説明

局所局部的神経作用療法

局部的神経作用療法を施す目的で、脳幹上の皮膚区域に近接し、かつその皮膚区域の下又は上のヒトの患者の後頸部の毛髪の生え際に薬物を投与することによる局所的脳幹求心性刺激療法によって、ヒトの病状又は状態を治療する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経興奮性亢進と神経化学的機能不全症候群を治療するための局所局部的神経作用療法(「TRNA療法」)に関する。この療法は、後頸部の毛髪の生え際(「BONATH」)に当該薬剤を有効量投与することによって行うものである。
【背景技術】
【0002】
約2.5ポンドのヒトの脳は、人類が知っている中で最も複雑な物質からなる。神経系の基本的な機能細胞であるニューロンは、ドーパミン、セロトニン、アセチルコリン、ノルエピネフリン、γアミノ酪酸(GABA)などの神経化学物質(神経伝達物質)を特異的受容体に放出させる電気インパルスに基づいて機能する。平均的なヒトの脳には、ニューロンが800億〜1000億個(世界人口の10倍)存在すると見積もられている。これらのニューロンは、同様に、他のニューロンと2000億〜3000億個のコード化された結合を確立して、人体の複雑な働きを実現させる。
【0003】
脳幹は、脳と残りの身体部分との間を連続的に流れる神経インパルスを中継及び処理する極めて重要な経路としての機能を果たす。その大きさは親指ほどで、人体の中で最も高密度かつ複雑な配線システムが含まれている。脳幹は、神経インパルスを運ぶ軸索と樹状突起(導線)に加えて、発電機及び継電器としての機能を果たす重大な核も含む。脳神経に関係している核もあれば、疼痛知覚、自律神経系の「闘争−逃走」反応、覚醒、警戒、並びに、心肺機能及びそれに関連する自律機能のための発電機及びインパルスセンターとしての機能を果たす核もある。
【0004】
先行技術において、5−HT1受容体のサブタイプに対して特異的なセロトニンアゴニストを用いて、更に効能が高くかつ安全な治療を提供する試みが既に行われてきた。
【0005】
例えば、Robertsonらの米国特許第5,863,935号には、「5−HT1様」受容体アゴニスト特性を有する特定の化合物と、局所または鼻腔内投与を含む数多くの方法でその化合物を投与することが記載されている。
【0006】
加えて、Listの米国特許第5,805,571号には、有効物質の全身投与を目的とした経皮吸収型製剤が記載されており、列挙されているその有効物質の少なくとも1つは、インドール誘導体を含む群のセロトニンアゴニストである。通常は、経皮吸収型製剤は、急性環境では使用しない。経皮吸収型製剤には即効性がなく、むしろ、その徐放プロセスを通じて、予防的または持続的効果を提供するものであるからである。Listの米国特許第5,805,571号に記載されているような経皮吸収型製剤には、薬物がバリア層を貫通して皮膚の上/中に至る(濃度勾配によるイオン泳動)までの時間が必要になる。例えば、吸収された薬物用量が、頭痛と関連する疼痛を緩和するほど十分になるまでには、かなり時間がかかる場合がある。上記の経皮吸収型製剤には、局所投与した薬物が吸収されて、皮膚組織及び軟組織中の微小血管を通じて血流内に入るようにするためには、濃度勾配の働きが必要になる。治療レベルが確立されるほど十分な量で薬物が体循環中に入ったら、最終的には薬物は、脳血流によって標的部位に送達される。したがって、このプロセスは比較的長い時間を伴い、症状を迅速に軽減するように修正することは不可能である。更に、血流と組織吸収に影響を及ぼす心拍出量及び脳血管疾患のような要因の影響を受ける。
【0007】
本発明者は、後頸部の毛髪の生え際(BONATH)に(例えばクリーム/ゲル又は徐放性パッチとして)適用する局所適用による局所局部的神経(TRNA)療法を通じて、抗片頭痛薬(例えばトリプタン及び麦角アルカロイド)と筋弛緩薬(例えばチザニジン)を送達することについて既に説明している。本著者は、この送達経路に、適切な皮膚透過促進剤中に配合したスマトリプタン及びチザニジンを用いて、片頭痛と別の脳幹障害を治療する効能があることを証明している。
【0008】
本発明者の以前の特許、米国特許出願公開第20030013753号(2002年6月5日提出)と米国特許出願公開第20080090894号(いずれも参照により本明細書に組み込まれる)には、片頭痛又は群発性頭痛を治療するための単位用量の局所用製剤であって、ヒトの患者の皮膚の上に局所投与するための製薬学的に許容可能なビヒクルに組み込まれたセロトニンアゴニストを含む局所用製剤が開示されている。セロトニンアゴニストを供給する単位用量は、前記単位用量をヒトの皮膚に塗布したときに速やかに吸収可能な形態であるのが好ましい。上記のセロトニンアゴニストは、コハク酸塩に対して重量比で、スマトリプタンを約0.5〜約200mg、又は、製薬学的に許容可能な別の局所吸収性セロトニンアゴニストを治療的に同等の用量含むのが好ましい。上記の単位用量によって、ヒトの患者に局所投与してから約2時間以内に、片頭痛又は群発性頭痛が軽減されるのが好ましい。
【0009】
本発明者の以前の特許、米国特許出願公開第20070065463号(2004年6月21日提出)には、片頭痛又は群発性頭痛、筋捻挫、筋痙攣、痙縮、緊張性頭痛、緊張性片頭痛、並びに、筋肉の緊張及び疼痛と関連する状態を治療するための局所用製剤であって、ヒトの患者の皮膚の上に局所投与するための製薬学的に許容可能な賦形剤に組み込まれた有効剤(1種又は複数種)を治療有効量含む局所用製剤が開示されており、上記の有効剤(1種又は複数種)は、i)麦角アルカロイド、ii)骨格筋弛緩薬、又はiii)麦角アルカロイドと骨格筋弛緩薬との組み合わせからなる群から選択され、単位用量の局所用製剤が、ヒトの患者に局所投与してから約2時間以内に治療効果をもたらすような有効な濃度で、上記の有効剤(1種又は複数種)は存在する。特定の好ましい実施形態では、上記の局所用製剤は、チザニジンのような骨格筋弛緩薬を含む。特定の好ましい実施形態では、上記の単位用量には、塩酸チザニジンが約0.4mg〜8mg、好ましくは約0.2mg〜約4mg含まれる。
【0010】
ヒトが、神経興奮性亢進及び/又は神経化学的機能不全症候群に関わる状態を患っている場合には、適切な治療は一般には受けられない。このような状態としては、片頭痛、群発性頭痛、緊張性頭痛を含む頭痛、月経性片頭痛に関連する月経性状態が挙げられる。実際には、このような状態の他のものとしては、疼痛、不安反応、パニック発作、てんかん発作、非てんかん(心因)発作、急性の頭痛及び顔面痛症候群(三叉神経痛、非定型顔面痛、後頭神経痛、TMJ関連痛、のぼせ、月経関連不快気分、多発性硬化症、及びパーキンソン病など)、並びに、類似又は関連する症候群が挙げられるが、これらに限らない。
【0011】
例えば、パーキンソン病とは、原因不明の一般に知れ渡っている消耗性の神経学的状態である。既知の治癒法はなく、治療法は、症状の軽減を目的としている。パーキンソン病は、中枢神経系(CNS)内での進行性変性過程によるものとみなされている。神経系に作用するドーパミンの脳内レベルの有意な低下は、パーキンソン病の過程の大きな特徴である。他の脳内化学物質も影響を受ける。病理学的研究によって、脳幹の黒質内のドーパミン産生細胞が死滅及び消失することが示されている。黒質からのドーパミン投射、すなわち上行性の黒質−線条体ドーパミン作動性経路に依存する尾状核及び被殻(線条体)中の細胞の消失も生じる。その結果現れる、パーキンソン病の基本的な臨床的徴候は、振せん、姿勢反射障害、運動緩徐/筋強剛である。機能低下、自律神経機能不全、及び記憶障害/認知的問題も一般的兆候である。パーキンソン病は、頭痛及び発作後に外来患者が診断される神経系疾患の中で3番目に多い疾患である。
【0012】
パーキンソン病の主な治療法は、低下した中枢ドーパミンレベルの正常化を目的としている。この正常化は、外因性レボドパを経口投与し、最終的にレボドパを脳内でドーパミンに変換させるか、又は、ドーパミンアゴニストを用いて内因性ドーパミンを増大させるかのいずれかによって行われる。この治療レジメンでは、更にCOMT阻害薬を用いてドーパミンの分解を抑え、受容体におけるドーパミンレベルの向上と持続性の向上を可能にする。これらの従来の療法に関連する問題は、自然状態で見られる受容体での安定したドーパミンレベルを実現できない点である。ドーパミンレベルが変動すると、臨床機能の変動、いわゆる「オン・オフ」状態が生じる。また、従来の療法は、長期的にはドーパミン受容体感受性にも影響を及ぼし、その結果、数年間の治療後に、「運動合併症」及びジスキネジアが生じる場合がある。この問題は、外因性ドーパミン療法と、若年時に診断された患者に特に当てはまる。
【0013】
エンドオブドーズでのウェアリングオフ現象(その中で最も顕著なものは「すくみ足」であり、患者は本質的に麻痺を起こし、動くことができない)をきたした患者は、受容体レベルでの突発性の一時的ドーパミン不足から、活動面で大きな影響を受ける。
【0014】
塩酸アポモルフィン(先ごろイプセン・ファーマシューティカルズによって買収されたヴァーナリス製のApokyn)は、上記の「オフ期間」に対処する目的で、皮下注射剤として投与するものである。塩酸アポモルフィンは、腹腔内注入によっても投与されている。この薬物は、10〜15分以内に効果を現し、最大で1.5時間効果が持続することが報告されている。これにより、患者は、塩酸アポモルフィンがなければ成しえなかった、予め計画していた活動、例えば夕食に出かけるなどの活動に興ずることができるようになる。その結果得られる、自らの病気を制御しているという感覚と、それに関連する、病気に冒された患者であることに対する不安感の軽減は、計り知れないものである。Apokynは、「進行したパーキンソン病に関連する低運動性、オフエピソード(エンドオブドーズでのウェアリングオフ及び予測不能なオン/オフエピソード)を急性的かつ間欠的に治療する」際に用いるものとして市販されている。
【0015】
残念なことに、注射剤としては、Apokynの治療形態は、その効能にもかかわらず、好ましいものではない。比較的高コスト(3mlのカートリッジで約100ドル)で、大半の患者が日常的に使用するものとしては手がでないことも関係している。Apokynは、耐性及び効能を割り出すために、診療所の看護士によって滴定を行う段階(2mg又は0.2ml〜6mg又は0.6ml)を必要とし、これが、コストと時間をさらに助長する。最後に、Apokynには、患者が、Apokynの初回注射の前に3日間、制吐薬(トリメトベンズアミド/Tigan、200〜300mg、1日3回)を服薬しなければならないうえに、更に6週間、このレジメンを継続することが推奨されるほど深刻な悪心と嘔吐が伴う。Tiganの服用にもかかわらず、有意数の患者が悪心と嘔吐をきたす(臨床試験の報告によれば、31%が悪心を、11%が嘔吐をきたす)。抗ドーパミン作用を有する他の制吐薬は、パーキンソン病の症状を悪化させる場合があるので使用できない。更に、副作用に対抗するための薬剤の必要性が、更なる薬物間相互作用を助長する。パーキンソン病患者は一般に、既に有意な程度の「多剤投与」を受けている。
【0016】
経口用及び注射用形態のアポモルフィンに伴う深刻な悪心と嘔吐は、脳幹に隣接する第4脳室の床にある最後野の「化学受容体ゾーン」にアポモルフィンが直接作用を及ぼすことによる可能性が高い。臨床試験で広く報告されている他の有害事象、すなわち、めまい感、あくび、傾眠、鼻漏、発汗、潮紅、蒼白、幻覚、水腫、及び胸痛も、自律神経系を含む他の脳幹構造体が、脳血中のアポモルフィンによって刺激されたことを示している。
【0017】
したがって、アポモルフィンには、パーキンソン病患者の寿命を延ばす効果と潜在性があるにもかかわらず、上記の理由で、注射剤のアポモルフィンの使用は限られている。経口形態は、耐性が更に劣っており、必要用量が高いので、その利用は追求されていない。腹腔内注射及び静脈内注射は実用的でない。
【0018】
塩酸アポモルフィンは、脂肪親和性であり、かつ摂氏80度で水に溶ける非エルゴリンドーパミンアゴニストである。インビトロ試験によって、塩酸アポモルフィンがD4ドーパミン受容体に対して高い親和性を有すると共に、D2、D3、及びD5受容体に対しては親和性が中程度であることが示されている。塩酸アポモルフィンは、いくつかのαアドレナリン受容体に対しても中程度の親和性を有する。ドーパミンD1受容体とセロトニン受容体に対する親和性は低い。アポモルフィンの活性の正確なメカニズムは不明であるが、線条体、すなわち尾状核及び被殻内のシナプス後ドーパミンD2受容体の刺激を通じて機能すると考えられている。
【0019】
経口用及び注射用形態のアポモルフィンに伴う深刻な悪心と嘔吐は、脳幹に隣接する第4脳室の床にある最後野の「化学受容体ゾーン」にアポモルフィンが直接作用を及ぼすことによる可能性が高い。臨床試験で広く報告されている他の有害事象、すなわち、めまい感、あくび、傾眠、鼻漏、発汗、潮紅、蒼白、幻覚、水腫、及び胸痛も、自律神経系を含む他の脳幹構造体が、脳血中のアポモルフィンによって刺激されたことを示している。
【0020】
アポモルフィンには、パーキンソン病患者の寿命を延ばす効果と潜在性があるにもかかわらず、上記の理由で、注射剤のアポモルフィンの使用は限られている。経口形態は、耐性が更に劣っており、必要用量が高いので、その利用は追求されていない。腹腔内注射及び静脈内注射は実用的でないが、その利用は追求されてきている。欧州では、持続注入ポンプ(インスリン用など)によるアポモルフィンの腹腔内注射が用いられている。
【発明の概要】
【0021】
本発明の目的は、局所的脳幹求心路遮断療法によって治療できる疾患又は状態の治療に有用な化合物の局部投与による局所的脳幹求心路遮断療法を用いて、ヒトを治療する方法を提供することである。
【0022】
本発明の目的は、神経興奮性亢進及び神経化学的機能不全症候群を治療する方法を提供することであり、神経興奮性亢進及び神経化学的機能障害症候群としては、頭痛、不安反応、パニック発作、てんかん発作、非てんかん(心因)発作、急性の頭痛及び顔面痛症候群(三叉神経痛、非定型顔面痛、後頭神経痛、TMJ関連痛、のぼせ、月経関連不快気分、多発性硬化症、及びパーキンソン病など)、並びに、類似又は関連する症候群が挙げられるが、これらに限らない。
【0023】
本発明の目的は、パーキンソン病及び/又はその関連症候群/疾患の治療に有用なドーパミンアゴニスト(1種又は複数種)の局所用製剤を提供することである。
【0024】
本発明の更なる目的は、1種以上のドーパミンアゴニストの局所投与によって、パーキンソン病及びその関連症候群/疾患を治療する方法を提供することである。
【0025】
本発明の更なる目的は、パーキンソン病及び/又はその関連症候群/疾患の治療に有用なドーパミンアゴニスト(1種又は複数種)の局所用製剤を提供することである。
【0026】
本発明の更なる目的は、1種以上のドーパミンアゴニストの局所投与によって、男性の勃起障害を伴う不能症を治療する方法を提供することである。
【0027】
本発明の更なる目的は、局所的脳幹求心性刺激療法によって治療できる疾患又は状態の治療に有用な化合物の局部投与による局所的な脳幹求心性刺激療法によって、パーキンソン病及び/又はその関連症候群/疾患を罹患した人の神経興奮性亢進及び神経化学的機能不全症候群を治療する方法を提供することである。
【0028】
本発明の更なる目的は、局所的脳幹求心性刺激療法によって治療できる疾患又は状態の治療に有用な化合物の局部投与による局所的脳幹求心性刺激療法によって、男性の不能症/勃起障害、及び/又はその関連症候群/疾患を治療する方法を提供することである。
【0029】
上記の目的などは、本発明に基づけば達成される。本発明の一部は、後頸部の毛髪の生え際(BONATH)に薬物を投与することによる経皮的な局部的神経作用(TRNA)療法又は局部的神経作用(RNA)療法によって、ヒトの病状又は状態を治療する方法に関する。上記の薬物は、例えば、抗てんかん薬、抗不安薬、精神遮断薬、抗精神病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗パーキンソン病/パーキンソン症候群薬、性機能障害薬、ジストニー治療薬、けいれん状態治療薬、良性本態性振せん/家族性振せん治療薬、MS関連振せん治療薬、慢性脳症治療薬、先天性CNS変性状態/脳性麻痺治療薬、小脳変性症候群治療薬、神経障害性及び/又は神経原性疼痛治療薬、禁煙薬、食欲抑制薬、神経変性状態用の薬物、多発性硬化症治療薬、不眠症治療薬、疲労治療薬、めまい、悪心、及び/又はめまい感治療薬、書痙及び不穏下肢症候群治療薬、ADD/ADHD治療薬、並びに、脳幹上方の皮膚区域に近接し、かつその皮膚区域の下又は上の後頸部の毛髪の生え際に有益な形で投与して、患者に局部的神経作用療法を施すことができる他の薬物から選択する。
【0030】
本発明はまた、脳幹上方の皮膚区域に近接し、かつその皮膚区域の下又は上の後頸部の毛髪の生え際に投与して、その患者に局部的神経作用療法を施すのに適した調合で、抗てんかん薬、抗不安薬、精神遮断薬、抗精神病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗パーキンソン病/パーキンソン症候群薬、性機能障害薬、ジストニー治療薬、けいれん状態治療薬、良性本態性振せん/家族性振せん治療薬、MS関連振せん治療薬、慢性脳症治療薬、先天性CNS変性状態/脳性麻痺治療薬、小脳変性症候群治療薬、神経障害性及び/又は神経原性疼痛治療薬、禁煙薬、食欲抑制薬、神経変性状態用の薬物、多発性硬化症治療薬、不眠症治療薬、疲労治療薬、めまい、悪心、及び/又はめまい感治療薬、書痙及び不穏下肢症候群治療薬、ADD/ADHD治療薬、並びに、上記のうちのいずれかの組み合わせから選択した薬物を含む局所用製剤に関する。この局所用製剤は、即時放出性、制御放出性、又は徐放性の製剤として調製してもよい。
【0031】
本発明で有用な薬物製剤は、局所用製剤(例えばクリーム、軟膏、又はゲル)、経皮デバイス、又は、埋め込み型若しくは注射用製剤から選択した形態であってよい。
【0032】
本発明は更に、ヒトの患者に局部的神経作用療法を施すための医薬の調製の際に、抗てんかん薬、抗不安薬、精神遮断薬、抗精神病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗パーキンソン病/パーキンソン症候群薬、性機能障害薬、ジストニー治療薬、けいれん状態治療薬、良性本態性振せん/家族性振せん治療薬、MS関連振せん治療薬、慢性脳症治療薬、先天性CNS変性状態/脳性麻痺治療薬、小脳変性症候群治療薬、神経障害性及び/又は神経原性疼痛治療薬、禁煙薬、食欲抑制薬、神経変性状態用の薬物、多発性硬化症治療薬、不眠症治療薬、疲労治療薬、めまい、悪心、及び/又はめまい感治療薬、書痙及び不穏下肢症候群治療薬、ADD/ADHD治療薬からなる群から選択した薬物を使用することであって、脳幹上方の皮膚区域に近接し、かつその皮膚区域の下又は上の後頸部の毛髪の生え際に、その薬物を投与して、上記の患者に局部的神経作用療法を施す使用に関する。
【0033】
特定の実施形態では、上記の薬物は、脳幹求心性刺激療法を施す目的で、ヒトの後頸部に塗布する。局所用製剤又は経皮吸収型製剤を後頸部に、好ましくは脳幹上方の皮膚区域に近接させるか、又はその皮膚区域の上に塗布するのが最も好ましい。
【0034】
別の実施形態では、上記の薬物は、後頸部の毛髪の生え際(BONATH)に埋め込むか又は注射することによって投与する。このような実施形態では、上記の療法は、表皮の下の自由神経終末での薬物(1種又は複数種)のアベイラビリティによって実現される。このような実施形態では、薬物を埋入デバイスに組み込んでも、当該部位でドーパミンアゴニストの持続放出/効力をもたらすゲル又はマトリックスのような担体に組み込んでもよい。この担体は、親水性物質であっても疎水性物質であってもコロイド状物質であってもよく、粘性液から固体ポリマーインサートまでに及ぶ状態であってよい。
【0035】
本発明の特定の実施形態は、局部的神経作用療法を通じて、後頸部の毛髪の生え際(BONATH)に付けるクリーム/ゲル若しくは徐放性パッチとして適用することによって、又は、埋め込み型又は注射用薬物製剤若しくはデバイスによって、BONATHの皮下に投与することによって薬物(1種又は複数種)を送達することを含む治療法に関する。
【0036】
特定の実施形態では、上記の方法は更に、経皮的な局部的神経作用(TRNA)療法を通じて、後頸部の毛髪の生え際(BONATH)に付けるクリーム/ゲル若しくは徐放性パッチとして薬物(1種又は複数種)を適用することによって、現行の注射法の副作用とその他の欠点を生じさせることなく、治療的に有効な処置を提供する。
【0037】
特定の実施形態では、上記の薬物は、ドーパミンアゴニスト、例えばアポモルフィン(Apokyn(登録商標)、APO−go(登録商標))、プラミペキソール(Mirapexin(登録商標))、ロピニロール(Requip(登録商標))、ブロモクリプチン(Parlodel(登録商標))、カベルゴリン(Cabaser(登録商標)、Dostinex(登録商標))、ペルゴリド(Permax(登録商標)、Celance(登録商標))、ロチゴチン(Neupro(登録商標))、上記のうちのいずれかの組み合わせ、又は当業者に知られているその他のドーパミンアゴニストである。
【0038】
別の実施形態では、上記の薬物は、オピオイド、例えばモルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ニコモルフィン、オキシコドン、オキシモルホン、フェンタニル、アルファメチルフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、カルフェンタニル、オーメフェンタニル、テバイン、オリパビン、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ペチジン(メペリジン)及びケトベミドンのようなフェニルピペリジン、アリルプロジン、プロジン、プロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、デキストロモラミド、ベジトラミド、ピリトラミド、メタドン、ジピパノン、酢酸レボメタジル(LAAM)、ロペラミド、ジフェノキシレート、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブプレノルフィン、ジヒドロエトルフィン、エトルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、レフェタミン、メプタジノール、チリジン、トラマドール、タペンタドール、及びこれらの混合物などである。
【0039】
更なる実施形態では、上記の薬物はタペンタドール(μオピオイド受容体アゴニスト作用とノルエピネフリンの再取り込み阻害作用という2つの作用メカニズムを有する中枢作用性経口鎮痛薬)である。
【0040】
あるいは、上記の薬物は、オピオイドアンタゴニスト、例えばナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、又はこれらの混合物である。
【0041】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、例えばアトモキセチン(Strattera(登録商標))、マジンドール(Mazanor(登録商標)、Sanorex(登録商標))、ニソキセチン(LY−94939)、レボキセチン(Edronax(登録商標)、Vestra(登録商標))、ビロキサジン(Vivalan(登録商標))、及びこれらの混合物などである。
【0042】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、ベンゾジアゼピン、例えばロラゼパム(Ativan(登録商標))、ジアゼパム(Valium(登録商標))、クロナゼパム(Klonopin(登録商標))、クロルジアゼポキシド(Librium(登録商標))、アルプラゾラム(Xanax(登録商標))、及びこれらの混合物などである。別の実施形態では、上記の薬物は、精神遮断薬又は向精神薬、例えばクロルプロマジン(Thorazine(登録商標))、ハロペリドール(Haldol(登録商標))、リスペリドン(Risperdal(登録商標))、オランザピン(Zyprexa(登録商標))、及びクエチアピン(Seroque(登録商標))である。
【0043】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、ノルエピネフリン−ドーパミン再取り込み阻害薬(NDRI)、例えばアミネプチン(Survector(登録商標))、ブプロピオン(Wellbutrin(登録商標)、Zyban(登録商標))、デキスメチルフェニデート(Focalin(登録商標))、メチルフェニデート(Ritalin(登録商標)、Concerta(登録商標))ノミフェンシン(Merital(登録商標))、及びこれらの混合物などである。
【0044】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)、例えばデスベンラファキシン(Pristiq(登録商標))、デュロキセチン(Cymbalta(登録商標))、ミルナシプラン(Ixel(登録商標)、Savella(登録商標))、ベンラファキシン(Effexor(登録商標))、及びこれらの混合物などである。
【0045】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、三環系抗うつ薬(TCA)、例えばアミトリプチリン(Elavil(登録商標))、ブトリプチリン(Evadene(登録商標)、Evadyne(登録商標))、クロミプラミン(Anafranil(登録商標))、デシプラミン(Norpramin(登録商標)、Pertofrane(登録商標))、ドスレピン(Prothiade(登録商標))、ドキセピン(Adapin(登録商標)、Sinequan(登録商標))、イミプラミン(Tofranil(登録商標))、ロフェプラミン(Feprapax(登録商標)、Gamanil(登録商標)、Lomont(登録商標))、ノルトリプチリン(Aventyl(登録商標)、Nortrilen(登録商標)、Pamelor(登録商標))、プロトリプチリン(Vivactil(登録商標))、トリミプラミン(Surmontil(登録商標))、及びこれらの混合物などである。
【0046】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、四環系抗うつ薬、例えばアモキサピン(Asendin(登録商標))、マプロチリン(Ludiomil(登録商標))、ミアンセリン(Tolvon(登録商標))、及びこれらの混合物などである。
【0047】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、非定型抗精神病薬、例えばジプラシドン(Geodon(登録商標)、Zeldox(登録商標))、ネファゾドン(Serzone(登録商標))などである。
【0048】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、抗てんかん薬、例えばバルプロ酸(Depacon(登録商標)/Depakote(登録商標))、レベチラセタム(Keppra(登録商標))、ラモトリジン(Lamictal(登録商標))、トピラメート(Topamax(登録商標))、プレガバリン(Lyrica(登録商標))、ガバペンチン(Neurontin(登録商標))、カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))、オクスカルバゼピン(Trileptal(登録商標))、フェノバルビタール及びその他のバルビツレート、チアガビン(Gabatril(登録商標))、Retigabine(商標)(バレアント・ファーマシューティカルズ)である。Lacosamide(商標)(シュワルツ・バイオサイエンシズ)及びPerampanel(商標)(エーザイ)は、抗てんかん薬、及びその他の関連する神経学的な疼痛及び精神医学的状態向けの神経修飾物質として開発中のものであり、したがって、これらは、本発明における潜在的に有用な薬物の更なる例である。
【0049】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、鎮痛薬/抗炎症薬、例えば、アセトアミノフェン、プレドニゾン、ソルメドロール、及びその他のステロイド、ナプロキセン、アスピリン、ボルタレン、ケトプロフェン、イブプロフェン、及びその他のNSAIDである。
【0050】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、食欲抑制薬、例えばシブトラミン(Meridia(登録商標)、Reductil(登録商標))であり、これは、構造的にアンフェタミンに関連しているが、異なる作用メカニズムを有する中枢作用性セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬である。抗肥満薬として潜在的に有用な他の薬物としては、リモナバント(Acomplia(登録商標))が挙げられ、アンフェタミンに関連している物質、例えばフェンテルミン及び/又はフェンフルラミン及び/又はデクスフェンフルラミン(これらの組み合わせは広くはフェンフェンと呼ばれている)も、本発明の治療法において有用である場合がある。本発明の治療法は、経口投与すると、上記の薬物を組み合わせた際に見られる心臓弁障害の可能性を回避すると考えられる。
【0051】
本発明の目的上、「局所用製剤」としては例えば、所定の速度で、定められた期間にわたり、定められた塗布部位に1種以上の薬物(例えばドーパミンアゴニスト)を放出する軟膏剤、クリーム、ローション剤、ペースト、ゲルなどが挙げられる。
【0052】
本発明の目的上、「注射用」製剤としては例えば、注射用の液剤、懸濁剤、ゲルなどが挙げられ、注射用製剤は、即時放出形態であっても、薬物を投与部位に制御放出又は徐放させるものであってもよい。
【0053】
本発明の目的上、「埋め込み型」製剤としては例えば、注射及び/又は外科的な埋め込みのいずれかによって投与部位(例えばBONATH)に投与できる固体、半固体、又は液体の薬物製剤が挙げられる。この固体製剤は、マイクロスフィア、マイクロカプセル、ペレット、ディスクなどを含んでもよい。本発明の埋め込み型製剤は、薬物を投与部位に制御放出又は徐放させるものであってもよい。
【0054】
本発明の目的上、「経皮吸収型製剤」は、所定の速度で、定められた期間にわたり、定められた貼付部位に1種以上の薬物を放出する薬物含有デバイス(例えばパッチ、ディスクなどを含む)として定義する。
【0055】
本発明の目的上、「経皮」送達は、皮膚を通じて血流の中まで薬物を通すことによる送達(「従来の」経皮送達)であり、「経皮全身薬物送達(TSD療法)」と称されている。
【0056】
本発明の目的上、「局所経皮療法」という用語は、より厳密な名称である局所局部的神経作用療法(別称「TRNA療法」)と同義である。この用語は、この送達法の重要な側面、すなわち、局所局部的(脳幹及び頸髄の近く)であり、求心性神経系の自由神経終末に作用する側面を表している。
【0057】
本発明の目的上、「治療有効」量又は「有効」量とは、毒性はないが、所望の治療効果、例えば、片頭痛の発症を回避する効果、又は、片頭痛及び/若しくは群発性頭痛の緩和を増大させる効果をもたらすのに十分な化合物量であることを意味する。本発明のケースでは例えば、治療有効量又は有効量は、片頭痛又は群発性頭痛の症状を軽減するのに有効である、セロトニンアゴニストの用量である。本明細書で使用する場合、透過促進剤の「有効」量とは例えば、皮膚透過性を所望どおりに向上させ、それに応じて、所望の浸透深さ、投与速度、及び送達薬物量をもたらす量を意味する。
【0058】
本発明の目的上、「送達」という用語は、局所用製剤又は経皮吸収型製剤との関連で用いる場合、その製剤から薬物が出て患者の皮膚を貫通する平均相対放出速度又はフラックスをその製剤がもたらすことを意味する。
【0059】
「所定の皮膚面積」とは、無傷の生きている皮膚のうちの所定の面積を意図している。本発明の特定の実施形態では、上記の所定の面積は、約1cm〜約100cmの範囲、好ましくは約10cm〜約100cmの範囲、より好ましくは約20cm〜約60cmの範囲となる。ただし、局所送達分野の精通者であれば、薬物を投与する皮膚面積は、調合、用量、製剤の用途などに応じて有意に変化する場合のあることが分かるであろう。
【0060】
本発明の目的における「浸透促進」又は「透過促進」は、薬理活性剤に対する皮膚の透過性の向上、すなわち、薬物が皮膚を透過して血流に入る速度が向上するようにすることに関する。透過促進剤を使用することによって実現された透過の促進は、拡散細胞装置を用いて、薬物が動物又はヒトの皮膚を通って拡散する速度を測定することによって観察することができる。
【0061】
本発明の目的上、「脳幹求心性刺激療法領域」は、頭部及び/又は前頭側頭骨領域及び/又は上後頸区域の皮膚領域として定義する。特定の好ましい実施形態では、処置区域は、脳幹と近接している後頸区域である。この区域は、患者の頭部及び/又は頸部の比較的毛髪の少ない区域であるのが好ましい。
【0062】
本発明の目的上、上記の薬物は、塩基の形態であっても、製薬学的に許容可能な塩(無機若しくは有機)又は複合体として供給してもよい。上記の薬物は、光学的に純粋な形態、又は立体異性体の混合物であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0063】
脳幹関連障害向けにCNS薬を送達する際の「TRNA」又は「RNA」、「BONATH」療法の利点の重要な側面は、CNSの解剖学的構造にある。神経化学物質のドーパミン、セロトニン、ノルエピネフリンなどの受容体を有する自由神経終末は、皮膚表面のすぐ下に位置しており、適切な皮膚透過促進剤の中に配合した薬物であって、皮膚に局所適用した薬物が到達しやすい。
【0064】
脳幹自律神経系の重要な構成要素は、個人を危険から守る役割を担う「闘争・逃走」(交感神経)反応である。この反応は、時間をかけて考えなくても「自動的に」作用するようにプログラムされており、その結果、感知した危険から逃れるか、又はその危険と戦う/対峙する状態を表す生理的及び情動的発現が生じる。大半の状況では、逃走反応と闘争反応が混じり合うので、逃走状態と闘争状態との相違は、はっきりと線引きされない場合が多い。
【0065】
ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)とセロトニンは、交感自律神経系の「闘争・逃走」反応に関わる主な神経伝達物質とみなされている。ドーパミンとアセチルコリン(主として副交感神経系に作用する)も役割を果たす。これらの神経伝達物質の産生を担うニューロン核の集合体は、脳幹に存在する。青斑核は、ノルエピネフリンを産生するニューロンを含み、背側縫線核はセロトニンの産生を担い、黒質はドーパミンの産生を担う。アセチルコリンは、更に広範な形で産生される。
【0066】
気分障害が神経伝達物質の異常調節、すなわち「脳内化学物質のアンバランス」に関連していることは今では広く受け入れられている。薬物療法は、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、並びに、セロトニン及びノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)を用いることによって、脳内の「神経化学物質のバランスを回復させること」を目的としている。これらの薬物は有効であるが、有意な有用性が現れるまで数週間〜数カ月かかる。更に、これらの臨床効果が最も顕著なのは、うつと不安に関連する慢性症状に対してである。上記の薬物は、一般に上記の慢性症状に付随して起こる不安反応とパニック発作の一時的な急性症状に対しては、効果がないか、又は所望の効果を下回る効果しか発揮しない。このため、破綻(break−through)エピソードに対する急性期治療は、症状の重症度に応じて経口又は注射用抗不安薬の形態となっている。広く用いられている薬物は、ベンゾジアゼピン、すなわちロラゼパム(Ativan)、ジアゼパム(Valium)、クロナゼパム(Klonopin)、クロルジアゼポキシド(Librium)、及びアルプラゾラム(Xanax)である。特に重度な症状に対しては、精神遮断薬と向精神薬、すなわちクロルプロマジン(Thorazine)、ハロペリドール(Haldol)、リスペリドン(Risperdal)、オランザピン(Zyprexa)、及びクエチアピン(Seroquel)も用いてよい。
【0067】
経口及び注射用の抗不安薬及び精神遮断薬/向精神薬は、最終的に脳に効果を及ぼすには、全身の血液(すなわち血中濃度)に依存しなければならない。これには、望ましくない全身性副作用、特に、投与後の急性的な疲労及び嗜眠が伴う。慢性使用により、心理的依存、遅発性ジスキネジア、振せん麻痺、肥満、及びインスリン抵抗性が生じる場合がある。経口調製物では、有意な臨床効果が現れるまで遅延(30分〜数時間)が見られる。状況によっては、この程度の遅延は、重度の臨床的代償不全に至る場合があるので、許容できない。1つの例は、精神的破綻に至る素因のある人が起こすパニック発作、又は非てんかん/心因発作である。このような罹患者に関する臨床結果は有意である。また、救急外来又は入院の追加的な金銭的支出もある。
【0068】
不安、悲嘆、及び発揚状態の症状を伴う情緒変動は、ヒトの経験の一部である。これらの正常な生活情動は、それらが深刻かつ持続的になり、機能的能力の妨げとなると問題になる。この時点で、医学的介入の必要性を検討する必要がある。医学的療法を必要とする状態に至っているか否かは、複数の要因によって決まる。1つは、その人の生得的な性質、すなわち、人生の課題に対応するために、どのように「事前プログラムされている」かということである。このうちのいくつかは、家系、生い立ち、出生前及び出生後の発育(子宮内傷害及び分娩時外傷)、並びに、その人の基本的な感情的及び哲学的見解である。外部要因は、その人に影響を及ぼすストレッサー、すなわち、人間関係的なもの、身体的なもの(疾病及び身体障害)、金銭的なもの、仕事関連のものなどからなる。この点では、重要なのはストレスの程度のみではなく、それに関連する時間の長さも重要である。生活上の特定の出来事、すなわち、愛する人の死、離婚、失職は一般に、どの人にとってもストレスを感じるものである。ただし、これらの出来事が特異的にその人に衝撃を与えるか否かは、その人の対処メカニズムと、その人にとってのその出来事の特異性によって決まる。
【0069】
心理学者は、情緒的に有意な生活上のストレス事象に関する「生活危機単位」という尺度(LCU)を考案している。この尺度は0〜100にわたり、数値が大きいほど、事象の情緒的有意度が大きい。比較的短期間(3〜4カ月)で250〜300ポイントを積み上げたら、その人は、神経衰弱及び/又は有意な身体的疾病のリスクにさらされていると判断される。したがって、生得的な性質によるリスクを持つ人は、外部的なストレス事象が生活で起きると、特に代償不全を起こす傾向がある。このような人は、パニック発作と情緒的衰弱を頻繁に起こす人である。彼らの生活は有意に崩壊し、情緒障害の状態になる場合もある。
【0070】
上記のような人には、医療施設が適切な早期治療を迅速に認識する必要がある。彼らは、治療しないと、持続性の神経興奮性亢進/機能不全から広汎性機能不全の現象を起こす傾向がある。これによって、ひいては、神経回路の再プログラミングに至り、永久的な心理的変化と行動上の変化を伴うこともある。このイベント連鎖は、てんかん状態で生じる「キンドリング」のプロセス、すなわち、未処置であるか又は処置が不十分である発作病巣が、脳の他の区域に広がり、療法に対する耐性が向上するプロセスと似ている。神経興奮性亢進の新たな病巣は、元々の病巣に隣接しているか、又は「鏡像性病巣」として脳梁を横断する場合がある。
【0071】
片頭痛でも類似の現象、すなわち、トリガーに対する末梢感受性と皮質感受性と共に、脳幹におけるニューロン興奮性亢進を起こす傾向が高い状態が生じる。治療が遅れるか、又は治療が不十分であると、症状が重症化及び持続化する可能性が高まる。この点では、片頭痛持ちの若年者も、早期に確認と治療を行って、重度の慢性片頭痛による生涯にわたる障害を軽減する必要がある。
【0072】
ストレスとして解釈される、交感神経系の「闘争・逃走」反応は、最も本質的には、恐怖、すなわち、生活上の有意なストレス事象に関連する不確実性に対する恐怖に基づく反応である。感じた恐怖は現実となったり、認知されたりする場合があるが、その効果は同じである。すなわち、その人の制御感覚及び安定感覚が脅かされるのに応じて、危険が認識される。興味深いことに、LCUの尺度では、ストレス事象が情緒的に有意であるほど、ストレス反応が起こる可能性が高くなることが示されている。「プラスの」ストレス(責任の増大を伴う昇進)でさえも、解雇されるというマイナス事象と同様のマイナスの効果がある場合もある。この点で、「ストレス」とは、その人の現状を有意に変えると共に、その人の安心感と安定感に身体的、情緒的、又は人間関係的に疑問を投げかけるいずれかの変化と定義することもできる。
【0073】
交感神経系は、その人を保護する働きをするので、心理的反応に加えて、疼痛知覚とも密接に関わっていることは容易に分かる。実際、これらの2つの系は連動しており、感知した痛みが重度であるほど、情緒的損害とうつ病発症の可能性が高くなり、感知した痛みが重度でないほど、情緒的損害とうつ病発症の可能性が低くなり、うつ状態の人の方が、そうでない人よりも痛みを強く感知する。また、「情緒的な」痛み(悲痛)は脳幹機能を乱し、心臓発作又は腕の骨折に伴うような身体的痛みよりも有意な作用をその人にもたらすことも認められている。恐怖、裏切り、及び自己放棄の感情は、前者に属することができる。神経伝達物質のノルエピネフリンとセロトニンはいずれも、ヒトの心理的反応及び疼痛反応において重要な役割を果たすと認識されている。これらの2つの脳内化学物質のレベルを調節、増大、及び均衡化する薬物は、気分及び疼痛症候群用として認可されている。
【0074】
SNRIのデュロキセチン(Cymbalta(登録商標))及びベンラファキシン(Effexor(登録商標))、並びに、これらよりも前からある三環系抗うつ薬、例えばアミトリプチリン(Elavil(登録商標))は、気分機能不全が伴うか否かにかかわらず、うつ及び神経病性疼痛に有益であることが示されている。
【0075】
神経化学物質のアンバランス及び機能不全症候群を間接的に治療する「神経調節物質」というカテゴリーの薬物も最近登場した。ガバペンチン(Neurontin(登録商標))とプレガバリン(Lyrica(登録商標))は、セロトニンノルとエピネフリンの各受容体におけるセロトニンとノルエピネフリンの放出に影響を及ぼす特異的カルシウムチャネル調節因子である。これらは、限局性発作、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性末梢性ニューロパシー、線維筋痛症、不安、及び薬物離脱症候群など、多様かつ一見異なるように思われる状態の治療に適用される。これらの状態の共通点は、神経損傷の構成要素のいくつかが生じ、その結果、持続性の神経興奮性亢進及び神経機能不全が起こる点である。その結果、これらの神経集団の活性が異常に高まると、神経化学物質のアンバランスが生じる。上記の神経調節薬は、上記のような活性を抑えて、神経伝達物質の均衡を取り戻す働きをする。その結果、特異的な症状が軽減又は消散されるのは、影響を受ける神経集団の特異的な位置と機能によって左右される。
【0076】
また、多くの抗てんかん薬は、有意な気分変動及びむらが現れる心理的状態に有益であることが分かっている。双極性情動障害(躁うつ病性障害)がこのような障害であり、これらの状態に関連する神経興奮性亢進が存在する可能性があることを暗に示している。したがって、患者が経験する症状を決定するのは、特異的な神経集団とそれらの結合である。発作薬のバルプロ酸(Depakote(登録商標))とラモトリジン(Lamictal(登録商標))はいずれも、てんかんの治療に初期適応されるのに加えて、双極性情動障害の治療に適応される。抗てんかん薬は、抗うつ薬と抗不安薬と共に、「非てんかん」/心因性発作、有意な心理的障害を有する不随意性転換反応障害の治療に用いられる。また、抗てんかん薬のDepakoteとTopamaxは、片頭痛を予防するためのものとしてもFDAに認可されており、片頭痛と、安定化を必要とする過興奮性神経集団との関連性が示唆されている。
【0077】
パーキンソン病(PD)向けとして米国で認可された医学的療法は、経口及び皮下(sub−Q)注射に限られている。通常の錠剤、又は口腔内溶解形態(ODT)を用いて、カルビドパ(Sinemet(登録商標))又はCOMT阻害薬(Comtan(登録商標))と併せてレボドパを中枢神経系(CNS)に送達する。ドーパミンアゴニスト、MAO阻害薬、COMT阻害薬、及びその他の薬剤も経口経路を使用する。sub−Q注射剤としてのアポモルフィン(Apokyn(登録商標))は、PDと関連する低運動性/オフ期間のエピソードの急性期治療用として認可されている。欧州では、アポモルフィンは、腹腔内ポンプによっても投与する。最終的な治療効果が血流、すなわち、初期には体循環、続いて大脳血に依存して、CNSの標的部位に到達するという点で、現状の治療法はいずれも「全身」治療とみなされている。これは、経皮的ドーパミンアゴニスト(ロチゴチン)パッチのNeupro(登録商標)にも当てはまり、このパッチは、皮膚に貼付するもので、最終的にCNSに送達されるようにするには、sub−Q血管中に吸収される必要がある。Neuproは、パッチマトリックス内での結晶化に関する技術的問題が生じた後、米国市場からは撤退したが、欧州では現在も市販されている。米国では再導入するための研究が続けられている。
【0078】
全身及び大脳の血液中に有効薬物が広く存在することが、PD薬に付随する副作用の主な原因である可能性が高い。ドーパミン受容体の刺激及び他の神経化学的効果が、標的領域以外の領域で起こると、不要な薬物効果が現れる。更に、治療効果をもたらすのに血流に依存しているので、心血管系及び脳血管系における特異体質を考慮する必要がある。心疾患及びアテローム性動脈硬化症は、いずれも老年のPD患者によく見られるが、これらは、全身薬の送達に有意な影響を及ぼし得る。PD薬の経口送達では、胃腸(GI)通過、吸収、及び肝代謝に影響するGI疾患が懸案事項である。
【0079】
また、PD薬の全身送達では、「上流の」神経解剖学的構造体よりも先に、「下流の」神経解剖学的構造体に有効薬物が送達されるので、「非生理的作用」が懸案事項となる。ドーパミン作動系内では、神経化学物質の流れと作用の正常な生理的連鎖は、黒質−線条体経路を上ることによって、脳幹(黒質)から線条体(尾状核及び被殻)までに及ぶ。すなわち、これと同じ神経生理学的連鎖にPD薬の作用が従えば、治療効果が最も高く認められることが予想される。これは特に、ドーパミン前駆体及びドーパミンアゴニストに当てはめることができる。「受容体過剰症」の長期的なドーパミン療法の作用は、運動合併症及び「オン・オフ現象」として現れるが、これらの作用は、持続的かつ変動する非生理的な「下流」のドーパミン受容体の刺激によるものである場合がある。
【0080】
上記の状態に対するものとして現在認可されている療法はいずれも、体循環を通じて中枢神経系に到達する。脳幹構造体への脳血流は、椎骨動脈、脳底動脈、及びそれらの枝を介して、後方循環を通る。脳に対するこの薬物送達形態に付随する望ましくない副作用を考慮して、本発明の一部は、脳幹を標的とする局部的送達に関する。
【0081】
「末梢性求心路遮断」の概念(脳幹に当てはまる)と、後頸部に薬物を局所送達する方法を理解するには、その領域の神経解剖学と神経生理学を見直すことが必要となる。上述のとおり、神経系のこの区域は非常に複雑かつコンパクトで、相互作用性と相関性が高い。
【0082】
三叉神経系は、顔、頭、及び後頸部からの痛みの入力を調整する、脳幹の構成要素である。したがって、三叉神経系は、三叉神経複合体内の機能不全に起因する症候群に付随する他の症状の発生に密接な影響を及ぼす。これらの症状としては、光恐怖症、音恐怖症、悪心、不安、異痛症、及び、片頭痛発作を伴う場合のあるその他の局所性感覚症状が挙げられる。同様に、三叉神経痛(疼痛性チック)のエピソードは、有意な情動的(感情的)及び本能的要素に伴って起きる場合が多い。脳幹の他の構造体と近接及び結合しているので、体温調節、口渇、警戒心、及び気分の異常がよく見られる。これらの症状のうちのいくつかは、頭痛及び顔面痛と同様に生活に異常をきたす場合がある。
【0083】
三叉神経系は、顔、鼻腔、副鼻腔、歯、頭皮、前頭蓋窩及び中頭蓋窩の硬膜から痛みの入力と感覚(求心性)入力を受信するのに加えて、後頸部の軟組織から同様の入力を受信する。後頸部の自由神経終末は、皮膚表面のすぐ下にあり、適切な皮膚透過促進配合剤の中に調合した薬物であって、局所送達した薬剤が到達しやすい。この自由神経終末は、小さい無髄及び有髄の「C線維」(痛覚線維)を介して、痛みのインパルスを求心性の感覚神経を通じて三叉神経尾側核(TNC)に運ぶ。TNCは、橋から脳幹の全体を通って上頸部脊髄まで伸びている痛みの処理センターである。視床でシナプスを形成した後、TNCから出た痛みのインパルスは、痛みを感知する体性感覚皮質に至る。
【0084】
三叉神経系は、重要な求心性入力を脳に供給しながら、体の他の部分から求心性入力を受信することもする。求心性入力は、体から脳に戻ってくるあらゆる神経インパルスとして定義されている。したがって、求心性入力は、処理と解釈、すなわち、痛み、感覚、自律機能を担う脳に情報を提供する。一方、遠心性出力は、中枢神経系(脳、脳幹、及び脊髄)で発生して、運動、反応、及び行為という機能を担う体まで流れるインパルスからなる。
【0085】
迷走神経は、遠心性線維と求心性線維の両方を含み、8〜10個の小根を介して脳幹下部(延髄)につながっている。その求心性線維は、迷走神経の頸静脈神経節と下神経節に起始する。迷走神経の体性求心性線維は、三叉神経脊髄路の核(TNC)で終結する。迷走神経の頸静脈神経節と下神経節のいずれも、交通枝を通じて上頸交感神経節と連結している。上頸交感神経節は、第2、第3、及び第4頚椎の横突起の腹側面の内頸動脈と頸静脈との間に位置する。上頸交感神経節は、最も大きい交感神経幹神経節である。
【0086】
上記の神経節に起因する交感神経根は、第1頚神経と第2頚神経、また、多くの場合には第3頚神経と、ときには第4頚神経とをつなぎ合わせる。頭部の交感神経支配は、上頸交感神経節から吻状に伸びている神経線維に加えて、総頸動脈神経叢と椎骨動脈神経叢をつなぎ合わせる線維を含む。椎骨動脈神経叢は脳底動脈神経叢とつながっている。内頸動脈神経叢に由来する枝は、三叉神経と海綿叢に加えて、外転神経及び深錐体神経のような他の構造体をつなぎ合わせる。中頭蓋窩に位置する海綿叢から、交感神経線維は、動眼神経、滑車神経、及び眼神経をつなぎ合わせる。上記の神経叢からの線維は、下垂体に入る血管も伴っている。翼口蓋窩に位置する翼口蓋神経節は、外鼻孔、口、咽頭、及びいくつかの眼窩構造体の粘膜に分布する枝と共に、顔からの交感神経線維を受容する。
【0087】
上記から、片頭痛並びにその他の頭痛及び顔面痛症候群と関連する、迷走神経求心路と、顔、頭、及び頭蓋窩の硬膜からの求心路と、頸神経機能が密接に関係していることは明らかである。
【0088】
頸部迷走神経の刺激(VNS)が、てんかん病巣からの異常放電をダウンレギュレーションして、発作を治療することは、長期にわたり報告されてきている。今では、VNSは、特定の形態の難治性てんかんにおける内科療法を補助するものとして認められている。VNSは、従来の薬物療法に対する耐性がある重度のうつにも有益である。片頭痛、不安、及び線維筋痛症にVNSを用いる研究が行われており、有益であることの予備的な展望が示されている。
【0089】
その作用メカニズムは、脳幹に対する抑制性入力の増大と、求心性系の刺激を通じた付随連結によって、異常興奮性の機能不全ニューロン系をダウンレギュレーションすることと見られる。TNCを通じたフィードバックによる求心性刺激は、脳幹からの遠心性出力の低下を引き起こし、その結果、過活性のニューロン構造体のダウンレギュレーションを通じて、臨床症状が消散する。
【0090】
上記と同じ方法で、VNSの電気刺激は、脳幹に対してその作用を発揮し、脳幹に近接する後頸部への局所薬物療法とその求心性入力は、上記の状態に対する作用をもたらすものと理論化される。したがって、それらの障害に対する有益性が立証されている薬物は、上記の方法で送達した場合、有効性が向上すると共に、副作用が少なくなる。上記の状態向けとして開発されている他の薬物でも同様に、上記のような送達を考慮すべきである。
【0091】
中枢神経系(CNS)活性薬の局所薬物送達の本発明の方法の利点は、治療プロセスに薬物濃度勾配と血流因子が関与していない点にあると仮定されている。対照的に、提案している送達法は、後頸部の毛髪の生え際(BONATH)の皮膚末梢神経と脳幹構造体との間の直接的な神経結合を通じて機能する。適切な「皮膚透過促進」剤中に配合した有効薬物であって、後頸部の皮膚に局所適用した薬物は、皮膚表面のすぐ下に位置する末梢神経の自由神経終末に対して作用を及ぼす。神経伝達に関わるドーパミン、セロトニン、ノルエピネフリン、及びその他の神経伝達物質/神経化学物質の受容体は、上記の自由神経終末上に位置する。したがって、局所適用した薬物は、ほぼ即時的な治療効果を有する。直接的な神経インパルスが関与する(すなわち、局所局部的神経作用(TRNA)療法による脳幹求心性刺激という概念)からである。CNSに薬物を送達する先行の技術と方法はいずれも、血流及び薬物血中レベルの要件があるものである。本発明の方法には、望ましくない全身性及びCNS副作用の原因となる上記のような要件はない。本発明の薬物送達プロセスは、蓄電器の原理に基づいて機能する。その一方で、先行技術は、流体力学とリザーバーの原理に依存する。
【0092】
TRNA療法の成否を決める要因としては、検討している薬物、配合物質(界面活性剤/皮膚透過促進剤)、疾患プロセス、及び適用場所が挙げられる。片頭痛、顔面痛及び頭痛症候群、パーキンソン病、並びに、求心性入力に依存するか又は頸髄及び脳幹によるその他の状態では、本発明で提案している方法が理想的であると考えられる。後頸部の皮膚の自由神経終末は、脳幹構造体と中枢神経系のその他の構成要素と連絡している三叉神経、迷走神経、及び交感神経系に対する結合部が豊富な頸神経の重要な構成要素である。これらは、神経化学物質の放出に関連する疼痛と他の症状が処理及び知覚される区域である。
【0093】
後頸上部の毛髪の生え際の皮膚は、頸神経根C1〜3によって神経支配されており(神経が供給されており)、これらの頸神経根も、脳幹の三叉神経系の一部である。これらの頸神経(導線)は、頸髄及び脳幹内の三叉神経の尾状核(脊髄路核)内に細胞体(発電機)を有する。したがって、頸神経は、脳幹処理区域との直接的な神経結合部を有する。それと同時に、これらの神経の末梢神経受容体部位、すなわち自由神経終末は、後頸部の皮膚表面の下にある。後頸部の軟組織内の神経(頸髄のC1、C2、及びC3を表す)は、脳幹及び自律神経系機能に直接作用する経路と密接に結合しているという点で独特である。頭、顔、鼻腔、脳の硬膜、及び後頸部から痛覚とその他の感覚の入力と解釈をもたらす脳幹の三叉神経系との直接的な結合部が存在する。交感神経節を通じた迷走神経と交感神経系との結合部も存在する。したがって、体内には、ヒトの皮膚表面と相関しているか、又はヒトの皮膚表面とこれほど近接している場所は他にはないので、後頸部(BONATH)の皮膚を通じてCNS作用薬を送達する潜在力が認められるのは、これらの結合部を通じてである。最終的に、皮膚は、発生学的には神経外胚葉に由来し、この神経外胚葉は、脳とCNSのその他の側面の形成も担う。したがって、ヒトの皮膚内の神経は、これらの構造体と特に直接的な関係を有する。これによって、TRN BONATH療法による顕著な効能をもたらす。これと同時に、全身性副作用及びその他のCNS副作用が軽減又は回避される。したがって、この領域の皮膚に局所適用した薬物は、標的部位に到達する血流中に薬物を入れる必要性なしに、脳幹及びその他のCNS構造体に到達しやすい。
【0094】
三叉神経系と直接関係がある上頸神経に加えて、直接的な結合部を通じて頸部交感神経節と迷走神経系にも寄与する。後者の2つの系は、体の他の部分から最も有意な求心性フィードバックのうちのいくつかを脳幹とCNSの他の部分に供給する。これによって、後頸部でのTRNA療法による追加的な脳幹求心性刺激の潜在能力が可能になる。顔及び頭の他の区域の皮膚は、脳幹に対する最終的な神経フィードバックを有するが、求心性フィードバック系への密接な結合部は無い。
【0095】
末梢神経の求心性刺激(又は「求心路遮断」)が脳幹の求心性刺激に当てはまる場合の末梢神経の求心性刺激(又は「求心路遮断」)の概念と、後頸部への局所的薬物送達の機能の仕方を理解するためには、その領域の神経構造と神経生理を見直す必要がある。上記のように、神経系のこの区域は非常に複雑かつコンパクトで、相互作用性と相関性が高い。
【0096】
三叉神経系は、顔、頭、及び後頸部からの痛みの入力を調整する、脳幹の構成要素である。したがって、三叉神経系は、三叉神経複合体内の機能不全に起因する症候群に付随する他の症状の発生に密接な影響を及ぼす。これらの症状としては、光恐怖症、音恐怖症、悪心、不安、異痛症、及び、片頭痛発作を伴う場合のあるその他の局所性感覚症状が挙げられる。同様に、三叉神経痛(疼痛性チック)のエピソードは、有意な情動的(感情的)及び本能的要素に伴って起きる場合が多い。脳幹の他の構造体と近接及び結合しているので、体温調節、口渇、警戒心、及び気分の異常がよく見られる。これらの症状のうちのいくつかは、頭痛及び顔面痛と同様に生活に異常をきたす場合がある。
【0097】
三叉神経系は、顔、鼻腔、副鼻腔、歯、頭皮、前頭蓋窩及び中頭蓋窩の硬膜から痛みの入力と感覚(求心性)入力を受信するのに加えて、後頸部の軟組織から同様の入力を受信する。後頸部の自由神経終末は、皮膚表面のすぐ下にあり、適切な皮膚透過促進配合剤の中に調合した薬物であって、局所送達した薬剤が到達しやすい。この自由神経終末は、小さい無髄及び有髄の「C線維」(痛覚線維)を介して、痛みのインパルスを求心性の感覚神経を通じて三叉神経尾側核(TNC)に運ぶ。TNCは、橋から脳幹の全体を通って上頸部脊髄まで伸びている痛みの処理センターである。視床でシナプスを形成した後、TNCから出た痛みのインパルスは、痛みを感知する体性感覚皮質に至る。
【0098】
三叉神経系は、重要な求心性入力を脳に供給しながら、体の他の部分から求心性入力を受信することもする。求心性入力は、体から脳に戻ってくるあらゆる神経インパルスとして定義されている。したがって、求心性入力は、処理と解釈、すなわち、痛み、感覚、自律機能を担う脳に情報を提供する。一方、遠心性出力は、中枢神経系(脳、脳幹、及び脊髄)で発生して、運動、反応、及び行為という機能を担う体まで流れるインパルスからなる。
【0099】
後頸部の軟組織内の神経(頸髄のC1、C2、及びC3を表す)は、脳幹及び自律神経系機能に直接作用する経路と密接に結合しているという点で独特である。脳幹は、一次神経リレーと体の処理センターに相当する。ヒトでは、脳幹は親指の大きさであり、全身の中で最も高密度で複雑な神経結合ネットワークを含む。脳幹は、全ての神経インパルスを脳から体に中継する機能(遠心性出力)と共に、体からCNSへの神経インパルスを受信して、それらを処理する役割(求心性入力)を果たす。
【0100】
後頸部の皮膚の神経と脳幹の三叉神経系は直接結合しており、頭、顔、鼻腔、及び脳の硬膜からの痛みの入力及び感覚入力と処理を行う。また、交感神経節を通じた迷走神経と交換神経系との求心性結合部も存在する。体内には、後頸部(BONATH)の皮膚ほど、ヒトの皮膚表面と相関しているか、又はヒトの皮膚表面と近接している場所は他にはないので、TRNA療法を通じてCNS活性薬を送達する潜在力が認められるのは、これらの結合部を通じてである。三叉神経系は、脳に重要な求心性入力を供給しながら、体の他の部分からの求心性入力も受信する。
【0101】
迷走神経は、遠心性線維と求心性線維の両方を含み、8〜10個の小根を介して脳幹下部(延髄)につながっている。その求心性線維は、迷走神経の頸静脈神経節と下神経節に起始する。迷走神経の体性求心性線維は、三叉神経脊髄路の核(TNC)で終結する。迷走神経の頸静脈神経節と下神経節のいずれも、交通枝を通じて上頸交感神経節と連結している。上頸交感神経節は、第2、第3、及び第4頚椎の横突起の腹側面の内頸動脈と頸静脈との間に位置する。上頸交感神経節は、最も大きい交感神経幹神経節である。
【0102】
上記の神経節に起因する交感神経根は、第1頚神経と第2頚神経、また、多くの場合には第3頚神経と、ときには第4頚神経とをつなぎ合わせる。頭部の交感神経支配は、上頸交感神経節から吻状に伸びている神経線維に加えて、総頸動脈神経叢と椎骨動脈神経叢をつなぎ合わせる線維を含む。椎骨動脈神経叢は脳底動脈神経叢とつながっている。内頸動脈神経叢に由来する枝は、三叉神経と海綿叢に加えて、外転神経及び深錐体神経のような他の構造体をつなぎ合わせる。中頭蓋窩に位置する海綿叢から、交感神経線維は、動眼神経、滑車神経、及び眼神経をつなぎ合わせる。上記の神経叢からの線維は、下垂体に入る血管も伴っている。翼口蓋窩に位置する翼口蓋神経節は、外鼻孔、口、咽頭、及びいくつかの眼窩構造体の粘膜に分布する枝と共に、顔からの交感神経線維を受容する。
【0103】
上記から、後頸部(BONATH)の皮膚の末梢神経自由神経終末との上頸(C1〜4)神経機能が、迷走神経の求心性入力と、三叉神経を通じた顔、頭、及び頭蓋窩の硬膜からの求心性入力と密接に関係していることは明らかである。ひいては、これらは、神経シグナルの処理のために、脳幹とその他のCNS構造体にフィードバックを供給する。
【0104】
頸部迷走神経の刺激(VNS)が、てんかん病巣からの異常放電をダウンレギュレーションして、発作を治療することは、長期にわたり報告されてきている。今では、VNSは、特定の形態の難治性てんかんにおける内科療法を補助するものとして認められている。VNSは、従来の薬物療法に対する耐性がある重度のうつにも有益である。片頭痛、不安、及び線維筋痛症にVNSを用いる研究が行われており、有益であることの予備的な展望が示されている。
【0105】
その作用メカニズムは、脳幹に対する抑制性入力の増大と、求心性系の刺激を通じた付随連結によって、異常興奮性の機能不全ニューロン系をダウンレギュレーションすることと見られる。TNCを通じたフィードバックによる求心性刺激は、脳幹からの遠心性出力の低下を引き起こし、その結果、過活性のニューロン構造体のダウンレギュレーションを通じて、臨床症状が消散する。
【0106】
上記と同じ方法で、VNSの電気刺激は、脳幹に対してその作用を発揮し、脳幹に近接する後頸部への局所薬物療法とその求心性入力は、上記の状態に対する作用をもたらすものと理論化される。したがって、それらの障害に対する有益性が立証されている薬物は、上記の方法で送達した場合、有効性が向上すると共に、副作用が少なくなる。上記の状態向けとして開発されている他の薬物でも同様に、上記のような送達を考慮すべきである。
【0107】
その結果、TRNA療法は、前頭、顔、又は頭部の他の領域に薬物を適用することによって機能するのかという疑問が生じる。偏頭痛及び顔面痛のようないくつかの疾患では、おそらく機能するが、後頸部の毛髪の生え際(BONATH)ほどは有効かつ効率的ではないというのがその答えである。これらのBONATH以外の場所にも自由神経終末が存在するが、関係する脳幹構造体に戻る距離はBONATHよりも長く、後頸領域に付随する三叉神経系、迷走神経系、及び交感神経系への求心性神経結合部が豊富という追加的な利点は存在しない。
【0108】
「TRNA BONATH」送達は、全身血流又は脳血流に依存しないという点で、従来の療法(経口、注射、鼻噴霧、吸入、又は直腸投与)とは異なる。TRNA BONATH送達は、薬物の治療血中レベルも必要としない。後者の要因では、治療プロセスで作用を受ける区域として意図されていない区域に薬物が送達されるので、後者の要因は、全身性副作用とCNS副作用の原因である。パッチによる経皮的全身送達は、TRNA BONATH療法と同様に皮膚に適用するものであるが、全身の毛細管血及び静脈血中に吸収させるために薬物濃度勾配に依存する点で有意に異なる。TRNA療法は、皮膚血管又は全身血流による作用を受けない。TRNA療法は、配合薬物の適用点の皮神経の自由神経終末とそれらの結合部の機能のみに依存する。
【0109】
パッチによる「従来の」経皮的薬物送達とTRNAは、いずれも薬物が皮膚(表皮)を貫通して最終的な臨床効果をもたらすという点で、いずれも「経皮的」である。その違いは、「従来の」経皮パッチ療法では、薬物が濃度勾配を通じて体循環内に入って、治療薬物血中レベルを確立するという点にある。血中レベルの測定によって、薬物が全身に投薬又は送達されているかを確認して、コンプライアンスをチェックできるが、これは、望ましくない副作用と薬物間相互作用の原因でもある。必然的に、全身性の経皮パッチ療法では、皮膚表面に適用された薬物は、薬物レベルの測定に備えて全身静脈血中に最終的に存在するように、真皮の小血管を通じて吸収されなければならない。提案しているTRNA療法では、薬物は、表皮の下の自由神経終末に到達しさえすればよい。濃度勾配又は全身血中レベルは不要である。薬物送達は、心拍出量又は脳血流の要因による作用を受けない。重要なことに、パーキンソン病に苦しむ患者は典型的には高齢であり、心疾患及び脳血管疾患を随伴している。
【0110】
したがって、特定の実施形態では、本発明の方法及び製剤は、経口投与した場合には治療効果を上げるのに足らない血漿中レベルとなるが、TRNA療法によってBONATHに投与すると治療効果が出る量の薬物(例えばドーパミンアゴニスト)をTRNA療法で送達する。
【0111】
TRNA療法の臨床効果が迅速に(例えば、片頭痛に対して局所的にスマトリプタンを用いた場合には約10分未満、パーキンソン病に対して局所的にアポモルフィンを用いた場合には約15分未満に)現れる主な理由は、「電気化学的」プロセスを通じて働くという点であると本発明者は仮定している。適切な皮膚透過促進剤中に配合した有効薬物は、自由神経終末で作用し、神経シナプスの受容体の神経化学を変化させる。すなわち、アポモルフィン(ドーパミン及びノルエピネフリンアゴニスト)が、ドーパミンとエピネフリンのレベルを向上させ、神経伝達を改善する。受容体刺激点の後、神経(電気)インパルスが生成され、脊髄と脳幹内に存在する神経細胞体に戻される(すなわち「求心性フィードバック」)。この神経系は、電気インパルスを発生させるニューロンと、「シナプス間隙」と呼ばれる神経受容体部位での神経化学物質/神経伝達物質(セロトニン、ノルエピネフリン、ドーパミン、及びアセチルコリンが主要な神経化学物質/神経伝達物質である)の放出を通じて機能する。したがって、TRNA療法におけるプロセスは、電気のスイッチを入れるように、放電して機能を実行する電気コンデンサーと似ているとみなすことができる。この観点から見ると、TRNA療法で臨床効果が迅速に現れるのもうなずける。
【0112】
更に、TRNA療法の利用による、黒質−線条体系での受容体のドーパミン刺激は、生理的かつ流れに沿ったものであると仮定されている。すなわち、皮膚の自由神経終末から頸髄、脳幹、及び黒質に至り、続いて、上行性の黒質−線条体結合を介して、尾状核及び被殻内のドーパミン受容体に至ると仮定されている。全身的経路(経口、注射、又はパッチ)では、下流の解剖学的領域(尾状核及び被殻)は、上流(脳幹)の構成要素よりも先に、又は上流(脳幹)の構成要素と同時に刺激されることがある。ドーパミン療法の慢性運動合併症の大半は、この現象によるもの、すなわち、「ドーパミン受容体過敏性」によるものと本発明者は考える。この合併症は、回避されると考えられており、実際、TRNAドーパミン送達を通じて緩和される。TRNAドーパミン送達では、ドーパミン及びその他の神経化学物質の効果は生理学的であり、意図されているとおりの方向及び形で流れるので、最も有効であると考えられる。
【0113】
あるいは、経皮全身性パッチ送達は、化学勾配と流体力学の原理に基づいて機能する。これらのプロセスには、変動性と固有の特異体質があり、血流のためのポンプとしての心機能を変動させるのがその1つである。したがって、薬物レベルを測定可能であるという利点にもかかわらず、TRNAよりも投与経路が遠回りで、臨床効果の発現が遅いことが観察される。このため、全身性経皮パッチ送達は、急性期療法には不適切である。
【0114】
あるいは、迅速かつ持続的な臨床効果は、後頸部の毛髪の生え際(BONATH)の皮膚にパッチを貼付することを通じて、TRNA療法の原理を採用している徐放性皮膚用製剤によって実現させることもできる。BONATHとは、TRNA療法で臨床効果をあげるのに必要な、薬物を局所塗布する特異的部位を指す。この場所は、TRNA療法において極めて重要であるが、その一方で、経皮全身性パッチでは、場所は重要でない。ヒトの解剖的構造のこの特定の領域(TRNA送達法がうまくいくようにする領域)の独自性については後述する。
【0115】
あるいは、TSD療法(従来の経皮全身性送達)は、化学勾配と流体力学の原理に基づいて機能する。これらのプロセスには、固有の特異体質と変動性(すなわち、血流のためのポンプとしての心機能がその1つである)が伴う。したがって、薬物レベルを測定可能であるという利点にもかかわらず、従来の経皮全身性送達には、TRNAよりも投与経路が遠回りで、臨床効果の発現が遅いことを伴う。
【0116】
迅速かつ持続的な臨床効果は、上記と同じ解剖学的部位(BONATH)に配置した徐放性パッチによって実現させることができる。
【0117】
本明細書に含まれている情報を利用する当業者であれば、局所的脳幹求心路遮断療法に有用である薬物には多くの種類があることが分かるであろう。これらの種類の薬物としては、以下の薬物が挙げられるが、これらに限らない。
1.抗てんかん薬:例としては、バルプロ酸(Depacon(登録商標)/Depakote(登録商標))、レベチラセタム(Keppra(登録商標))、ラモトリジン(Lamictal(登録商標))、トピラメート(Topamax(登録商標))、プレガバリン(Lyrica(登録商標))、ガバペンチン(Neurontin(登録商標))、カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))、オクスカルバゼピン(Trileptal(登録商標))、フェノバルビタール及びその他のバルビツレート、チアガビン(Gabatril(登録商標))、Retigabine(商標)(バレアント・ファーマシューティカルズ)が挙げられる。Lacosamide(登録商標)(シュワルツ・バイオサイエンシズ)及びPerampanel(登録商標)(エーザイ)は、その他の関連する神経学的な疼痛及び精神医学的状態向けの抗てんかん薬及び神経修飾物質として開発中のものである。
2.抗不安薬:ベンゾジアゼピン:例としては、ロラゼパム(Ativan(登録商標))、ジアゼパム(Valium(登録商標))、クロナゼパム(Klonopin(登録商標))、クロルジアゼポキシド(Librium(登録商標))、及びアルプラゾラム(Xanax(登録商標)が挙げられる。
3.精神遮断薬/向精神薬:例としては、クロルプロマジン(Thorazine(登録商標))、ハロペリドール(Haldol(登録商標))、リスペリドン(Risperdal(登録商標))、オランザピン(Zyprexa(登録商標))、及びクエチアピン(Seroquel(登録商標))が挙げられる。
4.鎮痛薬/抗炎症薬:例としては、プレドニゾン、ソルメドロール、及びその他のステロイド、ナプロキセン、アスピリン、アセトアミノフェン、ボルタレン、ケトプロフェン、イブプロフェン、その他のNSAIDが挙げられる。
5.パーキンソン病/類似又は関連症候群薬:例としては、アポモルフィンのようなドーパミンアゴニストが挙げられる。
6.性機能障害薬:例としては、アポモルフィンのようなドーパミンアゴニストが挙げられる。
7.痙性斜頸及び痙攣状態と連動して時折生じるジストニー(頸など):薬物の例としては、アポモルフィンのようなドーパミンアゴニストが挙げられる。
8.良性本態性/家族性振せん、MS関連振せん、脳卒中又は頭部外傷によるなどの慢性脳症、先天性CNS変性状態/脳性麻痺、小脳変性症候群、及び上記による痙縮状態:薬物の例としては、アポモルフィンのようなドーパミンアゴニストが挙げられる
9.神経病性/神経原性疼痛薬:例としては、カルバマゼピン、ガバペンチン、トピラメート、ゾニサミド、フェニトイン、デシプラミン、アミトリプチリン、イミプラミン、ドキセピン、プロトリプチリン、ペントキシフィリン、及びヒドロキシジンが挙げられる。
10.禁煙薬:例としては、バレニクリンのような薬物が挙げられる。
11.食欲抑制薬:例としては、シブトラミンのような薬物が挙げられる。
12.神経変性疾患:例としては、Aricept/ドネペジル、Exelon/リバスティグミン、Reminyl/Razadyne/ガランタミン、Namenda/メマンチン、及び天然に存在するそれらの類似体、並びに、NMDAアンタゴニストのような薬物が挙げられる。
13.多発性硬化症(MS):例としては、4−アミノピリジンのような薬物が挙げられる。
14.不眠症:例としては、ゾルピデムのような薬物が挙げられる。
15.疲労:例としては、ペモリン及びモダフィニルのような薬物が挙げられる。
16.めまい、悪心、及び/又はめまい感:例としては、メクリジン、ジメンヒドリナート、プロクロルペラジン、スコポラミン、及びジフェンヒドラミンのような薬物が挙げられる。
17.書痙及び下肢静止不能症候群:例としては、アポモルフィンのようなドーパミンアゴニストが挙げられる。
18.ADD/ADHD:例としては、リスデクスアンフェタミン、メチルフェニデートのような薬物が挙げられる。
【0118】
一般に、本明細書に記載されている製剤及び方法は、神経興奮性亢進と神経化学的機能不全症候群の治療に有用であり、その薬物は例えば、抗てんかん薬、抗不安薬、精神遮断薬、抗精神病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗パーキンソン病/パーキンソン症候群薬、性機能障害薬、ジストニー治療薬、けいれん状態治療薬、良性本態性振せん/家族性振せん治療薬、MS関連振せん治療薬、慢性脳症治療薬、先天性CNS変性状態/脳性麻痺治療薬、小脳変性症候群治療薬、神経障害性及び/又は神経原性疼痛治療薬、禁煙薬、食欲抑制薬、神経変性状態用の薬物、多発性硬化症治療薬、不眠症治療薬、疲労治療薬、めまい、悪心、及び/又はめまい感治療薬、書痙及び不穏下肢症候群治療薬、ADD/ADHD治療薬、並びに、脳幹上方の皮膚区域に近接し、かつその皮膚区域の下又は上の後頸部の毛髪の生え際に有益な形で投与して、患者に局部的神経作用療法を施すことができるその他の薬物であってよい。
【0119】
特定の実施形態では、上記の薬物は、ドーパミンアゴニスト、例えばアポモルフィン(Apokyn(登録商標)、APO−go(登録商標))、プラミペキソール(Mirapexin(登録商標))、ロピニロール(Requip(登録商標))、ブロモクリプチン(Parlodel(登録商標))、カベルゴリン(Cabaser(登録商標)、Dostinex(登録商標))、ペルゴリド(Permax(登録商標)、Celance(登録商標))、ロチゴチン(Neupro(登録商標))、上記のうちのいずれかの混合物、又は当業者に知られているその他のドーパミンアゴニストである。当業者であれば、本発明の製剤及び方法では、アポモルフィン以外のドーパミンアゴニストを用いてよく、それらのいずれの薬剤も、「ドーパミンアゴニスト」という用語に包含されるように意図されていることが分かるであろう。例えば、このような薬剤としては、カルビドパ(Sinemet(登録商標))、ドーパミンアゴニスト(Requip(登録商標)、Rotigotine(登録商標)、Mirapex(登録商標))、COMT阻害薬(Entacapone(登録商標)、トルカポン)、ラサジリン(Azilect(登録商標))、(MAO阻害薬)、及びMAO−B阻害薬(セレギリン(Eldepryl(登録商標))が挙げられるが、これらに限らない。
【0120】
別の実施形態では、上記の薬物は、オピオイド、例えばモルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ニコモルフィン、オキシコドン、オキシモルホン、フェンタニル、アルファメチルフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、カルフェンタニル、オーメフェンタニル、テバイン、オリパビン、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ペチジン(メペリジン)及びケトベミドンのようなフェニルピペリジン、アリルプロジン、プロジン、プロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、デキストロモラミド、ベジトラミド、ピリトラミド、メタドン、ジピパノン、酢酸レボメタジル(LAAM)、ロペラミド、ジフェノキシレート、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブプレノルフィン、ジヒドロエトルフィン、エトルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、レフェタミン、メプタジノール、チリジン、トラマドール、タペンタドール、及びこれらの混合物などである。
【0121】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、タペンタドール(μオピオイド受容体アゴニスト作用とノルエピネフリンの再取り込み阻害作用という2つの作用メカニズムを有する中枢作用性経口鎮痛薬)である。
【0122】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、例えばアトモキセチン(Strattera(登録商標))、マジンドール(Mazanor(登録商標)、Sanorex(登録商標))、ニソキセチン(LY−94939)、レボキセチン(Edronax(登録商標)、Vestra(登録商標))、ビロキサジン(Vivalan(登録商標))、及びこれらの混合物などである。
【0123】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、ベンゾジアゼピン、例えばロラゼパム(Ativan(登録商標))、ジアゼパム(Valium(登録商標))、クロナゼパム(Klonopin(登録商標))、クロルジアゼポキシド(Librium(登録商標))、アルプラゾラム(Xanax(登録商標))、テマゼパム(Restoril(登録商標))、及びこれらの混合物などである。別の実施形態では、上記の薬物は、精神遮断薬又は向精神薬、例えばクロルプロマジン(Thorazine(登録商標))、ハロペリドール(Haldol(登録商標))、リスペリドン(Risperdal(登録商標))、オランザピン(Zyprexa(登録商標))、及びクエチアピン(Seroque(登録商標))である。
【0124】
別の実施形態では、上記の薬物は、うつ及び/又は不安を治療する薬剤、例えば、フルオキセチン(Prozac)、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、ベンラファキシン(Effexor(登録商標))、シタロプラム(Celexa(登録商標))、パロキセチン(Paxil)、及びこれらの混合物など(トラゾドン(Desyrel)など)のような選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、並びに/又は、デスベンラファキシン(Pristiq(登録商標))、デュロキセチン(Cymbalta(登録商標))、ミルナシプラン(Ixel(登録商標)、Savella(登録商標))、ベンラファキシン(Effexor(登録商標))、及びこれらの混合物などのようなセロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)である。
【0125】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、ノルエピネフリン−ドーパミン再取り込み阻害薬(NDRI)、例えばアミネプチン(Survector(登録商標))、ブプロピオン(Wellbutrin(登録商標)、Zyban(登録商標))のようなアミノケトン抗うつ薬、デキスメチルフェニデート(Focalin)、メチルフェニデート(Ritalin(登録商標)、Concerta(登録商標))、ノミフェンシン(Merital(登録商標))、ネファゾドン(Serzone(登録商標))のようなフェニルピペラジン抗うつ薬、ミルタザピン(Remeron(登録商標))のようなピペラジン−アセピン抗うつ薬、及びこれらの混合物などである。
【0126】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、NMDA受容体アンタゴニストであってもよい。フェンシクリジン、ケタミン、及びデキストロメトルファンは、娯楽薬として用いられている。しかし、麻酔域下用量では、これらの薬物は、軽度の刺激効果を及ぼし、これらの薬剤は、外傷性脳損傷、脳卒中、並びに、アルツハイマー病、パーキンソン病、及びハンティングトン病のような神経変性疾患を含め、興奮毒性を伴う状態の治療用として有望である。
【0127】
更に、上記の薬物は、神経病性/神経原性疼痛(神経機能不全に起因する疼痛で、損傷による疼痛ではないもの、例えば三叉神経痛)を治療する薬剤、例えば、カルバマゼピン、ガバペンチン、トピラメート、ゾニサミド、フェニトイン、デシプラミン、アミトリプチリン、イミプラミン、ドキセピン、プロトリプチリン、ペントキシフィリン、及びヒドロキシジンであってもよい。
【0128】
別の実施形態では、上記の薬物は、ゾルピデム(Ambien(登録商標))のように、不眠症を治療するものである。
【0129】
別の実施形態では、上記の薬物は疲労を治療するものである。このような薬物としては、ペモリン(Cylert(登録商標))及びモダフィニル(Provigil(登録商標))のような中枢神経系刺激薬が挙げられる。
【0130】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、メクリジン(Antivert(登録商標))、ジメンヒドリナート(dramamine)、プロクロルペラジン(compazine(登録商標))、スコポラミン(Transderm(登録商標))、及びジフェンヒドラミン(Benadryl(登録商標))のように、めまい、悪心、及び/又はめまい感を治療するものである。更に別の実施形態では、上記の薬物は、セトロニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)、例えばデスベンラファキシン(Pristiq(登録商標))、デュロキセチン(Cymbalta(登録商標))、ミルナシプラン(Ixel(登録商標)、Savella(登録商標))、ベンラファキシン(Effexor(登録商標))、及びこれらの混合物などである。
【0131】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、三環系抗うつ薬(TCA)、例えばアミトリプチリン(Elavil(登録商標))、ブトリプチリン(Evadene(登録商標)、Evadyne(登録商標))、クロミプラミン(Anafranil(登録商標))、デシプラミン(Norpramin(登録商標)、Pertofrane)、ドスレピン(Prothiade(登録商標))、ドキセピン(Adapin、Sinequan)、イミプラミン(Tofranil(登録商標))、ロフェプラミン(Feprapax(登録商標)、Gamanil(登録商標)、Lomont(登録商標))、ノルトリプチリン(Aventyl(登録商標)、Nortrilen(登録商標)、Pamelor(登録商標))、プロトリプチリン(Vivactil(登録商標))、トリミプラミン(Surmontil(登録商標))、及びこれらの混合物などである。
【0132】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、四環系抗うつ薬、例えばアモキサピン(Asendin(登録商標))、マプロチリン(Ludiomil(登録商標))、ミアンセリン(Tolvon(登録商標))、及びこれらの混合物などである。
【0133】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、非定型抗精神病薬、例えばジプラシドン(Geodon(登録商標)、Zeldox(登録商標))、ネファゾドン(Serzone(登録商標))などである。
【0134】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、抗けいれん薬又は抗てんかん薬、例えば、アセタゾラミド(Diamox(登録商標))のようなアリールスルホンアミド類似体、カルバマゼピン(Tegreto(登録商標))のような三環系イミノスチルベン誘導体、クロナゼパム(Klonopin(登録商標))、クロラゼプ酸二カリウム(Tranxene(登録商標))、ロラゼパム(Ativan(登録商標))、及びジアゼパム(Valium(登録商標))のようなベンゾジアゼピン、バルプロ酸(Depakene(登録商標))及びジバルプロエクスナトリウム(Depakote(登録商標))のようなカルボン酸誘導体、エトスクシミド(Zarontin(登録商標))のようなスクシンイミド誘導体、フェルバメート(felbatol(登録商標))のような2−フェニル−1,3−プロパンジオールのカルバミン酸エステル、フェニトイン(Dilantin(登録商標))、フェニトインナトリウム(Dilantin(登録商標))、及びフォスフェニトインナトリウム(Cerebyx(登録商標))のようなヒダントイン、ガバペンチン(Neurontin(登録商標))及びプレガバリン(Lyrica(登録商標))のようなGABAの構造的類似体、ラモトリジン(Lamictal(登録商標))のようなフェニルトリアジン、レベチラセタム(Keppra(登録商標))のようなピロリジン誘導体、オキシカルバゼピン(Trileptal)のような三環系イミノスチルベン誘導体、フェノバルビタールのようなバルビツレート、プリミドン(Mysoline(登録商標))のようなデスオキシバルビツレート、チアガビン塩酸塩(Gabitril(登録商標))のようなニペコチン酸誘導体、トピラメート(Topamax(登録商標))のようなスルファメート化単糖、トリメタジオン(Tridione(登録商標))のようなオキサゾリジンジオン誘導体、並びに、ゾニサミド(Zonigran(登録商標))のようなメタンスルホンアミドである。Retigabine(登録商標)(バレアント・ファーマシューティカルズ)、Lacosamide(登録商標)(シュワルツ・バイオサイエシズ)、及びPerampanel(登録商標)(エーザイ)のような更なる薬物は、その他の関連する神経学的な疼痛及び精神医学的状態向けの抗てんかん薬及び神経修飾物質として開発中のものであり、したがって、これらは、本発明における潜在的に有用な薬物の更なる例である。
【0135】
更に別の実施形態では、上記の薬物は、鎮痛薬/抗炎症薬、例えば、アセトアミノフェン、プレドニゾン、ソルメドロール、及びその他のステロイド、ナプロキセン、アスピリン、ボルタレン、ケトプロフェン、イブプロフェン、ナブメトン、及びその他のNSAIDである。NSAIDは、COX−1阻害薬、COX−2阻害薬、又はCOX−1とCOX−2の両方を阻害する阻害薬であってよい。COX−2阻害薬の例としては、オキシカム、メロキシカム、並びに、更に選択性の高いセレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、及びエトリコキシブが挙げられる。コルチコステロイドの更なる例としては、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、及び副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)のコルチコトロピンが挙げられる。
【0136】
したがって、上記の薬物は、神経病性/神経原性疼痛(神経機能不全に起因する疼痛で、損傷による疼痛ではないもの、例えば三叉神経痛)を治療する薬剤、例えば、カルバマゼピン、ガバペンチン、トピラメート、ゾニサミド、フェニトイン、デシプラミン、アミトリプチリン、イミプラミン、ドキセピン、プロトリプチリン、ペントキシフィリン、ヒドロキシジン、及びこれらの混合物などであってよい。
【0137】
別の実施形態では、上記の薬物は、禁煙用として用いられる、α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体の部分アゴニストである。分子量(MW)261及び高水溶性というバレニクリン(Chantix(登録商標))の特徴によって、バレニクリンは局所送達用として理想的なものになっている。禁煙用としてのバレニクリンの通常の成人用量は、1〜2回の12週間の治療サイクルにおいては、1〜3日目で0.5mg(1日1回、経口投与)、4〜7日目で0.5mg(1日2回、経口投与)、8日目〜治療終了時で1mg(1日2回、経口投与)である。この場合の別の薬剤はシトシン(Tabex(登録商標))であり、この薬剤は植物性アルカロイドで、欧州で禁煙用として市販されている。
【0138】
別の実施形態では、上記の薬物は、4−アミノピリジン(4−AP;Fampridine(登録商標)としても知られている)、又はその製薬学的に許容可能な誘導体である。この薬物は、損傷神経間の連絡を改善する能力を有することが示されており、連絡の改善の結果、多発性硬化症(MS)のような状態の治療時に神経機能が向上する場合がある。このような薬物の別の例は、3,4ジアミノピリジンである。
【0139】
更に別の実施形態では、上記の薬剤は、食欲抑制薬、例えばシブトラミン(Meridia(登録商標)、Reductil(登録商標))であり、これは、構造的にアンフェタミンと関連しているが、異なる作用メカニズムを有する中枢作用性セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬である。抗肥満薬として潜在的に有用な他の薬物としては、リモナバント(Acomplia(登録商標))が挙げられ、アンフェタミンに関連する物質、例えばフェンテルミン及び/又はフェンフルラミン及び/又はデクスフェンフルラミン(これらの組み合わせは広くはフェンフェンと呼ばれている)も、本発明の治療法において有用である場合がある。本発明の治療法は、経口投与すると、これらを組み合わせた際に見られる心臓弁障害の可能性を回避すると考えられる。
【0140】
別の実施形態では、上記の薬物は、認知症/アルツハイマー病の治療に有用なものであり、例えばAricept(登録商標)/ドネペジル、Exelon(登録商標)/リバスティグミン、Reminyl(登録商標)/Razadyne(登録商標)/ガランタミン、Namenda(登録商標)/メマンチン、天然に存在するこれらの類似体、及びこれらの混合物である。
【0141】
別の実施形態では、上記の薬物は、ADD、ADHD、及び類似の状態の治療に有用なものであり、上記の薬物は例えば、1種以上のアンフェタミン誘導体又はそれらの異性体、例えばリスデクスアンフェタミン(Vyvance(登録商標))、Adderall(登録商標)(d−アンフェタミン75%、l−アンフェタミン25%)、メチルフェニデート(Ritalin(登録商標)、Concerta(登録商標))、デキストロアンフェタミン、デキスメチルフェニデート塩酸塩(Focalin(登録商標)、Ritalin(登録商標))、アトモキセチン(Strattera(登録商標))、及びこれらの混合物などである。
【0142】
アポモルフィンを注射された患者が定期的に陰茎勃起を発現することが観察及び報告されている。これらの患者の何人かは、勃起障害による不能症の問題を有していた。これらの患者では、アポモルフィンの注射による性機能の改善が報告された。動物実験によって、中枢ドーパミンD2受容体の刺激が、この効果を仲介する場合のあることが示されている。男性の性反応は、自律神経系(主に勃起に関しては副交感神経部分、射精に関しては交感神経部分)に関連していることも知られている。これは、パーキンソン病における性機能障害、及び他の状態に起因する性機能障害の治療を目的とするTRNA BONATH療法として送達されるアポモルフィンの考え得る役割を示している。したがって、本発明は、アポモルフィン及びその他のドーパミンアゴニスト(例えば、上記のようなもの)、並びに、シルデナフィル(Viagra(登録商標))、バルデナフィル(Levitra(登録商標))、タダラフィル(Cialis(登録商標))、アルプロスタジル(Prostin(登録商標))、及び上記のうちのいずれかの混合物を用いることも包含する。
【0143】
製剤
上記の状態に対するものとして現時点で認可されている療法のいずれも、体循環を通じて中枢神経系に到達するものである。脳幹構造体への脳血流は、椎骨動脈、脳底動脈、及びそれらの枝を介して、後方循環を通るものである。脳に対するこの薬物送達形態に付随する望ましくない副作用を考えれば、脳幹を標的とする局部送達が探求されるのもうなずける。このような方法は、現在用いられている薬物であって、適切な「皮膚透過促進剤」の中に配合されており、クリーム/ゲル形態、又は徐放性パッチとして後頸部の毛髪の生え際に適用される薬物を局所送達することである。Lipoderm(登録商標)は、有効な市販配合剤の1例である。しかし、当業者であれば、局所送達の効率を最大化する目的で、個別の薬物の特定の化学的要件を満たしている局所用担体を調合できることを認識するであろう。
【0144】
個別の患者における治療対象の状態と付随の症状群に応じて、クリーム/ゲル/軟膏として、又は徐放性局所パッチとして単回用量を塗布した場合に、当該薬物(1種又は複数種)を素早く送達できるように、本発明の製剤を調製する。この場合も、皮膚表面の下に自由神経終末を有する後頸部の求心性神経に到達させるには、重要な点は、適用する場所、すなわち、後頸部の毛髪の生え際にある。この場所は、迷走神経及び三叉神経求心系とのフィードバック結合を通じて、脳幹構造体に最終的な効果をもたらす。
【0145】
本明細書に記載されている治療法のおかげで、先行技術の投与形態よりもかなり速くかつ有効的に、治療対象の病状/状態を治療することができる。
【0146】
本発明の特定の実施形態では、ヒトの患者を治療する方法は、局所投与に適した薬物を含むと共に、本明細書に記載されている局所的脳幹求心性刺激(求心路遮断)薬物療法によって治療可能な病状又は状態の治療に有用である局所用製剤を適用することを含む。
【0147】
また、本発明の方法は、所望に応じて、適用する薬物に対する皮膚の透過性を向上させる目的で、促進剤で皮膚を前処置することを伴ってもよい。本発明の方法は、皮膚の毛穴を開く物質で皮膚区域を前処置、すなわち「プレプ」することを含んでもよい。加えて、本発明の方法は、所望に応じて、薬物を適用する前に、皮膚区域から汚れ、化粧、油などを除去する目的で、アルコールスワブなどで皮膚を前処置、すなわち「プレプ」することを含んでもよい。
【0148】
特定の実施形態では、本発明の局所用製剤は、皮膚表面の下に自由神経終末を有する後頸求心性神経に到達するように、後頸部の毛髪の生え際に局所投与したときに治療上有効であるが、経口投与した場合には治療効果を上げるのに足らない血漿濃度をもたらす量で、薬物を含む。
【0149】
特定の実施形態では、皮膚表面の下に自由神経終末を有する後頸求心性神経に到達するように、ある用量の薬物を含む本発明の製剤を後頸部の毛髪の生え際に適用することによって、ヒトの患者の体幹又は四肢に適用した場合よりも少ない用量の薬物を使用でき、かつ、体幹又は四肢に適用した場合よりも素早く頭痛を軽減できると共に、体幹又は四肢に適用した場合よりも薬物の血漿レベルを低くすることができる場合があり、用量が低下する結果、薬物の望ましくない副作用が軽減されることがある。
【0150】
本発明の局所用製剤(例えば軟膏、ゲル、クリームなど)は、薬物の局所投与に適していなければならない。すなわち、製薬学的に許容可能な賦形剤であって、皮膚組織への適用に適合する賦形剤を含有しなければならない。また任意で、後述するような促進剤組成物を十分な量含有してもよい。
【0151】
特定の実施形態では、本発明の局所用製剤及び/又は経皮吸収型製剤は、薬物(例えばドーパミンアゴニスト)に加えて、透過促進剤、抗酸化剤、安定剤、担体、又はビヒクルのような少なくとも1つの佐剤を含有してもよい。これに加えて、又はこの代わりに、本発明は、ドーパミンアゴニストの透過を促進する目的で、電流を印加すること(イオントフォレシス)を含んでもよい。
【0152】
特定の実施形態では、軟膏、ゲル、クリームなどの中に薬物を含む局所用製剤は、典型的には約0.001〜約80重量%、好ましくは0.01重量%〜50重量%の薬物と、約0重量%〜約50.0重量%、好ましくは約1重量%〜約30重量%の透過促進剤組成物を含有することになり、この組成物の残部には、担体又はビヒクルが含まれる。特定の好ましい実施形態では、薬物は、クリーム又はゲル又は軟膏中に、例えば担体(例えばLipoderm)1ml当たりに1mgの薬物という濃度で含まれる。しかし、当業者であれば、担体の量を増大するか、又は担体を変更し、TRNA療法用の局所用製剤の効能を保持又は改善することができることを理解されたい。
【0153】
特定の実施形態では、軟膏、ゲル、クリームなどの中にドーパミンアゴニストを含む局所用製剤は、典型的には約0.001〜約80重量%、好ましくは0.01重量%〜50重量%のドーパミンアゴニストと、約0重量%〜約50.0重量%、好ましくは約1重量%〜約30重量%の透過促進剤組成物を含有することになり、この組成物の残部には、担体又はビヒクルが含まれる。特定の好ましい実施形態では、上記のドーパミンアゴニストはアポモルフィンであり、クリーム又はゲル又は軟膏中に、例えば担体(例えばLipoderm)1ml当たりに1mgの薬物という濃度で含まれる。しかし、当業者であれば、担体の量を増大するか、又は担体を変更し、TRNA療法用の局所用製剤の効能を保持又は改善することができることを理解されたい。特定の好ましい実施形態では、例えばパーキンソン病又は無能症/男性勃起障害の患者にとって有益となるように、上記の薬物は、ドーパミンアゴニストによる急性期治療のために、単位用量としてBONATHに、即時放出形態(例えばクリーム、軟膏、ゲル)で塗布する。このようなケースでは、上記の単位用量に含まれるドーパミンアゴニストの濃度は、アポモルフィンベースでは約0.25mg〜約4mgであり、又は、本明細書に記載されているような別のドーパミンアゴニストの治療的に同等な量であることが好ましい。
【0154】
また、好適な透過促進剤も本発明の製剤に含めてもよい。このような促進剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、デシルメチルスルホキシド(C10 MSO)、ポリエチレングリコールモノラウレート(PEGML)、プロピレングリコール(PG)、PGML、グリセロールモノラウレート(GML)、レシチン、1−置換アザシクロヘプタン−2−オン、特に1−n−ドデシルシクラザシクロヘプタン−2−オン(バージニア州リッチモンドのホイットビー・リサーチ社からAzone(登録商標)という商標で市販されている)、及びアルコールなどが挙げられるが、これらに限らない。また、透過促進剤は、Sharmaの米国特許第5,229,130号に記載されているような植物油であってもよい。このような油としては例えば、サフラワー油、綿実油、及びトウモロコシ油が挙げられる。
【0155】
本発明と併せて用いる追加的な促進剤は、[RCOO]nR’という式を有する親油性化合物であり、式中、nは1又は2であり、Rは炭素数1〜16のアルキル(1又は2個のヒドロキシル基で置換されていてもよい)であり、R’は水素又は炭素数1〜16のアルキル(1又は2個のヒドロキシル基で置換されていてもよい)である。この群の中では、第1のサブセットの化合物は、[CH3(CH2)mCOO]nR’という式によって表され、式中、mは、8〜16の範囲の整数であり、nは1又は2であり、R’は、非置換であるか、又は1若しくは2個のヒドロキシル基で置換されている低級アルキル(炭素数1〜3)残基である。この群の中の好ましい促進剤としては、「PGML」のような低級アルキル(炭素数1〜3)ラウレート(すなわちmは10でnは1である)であるエステルが挙げられる。当業者であれば、「PGML」として販売されている市販の物質は典型的には(必ずしもそうではないが)、プロピレングリコールモノラウレート自体と、プロピレングリコールジラウレートと、プロピレングリコール、メチルラウレート、又はその両方のいずれかとの混合物であることは分かるであろう。したがって、「PGML」又は「プロピレングリコールモノラウレート」という用語は、本明細書中で使用する場合、純粋な化合物と混合物(これは、典型的には市場で得られる)の両方を包含することを意図している。また、第2のサブセットの化合物、すなわち、CH3(CH2)m−O−CO−CHR1R2という式(式中、R1及びR2は独立して、水素、ヒドロキシル、又は低級アルキル(炭素数1〜3)であり、mは上記の通りである)によって表わされる脂肪アルコールのエステルも、上記の群の中に入る。この群の中で特に好ましい促進剤は、乳酸ラウリルと乳酸ミリスチルである。加えて、この群の中の第3のサブセットの化合物は、類似の脂肪酸、すなわち、CH3(CH2)mCOOH(式中、mは上記の通りである)という構造式を有する酸である。特に好ましい酸はラウリン酸である。
【0156】
他の促進剤組成物は、すぐ上に記載されている脂肪親和性化合物、特にPGMLを親水性化合物、例えば炭素数2〜6のアルカンジオールと組み合わせたものである。この群の中の好ましい親水性促進剤の1つは、1,3−ブタンジオールである。このような促進剤組成物は、国際公開第95/05137号(1995年2月23日公開)に詳しく説明されており、この特許は参照により本明細書に組み込まれる。これらの組成物に含めてよい別の親水性促進剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol)及びジエチレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選択したエーテルである。このような促進剤組成物は、Chiangらの米国特許第5,053,227号及び同第5,059,426号に詳しく説明されており、それらの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0157】
その他の促進剤組成物としては、上記の促進剤のうちのいずれかの混合物又は組み合わせなどを挙げてよい。
【0158】
特定の実施形態では、本発明の局所用製剤は、少なくとも1種の薬理学的に認められた不水溶性アルキルセルロース又はヒドロキシアルキルセルロースなどを含んでよい。本発明で用いられるアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルセルロースポリマーとしては、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、及びエチルヒドロキシエチルセルロースが挙げられる(これらが単独か組み合わせかは問わない)。加えて、可塑剤又は架橋剤を用いて、ポリマーの特徴を変性させてもよい。例えば、フタル酸ジブチル又はフタル酸ジエチルのようなエステル、ジエチルジフェニル尿素のようなアミド、植物油、脂肪酸、並びに、オレイン酸アルコール及びミリスチルアルコールのようなアルコールをセルロース誘導体と組み合わせて用いてもよい。
【0159】
特定の実施形態では、本発明の局所用製剤は、流動パラフィン、ワセリン、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックスなどのような炭化水素、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどのような高級脂肪族アルコール、蜜ろうなどのような高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルなどのような高級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、植物油、変性植物油、加水ラノリン及びその誘導体、スクアレン、スクアラン、パルミチン酸、ステアリン酸などのような高級脂肪酸などを更に含んでもよい。
【0160】
特定の実施形態では、本発明の局所用製剤は、乳化剤及び分散剤(例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる)を更に含んでもよい。皮膚への刺激レベルが低いので、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤の典型的なものは、モノステアリン酸グリセリンなどのような脂肪酸モノグリセライド、ソルビタンモノラウレートなどのようなソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレンなどのようなポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及び、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのようなポリオキシエチレン高級アルコールエステルである。
【0161】
特定の好ましい実施形態では、本発明の局所TRNA用製剤は水性ベースである。
【0162】
本発明の特定の実施形態では、局所用製剤は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピル−セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボマーなどのようなゲル化剤を含んでもよい。薬物を塗布するためのビヒクルとして水性ゲル組成物に依存する医薬組成物の例は、米国特許第4,883,660号、同第4,767,619号、同第4,511,563号、同第4,861,760号、及び同第5,318,780号であり、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0163】
本発明の局所用製剤は、1種以上の保存剤、安定剤、又は抗酸化剤を更に含んでもよい。
【0164】
本発明による製剤で用いてよい保存剤の例としては、各種のアルコール、ソルビン酸とその塩及び誘導体、エチレンジアミン、モノチオグリセロール、並びにチメロサールを含め、局所投与に適した静菌化合物及びその他の保存剤が挙げられるが、これらに限らない。
【0165】
本発明による製剤中に存在してよい安定剤の例としては、局所投与に適したpH緩衝剤、錯化剤、キレート剤などが挙げられる。
【0166】
本発明による製剤で用いてよい抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸とその誘導体、例えばアスコルビン酸パルミテート、及び、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0167】
本発明の薬物製剤に含めてもよいその他の佐剤としては、製剤の機械的特性又は接着特性に悪影響を及ぼさない担体、粘着付与剤、色素、染料、及びその他の添加剤が挙げられる。
【0168】
「担体」又は「ビヒクル」とは、本明細書で使用する場合、薬物の経皮投与に適した担体物質を指し、当該技術分野において既知のいずれかの担体物質、例えば、いずれかの液体、ゲル、乳剤、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤などが挙げられ、その担体物質は無毒性で、有害な形で当該組成物の他の構成要素と相互作用しないものである。「担体」又は「ビヒクル」という用語は、本明細書で使用する場合、安定剤、結晶化阻害剤、分散剤、又は、薬物の経皮送達を促すのに有用であるその他のタイプの添加剤を指すこともある。「ビヒクル」又は「担体」として分類される化合物が透過促進剤としての機能を果たす場合も、透過促進剤がビヒクル又は担体としての機能を果たす場合もあり、したがって、これらの2つの分類の化学化合物又は組成物は重複してよい場合もあることが分かるであろう。
【0169】
本発明の組成物で用いるのに適した担体物質としては、軟膏、ローション、軟膏剤、エーロゾル、座薬などのための基材として、化粧及び医薬分野で用いられるものとして周知の物質が挙げられる。好適な担体としては例えば、水、液体アルコール、液体グリコール、液体ポリアルキレングリコール、液体エステル、液体アミド、液体タンパク加水分解物、液体アルキル化タンパク加水分解物、液体ラノリン及びラノリン誘導体、並びに、化粧品組成物及び医薬組成物で広く用いられている類似の物質が挙げられる。本発明におけるその他の好適な担体としては例えば、一価アルコール及び多価アルコールの両方を含むアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、ソルビトール、2−メトキシエタノール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、マンニトール、及びプロピレングリコール)、ジエチルエーテル又はジプロピルエーテルのようなエーテル、ポリエチレングリコール及びメトキシポリオキシエチレン(分子量が200〜20,000の範囲であるカルボワックス)、ポリオキシエチレングリセロール、ポリオキシエチレンソルビトール、ステアロイルジアセチンなどが挙げられる。
【0170】
薬物(例えばドーパミンアゴニスト)を慢性的に投与するのが望ましい、本発明の特定の好ましい実施形態では、本発明の製剤は、経皮パッチ、経皮硬膏剤、経皮ディスク、イオントフォレシス型経皮デバイスなどのような経皮送達剤(本明細書では経皮吸収型製剤ともいう)として調合してもよい。このような製剤は、除放的な形で、長期(例えば1〜7日)にわたって、薬物を患者の皮膚の中に放出及び吸収させるものとして当業者から認識されている。本発明のこのような実施形態では、経皮送達剤は例えば、リザーバー又はマトリックス中に含まれているドーパミンアゴニストと、経皮パッチが皮膚に付着できるようにして、有効薬剤が経皮パッチから患者の皮膚を通過できるようにする接着剤とを含む。好ましい実施形態では、経皮パッチを局所的に、後頸部の毛髪の生え際(「BONATH」)に貼付して、本明細書に記載されているような局所局部的神経作用療法(「TRNA療法」)を施せるようにする。薬物が経皮パッチ中に含まれている実施形態では、例えば、薬物を即時に放出させてTRNA療法の効果が即座に現れるように意図されているクリーム又は軟膏と比べて、薬物はゆっくり吸収され、その経皮パッチは除放作用と持続的な治療効果をもたらすように考慮されている。
【0171】
特定の実施形態では、上記の経皮送達デバイス及び本発明によるその他の経皮送達剤は、テープ、パッチ、シート、包帯のような物品の形態、又は当業者に知られているいずれかの他の形態で作製することができる。一般に、上記のデバイスは、皮膚を通じて単位用量のセロトニンアゴニストを送達するのに適した大きさのパッチの形態となる。この薬物は、様々な形態(固体、溶液形態、分散形態)で経皮吸収型製剤の中に組み込んでもよく、また、マイクロカプセル化してもよい。
【0172】
特定の実施形態では、本発明は、経口投与した場合には治療効果をあげるのに足らない血漿中レベルとなるが、経皮送達によって頭痛領域に投与すると治療効果が出る量で、薬物(例えばセロトニンアゴニスト)を含む経皮吸収型製剤を提供する。
【0173】
また、本発明に従って用いられる経皮送達剤は、本発明の局所用製剤との関連で上に記載した促進剤組成物及びその他の成分と共に構築することもできる。本発明の経皮送達剤は、例えばパーキンソン病又は不能症/男性勃起障害の患者にとって有益となるように、薬物(例えばドーパミンアゴニスト)を持続的に送達するように調合するのが好ましい。特定の薬物を送達する際の目標とされる皮膚フラックスは、ビヒクルの組成とビヒクルの負荷を調節することによって、及び、当該組成物を皮膚に投与する際の表面積を調節することによって達成することができる。
【0174】
特定の好ましい実施形態では、経皮送達剤(例えばパッチ)は、患者の皮膚を通じて、24時間当たりにアポモルフィンベースのドーパミンアゴニストを約4mg〜約50mg、又は、本明細書に記載されているような好適な代わりのドーパミンアゴニストを治療的に同等な量送達するように調合する。経皮送達剤を複数日にわたって皮膚のBONATHに貼付するように意図されている実施形態では、その経皮送達剤(例えばパッチ)は、その耐用期間にわたって、あるフラックス速度をもたらすように調合し、その送達剤を剥がすか、又は新しい送達剤と交換するまで、毎日、同程度の量(例えば平均用量)が送達されるようにする。
【0175】
本発明で用いる経皮送達剤は、例えば米国特許第5,069,909号、同第4,806,341号、同第5,026,556号、同第4,588,580号、同第5,016,652号、同第3,598,122号、同第4,144,317号、同第4,201,211号、同第4,262,003号、及び同第4,379,454号に従って調製してよく、これらの特許はいずれも、参照により本明細書に組み込まれる。
【0176】
加えて、本発明で用いる経皮送達剤は、米国特許第6,689,379号(参照により本明細書に組み込まれる)に従うものであってもよく、この特許では、送達剤は、塩基性の製薬学的に有効な薬剤、及び中性の製薬学的に有効な薬剤(リバスティグミンなど)からなる群から選択した少なくとも1種の製薬学的に有効な薬剤と、ポリアクリレートポリマーを含む感圧性接着剤とを含むマトリックス又はリザーバー剤であり、前記ポリアクリレートポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、及び、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル誘導体からなる群から選択したモノマー単位を含むポリアクリレート骨格を有しており、前記モノマー単位は、前記ポリアクリレートポリマーの平均ポリマー質量を基準とした場合、少なくとも50%(w/w)を占め、非エステル化アクリル酸及び非エステル化メタクリル酸からなる群から選択したモノマーの総量は、前記ポリアクリレートポリマーの平均ポリマー質量を基準とした場合、0.5〜10.0%(w/w)であり、前記非エステル化アクリル酸及びメタクリル酸モノマーのカルボキシル基は、アルカリ塩又はアルカリ土類塩の形態で、化学量的に5〜100%で存在し、前記塩は、アルカリ水酸化物若しくはアルカリ土類水酸化物のアルコール溶液と前記アクリレートポリマー(1種又は複数種)との中和反応、又は、アルカリアルコラート若しくはアルカリ土類アルコラートと前記アクリレートポリマー(1種又は複数種)との中和反応の反応性生物である。
【0177】
特定の実施形態では、剤形は、薬物(例えばドーパミンアゴニスト)を個人に経皮投与するように、積層複合物を含む経皮パッチであって、(a)ドーパミンアゴニストを実質的に通さないポリマーバッキング層と、(b)水性アクリレート製の感圧性接着剤と、セロトニンアゴニスト1〜12重量%と、カプリン酸又はオレイン酸と併せてプロピレングリコールモノラウレートを含む透過促進剤2〜25重量%とを含むリザーバー層とを含み、前記複合物の皮膚接触面積が10〜100cmであるパッチであることができる。
【0178】
本発明の剤形は、(a)炭素数3〜4のジオール、炭素数3〜6のトリオール、及びこれらの混合物からなる群から選択した極性溶媒物質と、(b)脂肪アルコールエステル、脂肪酸エステル、及びこれらの混合物からなる群から選択した極性脂質物質とを含む経皮パッチであることができ、前記極性溶媒物質と前記極性脂質物質は、溶媒物質:脂質物質の重量比が約60:40〜約99:1となる形で存在する。
【0179】
特定の実施形態では、剤形は、(1)厚みが0.5〜4.9マイクロメートル、強度が8〜85g/mm(実質的に直角に交差する2方向での各強度)、実質的に直角に交差する2方向への伸長率が30〜150%、AのBに対する伸長比(AとBは、直角に交差する方向におけるデータを示し、AはBよりも大きい)が1.0〜5.0であるポリエステルフィルムを含むフィルム層であって、前記ポリエステルフィルムが、固体微粒子を前記ポリエステルフィルムの総重量に対して0.01〜1.0重量%含み、(a)前記微粒子の平均粒径が0.001〜3.0マイクロメートルであり、かつ(b)この平均粒径が実質的に、前記ポリマーフィルムの厚みの1.5倍以下であるフィルム層と、(2)前記セロトニンアゴニストを含む接着剤からなる接着剤層(a)であって、更に、前記フィルム層の上に、2〜60マイクロメートルの厚みで表面を覆うように積層されている接着剤層(a)とを含む経皮硬膏剤を含んでもよい。
【0180】
特定の実施形態では、剤形は、(a)ドーパミンアゴニストを実質的に通さないバッキング層と、(b)前記バッキング層に付着しており、かつ、中に前記セロトニンアゴニストを微粒分散させてあるポリマーマトリックスディスクとを含む経皮ディスクであって、前記ポリマーが生体許容性であり、前記セロトニンアゴニストを透過させて経皮吸収させるものであり、前記ドーパミンアゴニストが前記ポリマーマトリックス中で安定的である経皮ディスクであることができる。
【0181】
特定の実施形態では、本発明の局所用製剤又は経皮吸収型製剤は、第1の薬物(例えばドーパミンアゴニスト)と併せて別の有効成分、例えば鎮痛薬、制吐薬、向精神薬、又は鎮静薬を更に含んでもよい。
【0182】
本発明は、局所投与による局所的脳幹求心性刺激(求心路遮断)療法によって、ヒトの病状又は状態を治療するのに有用である薬物(例えばドーパミンアゴニスト(1種又は複数種))が投与されるように、当該薬物を含むあらゆる経皮製剤、例えば上記の技法を包含するように意図されている。したがって、例えば薬物の選択及び/又は量による本発明の変更形態は、本開示の明らかな変形形態であり、かつ、添付の請求項の範囲内であるとみなされる。
【0183】
また、本発明は、薬物(例えばドーパミンアゴニスト)を皮膚の下に直接投与して、その表皮下の自由神経終末に直接脳幹求心性刺激を与えることも意図している。このような投与形態は、即時放出又は徐放形態の薬物を注射(例えば皮下注射)するか又は埋め込むことによって行ってよい。徐放形態の薬物を用意して、それを皮膚の下に好適な形で投与すると、(例えば長期治療における)投与頻度が減るなどの有益な点をもたらす場合があることは、当業者であれば分かるであろう。
【0184】
本発明の特定の実施形態では、薬物(例えばドーパミンアゴニスト)は、生体適合性のある埋め込み可能なポリマー(微粒子若しくは埋め込み可能なインサートの形態であることができる)、又は、注射後にゲル、コロイド、若しくは半固体を形成する(それによって薬物を包み込んで、所望の部位に薬物が持続的かつ制御された形で放出されるようにする)液体の中に組み込むことによって、BONATHに制御送達又は持続送達されるように調合することができる。慢性的状態(例えばパーキンソン病の慢性的状態)向けに、又は、所望どおりに効果が持続するように、BONATHの皮膚の下で薬物デポー又はリザーバーが作られ、その後、所望の神経終末の近くで薬物を徐放させ、次の投与時に補充又は交換できるように考慮されている。薬物(例えばドーパミンアゴニスト)をこのように投与すると、少なくとも約3日間、好ましくは少なくとも約7日間以上、持続的に治療効果をもたらすことができるように考慮されている。上記のような製剤は、特定の実施形態では、例えば皮下デポー剤として投与してもよい。
【0185】
インプラントは、皮膚を切開し、皮膚と筋肉との間にインプラントを入れることによって、皮下に配置する。使用期間に到達した時点で、インプラントが溶解していない場合には、インプラントを外科的手術によって除去する。米国特許第4,244,949号(参照により本明細書に組み込まれる)には、ポリテトラフルオロエチレン樹脂のような不活性プラスチックからなる外側マトリックスを有するインプラントが説明されている。このタイプの埋め込み型製剤の例は、Progestasert IUD及びOcusertという製剤である。当業者は、本発明と併せて用いられるように、このような製剤を適切に修正することができると考えられる。市販の製品であるNorplant(登録商標)は、有効物質としてレボノルゲストレルを含有するコアを有するインプラントであり、このコアは、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)のシリコーンエラストマーの膜で取り囲まれている。このタイプのうちの別の調製物はJadelle(登録商標)であり、そのコアは、レボノルゲストレルを中に分散させてあるポリ(ジメチルシロキサン)ベースのマトリックスである。その膜は、PDMSとシリカ充填剤から作られたエラストマーであり、この充填剤は、膜に必要な強度特性を付与するのに加えて、有効薬剤が膜を貫通しないようにもする。米国特許第3,854,480号(参照により本明細書に組み込まれる)には、制御された速度で薬物を長期間にわたって放出させるための薬物送達デバイス、例えばインプラントが説明されている。このデバイスは、薬物が分散されているマトリックスコアを有する。このコアは、体液中で溶けない膜で取り囲まれている。このコアマトリックスと膜は、拡散によって薬物を通すことができる。薬物が、コアマトリックスを通るときよりも膜を通るときの方が遅い速度で拡散するように、コアと膜の材料を選択する。したがって、膜が薬物の放出速度を制御する。コアマトリックスに適したポリマーとしては、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)が挙げられ、膜に適したポリマーとしては、ポリエチレン、及び、エチレンとビニルアセテートとのコポリマー(EVA)が挙げられる。当業者であれば、本発明に従って薬物(例えばドーパミンアゴニスト)を送達するように、上記の製剤を適合させることができると考えられる。
【0186】
本発明で用いられるように当業者が適合させることができる1つのデバイスは、米国特許第5,968,542号(Tipton)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、この特許には、(i)37℃における粘度が少なくとも5,000cPであり、そのままでは周囲又は生理学的条件下において結晶化しない非ポリマー性かつ非水溶性の液体担体物質(HVLCM)と、任意で(ii)送達される物質とを含む医療又は外科用デバイスとしての高粘度液体制御送達製剤が記載されている。
【0187】
本発明に従って用いられる注射剤に適している医薬組成物としては、無菌水溶液又は水分散液、及び、無菌注射用溶液又は分散液の即時調製用の無菌散剤又は凍結乾燥体が挙げられる。これらの剤形は無菌でなければならず、製造条件及び保管条件下において安定的でなければならない。注射用製剤用の担体は典型的には水であるが、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、これらの混合物、並びに植物油も挙げることができる。
【0188】
また、本発明で用いられる注射用製剤は、有効化合物が、デンプン、ゴム及びエーテル化若しくはエステル化セルロース誘導体、ポリエーテル、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ゼラチン、又はアルギン酸塩を含め、炭水化物のような1種以上の天然又は合成の生分解性又は生分散性ポリマーと組み合わされている注射用持続放出性製剤として調合することもできる。このような投薬製剤は、生物活性成分を持続的に放出させる「デポー剤タイプ」の薬物送達システムとしての機能が当該技術分野において周知である例えばマイクロスフィア懸濁液、ゲル、又は成形ポリマーマトリックスインプラントの形態で調製することができる。このような組成物は、当該技術分野で認められている調合技法を用いて調製することができ、多種多様な薬物放出プロファイルのいずれかに合わせて設計することができる。
【0189】
長期にわたる作用持続時間をもたらす目的で、本発明の方法において用いてよい有用な製剤の一例は、米国特許第7,332,503号(Wikstromら)に記載されており、この特許は参照により本明細書に組み込まれる。この特許では、アポモルフィン誘導体とその生理学的に許容可能な塩に加えて、長期にわたる作用持続時間をもたらすその製剤について記載されている。上記の特許のアポモルフィンプロドラッグは、(ニートオイル若しくは結晶として、又は、好適かつ製薬学的に許容可能な溶媒(例えば、水、エタノール、DMSO、i−PrOH、又は安息香酸ベンジル)中に溶解した状態で)製薬学的に許容可能なデポー油(例えば、viscoleo、ゴマ油、又はオリーブ油)中に懸濁させて、注射器若しくは「ペンインジェクター」で皮下若しくは筋内注射することができる。あるいは、これらの薬物は、好適な組成物中で、好適なビヒクル(透過促進剤)と共に、経皮投与用のパッチに塗布してもよい。上記の組成物は、注射の痛み、とりわけ筋内注射時の痛みを防ぐ目的で、局所麻酔薬(例えばリドカイン)も含んでもよい。1つの実施形態では、上記の組成物は、経皮投与用のパッチ又は軟膏の形態である。このパッチ又は軟膏は、安定剤、可溶化剤、及び有効成分が皮膚を通過するように促す透過活性化剤も含有するのが好ましい。別の好ましい実施形態では、上記の組成物は、皮下又は筋内投与用のデポー調製剤であって、油中に溶解又は懸濁させたアポモルフィン誘導体又はその生理学的に許容可能な塩を含むデポー調製剤の形態である。特定の実施形態では、上記の製剤は、アポモルフィン誘導体に加えて、局所麻酔薬も更に含有する。当業者であれば分かるように、米国特許第7,332,503号に記載されている製剤は、本明細書に記載されているようなBONATH用の他の有効薬物を含有するように修正することができる。
【0190】
注射用デポー製剤は、一般に投与してから2〜4週間、治療活性を有するように意図されている剤形である(例えば、ゴマ油中のデカン酸フルフェナジンのような精神遮断薬)。有効な薬物血漿レベルを維持するためには、この剤形は、所望の投与間隔の間、ほぼ一定の速度で薬物を放出する必要がある。このような先行技術のデポー剤と本発明で用いるデポー剤の相違点は、本発明に従う場合には、薬物を体循環中に吸収させる必要がない点である。
【0191】
デポー調製剤の好適な形態は、親油性薬物の油溶液及び/又は油懸濁液を皮下又は筋内投与するものである。これによって、油と生体液との界面を越える輸送が遅くなり、生体相中での溶解が遅くなる。したがって、水性の生体液と混和性のない極性溶媒(例えば油)に薬物を溶解させるときには、油と水との界面を超えてその薬物を輸送しなければならない。油と水の分配係数が高いと、輸送は遅くなる。脂肪親和性の高い薬物では、油相からの放出は、最大で数週間継続する場合がある。本明細書に記載されているようなデポー調製剤を用いて、本明細書に記載されている薬物をBONATHで送達することができる。
【0192】
筋内又は皮下注射する油溶液/懸濁液の最大体積は2〜4mLである。これは、本発明のアポモルフィン誘導体の調製剤の場合に実現可能である。パーキンソン病のアポモルフィン皮下療法で用いられる1日の蓄積用量は、例えば、約1〜4mg×4〜10回(4〜40mg/日)である。例えば、2mgのアポモルフィンHCl(あるいは、等モル量の塩基又は好適な塩若しくはイオン対としての別のドーパミンアゴニスト(1種又は複数種))を1mLの油(ゴマ油、Viscoleo、又は別の認可済み油)に溶解させ、その混合物を徐々に加熱し(最大50℃)、試験管シェーカーで振とうし、その混合物が均一な溶液又は懸濁液になるまで、短時間(数分)超音波処理してもよい。必要に応じて、まずドーパミンアゴニストを50〜300μLのDMSO、水、t−BuOH、PEG、安息香酸ベンジル、若しくは別の好適な認可済みの溶媒、又はこれらの混合物に溶解させてから、総体積が1mLになるまで上記の油を加えてもよい。
【0193】
本発明で用いられるように当業者が適合させることができるポリマー薬物送達システムの別の例は、米国特許第5,601,835号(Sabelら)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、この特許には、いずれかの物質を中枢神経系に送達するためのポリマー薬物送達システムが記載されている。この送達システムは、薬物を直接中枢神経系に送達する目的で、中枢神経系に埋め込むのが好ましい。これらの埋め込み型デバイスを用いて、例えば、血液脳関門を通過できないドーパミンを脳の中に直接、長期間にわたって持続的に送達させることができる。この埋め込み型デバイスは、制御されている「ゼロ次」放出速度を呈し、このデバイスが水溶性の低分子量化合物を含有していても、最低でも数週間又は数カ月の寿命を呈し、生体適合性を持ち、比較的侵襲性がない。このポリマーデバイスは、パーキンソン病、アルツハイマー認知症、ハンティングトン病、てんかん、トラウマ、脳卒中、うつ、及びその他のタイプの神経学的及び精神学的疾病を含む様々な中枢神経系障害の治療に適用できると言われており、当業者であれば、本明細書で考慮されている薬物をBONATHで送達するように、上記の薬物送達システムを適合させることができる。
【0194】
本発明で用いられるように適合させることができるシステムの更に別の例は、米国特許第5,601,835号(Sabelら)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、この特許では、ドーパミンのような化合物をポリマー内に封入して、ポリマーデバイスを形成させる。このデバイスは、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択した可塑的に変形可能な生体適合性ポリマーであって、無孔質ポリマーコーティングと共に、1つ以上の開口部を有し、水分吸着力が限られており、水性可溶性小分子を通す透過性がわずかであるポリマーから形成されており、前記ポリマーデバイスを患者の中枢神経内の特定の部位(この部位では、前記化合物が中枢神経系に直接放出され、前記デバイスは、放出期間にわたって本質的に原形を保つ)の中に埋め込むと、少なくとも65日の持続時間にわたって、所定のレベルと速度で前記ポリマーデバイスから前記化合物が一次的に放出される(例えばゼロ次放出)。この送達デバイスは2相システムであり、この2相システムは、送達される生物活性物質と、マトリックスの形成に適したポリマーを選択してから、ブレンディング、混合、又はこれらと同等の技法のような標準的な技法を用いて作製する。Siegel及びLangerの“Controlled release of polypeptides and other macromolecules”,Pharmaceutical Research 1,2−10(1984)に開示されているような溶媒キャスティングの一般的な方法を修正して、上記のデバイス内に薬物を分散させ、所望の速度で薬物を放出させるように、デバイスの表面に対してチャネルと孔を作るようにする。適切な場合には、ポリマーマトリックスを含む薬物部分を覆うように、薬物を通さないコーティングを配置して、放出速度を更に調節する。当業者であれば、本発明で考慮されている薬物をBONATHに送達するように、上記の薬物送達システムを適合させることができる。
【0195】
本発明で定められているような薬物(例えばドーパミンアゴニスト)をBONATHで送達する目的で用いてよい更に別の製剤は、米国特許第7,314,636号(Caseresら)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、この特許には、グリコール酸と、乳酸のポリマーを含む生体適合性/生体吸収性ポリマー粒子とを含む注射用インプラントが記載されている。上記の粒子は、針を通じて注射できるほど十分に小さいが、マクロファージに取り込まれないほど十分に大きいものである。この発明の注射剤は、活性化前の固体形態であっても、又は、活性化形態(例えば注射用懸濁剤若しくは乳剤)であってもよい。
【0196】
更に、当業者であれば、薬物をBONATHで送達するための本発明で用いられるように、米国特許第6,586,006号(Roserら)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているシステムを適合させることができると考えられる。この特許には、生物活性物質を皮下組織、皮内組織、筋内組織、静脈内組織に送達するのに適している送達システムが記載されており、この送達システムは、表皮を貫通する大きさと形になっている。この送達システムは、ゲスト物質が充填されており、かつそのゲスト物質をインサイチューで様々な制御速度にて放出できるガラス質のビヒクルを含む。数カ月又は数年のような長期間にわたって特定の医薬剤をゆっくり放出するための埋め込み型皮下治療システムも調合されている。周知の例は、ステロイドホルモンを送達するためのNorplant(登録商標)である。
【0197】
膜透過型の薬物制御送達形態では、律速ポリマー膜によって包まれている区画内に薬物を封入する。この薬物リザーバーは、薬物粒子、又は、固形薬物を液体若しくはマトリックス型分散媒質中に分散させた液(若しくは溶解させた液)を含んでもよい。上記のポリマー膜は、均質若しくは異質性の無孔質ポリマー物質、又は、微孔性膜若しくは半透性膜から作製してよい。薬物リザーバーのポリマー膜内部への封入は、成型、カプセル化、マイクロカプセル化、又はその他の技法によって行ってよい。このインプラントは、薬物を内部コア中に溶解させ、外側マトリックスを横断するようにゆっくり拡散させることによって薬物を放出する。このタイプの埋め込み型治療システムからの薬物の放出は、比較的一定でなければならず、この放出は主に、ポリマー膜内での医薬の溶解速度又は横断拡散速度又は微孔性膜若しくは半透性膜に左右される。上記の内部コアは実質的に、時間の経過と共に溶解することができるが、現在用いられているデバイスでは、外側マトリックスは溶解しない。
【0198】
他の埋め込み型治療システムは、マトリックス拡散型制御薬物送達を伴う。この薬物リザーバーは、脂肪親和性又は親水性ポリマーマトリックス全体に薬物粒子を均質に分散させることによって形成される。薬物粒子のポリマーマトリックス中での分散は、薬物を粘性液体ポリマー若しくは半固体ポリマーと室温でブレンドしてから、そのポリマーを架橋結合させることによって、又は、薬物粒子を融解ポリマーと高温で混合することによって行ってよい。薬物粒子及び/又はポリマーを有機溶媒中に溶解させてから混合し、高温又は減圧下でモールド内にて溶媒を蒸発させることによって作製することもできる。このタイプの送達デバイスからの薬物放出の速度は一定ではない。このタイプの埋め込み型治療システムの例は、避妊用腟内リングとCompudoseインプラントである。PCT/GB90/00497号には、埋め込み型デバイスを形成するための除放性ガラス状システムが記載されている。記載されているインプラントは生体吸収性であり、外科的に除去する必要はない。当業者であれば、本発明で考慮されている薬物をBONATHで送達するように、これらの薬物送達システムを適合させることができる。
【0199】
マイクロリザーバー溶解制御薬物送達形態では、水混和性ポリマーの水性溶液中に薬物粒子を懸濁させたものである薬物リザーバーは、ポリマーマトリックス中に個別の非浸出性の微小な薬物リザーバーが多数、均質に分散している分散体を形成している。この微粒分散体は、高エネルギー分散技法を用いて作り出してよい。このタイプの薬物送達デバイスからの薬物の放出は、界面分配又はマトリックス拡散−制御プロセスのいずれかに従うものである。このタイプの薬物送達デバイスの例はSyncro−Mate−C Implantである。
【0200】
本発明で用いられるように当業者が適合させることができる更に別の製剤は、米国特許第6,576,263号(Truongら)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、この特許には、患者のために有効剤を送達するための予め成形済みの物体であって、架橋タンパクを含む予め成形済みの物体と、その作製法及び使用法が記載されている。
【0201】
本発明で用いられるように当業者が適合させることができる更に別の製剤は、米国特許第6,287,588号(Shihら)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、この特許には、制御した形で生物活性剤又は薬物を生物環境内に放出するための組成物と方法が記載されている。この組成物は、連続的な生体適合性ゲル相と、規定された微粒子を含む不連続的な粒子相と、送達される薬剤とを含む2相型ポリマー剤送達組成物である。生物活性剤を含有する微粒子は放出可能な形で、生体適合性ポリマーゲルマトリックス内に混入されている。上記の生物活性剤の放出物は、微粒子相のみに含まれていても、微粒子とゲルマトリックスの両方に含まれていてもよい。この生物活性剤の放出は、ある期間にわたって持続し、その送達は、調節及び/又は制御してもよい。加えて、微粒子の一部及び/又はゲルマトリックス中に第2の薬剤を入れてもよい。
【0202】
本発明で用いられるように当業者が適合させることができる更に別の製剤は、米国特許第7,364,568号(Angelら)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、この特許には、有効成分の製剤を保持するためのリザーバーと、針の長さに沿って針の第1の末端部から針の第2の末端部まで伸びている内腔を有する針とを備える経皮輸送デバイスが記載されている。このデバイスを生体の体の表面上に置いたとき、上記の第2の末端は、生体の体の表面と平行な面と実質的に揃っている。また、上記のデバイスは、体の標的区域とリザーバーとの間にある針の内腔を通じて製剤を押し出すアクチュエーターも備える。
【0203】
本発明の更に別の実施形態では、ドーパミンアゴニスト以外の薬物を注入するのに有用であることが知られている技術、例えばインスリンポンプを用いて、ドーパミンアゴニストを患者のBONATHに注入する。このようなシステムの1つである米国特許第7,354,420号(Steilら)(参照により本明細書に組み込まれる)には、ユーザーの体に注入される流体の速度を制御する閉ループ注入システムが記載されている。この閉ループ注入システムは、センサーシステムと、コントローラーと、送達システムを備える。このセンサーシステムは、ユーザーの状態をモニタリングするためのセンサーを備える。このセンサーは、ユーザーの状態を示すセンサー信号を発生させる。このセンサー信号を用いて、コントローラー入力を生成させる。コントローラーは、このコントローラー入力を用いて、送達システムを動作させるコマンドを生成させる。送達システムは、コントローラーからのコマンドによって指定された速度で、液体をユーザーに注入する。このセンサーシステムが、ユーザーの体内のグルコース濃度をモニタリングすると共に、上記の送達システムによってユーザーの体に注入される液体が、インスリンを含むのが好ましい。
【0204】
本発明は、局所投与による局所的脳幹求心性刺激(求心路遮断)療法によって、ヒトの病状又は状態を治療するのに有用である薬物が投与されるように、当該薬物を含むあらゆる埋め込み型製剤又は注射用製剤、例えば上記の技術を包含するように意図されている。したがって、例えば薬物の選択及び/又は量による本発明の変更形態は、本開示の明らかな変形形態であり、かつ、添付の請求項の範囲内であるとみなされる。
【実施例】
【0205】
以下では、下記の実施例を参照しながら、本発明について更に詳しく説明していく。ただし、下記の説明は実例に過ぎず、いかなる場合も、上で定めた本発明の一般原理に制限を加えるものとみなすべきでないことを理解されたい。
【実施例1】
【0206】
局所用製剤
Lipoderm(登録商標)を担体として用いて、水性ベースのアポモルフィンクリームを作製した。Lipoderm(登録商標)/LIPは、エトキシジグリコール、水(常水)、グリセリン、炭素数12〜15の安息香酸アルキル、ステアリン酸グリセリル、ジメチコーン、セテアリルアルコール、セテアリルグリコシド、ポリアクリルアミド、セチルアルコール、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、キサンタンガム、アロエベラ(Aloe Barbadensis)、酢酸トコフェロール(酢酸ビタミンE)、Prunus Amygadalus Amara(ビターアーモンド)、核油、Vitis Vinifera(ブドウ)種子抽出物、Triticum Vulgare(麦)芽油、レチニルパルミテート(ビタミンAパルミテート)、アスコルビルパルミテート(ビタミンCパルミテート)、Pro−Lipoマルチエマルジョンリポソーム系、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、フェノキシエタノール、及びヒドロキシメチルグリシンナトリウムという成分を有する市販の配合剤(ファーマシューティカル・コンパウンディング・センター・オブ・アメリカ(PCCA)製)である。その濃度は、Lipoderm1ml中にアポモルフィン1mgであった。Lipoderm中のアポモルフィンの濃度は、0.5ml中に1mgであった。Lipodermは、白みがかった無臭のクリームである。
【実施例2】
【0207】
実施例1の製剤を用いた薬物実験
パーキンソン病を罹患しており、機能が「オフ状態」の特定の段階のときに本著者の神経科診療所を受診した6人のヒトの患者で、局所用アポモルフィン製剤の効能を調べた。これらの各患者においては、実施例1に従って調製した配合クリームであって、配合剤0.5ml中にアポモルフィンを約1mg(ただしE.K.という1人の患者の場合では0.5mg)含有するクリームをある量、患者の後頸部の毛髪の生え際(BONATH)に塗布して、局所局部的神経作用(TRNA)療法を通じて、上記の薬物を送達させるようにした。
【0208】
いずれの患者も、パーキンソン病薬を定期的に投与されていたが、局所用アポモルフィンによる治療の前後に、UPDRS運動障害尺度(UPDRS Motor Scale)を用いてこれらの患者に対する評価を行った。全ての患者は、それぞれのパーキンソン病薬を4〜6時間投与されていなかったので、「オフ状態」にあった。UPDRSは、パーキンソン病の評価を行うための尺度で、観察者が評価する客観化されたものであり、研究で広く利用されている。この尺度は、27個の項目についてそれぞれ0〜4段階で評価し、0が正常で、4が機能不全の最も高い状態である。したがって、所与の患者では、UPDRS運動障害尺度が0であると正常で、より悪いシナリオは108(27×4)である。典型的なUPDSの様式を下記の表1に示す。





【0209】
実施例2の調査結果を下記の表2に示す。

【0210】
表2から分かるように、これらの6人の患者は、パーキンソン病からかなり有意な影響を受けていた。彼らはいずれも、アポモルフィン配合クリームを塗布してから15〜30分以内に有意な改善を見せた。処置後の平均UPDRSスコアは31で、平均して19ポイントの改善を示した。機能状態の改善持続時間は、2.5〜26時間であることが観察され、この時間は、患者が、局所用アポモルフィンのプラスの治療効果のおかげで、それまで通常使用していたパーキンソン病薬がなくても体を機能させることができると感じる期間である。この期間の経過後、いずれの患者も以前の投薬レジメン(1日に3〜4回のパーキンソン病薬の服用からなる)に戻した。患者自身及び彼らの介護者の話によれば、彼らの調査時点での療法は、次善の療法であると判断された。このことは、正式な臨床調査で明らかになったと共に、表2に示したように、UPDRSによって文書化した。示された唯一の有意な副作用は、患者E.K及びS.Kが感じた一過性の疲労とめまい感であった。
【0211】
臨床的改善の文書化に加えて、数人の患者において、局所用アポモルフィンによる処置の前後の状態をビデオ録画した。
【実施例3】
【0212】
追加的な臨床経験−パーキンソン病
本発明者の外来神経科診療所において、実施例2と同様の形の局所局部的神経作用(TRNA)療法の原理を用いて、60人を超えるPD患者を局所用アポモルフィンで処置した。この経験によって、「オフ状態」で患者を処置した時点の85%超で、局所用アポモルフィンがPDの臨床症状を測定可能な形で緩和することが示唆されている。この臨床症状としては、振せん、筋強剛、姿勢反射障害、及び自発性の低下などが挙げられる。患者と、処置を行った医師の双方とも、薬物を局所塗布してから15分以内に、臨床的に症状の改善を明らかに認識した。検知可能な副作用は認められなかった。臨床的有益性は平均で4時間継続し、一部の患者では10時間超継続したことが報告された。正式な長期的二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験が考えられている。
【実施例4】
【0213】
振せんにおけるTRNA療法
本発明者の外来神経科診療所において、実施例2と同様の形で、振せんを有する約20人の患者を局所用アポポルフィンで処置している。TRNAアポモルフィン療法では、パーキンソン病によるものではない振せんの改善も認められている。これは、良性本態性/家族性振せん、並びに、多発性硬化症、脳卒中、及び小脳変性症のようなCNS変性状態に随伴する振せんを有する患者からなる。
【0214】
本発明者は、良性本態性振せんを有する5人の患者を処置した。彼らは、その時点まで振せん用の薬物療法を完全に受けてきたか、又は、副作用が原因で薬物療法を途中で止めたかのいずれかであった。19歳から振せんを有する74歳の女性(ビデオに出ている)を本発明者が3回処置したときに、彼女に4回の薬物治療を行った。彼女は、毎回劇的な反応を示し(振せんが70%超改善した)、現在は、局所用アポモルフィン(1mg/0.5ml)を1日に2回常用している。他の全員の患者も、1mgのアポモルフィンに対して様々な程度の反応を示した(振せんが30〜80%低下した)。
【0215】
また、本発明者は、MS関連振せんを有する3人の患者も処置した。彼らもいずれも、50〜80%の低下という反応を示した。
【0216】
更に、本発明者は、脳卒中関連振せんを有する2人の患者も処置した。1人は、10年超にわたって振せんと協調不能による深刻な影響を受けていたが、彼女は劇的な反応を示した。この患者は、出願時点で、局所用アポモルフィン1mgを1日に1又は2回常用している。もう1人の患者も改善したが、調剤薬局から出される薬物の費用が高額で購入できなかった。
【0217】
本発明者は、CNS変性関連振せん(小脳変性症)を有する2人の患者を処置している。1人は46歳の女性で、もう1人は20歳の男性である(ビデオで記録した)。いずれの患者も、出願時点で反応を示したと共に、上記のクリームを1日に2回使用している。2人とも、他の薬物で挫折したか、又は他の薬物に耐えられなかった患者であった。
【0218】
6人の振せん患者のバランスは、原因が不明のものである。彼らのうちの何人かは、初期のパーキンソン病(PD)又は振せん優位型PDを示唆する要素を有していた。これらの患者では、反応はあったが、それほど劇的ではなく、30〜50%の低下であった。
【0219】
上記の患者全員における振せんの改善持続時間は平均4時間であった。
【実施例5】
【0220】
ジストニー及び斜頸
本発明者の外来神経科診療所において、頸部ジストニアと斜頸を有する数人の患者を観察したところ、実施例2と同様の形で局所用アポモルフィンを投与したことによる改善が見られた。これらの患者の何人かは、存在すると体の様相に影響を与える痙縮の改善も示した。優位な筋強剛とジストニーを有する患者では、筋張力の低下と共に、全体的な情動と自発性の改善が顕著に見られた。これは、ジストニーと関連する疼痛と障害が軽減されたことによるものである場合があるが、TRNAアポモルフィン療法と関連する他のメカニズムも考慮する必要がある。また、この現象は、優位な筋強剛と運動合併症を有するパーキンソン病(PD)患者でも観察された。上記の患者の何人かにおいて、認識能力と言語の改善も観察された。これらの観察結果については、更に詳細な調査が必要である。
【0221】
本発明者は、頸部ジストニアと斜頸を有する3人の患者を処置した。1人の患者には3回処置を行った。彼女は、症状を軽減する目的で、自らの手で1mgのアポモルフィンを1日に2回使用し続けている。この患者についてはビデオが存在する。他の2人の患者も、家族に気づかれる様々な程度の反応を示した。
【0222】
PDに、有意な筋強剛、言語障害、及び苦痛(肉体的なものと精神的なものの両方)が伴っていた場合に、反応が最も劇的であったようである。いずれの患者も、「鎮静及びリラックス」効果を報告した。この効果は、彼らの顔の表情で顕著であった。言語も有意に改善した。本発明者が、未完了の試験(処置内容以外の理由で中止した)において処置を行った15人の患者では、言語、えん下(ビデオによる)、及び認知が改善されたとして文書に記録した。これらの15人の患者では、有効薬剤とプラセボを5人に2回、残りの10人には1回投与した。
【実施例6】
【0223】
診療所におけるTRNA療法の他の適用法
更に、本発明者は、局所用クロニジン及びリバスティグミンを、現在市販されている経皮パッチの形態(クロニジンはCatapress TTS、リバスティグミンはExelon Patch)で用いて、後頸部領域(後頸部の毛髪の生え際、「BONATH」)に貼付して、TRNA送達法の原理を利用した。体の通常の貼付部位に上記の経皮パッチを用いることによる通常の治療法に対して臨床的に反応しない患者に、上記の経皮パッチ用いた。上記の経皮パッチをBONATHに貼付すると、上記の2つの薬物の治療作用の効率性と有効性が向上する。
【0224】
本発明者は、破裂性動脈瘤による頭蓋内出血をきたした52歳の女性患者に、0.1mgのCatapres TTS(登録商標)パッチをBONATHで投与した。彼女は、4回の投薬にもかかわらず、コントロール不良中枢性高血圧を有していたと共に、Catapresによる従来の貼付療法を挫折していた。Catapres TTSパッチをBONATHに貼付したところ、10〜15分後に、患者の血圧が240/180から180/110に低下した。この数値は依然として許容できないレベルであるが、それまでの長年にわたる状態よりも良い値である。この患者においては、明らかな頭痛が原因で、ある期間の経過後、Catapres TTSパッチのBONATHへの貼付を中止した。この患者は、心臓病専門医及び腎臓専門医では治療不可能と考えられる重度の高血圧を有したままである。
【0225】
Exelon(登録商標)パッチに関しては、本発明者は、出願時点で6人の患者に、このパッチを連日、4.6mg/24時間の用量でBONATHに投与している。これらの患者はこの処置に耐えているが、彼らの認知症に対する効果を判断するには時期尚早である。
【0226】
全身コリンエステラーゼ療法(Aricept(登録商標)による処置か、Exelon(登録商標)による処置か、又はReminyl(登録商標)による処置かは問わない)の問題の1つは、GIの副作用(特に悪心及び胃のむかつき)の問題である。TRNA療法には、この問題がないようである。しかし、パッチは、血流に吸収されるように設計されており、BONATHに投与したときに、体循環に入る場合もある。BONATH貼付専用に作製すると、パッチから投与される量(特に組織透過量)を更に少なくすることができ、送達持続時間も更に長くすることができる(例えば約3日〜約1週間)と仮定される。
【0227】
実施例2〜6に関する結論
外来診療所の設定における上記の予備的な非盲検調査によって、パーキンソン病(PD)及びその他の状態を管理する際のアポモルフィンTRNA療法の潜在的有用性が示唆されている。この形態のアポモルフィンは、良性本態性振せん、並びに、多発性硬化症(MS)、脳卒中、及び小脳変性症のようなCNS変性過程と関連する振せんにも用いており、同様の結果が得られている。現時点では、正式な盲検プラセボ対照試験は行っていないが、プラセボ(配合剤のみ)と有効薬物を用いた予備的な試験では、報告されている発見の妥当性が示唆されている。「プルーフ・オブ・コンセプト」を確立し、上記の予備的な結果を裏付けるためには、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー調査が必要と考えられる。
【0228】
上に示した実施例は、限定的なものとしては意図されていない。本発明の他の多くの変形形態は、当業者には明らかであろう。また、これらの変形形態は、添付の請求項の範囲内にあるものと意図されている。
【0229】
本明細書の全体にわたって示してきた本発明者の仮説は、考え得る説明を提供するためのものに過ぎず、いかなる場合も、制限を加えるものとしては意図されていない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物でヒトの病状又は状態を治療する方法であって、前記病状又は状態を治療する目的で、抗てんかん薬、抗不安薬、精神遮断薬、抗精神病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗パーキンソン病/パーキンソン症候群薬、性機能障害薬、ジストニー治療薬、けいれん状態治療薬、良性本態性振せん/家族性振せん治療薬、振せん治療薬、慢性脳症治療薬、先天性CNS変性状態/脳性麻痺治療薬、小脳変性症候群治療薬、神経障害性及び/又は神経原性疼痛治療薬、禁煙薬、食欲抑制薬、神経変性状態用の薬物、多発性硬化症治療薬、不眠症治療薬、疲労治療薬、めまい、悪心、及び/又はめまい感治療薬、書痙及び不穏下肢症候群治療薬、ADD/ADHD治療薬からからなる群から選択した薬物を治療有効量で、脳幹上方の皮膚区域に近接し、かつその皮膚区域の下又は上の後頸部の毛髪の生え際に投与して、前記患者に局部的神経作用療法を施すことを含む方法。
【請求項2】
前記薬物がドーパミンアゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドーパミンアゴニストが、アポモルフィン、プラミペキソール、ロピニロール、ブロモクリプチン、カベルゴリン、ペルゴリド、ロチゴチン、エンタカポン、トルカポン、セレギリン、及びこれらのうちのいずれかの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記薬物がアポモルフィンである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記病状又は状態が、パーキンソン病及び/又はそれに関連する症候群/疾患である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記薬物が、ドーパミンアゴニスト、COMT阻害薬、MAO−B阻害薬、及びこれらのうちのいずれかの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記状態が男性の勃起障害である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記薬物が、バルプロ酸、レベチラセタム、ラモトリジン、トピラメート、プレガバリン、ガバペンチン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール及びその他のバルビツレート、チアガビン、レチガビン、ラコサミド、ぺランパネル(Perampanel)、及びこれらのうちのいずれかの混合物からなる群から選択した抗てんかん薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薬物が抗不安薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記薬物が精神遮断薬及び/又は抗精神病薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薬物が鎮痛薬及び/又は抗炎症薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記薬物を神経病性及び/又は神経原性疼痛の治療で用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記薬物が禁煙用である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記薬物が多発性硬化症用である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記薬物が不眠症用である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記薬物が疲労用である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記薬物が、めまい、悪心、及び/又はめまい感用である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記薬物が書痙及び不穏下肢症候群用である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記薬物が食欲抑制薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記薬物がADD/ADHD用である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記薬物が三環系抗うつ薬(TCA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記薬物が四環系抗うつ薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記薬物が非定型抗精神病薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記薬物が食欲抑制薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記薬物が、製薬学的に許容可能な即時放出性局所用担体中に調合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記担体が水性ベースである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
製薬学的に許容可能な即時放出性水性ベース担体中にドーパミンアゴニストを調合することと、臨床効果が約30分未満に現れるように、十分な量をヒトの患者のBONATHに塗布することとを更に含む、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
アポモルフィンベースのドーパミンアゴニストを約0.25mg〜約4mg、又は、別のドーパミンアゴニストを治療的に同等な量含む単位用量として、前記治療有効量のドーパミンアゴニストを塗布する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記担体がゲル又はクリームである、請求項25又は26のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
透過促進剤、抗酸化剤、安定剤、及びこれらの混合物からなる群から選択した少なくとも1種の佐剤を前記担体に加えることを更に含む、請求項25、26、及び29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
24時間をかけて、ヒトの患者の皮膚を通じて約4mg〜約50mgのドーパミンアゴニストを送達することができる徐放性経皮送達システムに、前記ドーパミンアゴニストが組み込まれており、前記経皮送達システムが、ドーパミンアゴニストを前記量で、約1〜約7日の期間の間送達することができる、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記経皮送達システムが、経皮パッチ、経皮硬膏剤、経皮ディスク、及びイオントフォレシス型経皮デバイスからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
製薬学的に許容可能な即時放出性水性ベース担体中に前記薬物を調合することと、臨床効果が約15分未満に現れるように、十分な量をヒトの患者のBONATHに塗布することとを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
BONATHに埋め込むか又は注射することによって前記薬物を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
製薬学的に許容可能な注射用即時放出性担体中に入れて注射することによって前記薬物を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
ドーパミンアゴニストの持続的な効果をもたらす目的で、制御放出性担体中に入れて注射するか又は埋め込むことによって前記薬物を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
ゲル、マトリックス、微粒子、ペレット、インサート、コロイド状物質、及びこれらのうちのいずれかの混合物からなる群から選択した送達システムに前記薬物が組み込まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
BONATHの皮膚の下にデポーを形成させるように前記薬物を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記投与によって、アポモルフィンベースのドーパミンアゴニストを24時間当たり約4mg〜約50mg、又は、別のドーパミンアゴニストを治療的に同等な量与える、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記投与によって、脳幹上方の皮膚区域に近接し、かつその皮膚区域の下又は上の後頸部の毛髪の生え際に前記薬物を有効に投与して、少なくとも3日間治療効果をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記投与によって、前記部位で少なくとも約7日間、前記薬物を有効に放出させる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
製薬学的に許容可能な水性ベース担体中のドーパミンアゴニストを含む局所用製剤であって、前記ドーパミンアゴニストが少なくとも1単位用量の前記担体に組み込まれており、少なくとも1単位用量の前記担体に、アポモルフィンベースのドーパミンアゴニストが約4mg〜約50mg、又は別のドーパミンアゴニストが治療的に同等な量含まれている局所用製剤。
【請求項43】
ヒトの患者のBONATHに単位用量を塗布すると、約30分未満に臨床効果が現れる、請求項42に記載の局所用製剤。
【請求項44】
前記ドーパミンアゴニストがアポモルフィンである、請求項43に記載の局所用製剤。
【請求項45】
ドーパミンアゴニストを0.001〜約80重量%と、透過促進剤組成物を約0重量%〜約50.0重量%含み、前記組成物の残部に担体又はビヒクルが含まれる、請求項44に記載の局所用製剤。
【請求項46】
前記ドーパミンアゴニストが、担体1ml当たり薬物約1mgという濃度で含まれている、請求項45に記載の局所用製剤。
【請求項47】
ヒトの患者の脳幹上方の皮膚区域に近接し、かつその皮膚区域の下又は上の後頸部の毛髪の生え際に投与して、その患者に局部的神経作用療法を施すのに適した製剤中に、抗てんかん薬、抗不安薬、精神遮断薬、抗精神病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗パーキンソン病/パーキンソン症候群薬、性機能障害薬、ジストニー治療薬、けいれん状態治療薬、良性本態性振せん/家族性振せん治療薬、MS関連振せん治療薬、慢性脳症治療薬、先天性CNS変性状態/脳性麻痺治療薬、小脳変性症候群治療薬、神経障害性及び/又は神経原性疼痛治療薬、禁煙薬、食欲抑制薬、神経変性状態用の薬物、多発性硬化症治療薬、不眠症治療薬、疲労治療薬、めまい、悪心、及び/又はめまい感治療薬、書痙及び不穏下肢症候群治療薬、ADD/ADHD治療薬、並びに、これらのうちのいずれかの組み合わせから選択した薬物を含む局所用製剤。
【請求項48】
局所用クリーム、局所用軟膏、局所用ゲル、経皮デバイス、埋め込み型製剤、又は注射用製剤から選択した形態である、請求項47に記載の製剤。
【請求項49】
リザーバー又はマトリックス中にドーパミンアゴニストを治療有効量含む徐放性経皮送達システムであって、皮膚に塗布後、24時間をかけて、ヒトの患者の皮膚を通じてドーパミンアゴニストを約4mg〜約50mg送達することができ、ドーパミンアゴニストを上記の量で、約1〜約7日間の期間の間送達することができる経皮送達システム。
【請求項50】
徐放性担体と共に組み込まれたドーパミンアゴニストの注射用又は埋め込み型徐放性製剤であって、少なくとも約3日間、脳幹の三叉神経系にドーパミンアゴニストを1日当たり約4mg〜約50mg送達することができる徐放性製剤。
【請求項51】
ヒトの患者に局部的神経作用療法を施すための医薬の調製の際に、抗てんかん薬、抗不安薬、精神遮断薬、抗精神病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗パーキンソン病/パーキンソン症候群薬、性機能障害薬、ジストニー治療薬、けいれん状態治療薬、良性本態性振せん/家族性振せん治療薬、MS関連振せん治療薬、慢性脳症治療薬、先天性CNS変性状態/脳性麻痺治療薬、小脳変性症候群治療薬、神経障害性及び/又は神経原性疼痛治療薬、禁煙薬、食欲抑制薬、神経変性状態用の薬物、多発性硬化症治療薬、不眠症治療薬、疲労治療薬、めまい、悪心、及び/又はめまい感治療薬、書痙及び不穏下肢症候群治療薬、ADD/ADHD治療薬からなる群から選択した薬物を使用することであって、ヒトの患者の脳幹上方の皮膚区域に近接し、かつその皮膚区域の下又は上の後頸部の毛髪の生え際に前記薬物を投与して、前記患者に局部的神経作用療法を施す使用。


【公表番号】特表2011−526889(P2011−526889A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516329(P2011−516329)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/003859
【国際公開番号】WO2010/005507
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511000164)アフギン ファーマ,エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】AFGIN PHARMA,LLC
【Fターム(参考)】