説明

局所抗菌処方

【課題】性行為中におけるHIV伝染および/または感染のリスクを低下させる、抗菌活性を有する化合物の処方の提供。特に、抗−HIV特性を有する化合物の処方の提供。
【解決手段】局所適用に適当なヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、好ましくは、下記構造の[2−(6−アミノ−プリン−9−イル)−1−メチル−エトキシメチル]−ホスホン酸(テノホビル、PMPA)、またはそれらの生理学的な機能誘導体の処方、およびHIV感染を予防する際のそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、抗菌活性、さらに特定すると、抗−HIV特性を有する化合物の処方に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染および関連した疾患は、全世界における重大な公衆衛生上の問題である。HIV/AIDSの問題への1つのアプローチは、HIVの伝染リスクを減らし、それにより、新たに感染する患者数を減らすことにある。処置法または治療法が利用可能となっても、最初の段階での感染の予防は、防御の最前線として残りそうである。医学的、生理学的および経済的な理由のために、AIDSに罹った患者を治療するよりもむしろ、初期感染を予防する方が好ましい。
【0003】
性感染症(STDs)、それらの伝染様式、およびいわゆる「セーフセックス」技術に関する教育は、性行為によるSTDの伝染のリスクを低くするのに、ある程度有望である。血液供給のスクリーニングは、輸血および関連した医療行為を介したSTDを引き起こす生物体の伝染のリスクを低下させるのに役立っている。それらの既知の手段がSTDの予防に有効性があったとしても、現在のセーフセックス技術は、多くの理由(例えば、不注意、知識の欠如、正しくない技術、文化的障壁、意図しないまたは自発的な性行為など)の理由のために、常に使用されている訳ではなく、常に正しく使用されている訳でもない。さらに、セーフセックス技術は、(禁欲する以外に)、たとえ使用されても、常に有効である訳ではない。
【0004】
種々の市販の膣用クリームおよび軟膏が現在入手可能である。ノノキシノール−9、オクトキシノール−9、および塩化ベンザルコニウムは、一般に、座薬、インサート、クリーム、薄膜、発泡体およびゲルとして、利用可能である。このような市販品の例には、例えば、K−Y Plus(商標)(2.2パーセントのノノキシノール−9;Advanced Care Products,Raritan,N.J.);Encare(商標)(3パーセントのノノキシノール−9;Thompson Medical Co.,West Palm Beach,FIa.);Gynol II(Advanced
Care Products,Raritan,N.J.);Ortho Options Conceptrol(Advanced Care Products,Raritan,N.J.);Semicid(Whitehall Robbins Healthcare,Madison,N.J.);およびAdvantage−S(Columbia Laboratories,Aventura,FIa.)が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、HIVに対して全体的な有効な処方はない。従って、性行為中におけるHIV伝染および/または感染のリスクを低下させる改良組成物および方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTIs)、好ましくは、[2−(6−アミノ−プリン−9−イル)−1−メチル−エトキシメチル]−ホスホン酸(テノホビル、PMPA)、またはそれらの生理学的な機能誘導体(これは、局所(例えば、膣、直腸など)適用に適当である)およびHIV感染を予防する際のそれらの使用に関する。
【0007】
本発明は、一般に、性行為を介したHIVの伝染を予防するかおよび/またはそのリスクを低下させる組成物および方法に関する。本発明は、主に、異性間の性行為(すなわち、男性/女性の膣性交)に向けられているものの、本発明の組成物はまた、肛門性交(男性/女性または男性/男性)を行っている人にも使用できる;肛門性交向けの本発明の組成物は、好ましくは、直腸内での通常のpH値に対して緩衝化性能を調節するように、また、その処方の潤滑性を変えることにより、改良される。
【0008】
異性間の膣性交には、この組成物は、性交前に膣に挿入され得る。肛門性交(異性間または同性間の性行為)には、この組成物は、性交前に、直腸に挿入され得る。膣性交または肛門性交のいずれかには、この組成物は、潤滑剤としても作用し得る。さらに保護を加えるために、この組成物は、性交または他の性的行為の前に適用すること、および、もし適当なら、コンドームを使用することが好ましい。さらなる保護のためには、この組成物は、性行為が完了した後、できるだけ早く再適用され得る。
【0009】
もし望ましいなら、この組成物には、組成物の安全性または効力を妨害しない限り、香料、香水、芳香剤および着色剤が混ぜ合わせられ得る。実際、本発明の組成物にこのような香料、香水、芳香剤および着色剤を混ぜ合わせると、この組成物が性行為中に使用される可能性が高まり得る。
【0010】
本発明の方法の1つの有利な点には、異性間、両性間および同性間による広範囲の性行為(膣性交または肛門性交)中における保護に使用できることがある。HIVの伝染を減らす本発明の方法の別の有利な点は、この方法が、挿入される側の人によって、最も容易に実行および/または使用され得ることにある。それゆえ、女性は、使用方法について相手が知っていても知らなくても、自分自身(および相手)を守るために、本発明の方法を使用し得る。さらに、相手は、AIDに罹っていないという主張に頼ったり自分を守るためにコンドームを使用することの同意を得る必要はない。性行為を行っている人のいずれかまたは両者(特に、女性)は、本発明の方法の使用を開始し実行できる。好ましくは、この方法は、性行為の前、最も好ましくは、性行為の前および後に、使用される。さらに、本発明の組成物は、細菌による膣疾患の予防および/または治療にも有用であるという利点が加わる。
例えば、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
感染した動物におけるHIV感染の症状または影響を予防する方法であって、該動物に、薬学的に受容可能なビヒクルと組み合わせてNRTIの有効量を含有する局所処方の予防有効量を投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
前記NRTIが、[2−(6−アミノ−プリン−9−イル)−1−メチル−エトキシメチル]−ホスホン酸ジイソプロポキシカルボニルオキシメチルエステル(テノホビル)またはそれらの生理学的な機能誘導体を含有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記処方が、約0.2〜約2重量パーセントのテノホビルを含有する、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記NRTIが、テノホビルの生理学的な機能誘導体を含有し、該誘導体が、以下の構造を有する、項目1に記載の方法:
【化1】

ここで、RおよびRは、別個に、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C20アリール、C〜C20置換アリール、C〜C20アリールアルキル、C〜C20置換アリールアルキル、アシルオキシメチルエステル−CHOC(=O)Rおよびアシルオキシメチルカーボネート−CHO(=O)ORから選択され、ここで、Rは、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C20アリールまたはC〜C20置換アリールである;
は、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、またはCHORであり、ここで、Rは、C〜Cアルキル、C〜CヒドロキシアルキルまたはC〜Cハロアルキルである;
およびRは、別個に、H、NH、NHRおよびNRから選択され、ここで、Rは、C〜Cアルキルである;そして
およびRは、別個に、HおよびC〜Cアルキルから選択される、
方法。
(項目5)
NRTIと、局所適用に適当な薬学的に受容可能な媒体とを含有する、医薬処方。
(項目6)
[2−(6−アミノ−プリン−9−イル)−1−メチル−エトキシメチル]−ホスホン酸ジイソプロポキシカルボニルオキシメチルエステル(テノホビル)またはそれらの生理学的な機能誘導体と、局所適用に適当な薬学的に受容可能な媒体とを含有する、医薬処方。
(項目7)
前記NRTIが、テノホビルの生理学的な機能誘導体を含有し、該誘導体が、以下の構造を有する、項目5に記載の処方:
【化2】

ここで、RおよびRは、別個に、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C20アリール、C〜C20置換アリール、C〜C20アリールアルキル、C〜C20置換アリールアルキル、アシルオキシメチルエステル−CHOC(=O)Rおよびアシルオキシメチルカーボネート−CHO(=O)ORから選択され、ここで、Rは、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C20アリールまたはC〜C20置換アリールである;
は、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、またはCHORであり、ここで、Rは、C〜Cアルキル、C〜CヒドロキシアルキルまたはC〜Cハロアルキルである;
およびRは、別個に、H、NH、NHRおよびNRから選択され、ここで、Rは、C〜Cアルキルである;そして
およびRは、別個に、HおよびC〜Cアルキルから選択される、
処方。
(項目8)
項目5〜7に記載のゲル処方。
(項目9)
項目5〜7に記載のクリーム処方。
(項目10)
項目5〜7に記載の発泡体処方。
(項目11)
項目5〜7に記載の座薬処方。
(項目12)
項目5〜7に記載の処方で被覆されたコンドーム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(代表的な実施態様の詳細な説明)
さて、本発明の特定の実施態様を詳細に言及するが、それらの例は、添付の図面で説明されている。本発明は、列挙した請求の実施態様に関連して記述されているものの、それらは、本発明をこれらの実施態様に限定するとは解釈されないことが分かる。逆に、本発明は、全ての代替物、改良および均等物を含むと解釈され、これらは、請求の範囲で規定した本発明の範囲内に含まれ得る。
【0012】
(定義)
特に明記しない限り、本明細書中で使用する以下の用語および語句は、以下の意味を有すると解釈される:
「生理学的な機能誘導体」との用語は、所定のNRTIと同じまたはほぼ同じ生理学的機能を有する薬学的に活性な化合物を意味する。本明細書中で使用する「生理学的な機能誘導体」との用語には、以下のいずれかが挙げられる:生理学的に受容可能な塩、エーテル、エステル、プロドラッグ、溶媒和物、立体異性体(鏡像異性体、ジアステレオマー、あるいは立体異性的に富んだまたはラセミ混合物を含めて)、およびレシピエントに投与するとこのような化合物あるいはそれらの抗菌活性代謝物または残渣を(直接的または間接的に)提供できる任意の他の化合物。
【0013】
「バイオアベイラビリティー」とは、薬学的に活性な薬剤を身体に導入した後、その薬剤が標的組織に利用可能となる程度である。薬学的に活性な薬剤のバイオアベイラビリティーを高めると、所定用量以上に対して、この薬学的に活性な薬剤の多くが標的組織部位に利用可能となるので、患者のより効率的かつ効果的な治療ができるようになる。
【0014】
本発明の組み合わせの化合物は、「活性成分」または「薬学的に活性な薬剤」と呼ばれ得る。
【0015】
本明細書中で使用する「プロドラッグ」との用語は、生体系に投与したとき、自発的化学反応、酵素触媒化学反応および/または代謝化学反応の結果として、薬剤物質(すなわち、活性成分)を生じる任意の化合物を意味する。
【0016】
「プロドラッグ部分」とは、代謝中、全身的、細胞内部において、加水分解、酵素開裂またはある種の他のプロセスにより、活性阻害剤化合物から分離する不安定な官能基を意味する(Bundgaard,Hans,「Design and Application of Prodrugs」 in Textbook of Drug Design and Development(1991),P.Krogsgaard−Larsen and H.Bundgaard,Eds.Harwood Academic Publishers,pp.113−191)。プロドラッグ部分は、薬剤の送達、バイオアベイラビリティーおよび効能を最適にするために、溶解度、吸収および親油性を高めるように働くことができる。「プロドラッグ」は、それゆえ、治療的に活性な化合物の共有結合的に変性された類似物である。
【0017】
「アルキル」とは、親アルカン、アルケンまたはアルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された飽和または不飽和で直鎖、分枝または環状の炭化水素ラジカルを意味する。典型的なアルキル基は、1個〜18個の飽和および/または不飽和炭素(例えば、ノルマル、第二級、第三級または環状炭素原子)からなる。例には、メチル(Me、−CH)、エチル(Et、−CHCH)、アセチレン(−C≡CH)、エチレン、ビニル(−CH=CH)、1−プロピル(n−Pr、n−プロピル、−CHCHCH)、2−プロピル(i−Pr、i−プロピル、−CH(CH)、アリル(−CHCH=CH)、プロパルギル(−CHC=CH)、シクロプロピル(−C)、1−ブチル(n−Bu、n−ブチル、−CHCHCHCH)、2−メチル−1−プロピル(i−Bu、i−ブチル、−CHCH(CH)、2−ブチル(s−Bu、s−ブチル、−CH(CH)CHCH)、2−メチル−2−プロピル(t−Bu、t−ブチル、−C(CH)、1−ペンチル(n−ペンチル、−CHCHCHCHCH)、2−ペンチル(−CH(CH)CHCHCH)、3−ペンチル(−CH(CHCH)、2−メチル−2−ブチル(−C(CHCHCH)、シクロペンチル(−C)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH)CH(CH)、3−メチル−1−ブチル(−CHCHCH(CH)、2−メチル−1−ブチル(−CHCH(CH)CHCH)、1−ヘキシル(−CHCHCHCHCHCH)、5−ヘキセニル(−CHCHCHCHCH=CH)、1−ヘキシル(−CH(CH)CHCHCHCH)、3−ヘキシル(−CH(CHCH)(CHCHCH))、シクロヘキシル(−C11)、2−メチル−2−ペンチル(−C(CHCHCHCH)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CH(CH)CHCH)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CHCH(CH)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH)(CHCH)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CHCH)CH(CH)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CHCH(CH)、および3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH)C(CHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
「アリール」とは、親芳香環系の単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導された6個〜20個の炭素原子の一価炭化水素ラジカルを意味する。典型的なアリール基には、ベンゼン、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導されたラジカルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
「アリールアルキル」とは、炭素原子(典型的には、末端炭素原子またはsp炭素原子)に結合した水素原子の1個をアリールラジカルで置き換えた非環式アルキルラジカルを意味する。典型的なアリールアルキル基には、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アリールアルキル基は、6個〜20個の炭素原子を含有し、例えば、そのアルキル部分(例えば、アリールアルキル基のアルカニル基、アルケニル基またはアルキニル基)は、1個〜6個の炭素原子を有し、そしてアリール部分は、5個〜14個の炭素原子を有する。
【0020】
「置換アルキル」、「置換アリール」および「置換アリールアルキル」とは、それぞれ、1個またはそれ以上の水素原子をそれぞれ別個に置換基で置き換えたアルキル、アリールおよびアリールアルキルを意味する。典型的な置換基には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:−X、−R、−O、−OR、−SR、−S、−NR、−NR、=NR、−CX、−CN、−OCN、−SCN、−N=C=O、−NCS、−NO、−NO、=N、−N、NC(=O)R、−C(=O)R、−C(=O)NRR、−S(=O)、−S(=O)OH、−S(=O)R、−OS(=O)OR、−S(=O)NR、−S(=O)R、−OP(=O)ORR、−P(=O)ORR−P(=O)(O、−P(=O)(OH)、−C(=O)R、−C(=O)X、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)O、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NRR、−C(S)NRR、−C(NR)NRRであって、ここで、各Xは、別個に、ハロゲン:F、Cl、BrまたはIである;そして各Rは、別個に、−H、アルキル、アリール、複素環、またはプロドラッグ部分である。
【0021】
「ヘテロアリール」および「複素環」とは、1個またはそれ以上の環原子がヘテロ原子(例えば、(炭素と対照的に)窒素、酸素およびイオウ)である環系を意味する。複素環は、以下で記載されている:Katritzky,Alan R.,Rees,C.W.,and Scriven,E.Comprehensive Heterocyclic Chemistry(1996)Pergamon Press;Paquette,Leo A.;Principles of Modern Heterocyclic Chemistry W.A.Benjamin,New York,(1968)、特に、1、3、4、6、7および9章;「The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs」(John Wiley & Sons,New York,1950から現在)、特に、13、14、16、19および28巻。複素環の例には、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、2−イミダゾール、4−イミダゾール、3−ピラゾール、4−ピラゾール、ピリダジン、ピロリジン、ピラジン、プリン、シンノリン、フタラジン(pthalazine)、キナゾリン、キノキサリン、3−(1,2,4−N)−トリアゾリル、5−(1,2,4−N)−トリアゾリル、5−テトラゾリル、4−(1−O,3−N)−オキサゾール、5−(1−O,3−N)−オキサゾール、4−(1−S,3−N)−チアゾール、5−(1−S,3−N)−チアゾール、2−ベンゾオキサゾール、2−ベンゾチアゾール、4−(1,2,3−N)−ベンゾトリアゾール、およびベンゾイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書中で使用する立体化学的な定義および規定は、S.P.Parker,Ed.,McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw−Hill Book Company,New York;およびEliel,E.and Wilen,S.,Stereochemistry
of Organic Compounds(1994)John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkに従う。多くの有機化合物は、光学活性形状で存在しており、すなわち、それらは、平面偏光面を回転させる性能を有する。光学活性化合物を記述する際に、接頭辞DおよびLまたはRおよびSは、そのキラル中心の周りにある分子の絶対立体配置を示すのに使用される。接頭辞dおよびl、または(+)および(−)は、その化合物による平面偏光の回転の徴候を指定するのに使用され、(−)またはlは、この化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭辞を付けた化合物は、右旋性である。所定の化学構造について、立体異性体と呼ばれる化合物は、互いに鏡像体であること以外は、同じである。特定の立体異性体はまた、鏡像異性体とも呼ばれ、このような異性体の混合物は、しばしば、鏡像異性体混合物と呼ばれる。鏡像異性体の50:50の混合物は、ラセミ混合物またはラセミ化合物と呼ばれる。「ラセミ混合物」および「ラセミ化合物」との用語は、2種の鏡像異性体種の等モル混合物を意味し、これは、光学活性を欠いている。
【0023】
「キラル」との用語は、鏡像パートナーの重ね合わせ不可能な特性を有する分子を意味するのに対して、「アキラル」との用語は、それらの鏡像パートナーと重ね合わせ可能な分子を意味する。
【0024】
「立体異性体」との用語は、同じ化学構造を有するが空間における原子の配置に関して異なる化合物を意味する。
【0025】
「ジアステレオマー」とは、2個またはそれ以上のキラル中心を有するがそれらの分子が互いに鏡像ではない立体異性体を意味する。ジアステレオマーは、異なる物理的特性(例えば、融点、沸点、スペクトル特性および反応性)を有する。ジアステレオマーの混合物は、高分解能の分析手順(例えば、電気泳動およびクロマトグラフィー)で分離し得る。
【0026】
「鏡像異性体」とは、互いに重ね合わせ不可能な化合物の2種の立体異性体を意味する。
【0027】
「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤」または「NRTI」には、HIV逆転写酵素の活性を阻害することにより抗−HTV効果を示す化合物が挙げられる。例には、アバカビル(ABC)、ジダノシン(ddl)、エムトリシタビン(FTC)、ラミブジン(ラミブジン)、スタブジン(d4T)、テノフォビル(TFV)、ジドブジン(AZT)およびザルシタビン(ddC)、ならびにそれらの生理学的な機能誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の処方では、1種またはそれ以上のNRTIが使用され得る。
【0028】
「局所」処方には、経鼻、経口、直腸、経皮および膣投与に適当なものが挙げられる。
【0029】
PMPAまたはテノフォビル(米国特許第4,808,716号、第5,733,788号、第6,057,305号)は、以下の構造を有する:
【0030】
【化3】

PMPAの化学名であるテノホビルには、以下が挙げられる:(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン;およびホスホン酸、[[(1R)−2−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−1−メチルエトキシ]メチル]。そのCAS Registry番号は、147127−20−6である。
【0031】
テノホビルジソプロキシルフマレート(DF)は、他の抗レトロウイルス薬と併用してHIV−1感染の治療に対して米国で認可されたヌクレオチド逆転写酵素阻害剤である。テノホビルジソプロキシルフマレートまたはViread(登録商標)(Gilead Science,Inc.)は、テノホビルジソプロキシルのフマル酸塩であるViread(登録商標)は、以下のように命名され得る:2,4,6,8−テトラオキサ−5−ホスファノナンジオン酸(phosphanonanedioic acid)、5−[[(1R)−2−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−1−メチルエトキシ]メチル]−、ビス(1−メチルエチル)エステル、5−オキシド、(2E)−2−ブタンジオエート(1:1)。そのCAS Registry番号は、202138−50−9である。
【0032】
テノホビルの生理学的な機能誘導体には、化合物PMEAおよびPMPAが挙げられる。PMEAおよびPMPAは、以下の構造を有する:
【0033】
【化4】

ここで、PMEA(Rは、Hである)およびPMPA(Rは、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、またはCHORであり、ここで、Rは、C〜Cアルキル、C〜CヒドロキシアルキルまたはC〜Cハロアルキルである)。RおよびRは、別個に、HまたはC〜Cアルキルである。RおよびRは、別個に、H、NH、NHRまたはNRであり、ここで、Rは、C〜Cアルキルである。RおよびRは、別個に、H、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C20アリール、C〜C20置換アリール、C〜C20アリールアルキル、C〜C20置換アリールアルキル、アシルオキシメチルエステル−CHOC(=O)R(例えば、POM)またはアシルオキシメチルカーボネート−CHO(=O)OR(例えば、POC)であり、ここで、Rは、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜C20アリールまたはC〜C20置換アリールである。例えば、RおよびRは、ピバロイルオキシメトキシ、POM、−CHOC(=O)C(CHまたはPOC、−CHOC(=O)OC(CHである。また、例えば、テノホビルは、RがCHであり、そしてR、R、R、R、RおよびRがHである構造を有する。ホスホン酸ジアルキルは、以下の方法に従って、調製され得る:Quastら(1974)Synthesis 490;Stowellら(1990)Tetrahedron Lett 3261;米国特許第5,663,159号。
【0034】
PMPAは、鏡像異性的に富んだまたは精製された(単一立体異性体)であり得、この場合、炭素原子を持つRは、RまたはS鏡像異性体であり得る。PMPAは、ラセミ化合物、すなわち、RおよびS立体異性体の混合物であり得る。
【0035】
本発明は、PMPAの全ての鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ化合物、および富んだ立体異性体、およびそれらの生理学的な機能誘導体を包含する。
【0036】
本発明は、テノホビルの全てのプロドラッグを包含する。大多数の構造的に多様なプロドラッグは、ホスホン酸について記載されている(Freeman and Ross in Progress in Medicinal Chemistry 34:112−147(1997)。一般的な使用される種類のプロドラッグは、そのアシルオキシアルキルエステルであり、これは、Farquharら(1983)(J.Pharm.Sci.72:324;または米国特許第4,816,570号、第4,968,788号、第5,663,159号および第5,792,756号)により、まず最初に、カルボン酸のプロドラッグ方法として使用され、次いで、ホスフェートおよびホスホネートに適用された。引き続いて、このアシルオキシアルキルエステルは、細胞膜を横断してホスホン酸を送達し、そして経口バイオアベイラビリティーを高めるのに使用された。このアシルオキシアルキルエステル方法に近い変形であるアルコキシカルボニルオキシアルキルエステルもまた、本発明の組み合わせの化合物において、プロドラッグ部分として、経口バイオアベイラビリティーを高め得る。リン基のアリールエステル、特に、フェニルエステルは、経口バイオアベイラビリティーを高めることかぜ報告されている(DeLambertら (1994) J.Med.Chem.37:498)。このホスフェートに対してオルト位置にカルボン酸エステルを含有するフェニルエステルもまた、記載されている(Khamnei and Torrence、(1996) J.Med.Chem.39:4109−4115)。ベンジルエステルは、親ホスホン酸を生成することが報告されている。いくつかの場合では、そのオルトまたはパラ位置にある置換基は、この加水分解を加速し得る。ベンジル類似物は、アシル化フェノールまたはアルキル化フェノールと共に、酵素(例えば、エステラーゼ、オキシダーゼなど)の作用によって、このフェノール化合物を生成し得、これは、順に、そのベンジルC−O結合において開裂を受けて、リン酸およびキノンメチド(methide)中間体を生成する。この種のプロドラッグの例は、Mitchellら (1992) J.Chem.Soc.Perldn
Trans.12345;Brookら、WO 91/19721で記載されている。ベンジルメチレンに結合されたカルボン酸エステル含有基を含有するさらに他のベンジルプロドラッグが記載されている(Glazierら、WO 91/19721)。チオ含有プロドラッグは、ホスホネート薬剤の細胞内送達に有用であると報告されている。これらのプロエステルは、エチルチオ基を含有し、ここで、そのりチオール基は、アシル基でエステル化されているか、または他のチオール基と組み合わされてジスルフィドを形成するか、いずれかである。このジスルフィドを脱エステル化または還元すると、遊離チオ中間体が生成し、これは、引き続いて、リン酸またはエピスルフィドに分解される(Puechら(1993) Antiviral Res.,22:155−174;Benzariaら (1996) J.Med.Chem.39:4958)。環状ホスホン酸エステルもまた、リン含有化合物のプロドラッグとして、記載されている。
【0037】
本発明に従ったプロドラッグエステルは、別個に、以下の基から選択される:(1)テノホビルのモノ−、ジ−およびトリ−リン酸エステル、またはヒト被験体に投与すると(直接的または間接的に)該モノ−、ジ−またはトリ−リン酸エステルを提供できる任意の他の化合物(2)カルボン酸エステル(3)スルホン酸エステル(例えば、スルホン酸アルキル−またはアラルキル(例えば、メタンスルホニル);(4)アミノ酸エステル(例えば、アラニン、L−バリルまたはL−イソロイシル);(5)ホスホネート;および(6)ホスホンアミデートエステル。エステル基(1)〜(6)は、以下で置換され得る;直鎖または分枝差C〜C18アルキル(例えば、メチル、n−プロピル、i−ブチルまたはn−ブチル);C〜C12シクロアルキル;アルコキシアルキル(例えば、メトキシメチル);アリールアルキル(例えば、ベンジル);アリールオキシアルキル(例えば、フェノキシメチル);C〜C20アリール(例えば、フェニルであって、これは、必要に応じて、例えば、ハロゲン、C〜Cアルキル、またはC〜Cアルコキシで置換されている);またはアミノ。このようなエステルに存在している代表的なアリール部分は、フェニルまたは置換フェニル基を含む。多くのホスフェートプロドラッグ部分は、米国特許第6312662号;Jonesら (1995) Antiviral Research 27:1−17;Kuceraら (1990) AIDS Res.Hum.Retro Viruses 6:491−501;Piantadosiら (1991) J.Med.Chem.34:1408−14;Hostellerら (1992) Antimicrob.Agents Chemother.36:2025−29;Hostetlerら (1990) J.Biol.Chem.265:611127;およびSiddiquiら (1999) J.Med.Chem.42:4122−28で記載されている。
【0038】
薬学的に受容可能なプロドラッグとは、酵素作用により、または一般的な酸または塩基の加溶媒分解により、いずれかにより、ホストにおいて代謝(例えば、加水分解または酸化)されて、活性成分を形成する化合物を意味する。本発明の組み合わせの活性成分のプロドラッグの典型的な例は、その活性化合物の官能部分において、生物学的に不安定な保護基を有する。プロドラッグには、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、エステル化、脱エステル化、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、ホスホリル化、脱ホスホリル化、またはプロドラッグで化学結合を形成または切断することに関与している他の官能基変化または変換が受けることができる化合物が挙げられる。
【0039】
上記化合物のいずれかの言及は、それらの生理学的に受容可能な塩の言及を含む。テノホビルおよびその生理学的に受容可能な塩の例には、適当な塩基(例えば、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよびNX(ここで、Xは、C〜Cアルキルである))から誘導した塩が挙げられる。水素原子またはアミノ基の生理学的に受容可能な塩には、有機カルボン酸(例えば、酢酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸およびコハク酸);有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸);および無機酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸およびスルファミン酸)の塩が挙げられる。水酸基を有する化合物の生理学的に受容可能な塩には、適当なカチオン(例えば、NaおよびNX4+(ここで、Xは、別個に、HまたはC〜Cアルキル基から選択される))と組み合わせた該化合物のアニオンが挙げられる。
【0040】
治療用途には、本発明の活性成分の塩は、生理学的に受容可能であり、すなわち、それらは、生理学的に受容可能な酸または塩基から誘導される。しかしながら、生理学的に受容可能ではない酸または塩基の塩もまた、例えば、生理学的に受容可能な化合物の調製または精製で用途があり得る。全ての塩は、生理学的に受容可能な酸または塩基から誘導されているかどうかにかかわらず、本発明の範囲内である。
【0041】
処方物には、経鼻、経口、直腸、経皮および膣内投与に適当なものが挙げられる。
【0042】
口に局所投与するのに適切な処方物には、薬用ドロップ(これは、味付け基剤(通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント)中に活性成分を含有する);香錠(これは、不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア)中に活性成分を含有する)およびうがい薬(これは、適切な液体キャリア中に活性成分を含有する)が挙げられる。直腸投与用の処方物は、適切な基剤(これは、例えば、ココアバターを含有する)を用いて、座薬として提供され得る。膣内投与に適切な処方物には、また、錠剤、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡剤または噴霧処方物が挙げられ、これらは、この活性成分に加えて、当該技術分野で公知の適切なキャリアを含有する。
【0043】
直腸投与に適当な医薬処方物(ここで、その担体は、固体である)は、最も好ましくは、単位用量の座薬として、提供される。適当な担体には、ココアバター、および当該技術分野で一般的に使用される他の物質が挙げられる。これらの座薬は、好都合には、その活性成分と軟化または融解された担体とを混合することにより、続いて、冷却し、そして鋳型で形作ることにより、形成され得る。
【0044】
本発明の状況では、局所適用との用語は、被験体だけでなく体腔への適用を含むことが理解できるはずである。それゆえ、好ましい実施態様では、このNRTIは、体腔(例えば、肛門、口または膣)に適用される。それゆえ、本発明の方法は、膣性交の結果としてのHIV感染を予防するために、膣への局所適用を含み得る。典型的には、この局所適用は、膣性交の開始前、適当には、膣性交の開始の0〜60分前、好ましくは、0〜5分前に、実行される。
【0045】
このNRTIは、エアロゾル、発泡体、ゼリー、クリーム、座薬、錠剤、タンポンなどを含む多数の形態で、膣に適用され得る。膣に適用するのに適当な化合物は、米国特許第2,149,240号、第2,330,846号、第2,436,184号、第2,467,884号、第2,541,103号、第2,623,839号、第2,623,841号、第3,062,715号、第3,067,743号、第3,108,043号、第3,174,900号、第3,244,589号、第4,093,730号、第4,187,286号、第4,283,325号、第4,321,277号、第4,368,186号、第4,371,518号、第4,389,330号、第4,415,585号および第4,551,148号(これらの内容は、本明細書中で参考として援用されている)で開示されており、本発明の方法は、このような組成物の形態で、このNRTIを膣に適用することにより、実行され得る。このNRTIを含有する組成物は、任意の好都合な方法で、膣に適用され得る。この組成物を膣に適用する適当な装置は、米国特許第3,826,828号、第4,108,309号、第4,360,013号および第4,589,880号(これらの内容は、本明細書中で参考として援用されている)で開示されている。
【0046】
別の実施態様では、本発明は、このNRTIの肛門への局所適用を包含する。肛門に投与された組成物は、適当には、発泡体、クリーム、ゼリーなど(例えば、膣適用に関して上記のもの)である。肛門適用の場合、この組成物を肛門全体にわたって実質的に均等に分布させる塗布器を使用することが好まれ得る。例えば、適当な塗布器は、例えば、長さが5〜25cm、好ましくは、5〜10cmであり、その長さに沿って規則的に分布させた穴を有する。
【0047】
別の実施態様では、本発明は、このNRTIを経口的に適用することにより、実行され得る。経口適用は、適当には、うがい薬または咽頭洗浄剤の形態の組成物を適用することにより、実行される。経口適用は、歯科処置中の感染を予防するのに、特に好ましい。適当には、この組成物は、歯科処置を開始する直前、およびその処置の初めから終わりまで定期的に、適用される。
【0048】
本発明はまた、HIV感染の蔓延を予防するのに有用な組成物を提供する。上で述べたように、このような組成物は、発泡体、クリーム、ゼリー、座薬、錠剤、エアロゾル、咽頭洗浄剤、うがい薬などの形態であり得る。膣用ゲルは、特に好ましい。この組成物中のNRTIの濃度は、適用される種類の組成物の通常の量を投与すると、有効な局所肛門、経口または膣濃度を達成するようにされる。このことに関して、この組成物が座薬(膣用座薬を含めて)の形態であるとき、この座薬は、通常、1〜5グラム、好ましくは、約3グラムであり、この座薬全体が適用されることが注目される。膣用錠剤は、適当には、1〜5グラム、好ましくは、約2グラムであり、この錠剤全体が適用される。この組成物が膣用クリームであるとき、適当には、0.1〜2グラム、好ましくは、約0.5グラムのクリームが適用される。この組成物が水溶性膣用クリームであるとき、適当には、0.1〜2グラム、好ましくは、約0.6グラムが適用される。この組成物が膣用噴霧発泡体であるとき、適当には、0.1〜2グラム、好ましくは、約0.5グラムの噴霧発泡体が適用される。この組成物が肛門用クリームであるとき、適当には、0.1〜2グラム、好ましくは、約0.5グラムのクリームが適用される。この組成物が肛門用噴霧発泡体であるとき、適当には、0.1〜2グラム、好ましくは、約0.5グラムの噴霧発泡体が適用される。この組成物がうがい薬または咽頭洗浄剤であるとき、適当には、1〜10mL、好ましくは、約5mLが適用される。
【0049】
うがい薬または咽頭洗浄剤の場合、この組成物中には、このNRTIの味および/または臭いをマスクする物質を含有させることが好まれ得る。このような物質には、うがい薬および咽頭洗浄剤てせ典型的に存在する香味料(例えば、ハッカ油、桂皮油など)が挙げられる。
【0050】
本発明の組成物は、時間放出(time−release)組成物の形態であり得る。この実施態様では、このNRTIは、NRTIの有効な膣または肛門濃度が得られる速度で活性成分を放出する組成物に混ぜ合わされる。時間放出組成物は、Controlled Release of Pesticides and Pharmaceuticals,D.H.Lew,Ed.,Plenum Press,New York,1981;および米国特許第5,185,155号;第5,248,700号;第4,011,312号;第3,887,699号;第5,143,731号;第3,640,741号;第4,895,724号;第4,795,642号;Bodmeierら,Journal of Pharmaceutical Sciences,vol.78(1989);Amies,Journal of Pathology and Bacteriology,vol.77(1959);およびPfisterら,Journal
of Controlled Release,vol.3,pp.229−233(1986)で開示されており、これらの全ての内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0051】
本発明の組成物はまた、膣性交または肛門性交のような事象に応答してNRTIを放出する形態であり得る。例えば、この組成物は、ベシクルまたはリポソーム(これらは、性交の機械的な作用によって、崩壊する)内にNRTIを含有し得る。リポソームを含有する組成物は、米国特許第5,231,112号およびDeamer and Uster,「Liposome Preparation:Methods and Mechanisms」、in Liposomes,pp.27−51(1983);Sessaら,J.Biol.Chem.,vol.245,pp.3295−3300(1970);Journal of Pharmaceutics and Pharmacology,vol.34,pp.473−474(1982);およびTopics in Pharmaceutical Sciences,D.D.Breimer and P.Speiser,Edsv Elsevier,New York,pp.345−358(1985)で記載されており、これらの内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0052】
また、本発明の組成物は、子宮内避妊器具(IUD)、膣用ダイアフラム、膣用スポンジ、ペッサリー、コンドームなどの器具と一体化され得ることが理解できるはずである。IUDまたはダイアフラムの場合、時間放出および/または機械的放出組成物が好まれ得るのに対して、コンドームの場合、機械的放出組成物が好ましい。
【0053】
別の実施態様では、本発明は、HIVの感染を予防するのに有用な新規器具を提供する。特に、本発明の器具は、適当な身体の部分または体腔に配置するとき、このNRTIを放出するものである。それゆえ、本発明は、NRTIを含有するかそれと一体化されたIUD、膣用ダイアフラム、膣用スポンジ、ペッサリーまたはコンドームを提供する。
【0054】
それゆえ、本発明の器具は、1種またはそれ以上のNRTIを含むIUDであり得る。適当なIUDは、米国特許第3,888,975号および第4,283,325号で開示されており、これらの内容は、本明細書中で参考として援用されている。本発明の器具は、このNRTIを含み時間制御様式で放出する膣内スポンジであり得る。膣内スポンジは、米国特許第3,916,898号および第4,360,013号で開示されており、これらの内容は、本明細書中で参考として援用されている。本発明はまた、膣用ディスペンサーであり得、これは、このNRTIを放出する。膣用ディスペンサーは、米国特許第4,961,931号で開示されており、この内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0055】
本発明の器具はまた、NRTIが被覆されたコンドームであり得る。好ましい実施態様では、このコンドームは、NRTIを含有する潤滑剤または挿入向上剤で被覆される。潤滑剤および挿入向上剤は、米国特許第4,537,776号;第4,552,872号;第4,557,934号;第4,130,667,3,989,816号;第4,017,641号;第4,954,487号;第5,208,031号;および4,499,154号で記載されており、これらの内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は、本発明の範囲内の特定の実施態様をさらに記述し説明する。これらの実施例は、例示のためにのみ示されており、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多数のバリエーションが可能であるので、限定とは解釈すべきではない。以下の実施例は、例示の目的であり、いずれの様式でも、本発明の範囲を限定するとは解釈されない。「活性成分」とは、上で定義した1種またはそれ以上のNRTI、好ましくは、テノホビルまたはそれらの生理学的な機能誘導体を意味する。
【0057】
(処方A(徐放処方))
成分を精製水で湿潤顆粒化することにより、続いて、ステアリン酸マグネシウムを加えて圧縮することにより、この処方を調製する。このハイプロメロースは、粘度等級を変えて利用できる。
【0058】
mg/錠剤
活性成分 300
ハイプロメロース 112
ラクトース一水和物 53
前ゼラチン化デンプ 28
ステアリン酸マグネシウム 7
精製水 十分な量

薬剤の放出は、約6〜8時間にわたって行い、そして12時間後に完了する。
【0059】
(処方B(徐放カプセル))
成分a、b、cおよびeを湿潤顆粒化することより、次いで、この物質を押出機を使用して押し出すことにより、続いて、押出物を球体化(spheronization)して乾燥することにより、以下の徐放カプセル処方を製造する。次いで、乾燥したペレットを徐放膜(d)または重合体で被覆する。最終生成物を、ツーピース硬質ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルに充填する。
【0060】
mg/カプセル
(a)活性成分 300
(b)微結晶セルロース 125
(c)ラクトース一水和物 125
(d)エチルセルロース 13
(e)精製水 十分な量
(f)ゼラチンカプセル
(処方C(経口懸濁液))
活性成分を他の成分と成分と混合し、そして乾燥粉末として充填する。精製水を加え、そして使用前に十分に混合する。
【0061】
活性成分 300mg
Confectioner’s Sugar 2000mg
シメチコン 300mg
メチルパラベン 30mg
プロピルパラベン 10mg
香料、ピーチ 500mg
精製 5.00mLにするのに十分な量
(処方D(座薬))
Witepsol H15の5分の1を、最大45℃で、蒸気ジャケット付きパンにて融解する。活性成分を200ミクロンの篩にかけ、そして切削ヘッドを取り付けたSilversonを使用して、滑らかな分散液が得られるまで、混合しつつ、溶融した基剤に加える。この混合物を45℃で維持し、その懸濁液に残りのWitepsol H15を加え、そして均一な混合を確保するために、撹拌する。継続して撹拌しつつ、全懸濁液を250ミクロンのステンレス鋼スクリーンに通し、40℃まで冷却する。38℃〜40℃の温度で、この混合物2.02gを、適当な2mLプラスチック鋳型に充填する。これらの座薬を室温まで冷却する。
【0062】
mg/座薬
活性成分 300
Hard Fat、B.P.(Witepsol H15−Dynamit Nobel)
1770
(処方E(膣用座薬))
活性成分 300mg
ヘキサントリオール 100mg
ポリエチレングリコール 1500 十分な量
(処方F(膣用クリーム))
活性成分 300mg
非イオン性自己乳化基剤 4g
水 残量〜100g
(処方G(膣用噴霧発泡体))
活性成分 300mg
ポリエチレングリコール 6000 2g
非イオン性乳化剤 2g
水 85g
フレオン12/144(70:30) 10g
(処方H(膣用ゲル))
テノホビル 1.00
(重量%)
ヒドロキシエチルセルロース、NF(Natrasol(登録商標)・250H)
2.50
プロピルパラベン、NF 0.02
メチルパラベン、NF 0.18
エデト酸二ナトリウム、USP 0.05
グリセリン、USP 20.00
クエン酸、USP 1.00
精製水、USP 75.25
全量 100.00
水酸化ナトリウムおよび塩酸を10重量%溶液として使用して、pHを目標の4.4に調節する。メチルパラベンおよびプロピルパラベンを、加熱したグリセリンに溶解する。ヒドロキシエチルセルロースを加え、そして分散させて、有機相を形成する。エデト酸二ナトリウムおよびクエン酸を精製水に溶解し、テノホビルを加えて分散させ、pHを4.4に調節し、そして溶液を0.22μmフィルターに通して透明にする。水相および有機相を混合し、十分に撹拌し、次いで、チューブまたは塗布器に充填する。
【0063】
(安全性および許容度)
1%BIDを使用したテノホビル膣用ゲルは、禁欲的および性的に活発なHIV(−)およびHIV(+)の女性に十分に許容され、全身吸収が限られており、そして膣ミクロフローラに対する潜在的に有益な効果を有していた。
【0064】
本明細書中で引用した全ての出版物および特許出願の内容は、各個々の出版物または特許出願が具体的かつ個別に本明細書中で参考として援用されている範囲まで、本明細書中で参考として援用されている。
【0065】
特定の実施態様が上で詳細に記述されているものの、当業者は、それらの教示から逸脱することなく、これらの実施態様において、多くの改良が可能であることを明らかに理解できる。このような改良の全ては、本発明の範囲内に包含されると解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2012−255021(P2012−255021A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−185587(P2012−185587)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2007−520399(P2007−520399)の分割
【原出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(500029420)ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】