説明

局所投与用アルギニンヘテロマー

【課題】局所塗布することにより、皮膚に治療効果又は美容効果を与えることができる組成物の提供。
【解決手段】式Iのヘテロマーを含む局所用組成物。(I)A−R(式中、Aは、アルギニンのグアニジノ基が未反応のままであるように、第二の化合物Rとアルギニンのカルボキシ基又はアミノ基を介して共有結合しているアルギニンであり、Rはレチノール、レチナール、レチノイン酸、及びエトレチナートからなる群より選択されるレチノイドである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月30日付で提出された米国特許仮出願第60/755203号の優先権を主張するものであり、この仮出願は、その全体が完全な形で、参照により組み込まれている。
【0002】
本発明は、哺乳動物の皮膚への浸透能力が改善された、皮膚の健康及び外観に有益な効果を与えるアルギニンヘテロマーに関する。
【背景技術】
【0003】
L−アルギニンは、天然に存在するアミノ酸であって、人体において欠くことのできない多くの役割を果たす。こうした役割の一つは、一酸化窒素合成酵素(NOS)の基質としてのものである。体内において通常の条件下では、一酸化窒素(NO)の半減期は、メトヘモグロビン形成時の酸化ヘモグロビンによる迅速な不活化のため、わずか3〜5秒である。環状GMPは、NOの下流産物であり、NOの生物学的作用の多くを制御する一方、酵素の一酸化窒素合成酵素(NOS)ファミリーは、NOの産生を制御する。NOSには大きく分けて、1)誘導型(iNOS);2)神経型(nNOS);及び3)内皮型(eNOS)の3種類があり、これらはすべて皮膚で見られるものである。これら3種類のアイソフォームはいずれも、酸素及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を基質として必要とする。非対称性ジメチルL−アルギニン(ADMA)は、NOSファミリーの基本的(basal)阻害剤であり、高血圧、高コレステロール血症、及び血管拡張不全に付随するその他の疾病の症例においては、この物質が高濃度で認められている。L−アルギニンの濃度を上昇させると、NOの産生増大に至ることなくADMAの阻害作用が抑えられることがわかっている。
【0004】
NOは、微小血管系及び血流、関門機能の維持、並びに乾癬、紫外線への反応及び創傷治癒などの皮膚の炎症状態に対して作用を及ぼし、皮膚の生理機能において重要な役割を果たすことが知られている。組織中のNO濃度の上昇は、局所的な血管拡張及び血管新生を刺激する。しかし、NOは自由に拡散するため、結果として皮膚中で有効濃度を維持することは困難である。代替的戦略としては、アルギニン濃度を高めて、NOSがNOを産生する際に用いる基質の量を増大させることが挙げられる。しかし、アルギニン自体の皮膚浸透性は、非常に低いものである。他の組織におけるこの問題の1つの解決策は、L−アルギニンを結合させて、7〜15単位の長さのオリゴマーにすることである(オリゴアルギニン)。こうした化合物は、効果的に皮膚に浸透してNO濃度を上昇させることが可能であり、また、共有結合した物質を、細胞膜を通して運搬することがわかっている(Cosmetic Formulations containing L-ArginineOligomers、国際公開第03/072039号パンフレット(A2))。しかし、こうした効果が、オリゴアルギニンの比較的特異な運搬特性によるものであるかどうかは、不明であった。
【0005】
皮膚における血管新生の重要性に関する具体例は、健康な毛包の維持において、見受けられる。毛包のライフサイクルにおいては、血管新生は、血管新生促進因子と抗血管新生因子との間のバランスにより、その大部分が制御されている。毛包の栄養必要量の増大に必要な血流の増大を刺激するために、成長期は特に血管新生促進因子に依存していることがわかっている。(Cosmetic Formulations containing L-ArginineOligomers、国際公開第03/072039号パンフレット(A2))。
【0006】
本明細書に記載の本発明は、溶解度の増大と皮膚浸透量(flux across the skin)の増大とを組み合わせてアルギニンの経上皮送達を増大させるために、第二の(非オリゴアルギニン)化合物と化学結合したアルギニンを局所塗布することにより、皮膚に治療効果又は美容効果を与えるための戦略に関する。本発明のアルギニンヘテロマーは、アルギニンに関連する性質以外に、皮膚にとって補足的又は有益な他の性質も付加することができる。
【特許文献1】国際公開第03/072039号パンフレット(A2)
【発明の開示】
【0007】
本発明は、アルギニンヘテロマーを局所塗布することにより、皮膚に治療効果又は美容効果を与えるための戦略を提供する。アルギニンヘテロマーは、溶解度の増大及び皮膚浸透量の増大のうちの1つ以上によりアルギニンヘテロマーの経上皮送達を増大させるために、第二の(非オリゴアルギニン)化合物と化学結合したアルギニン単分子である。アルギニンヘテロマーの一般構造を、式Iに示す:
【0008】
式I
(I) A−R
(式中、Aは、遊離グアニジン基を有するアルギニン単分子であり、Rは、アルギニン又はオリゴアルギニンではない有機分子である第二の化合物である。)。アルギニン分子は、そのカルボキシ基又はアミノ基のいずれかを介して第二の化合物と結合していてもよく、アルギニンのグアニジノ基は遊離状態のままである。アルギニンヘテロマーの皮膚浸透量は、モノマーのアルギニン単独の場合よりも多い場合がある。
【0009】
本発明のアルギニンヘテロマーの第二の化合物は、アルギニンに関連する性質以外に、皮膚にとって補足的又は有益な他の性質を付加することができる。より具田的には、かかるヘテロマーの第二の化合物は、酸化防止能力、血管新生の増大、座瘡症状の軽減、線分泌物の減少、老化作用の軽減又は皺の減少などの他の効果を提供することができる。本発明の具体的実施形態の一例として、エステル結合によりビタミンEと結合したアルギニンが挙げられる。また、オリゴマーによる戦略と比較して、これらのアルギニンヘテロマーは、安全性及びコストの面でかなりの利益をもたらすものである。
【0010】
本発明の別の実施形態は、式Iのアルギニンヘテロマーを含む組成物を局所塗布するステップを含む、皮膚に有益な効果を与える方法を提供する。かかる有益な効果としては、日光により生じる損傷を軽減すること又は防止すること、酸化防止活性を提供すること、皮膚に細かい筋及び皺ができるのを減少させること、腺分泌物を減少させること、老化作用を軽減すること、座瘡を治療すること及び毛包中での血管新生を誘導することなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
すなわち、本発明は、
1.式Iのヘテロマー:
(I) A−R
(式中、Aは、アルギニンのグアニジノ基が未反応のままであるように、第二の化合物Rと共有結合しているアルギニンであり、Rは有機分子であり、前記ヘテロマーの皮膚浸透量は、アルギニン単独の場合よりも多い。)、
2.Rがビタミンであることを特徴とする上記1記載のヘテロマー、
3.RがビタミンCであることを特徴とする上記2記載のヘテロマー、
4.RがビタミンEであることを特徴とする上記2記載のヘテロマー、
5.RがビタミンDであることを特徴とする上記2記載のヘテロマー、
6.Rが脂肪酸であることを特徴とする上記1記載のヘテロマー、
7.Rがパルミチン酸であることを特徴とする上記6記載のヘテロマー、
8.Rがレチノイドであることを特徴とする上記1記載のヘテロマー、
9.AとRがアミド結合により結合していることを特徴とする上記1記載のヘテロマー、
10.AとRがエステル結合により結合していることを特徴とする上記1記載のヘテロマー、
11.式Iのヘテロマー
(I) A−R
(式中、Aは、アルギニンのグアニジノ基が未反応のままであるように、第二の化合物Rと共有結合しているアルギニンであり、Rは有機分子であり、前記ヘテロマーの皮膚浸透量は、アルギニン単独の場合よりも多い。)を含む組成物、
12.Rがビタミンであることを特徴とする上記11記載の組成物、
13.RがビタミンCであることを特徴とする上記12記載の組成物、
14.RがビタミンEであることを特徴とする上記12記載の組成物、
15.RがビタミンDであることを特徴とする上記12記載の組成物、
16.Rが脂肪酸であることを特徴とする上記11記載の組成物、
17.脂肪酸がパルミチン酸であることを特徴とする上記16記載の組成物、
18.Rがレチノイドであることを特徴とする上記11記載の組成物、
19.AとRがエステル結合により結合していることを特徴とする上記11記載の組成物、
20.AとRがアミド結合により結合していることを特徴とする上記11記載の組成物、
21.さらにスキンケア用調製物を含むことを特徴とする上記11記載の組成物、
22.さらに浴用調製物を含むことを特徴とする上記11記載の組成物、
23.さらに化粧用調製物を含むことを特徴とする上記11記載の組成物、
24.さらにアイケア用調製物を含むことを特徴とする上記11記載の組成物、
25.さらにリップケア用調製物を含むことを特徴とする上記11記載の組成物、
26.さらに日焼け防止用調製物を含むことを特徴とする上記11記載の組成物、
27.さらにヘアケア用調製物を含むことを特徴とする上記11記載の組成物、
28.さらに座瘡防止用調製物を含むことを特徴とする上記11記載の組成物、
29.さらに酸化防止用調製物を含むことを特徴とする上記11記載の組成物、
30.さらに乾癬防止用調製物を含むことを特徴とする上記11記載の組成物、
31.さらにコルチコステロイド調製物を含むことを特徴とする上記11記載の組成物、
32.式Iのヘテロマー:
(I) A−R
(式中、Aは、アルギニンのグアニジノ基が未反応のままであるように、第二の化合物Rと共有結合しているアルギニンであり、Rは有機分子であり、前記ヘテロマーの皮膚浸透量は、アルギニン単独の場合よりも多い。)を含む組成物を局所塗布するステップを含む、皮膚に有益な効果を与える方法、
33.有益な効果が、毛包における血管新生を促進するものであることを特徴とする上記32記載の方法、
34.有益な効果が、皮膚の老化の兆候を減少させるものであることを特徴とする上記32記載の方法、
35.有益な効果が、座瘡の症状を軽減するものであることを特徴とする上記32記載の方法、
36.有益な効果が、皮膚を日光に暴露することにより生じる損傷を軽減する又は防止するものであることを特徴とする上記32記載の方法、
37.有益な効果が、皮膚に細かい筋及び皺ができるのを減少させるものであることを特徴とする上記32記載の方法、
38.有益な効果が、腺分泌物を減少させるものであることを特徴とする上記32記載の方法、
39.有益な効果が、皮膚に酸化防止剤を提供するものであることを特徴とする上記32記載の方法、
40.組成物が、皮膚のきめをなめらかにするために塗布されることを特徴とする上記32記載の方法、
41.組成物が、皮膚に保湿及び潤滑効果を与えるために塗布されることを特徴とする上記32記載の方法、
42.第二の化合物がパルミチン酸であることを特徴とする上記32記載の方法、
43.組成物が、皮膚のきめをなめらかにするために塗布されることを特徴とする上記42記載の方法、
に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、一酸化窒素合成酵素の基質としての機能を果たし(場合によってはヘテロマーの処理を行う)、かつ、局所塗布した場合に、未処理のアルギニンに比べてヘテロマーの皮膚浸透量が増大している多数のアルギニンヘテロマーについて開示している。例えば、他の実施形態においては、ヘテロマーは酸化防止活性などの付加的な性質も提供している。
【0013】
本発明のヘテロマーは、式Iに記載の構造を有する:
(I) A−R
(式中、Aは、第二の化合物Rと共有結合しているアルギニン単分子である。)。アルギニン分子は、その遊離カルボキシ基又はアミノ基を介して結合していてもよく、アルギニンのグアニジノ基は、未反応かつ遊離状態のままである。第二の化合物であるRは、アルギニン又はオリゴアルギニンではない有機分子である。本発明の実施形態においては、第二の化合物Rは、アルギニンヘテロマーの油中又は水中での溶解度をアルギニン単独の場合よりも向上させること、及び、アルギニンヘテロマーの皮膚浸透速度をアルギニン単独の場合よりも向上させることからなる群から選択される1つ以上の性質をさらに提供する。第二の化合物は、皮膚に付加的な効果をさらに提供することができる。第二の化合物は、非毒性、非アレルギー性及び非刺激性であることから、哺乳動物組織との接触において適合性がある。適切な第二の化合物の例としては、ビタミン、レチノイド及び脂肪酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
アスコルビン酸(ビタミンC)、アルファ−トコフェロール(ビタミンE)及びレチノイド(ビタミンA)は、本発明に準拠して使用された場合に、皮膚にとって有益な性質を提供することができる。アスコルビン酸は、連続組織の合成を刺激し、特にコラーゲンの産生を刺激し、調節する。脂質の酸化や、長時間の紫外線暴露に起因する他の形態の細胞損傷を防止する又は最小限に抑えるのを助ける作用がある。アスコルビン酸は、メラニンの形成及び細胞膜からのヒスタミンの放出を阻害するのを助けると考えられており、皮膚におけるビタミンE欠乏を代償し、皮膚の退色防止に寄与し、抗フリーラジカル活性を有している。アルファ−トコフェロールは、細胞膜のリン脂質を保護し、フリーラジカルの悪影響から防護する酸化防止剤である(LB Chazan et al. Free Radicals and Vitamin E. Cah. Nutr. Diet. 1987 22(l):66-76)。レチノイドは、皮膚の炎症メディエーターを遮断し、I型及びIII型コラーゲンの増量につながるプロコラーゲンの産生を増大させる。
【0015】
いくつかの実施形態においては、第二の化合物は、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD1、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンD4、ビタミンD5、ビタミンE及びビタミンKなどのビタミンである。
【0016】
他の実施形態においては、第二の化合物は、レチノイドである。レチノイド類には、以下のものが含まれる:レチノール、ビタミンAの天然又は合成類似体(レチノール)、ビタミンAアルデヒド(レチナール)、オールトランス型、9−シス型及び13−シス型レチノイン酸を含むビタミンA酸(レチノイン酸)、エトレチナート、並びに欧州特許公開第0379367号明細書(A2)、米国特許第4887805号明細書及び米国特許第4888342号明細書(これらの開示内容は、すべて参照により本明細書に組み込まれる)に記載の他の物質。各種合成レチノイド及びレチノイド活性を有する化合物は、以下の米国特許第5514825号明細書、米国特許第5698700号明細書、米国特許第5696162号明細書、米国特許第5688957号明細書、米国特許第5677451号明細書、米国特許第5677323号明細書、米国特許第5677320号明細書、米国特許第5675033号明細書、米国特許第5675624号明細書、米国特許第5672710号明細書、米国特許第5688175号明細書、米国特許第5663367号明細書、米国特許第5663357号明細書、米国特許第5663347号明細書、米国特許第5648514号明細書、米国特許第5648503号明細書、米国特許第5618943号明細書、米国特許第5618931号明細書、米国特許第5618836号明細書、米国特許第5605915号明細書、米国特許第5602130号明細書における場合のように、それらがインビボでレチノイド活性を発揮する限りは、本発明において有用であると予想されている。レチノイド活性を有すると記載されているさらに他の化合物は、他の、米国特許第5648563号明細書、米国特許第5648385号明細書、米国特許第5618839号明細書、米国特許第5559248号明細書、米国特許第5616712号明細書、米国特許第5616597号明細書、米国特許第5602135号明細書、米国特許第5599819号明細書、米国特許第5556996号明細書、米国特許第5534516号明細書、米国特許第5516904号明細書、米国特許第5498755号明細書、米国特許第5470999号明細書、米国特許第5468879号明細書、米国特許第5455265号明細書、米国特許第5451605号明細書、米国特許第5343173号明細書、米国特許第5426118号明細書、米国特許第5414007号明細書、米国特許第5407937号明細書、米国特許第5399586号明細書、米国特許第5399561号明細書、米国特許第5391753号明細書などに記載されており、前述及び後述の特許及び参考文献の開示内容はすべて、ここにおいて参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
本発明のさらなる実施形態においては、第二の化合物は脂肪酸である。脂肪酸は、飽和又は不飽和脂肪族末端を有するモノカルボン酸である。International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, 7th Ed. (1997) volume 2, page 1567(その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる)にて定義されているように、脂肪酸は約7個又はそれ以上の炭素原子を有している。例えば、パルミチン酸は、ヤシ油及び他の脂肪中に見られる飽和脂肪酸であり、最も豊富な天然脂肪酸である。パルミチン酸は、皮脂腺により産生される皮膚の主要な脂肪酸の1つでもある。パルミチン酸は、スキンケア用調製物及び化粧用調製物に保湿剤として用いられており、皮膚を正常で健康な状態に正常化し、油分のバランスを安定させる。皮膚を柔軟にするとともに、角質化防止剤のような作用を及ぼす。乳化剤、界面活性剤、及び処方テクスチャライザー(formula texturizer)としても用いられる。パルミチン酸のエステルは、皮膚と毛髪に絹のような質感を与えるのに使用される。パルミチン酸は、ペンタペプチドの皮膚への浸透を可能にする担体としての機能を果たしており、潤滑剤として、広く用いられている。
【0018】
パルミチン酸に加えて、適切な脂肪酸としては、ウンデシン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、及びエルカ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。上記以外の適切な脂肪酸は、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, 7th Ed. (1997) volume 2, page 1567に収録されている。
【0019】
アルギニン分子と第二の化合物とは、共有結合によって結合している。結合の種類としては、エステル結合、アミド結合、エーテル結合及びカルバミド結合などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施形態としては、ビタミン類、レチノイド類、又は脂肪酸類を備えたアルギニンのヘテロマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
アルギニンヘテロマーは、皮膚に対する有益な効果を生み出すのに有効な量で、皮膚に浸透して送達される。本明細書で使用する「有益な効果」との語句は、皮膚の外観若しくは触感におけるあらゆる改善、又は日光などの外的原因若しくは老化の作用などの内的原因に起因する皮膚に対する損傷からのあらゆる保護効果を含むものである。「有効量」との語句は、皮膚の角質層を透過するアルギニンヘテロマーの量であって、所望の有益な効果を生み出すのに十分な量を指す。
【0021】
いったん皮膚に入ると、本発明のヘテロマーは分解してアルギニンと第二の化合物とを放出する場合がある。一酸化窒素合成酵素の基質としての機能を果たすことができるように、ヘテロマーのアルギニン部分のグアニジノ基が未反応かつ遊離状態のままである限り、ヘテロマーの分解は必要ない。塗布に先立って、製剤中でアルギニンヘテロマーを安定させることができる。したがって、アルギニンのより高速での経上皮送達は、目的とする有益な効果の提供と関連した方式で実現させることができる。
【0022】
本発明のアルギニンヘテロマーを、局所塗布を目的とした数多くの美容又は皮膚科学組成物に用いてもよい。アルギニンヘテロマーは毛包中の血管新生を刺激することができるため、これらの組成物を、抜け毛予防又は育毛促進に用いてもよい。育毛作用のために用いる場合は、これらの組成物を頭皮、眉毛又は睫毛に塗布する。色合いをよくする又はふくよかさを増すために、かかる組成物を唇に塗布してもよい。皮膚に塗布する場合は、細かい筋及び皺ができるのを減少させるため、皮膚の弾力を向上させるため、むくみを減少させるため、皮膚のきめをなめらかにするため、絹のような感触を皮膚に提供するため、保湿効果を提供するため、潤滑さを提供するため、自然な血色を提供するため、老化の作用を軽減するため、又は他の美容効果を提供するために、アルギニンヘテロマー組成物を用いてもよい。
【0023】
皮膚又は唇への塗布のため、アルギニンヘテロマーは、美容上又は皮膚科学上許容可能な担体又はビヒクルであって、塗布される体の部位に適した担体又はビヒクルを含む組成物中に包含されている。本明細書で使用する「美容上又は皮膚科学上許容可能な」との語句は、過度の毒性、不適合性、不安定性などのない、生理学的組織との接触に用いるのに適した組成物又は化合物を含むものである。
【0024】
皮膚、唇及び毛髪に塗布する製品に一般に使用される多数の組成物及び製剤を、本発明のアルギニンヘテロマーと併用することができる。そのようなものとしては、皮膚の洗浄及びクレンジング用調製物、合成洗剤、ボディーローション、乳液又は皮膚用オイル、皮膚のピーリング若しくはスクラブ用調製物又はピーリングマスクなどのスキンケア用調製物;液体又は固形の浴用調製物、バスキューブ及びバスソルトなどの浴用調製物;日中用クリーム又は粉末クリーム、フェースパウダー、頬紅又はクリーム状のメイクアップ用品などの形態の顔用メイクアップ用品などの個人的な美容ケア用調製物;アイシャドウ、マスカラ、アイライナー又はアイクリームなどの目元用調製物;口紅、リップグロス又はリップライナーペンシルなどのリップケア用調製物;マニキュア液(nail polish、nail varnish)などのネイルケア用調製物;フットバス、足用パウダー、足用クリーム又は足用バルサム、特殊なデオドラント用品及び制汗剤又はたこ取り用調製物などのフットケア用調製物;ローション、クリーム、オイル、日焼け防止剤、事前日焼け(pre-tanning)用調製物、日焼け後(aftersun)用調製物、皮膚の日焼け用調製物又はセルフタンニング用クリームなどの日焼け防止用調製物;シャンプー、コンディショナー、スタイリングクリーム、スタイリングジェル、フォーム、リンス、ヘアスプレー又は毛髪用染料及び着色料などのヘアケア用又はヘアトリートメント用調製物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の組成物は、溶液、乳液、微小乳液、懸濁液、クリーム、ローション、ジェル、例えば口紅などの蝋分の多い製品及びパウダー、並びに制汗剤及びアイライナーを含むがこれらに限定されない他の各種固形化粧品の形態であってもよい。
【0026】
本発明のアルギニンヘテロマー組成物は、抗菌剤、保湿剤、水和剤、透過剤、防腐剤、乳化剤、天然又は合成油、溶媒、界面活性剤、洗浄剤、ゲル化剤、皮膚軟化剤、酸化防止剤、芳香剤、賦形剤、増粘剤、ワックス、臭気吸収剤、染料、着色料、パウダー、粘度調整剤、麻酔剤、かゆみ防止剤、植物抽出物、コンディショニング剤、色素沈着剤又は美白剤、光輝剤、毛髪用顔料添加剤、湿潤剤、雲母、ミネラル、ポリフェノール、シリコーン又はシリコーン誘導体、日焼け防止剤、ビタミン、植物性医薬品、及びInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, 7th Ed. (1997)に列挙されているようなその他の化合物などの、通常スキンケア製品及びヘアケア製品に使用される他の原材料も含むことができる。
【0027】
本発明の組成物は、アルギニンヘテロマー以外に有効成分を含むことができる。例えば、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、レゾルシノール、及び硫黄などを含むがこれらに限定されない座瘡防止剤;アスコルビン酸、カフェー酸(caffeic acid)、システイン、ヒドロキノン及びトコフェロールなどを含むがこれらに限定されない酸化防止剤;サリチル酸、コールタール及びレチノイドなどを含むがこれらに限定されない乾癬治療用化合物;コルチゾン、ヒドロコルチゾン及びプレドニゾンなどを含むがこれらに限定されないコルチコステロイドがある。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態においては、皮膚老化の治療、軽減又は防止にアルギニンヘテロマーが用いられる。老化による皮膚損傷としては以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:細かい皺及び深い皺、皮膚の筋、ひび割れ、突起物(bump)、大きな毛穴、鱗様状態(scaliness)、皮膚の弾力の喪失、たるみ、皮膚の張り又は引き締まりの喪失、退色、老人性の染み及びそばかすなどの過度に色素が沈着した部位、角化症、分化異常、過角化、弾性線維症、コラーゲン分解、並びに、角質層、真皮、表皮、皮膚の血管系、及び下層組織、特に皮膚の近くの下層組織における、他の生理学的変化。皮膚の老化は、実際に年齢を重ねていることによる場合、又は長時間に及ぶ日光への暴露などの外部要因による場合があるが、本発明の組成物は、発生メカニズムがどのようなものであっても、これらの及び他の形態の皮膚損傷を、治療、軽減又は防止すると予想されている。
【0029】
本発明の組成物は、治療によって恩恵を受けるであろう対象又は患者、すなわち、ヒト又は他の哺乳動物の皮膚又は上皮に塗布する製品という形態であってもよい。本発明の組成物及び方法は、医薬的及び/又は健康関連の用途があり、治療を必要とする又は治療により恩恵を受ける人々に、さまざまな病状の治療を施すために用いることができる。例えば、本明細書に記載の本発明を、多汗症、座瘡又は分泌物若しくは汗の過剰な産生を伴う他の症状の治療に用いてもよい。
【0030】
一般に、本発明の組成物は、アルギニンヘテロマーと担体とを混合することにより調製され、そして通常はそれに加えて1つ以上の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤も混合する。アルギニンヘテロマーは、約0.001%から飽和溶液までの濃度で組成物中に存在する。ある実施形態では約0.01%〜約30%であり、他の実施形態では約0.1%〜約20%である。その最も単純な形態では、本発明の組成物は、単純な水性の薬学的に許容可能な担体又は希釈剤、例えば緩衝生理食塩水などを含んでいてもよい。しかし、かかる組成物は、局所用の医薬組成物又は薬用化粧品組成物では一般的な他の原材料、すなわち、皮膚科学的又は薬学的に許容可能な、担体、ビヒクル又は媒体、すなわち、それらが塗布される組織との適合性がある担体、ビヒクル又は媒体を含んでいてもよい。本明細書で使用する「皮膚科学的又は薬学的に許容可能な」という語句は、過度の毒性、不適合性、不安定性などのない、特定の組織との接触に使用する場合又は一般の患者に使用する場合に適した組成物又は成分を含む。必要に応じて、本発明の組成物は、考慮中の分野において、及びとりわけ美容及び皮膚科学分野において従来使用されている、どのような原材料を含んでいてもよい。かかる組成物は、ある程度の量の小アニオン、好ましくは多価アニオン、例えば、リン酸、アスパラギン酸、又はクエン酸も含んでいてもよい。
[実施例]
【実施例1】
【0031】
目的:
【0032】
浸透を高めて治療効果を増大させるために、アルギニン、アルギニン−ビタミンCの新規抱合物(conjugations)を開発すること。
【0033】
Arg−ビタミンC調製物:
【0034】
BocArg(Boc)OH(159mg、0.33mmol)を含むジメチルホルムアミドの溶液を調製し、二塩化エチレン(EDC、70mg、0.36mmol)に続いて4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、2mg、0.02mmol)を添加することにより、ビタミンCとアルギニンのヘテロマーを調製した。反応物を、室温にて2時間攪拌した。TLC分析を行って、反応の進行状況を確認した(下記参照)。さらに22.7mgのEDCを添加して、反応物を半時間攪拌した。反応物が薄紫色に変化するのが観察された。反応物から、44mgの化合物2が得られた。化合物のIRを行った。かかるIRを以下に示す。MS(ES):1101.9、745.6、645.5、630.6、530.6、502.4。
【0035】
(Bocを除去するための)C−Argの脱保護:
【0036】
25mgの化合物2を含むジクロロメタン(〜10ml)の溶液を調製し、氷浴中で攪拌しながら2mlまでのトリフルオロ酢酸を添加することにより、化合物2のBoc保護基を除去した。混合物を1時間攪拌し、その後、室温まで温度を上げた。室温で2時間経過した後のTLC(10%MeOH/ジクロロメタン)には、出発原料の消失及び原点の(生成物)スポットの強化が見られた。化合物4は、その溶媒系において、低いRf値のUV活性スポットを示した。減圧下で溶媒を除去し、残留物をトルエンと2回共沸させ、25mgの化合物4を得た。
【0037】
結果:
【0038】
この実験は、アルギニン−ビタミンC化合物の合成を示すものである。
【実施例2】
【0039】
手順:
【0040】
1mlの無水塩化メチレンにトリホスゲン(0.1g、0.33mmole)を溶解させることにより、アルギニンとビタミンDのヘテロマーを調製した。ビタミンD(0.385g、1mmole)及びDMAP(0.61g、5mmole)を含む2mlの塩化メチレンの冷却溶液(0度)に、トリホスゲン溶液を滴下により添加した。反応混合物を0度にて1.5時間攪拌した。L−アルギニン(0.261g、1.5mmole)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(523ul、3mmole)との混合物を、トリホスゲン混合物に滴下により添加した。一晩、反応物の温度を室温まで上げ、205mgの白色固形物を得た(収率35%)。この実験は、アルギニン−ビタミンD3ヘテロマーの合成を示すものであり、TLCを図5に示す。
【実施例3】
【0041】
マウスの皮膚を通じてのアルギニンの局所送達に対するインビボでの累積的有効性。
【0042】
目的:
【0043】
モデル動物系においてアルギニン−ビタミンEヘテロマー及びアルギニン−パルミチン酸塩(palmitate)ヘテロマーを調べることにより、アルギニンのヘテロマーが皮膚を通過してアルギニン/NOS活性に関連する、先に特徴づけられた効果を発揮する可能性について、評価を行った。どちらのヘテロマーも、アルギニン単独の場合と比べて脂質の溶解度を向上させ、経皮浸透量を増大させている。一方、ビタミンEヘテロマーについては、その酸化防止特性により別の機能的な効果をもたらすことも予想されている。
【0044】
調製:
【0045】
L−アルギニン(バッチ#02202JA、A92406−25G、Sigma Aldrich社製)から、アルギニン−パルミチン酸塩ヘテロマー及びアルギニン−ビタミンEヘテロマーを合成した。以下のものを添加することにより、原液を調製した:
【0046】
1.Arg−パルミチン酸塩:0.9996gのアルギニン+パルミチン酸塩を、6mlのホホバ油(オレゴン州ポートランドのEssential Wholesale社製)に溶解させ、その後、6ml(1:1で希釈)のセタフィル(Cetaphil)クリームで希釈した。
【0047】
2.Arg−ビタミンE:0.419gのアルギニン+ビタミンEを、6mlの脱イオンHOに溶解させ、その後、6ml(1:1で希釈)のセタフィルクリームで希釈した。
【0048】
3.セタフィル:6mlのセタフィルのみで調製した。
【0049】
Arg−パルミチン酸塩、Arg−ビタミンE又はコントロールであるセタフィルでの処置のため、局所治療薬の1日当たりの投与量である、計量された200μlのアリコートを、容量650μlの微小遠心管中に調製した。
【0050】
アルギニン化合物の局所塗布
【0051】
研究手順:
【0052】
動物(C57ブラックマウスの雌6匹、マサチューセッツ州ウィルミントンのCharles River Laboratories社製)に、酸素を混合したイソフルランを吸入させて麻酔をかけた後、0.5mlの齧歯類用麻酔カクテル(100mg/mlのケタミンが3.75ml、20mg/mlのキシラジンが3.00ml、及び生理食塩水が23.25ml)を腹腔内に注射した。必要に応じて、イソフルランを動物に補充した。処置群のマウスはそれぞれ4匹、コントロール群のマウスは3匹であった。麻酔後、治療薬塗布の1日目に、各マウスの背部の2.0cm×2.0cmの投与部位をバリカンで慎重に剃毛し、動物に対し、ロジン混合物(Surgiwax、カリフォルニア州ロサンゼルスのArdellInternational社製)を用いて背部の同じ部位に脱毛処置を施した。治療薬を含むセタフィル保湿クリーム(テキサス州フォートワースのGalderma社製)を塗布している間、動物にはイソフルランのみを吸入させて麻酔をかけておき、計量された200μlの投与量の適切な治療薬を、背部の皮膚の頭側部分(マウスの口又は四肢が届かない部分であるため、選択された)に塗布した。小さな金属製スパチュラで適切な治療薬を皮膚に塗布している間、動物をそのまま1〜2分間麻酔下に置いておいた。低体温症を予防するために、熱を管理した環境で動物を回復させ、ひとたび反応を示した動物に対しては、水と食料を一晩自由に摂取させた。7日間にわたって、この手順を1日に1回ほぼ同じ時刻に繰り返した。7日目の処置の後、マウスにCOを吸入させて安楽死させ、処置した皮膚の断片は、最後の治療薬を塗布してから24時間後に、盲検化された観察者によってその全層が回収された。処置した断片を三等分して、頭側の部分は、10%の中性緩衝ホルマリンで12〜16時間固定した後、パラフィン包埋時まで70%エタノール中で保存した。中央の部分は、形態学的評価のためのヘマトキシリン及びエオシン、並びに炎症の指標としての好中球の浸潤を評価するためのクロロ酢酸エステラーゼ染色に利用した。処置した尾側の断片は、可溶化研究のために即座に冷凍された。
【0053】
画像分析及び統計的分析:
【0054】
Retiga 1300Bカメラ(カナダ国、ブリティッシュコロンビア州バーナビーのQImaging社製)を用いて、各切片の高解像度のデジタル画像を得た。Image-Pro Plus分析ソフトウェア(メリーランド州シルバースプリングのMedia Cybernetics社製)を用いて画像の分析を行い、形態学的評価を決定し、正のピクセルとして表した。その後、Statviewソフトウェア(カリフォルニア州バークレーのAbacus社製)を用いて、ウィルコクソンの符号付き順位検定において、95%信頼区間の有意差分析によって、各群について平均及び標準誤差を確認した。
【0055】
Arg−パルミチン酸塩及びArg−ビタミンEに関する結果:
【0056】
Arg−パルミチン酸塩群、Arg−ビタミンE群及びコントロール群について、平均、標準誤差及びP値を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
結論:
【0059】
局所塗布された場合のアルギニンヘテロマーの皮膚浸透量は、アルギニン及び/又はヘテロマーの付加的な機能性に関連するいくつかの治療効果をもたらすには十分なものである。
【実施例4】
【0060】
目的:
【0061】
モデルヒト系(human model system)においていくつかのアルギニンヘテロマーを調べることにより、アルギニンのヘテロマーが皮膚を通過してアルギニン/NOS活性に関連する、先に特徴づけられた効果を発揮する可能性について、評価を行った。すべてのヘテロマーが、アルギニン単独の場合と比べて脂質の溶解度を向上させ、経皮浸透量及び灌流を増大させている。
【0062】
手順:
【0063】
流量計のプローブの修正及びアルギニンヘテロマー製剤
【0064】
無水ラノリンUSP、メチルフェニルグリシド酸エチル、セチルエステル、D−アルファ−酢酸トコフェリルUSP、ワセリンUSP、サリチル酸USP、桂皮酸ベンジル、及び4.0mg/mlのL−Arg(9)(9個のアルギニンからなるオリゴマー)、L−Arg−E、L−Arg−D又はL−Arg−Palmのいずれかからなるリップクリーム製剤(ニューヨーク州ファーミングデールのABBE Labs社製)を得た。加えて、100%の白色ワセリンゼリー(コネチカット州グレニッチのUnilever社製)を含むコントロールの治療薬も得た。濃度が50mg/mlのL−Argの水溶液(ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich社製)を使用した。対象の額中央にある皮膚の1区画上でプローブが軽く保持されるように、遷音速レーザードップラー流量計BLF21シリーズ(ニューヨーク州イサカのTransonic Systems社製)のプローブチップを、伸縮性のあるヘッドバンドに埋め込んだ。
【0065】
前額部の処置
【0066】
修正したヘッドバンドを5分間装着させることにより、処置に先立って前額部の温度を正常化した。その後、リップクリーム製剤又はコントロールを、プローブと接触する部位の皮膚に綿棒で塗布した。組織灌流の読み取り結果を、塗布の1分後から開始して30秒毎に5分間にわたって記録した(1回の処置につきn=55)。
【0067】
統計的分析
【0068】
Statviewソフトウェア(カリフォルニア州バークレーのAbacus Concepts社製)を用いて、平均及び標準誤差を評価した。その際にANOVA反復測定を用いて比較を行い、FisherのPLSD又はScheffeのF検定を用いた事後検定で有意性を95%と確認した。すべての手順及び分析は、盲検化された観察者によって行われた。
【0069】
前額部灌流の結果:
【0070】
アルギニンヘテロマー群及びコントロールについて、平均、標準誤差及びP値を表2に示す。図6は、アルギニンヘテロマー群及びコントロールについて、局所塗布されたアルギニンヘテロマーがヒトの前額部の灌流に及ぼす作用を示す。
【0071】
【表2】

【0072】
結論:
【0073】
すべてのヘテロマーが、基本となるコントロールと比較して、統計的に有意な灌流増大を引き起こしていた。L−Arg−D及びL−Arg−Palmは、組織灌流において、基本となるコントロールに対してそれぞれ175%と117%の増大を示した。勇気づけられることに、本発明者らは、すべてのヘテロマーについて溶解度及び皮膚浸透量が増大していた一方で、L−Arg−E以外はすべて局所塗布後に灌流が増大していたことを見出した。局所塗布された場合のアルギニンヘテロマーの皮膚浸透量は、アルギニン及び/又はヘテロマーの付加的な機能性に関連するいくつかの治療効果をもたらすには十分なものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】ビタミンCからのアルギニンヘテロマーの形成を示す略図であって、図中、Rは水素又はBocで保護されたアルギニンである。
【図2】ビタミンCからのアルギニンヘテロマーの形成を示す略図であって、図中、Gは水素又は脱保護されたアルギニンである。
【図3】アルギニン−ビタミンC化合物を示すIRグラフである。
【図4】ビタミンD3からのアルギニンヘテロマーの形成を示す略図である。
【図5】Arg−VitD3生成物を示すTLCである。
【図6】局所塗布されたL−アルギニンヘテロマーが、ヒトの前額部灌流に及ぼす作用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのヘテロマー
(I) A−R
(式中、Aは、アルギニンのグアニジノ基が未反応のままであるように、第二の化合物Rとアルギニンのカルボキシ基又はアミノ基を介して共有結合しているアルギニンであり、Rはレチノール、レチナール、レチノイン酸、及びエトレチナートからなる群より選択されるレチノイドであり、前記ヘテロマーの皮膚浸透量は、アルギニン単独の場合よりも多く、さらに局所投与用に皮膚科学上許容可能な担体、ビヒクル、又は媒体を含む。)を含む局所用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−28633(P2013−28633A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−213441(P2012−213441)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2008−548855(P2008−548855)の分割
【原出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(504319459)ルバンス セラピュティックス インク. (12)
【Fターム(参考)】