説明

局所投与のためのスピロオキシインドール化合物の医薬組成物および治療剤としてのその使用

本発明は、哺乳動物に局所投与するための、スピロオキシインドール化合物を鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩として含む医薬組成物を対象とする。これらの医薬組成物は、ナトリウムチャネル媒介性疾患または状態の処置および/または予防に有用である。特に本発明は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と、ナトリウムチャネル遮断薬である治療有効量のスピロオキシインドール化合物とを含む医薬組成物を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と、治療有効量のナトリウムチャネル遮断薬、好ましくは神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネル拮抗薬であるスピロオキシインドール化合物とを含む、哺乳動物、好ましくはヒトに局所投与するための医薬組成物に関する。特に、本発明は、ナトリウムチャネル、好ましくは神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネルの阻害によって緩和される疼痛、好ましくはヘルペス後神経痛(PHN)、変形性関節症および持続性術後疼痛などの疾患または状態を処置するための医薬組成物に関する。しかし、疼痛に関係しない他の神経障害も同様に、本発明の一部として治療することができ、例えば、筋緊張症および多発性硬化症の症状を緩和することができる。
【背景技術】
【0002】
ナトリウムチャネル、特に神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネルの阻害(または「遮断」)によって緩和される疾患および状態には、急性および慢性疼痛、特に神経障害性および炎症性疼痛が含まれる。持続性(慢性)神経障害性疼痛は、ヘルペス後神経痛(PHN)、三叉神経痛、有痛性糖尿病性神経障害(PDN)、腰痛、術後疼痛、化学療法に関係する感染症およびHIV感染症を含む広範な臨床状態において生じる。慢性神経障害性疼痛の有病率の見積りは、地理的領域によって大きく変わり、米国の人口の約11%から欧州全土の成人の20%が、中程度から重症の慢性疼痛に罹患していると見積もられる(例えば、非特許文献1、および非特許文献2参照)。米国では、最も一般的な慢性神経障害性疼痛状態であるPHNおよびPDNは、それぞれ100万人および300万人に影響を及ぼしていると考えられる(例えば、非特許文献3参照)。
【0003】
三環系抗うつ薬、セロトニンノルアドレナリン再取込み阻害剤、抗けいれん剤(例えば、ガバペンチンおよびプレガバリン)、局部麻酔薬およびオピオイド(例えば、モルヒネ)を含む数々の薬理学的薬剤が、神経障害性疼痛の治療に利用可能である。しかし、これらの治療は、最善には及ばない有効性をもたらし、かつ/または長期の状況では許容されない副作用があり、患者の約50%でしか神経障害性疼痛の適切な軽減が得られなかったことが報告されている(例えば、非特許文献4参照)。神経障害性疼痛の軽減のために、三環系抗うつ薬、抗けいれん剤および局部麻酔薬を用いる多剤療法が必要とされることが多い。
【0004】
リドダーム(登録商標)パッチ(5%リドカイン)は、局部および局所麻酔医薬品のクラスに属し、PHNの治療に承認されている。しかし、リドカインは局部効果を有することができるが、全身で吸収され、適用する表面積が広すぎると、重度の全身毒性および死亡をもたらすおそれがあるため、局所投与する際には細心の注意を払って使用しなければならない。
【0005】
ボルタレン(登録商標)(ジクロフェナクナトリウムゲル)は、局所製剤の非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)である。ボルタレンは、変形性関節症の患者のための市販の治療選択肢である。NSAIDの局所使用に関する胃腸管の副作用の危険性は、NSAIDの経口使用よりも低いが、これらの重篤な副作用は、局所用ジクロフェナクについても懸念が残る。さらに現在、肝酵素の重大な増大が、局所ジクロフェナクを長期間投与されている一部の患者において報告されており、この患者集団では肝毒性の定期的なモニタリングが必要である(FDAウェブサイト、MedWatch、2009年;ボルタレン(Volteren)ゲル(ジクロフェナクナトリウム)1%局所ゲル;Safety Labeling Changes Approved by FDA Center for Drug Evaluation and Research−2009年9月参照)。
【0006】
神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネル(Na)は、疼痛シグナルの伝達をモジュレートすることが周知である。例えば、末梢神経系の感覚神経において主に発現し、神経傷害および炎症の両方によって上方制御されるNa1.7の機能喪失型突然変異は、疼痛を感じられないことを特徴とする、先天性の疼痛への無感覚として公知のヒトの状態を引き起こす(例えば、非特許文献5参照)。リドカインおよび他の局部麻酔薬は、主にNaを阻害することによって作用する。
【0007】
特許文献1は、スピロオキシインドール化合物を対象としており、これはナトリウムチャネル遮断薬として有用であると開示されている。これらの化合物は、中でも、ナトリウムチャネルを介するナトリウムイオン流を阻害する。したがって、該化合物はナトリウムチャネル遮断薬とみなされ、したがって、異常な電位依存性ナトリウムチャネルの生物学的活性の結果であるか、またはナトリウムチャネルの生物学的活性をモジュレートすることによって改善され得る、哺乳動物、好ましくはヒトの疾患および状態の治療に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第06/110917号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hall, G.C.ら、「Primary Care Incidence and Treatment of Four Neuropathic Pain Conditions: A Descriptive Study、2002−2005」、BMC Fam. Pract.(2008年);9巻、26号
【非特許文献2】Hardt, J.ら、「Prevalence of Chronic Pain in a Representative Sample in the United States」、Pain Medicine(2008年)、9巻、7号、803〜812頁
【非特許文献3】Dworkin, R.H.ら、「Advances in Neuropathic Pain Diagnosis, Mechanism, and Treatment Recommendations」、Arch. Neurol.(2003年)、60巻、1524〜1534頁
【非特許文献4】Moulin, D.E.、「The Clinical Management of Neuropathic Pain」、Pain Res. Manag.(2006年)、11巻(付録A)、30A〜36A頁
【非特許文献5】Goldberg, Y.P.ら、Clin. Genet.(2007年)、71巻、4号、311〜119頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、化合物の全身曝露を最小限に抑えた疼痛の治療のためのナトリウムチャネル遮断薬、好ましくは神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネル拮抗薬であり、皮膚への化合物の慢性適用が化粧品としてかつ薬学的に許容される(すなわち、非刺激性、非刺痛性かつ非感作性の)化合物を含む局所医薬組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と、治療有効量のスピロオキシインドール化合物または薬学的に許容されるその塩とを含む医薬組成物を対象とする。特に本発明は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と、ナトリウムチャネル遮断薬である治療有効量のスピロオキシインドール化合物とを含む医薬組成物を対象とする。かかる医薬組成物は、ナトリウムチャネルによって媒介される疾患または状態の治療および/または予防において有用であり、それを必要としている哺乳動物、好ましくはヒトに、スピロオキシインドール化合物の全身曝露を最小限に抑えて局所投与される。
【0012】
したがって一態様では、本発明は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と、次式を有する治療有効量のスピロオキシインドール化合物
【0013】
【化1】

を鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩として含む、哺乳動物に局所投与するための医薬組成物を対象とする。
【0014】
別の態様では、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトの疼痛を治療する方法であって、治療有効量の前述の本発明の医薬組成物を、それを必要としている前記哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、Na1.1、Na1.2、Na1.3、Na1.4、Na1.5、Na1.6、Na1.7、Na1.8またはNa1.9から選択される神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネルの1つまたは複数の活性化または活動亢進が関与している疾患、状態または障害を治療し、またはその重症度を低減する方法であって、治療有効量の前述の本発明の医薬組成物を、それを必要としている前記哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、様々なナトリウムチャネル媒介性疾患または状態、好ましくは神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネル媒介性疾患または状態を処置する方法であって、治療有効量の前述の本発明の医薬組成物を、それを必要としている前記哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供し、該疾患または状態は、それに限定されるものではないが、HIVに関連する疼痛、HIV治療誘発性の神経障害、三叉神経痛、ヘルペス後神経痛(PHN)、家族性肢端紅痛症、原発性肢端紅痛症、家族性直腸痛、急性痛(eudynia)、熱感受性、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、有痛性糖尿病性神経障害、末梢神経障害、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、腱炎、滑液包炎、筋骨格捻挫、腱鞘炎(tenosinovitis)、膝蓋軟骨軟化症、筋炎、筋緊張症(それに限定されるものではないが、SCN4Aに関係する筋緊張症を含む)、パラミオトニア、横紋筋融解、発作性ジストニア、筋無力症症候群、悪性高熱症、ナトリウムチャネル毒素に関係する疾病、がん疼痛、下肢静止不能症候群、線維筋痛および神経変性疾患に関連する疼痛、ならびに多発性硬化症を含む他の神経障害から選択される。
【0017】
別の態様では、本発明は、それに限定されるものではないが、脳卒中または神経外傷によって引き起こされる虚血状態での神経保護、神経変性疾患、ならびに多発性硬化症を含む他の神経障害から選択される、哺乳動物、好ましくはヒトの様々なナトリウムチャネル媒介性疾患または状態、好ましくは神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネル媒介性疾患または状態を処置する方法であって、治療有効量の前述の本発明の医薬組成物を、それを必要としている前記哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、それに限定されるものではないが、そう痒症(そう痒)、皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、湿疹、座瘡および炎症性皮膚障害から選択される、哺乳動物、好ましくはヒトの様々なナトリウムチャネル媒介性疾患または状態、好ましくは神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネル媒介性疾患または状態を処置する方法であって、治療有効量の本発明の前述の医薬組成物を、それを必要としている前記哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネル、好ましくは神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネルを介するイオン流を阻害することによって、哺乳動物、好ましくはヒトの様々なナトリウムチャネル媒介性疾患または状態、好ましくは神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネル媒介性疾患または状態を処置する方法であって、治療有効量の前述の本発明の医薬組成物を、それを必要としている前記哺乳動物に投与するステップを含む方法、を提供する。
【0020】
本発明のさらなる一態様は、本発明の医薬組成物の調製方法である。
【0021】
本発明のこれらの態様の具体的な実施形態を、以下により詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下の図は、本明細書の一部を形成し、本発明のいくつかの態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、これらの図の1つまたは複数を、本明細書に提示の具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによって、より良好に理解することができる。
【図1】図1は、実施例1のCFA誘発性の慢性炎症性疼痛研究に記載の各投与量群に関するベースラインからの平均変化(CFB)(%)を示すグラフである。データは、ベースライン値からの平均±SD変化として表される。
【図2】図2は、実施例2の神経障害性疼痛モデル研究に記載の各治療群に関するベースラインからの変化(CFB)(%)として表される平均の肢引込み(paw withdrawal)閾値を示すグラフである。データは、平均±SEMとしてプロットされる。
【図3】図3は、実施例4における糖尿病性神経障害研究において治療した足に関する、投与の30分後のベースラインからのvon Freyによる変化(CFB)を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例5における神経障害性疼痛研究のCCIモデルに記載の各投与群に関するベースラインからの平均変化(CFB)(%)を示すグラフである。データは、ベースライン値からの平均±SD変化として表される。
【図5】図5は、実施例5におけるCCIモデル研究に記載の各治療群に関する化合物Aの平均血漿濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書に別段定義されない限り、以下の用語および句は、以下の意味を有するものとする。
【0024】
「スピロオキシインドール化合物」は、次式を有する化合物
【0025】
【化2】

または薬学的に許容されるその塩を指す。この化合物は、参照によって本明細書に全体が組み込まれるPCT特許出願WO06/110917に開示されている。スピロオキシインドール化合物は、単一の鏡像異性体、ラセミ化合物または鏡像異性体の非ラセミ混合物として存在することができる。スピロオキシインドール化合物の鏡像異性体の1つは、次式を有し、
【0026】
【化3】

本明細書では、(S)−1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オンと命名される。またこの鏡像異性体は、本明細書では「化合物A」と識別される。本明細書における識別語「化合物A」の使用は、遊離塩基または薬学的に許容される塩としての鏡像異性体を含むものとする。
【0027】
用語「約」は、本明細書で数値「X」に前置される場合、XマイナスXの10%からXプラスXの10%に及ぶ区間、好ましくはXマイナスXの5%からXプラスXの5%に及ぶ区間を指す。
【0028】
表現「%w/w」は、考慮される組成物の総重量と比較される重量百分率を指す。
【0029】
表現「%w/v」は、所与の体積の溶媒中の溶質の重量を指す。例えば、PEG50%w/vは、溶媒100mL中にPEGが50グラムである。
【0030】
「クラスレート」は、錯体を固体形態で取り扱うことができ、含まれる構成成分(または「ゲスト」分子)が、溶媒の作用または溶融によってその後放出されるように、気体、液体または化合物を包接錯体として固定する物質を指す。用語「クラスレート」は、句「包接分子」または句「包接錯体」と交換可能に使用することができる。本発明における使用を企図されるクラスレートは、シクロデキストリンから調製される。シクロデキストリンは、様々な分子とクラスレート(すなわち包接化合物)を形成する能力を有することが広く公知である。例えば、Inclusion Compounds、J.L. Atwood、J.E.D. DaviesおよびD.D. MacNicol編、London、Orlando、Academic Press、1984年;Goldberg, I.、「The Significance of Molecular Type、Shape and Complementarity in Clathrate Inclusion」、Topics in Current Chemistry(1988年)、149巻、2〜44頁;Weber, E.ら、「Functional Group Assisted Clathrate Formation−Scissor−Like and Roof−Shaped Host Molecules」、Topics in Current Chemistry(1988年)、149巻、45〜135頁;ならびにMacNicol, D.D.ら、「Clathrates and Molecular Inclusion Phenomena」、Chemical Society Reviews(1978年)、7巻、1号、65〜87頁参照。シクロデキストリンクラスレートへの変換は、特定の化合物の安定性および溶解性を増大し、それによって医薬としてのそれらの使用を容易にすることが知られている。例えば、Saenger, W.、「Cyclodextrin Inclusion Compounds in Research and Industry」、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.(1980年)、19巻、344〜362頁、米国特許第4,886,788号(Schering AG)、米国特許第6,355,627号(Takasago)、米国特許第6,288,119号(小野薬品)、米国特許第6,14,969号(小野薬品)、米国特許第6,235,780号(小野薬品)、米国特許第6,262,293号(小野薬品)、米国特許第6,225,347号(小野薬品)および米国特許第4,935,446号(小野薬品)参照。
【0031】
「哺乳動物」には、ヒト、ならびに実験動物および家畜ペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマおよびウサギ)などの飼育動物と、野生生物などの非飼育動物の両方が含まれる。
【0032】
「薬学的に許容される賦形剤」または「賦形剤」には、それに限定されるものではないが、局所投与のための薬物剤形を生成するために本発明のスピロオキシインドール化合物と組み合わされる任意の不活性な材料が含まれる。用語「薬学的に許容される賦形剤」は、例えば、それに限定されるものではないが、米国食品医薬局、欧州医薬品庁もしくはカナダ保健省などの規制当局によって、薬理学的に活性な成分の局所投与のための製剤における使用が許可されるものとして承認されており、かつ/または一般に安全と認められた材料(GRAS材料)とみなされており、かつ/または米国食品医薬局により刊行の不活性成分ガイドに列挙されている、それに限定されるものではないが、任意の溶媒、浸透促進剤(penetration enhancing agent)、抗酸化剤、硬化剤(stiffening agent)(すなわち増粘剤)、軟膏基剤、保護剤、吸着剤、粘滑薬、皮膚軟化剤、保存剤、保湿剤、緩衝液、アジュバント、生体利用能促進剤、担体、流動促進剤、甘味剤、賦形剤、色素/着色剤、風味促進剤、可溶化剤(界面活性剤を含む)、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤および等張剤を含むものとする。「薬学的に許容される賦形剤」は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Fox、第21版、2005年に列挙されている許容される賦形剤を含むこともできる。例示的な薬学的に許容される賦形剤には、それに限定されるものではないが、以下が含まれる。
アスコルビン酸およびエステル、
ベンジルアルコール、
安息香酸ベンジル、
ブチル化ヒドロキシトルエン(「BHT」)、
ブチル化ヒドロキシアニソール(「BHA」)、
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、
セチルアルコール、
キレート剤(例えば、EDTAおよびクエン酸)、
コレステロール、
架橋アクリル酸系ポリマー(例えば、Carbopol(登録商標))、
デシルメチルスルホキシド、
セバシン酸ジエチル、
ジメチルアミン(「DMA」)、
ジメチコン、
ジメチルスルホキシド、
ジエチレングリコールモノエーテル(例えば、Transcutol(登録商標)P)、
アジピン酸ジイソプロピル(例えば、Ceraphyl(登録商標)230)、
エタノール、
フラボノイド(flavinoid)、
グルタチオン、
グリセリン、
オレイン酸グリセロール/プロピレングリコール(例えば、Arlacel 186)、
モノオレイン酸グリセリル、
カプリル酸/カプリン酸グリセリルおよびカプリル酸/カプリン酸PEG−8(ポリエチレングリコール)複合体、カプリロカプロイル(carpylocaproyl)マクロゴールグリセリド(例えば、Labrasol(登録商標))、
モノカプリル酸グリセリル(例えば、Capmul(登録商標)MCM C8)、
モノリノール酸グリセリル(例えば、Maisine(商標)35−1)、
モノオレイン酸グリセリル(例えば、Peceol(商標))、
モノステアリン酸グリセリル、
ヘキシレングリコール、
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)、
イソプロピルアルコール、
ミリスチン酸イソプロピル、
ラウロカプラム(例えば、Azone(登録商標))、
ラウロイルマクロゴール−32グリセリド(例えば、Gelucire(登録商標)44/14)、
ヒドロキシステアリン酸マクロゴール−15(例えば、Solutol(登録商標)HS15)、
中鎖トリグリセリド(例えば、Miglyol(登録商標)810、Miglyol(登録商標)840またはMiglyol(登録商標)812)、
ラウリン酸メチル、
N−メチル−2−ピロリジン(例えば、Pharmasolve(登録商標))、
鉱油、
モノジグリセリド(例えば、Capmul(登録商標)MCM)、
オクチルドデカノール、
オレイン酸、
オレイルアルコール、
ピーナッツ油、
1,2−ペンタンジオール、
ポリソルベート(例えば、Tween(登録商標)80)、
ポリエチレングリコール(例えば、PEG−8、PEG400、PEG1000、PEG3350、PEG6000またはLutrol(登録商標)E400)、
ポリオキシル35ヒマシ油(例えば、Cremophor(登録商標)EL)、
ポリオキシル40水素化ヒマシ油(例えば、Cremophor(登録商標)RH40)、
プロピレングリコール、
プロピレングリコールジアセテート、
プロピレングリコールモノカプリレート(例えば、Capmul PG−8、Capryol 90)、
プロピレングリコールモノラウレート(例えば、Capmul PG−12)、
プロピレングリコールモノオレエート、
2−ピロリドン、
大豆油、
ステアリルアルコール、
スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(例えば、Capitsol(登録商標))、
トコフェロール(例えば、ビタミンE酢酸エステル)、
α−トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)、
水、および
白色ワセリン。
【0033】
追加の薬学的に許容される賦形剤を、本明細書に開示する。
【0034】
「溶媒」は、溶液を形成するために本発明のスピロオキシインドール化合物などの他の物質を容易に溶解する物質を指す。本発明の目的に適した溶媒には、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG100およびPEG3350)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(例えば、Transcutol(登録商標))、Tween 80、アルコール(例えば、オレイルアルコールおよびステアリルアルコール)、Labrasol(登録商標)、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピルおよびアジピン酸ジイソプロピル(例えば、Ceraphyl(登録商標)230))、セバシン酸ジエチル、プロピレングリコールモノカプリレート(例えば、Capmul(登録商標)PG−8)、プロピレングリコールラウレート(例えば、Capmul(登録商標)PG−12)、モノジグリセリド(例えば、Capmul(登録商標)MCM)、モノカプリル酸グリセリル(例えば、Capmul(登録商標)MCM C8)、中鎖トリグリセリド、ヘキシレングリコール、モノオレイン酸グリセリル(例えば、Peceol(商標))、1,2−ペンタンジオール、オクチルドデカノール、モノリノール酸グリセリル(例えば、Maisine(商標)35−1)、イソプロピルアルコール、オレイン酸グリセロール/プロピレングリコール(例えば、Arlacel(登録商標)186)、鉱油、水およびグリセリンが含まれる。
【0035】
「浸透促進剤」は、活性成分が哺乳動物、好ましくはヒトの皮膚または粘膜を介して浸透する速度を増大するために、薬理学的に活性な成分、好ましくは本発明のスピロオキシインドール化合物に対する皮膚または粘膜の透過性を増大する物質を指す。本発明の目的に適した浸透促進剤には、それに限定されるものではないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシド、ラウロカプラム(例えば、Azone(登録商標))、ピロリドン(例えば、2−ピロリドンおよびN−メチル−2−ピロリジン(Pharmasolve(登録商標)))、界面活性剤、アルコール(例えば、オレイルアルコール)、オレイン酸、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(例えば、Transcutol(登録商標))および脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、モノオレイン酸グリセリルおよびプロピレングリコールモノオレエート)が含まれる。本発明の医薬組成物では、1種の浸透促進剤を独立に使用することができ、または2種類以上の浸透促進剤を使用することができる。
【0036】
「軟膏基剤」は、薬理学的に活性な成分、好ましくは本発明のスピロオキシインドール化合物を、哺乳動物、好ましくはヒトの治療領域に送達するために担体として機能し、皮膚への浸透を促進する物質を指す。本発明の目的に適した「軟膏基剤」には、それに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400およびPEG3350)が含まれる。本発明の医薬組成物では、1種の軟膏基剤を独立に使用することができ、または2種類以上の軟膏基剤を使用することができる。
【0037】
「硬化剤」は、本発明の医薬組成物の粘度および/または物理的安定性を増大する物質を指す。本発明の目的に適した「硬化剤」には、それに限定されるものではないが、ステアリルアルコール、カーボポール、ジメチコンおよびポリマーが含まれる。本発明の医薬組成物では、1種の硬化剤を独立に使用することができ、または2種類以上の硬化剤を使用することができる。
【0038】
「抗酸化剤」は、別の分子の酸化を予防することができる物質を指す。本発明の目的に適した「抗酸化剤」には、それに限定されるものではないが、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール(例えば、酢酸ビタミンE)、フラボノイド、グルタチオン、アスコルビン酸およびそのエステル、DMSOならびにキレート剤(例えば、EDTAおよびクエン酸)が含まれる。
【0039】
「薬学的に許容される塩」には、酸付加塩および塩基付加塩の両方が含まれる。
【0040】
「薬学的に許容される酸付加塩」は、生物学的にもそれ以外でも望ましく、それに限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、およびそれに限定されるものではないが、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、ショウノウ−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2−オキソ−グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などの有機酸を用いて形成される、遊離塩基の生物学的有効性および特性を保持している塩を指す。
【0041】
「薬学的に許容される塩基付加塩」は、生物学的にもそれ以外でも望ましい、遊離酸の生物学的有効性および特性を保持している塩を指す。これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に付加することによって調製される。無機塩基に由来する塩には、それに限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩等が含まれる。好ましい無機塩は、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩である。有機塩基に由来する塩には、それに限定されるものではないが、第1級、第2級および第3級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、ならびにアンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの塩基性イオン交換樹脂の塩が含まれる。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。
【0042】
「医薬組成物」は、本発明のスピロオキシインドール化合物と、哺乳動物、例えばヒトへのスピロオキシインドール化合物の局所投与のための当技術分野で一般に許容されている媒体との製剤を指す。かかる媒体には、すべての薬学的に許容される賦形剤が含まれる。本開示の目的では、句「医薬組成物」は、句「医薬製剤」と交換可能である。
【0043】
「ナトリウムチャネル媒介性疾患または状態」は、ナトリウムチャネルをモジュレートすると改善または緩和される疾患または状態を指し、これには、それに限定されるものではないが、疼痛またはヘルペス後神経痛が含まれる。ナトリウムチャネル媒介性疾患または状態のさらなる例を、以下に開示する。
【0044】
「治療有効量」は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与される場合に、哺乳動物、好ましくはヒトの指定された疾患または状態の以下に定義の治療を行うのに十分な、本発明のスピロオキシインドール化合物または本発明の医薬組成物の量を指す。「治療有効量」を構成するスピロオキシインドール化合物または医薬組成物の量は、スピロオキシインドール化合物、医薬組成物、疾患または状態の性質およびその重症度、治療を受ける哺乳動物の健康に影響を及ぼす他の条件(例えば、年齢、体重、全体的な健康状態)、ならびに投与方式、ならびに使用される医薬組成物の構成要素の効力、生体利用能およびインビボ半減期に応じて変わることになるが、当業者が各自の知識および本開示に鑑みて、日常的に決定することができる。
【0045】
「治療する」または「治療」は、本明細書で使用される場合、対象となる疾患または状態を有する哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、対象となる疾患または状態を処置することを包含し、これには、
(i)特に哺乳動物がある状態を有しているという診断を未だ受けていないが、その状態に罹患しやすい場合に、かかる哺乳動物において疾患もしくは状態が生じるのを予防すること
(ii)疾患もしくは状態を阻害する、すなわちその発症を抑止すること、
(iii)疾患もしくは状態を軽減する、すなわち疾患もしくは状態を退行させること、または
(iv)疾患または状態から生じる症状を軽減することが含まれる。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「疾患」および「状態」は、交換可能に使用することができ、または特定の病弊もしくは状態が、公知の原因物質を有しておらず(したがって病因が未だ明らかになっていない)、したがって疾患としては未だ認識されていないが、多少具体的な一連の症状が臨床医によって識別されている望ましくない状態または症候群としてのみ認識されているという点で異なっていてもよい。
【0047】
「鎮痛」は、普通は有痛性であるはずの刺激への応答において、疼痛がないことを指す。
【0048】
「異痛」は、圧力または軽い感触などの普通は非侵害性の感覚が、極度に有痛性であると認知される状態を指す。
【0049】
本発明の実施形態
先の課題を解決するための手段に記載の本発明の様々な態様の中でも、いくつかの実施形態が好ましい。
【0050】
先の課題を解決するための手段に記載の本発明の医薬組成物の中でも、一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、先の定義に記載の薬学的に許容される賦形剤の例示的な一覧から選択される1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0051】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、1つまたは複数の溶媒、任意選択により1つまたは複数の浸透促進剤、任意選択により1つまたは複数の硬化剤、任意選択により1つまたは複数の軟膏基剤、および任意選択により1つまたは複数の抗酸化剤から選択される、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0052】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、1つまたは複数の溶媒、任意選択により1つまたは複数の浸透促進剤、任意選択により1つまたは複数の硬化剤、任意選択により1つまたは複数の軟膏基剤、および任意選択により1つまたは複数の抗酸化剤から選択される、2つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0053】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、1つまたは複数の溶媒、1つまたは複数の浸透促進剤、1つまたは複数の硬化剤、1つまたは複数の軟膏基剤、および任意選択により1つまたは複数の抗酸化剤から選択される、2つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0054】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、薬学的に許容される賦形剤の1つが、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリソルベート、アルコール、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、脂肪酸エステル、セバシン酸ジエチル、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールラウレート、モノジグリセリド、モノカプリル酸グリセリル、中鎖トリグリセリド、ヘキシレングリコール、モノオレイン酸グリセリル、1,2−ペンタンジオール、オクチルドデカノール、モノリノール酸グリセリル、オレイン酸グリセロール/プロピレングリコール、鉱油、水またはグリセリンから選択される溶媒である、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0055】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、薬学的に許容される賦形剤の1つが、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ラウロカプラム、ピロリドン、界面活性剤、アルコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルまたは脂肪酸エステルから選択される浸透促進剤である、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0056】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、薬学的に許容される賦形剤の1つが、ステアリルアルコール、カーボポール、ジメチコンまたはポリマーから選択される硬化剤である、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0057】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、薬学的に許容される賦形剤の1つが、ポリエチレングリコールから選択される軟膏基剤である、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0058】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、薬学的に許容される賦形剤の1つが、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、フラボノイド、グルタチオン、アスコルビン酸およびエステル、ジメチルスルホキシドまたはキレート剤から選択される抗酸化剤である、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0059】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、それぞれ約0.01%w/w〜約99%w/wの濃度で存在する1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0060】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、第1の薬学的に許容される賦形剤が、約30%w/w〜約70%w/wの濃度で存在する溶媒であり、第2の薬学的に許容される賦形剤が、約2%w/w〜約25%w/wの濃度で存在する浸透促進剤であり、第3の薬学的に許容される賦形剤が、約1%w/w〜約10%w/wの濃度で存在する浸透促進剤であり、第4の薬学的に許容される賦形剤が、約1%w/w〜約25%w/wの濃度で存在する浸透促進剤であり、第5の薬学的に許容される賦形剤が、約0.1%w/w〜約10%w/wの濃度で存在する硬化剤であり、第6の薬学的に許容される賦形剤(exicipient)が、約0.01%w/w〜約2%w/wの濃度で存在する抗酸化剤であり、第7の薬学的に許容される賦形剤が、約10%w/w〜約50%w/wの濃度で存在する軟膏基剤である、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0061】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、第1の薬学的に許容される賦形剤が、約45%w/w〜約55%w/wの濃度で存在する溶媒であり、第2の薬学的に許容される賦形剤が、約5%w/w〜約15%w/wの濃度で存在する浸透促進剤であり、第3の薬学的に許容される賦形剤が、約2.5%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在する浸透促進剤であり、第4の薬学的に許容される賦形剤が、約2.5%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在する浸透促進剤であり、第5の薬学的に許容される賦形剤が、約0.1%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在する硬化剤であり、第6の薬学的に許容される賦形剤が、約0.05%w/w/〜約1%w/wの濃度で存在する抗酸化剤であり、第7の薬学的に許容される賦形剤が、約15%w/w〜約30%w/wの濃度で存在する軟膏基剤である、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0062】
別の一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物と、PEG400またはPEG3350から選択される溶媒;Transcutol(登録商標)P、オレイルアルコールまたはミリスチン酸イソプロピルから選択される1つまたは複数の浸透促進剤;ステアリルアルコールから選択される硬化剤;PEG400またはPEG3350から選択される軟膏基剤;ならびにブチル化ヒドロキシトルエンから選択される抗酸化剤から選択される1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0063】
この実施形態の中でも、さらなる一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物を含み、PEG400が、約30%w/w〜約70%w/wの濃度で存在し、Transcutol(登録商標)Pが、約2%w/w〜約25%w/wの濃度で存在し、オレイルアルコールが、約1%w/w〜約10%w/wの濃度で存在し、ミリスチン酸イソプロピルが、約1%w/w〜約25%w/wの濃度で存在し、ステアリルアルコールが、約0.1%w/w〜約10%w/wの濃度で存在し、BHTが、約0.01%w/w〜約2%w/wの濃度で存在し、PEG3350が、約10%w/w〜約50%w/wの濃度で存在する医薬組成物である。
【0064】
この実施形態の中でも、さらなる一実施形態は、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としての治療有効量のスピロオキシインドール化合物を含み、PEG400が、約45%w/w〜約55%w/wの濃度で存在し、Transcutol(登録商標)Pが、約5%w/w〜約15%w/wの濃度で存在し、オレイルアルコールが、約2.5%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在し、イソプロピルが、約2.5%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在するミリステートであり、ステアリルアルコールが、約0.1%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在し、BHTが、約0.05%w/w〜約1%w/wの濃度で存在し、PEG3350が、約15%w/w〜約30%w/wの濃度で存在する医薬組成物である。
【0065】
先の実施形態のすべての中でも、さらなる一実施形態は、スピロオキシインドール化合物が、約0.1%w/w〜約10%w/wの濃度で存在する実施形態である。
【0066】
この実施形態の中でも、さらなる一実施形態は、スピロオキシインドール化合物が、約2%w/w〜約8%w/wの濃度で存在する実施形態である。
【0067】
先の実施形態のすべての中でも、さらなる一実施形態は、医薬組成物が、医薬組成物の2.0%w/wの濃度のスピロオキシインドール化合物;52.9%w/wの濃度のPEG400;10%w/wの濃度のTranscutol(登録商標)P;5%w/wの濃度のオレイルアルコール;5%w/wの濃度のミリスチン酸イソプロピル;5%w/wの濃度のステアリルアルコール;0.1%w/wの濃度のブチル化ヒドロキシトルエン;および20%w/wの濃度のPEG3350を含む実施形態である。
【0068】
先の実施形態のすべての中でも、別のさらなる一実施形態は、医薬組成物が、医薬組成物の4%w/wの濃度のスピロオキシインドール化合物;50.9%w/wの濃度のPEG400;10%w/wの濃度のTranscutol(登録商標)P;5%w/wの濃度のオレイルアルコール;5%w/wの濃度のミリスチン酸イソプロピル;5%w/wの濃度のステアリルアルコール;0.1%w/wの濃度のブチル化ヒドロキシトルエン;および20%w/wの濃度のPEG3350を含む実施形態である。
【0069】
先の実施形態のすべての中でも、別のさらなる一実施形態は、医薬組成物が、医薬組成物の4%w/wの濃度のスピロオキシインドール化合物;50.9%w/wの濃度のPEG400;5%w/wの濃度のTranscutol(登録商標)P;5%w/wの濃度のオレイルアルコール;5%w/wの濃度のミリスチン酸イソプロピル;10%w/wの濃度のステアリルアルコール;0.1%w/wの濃度のブチル化ヒドロキシトルエン;および20%w/wの濃度のPEG3350を含む実施形態である。
【0070】
先の実施形態のすべての中でも、別のさらなる一実施形態は、医薬組成物が、医薬組成物の8%w/wの濃度のスピロオキシインドール化合物;46.9%w/wの濃度のPEG400;10%w/wの濃度のTranscutol(登録商標)P;5%w/wの濃度のオレイルアルコール;5%w/wの濃度のミリスチン酸イソプロピル;5%w/wの濃度のステアリルアルコール;0.1%w/wの濃度のブチル化ヒドロキシトルエン;および20%w/wの濃度のPEG3350を含む実施形態である。
【0071】
先の実施形態のすべての中でも、さらなる一実施形態は、スピロオキシインドール化合物が次式の化合物
【0072】
【化4】

または薬学的に許容されるその塩である実施形態である。
【0073】
先の課題を解決するための手段に記載の哺乳動物のナトリウムチャネル媒介性疾患または状態を処置、予防または改善する方法の中でも、一実施形態は、本発明の医薬組成物の先の実施形態のいずれかの治療有効量の医薬組成物を、それを必要としている哺乳動物、好ましくはヒトに局所投与するステップを含む。
【0074】
この実施形態の中でも、さらなる一実施形態は、前記疾患または状態が、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、内臓痛、ヘルペス後神経痛、がん疼痛、化学療法による疼痛、外傷痛、外科的疼痛、術後疼痛、そう痒症、変形性関節症、三叉神経痛、家族性肢端紅痛症、原発性肢端紅痛症、家族性直腸痛、出産疼痛、陣痛、神経因性膀胱、潰瘍性大腸炎、慢性疼痛、持続性疼痛、末梢媒介性疼痛、中枢媒介性疼痛、慢性頭痛、片頭痛、副鼻腔炎性頭痛(sinus headache)、緊張性頭痛、幻肢痛、末梢神経傷害およびその組合せからなる群より選択される実施形態である。
【0075】
本発明の医薬組成物および本発明の医薬組成物を使用する方法の具体的な実施形態を、以下により詳細に記載する。
【0076】
本発明の医薬組成物の有用性
本発明は、治療有効量の医薬組成物を、それを必要としている哺乳動物、好ましくはヒトに局所投与することによる、哺乳動物における、例えばヘルペス後神経痛、変形性関節症および持続性術後疼痛などのナトリウムチャネル媒介性疾患または状態、好ましくは疼痛に関係する疾患または状態の治療に使用するための、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と、治療有効量のスピロオキシインドール化合物または薬学的に許容されるその塩とを含む医薬組成物を対象とする。
【0077】
本発明の特定の対象となるナトリウムチャネル媒介性疾患または状態は、ナトリウムチャネルをモジュレートし、好ましくは阻害(または遮断)することによって改善または緩和される疾患または状態である。好ましくは、本発明のナトリウムチャネル媒介性疾患または状態は、それに限定されるものではないが、疼痛またはヘルペス後神経痛を含む、神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネル(Na)をモジュレートし、好ましくは阻害(または遮断)することによって改善または緩和される疾患または状態である。
【0078】
したがって、本発明は、哺乳動物に治療有効量の本発明の医薬組成物を投与することによって、それに限定されるものではないが、疼痛、ヘルペス後神経痛(PHN)、術後疼痛、そう痒症、HIVに関連する疼痛、HIV治療誘発性の神経障害、三叉神経痛、家族性肢端紅痛症、原発性肢端紅痛症、家族性直腸痛、急性痛、熱感受性、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、有痛性糖尿病性神経障害、末梢神経障害、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、腱炎、滑液包炎、筋骨格捻挫、腱鞘炎、膝蓋軟骨軟化症、筋炎、筋緊張症(それに限定されるものではないが、SCN4Aに関係する筋緊張症を含む)、パラミオトニア、横紋筋融解、発作性ジストニア、筋無力症症候群、悪性高熱症、ナトリウムチャネル毒素に関係する疾病、がん疼痛、下肢静止不能症候群、線維筋痛および神経変性疾患に関連する疼痛、ならびに多発性硬化症を含む他の神経障害から選択される、哺乳動物、好ましくはヒトの様々なナトリウムチャネル媒介性疾患または状態を処置する方法を提供する。
【0079】
本発明の目的では、別段具体的に定義されない限り、用語「疼痛」は、本明細書ではすべての分類の疼痛を指し、それに限定されるものではないが、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、侵害受容性疼痛、特発性疼痛、神経痛性疼痛、口腔顔面痛、灼熱痛、体性痛、内臓痛、筋筋膜(myofacial)痛、歯痛、がん疼痛、化学療法による疼痛、外傷痛、外科的疼痛、術後疼痛、出産疼痛、陣痛、反射性交感神経性ジストロフィー、腕神経叢裂離、急性疼痛(例えば、筋骨格の疼痛および術後疼痛)、慢性疼痛、持続性疼痛、末梢媒介性疼痛、中枢媒介性疼痛、頭部痛に関連する状態、幻肢痛、末梢神経傷害、脳卒中後の疼痛、視床病変、神経根障害、HIV疼痛、ヘルペス後痛およびその組合せを含むと認識される。
【0080】
一般にそう痒として公知であり、皮膚そう痒症(pruritus)としても公知のそう痒症は、一般的な皮膚科学的な状態である。そう痒症の正確な原因は複雑であり、十分に理解されていないが、そのいくつかがやはり疼痛応答を媒介する感覚神経によって媒介されることが長い間認知されている。特に、ナトリウムチャネルは、皮膚沿いのそう痒シグナルを神経軸索に沿って伝達または伝播する可能性が高いと考えられている。そう痒インパルスの伝達によって不快な感覚がもたらされ、それにより引っ掻き要求またはその反射が誘起される。
【0081】
神経生物学レベルでは、特異的なメディエーター、関係する神経経路、ならびにそう痒および疼痛の中枢過程の複雑性が共有されていると考えられており、最近のデータでは、疼痛とそう痒に関係する末梢性メディエーターおよび/または受容体の間に広範な重複があることが示唆されている(Ikomaら、Nature Reviews Neuroscience、7巻:535〜547頁、2006年)。驚くべきことに、疼痛およびそう痒は、末梢神経系および中枢神経系において類似の神経細胞感作機構を有するが、興味深い差異も示す。
【0082】
例えば、引っ掻きによる穏やかな有痛性刺激は、そう痒感覚を無効にするのに有効である。それとは対照的に、オピオイドなどの鎮痛剤は、重症のそう痒症を発生させるおそれがある。疼痛とそう痒の拮抗的相互作用は、そう痒症療法で活用することができ、現在の調査は、将来的な鎮痛剤および抗そう痒症療法の共通の標的を同定することに集中している。化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩は、1mg/Kg〜100mg/Kgの範囲の経口用量で、いくつかの動物モデルにおいて鎮痛効果を有することが示されている。したがって、鏡像異性体または薬学的に許容されるその塩としての化合物Aは、そう痒症の治療にも有用となり得る。
【0083】
そう痒症の種類には、それに限定されるものではないが、
a)乾癬性そう痒症、血液透析に起因するそう痒、および皮膚障害(例えば、皮膚炎)、全身障害、神経障害、心因性因子またはその混合によって引き起こされるそう痒、
b)アレルギー反応、昆虫咬傷、過敏症(例えば、皮膚乾燥、湿疹、乾癬)、座瘡、炎症性状態または傷害によって引き起こされるそう痒、
c)例えば、抗生物質、抗ウイルス剤および抗ヒスタミン剤などの別の治療剤の投与による皮膚刺激または炎症作用、ならびに
d)ヘルペス後神経痛に関連するそう痒などの、ウイルス感染症によって引き起こされるそう痒が含まれる。
【0084】
ナトリウムチャネル遮断薬としての本発明のスピロオキシインドール化合物または薬学的に許容されるその塩の一般的な有用性は、PCT特許出願WO06/110917に記載されている。特に、ナトリウムチャネルイオン流を媒介し、特に阻害する本発明の医薬組成物において使用されるスピロオキシインドール化合物または薬学的に許容されるその塩の一般的な有用性は、PCT特許出願WO06/110917に記載のアッセイを使用して決定されている。ナトリウム−チャネル媒介性の疾患または状態を処置する本発明の医薬組成物において使用される化合物Aまたは薬学的に許容される塩の一般的な有用性は、業界標準の動物モデル、ならびにかかる疾患および状態の治療におけるスピロオキシインドール化合物または薬学的に許容されるその塩の有効性を実証するPCT特許出願WO06/110917に開示の動物モデルにおいて確立することができる。
【0085】
したがって、本発明は、哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネル、好ましくは神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネルを介するイオン流を阻害することによって、哺乳動物、好ましくはヒトの様々なナトリウムチャネル媒介性疾患または状態、好ましくは神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネル媒介性の疾患または状態を処置する方法であって、治療有効量の前述の本発明の医薬組成物を、それを必要としている前記哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0086】
前述の通り、本発明の医薬組成物は、ナトリウムチャネル媒介性疾患または状態、好ましくは神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネル媒介性疾患または状態の治療に有用である。特に、本発明の医薬組成物は、Na1.1、Na1.2、Na1.3、Na1.4、Na1.5、Na1.6、Na1.7、Na1.8またはNa1.9から選択される神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネルの1つまたは複数の活性化または活動亢進が関与している疾患または状態を処置し、またはその重症度を低減するのに有用である。好ましくは、本発明の医薬組成物は、Na1.7の活性化または活動亢進が関与している疼痛またはヘルペス後神経痛などの疾患または状態を処置し、またはその重症度を低減するのに有用である。
【0087】
したがって、本発明は、治療有効量の前述の本発明の医薬組成物を、それを必要としている哺乳動物に投与するステップを含む、Na1.1、Na1.2、Na1.3、Na1.4、Na1.5、Na1.6、Na1.7、Na1.8またはNa1.9から選択される神経細胞の電位開口型ナトリウムチャネルの1つまたは複数の活性化または活動亢進が関与している疾患、状態または障害を治療し、またはその重症度を低減する方法を提供する。
【0088】
本発明の医薬組成物の有用性のさらなる開示を、以下に記載する。
【0089】
本発明のスピロオキシインドール化合物の調製
本発明の医薬組成物において使用される鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としてのスピロオキシインドール化合物は、PCT特許出願WO06/110917に開示の方法または当業者に公知の方法によって調製することができる。化合物Aおよびその対応する(R)−鏡像異性体およびそれらの薬学的に許容される塩は、その関連する開示が本明細書に全体として開示されるPCT特許出願WO2011/002708に開示の方法または当業者に公知の方法によって調製することができる。
【0090】
化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩およびその対応する(R)−鏡像異性体は、以下の反応スキームに記載の通り、キラル高圧液体クロマトグラフィー法または擬似移動層クロマトグラフィー法のいずれかを使用してスピロオキシインドール化合物を分割することによって調製することができ、この反応スキームでは、「キラルHPLC」は、キラル高圧液体クロマトグラフィーを指し、「SMB」は、擬似移動層クロマトグラフィーを指す。
【0091】
【化5】

当業者には、個々の鏡像異性体の分割に適した先の反応スキームの変形が認識され得る。
【0092】
あるいは、化合物Aおよびその対応する(R)−鏡像異性体は、公知のキラル出発材料、または公知の方法に類似の過程を使用して容易に調製されるキラル出発材料から合成することができる。
【0093】
好ましくは、本明細書に開示の分割方法によって得られる化合物Aは、(R)−鏡像異性体を実質的に含まず、またはごく微量の(R)−鏡像異性体を含有する。
【0094】
以下の合成例は、先の反応スキームによって開示される分割方法を例示する働きをし、本発明の範囲を制限するものではない。
【0095】
合成例1
1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オン(スピロオキシインドール化合物)の合成
【0096】
【化6】

PCT特許出願WO06/110917に開示の方法に従って調製することができるスピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オン(1.0g、3.6mmol)および炭酸セシウム(3.52g、11mmol)のアセトン(50mL)懸濁液に、2−ブロモメチル−5−トリフルオロメチルフラン(1.13g、3.9mmol)を一度に添加し、反応混合物を55〜60℃で16時間撹拌した。周囲温度に冷却したら、反応混合物を濾過し、濾液を減圧下で蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィーにかけ、酢酸エチル/ヘキサン(1/9〜1/1)で溶出して、1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オン、すなわちスピロオキシインドール化合物(1.17g、76%)を白色固体として得た:mp139〜141℃;H NMR (300 MHz, CDCl) δ7.32−6.97 (m, 5H), 6.72 (d, J = 3.24 Hz, 1H), 6.66 (s, 1H), 6.07 (s, 1H), 5.90−5.88 (m, 2H), 5.04 (ABq, 2H), 4.74 (ABq, 2H); 13C NMR (75 MHz, CDCl) δ 176.9, 155.7, 153.5, 148.8, 142.2, 141.9, 140.8, 140.2, 139.7, 139.1, 132.1, 129.2, 124.7, 124.1, 123.7, 121.1, 120.1, 117.6, 114.5, 114.4, 110.3, 109.7, 103.0, 101.9, 93.8, 80.0, 57.8, 36.9;MS(ES+)m/z430.2(M+1)、452.2(M+23);C2214NOの算出値:C、61.54%;H、3.29%;N、3.26%;実測値:C、61.51%;H、3.29%;N、3.26%。
【0097】
合成例2
キラルHPLCによるスピロオキシインドール化合物の分割
スピロオキシインドール化合物を、以下の条件下で、キラルHPLCによって化合物Aと対応する(R)−鏡像異性体に分割した。
カラム:Chiralcel(登録商標)OJ−RH;20mm、I.D.×250mm、5mic;ロット:OJRH CJ−EH001(Daicel Chemical Industries、Ltd)
溶離液:アセトニトリル/水(60/40、v/v、均一濃度)
流速:10mL/min
実施時間:60min
負荷:アセトニトリル1mL中式(I)の化合物100mg
温度:周囲。
【0098】
先のキラルHPLC条件下で、(R)−鏡像異性体、すなわち(R)−1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3f][1,3]−ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オンを、第1の画分として白色固体として単離した;ee(鏡像異性過剰)>99%(分析的OJRH、水中アセトニトリル55%);mp103〜105℃;H NMR (300 MHz, DMSO−d) δ7.32−6.99 (m, 5H), 6.71 (d, J = 3.35 Hz, 1H), 6.67 (s, 1H), 6.05 (s, 1H), 5.89 (ABq, 2H), 5.03 (ABq, 2H), 4.73 (ABq, 2H); 13C NMR (75 MHz, CDCl) δ177.2, 155.9, 152.0, 149.0, 142.4, 142.0, 141.3, 132.0, 129.1, 123.9, 120.6, 119.2, 117.0, 112.6, 109.3, 108.9, 103.0, 101.6, 93.5, 80.3, 58.2, 36.9;MS(ES+)m/z430.2(M+1)、[α]−17.46(c0.99、DMSO)。化合物A、すなわち(S)−1’−{[5−(トリフルオロメチル)フラン−2−イル]メチル}スピロ[フロ[2,3−f][1,3]ベンゾジオキソール−7,3’−インドール]−2’(1’H)−オンを、第2の画分として白色固体として単離した;ee>99%(分析的OJRH、水中アセトニトリル55%);mp100〜102℃;H NMR (300 MHz, DMSO−d) δ7.32−6.99 (m, 5H), 6.71 (d, J = 3.43 Hz, 1H), 6.67 (s, 1H), 6.05 (s, 1H), 5.89 (ABq, 2H), 5.03 (ABq, 2H), 4.73 (ABq, 2H); 13C NMR (75 MHz, CDCl) δ177.2, 155.9, 152.0, 149.0, 142.4, 142.0, 141.3, 132.0, 129.1, 123.9, 120.6, 119.2, 117.0, 112.6, 109.3, 108.9, 103.0, 101.6, 93.5, 80.3, 58.2, 36.9;MS(ES+)m/z430.2(M+1)、[α]+14.04(c0.99、DMSO)。
【0099】
合成例3
SMBクロマトグラフィーによるスピロオキシインドール化合物の分割
スピロオキシインドール化合物を、以下の条件下で、SMBクロマトグラフィーによって化合物Aと対応する(R)−鏡像異性体に分割した。
抽出液:147.05mL/min
抽残液:76.13mL/min
溶離液:183.18mL/min
供給:40mL/min
再循環:407.88mL/min
実施時間:0.57min
温度:25℃
圧力:46bar。
【0100】
供給溶液(移動相(アセトニトリル/メタノール/トリフルオロ酢酸の25:75:0.1(v:v:v)混合物)1.0L中式(I)の化合物25g)を、固定相としてキラルパックAD110g(カラム1つ当たり、9.6cm、4.8cm I.D.)を入れた2−2−2−2配置の8つの同一カラムを備えたSMB系(Novasep Licosep Lab Unit)に連続的に注入した。第1の溶出鏡像異性体((R)−鏡像異性体)は抽残液流に含有され、第2の溶出鏡像異性体(化合物A)は抽出物流に含有されていた。SMB分割によって得られた化合物Aおよび(R)−鏡像異性体の特徴付けデータは、先のキラルHPLCを利用して得られたものと同一であった。
【0101】
本発明の医薬組成物の調製
本発明の医薬組成物の調製は、当業者の技能範囲の医薬製剤化、薬化学の従来技術等を用いる。かかる技術は、文献において完全に説明されている。医薬組成物の調製は、例えば、参照によって本明細書に組み込まれるRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版(Lippincott Williams & Wilkins(2005年)および Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第8版(Med、PA: Williams & Wilkins、2005年)に記載されている。
【0102】
本発明の医薬組成物は、好ましくは軟膏形態である。軟膏は、もしあれば少々の水を含有する半固体であり、一般に、適切な機構を用いて活性成分を脂肪分の多いまたは脂肪分の少ない基剤と混合することによって調製される。
【0103】
本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0104】
本発明の局所医薬組成物のいずれかにおいて使用される薬学的に許容される賦形剤は、好ましくは滅菌されており、かつ/または好ましくは米国食品医薬局、欧州医薬品庁もしくはカナダ保健省などによって、ヒトおよび動物に投与される局所製剤における使用が許容されるものとして承認されていることを理解されたい。
【0105】
本発明の医薬組成物の調製では、所望の治療有効量の活性成分、すなわち鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としてのスピロオキシインドール化合物、好ましくは化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤に溶解させることができ、活性成分を医薬組成物に容易に可溶化することができ、複数の適用のために良好に保存することができる医薬組成物を提供するために、溶解性および安定性などの広範な研究を実施した。さらに医薬組成物は、適切な期間、好ましくは約1カ月〜約5年間、より好ましくは約1年〜約3年間、周囲温度で物理的かつ化学的に安定である必要がある。
【0106】
本発明のスピロオキシインドール化合物、特に化合物Aは、相対的に親油性であり、水溶性が低い。化合物Aの水溶性は、5μg/mL未満である。さらに化合物Aは、約3.07の算出LogPを有し、pHの変化によってイオン化することができる官能基を含有しておらず、結果的に溶液の2、7.4および12の様々なpHでは、化合物Aの溶解性は変化せず、<5μg/mLのままである。
【0107】
様々な可溶化技術を使用して、好ましくは軟膏としての局所医薬組成物において使用するための化合物Aの溶解性を向上させるための試みを行った。その目的は、様々な薬学的に許容される賦形剤の使用を徹底的に調べて、化合物Aの溶解性を最大化することであった。したがって、標準の溶解性試験技術を使用して実施した一連の溶解性の研究は、化合物Aの標的投与量強度を達成するための適切な賦形剤(複数可)および/または賦形剤の組合せを同定するために行われた。これらの研究における化合物Aの溶解性は、UV分光光度法により、312nmにおける化合物AのUV吸光波長を使用して決定した。
【0108】
実施した溶解性の研究に加えて、一連の安定性の研究を実施して、調製した医薬組成物の物理的かつ化学的安定性を決定した。
【0109】
溶解性および安定性の研究から得られた結果、ならびにインビボ有効性研究から得られた結果に基づいて、以下の代表的な本発明の医薬組成物を調製した。
【0110】
【表1】

一般に、各薬学的に許容される賦形剤は、本発明の医薬組成物中、約0.5%w/w〜約99.0%w/wの濃度で存在することができる。より好ましくは、各薬学的に許容される賦形剤は、本発明の医薬組成物中、約1%w/w〜約90%w/wの濃度で存在することができる。さらにより好ましくは、各薬学的に許容される賦形剤は、本発明の医薬組成物中、約10%w/w〜約80.0%w/wの濃度で存在することができる。
【0111】
好ましくは、本発明の医薬組成物中、PEG400は、約30%w/w〜約70%w/wの濃度で存在し、Transcutol(登録商標)Pは、約2%w/w〜約25%w/wの濃度で存在し、オレイルアルコールは、約1%w/w〜約10%w/wの濃度で存在し、ミリスチン酸イソプロピルは、約1%w/w〜約25%w/wの濃度で存在し、ステアリルアルコールは、約0.1%w/w〜約10%w/wの濃度で存在し、BHTは、約0.01%w/w〜約2%w/wの濃度で存在し、PEG3350は、約10%w/w〜約50%w/wの濃度で存在する。
【0112】
より好ましくは、本発明の医薬組成物中、PEG400は、約45%w/w〜約55%w/wの濃度で存在し、Transcutol(登録商標)Pは、約5%w/w〜約15%w/wの濃度で存在し、オレイルアルコールは、約2.5%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在し、ミリスチン酸イソプロピルは、約2.5%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在し、ステアリルアルコールは、約0.1%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在し、BHTは、約0.05%w/w〜約1%w/wの濃度で存在し、PEG3350は、約15%w/w〜約30%w/wの濃度で存在する。
【0113】
好ましくは、本発明の医薬組成物中、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としてのスピロオキシインドール化合物は、約0.1%w/w〜約10%w/wの濃度、好ましくは約2%w/w〜約8%w/wの濃度で存在する。
【0114】
本明細書に開示の医薬組成物の安定性を、従来の方法により、例えば化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩、およびその分解生成物、溶解、脆弱性、崩壊時間、微生物含量、外観および/または顕微鏡の、規定期間にわたる測定によって試験することができる。
【0115】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、約5℃および約50℃の間の温度に維持される場合に、約1カ月および約5年の間にわたって安定である。より好ましくは、本発明の医薬組成物は、約15℃および約45℃の間の温度に維持される場合に、約6カ月および約4年の間にわたって安定である。さらにより好ましくは、本発明の医薬組成物は、約25℃および約40℃の間の温度に維持される場合に、約6カ月および約3年の間にわたって安定である。より好ましい実施形態では、医薬組成物は、約25℃および約40℃の間の温度に維持される場合に、1年間、好ましくは2年間などの期間にわたって安定である。より好ましくは、医薬組成物は、3年間安定である。
【0116】
表1に記載の本発明の医薬組成物は、以下の調製例1に記載の通り調製することができる。しかし当業者は、類似の方法または当業者に公知の方法によって医薬組成物を調製し得ることを理解されよう。当業者は、以下に具体的には例示されていない本発明の他の医薬組成物を、適切な構成要素を使用し、必要に応じて調製パラメータを改変することによって、下記と同様にして調製し得ることも理解されよう。
【0117】
調製例1
プロペラ/シャフトを備えた標準の製造容器を風袋引きし、風袋重量を記録する。均質な溶液が得られるまでプロペラで持続的に混合しながら、オレイルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、Transcutol(登録商標)P、PEG3350、ステアリルアルコール、PEG400およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を、先の表1に列挙した量で、好ましくは60℃〜70℃において容器に添加し、1種の賦形剤を一度に添加した後、次の賦形剤を添加する。得られた混合物に所望の量の化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩を、好ましくは60℃〜70℃で、先の表1に列挙した量で添加する。得られた混合物を、適切な期間にわたって、好ましくは約30分および約1時間の間にわたって混合する。完了したら(化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩が、完全に溶解したら)、プロペラミキサーを除去し、均質化過程を開始する。Silversonミキサー(モデル番号L4RT)を均質化のために使用し、均質化を10分間実施し、回転速度を6000rpmに維持する。均質化過程の最中、溶液の温度を絶えずモニタし、好ましくは約60℃および約70℃の間に維持する。均質化が完了した後、熱源を除去して混合物を冷却し、プロペラ混合に急速に切り替えて、軟膏が形成され、温度が適温、好ましくは35℃以下に達するまで混合した。冷却および混合段階中に、容器の内側を継続的にこそげて、軟膏が均質になるようにする。得られた軟膏を、次に適切な容器に移す。
【0118】
上記の過程は、従来の装置を利用して、当業者に公知の従来の条件下で実施することができる。本明細書に記載の通り得られる化合物Aを除き、原料すべてを様々な製造者から得たまま使用した。
【0119】
本発明の医薬組成物の投与
本発明の医薬組成物は、哺乳動物、好ましくはヒトに局所投与されるべきである。医薬組成物は、治療が望まれる部位に、またはその領域に隣接して局所適用される。一般に、治療期間中、本発明の医薬組成物を1日1〜4回適用することが推奨され、または必要に応じて何度も再適用することができる。一般に、軽減は数分以内に得られ、数分から数時間、さらにある場合には数日にわたる様々な期間、継続する。一般に、罹患している皮膚領域に適用される本発明の医薬製剤の量は、皮膚表面積1cm当たり約0.02g〜約0.5g、好ましくは皮膚表面積1cm当たり0.1g〜約0.30gの範囲である。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、それを必要としている哺乳動物の皮膚に局所投与される場合、局部効果のみを発揮する。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、それを必要としている哺乳動物の皮膚に局所投与される場合、全身効果をさらに有する。
【0121】
本発明の医薬組成物の適用は、医師または患者によって実施され得る。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物が投与されることになる領域は、最大限の有効性および高い吸収のために、例えば標準の市販の消毒薬またはアルコールなどの収斂薬を使用して最初に清浄にされる。次に、その領域を乾燥させ、本発明の医薬組成物を標的領域上に適用し、すべての医薬組成物が吸収され、皮膚上に残渣がなくなるまで擦る。
【0122】
一般に、良好な治療効果が得られる量の本発明の医薬組成物は、以下の基準のいくつかまたはすべてを満たすことになる。当業者に理解される通り、鏡像異性体、ラセミ化合物または鏡像異性体の非ラセミ混合物としての、好ましくは化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩としての本発明のスピロオキシインドール化合物の治療上有効な用量は、その所期の目的(例えば、疼痛の予防、低減または緩和)に対して有効であるような用量である。一般に、鏡像異性体、ラセミ化合物または鏡像異性体の非ラセミ混合物としての、好ましくは化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩としての本発明のスピロオキシインドール化合物は、組成物の総重量の約2%〜約10%の量、好ましくは組成物の総重量の約4%〜約8%の量、より好ましくは組成物の総重量の約4%〜約6%の量で本発明の医薬組成物中に存在する。
【0123】
化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩の効力(IC50値によって表される)は、10μM未満、好ましくは1μM未満、最も好ましくは50nM未満であるべきである。IC50(「阻害濃度−50%」)は、本発明のアッセイにおいて、特定期間にわたってナトリウムチャネルを介するイオン流の50%阻害を達成するのに必要な化合物の量の測定値である。例えば、化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩は、PCT特許出願WO06/110917に開示のグアニジン流入アッセイで試験すると、1μM未満の濃度のIC50を示した。
【0124】
本発明の医薬組成物の投与のレシピエントは、哺乳動物などの任意の脊椎動物であってよい。哺乳動物の中でも、好ましいレシピエントは、霊長目(ヒト、猿人類およびサルを含む)、偶蹄(Arteriodactyla)目(ウマ、ヤギ、ウシ、ヒツジおよびブタを含む)、げっ歯目(マウス、ラット、ウサギおよびハムスターを含む)、および食肉目(ネコおよびイヌを含む)の哺乳動物である。鳥の中では、好ましいレシピエントは、七面鳥、ニワトリおよび同じ目の他のメンバーである。最も好ましいレシピエントは、ヒトである。
【0125】
併用療法
本発明の医薬組成物は、ナトリウムチャネル媒介性疾患および状態の治療において、1つもしくは複数の他の治療用薬剤と共に、またはその任意の組合せとして有用に組み合わせることができる。例えば、本発明の医薬組成物は、それに限定されるものではないが、以下を含む他の治療剤と同時に、逐次的に、またはそれと別個に組み合わせて投与することができる。
・オピエート鎮痛剤、例えば、モルヒネ、ヘロイン、コカイン、オキシモルフォン(oxymorphine)、レボルファノール、レバロルファン、オキシコドン、コデイン、ジヒドロコデイン、プロポキシフェン、ナルメフェン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、メリピジン(meripidine)、メタドン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィンおよびペンタゾシン、
・非オピエート鎮痛剤、例えばアセトアミノフェン(acetomeniphen)およびサリチル酸エステル(例えば、アスピリン)、
・非ステロイド系抗炎症性薬物(NSAID)、例えば、イブプロフェン(Advil(登録商標))、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、ジクロフェナク、ジフルシナル(diflusinal)、エトドラク、フェンブフェン、フルフェニサル(flufenisal)、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ニメスリド、ニトロフルルビプロフェン、オルサラジン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スルファサラジン、スリンダク、トルメチンおよびゾメピラック、
・抗けいれん剤、例えば、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、ラモトリギン、ガバペンチンおよびプレガバリン、
・三環系抗うつ薬、例えば、アミトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン(despramine)、イミプラミン、デュロキセチンおよびノルトリプチリンなどの抗うつ剤、
・COX−2選択的阻害剤、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブおよびルミラコキシブ、
・アルファ−アドレナリン、例えば、ドキサゾシン、タムスロシン、クロニジン、グアンファシン、デクスメデトミジン(dexmetatomidine)、モダフィニル、および4−アミノ−6,7−ジメトキシ−2−(5−メタンスルホンアミド−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノル−2−イル)−5−(2−ピリジル)キナゾリン、
・バルビツレート鎮静剤、例えば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール(butabital)、メフォバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール(phenobartital)、セコバルビタール、タルブタール、チアミラール(theamylal)およびチオペンタール、
・タキキニン(NK)拮抗薬、特にNK−3、NK−2またはNK−1拮抗薬、例えば(αR、9R)−7−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル)]−8,9,10,11−テトラヒドロ−9−メチル−5−(4−メチルフェニル)−7H−[1,4]ジアゾシノ[2,1−g][1,7]−ナフチリジン−6−13−ジオン(TAK−637)、5−[[2R,3S)−2−[(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチルフェニル]エトキシ−3−(4−フルオロフェニル)−4−モルホリニル]−メチル]−1,2−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン(MK−869)、アプレピタント、ラネピタント、ダピタントまたは3−[[2−メトキシ5−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−メチルアミノ]−2−フェニルピペリジン(2S,3S)、
・パラセタモール、
・代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)拮抗薬、
・メキシレチンおよびリドカインなどの局部麻酔薬、
・デキサメタゾンなどのコルチコステロイド、
・ムスカリン拮抗薬、例えば、トルテロジン、プロピベリン、塩化トロスピウム(tropsium t)、ダリフェナシン、ソリフェナシン、テミベリンおよびイプラトロピウム、
・カンナビノイド、
・バニロイド受容体作動薬(例えば、レシニフェラトキシン(resinferatoxin))または拮抗薬(例えば、カプサゼピン)、
・局所薬剤(例えば、リドカイン、カプサイシン(capsacin)およびレシニフェラトキシン(resiniferotoxin))、
・ベンゾジアゼピン、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモールおよびオルフェナドリン(orphrenadine)などの筋弛緩薬、
・抗ヒスタミンまたはH1拮抗薬、
・NMDA受容体拮抗薬、
・PDEV阻害剤、
・トラマドール(登録商標)、
・コリン作動薬(ニコチン性(nicotinc))鎮痛剤、
・アルファ−2−デルタ配位子、
・プロスタグランジンE2サブタイプ拮抗薬、
・ロイコトリエンB4拮抗薬、および
・5−リポキシゲナーゼ阻害剤。
【0126】
かかる組合せを使用して治療かつ/または予防することができるナトリウムチャネル媒介性疾患および状態には、それに限定されるものではないが、疼痛、ヘルペス後神経痛(PHN)、術後疼痛、そう痒症、HIVに関連する疼痛、HIV治療誘発性の神経障害、三叉神経痛、家族性肢端紅痛症、原発性肢端紅痛症、家族性直腸痛、急性痛、熱感受性、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、有痛性糖尿病性神経障害、末梢神経障害、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、腱炎、滑液包炎、筋骨格捻挫、腱鞘炎、膝蓋軟骨軟化症、筋炎、筋緊張症(それに限定されるものではないが、SCN4Aに関係する筋緊張症を含む)、パラミオトニア、横紋筋融解、発作性ジストニア、筋無力症症候群、悪性高熱症、嚢胞性線維症、ナトリウムチャネル毒素に関係する疾病、がん疼痛、下肢静止不能症候群、線維筋痛および神経変性疾患に関連する疼痛、ならびに多発性硬化症を含む他の神経障害が含まれる。
【0127】
本明細書で使用される場合、「組合せ」は、本発明の医薬組成物と1つまたは複数のさらなる治療剤との任意の混合物または並べ替えを指す。文脈によって別段明らかにならない限り、「組合せ」は、本発明の医薬組成物と1つまたは複数の治療剤との、同時または逐次的な送達を含み得る。文脈によって別段明らかにならない限り、「組合せ」は、本発明の医薬組成物と別の治療剤との剤形を含み得る。文脈によって別段明らかにならない限り、「組合せ」は、本発明の医薬組成物と別の治療剤との異なる投与経路を含み得る。例えば、本発明の医薬組成物は、経口投与される別の治療剤と組み合わせて局所投与される。文脈によって別段明らかにならない限り、「組合せ」は、本発明の医薬組成物と別の治療剤との製剤を含み得る。剤形、投与経路および医薬組成物には、それに限定されるものではないが、本明細書に記載のものが含まれる。
【0128】
製造品
本発明はまた、本発明の医薬組成物を含有するキットを提供する。キットはまた、疼痛の治療のため、ならびに本明細書に開示の他の有用性のためにナトリウムチャネルの活性をモジュレートする医薬組成物の使用のための指示物を含む。好ましくは、市販のパッケージは、医薬組成物の1つまたは複数の単位用量を含有する。光および/または空気に対して感応性のかかる組成物には、特別なパッケージングおよび/または製剤化が必要とされ得ることが当業者には明らかとなろう。例えば、光を通さず、かつ/または周囲の空気との接触から封止され、かつ/または適切なコーティングもしくは賦形剤を用いて製剤化されるパッケージングを使用することができる。
【0129】
本発明は、本発明の有用性を実証するために行うことができるアッセイを記載する以下の非限定的な生物学的実施例により、さらに良好に理解することができる。
【実施例】
【0130】
(生物学的実施例1)
CFA誘発性の慢性炎症性疼痛における用量比例性
この試験では、機械的な痛覚過敏を、電子的von Freyフィラメントを用いてElectrovonfrey知覚計(anesthesiometer)(モデル2290、IITC Life Science、カリフォルニア州ウッドランドヒルズ)によって評価する。生態飼育施設への丸1週間の順化の後、「完全フロイントアジュバント」(CFA)エマルション(最終濃度0.5mg/mLで油/生理食塩水(1:1)エマルションに懸濁させたCFA)150μLを、イソフルランで軽く麻酔してラットの左後足首関節の足底表面に皮下注射した。動物を麻酔から回復させ、すべての動物のベースラインである機械的侵害受容閾値を、CFA投与の1週間後に評価した。すべての動物を、実験当日、実験チャンバーに20分間慣らした。次に、ビヒクル対照1群、ならびに1%、2%、4%および8%(w/w)の化合物Aの医薬組成物4群を含む5つの異なる試験群に、動物を無作為に割り当てた。ベースライン測定後、動物をイソフルランで麻酔し、適用部位を剃毛し、次に同側の後足首および足全体に、試験組成物50mgを適用することによって投与した。次に、動物をプレキシグラス管に30分間入れて、薬物の早期除去/摂取を予防した。試験組成物を、1日2回、3日間適用した。4日目、適用直後に動物を管に15分間入れ、次に取り出し、プレキシグラスの囲いに15分間入れた後、肢引込み測定を行った。投与の30分後に各動物の罹患した足で互いに1〜2分以内に行ったいくつかの独立な決定値の平均として、von Freyによる引込み閾値を測定した。使用する時点を予め決定して、各試験組成物の最大鎮痛効果を示した。
【0131】
触覚刺激に対する動物の応答閾値を、モデル2290 Electrovonfrey知覚計(IITC Life Science、カリフォルニア州ウッドランドヒルズ)を使用して測定した。動物を、ワイヤ(mire)メッシュ表面上に設置した高架式プレキシグラスの囲いに入れた。15分間順応させた後、von Freyヘアを、グラムで測定される十分な力で動物の同側後足の足底表面に垂直に適用して、足のすばやい応答を誘起した。この応答は、有痛性刺激からの引込みを示し、有効性エンドポイントを構成した。
【0132】
結果
ベースラインにおいて、5つの試験群のvon Freyによる肢引込み測定の平均の間に著しい差異はなかった。4日目の投与の30分後、2%、4%および8%(w/w)の化合物Aの医薬組成物で治療した群はすべて、ベースラインからの変化(CFB)(%)によって表されるvon Freyによる機械的肢引込み閾値において統計的に有意な増大を示して、鎮痛効果を示した(図1参照)。試験した8%(w/w)の最高用量までの用量増加に伴って、化合物Aを含む組成物の鎮痛効果は増大し、最高用量では+45.1%の最大CFB(%)を示した。しかし1%(w/w)投与群では、von Freyによる機械的肢引込み閾値において観測可能な増大は実証されなかった。図1に示した結果は、化合物Aの組成物が、2%〜8%(w/v)の範囲でCFA誘発性炎症性疼痛モデルにおいて鎮痛効果を有することを示している。
【0133】
(生物学的実施例2)
神経障害性疼痛モデルにおける有効性の時間経過;慢性収縮傷害
神経障害性疼痛は、自発性疼痛ならびに刺激によって惹起される異痛および痛覚過敏を特徴とする。本発明の医薬組成物を、下記の通りSprague−Dawleyラットを使用して慢性収縮傷害モデルで評価した。
【0134】
10番の外科用メスを使用して、ラットの左後足の中部大腿レベルの皮膚および筋膜を約3cm切開した。出血(haemorrhagia)を最小限に抑えるよう注意しながら大腿二頭筋を鈍的切開することにより、左坐骨神経を曝露した。4本のクロムガット縫合糸を使用して、坐骨神経に沿って1mm〜2mmの間隔をあけて、結紮糸を4箇所ゆるく結んだ。ゆるい結紮糸の張力は、解剖顕微鏡により4倍の拡大率で見たときに坐骨神経のわずかな収縮を誘発するのに十分張っていた。シャム対照として、右坐骨神経を曝露し、神経上に縫合糸を結ばなかったことを除いて前述と同様にして処置した。抗菌軟膏を、創傷に直接適用し、滅菌縫合糸を使用して筋肉を閉じた。Betadine(登録商標)を筋肉とその周りに適用した後、止血鉗子で皮膚を閉じた。
【0135】
機械的な刺激への肢引込み閾値の低下によって決定される通り、少なくとも14日間、同側の足に有痛性の神経障害を発症させた。グラムで測定されるvon Freyフィラメントに対する肢引込み閾値の低下によって決定される通り、著しい痛覚過敏を有する動物だけを研究に登録した。研究に登録したすべての動物が、<12gの肢引込み閾値を示した。
【0136】
触覚刺激に対する動物の応答閾値を、モデル2290 Electrovonfrey知覚計(IITC Life Science、カリフォルニア州ウッドランドヒルズ)を使用して測定した。動物を、ワイヤメッシュ表面上に設置した高架式プレキシグラスの囲いに入れた。15分間順応させた後、von Freyヘアを、足のすばやい応答を誘起するのに十分なグラムで測定される力で、動物の同側後足の足底表面に垂直に適用した。この応答は、有痛性刺激からの引込みを示し、有効性エンドポイントを構成した。すばやい引込み応答を誘起するのに必要な力(グラム)を、ベースライン測定としての投与の前と、投与後の複数の時点で記録した。
【0137】
ベースライン測定の3日前に、動物をイソフルランで麻酔し、上部坐骨ノッチ大腿領域、足首および足を含む同側の後足全体を剃毛した。次に動物を、ビヒクル対照群、5%(w/v)リドカイン(Xylocaine(登録商標))、および5%または10%いずれかのTranscutol(登録商標)Pを含有する4%(w/w)の化合物Aを含む2種の本発明の医薬組成物を含む4つの異なる試験群の1つに、無作為に割り当てた。ベースライン測定後、全剃毛領域上に試験組成物100mgを適用した。次に、動物をプラスチック管に少なくとも15分間入れて、薬物の早期除去/摂取を予防した。その後、動物をプレキシグラスの囲いに15分間入れた後、それぞれの時点でvon Freyによる測定を行った。投与の0.5、1および2時間後に各動物の罹患した足で互いに1〜2分以内に行ったいくつかの独立な決定値の平均として、von Freyによる引込み閾値を測定した。
【0138】
結果
各群の肢引込み閾値のベースラインからの平均変化(CFB)(%)を、図2に示す。5%(w/v)リドカイン群、ならびに5%および10%Transcutol(登録商標)P中4%(w/w)化合物Aの試験群について、投与の0.5時間後に、それぞれ+23.1%、+26.3%および+33.8%のCFBを観測した。5%および10%Transcutol(登録商標)P中4%(w/w)化合物Aの治療群について、投与の1時間後に、それぞれ+18.1%および+26.7%のCFBを観測した。5%(w/v)リドカイン治療群では、投与後0.5時間以降いかなる時点でも、著しい変化は観測されなかった(p>.05)。10%Transcutol中4%(w/w)化合物Aの群は、投与の0.5時間後から2時間後まで鎮痛効果を示したが、これは、5%Transcutol中4%(w/w)化合物Aの群と比較して鎮痛の有効性が向上しており、鎮痛期間も長かった。4%(w/w)化合物Aの両方の群は、CCI誘発性の神経障害性疼痛モデルにおいて、投与の0.5時間後までしか鎮痛効果を示さなかった5%リドカイン群と比較すると、より長い鎮痛効果を示した。
【0139】
(生物学的実施例3)
糖尿病性神経障害のSTZモデル
この研究では、雄性Sprague−DawleyラットのSTZ誘発性の神経障害性疼痛モデルにおける本発明の医薬組成物の急性投与後の有効性を、5%(w/v)局所リドカイン(Xylocaine(登録商標))および1.16%(w/v)局所ジクロフェナク(ボルタレン(登録商標))と比較して評価する。インスリンを産生する膵臓ベータ細胞のアブレーションによりラットの糖尿病状態を誘発することによって、ヒトの状態を模倣する有痛性の末梢性糖尿病性神経障害(PDN)のげっ歯類モデルを作製した。ストレプトゾトシン(STZ)単回注射は、ラットのベータ細胞を破壊し、経時的に有痛性の末梢性糖尿病性神経障害(PDN)に進行する糖尿病状態をもたらす。
【0140】
ストレプトゾトシン(STZ)を、クエン酸塩緩衝液(20mM、pH4.5)に溶解させ、用量60mg/Kgで腹腔内投与して、膵臓ベータ細胞死を誘発した。AccuSoft血糖モニタリング系を使用して、注射後週1回、血糖値を測定した。最初の注射後に血糖値の上昇を示さなかった動物に、最初の注射の2週間後にブースター注射を投与した。16mmol/Lを超える血漿グルコース濃度の動物は、糖尿病であるとみなされ、研究に含まれた。糖尿病性神経障害性疼痛の徴候である痛覚過敏および異痛を、下記の通りvon Freyによる試験を使用してモニタした。von Freyによる測定を、左足および右足の両方で記録した。グラムで測定されるvon Freyフィラメントに対する肢引込み閾値の低下によって決定される通り、著しい痛覚過敏を有する動物だけを研究に登録した。研究は、STZ注射後8週目まで実施した。この期間中、動物の健康状態を、厳密にモニタした。
【0141】
動物を、ビヒクル対照、5%(w/v)リドカイン(Xylocaine(登録商標))、1.16%(w/v)ジクロフェナク(ボルタレン(登録商標))、および4%(w/w)化合物Aを含む医薬組成物を含む4つの試験群(n=動物7匹/群)に無作為に分けた。ベースライン測定後、試験組成物50mgを、左足全体に適用した。次に、動物をプレキシグラス管に15分間入れて、薬物の早期除去/摂取を予防し、次にvon Freyによる測定のためにプレキシグラスの囲いに移動させた。機械的触覚刺激による動物の肢引込み閾値を、Electrovonfrey知覚計(モデル2290、IITC Life Science、カリフォルニア州ウッドランドヒルズ)を使用して測定した。動物を、ワイヤメッシュ表面上に設置した高架式アクリルの囲いに入れた。15分間順応させた後、柔軟性von Freyヘア(先端番号15)を、足のすばやい応答を誘起するのに十分な力で、動物の同側後足の足底表面に垂直に適用した。この応答は、有痛性刺激からの引込みを示し、有効性エンドポイントを構成した。すばやい引込み応答を誘起するのに必要な力(g)を、ベースライン測定としての投与の前と、投与の30分後に記録した。
【0142】
引込み測定を、治療した足(左)と治療していない足(右)の両方で記録した。von Freyによる肢引込みデータを、GraphPad Prism 5統計的分析ソフトウェアを使用して分析した。多変量分析のために、一元配置分散分析をBonferroni補正と共に使用した。単変量分析のために、対応のないt検定を使用した。結果を、平均±SEMとして表す。有意性がp<.05レベルに達した値を、統計的に有意であるとみなした。
【0143】
結果
ベースラインにおいて、治療した足のvon Freyによる肢引込み測定における4つの試験群の間に著しい差異はなく、左および右後足の測定値の間にも著しい差異はなかった。
【0144】
投与の30分後、各群の足(治療した足)の引込み閾値に関するベースラインからの平均変化(CFB)(%)を、図3に示す。4%(w/w)化合物Aの投与群(p<0.05)では、ベースラインからの変化は44.9%に達し、5%(w/v)リドカイン群では、実質的に25.9%を超えるベースラインからの変化が観測された。1.16%(w/v)ジクロフェナク群では、著しいCFBは観測されなかった。
【0145】
したがって、局部鎮痛効果は、STZ誘発性の神経障害性疼痛モデルでは4%(w/w)化合物Aを含有する組成物で観測され、これは投与の30分後にベースラインからの44.9%変化を示し、参照化合物で観測された局部有効性を超えていた。
【0146】
(生物学的実施例4)
局所投与と経口投与に関する有効性および全身曝露の関係;慢性収縮傷害
この研究では、ラットの確立された神経障害性疼痛モデルである慢性収縮傷害(CCI)モデルを使用して、雄性ラットにおける局所投与と経口投与の間の化合物Aの有効性および全身曝露のレベルを比較する。
【0147】
Bennett G JおよびXie Y−K.、Pain(1988年)33巻:87〜107頁に記載の通り、総坐骨神経の周りにゆるい収縮性の結紮糸を施すことによって、ラットに末梢神経障害を誘発した。8週齢の雄性Sprague Dawleyラットを、3.5%イソフルランで麻酔し、10番の外科用メスを使用して、動物の左後足の中部大腿レベルの皮膚および筋膜を約3cm切開した。出血を最小限に抑えるよう注意しながら大腿二頭筋を鈍的切開することにより、左坐骨神経を曝露した。4本のクロムガット縫合糸を使用して、坐骨神経に沿って1mm〜2mmの間隔をあけて、結紮糸を4箇所ゆるく結んだ。ゆるい結紮糸の張力は、解剖顕微鏡により4倍の拡大率で見たときに坐骨神経のわずかな収縮を誘発するのに十分張っていた。抗菌軟膏を、創傷に直接適用し、滅菌縫合糸を使用して筋肉を閉じた。Betadine(登録商標)を筋肉とその周りに適用した後、止血鉗子で皮膚を閉じた。
【0148】
機械的な刺激への肢引込み閾値の低下によって決定される通り、同側の足に有痛性の神経障害を発症させた。グラムで測定されるvon Freyフィラメントに対する肢引込み閾値の低下によって決定される通り、著しい痛覚過敏を有する動物だけを研究に登録した。研究に登録したすべての動物が、<12gの肢引込み閾値を示した。
【0149】
機械的触覚刺激による動物の肢引込み閾値を、モデル2290 Electrovonfrey知覚計(IITC Life Science、カリフォルニア州ウッドランドヒルズ)を使用して測定した。動物を、ワイヤメッシュ表面上に設置した高架式プレキシグラスの囲いに入れた。この囲いで15分間順応させた後、von Freyヘアを、足のすばやい応答を誘起するのに十分なグラムで測定される力で、動物の同側後足の足底表面に垂直に適用した。この応答は、有痛性刺激からの引込みを示し、有効性エンドポイントを構成した。
【0150】
肢引込みベースライン測定後、動物を、経口投与のためのビヒクル対照群、局所投与のためのビヒクル対照群および2つの治療群を含む4つの異なる試験群(N=動物8匹/群)に無作為に分けた。経口投与群では、ベースライン測定後に、動物に経口胃管栄養法によって投与した。経口用量25mg/Kgの化合物Aが、8%(w/w)の化合物Aを含む本発明の医薬組成物のおよそ最大半量の疼痛応答の逆転および8%(w/w)の化合物Aを含む本発明の医薬組成物に匹敵する有効性レベルをもたらすことを示した先の研究に基づいて、化合物Aの用量を選択した。局所投与量群では、試験組成物50mgを、同側の足首および足に適用した。次に、動物をプラスチック管に15分間入れて、薬物の早期除去/摂取を予防した。その後、動物を、肢引込み測定の15分前に、プレキシグラスの囲いに入れた。各動物の罹患した足で互いに1〜2分以内に行ったいくつかの独立な決定値の平均として、von Freyによる引込み閾値を測定した。引込み測定を、経口投与群では、先の研究で決定されたそれらのそれぞれのピーク有効性時点である投与の60分後、局所投与群では投与の30分後に行った。
【0151】
血液試料を、それらのそれぞれの有効性時点の約10〜15分後に以下の手順を使用して、引込み閾値測定直後の同じ動物から採取した。ラットを、麻酔下で頸静脈穿刺することにより出血させた。投与時に対して、各血液試料を採取した時点を記録した。各血液試料(約150μL)を、ヘパリン10μL(100単位)を入れたラベル付きヘパリンコーティングmicrovette管に収集し、すぐに氷上に置いた。血液試料を4℃で遠心分離機にかけて、血漿を分離した。血漿をラベル付き管に移し、−80℃で保存するために液体窒素で即座に凍結させた。分析時に血漿を解凍し、固相抽出を使用して抽出し、血漿薬物濃度をHPLC/MS/MSによって定量化した。
【0152】
von Freyによる肢引込みデータを、GraphPad Prism 5統計的分析ソフトウェアを使用して分析した。多変量分析のために、一元配置分散分析をBonferroni補正と共に使用した。単変量分析のために、対応のないt検定を使用した。結果を、平均±SEMとして表す。有意性がp<.05レベルに達した値を、統計的に有意であるとみなした。
【0153】
結果
ベースラインにおいて、4つの治療群のvon Freyによる肢引込み測定の平均の間に著しい差異はなかった。
【0154】
各群の肢引込み閾値のベースラインからの平均変化(CFB)(%)を、図4に示す。投与の60分後および30分後に、CFBは、それぞれ25mg/Kgの化合物Aの経口投与群では44.3%に達し、8%(w/w)化合物Aの局所投与群では47.1%に達したが、これらはビヒクル群と比較すると統計的有意性があり(p<0.001)、鎮痛効果を示した。経口および局所投与群のCFB間に統計的有意性は観測されなかった(p=.742)。
【0155】
血漿試料を、von Freyによる試験の直後に動物から収集した。経口および局所投与群の化合物Aの全身血漿濃度を、図5に示す。局所投与群の化合物Aの血漿レベルは、経口投与群のレベルよりも著しく低かった(約20分の1)(p<.0001)。
【0156】
局所投与による8%(w/w)化合物Aは、ある度合いの有効性(47%CFB)を示したが、これはCCI神経障害性疼痛モデルにおける経口投与による25mg/kgの化合物A(44%CFB)に匹敵する。化合物Aの全身血漿曝露は、経口投与群よりも局所投与群において著しく低かった(約20分の1)。したがってCCI神経障害性疼痛モデルにおいて局所投与によって与えられる化合物Aは、全身曝露を最小限に抑えながら、経口投与による化合物Aに匹敵する有効性をもたらす。
【0157】
別段の指定がない限り、本明細書で参照される、米国特許出願第61/308,759号を含む任意の米国特許、米国特許出願またはPCT特許出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0158】
理解を容易にするために前述の本発明をいくらか詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲内でいくつかの変更および改変が加えられ得ることが明らかとなろう。したがって、記載の実施形態は例示的であり、制限的でないとみなされるべきであり、本発明は本明細書に記載の詳細に限定されないが、添付の特許請求の範囲の範囲および等価な範囲内で改変することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、および
治療有効量の次式:
【化7】

を有するスピロオキシインドール化合物であって、鏡像異性体、ラセミ化合物もしくは鏡像異性体の非ラセミ混合物、または薬学的に許容されるその塩としてのスピロオキシインドール化合物
を含む、哺乳動物に局所投与するための医薬組成物。
【請求項2】
2つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記薬学的に許容される賦形剤が、1つもしくは複数の溶媒、1つもしくは複数の浸透促進剤、1つもしくは複数の硬化剤、または1つもしくは複数の軟膏基剤から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1つまたは複数の抗酸化剤をさらに含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
各薬学的に許容される賦形剤が、約0.01%w/w〜約99%w/wの濃度で存在する、請求項3または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
溶媒が、PEG400またはPEG3350から選択され、浸透促進剤が、Transcutol(登録商標)P、オレイルアルコールまたはミリスチン酸イソプロピルから選択され、硬化剤がステアリルアルコールであり、軟膏基剤が、PEG400またはPEG3350から選択され、抗酸化剤がブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
PEG400が、約30%w/w〜約70%w/wの濃度で存在し、Transcutol(登録商標)Pが、約2%w/w〜約25%w/wの濃度で存在し、オレイルアルコールが、約1%w/w〜約10%w/wの濃度で存在し、ミリスチン酸イソプロピルが、約1%w/w〜約25%w/wの濃度で存在し、ステアリルアルコールが、約0.1%w/w〜約10%w/wの濃度で存在し、BHTが、約0.01%w/w〜約2%w/wの濃度で存在し、PEG3350が、約10%w/w〜約50%w/wの濃度で存在する、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
PEG400が、約45%w/w〜約55%w/wの濃度で存在し、Transcutol(登録商標)Pが、約5%w/w〜約15%w/wの濃度で存在し、オレイルアルコールが、約2.5%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在し、ミリスチン酸イソプロピルが、約2.5%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在し、ステアリルアルコールが、約0.1%w/w〜約7.5%w/wの濃度で存在し、BHTが、約0.05%w/w〜約1%w/wの濃度で存在し、PEG3350が、約15%w/w〜約30%w/wの濃度で存在する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記スピロオキシインドール化合物が、約0.1%w/w〜約10%w/wの濃度で存在する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記スピロオキシインドール化合物が、約2%w/w〜約8%w/wの濃度で存在する、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該医薬組成物の2.0%w/wの濃度の前記スピロオキシインドール化合物、該医薬組成物の52.9%w/wの濃度のPEG400、該医薬組成物の10%w/wの濃度のTranscutol(登録商標)P、該医薬組成物の5%w/wの濃度のオレイルアルコール、該医薬組成物の5%w/wの濃度のミリスチン酸イソプロピル、該医薬組成物の5%w/wの濃度のステアリルアルコール、該医薬組成物の0.1%w/wの濃度のブチル化ヒドロキシトルエン、および該医薬組成物の20%w/wの濃度のPEG3350を含む、医薬組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該医薬組成物の4%w/wの濃度の前記スピロオキシインドール化合物、該医薬組成物の50.9%w/wの濃度のPEG400、該医薬組成物の10%w/wの濃度のTranscutol(登録商標)P、該医薬組成物の5%w/wの濃度のオレイルアルコール、該医薬組成物の5%w/wの濃度のミリスチン酸イソプロピル、該医薬組成物の5%w/wの濃度のステアリルアルコール、該医薬組成物の0.1%w/wの濃度のブチル化ヒドロキシトルエン、および該医薬組成物の20%w/wの濃度のPEG3350を含む、医薬組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該医薬組成物の4%w/wの濃度の前記スピロオキシインドール化合物、該医薬組成物の50.9%w/wの濃度のPEG400、該医薬組成物の5%w/wの濃度のTranscutol(登録商標)P、該医薬組成物の5%w/wの濃度のオレイルアルコール、該医薬組成物の5%w/wの濃度のミリスチン酸イソプロピル、該医薬組成物の10%w/wの濃度のステアリルアルコール、該医薬組成物の0.1%w/wの濃度のブチル化ヒドロキシトルエン、および該医薬組成物の20%w/wの濃度のPEG3350を含む、医薬組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の医薬組成物であって、該医薬組成物の8%w/wの濃度の前記スピロオキシインドール化合物、該医薬組成物の46.9%w/wの濃度のPEG400、該医薬組成物の10%w/wの濃度のTranscutol(登録商標)P、該医薬組成物の5%w/wの濃度のオレイルアルコール、該医薬組成物の5%w/wの濃度のミリスチン酸イソプロピル、該医薬組成物の5%w/wの濃度のステアリルアルコール、該医薬組成物の0.1%w/wの濃度のブチル化ヒドロキシトルエン、および該医薬組成物の20%w/wの濃度のPEG3350を含む、医薬組成物。
【請求項15】
前記スピロオキシインドール化合物が、次式の化合物:
【化8】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
哺乳動物のナトリウムチャネル媒介性疾患または状態を処置、予防または改善する方法であって、治療有効量の請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物を、該方法を必要としている哺乳動物に局所投与するステップを含む、方法。
【請求項17】
前記疾患または状態が、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、内臓痛、ヘルペス後神経痛、がん疼痛、化学療法による疼痛、外傷痛、外科的疼痛、術後疼痛、そう痒症、変形性関節症、三叉神経痛、家族性肢端紅痛症、原発性肢端紅痛症、家族性直腸痛、出産疼痛、陣痛、神経因性膀胱、潰瘍性大腸炎、慢性疼痛、持続性疼痛、末梢媒介性疼痛、中枢媒介性疼痛、慢性頭痛、片頭痛、副鼻腔炎性頭痛、緊張性頭痛、幻肢痛、末梢神経傷害、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳動物がヒトである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
哺乳動物の電位依存性ナトリウムチャネルを介するイオン流の阻害によって疼痛を処置する方法であって、治療有効量の請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物を、該方法を必要としている哺乳動物に局所投与するステップを含む、方法。
【請求項20】
前記哺乳動物がヒトである、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−521232(P2013−521232A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555199(P2012−555199)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2011/026359
【国際公開番号】WO2011/106729
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(506030826)ゼノン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (47)
【氏名又は名称原語表記】XENON PHARMACEUTICALS INC.
【Fターム(参考)】