説明

局所オリゴペプチド送達システム

【課題】皮膚細胞への効率的な送達をもたらす局所オリゴペプチド送達システムを提供する。
【解決手段】送達システムは、ハイドロゲル電気伝導性組成物によって分離された陰極と陽極を含む電気化学セル及び皮膚に有効な量の1以上のオリゴペプチドを含む。好ましい実施形態では、電気化学セル及びペプチドが、皮膚用パッチに含まれ、ハイドロゲル電気伝導性組成物は親水性ポリマー、水性担体又は水性アルコール性担体、少なくとも1つの皮膚に有効なオリゴペプチド、及び塩を含み、担体の少なくとも一部は構造水を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用又は医薬用活性成分の局所送達の分野に関する。より具体的には、本発明は、生物学的に活性なオリゴペプチドの送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多様な状態を治療するための医薬組成物の送達であって、電流を使用して送達を増強するものはよく知られており、皮膚はかかる送達メカニズムが多用される部位である。イオン導入及び電気穿孔技術は、通常、全身分布が最終的に意図される治療用組成物の送達経路として、皮膚に依存している。歴史的には、これらの手法はその目的を達成するために複雑な電気装置を必要としてきたが、近代技術によって問題は非常に単純化されてきた。活性物質の電気駆動式の送達を利用するために特に便利な手段は、動力セル部材を含む皮膚用パッチである。典型的には、かかるパッチは、皮膚と接触させた際に望ましい電流を生じさせるために、少なくとも2つの電極、1つは陽極で1つは陰極、及び2電極間の回路を完成させるための配置を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
皮膚関連及び非皮膚関連障害の両方の治療のために、様々な異なるタイプの活性物質と共にこのタイプのパッチが使用され、又は推奨されている。しかしながら、それらは未だ、本出願人が知る限り、オリゴペプチドの送達に利用されていない。そこで本出願人は、電気化学的に生じさせた電流と組み合わせて、オリゴペプチドを皮膚に適用することにより、緩徐かつ効率的な方法で、皮膚細胞への効率的な送達をもたらすことを確認した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、電気化学セル及び皮膚に有効な量のオリゴペプチドを含む皮膚に有効なオリゴペプチドの送達システムに関する。好ましい実施形態では、セル及びペプチドが皮膚用パッチ中に含まれる。本発明は、親水性ポリマー、水性担体又は水性アルコール性担体、少なくとも1つの皮膚に有効なオリゴペプチド、及び塩を含み、該担体の少なくとも一部は構造水である、局所に貼付可能なハイドロゲルを含むハイドロゲルにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】NOVAで評価したパッチによる保湿効果。
【図2】写真で見たパッチによるライン及びしわへの効果。
【図3】パッチによるTEWLへの効果。
【図4】レプリカ分析で見たパッチによる極細ライン及びしわへの効果。
【図5】自己評価で見たパッチによるライン及びしわへの効果。
【図6】臨床評価で見たパッチによるライン及びしわへの効果。
【図7】パッチによる皮膚の弾力効果。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書全体を通じて、用語「含む」、「有する」等は、客体の集合が、特記されたそれらの客体に限定されないことを一貫して意味するものとする。
【0007】
本明細書で定義されるオリゴペプチドは、2〜20アミノ酸残基を含む短いペプチドである。好ましくは、本発明のオリゴペプチドは、3〜10アミノ酸残基を含む。本発明のオリゴペプチドは、皮膚細胞上で有効な効果を有する任意のものである。皮膚に対する有用な効果の例には、美白、フリーラジカル捕捉、抗老化(アンチエイジング)、コラーゲン合成の刺激、保湿、抗菌、抗炎症、又は抗刺激効果が含まれる。好ましい実施形態では、皮膚の光老化又は経時的老化作用を治療又は予防するために、オリゴペプチドが使用される。
【0008】
本発明の送達システムには、オリゴペプチドを、緩やかなマイクロ電流と組み合わせて、皮膚に適用することが含まれる。マイクロ電流の電源は、皮膚上でin situに電流を生じさせることができる任意の数のデバイス及び/又はビヒクルであり得、本発明の目的のためには、マイクロ電流は、皮膚上で3ボルト以下、好ましくは1.5ボルト未満を生じさせる電流として定義される。これらのマイクロ電流を生じさせるデバイス又はビヒクルを用いた治療用オリゴペプチドの送達は、外部の電源を必要とせず、送達システムの部材の相互作用により皮膚そのものの上で電流が生じる点で、より一般的なイオン導入又は電気穿孔デバイスによる送達とは異なる。
【0009】
1実施形態では、皮膚用パッチを用いてマイクロ電流が送達される。かかる送達システムの例として、米国特許第5,652,043号はかかる目的で適用可能なコンパクトな電気化学セルを開示し、米国特許出願第2004/167461号、同第2004/267189号、及び国際公開第WO03/35166号は、当該タイプの電気化学セルの皮膚用パッチへの適用を開示する。これらの文献のそれぞれの内容は、その全体が引用により本明細書に包含される。かかるパッチは、Power Paper (21 Yagia Kapayim Kiriyat Arie, Petach Tikiva, Israel 49130)から購入することもできる。
【0010】
簡潔にいうと、電気化学セルは、従来のバッテリーと同様の方法で、電解液(電気を伝導させるイオンの溶液)により分離された電子供与体及び電子受容体を用いて電流を生じさせる。アノード(陽極)及びカソード(陰極)は、電子を交換することができる化合物、例えばアノードに二酸化マンガン及びカソードに亜鉛を含む。電流を生じさせるカソード及びアノードの能力は、イオン的にそれらをつなぐことで必須の電子交換を可能にする電解液の存在によって可能となる。
【0011】
本発明の好ましいパッチには、オープンセル、すなわち、電気化学セルの電解液部分を外装フィルム内に密封しないことにより、セル内部のガスの蓄積を防止するセルが含まれる。セルの電解液部分の構造は、典型的には、紙、プラスチック、セルロース又は布といった多孔性基板に、少なくとも1つの吸湿性物質、少なくとも1つの水溶性電気活性物質、及び接着特性を有する少なくとも1つの水溶性ポリマーを含有する水溶液を浸透させて含む。吸湿性物質の例には、塩化カルシウム、臭化カルシウム、二リン酸カリウム、又は酢酸カリウムが含まれるが、これに限定されない。水溶性電気活性物質(電解質そのもの)は、局所に貼付可能な任意の伝導性物質、例えば塩化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、水酸化カリウム及び硫酸である。水溶性接着性ポリマーは、局所に貼付可能な任意のポリマー、例えばPVA、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、PVP、ポリエチレンオキシド、寒天、でんぷん又はそれらの誘導体である。いくつかの実施形態では、1つの物質が2つの目的で作用することがあり、例えば、臭化亜鉛又は塩化亜鉛は吸湿性物質及び電気活性物質の両方として作用できる。また、デキストラン又は硫酸デキストランといったでんぷんは、吸湿性物質としてだけでなく、水溶性ポリマーとしても機能できる。
【0012】
好ましいパッチは、それぞれが不溶性の電気活性粉末の混合物である陰極及び陽極と、例えば電解液として記載されるような水溶液とを含む。電極に関して、電解液の電気活性物質及び電極の電気活性物質は同一でなければならないが、吸湿性及びポリマー性物質は、異なっていてもよい。陰極及び陽極の好適な電気活性粉末の組み合わせには、MgO2 - Zn;SO2 - Zn;Cd - NiO2;又はI - NiO2が含まれるが、これに限定されない。電気化学セルは、上記のとおり多孔性基板に水溶液を浸透させ;多孔性基板の片面に陰極混合物の層を沈積(deposit)させ;多孔性基板のもう片面に陽極混合物の層を沈積させることにより構築される。従って、基本的なセル中には3つの薄く柔軟性のある層が存在する。水性溶液及び電極混合物は、任意の方法で基板に塗布できるが、印刷(printing)が好ましい。ほぼ任意の公知の印刷技術を利用することができ、その場合、水性溶液及び電極混合物は、基板に印刷されるインクとして扱われる。基板は任意の形状であり、任意のパターンで「インク」が一面に塗布される。基板に塗布された電極混合物の各層は、伝導性の層(すなわち、黒鉛、炭素クロス)によりさらに被覆され得る。端子(黒鉛又は金属)は、それぞれの電極層又はそれらと接続された伝導性の層のいずれかと接続される。端子は、電気負荷の接続場所を提供する。端子は、好ましくは基板上に印刷される。端子の一部は、基板の上にあってもよい。さらなる接着性バッキング剤をセルの片側上に供給してもよい。保護性の薄膜を、セル表面の一部に設けてもよい。さらなる電力出力を生じさせるために、前述の基本的なセルを2以上積み重ねてもよい。基本的なセルは、厚さが0.5 mmであり、マイクロアンペア範囲で1.5〜3ボルトを生じさせ得る。
【0013】
特に好ましいセルが国際公開第WO03/35166号に開示されており、かかる文献は、皮膚表面下に電流を供給することができる局所デバイスを記載している。電流源は、特定の電圧及び電流で、直流電流を供給することができる任意の電流発生器であり得る;しかしながら、好ましい電源は小型で薄く柔軟性のある電気化学セルであり、最も好ましくは引用文献に記載のとおりオープン型の液体状態の電気化学セルである。
【0014】
パッチデバイスは、基本的な電気化学セルの改良版を利用する。基本的なセルでは、1つの電極が積み重ねられた層の底部に配置され、もう一方が頂上部に配置される。この基本的なセルが皮膚上に設置されると、下部電極が皮膚と隣接する。上部電極を皮膚と接触させるために、上部電極は、セルの上部の電極層から皮膚に到達する引き伸ばされた形状に形作られる。ショート回路を回避するために、下部電極層及び電極から上部電極を絶縁するように、絶縁性層を備えてもよい。この電気化学セルが皮膚上に設置された場合、この配置によって、両方の電極が皮膚に隣接する。こうして、皮膚を透過させることにより、電極間に電流を流す電位差が生じる。
【0015】
便宜上、電気化学セルは柔軟性のあるパッチ本体中に入れられる。該本体のベースの一部は、パッチを皮膚に接着させるための生体適合性の接着剤で被覆される。パッチは、典型的には、水、又はアルコール性/水性溶液、少なくとも1つの塩(例えば、塩化ナトリウム又は塩化カリウム)又は任意の他の荷電性剤、及び場合により緩衝性媒体を含む伝導性流体中に含まれた皮膚科用及び医薬化合物と共に使用される。伝導性流体は、例えば、電気伝導性のハイドロゲル、好ましくは皮膚接触での使用に好適な接着性ハイドロゲルであり得る。ハイドロゲルは、親水性ポリマーを用いて調製されるゲルである。これらの物質は当技術分野では周知であり、生体用電極の一部として頻繁に使用され、例えば米国特許第6,631,294号及び同第6,845,272号に記載されており、その記載内容は、引用により本明細書に包含される。ハイドロゲルの調製に有用な親水性ポリマーの例は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンイミン)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリ(アクリルアミドスルホン酸)、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニルピロリドン)、寒天、デキストラン、デキストリン、カラゲナン、キサンタン、及びグアーである。好ましいハイドロゲルは、カチオン性のアクリレートであり、例えば、好ましくは第4級塩化物のアクリル酸エステル及び/又は第4級塩化物の硫酸エステル又はアクリルアミドから調製することができ;このタイプのポリマーは、米国特許第5,800,685号に開示されており、引用により本明細書に包含される。親水性ポリマーは通常、ハイドロゲルの重量の約1〜約70%、好ましくは約5〜約60%、より好ましくは約10〜約50%を構成する。
【0016】
伝導性流体は、パッチを皮膚に貼付する前に各電極に塗布し得る。または、伝導性流体は、パッチを皮膚に貼付した後に、電極との接触のために皮膚上の2つの部位に塗布し得る。1つの部位の伝導性流体は、他方にある流体と接触させてはならず、さもなければ電流が皮膚に透過しない。好ましい実施形態では、伝導性流体を正確に配置させる固定装置中に、伝導性流体を供給する。
【0017】
かかるパッチは、皮膚に有効なオリゴペプチドの皮膚への送達に、簡便に適用することができる。例えば、目的のオリゴペプチドを、パッチ中で伝導性流体として作用するハイドロゲルに、簡便に包含させることができる。皮膚に効果を生じさせる任意のオリゴペプチドを同様に包含させ得る。皮膚に効果を有する数多くのオリゴペプチドが、当技術分野では知られている。例えば、コラーゲン又はフィブリンといったより大きな、皮膚に有効なタンパク質の特定のフラグメントを利用することにより、局所に適用した際にコラーゲン又はフィブリン合成を促進できることが知られている。本発明の目的のために有用なオリゴペプチドの更なる例は、米国特許第6,620,419号に開示される一連のオリゴペプチドであり、その内容は引用により本明細書に包含される。そこに開示のオリゴペプチドは、式R1-X-Thr-Thr-Lys-(AA)n-Y及びその塩を有し、ここでXはD型又はL型の塩基性アミノ酸、例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、シトルリン、サルコシン、スタチンであり、(AA)nは天然又は合成のnアミノ酸の鎖を表し、ここでnは0〜5の整数であり、R1はH、又はヒドロキシル化された若しくはされていない、飽和若しくは不飽和、直鎖状若しくは分岐状、硫化された若しくはされていない、環状若しくは非環状の2〜22炭素の脂肪酸鎖、又はビオチン基、又はペプチド合成で使用されるウレタンタイプの保護基、例えばベンジルオキシカルボニル(Z)基、terブチルオキシカルボニル(tBoc)基、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基であり、YはOR2又はNR2 R3であり、ここでR2及び/又はR3は、水素原子、又はヒドロキシル化された若しくはされていない、飽和若しくは不飽和、直鎖状もしくは分岐状、硫化された若しくはされていない、環状若しくは非環状の1〜22炭素の脂肪族鎖若しくは芳香族鎖である。これらのオリゴペプチドは、抗老化及び保湿特性を有することが開示されている。特に好ましいペプチドは、パルミトイルペンタペプチドである。かかるペンタペプチドは、Sederma社から商品名Matrixylとして購入できる。
【0018】
同様に、米国特許第6,372,717号(引用により本明細書に包含される)は、配列Tyr-Argを含むペプチド、特にかかるペプチドの親油性誘導体が、皮膚に対し鎮静効果を有することで、刺激性及び感受性を低下させることを開示する。親油性ペプチドは式R1-L-Tyr-L-Arg-R2を有し、ここでR1はR3-C=O基であり、R3は直鎖状若しくは分岐状、飽和若しくは不飽和、ヒドロキシル化された若しくはされていないC1〜C20のアルキル鎖であり、又はR3はアリール、アリール-アルキル、又はアルキルオキシ基である。また、R2はO-R4基であり、R4はC1〜C20のアルキル鎖であるか、又はR2はNH2又はNHX又はNXX基であり、XはC1〜C4のアルキル鎖である。かかるペプチドはまた、本発明に従い、マイクロ電流と共に効果的に適用され得る。
【0019】
EP 1180524は、皮膚におけるライン及びしわの出現を減少させる効果を有するオリゴペプチドを阻害する一連のカテコールアミンを開示する。この文献の内容は、引用により本明細書に包含される。これらのペプチドは、プロテインSNAP-25のカルボキシ末端に由来する。これらのペプチドはいずれも、本発明のパッチとの結合に有用であり得る;しかしながら、特に有用なペプチドの1つは、式Glu-Glu-Met-Gln-Arg-Argを有する。より具体的には、このタイプのペプチドはアセチルヘキサペプチド3であり、商業的には、Lipotecにより製造され、Centerchem (Norwalk, CT)から購入できるArgireline(商標)としても知られている。
【0020】
皮膚に有効なオリゴペプチドの更なる例には、Hibiscus esculents L.(オクラ)の種子由来の天然タンパク質の生体内変換により得られるオリゴペプチドが含まれ、CognisからMyoxinol LS 9736中の複合体として購入できる。これは主に、低分子量のオリゴペプチドからなる。
【0021】
本発明の電気化学セル中で利用されるオリゴペプチドは、使用される最終濃度により変更されるが、通常は、電気化学セルの補助を得ずに皮膚に直接適用する際にその用途で通常推奨される量で用いるか、又はセルの使用により得られる送達の効果により、僅かにより少ない量で使用できる。1以上のオリゴペプチドを伝導性流体中で使用することができ、また異なるタイプの活性を示すオリゴペプチドを、単一の伝導性流体中で組み合わせることもできる。全体としては、オリゴペプチドは通常、伝導性流体組成物の重量の約0.001〜約50%、好ましくは約0.01〜約30%、より好ましくは約0.1〜約20%の量で、伝導性流体に包含される。
【0022】
上記のとおり、伝導性流体は、水又は水/アルコール混合物といった成分も含む。使用されるアルコールは、好ましくは多価アルコール、例えばグリコール、例えばペンチレングリコール又はグリセロールであり、これらは有益な湿潤効果も有する。使用される水は、伝導体として作用できる任意の水であるが、好ましい実施形態では、適用される水は構造水、すなわち、例えばRO 88053 [S-型水]、RO 88054 [I-型水]、米国特許第5,846,397号及び同第6,139,855号に記載されるとおり、I水、S水又はその2つの組み合わせであり、当該文献のそれぞれの内容は引用により本明細書に包含される。一般原則として、1又は複数の構造水中のイオンのクラスター化は、該水の存在下で使用される場合に生物学的特性を増強するか、又は特定の物質の生化学的挙動を改変する。このことは、米国特許第5,846,397号及び同第6,139,855号に開示されており、その内容は引用により本明細書に包含される。従って、選択した1又は複数のオリゴペプチドと、I水若しくはS水のいずれか一方又は両方との組み合わせは、皮膚に対するオリゴペプチドの効果を更に増強することができる。水又は水/アルコール成分は通常、ハイドロゲルの重量の約1〜約65%、好ましくは約2〜約55%、及びより好ましくは約4〜約50%からなる。
【0023】
オリゴペプチド活性成分に加えて、皮膚に有効な成分を1以上加えることも望ましい。そのような皮膚に有効な剤の例には、収斂剤、例えばチョウジ油、メタノール、カンフル、ユーカリ油、オイゲノール、メンチルラクテート、ウィッチヘーゼル蒸留液;抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤、例えばアスコルビン酸、その脂肪酸エステル類及びリン酸エステル類、トコフェロール及びその誘導体類、N-アセチルシステイン、ソルビン酸並びにリポ酸;抗アクネ剤、例えばサリチル酸及び過酸化ベンゾイル;抗菌剤又は抗真菌剤、例えばカプリリルグリコール、トリクロサン、フェノキシエタノール、エリスロマイシン、トルナフテート、ニスタチン又はクロルトリマゾール;キレート剤、例えばEDTA;局所鎮痛剤、例えばベンゾカイン、リドカイン又はプロカイン;抗老化/抗しわ剤、例えばレチノイド類又はヒドロキシ酸類;皮膚ライトニング剤、例えば甘草、アスコルビルホスフェート類、ヒドロキノン又はコウジ酸;皮膚コンディショニング剤(例えば、種々のもの及び閉鎖性剤を含む湿潤剤);抗刺激剤、例えばコーラ、ビサボロール、アロエベラ又はパンテノール;抗炎症剤、例えばヒドロコルチゾン、クロベタゾール、デキサメサゾン、プレドニゾン、アセチルサリチル酸、グリシルリジン酸又はグリシルレチン酸;抗セルライト剤、例えばカフェイン及び他のキサンチン類;湿潤剤、例えばアルキレンポリオール類又はヒアルロン酸;皮膚軟化剤、例えば油状エステル又はペトロラタム;(有機又は無機性)日光保護剤、例えばアボベンゾン、オキシベンゾン、オクチルメトキシシンナメート、二酸化チタン又は酸化亜鉛;(化学的又は物理的)剥離剤、例えばN-アセチルグルコサミン、マンノースホスフェート、ヒドロキシ酸類、ラクトビオン酸、キョウニン類、又は海塩類;日焼け剤、例えばジヒドロキシアセトン;生物学的に活性なペプチド、例えばパルミトイルペンタペプチド又はアルジルリンが含まれるが、これに限定されない。これらの添加される皮膚に有効な剤は、意図される目的で使用した場合にその活性について有効であることが通常知られている量で使用される。
【0024】
オリゴペプチドの皮膚への送達は、電気化学セルを皮膚と接触させ、ほぼ同時に皮膚と伝導性流体を接触させることにより達成され;好ましくは、伝導性流体及びセルは、皮膚用パッチといった単一の送達デバイスの一部として、共に皮膚に適用される。パッチの貼付に関して、パッチは、皮膚に有効な活性を必要とする皮膚上に配置され、数分間、典型的には5分〜30分間その場所に保持され、その後除去される。意図される最終的な用途に応じて、送達システムは、必要時に(例えば、感受性を低下させるために)又は慢性的に(例えば、ライン、しわ及び皮膚萎縮のような老化の兆候の処置のために、又は皮膚の保湿性を増大させるために)適用される。この適用は、1週当たり約1回〜1日当たり約4又は5回、好ましくは1週当たり約3回〜1日当たり約3回、もっとも好ましくは1日当たり約1又は2回行われる。慢性適用とは、使用者の生涯にわたり、好ましくは少なくとも約1ヶ月間、より好ましくは約3ヶ月〜約20年間、より好ましくは約6ヶ月〜約10年間、より好ましくはさらに約1年〜約5年間という局所適用期間を意味すると理解される。いったん伝導性流体が適用されると、電流が流れ始める。(任意の電気化学セル内と同様に)アノード下に陽イオンが蓄積し、カソード下に電子が蓄積する。いったん十分な蓄積が生じると、伝導性流体の皮膚科用又は医薬化合物中の正電荷(負電荷)の荷電種は、アノード(カソード)から皮膚に搬出される。
【0025】
適用される表面、例えば、眼下、眼角周辺、唇の上方、額、又は顔表面全体のサイズ及び形状に適合するようにパッチは任意の形状をとり、電極は任意のサイズ及び形状をとる。
【0026】
本発明を、以下の非限定的な実施例によって、さらに説明する。
【実施例】
【0027】
実施例1:オリゴペプチドを含むハイドロゲルは、以下のとおり調製する:
1. ゲルの86%は、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパン-スルホン酸ナトリウム塩- PEG400-ジアクリレート共重合体)、グリセロール、及び塩化カリウム塩を含む市販のハイドロゲル (First Water, Marlborough, Wilts., UK)からなる。
【0028】
2. このゲルの14%は、アセチルヘキサペプチド-3 (Argireline(登録商標):Glu-Glu-Meth-Glu-Arg-Arg)及び構造水(I及びS)からなる。
I水 36.35%
S水 59.40%
ヘキサペプチド 0.50%
ペンチレングリコール 3.00%
フェノキシエタノール 0.75%
その後、米国特許出願公開第2004/167461号及び同第2004/267189号に記載のとおり、皮膚用パッチの伝導性流体として、該ハイドロゲルを包含させる。かかるパッチを、実施例2に記載の臨床試験方法で使用する。
【0029】
実施例2
試験は、選択基準及び除外基準のリストに項目化された要件を全て満たす24名の女性で行う。被験者の年齢層は41〜69歳であり、Fitzpatrick皮膚タイプI、II、及び、IIIであった。6名の被験者はFitzpatrick皮膚タイプIを有し、14名の被験者はFitzpatrick皮膚タイプIIを有し、さらに4名の被験者はFitzpatrick皮膚タイプIIIを有した。この試験に参加した被験者は全て、眼角領域に少なくとも中程度のしわを有した。6名の被験者は中程度のしわを有し、15名は深いしわを有し、さらに3名は非常に深いしわを有した。参加者には、試験期間中はEstee Lauderパッチ以外の他の局所剤は一切使用しないように指導した。被験者には、試験期間中はそれぞれの日常的なクレンジング習慣を維持するように指導した。
【0030】
パネリストには、清潔な乾燥皮膚上にパッチを貼付し、保護用バッキング剤を剥がし、眼から少なくとも1/4インチ離してパッチを置き、顔に確実にパッチを接着させ、20分間そのまま放置した後、それを除去し廃棄するように、指導した。試験の1日目に、ベースライン測定を行った。その後、治験責任医師は、各パネリストの右及び左の眼角領域にEstee Lauderパッチを貼付した。20分後にパッチを除去し、測定を繰り返した。2日目〜5日目及び2、3、及び4週目に処置前測定を行った後、パッチを貼付した。20分後にパッチを除去し、測定を繰り返した。5及び6週目は、パッチを貼付せずに処置前測定のみを行う回復期間とした。第1のステップでは、相対湿度40%及び70°Fの環境の部屋で20分間、被験者を順応させた。始めに保湿度測定を行った後、写真、TEWL、レプリカ、臨床、及び自己評価及びBallistometerを行った。
【0031】
このコントロール試験は、総試験時間を6週間で構成した。テスト部位は、眼角領域とした。測定は、顔の右及び左側の両方で行った。女性らは、提供されたテスト製品を除き、一切のトリートメント製品をテスト部位に使用しなかった。皮膚の評価は、パッチ貼付前(処置前)のベースライン及びvisit毎のパッチの除去直後に行った。パネリストの皮膚を、皮膚の保湿度、(写真及び自己評価による)ライン及びしわ、経表皮水分喪失量、並びに皮膚弾力について評価した。
【0032】
皮膚の保湿度は、Nova Meter DPM 9003 (NOVA Technology Corporation, Portsmouth, NH)により評価した。Novaは、増加した皮膚表面水含有量の関数として、皮膚の保湿度を測定する。この装置は、皮膚の電気容量に比例したアウトプットをMhz.周波範囲で測定する。データの取得は、ソフトウェアにより管理する。処置前及び処置後の電気容量の差を、計算する。皮膚の水含有量が多くなる程、電気容量は高くなるので、皮膚がより保湿される。
【0033】
製品使用後のライン及びしわの減少は、近接写真で評価し記録した。右及び左の眼角の写真は、Fuji S2デジタルカメラで撮影する。位置決め(positioning)の再現性を保証するために、パネリストの頭部はヘッドレストに置く。カメラは、比を1:7、Fストップを22に設定する。写真は、画像解析プログラムのOptimas 6.51で評価し、製品の使用前及び後を比較する。ライン及びしわは、製品の使用前及び後での積分光学濃度(IOD)の変化を調べることにより、評価する。IODは[(255-グレー値)×面積]に相当する。IODの減少は極細ライン及びしわの減少を意味し、極細ライン及びしわの増大はIODの増大を意味する。
【0034】
経表皮水分喪失量は、DermaLab(登録商標)蒸発計(Cortex Technology, Denmark)で測定する。被験者をリラックスした傾斜姿勢にし、会話や興奮することを禁じた。経表皮水分喪失量は自動的に記録され、15秒のデータ取得時間で、合計測定時間を45秒に設定する。
【0035】
相対湿度40%及び70°Fの環境の部屋で15〜20分間、被験者を順応させる。TEWLの測定は、約1 cmずつ離れて1列に並んだ3つの別々の場所で行う。
【0036】
ライン及びしわは、レプリカ収集法の後に行うデジタル画像解析(Corcuff, P., Leveque, J.L., 溝及びしわの皮膚表面レプリカ画像解析,「Handbook of Non- Invasive Methods and the skin」, CRC Press, Inc., Boca, Raton, Florida, 1995, 89-96.)だけでなく、臨床評価及び自己評価により評価する。
【0037】
臨床評価は、10-ポイントアナログスケール(尺度)を用いて、トレーニングを受けた治験分担医師が行った。治験分担医師は、外部コンサルタントのJ. Close Associatesがトレーニングをし、認定した。トレーニングの目的は、客観的に評価するために特別にトレーニングされた人間による判断を用いて、皮膚パラメーターの指数を特定及び定量することにあった。トレーニングを受けた評価者は、広範囲の知覚語彙を有し、参照用の共通フレームからそれを引き出し、スケールの使用法に経験を有し、標準的な評価技術を使用する。ライン及びしわについては、その特定パラメーターに関する標準的な辞典及び参考文献を評価のために使用した。治験責任医師は、ベースラインのスコアを参照しなかった。自己評価も、同一の10-ポイントアナログスケールを用いて、各パネリストが行った。被験者に、スケールの使用トレーニングを行い、参照用の共通フレームを提供した。
【0038】
10-ポイントスケールは、0がライン及びしわ無しを表し、10が非常に深いライン及びしわを表すものを用いた。パネリストには、ベースラインのスコアを参照しないように指導した。
【0039】
皮膚弾力は、Ballistometerを用いて、顔の両側の眼角領域を評価する。Ballistometerは、皮膚の表面上で硬い対象物のリバウンドを測定することにより、皮膚の動力学的特性を評価する装置である。これは、非常に軽量(1〜5グラム)の振子(pendulum)を、皮膚表面上に落下させ、振子のリバウンドパターンをコンピューターで測定することにより、皮膚弾力性を測定する。いったん皮膚の表面にプローブが当たると、落下した対象物の運動エネルギーは皮膚内部に保存され、続いて最初の開始位置よりも低い高さにプローブをリバンウンドさせるために放出される。振子と皮膚間の相互作用を特性付けるために、初めのリバウンドの振幅の差を解析する。
【0040】
統計データ:データの統計学的有意差は、Microsoft Excelで行われる2-サンプル対のスチューデントt-検定により解析した。両側の確率表を使用して、データの有意差を調べた。2〜5日目及び2〜6週目の処置前データをベースラインと比較し、1〜5日目及び2〜4週目のパッチ除去直後のデータもベースラインと比較した。結果を、図1〜7のグラフに示す。
【0041】
概要
ベースラインと比べ、1つのパッチ貼付直後には、以下が実証された:
・皮膚の保湿度の30%改善
・写真で見たライン及びしわの35%減少
・TEWLは変化なし。従って、皮膚バリアは壊されなかった。
【0042】
・レプリカで見たライン及びしわの15%減少
・自己評価によるライン及びしわの27%減少
・臨床評価によるライン及びしわの31%減少
ベースラインと比べ、1つのパッチ貼付の24時間後(2日目の処置前)には、以下が実証された:
・写真で見たライン及びしわの10%減少
ベースラインと比べ、8つのパッチ貼付後には、以下が実証された:
・写真で見たライン及びしわの37%減少
・TEWLは変化なし。従って、皮膚バリアは壊されなかった。
【0043】
・レプリカで見たライン及びしわの33%減少
・自己評価によるライン及びしわの31%減少
・臨床評価によるライン及びしわの33%減少
・皮膚弾力の20%改善
パッチを貼付しなかった回復後には、全てのパラメーターがベースラインに戻り始めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロゲル電気伝導性組成物によって分離された陰極と陽極を含んでなる電気化学セルを含む皮膚用パッチオリゴペプチド送達システムであって、前記ハイドロゲル電気伝導性組成物が、パルミトイルペンタペプチド、アセチルヘキサペプチド-3又はそれらの混合物から選択されるオリゴペプチド;少なくとも1種のポリアクリレート;塩化ナトリウム、塩化カリウム又はそれらの混合物;ペンチレングリコール、グリセリン又はそれの混合物から選択される少なくとも1つの多価アルコールを含み、ただし、前記パッチが皮膚に適用されるとき、両方の電極が皮膚と接触されるが電極同士は互いに接触せず、かつ、前記ヒドロゲル組成物の成分を皮膚表面に浸透させるのに十分な電流をin situにて生じさせることができ、並びに前記ハイドロゲルが少なくとも1つの構造水を含むことを特徴とする前記システム。
【請求項2】
前記ハイドロゲルが、I構造水及びS構造水の組み合わせを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ハイドロゲルが、I構造水を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ハイドロゲルが、S構造水を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記オリゴペプチドがアセチルヘキサペプチド-3を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記オリゴペプチドがパルミトイルペンタペプチドを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記オリゴペプチドが、アミノ酸配列Glu-Glu-Met-Gln-Arg-Arg(配列番号1)を有するアセチルヘキサペプチド-3を含む、請求項1に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−105992(P2012−105992A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283015(P2011−283015)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【分割の表示】特願2008−514791(P2008−514791)の分割
【原出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】