参加者を対象とする最初の試験も受け入れられる可能性がある。
【0111】
この状況における「健常」ヒト被験者という用語は、身長、体重及び血圧等などの生理的パラメーターに関して平均値を有する通常白色人種の一般的男性又は女性を意味する。本発明の目的のための健常ヒト被験者は、医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議(International Conference for Harmonization of Clinical Trials)(ICH)の勧告に基づき、かつ準拠した組み入れ及び除外基準に従って選択する。本発明の目的のために、健常被験者は、実施例7に示す組み入れ及び除外基準に従って特定することができる。
【0112】
したがって、組み入れ基準は、例えば、年齢18歳以上、45歳以下;19〜29kg/mの範囲内のBMI及び男性については60〜100kg、女性については55〜90kgの体重範囲内;女性は授乳中でなく、非妊娠で、被験薬の投与を受ける前の24時間以内の尿β−hCG妊娠検査陰性を示さなければならないこと;病歴、理学的検査、臨床検査、バイタルサイン及びECG等に関する著しく異常な所見の欠如によって証明される一般的に良好な健康状態を含む。
【0113】
除外基準は、例えば、被験薬の初回投与の3ヵ月以内の治験薬又はプラセボへの暴露、被験薬の初回投与前の30日以内の重大な疾患、病歴、理学的検査又は実験室分析の試験前スクリーニングで特定された臨床的に重大な異常、被験薬の初回投与前の21日における処方薬(閉経後女性用HRT及び避妊薬を除く)、或いは7日における制酸薬、ビタミン剤、ハーブ製品及び/又はミネラル栄養補助食品を含む大衆薬の使用、胃腸薬物吸収(例えば、胃排出遅延、吸収不良症候群)、分布(例えば、肥満)、代謝又は排泄(例えば、肝炎、糸球体腎炎)を妨害することが公知である併存病状、治験責任医師の意見では試験を安全に完了する被験者の能力を損なうような病状歴又は併存病状、被験者が薬物療法を必要とした発作性疾患の病歴、1日タバコ5本以上の現喫煙歴、DSM−IV基準による物質又はアルコール乱用の活動(active)又は既往歴の証拠を有する被験者、1日当たり2回以上のアルコール飲料の日常的な摂取を報告した、又はスクリーニング時に0.5%以上の血中アルコール濃度を有する被験者、被験薬の初回投与前の3ヵ月における500mL超の血液若しくは血液製剤の献血又は他の大血液喪失、スクリーニング時に採取された尿の試料中のエタノール、アヘン剤、バルビツレート、アンフェタミン、コカイン代謝物、メタドン、プロポキシフェン、フェンシクリジン、ベンゾジアゼピン及びカンナビノイドの試験前スクリーニングにおける陽性結果、オキシコドン、ナロキソン又は関連化合物に対する既知の感受性等を含む。
【0114】
平均tmax、Cmax及びAUCなどの薬物動態パラメーターが患者において得られる場合、患者群は、一般的に10〜200例の患者を含むものとする。妥当な患者数は、例えば、10,20、30、40、50、75、100、125又は150例の患者である。患者は、治療すべき状態の症状に従って選択するものとする。本発明の目的のために、患者は、実施例7の組み入れ及び除外基準に従って選択することができる。したがって、患者は、例えば、18歳以上であり、腫瘍及び腫瘍以外が原因の重度の慢性疼痛に苦しんでおり、WHOステップII若しくはIII鎮痛薬について不十分な有効性及び/又は耐容性を示す等である。現在のアルコール又は薬物乱用、現在の重度の心血管及び呼吸疾患、重度の肝及び腎不全等の徴候がある場合、患者は、薬物動態パラメーターの測定を考慮されないものとする。
【0115】
上及び下に示す薬物動態パラメーターの値は、すべてが健常ヒト被験者における単回投与試験に関連する、実施例7で得られたデータに基づいて推定したことを理解すべきである。しかし、同等な結果は、健常ヒト被験者における定常状態投与又はヒト患者における単回投与及び定常状態投与によって得られると推定される。
【0116】
薬物動態パラメーターの計算は、WinNonlin Enterprise Edition、Version 4.1を用いて行うことができる。
【0117】
「定常状態」という用語は、所定の薬物の血漿レベルが達成され、それが、薬物のその後の投与で、オキシコドンの最小有効治療レベル若しくはそれを上回り、最小毒性血漿レベルを下回るレベルに維持されていることを意味する。オキシコドンなどのオピオイド鎮痛薬については、最小有効治療レベルは、所定の患者において達成される疼痛の軽減の量によって部分的に決定される。疼痛の測定は高度に主観的であり、大きい個人差が患者間で起こり得ることは、医療技術分野の技術者により十分に理解されるであろう。各投与量の投与後に濃度が最大値を経た後、最小値に低下することは明らかである。
【0118】
定常状態は、次のように述べることができる:初回投与を行う時点である時間t=0では、濃度Cも0である。その後、濃度は第1の最大値を経た後、第1の最小値に低下する。濃度が0に低下する前に、新たな投与量を投与し、そのため濃度の第2の増加は0から始まらない。この第1の濃度最小値の上に築かれた、曲線は、第2の投与量を投与した後に第1の最大値を上回る第2の最大値を通り、第1の最小値を上回る第2の最小値に下がる。このように、血漿曲線は、吸収と消失が平衡状態になる時点に達するまで、反復投与及び活性薬の随伴する段階的な蓄積により段階的に上にあがる。吸収と消失が平衡状態にあり、濃度が確定された最小値と確定された最大値の間で定常的に振動している、この状態は、定常状態と呼ばれる。
【0119】
「維持療法」及び「慢性療法」という用語は、本発明の目的のために、患者をオピオイド鎮痛薬で上で定義したような定常状態まで滴定した後に患者に投与される薬物療法と定義する。
【0120】
本発明は、その好ましい実施形態の一部に関して上で述べた。しかし、これは、本発明を制限することを全く意味しない。
(実施例)
【実施例1】
【0121】
噴霧造粒による非膨潤性拡散マトリックス中異なる量のオキシコドン/ナロキソンを含む錠剤の製造
以下の量の列挙した成分を本発明によるオキシコドン/ナロキソン錠剤の製造に用いた。
【0122】
【表1】

【0123】
用いたSurelease(登録商標)E−7−7050ポリマー混合物は、以下の組成を有していた。
【0124】
【表2】

【0125】
錠剤の製造のためにオキシコドンHCl、ナロキソンHCl、ポビドン30及びラクトースFlow Lac 100を転動混合機(Bohle)で混合し、その後、流動浴造粒装置(GPCG3)中でSurelease(登録商標)E−7−7050を用いて噴霧造粒した。物質をComill 1.4mmふるい上でふるい分けした。高せん断混合機(Collette)で溶融脂肪アルコールを用いてさらなる造粒処置を実施した。このアプローチにより製造された全錠剤コアは、乾燥物質基準で123mgの重量を有していた。
【実施例2】
【0126】
押出し成形による非膨潤性拡散マトリックス中オキシコドン及びナロキソンを含む錠剤の製造
以下の量の列挙した成分を本発明によるオキシコドン/ナロキソン錠剤の製造に用いた。
【0127】
【表3】

【0128】
列挙した量のオキシコドンHCl、ナロキソンHCl、エチルセルロース45cpi、ポビドン30、ステアリルアルコール及びラクトースFlow Lac 100を転動混合機(Bohle)で混合した。その後、この混合物をタイプMicro 18GGLの異方向二軸押出機(Leistritz AG、Numberg、Germany)を用いて押し出した。加熱帯1の温度は25℃、加熱帯2の温度は50℃、加熱帯3〜5の温度は60℃、加熱帯6〜8の温度は55℃、加熱帯9の温度は60℃、加熱帯10の温度は65℃であった。スクリュー回転速度は、1分当たり150回転(rpm)であり、得られた融解温度は87℃であり、供給速度は1.5kg/hであり、ノズル開口部の直径は3mmであった。押出し済みの物質をFrewitt0.68x1.00mmふるいでふるい分けした。粉砕した押出物を、1mm手動ふるい上に加えたタルク及びステアリン酸マグシウムと混合し、その後、錠剤に圧縮した。
【0129】
噴霧造粒により製造したSurelease(登録商標)ベースの非膨潤性拡散マトリックスも有するオキシコドン/ナロキソン錠剤(実施例1参照)と比較して、押出し製剤は、少ない成分を含む。
【実施例3】
【0130】
実施例1のオキシコドン/ナロキソン錠剤の放出プロファイル
活性化合物の放出は、HPLCを用いたpH1.2でのUSPによるバスケット法を適用して12時間にわたって測定した。錠剤OXN_1、OXN_2及びOXN_3を試験した。
【0131】
異なるオキシコドンの量の放出率は、ナロキソンの量と無関係に同じままである(不変)。それに対応して、不変の放出プロファイルがナロキソンについて異なるオキシコドンの量で認められる。
【0132】
【表4】

【0133】
放出値は、オキシコドン又はナロキソン(2行目)に当てはまり、パーセントとして示す。Oxyc.及びNal.は、オキシコドン及びナロキソンを表し、測定された化合物を示す。
【実施例4】
【0134】
異なるpH値における実施例2のオキシコドン/ナロキソン錠剤の放出プロファイル
錠剤からの活性化合物の放出をpH1.2で12時間、又はpH1.2で1時間、その後pH6.5で11時間の期間にわたって測定した。放出率は、HPLCを用いたUSPによるバスケット法により測定した。
【0135】
以下の放出率は、pH1.2で12時間にわたり測定した。
【0136】
【表5】

【0137】
以下の放出率は、pH1.2で1時間にわたり、pH6.5で11時間にわたり測定した。
【0138】
【表6】

【0139】
放出率は、オキシコドン又はナロキソン(2行目)に当てはまり、パーセントとして示す。Oxyc.及びNal.は、オキシコドン及びナロキソンを表し、測定された化合物を示す。
【実施例5】
【0140】
押出し成形による非膨潤性拡散マトリックス中異なる量のオキシコドン/ナロキソンを含む錠剤の製造
以下の量の列挙した成分を本発明によるオキシコドン/ナロキソン錠剤の製造に用いた。
【0141】
【表7】

【0142】
押出しは、以下のパラメーターを用いて上述(実施例2)のように実施した。
【0143】
【表8】

【0144】
錠剤製造は、以下のパラメーターを用いて一般的な打錠装置で実施した。
【0145】
【表9】

【0146】
活性化合物の放出は、HPLCを用いたpH1.2でのUSPによるバスケット法を適用して12時間にわたって測定した。錠剤OXN_5、OXN_6、OXN_7及びOXN_8を試験した。
【0147】
【表10】

【0148】
放出値は、オキシコドン又はナロキソン(2行目)に当てはまり、パーセントとして示す。Oxyc.及びNal.は、オキシコドン及びナロキソンを表し、測定された活性化合物を示す。
【実施例6】
【0149】
押出し成形による非膨潤性拡散マトリックス中オキシコドン/ナロキソンを含む錠剤の製造
以下の実施例において、本発明による処方を用いて、特有の放出挙動を有するオキシコドン及びナロキソンを含む製剤を得ることができることが示されている。
【0150】
以下の量の列挙した成分を本発明によるオキシコドン/ナロキソン錠剤の製造に用いた。
【0151】
【表11】

【0152】
押出しは、以下のパラメーターを用いて上述のように実施した。
【0153】
【表12】

【0154】
錠剤製造は、以下のパラメーターを用いて一般的な打錠装置で実施した。
【0155】
【表13】

【0156】
活性化合物の放出は、HPLCを用いたpH1.2でのUSPによるバスケット法を適用して12時間にわたって測定した。錠剤OXN_9、OXN_10、OXN_11、OXN_12、OXN_13及びOXN_14を試験した。
【0157】
【表14】

【0158】
放出値は、オキシコドン又はナロキソン(2行目)に当てはまり、パーセントとして示す。Oxyc.及びNal.は、オキシコドン及びナロキソンを表し、測定された活性化合物を示す。
【実施例7】
【0159】
オキシコドンとナロキソンの異なる強度の固定された組合せ及びOxygesic(登録商標)とNaloxon CRの組合せの薬物動態及び生物学的利用能特性
1.目的
本試験の目的は、(i)放出制御固定配合錠剤製剤として投与した場合のオキシコドン及びナロキソン並びにそれらの主代謝物の薬物動態及び生物学的利用能パラメーターを評価すること、(ii)3種の強度の固定組合せOXN10/5、OXN20/10及びOXN40/20の間の互換性を評価すること、(iii)固定配合製剤と、Naloxon CR錠剤とともに投与した市販のOxygesic(登録商標)の薬物動態及び生物学的利用能を比較することであった。
【0160】
2.試験集団
24例の被験者が試験を完了し、有効な薬物動態データを提供することを目的として、合計28例の健常成人男性及び女性被験者を被験薬の投与を受けるように無作為化した。
【0161】
組み入れ基準
本試験に含められた被験者は、以下の基準のすべてを満たしていた被験者であった。
・あらゆる人種の男性又は女性;
・年齢が18歳以上、45歳以下;
・BMIが19〜29kg/mの範囲内であり、体重範囲が男性では60〜100kg、女性では55〜90kgの範囲内である;
・女性は授乳中でなく、非妊娠で、被験薬の投与を受ける前の24時間以内の尿β−hCG妊娠検査陰性を示さなければならない。妊娠する可能性がある女性被験者は、信頼できる形の避妊法(例えば、子宮内装置、経口避妊薬、バリア法)を使用しなければならない。閉経後であった女性被験者は、閉経後1年間以上で、HRTの不存在下で、高い血清FSHを有さなければならない;
・病歴、理学的検査、臨床検査、バイタルサイン及びECGに関する著しく異常な所見の欠如によって証明される一般的に良好な健康状態;バイタルサイン(仰臥位で3分間安静後)は、次の範囲内になければならない:口腔体温35.0〜37.5℃;収縮期血圧90〜140mmHg;拡張期血圧50〜90mmHg;及び脈拍数40〜100bpm。血圧及び脈拍を立位で3分後に再び測定する。仰臥位から3分間の立位の後、収縮期血圧の20mmHg以下の低下、拡張期血圧の10mmHgの低下、脈拍数の20bpm以下の増加がなければならない;書面によるインフォームドコンセントが得られた;試験中に供給されたすべての食物を食べる意思がある。
【0162】
除外基準
試験から除外された被験者は、以下の基準のいずれかを満たしていた被験者であった。
・被験薬のそれらの初回投与の3ヵ月以内のあらゆる治験薬又はプラセボへの暴露;
・被験薬のそれらの初回投与前の30日以内のあらゆる重大な疾患;
・病歴、理学的検査又は実験室分析の試験前スクリーニングで特定された臨床的に重大な異常;
・被験薬のそれらの初回投与前の21日における処方薬(閉経後女性用HRT及び避妊薬を除く)、或いは7日における制酸薬、ビタミン剤、ハーブ製品及び/又はミネラル栄養補助食品を含む大衆薬の使用;
・胃腸薬物吸収(例えば、胃排出遅延、吸収不良症候群)、分布(例えば、肥満)、代謝又は排泄(例えば、肝炎、糸球体腎炎)を妨害することが公知である併存病状;
・治験責任医師の意見では試験を安全に完了する被験者の能力を損なうような病状歴又は併存病状;
・被験者が薬物療法を必要とした発作性疾患の病歴;
・1日タバコ5本以上の現喫煙歴;
・DSM−IV基準3による物質又はアルコール乱用の活動又は既往歴の証拠を有する被験者、或いは治験責任医師の意見では嗜癖又は物質乱用行為を示した被験者;
・1日当たり2回以上のアルコール飲料の日常的な摂取を報告した、又はスクリーニング時に0.5%以上の血中アルコール濃度を有する被験者;
・被験薬のそれらの初回投与前の3ヵ月における500mL超の血液若しくは血液製剤の献血又は他の大血液喪失;
・スクリーニング時に陽性HIV検査をもたらす又はHIVに感染する高リスク活動に参加する;スクリーニング時の陽性B型肝炎表面抗原検査をもたらす;スクリーニング時の陽性C型肝炎抗体検査をもたらすような血液試料を介しての感染を伝搬するリスクがある;
・スクリーニング時に採取された尿の試料中のエタノール、アヘン剤、バルビツレート、アンフェタミン、コカイン代謝物、メタドン、プロポキシフェン、フェンシクリジン、ベンゾジアゼピン及びカンナビノイドの試験前スクリーニングにおける陽性結果;
・オキシコドン、ナロキソン又は関連化合物に対する既知の感受性;
・Oxygesic@に関するデータシートに詳述されているような禁忌及び予防措置;
・それらのプライマリーケア医師(該当する場合)に情報を提供することの拒絶;
・治験責任医師が除外基準に具体的に述べられていない理由のために被験者を不適切であると考えた。
【0163】
人口統計データを表11に示す。
【0164】
【表15】

【0165】
3.試験デザイン、試験治療用量及び投与方法
供試製剤の調製
2:1のオキシコドン:ナロキソン比を有する溶融押出しオキシコドン/ナロキソン放出制御錠製剤を製造した。利用可能な3種の用量強度、すなわち、OXN10/5、OXN20/10及びOXN40/20があり、1番目の数はオキシコドン塩酸塩のmg量であり、2番目の数はナロキソン塩酸塩のmg量である(表12参照)。OXN20/10及びOXN40/20は、同じ造粒によるものであるが、OXN10/5は、有効成分対賦形剤の比に関してわずかに異なる処方を有する。
【0166】
この実施例によるオキシコドン/ナロキソン錠剤(OXN錠剤)は、2:1の比のオキシコドンとナロキソンの固定された組合せを含む。錠剤の処方を下に要約する(表12参照)。
【0167】
20/10mg及び40/20mg錠剤は、同じ造粒法により製造したものであり、これらの2つの錠剤強度は、組成的に比例している。この実施例によるオキシコドン/ナロキソン持続放出錠剤(OXN)錠剤は、ステアリルアルコール及びエチルセルロースのマトリックスを遅延剤として用いた放出制御錠剤である。錠剤は、強度10/5mg、20/10mg及び40/20mg(両方が塩酸塩として)のオキシコドン塩酸塩とナロキソン塩酸塩の組合せを含む。オキシコドン/ナロキソン持続放出錠剤の成分及び定量的組成の完全な記述を下の表12に示す。
【0168】
【表16】

【0169】
【表17】

【0170】
試験デザイン
本試験は、試験及び健常被験者におけるオープンラベル単回投与4治療薬4期間無作為化試験であった。治療薬は、絶食状態で次のように経口投与した。
− 治療薬A:4×錠のOxn10/5
− 治療薬B:2×錠のOxn20/10
− 治療薬C:1×錠のOxn40/20
【0171】
参照治療薬は、Oxygesic(登録商標)20mg錠剤であった。ナロキソンは、ナロキソン10mgCR噴霧造粒錠剤の形で用いた。したがって、参照治療薬は以下の通りであった。
− 治療薬D:2錠のOxygesic(登録商標)20mg及び2錠のナロキソンCR10mg
【0172】
治療の期間は、21日間のスクリーニング期間及びそれぞれが被験薬の単回投与の後の7日間のウォッシュアウト期間を含む4つの試験期間を含んでいた。試験期間4の投与後7〜10日の試験後検診が存在し、試験の中止後7〜10日が存在した。総期間は、49〜52日間であった。
【0173】
治療スケジュールは、4つの試験期間のそれぞれにおける被験薬の単回投与であった。被験薬の各投与は、7日間のウォッシュアウト期間によって隔てられていた。
【0174】
登録集団は、試験に参加するための書面によるインフォームドコンセントを提出した被験者集団であった。薬物動態に関する全解析集団は、少なくとも1つの治療薬について計算された少なくとも1つの有効な薬物動態パラメーターを有していた被験者と定義した。
【0175】
4.薬物動態学的評価
薬物濃度の測定
オキシコドン、ノルオキシコドン、オキシモルホン、ノルオキシモルホン、ナロキソン、6β−ナロキソール及びナロキソン−3−グルクロニド濃度を測定するための血液試料は、4つの試験期間のそれぞれの期間中投与直前並びに投与後0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、5、6、8、10、12、16、24、28、32、36、48、72及び96時間目に各被験者について得た(試験期間につき22の血液試料)。血液はまた、可能な場合、重篤又は重度な予期しない有害事象の最初の報告時及びその消失時に採取した。
【0176】
毎回の血漿測定時に、6mLの静脈血を前腕静脈から採取し、K2EDTA抗凝固剤を含む管に入れた。すべての試料を一般的な試料取扱手順に従って処理した。
【0177】
薬物動態パラメーター
以下の薬物動態パラメーターをオキシコドン、ノルオキシコドン、オキシモルホン、ノルオキシモルホン、ナロキソン、6β−ナロキソール及びナロキソン−3−グルクロニドの血漿中濃度から計算した。
− 最終測定可能濃度まで計算した血漿中濃度時間曲線下面積(AUCt);
− 投与時から無限大までの血漿中濃度−時間曲線下面積(AUCINF);
− 最高観測血漿中濃度(Cmax);
− 最高観測血漿中濃度の時点(tmax);
− 終末相速度定数(ラムダZ);
− 見かけの終末相半減期(t1/2Z)
【0178】
オキシコドン、ノルオキシコドン、オキシモルホン、ノルオキシモルホン及びナロキソン−3−グルクロニドについては、AUC値をng・h/mL単位で、Cmax値をng/mL単位で示した。ナロキソン及び6β−ナロキソールについては、AUC値を、低濃度であるため、pg・h/mL単位で、Cmax値をpg/mL単位で示した。
【0179】
AUCt、AUCINF及びCmaxを主要なパラメーターとみなした。
【0180】
AUCtは、線形台形法を用いて計算した。可能な場合、ラムダZは、終末対数線形相にあると判断されたポイントを用いて推定した。t1/2Zは、ln2とラムダZとの比から求めた。最終測定ポイントと無限大の間の血漿中濃度−時間曲線下面積は、最終観測血漿中濃度(Clast)とラムダZとの比から計算した。次にこれをAUCtに加えて、AUCINFを得た。
【0181】
すべての薬物動態計算をWinNonlin Enterprise Edition、Version 4.1を用いて行った。
【0182】
統計的手法
4つの治療薬の同等性を評価するために、オキシコドンのCmax及びAUCINFは重要であった。AUCtは、線形台形法を用いて計算した。可能な場合、ラムダZは、終末対数線形相にあると判断されたポイントを用いて推定した。t1/2Zは、ln2とラムダZとの比から求めた。最終測定ポイントと無限大の間血漿中濃度−時間曲線下面積は、最終観測血漿中濃度(Clast)とラムダZとの比から計算した。次にこれをAUCtに加えて、投与時と無限大の間の血漿中濃度−時間曲線下面積(AUCINF)を得た。
【0183】
用量調整相対全身利用能(Frelt及びFrelINF)及びCmax比は、問題となる以下の比較で定義した差について、それぞれAUCt、AUCINF及びCmax値の比から求めた。
固定組合せA対オープン組合せD
固定組合せB対オープン組合せD
固定組合せC対オープン組合せD
固定組合せA対固定組合せB
固定組合せA対固定組合せC
固定組合せB対固定組合せC
【0184】
薬物動態に関する全解析集団をこれらの解析に用いた。
【0185】
代謝物:親薬物AUCt及びAUCINF比を可能な場合に各治療薬について推定した。
【0186】
5.臨床薬理結果
オキシコドン、ナロキソン−3−グルクロニド、ナロキソン、ノルオキシコドン、オキシモルホン、ノルオキシモルホン及び6β−ナロキソールの平均観測血漿中濃度−時間曲線を図1〜7に示す。
【0187】
オキシコドン、ナロキソン−3−グルクロニド及びナロキソンの薬物動態パラメーターをそれぞれ表14〜19に示す。
【0188】
【表18】

【0189】
【表19】

【0190】
【表20】

【0191】
【表21】

【0192】
【表22】

【0193】
【表23】

【0194】
6.データ解析
a)オキシコドンに関する結果
− AUCt
オキシコドンについて得られたAUCt値は、治療薬間で非常に一致していた。治療薬のそれぞれが473ng.h/mL(4×OXN10/5)と502ng.h/mL(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)の間の平均AUCt値を有していた。
【0195】
AUCtに関して、固定配合錠剤のそれぞれは、参照治療薬に対して、及び互いに対してオキシコドンの同等の利用能をもたらした。相対的生物学的利用能計算のすべてが生物学的同等性に関する受容性の80〜125%の限界内にあった90%信頼区間を有していた。
【0196】
− t1/2Z
オキシコドンについて得られたt1/2Z値は、治療薬間で一致していた。治療薬のそれぞれが4.69時間(4×OXN10/5)と5.01時間(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)の間の平均t1/2Z値を有していた。行った比較のいずれについても治療薬のt1/2Z値の間に統計的な差はなかった。
【0197】
− AUCINF
オキシコドンについて得られたAUCINF値は、治療薬間で非常に一致していた。治療薬のそれぞれが475ng.h/mL(4×OXN10/5)と509ng.h/mL(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)の間の平均AUCINF値を有していた。
【0198】
AUCINFに関して、固定配合錠剤のそれぞれが、参照治療薬に対して、及び互いに対してオキシコドンの同等の利用能をもたらした。相対的生物学的利用能計算のすべてが生物学的同等性に関する受容性の80〜125%の限界内にあった90%信頼区間を有していた。
【0199】
− Cmax
オキシコドンについて得られたCmax値は、固定配合治療薬間で一致しており、34.46ng/mL(1×OXN40/20)から35.73ng/mL(2×OXN20/10)までの範囲にあった。2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mgの平均値Cmaxは、40.45ng/mLとわずかにより高かった。
【0200】
固定配合錠剤を互いに比較したCmax比は、97.5%〜103.1%の範囲にあり、それぞれが80〜125%以内の90%信頼区間を有していた。2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mgのより高い平均値Cmaxは、固定配合錠剤を参照製剤と比較したCmax比がより低く、85.8%〜88.4%の範囲であったことを意味している。しかし、これらのCmax比は、それでも80〜125%以内であった90%信頼区間を有していた。
【0201】
− tmax
固定配合錠剤のtmaxの中央値は、3時間(1×OXN40/20)から4時間(2×OXN20/10)までの範囲にあった。これらの2つの治療薬間の差は、見かけ上小さいが、統計的に有意であった。2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mgのtmaxの中央値は、2.5時間であり、この参照治療薬と2×OXN20/10との間に統計的に有意な差があった。
【0202】
b)ナロキソン−3−グルクロニドに関する結果
− AUCt
ナロキソン−3−グルクロニドについて得られたAUCt値は、治療薬間で非常に一致していた。各治療薬が520ng.h/mL(1×OXN40/20)と540ng.h/mL(4×OXN10/5)の間の平均AUCt値を有していた。
【0203】
AUCtに関して、固定配合錠剤のそれぞれが、参照治療薬に対して、及び互いに対してナロキソン−3−グルクロニドの同等の利用能をもたらした。相対的生物学的利用能計算のすべてが生物学的同等性に関する受容性の80〜125%の限界内にあった90%信頼区間を有していた。
【0204】
− t1/2Z
ナロキソン−3−グルクロニドについて得られたt1/2Z値は、治療薬間で一致していた。治療薬のそれぞれが7.66時間(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)と8.48時間(4×OXN10/5)の間の平均t1/2Z値を有していた。行った比較のいずれについても治療薬のt1/2Z値の間に統計的な差はなかった。
【0205】
− AUCINF
ナロキソン−3−グルクロニドについて得られたAUCINF値は、治療薬間で非常に一致していた。治療薬のそれぞれが521ng.h/mL(2×OXN20/10)と563ng.h/mL(4×OXN10/5)の間の平均AUCINF値を有していた。
【0206】
AUCINFに関して、固定配合錠剤のそれぞれが、参照治療薬に対して、及び互いに対してナロキソン−3−グルクロニドの同等の利用能をもたらした。生物学的利用能計算のすべてが生物学的同等性に関する受容性の80〜125%の限界内にあった90%信頼区間を有していた。
【0207】
− Cmax
ナロキソン−3−グルクロニドについて得られたCmax値は、治療薬間で一致していた。治療薬のそれぞれが61.95ng/mL(1×OXN40/20)から63.62ng/mL(2×OXN20/10)までの範囲にあった平均Cmax値を有していた。
【0208】
固定配合錠剤のそれぞれが、参照治療薬と、及び互いと同等のナロキソン−3−グルクロニドのCmaxをもたらした。Cmax比計算のすべてが生物学的同等性に関する受容性の80〜125%の限界内にあった90%信頼区間を有していた。
【0209】
− tmax
すべての治療薬のtmaxの中央値は、0.5時間(2×OXN20/10)から1時間(4×OXN10/5、1×OXN40/20と2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)までの範囲にあった。治療薬のいずれについてもtmaxの中央値間に有意な差はなかった。
【0210】
− ナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCt比
平均ナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCt比は、852.25(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)から933.46(4×OXN10/5)までの範囲にあった。
【0211】
− ナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCINF比
ナロキソンのAUCINF推定値の欠如は、平均ナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCINF比が2×OXN20/10錠剤についてのみ計算することができたことを意味していた。これらは、5例の被験者のデータに基づく414.56の平均ナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCINF比を示した。
【0212】
c)ナロキソンに関する結果
ナロキソンの濃度は、予想通り低く、したがって、これらの結果は、完全な薬物動態学的評価を裏付けるものでなかった。
【0213】
− AUCt
ナロキソンについて得られたAUCt値は、治療薬間で一致していた。各治療薬が0.84ng.h/mL(2×OXN20/10)と0.97ng.h/mL(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)の間の平均AUCt値を有していた。
【0214】
AUCtに関して、固定配合錠剤のそれぞれが、参照治療薬に対して、及び互いに対してナロキソンの同等の利用能をもたらした。生物学的利用能計算のすべてが生物学的同等性に関する受容性の80〜125%の限界内にあった90%信頼区間を有していた。
【0215】
− t1/2Z
プロファイルの終末部分の血漿中濃度が、半対数目盛上にプロットしたときに、必ずしも直線を近似するとは限らなかったため、被験者のすべてについてナロキソンのt1/2Zを計算することは可能でなかった。平均値は、4〜9の範囲の被験者数に基づいていた。
【0216】
ナロキソンについて得られた平均t1/2Z値は、9.89時間(4×OXN10/5)から13.83時間(1×OXN40/20)までの範囲にあった。平均値に寄与するt1/2Z値の広い範囲があったが、行った比較のいずれについても治療薬のt1/2Z値の間に統計的な差はなかった。
【0217】
− AUCINF
AUCINF値は、評価できるt1/2Z値を有する被験者について計算した。一部のAUCINF値は、AUCの外挿部分がAUCINF値の20%超を占めていたため、報告しなかった。1.64ng.h/mLの平均AUCINF値が2×OXN20/10錠剤のみについて報告可能であった。他の治療薬のいずれも平均AUCINF値を報告するのに十分なデータを有さなかった。治療薬間の比較をするには不十分なデータが存在していた。
【0218】
− Cmax
治療薬のそれぞれが0.07ng/mL(4×OXN10/5)と0.08ng/mL(2×OXN20/10、1×OXN40/20と2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)の間の平均Cmaxを有していた。
【0219】
固定配合錠剤のそれぞれが、互いに対して同等のナロキソンCmaxをもたらした。固定配合錠剤を比較したCmax比のすべてが生物学的同等性に関する受容性の80〜125%の限界内にあった90%信頼区間を有していた。
【0220】
固定配合錠剤を参照製剤と比較したとき、2×OXN20/10錠剤対2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mgは、生物学的同等性に関する受容性の80〜125%の限界を上回っていた90%信頼区間を有していた。
【0221】
− tmax
治療薬のtmax値の中央値は、1時間(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)から5時間(2×OXN20/10)までの範囲にあった。治療薬のそれぞれについてtmax値の広い範囲が存在した。治療薬のいずれについてもtmaxの中央値間に有意な差はなかった。
【0222】
7.臨床薬理に関する考察及び結論
経口での生物学的利用能が低いことがナロキソンの完全な薬物動態学的評価の妨げとなっている。低い血漿中濃度がほとんどの被験者のナロキソンのAUCINF値を推定することが可能でなかったことを意味していることから、これが確認された。ナロキソン−3−グルクロニドは、はるかに高い濃度で血漿中に存在し、大多数の被験者についてナロキソン−3−グルクロニドのAUCINF推定値が得られた。固定配合錠剤のナロキソン成分に関する結論は、ナロキソン−3−グルクロニドに関するパラメーターに基づくものであった。
【0223】
a)オキシコドン
2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg及び固定配合錠剤の平均血漿中オキシコドン濃度−時間曲線は、ほぼ重ね合わせることができた。
【0224】
オキシコドンについて、生物学的同等性評価を行った。生物学的同等性の比較のそれぞれが、Frelt、FrelINF及びCmax比について生物学的同等性に関する受容性の限界内にあった90%信頼区間を有していた。オキシコドンに関する結果は、固定配合錠剤強度のそれぞれが、互いに対して、及びナロキソンCR錠剤とともに投与したOxygesicに対しても生物学的に同等であったことを示すものである。治療薬のいずれについてもtmax又はt1/2Z値のいずれの間にも統計的な差はなく、このことから製剤の類似性がさらに確認された。
【0225】
参照製剤の投与後に達成された血漿中オキシコドン濃度は、以前の試験でOxyContinの投与後に認められた用量調整オキシコドン濃度と同様であった。固定配合錠剤の平均Cmax値は、わずかにより低かったが、これらを参照製剤と比較したとき、Cmax比は、生物学的同等性に関する受容性の限界内にあった信頼区間を有していた。
【0226】
b)ナロキソン
平均血漿中ナロキソン濃度は、0.1ng/mL未満と低く、二相性であるように思われ、第2のピークが8〜16時間に存在していた。
【0227】
被験者のすべてが定量可能な血漿中ナロキソン濃度を有していたが、個々の被験者の血漿中ナロキソン濃度は、低く、高度に変動していた。最高観測血漿中ナロキソン濃度は、0.07〜0.08ng/mLであった。
【0228】
以前の試験からのナロキソンの薬物動態プロファイルを検討した。1mgの単回投与に対して用量調整したこれらの試験からの平均Cmax値は、平均で、4〜15pg/mLであり、ここで観測された低い血漿中ナロキソン濃度は以前の試験で測定されたレベルと一致していたことが確認された。
【0229】
ナロキソンについて生物学的同等性評価を行った。血漿中ナロキソン濃度の変動のため、AUCINF、又はしたがってFrelINF値の推定ができなかった。生物学的利用能の推定は、Frelt値に基づいていた。生物学的同等性の比較のそれぞれが、生物学的同等性に関する受容性の限界内にあった90%信頼区間を有していた。ナロキソンの平均Cmax値は比較可能であり、生物学的利用能の6比較のうち5つは、生物学的同等性に関する基準を満たしていた90%信頼区間を有していた。
【0230】
治療薬のtmax及びt1/2Z値は、変動していたが、これらの2つのパラメーターについて治療薬のいずれの間にも有意な差はなかった。
【0231】
予想通り、固定錠剤及びOxygesic+ナロキソンの投与後の血漿中に認められたナロキソン−3−グルクロニドのレベルは、達成されたナロキソンのレベルよりはるかに高く、結果としてナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCt比は、約900であった。6β−ナロキソールもナロキソンより高い量で測定され、結果として6β−ナロキソール:ナロキソンAUCt比は、約22であった。これらの代謝物:親化合物AUCt比は、固定配合錠剤及び参照治療薬にわたって一貫していた。
【0232】
c)ナロキソン−3−グルクロニド
平均血漿中ナロキソン−3−グルクロニド濃度は、ナロキソンより高く、FrelINF値に基づいて生物学的利用能の評価を行うことが可能であった。
【0233】
ナロキソン−3−グルクロニドについて生物学的同等性の評価を行った。生物学的同等性の比較のそれぞれが、Frelt、FrelINF及びCmax比について生物学的同等性に関する受容性の限界内にあった90%信頼区間を有していた。ナロキソン−3−グルクロニドに関する結果は、固定配合錠剤強度のそれぞれが、互いに対して、及びOxygesic+ナロキソンに対して生物学的に同等であったことを示すものである。治療薬のいずれについてもtmax又はt1/2Z値のいずれの間にも統計的な差はなく、このことから製剤の類似性がさらに確認された。
【0234】
次いで、そのような製剤を臨床試験及び副作用調査試験において放出制御オキシコドン塩酸塩製剤であるOxygesic(登録商標)と対比して鎮痛効力について試験した。1000例を超える患者を対象としたこれらの臨床試験及び副作用調査試験で、オキシコドン/ナロキソン配合による治療について、尿閉を含む排尿障害などの一般的なオピオイド誘発副作用がまれな頻度に減少したことが示された。このことは、ナロキソンが尿閉を治療することができることを例証するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿閉を治療するための少なくとも1つのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記オピオイド拮抗薬がナロキソン、ナルトレキソン、ナルブフィン及びそれらの薬学的に許容される塩を含む群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記オピオイド拮抗薬がナロキソン塩酸塩である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記剤形が即時放出剤形である、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記剤形が放出制御剤形である、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記放出制御剤形が放出制御マトリックスを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記放出制御剤形が放出制御コーティングを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記剤形がナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含み、前記剤形が、欧州薬局方パドル試験により測定したとき、
15分目に10〜30重量%のナロキソン又はその前記塩、
1時間目に30〜50重量%のナロキソン又はその前記塩、
2時間目に45〜65重量%のナロキソン又はその前記塩、
4時間目に60〜85重量%のナロキソン又はその前記塩、
7時間目に70〜95重量%のナロキソン又はその前記塩、及び
10時間目に80重量%のナロキソン又はその前記塩
の率でナロキソン又はその薬学的に許容される塩を放出する、請求項6から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記剤形が少なくとも1つの追加の薬学的に活性な薬剤を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記追加の薬学的に活性な薬剤がオピオイド又はその薬学的に許容される塩である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
オキシコドン、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシモルホン又はそれらの薬学的に許容される塩を含む群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記追加の薬学的に活性な薬剤がオキシコドン塩酸塩である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記剤形がナロキソン塩酸塩及びオキシコドン塩酸塩を唯一の薬学的に活性な薬剤として1:2の重量比で含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
尿閉を治療するための薬剤の製造における少なくとも1つのオピオイド拮抗薬又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項15】
前記オピオイド拮抗薬がナロキソン、ナルトレキソン、ナルブフィン及びそれらの薬学的に許容される塩を含む群から選択される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記オピオイド拮抗薬がナロキソン塩酸塩である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記剤形が即時放出剤形である、請求項14から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記剤形が放出制御剤形である、請求項14から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記放出制御剤形が放出制御マトリックスを含む、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記放出制御剤形が放出制御コーティングを含む、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
前記剤形がナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含み、前記剤形が、欧州薬局方パドル試験により測定したとき、
15分目に10〜30重量%のナロキソン又はその前記塩、
1時間目に30〜50重量%のナロキソン又はその前記塩、
2時間目に45〜65重量%のナロキソン又はその前記塩、
4時間目に60〜85重量%のナロキソン又はその前記塩、
7時間目に70〜95重量%のナロキソン又はその前記塩、及び
10時間目に80重量%のナロキソン又はその前記塩
の率でナロキソン又はその薬学的に許容される塩を放出する、請求項18から20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記剤形が少なくとも1つの追加の薬学的に活性な薬剤を含む、請求項14から21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記追加の薬学的に活性な薬剤がオピオイドである、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
オキシコドン、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシモルホン又はそれらの薬学的に許容される塩を含む群から選択される、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記追加の薬学的に活性な薬剤がオキシコドン塩酸塩である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記剤形がナロキソン塩酸塩及びオキシコドン塩酸塩を唯一の薬学的に活性な薬剤として1:2の重量比で含む、請求項14から25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
尿閉の発現のためにさもなければオピオイドベースの疼痛療法を中止しなければならない患者における疼痛の治療のための少なくともオキシコドン又はその薬学的に許容される塩及びナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含み、放出制御剤形である経口医薬組成物。
【請求項28】
オキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
オキシコドン及びナロキソン又はそれらの塩酸塩を2:1の重量比で含む、請求項27又は28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
単位用量につき5〜160mgの量のオキシコドン又はその薬学的に許容される塩及び単位用量につき2.5〜80mgの量のナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項27から30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記剤形が即時放出剤形である、請求項27から30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記剤形が放出制御剤形である、請求項27から30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記放出制御剤形が放出制御マトリックスを含む、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記放出制御剤形が放出制御コーティングを含む、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記剤形がオキシコドン又はその薬学的に許容される塩及びナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含み、前記剤形が、欧州薬局方パドル試験により測定したとき、
15分目に10〜30重量%のオキシコドン又はその前記塩、
1時間目に30〜50重量%のオキシコドン又はその前記塩、
2時間目に45〜65重量%のオキシコドン又はその前記塩、
4時間目に60〜85重量%のオキシコドン又はその前記塩、
7時間目に70〜95重量%のオキシコドン又はその前記塩、
10時間目に80重量%のオキシコドン又はその前記塩、
15分目に10〜30重量%のナロキソン又はその前記塩、
1時間目に30〜50重量%のナロキソン又はその前記塩、
2時間目に45〜65重量%のナロキソン又はその前記塩、
4時間目に60〜85重量%のナロキソン又はその前記塩、
7時間目に70〜95重量%のナロキソン又はその前記塩、及び
10時間目に80重量%のナロキソン又はその前記塩
の率でオキシコドン又はその薬学的に許容される塩及びナロキソン又はその薬学的に許容される塩を放出する、請求項32から34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
尿閉の発現のためにさもなければオピオイドベースの疼痛療法を中止しなければならない患者における疼痛の治療のための、放出制御剤形である経口医薬組成物の製造における少なくともオキシコドン又はその薬学的に許容される塩及びナロキソン又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項37】
前記組成物がオキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を含む、請求項35に記載の使用。
【請求項38】
前記組成物がオキシコドン塩酸塩及びナロキソン塩酸塩を2:1の重量比で含む、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
単位用量につき5〜160mgの量のオキシコドン又はその薬学的に許容される塩及び単位用量につき2.5〜80mgの量のナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項36から38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
前記剤形が即時放出剤形である、請求項36から39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
前記剤形が放出制御剤形である、請求項36から39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記放出制御剤形が放出制御マトリックスを含む、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記放出制御剤形が放出制御コーティングを含む、請求項41に記載の使用。
【請求項44】
前記剤形がオキシコドン又はその薬学的に許容される塩及びナロキソン又はその薬学的に許容される塩を含み、前記剤形が、欧州薬局方パドル試験により測定したとき、
15分目に10〜30重量%のオキシコドン又はその前記塩、
1時間目に30〜50重量%のオキシコドン又はその前記塩、
2時間目に45〜65重量%のオキシコドン又はその前記塩、
4時間目に60〜85重量%のオキシコドン又はその前記塩、
7時間目に70〜95重量%のオキシコドン又はその前記塩、
10時間目に80重量%のオキシコドン又はその前記塩、
15分目に10〜30重量%のナロキソン又はその前記塩、
1時間目に30〜50重量%のナロキソン又はその前記塩、
2時間目に45〜65重量%のナロキソン又はその前記塩、
4時間目に60〜85重量%のナロキソン又はその前記塩、
7時間目に70〜95重量%のナロキソン又はその前記塩、及び
10時間目に80重量%のナロキソン又はその前記塩
の率でオキシコドン又はその薬学的に許容される塩及びナロキソン又はその薬学的に許容される塩を放出する、請求項41から43のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2011−527310(P2011−527310A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517147(P2011−517147)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058630
【国際公開番号】WO2010/003963
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】