説明

局所清浄空調システム

【課題】
局所清浄空調システムの形成において、布製の送風ダクトを使用して周方向均一流れを確保しながら、作業空間の形状または作業空間に配置される装置の形状に応じた好適な吹出し口配置を、作業空間の現場で容易に実現する。
【解決手段】
局所清浄空調システム100は、ファン30で吸い込んだ空気をHEPAフィルター40を介して多孔質布ダクト60へ流通させ、清浄空気を多孔質布ダクトの周囲からほぼ均一に噴出している。多孔質布ダクトの内部または外部にこのダクトの形状を保持する手段65を設け、この形状保持手段が有する剛性またはこの形状保持手段から噴出する空気層でダクトの形状を保持する。ダクトの形状をこのダクトが施工される壁面形状に倣わせることを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は局所清浄空調システムに係り、特に布製ダクトを用いたときに好適な局所清浄空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の局所清浄空調システムの例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の空調空気吹出装置では、逆L字状のダクトの折り曲げ部の外観を損なうことなく折り曲げ部の空気抵抗も少なくするために、布製吹出し口部材を逆L字状に折り曲げてその下端開口を吹出し口に接続している。そして吹出し口部材の折り曲げ部内側に、長さ方向に縮めるようにひだをつけている。
【0003】
従来の布製ダクトを用いた清浄空調装置の他の例が、特許文献2、3に記載されている。これらの公報に記載のダクトでは、例えば布製ダクトからの吹出し空気により空調ダクトが振動や陽動するのを防止するため、ダクトの入り口側に整流部材を、ダクトの上部にダクトを取り付け規制するためのカーテンレール状の部材を設け(特許文献2)、または室内全体の温度分布を一様化するために、ダクトの軸線方向(長手方向)にダクトが伸縮自在となるようにしている(特許文献3)。
【0004】
さらに従来の布製の吹出し面を設けたクリーンブースの例が、特許文献4に記載されている。この公報に記載のクリーンブースでは、矩形面を構成する布製の吹出し面の中間部に、吹出し面と対向する面からの距離を制限する紐を設け、空調空気が布製の吹出し面から吹き出るときに、吹出し面に複数の凸面が形成されることにより、吹出し面からの空調空気の流れの方向を拡散させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−129698号公報
【特許文献2】特開2009−180457号公報
【特許文献3】特開平3−110343号公報
【特許文献4】特開2006−284149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の局所清浄空調システムにおいては、布製のダクトを用いているのでダクトからの流れは周方向に均一化された流れを形成しやすい利点を有する。しかしながら、例えば特許文献1に記載の空調空気吹出し装置では、ダクトを天井部に配置して天井の構造により逆L字状とせざるを得ないときに、角部の内側にひだをつけ、縫合して長さおよび形状の調整をしている。この公報に記載のダクトは、新規に取り付ける場合等の予め形状が決まっている場合はともかく、従来品のリプレースや設置場所のレイアウト変更に伴うダクト形状の変更に対しては現場合わせが必要になるが、縫合作業を現場で行うことは著しく作業性を低下させる。一般に、空調配管や局所清浄配管は現場合わせの要求が高く、また輸送コストの増加を招くので、工場内で予め形状を決めることができないことが多い。
【0007】
従来の布製ダクトを用いた清浄空調の例である特許文献2や3に記載のものでは、布製ダクトの利点を利用して全周吹出しとしているが、これらの公報に記載のものはいずれもダクト形状が直管形状であり、実際に清浄空調が必要な空間形状には必ずしも合致していない。すなわち、ダクトを折り曲げて配置することにより、さらにきめ細かな清浄空調を図ることについては、これらの公報では考慮されていない。
【0008】
また、特許文献4に記載のクリーンブースでは、クリーンブースの上面全体を布製の吹出し面で覆うことにより、ほぼ均一な流れを吹出し面の下側に配置した作業エリアに送風できる。しかしながら、この公報に記載のクリーンブースでも、作業エリアに配置した装置や作業員の作業エリアに応じて送風高さを変える等の吹出し口のきめ細かな配置については、十分には考慮されていない。
【0009】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、局所清浄空調システムの形成において、布製の送風ダクトを使用して周方向均一流れを確保しながら、作業空間の形状または作業空間に配置される装置の形状に応じた好適な吹出し口配置を、作業空間の現場で容易に実現することにある。本発明の他の目的は、局所清浄空調システムが、作業空間やこの作業空間に配置される装置のレイアウトが変更されても、好適な吹出し口配置を備えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の特徴は、ファンで吸い込んだ空気をHEPAフィルターを介して布製の袋状のダクトへ流通させ、清浄空気をダクトの周囲からほぼ均一に噴出する局所清浄空調システムにおいて、前記袋状のダクトの内部または外部にこの袋状のダクトの形状を保持する手段を設け、この形状保持手段が有する剛性またはこの形状保持手段から噴出する空気層で前記袋状のダクトの形状を保持するものであり、前記袋状のダクトの形状をこの袋状のダクトが施工される壁面形状に倣わせることを可能としたことにある。
【0011】
そしてこの特徴において、前記袋状のダクトの形状を保持する手段は、らせん状に形成された金属製またはプラスチック製の線材であり、前記線材の張力で前記袋状部材の姿勢を保持するものであってもよく、前記袋状ダクトの形状を保持する手段は、らせん状に形成された突起を外周部に有するダクトホースであり、このダクトホースに前記袋状ダクトの径に比べてオーダーの異なる小径の複数の穴を形成したものでもよい。
【0012】
また上記いずれかの特徴において、装置が配置される作業ブースの上部に、前記袋状のダクトをほぼ平行に複数配置し、その複数に配置された袋状のダクトの両端部側に作業ブースの天井から所定距離だけ低い位置まで延びる気流ガイドを設けてもよく、装置が配置される作業ブースの周辺に、作業者の高さの範囲内の高さであってほぼ水平に、前記袋状のダクトを配置してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、布製のダクトの内側または外側にこのダクトの形状を規制する可塑性のダクト形状保持手段を設けているので、局所清浄空調システムの形成において、布製の送風ダクトを使用して周方向均一流れを確保しながら、作業空間の形状または作業空間に配置される装置の形状に応じた好適な吹出し口配置を、作業空間の現場で容易に実現できる。また、作業空間やこの作業空間に配置される装置のレイアウトが変更されても、可塑性のダクト形状保持手段の形状を変更するだけでよく、局所清浄空調システムが好適な吹出し口配置を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る局所清浄空調システムが備える多孔質送風ダクト装置の一実施例の斜視図である。
【図2】本発明に係る局所清浄空調システムの一実施例の上面図である。
【図3A】図1に示した多孔質送風ダクトの詳細を示す断面図である。
【図3B】図1に示した多孔質送風ダクトの詳細を示す断面図および多孔質材の詳細を示す平面図である。
【図4】本発明に係る局所清浄空調システムの他の実施例の正面図および上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る局所清浄空調システムのいくつかの実施例を、図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る局所清浄空調システムが備える多孔質布送風ダクト装置90の一実施例の斜視図であり、図2はこの多孔質布送風ダクト装置90を備えた局所清浄空調システム100の上面図である。
【0016】
多孔質布送風ダクト装置90は、袋状に形成された多孔質布送風ダクト60と、この多孔質布送風ダクト60内に配置されたらせん状のらせん状線材65とを有している。多孔質布送風ダクト60は、詳細を後述する不織布製であり、その一端側は縫合部60xで縫合されて、袋状に形成されている。多孔質布送風ダクト60の他端側は、開口になっており、ダンパー50に密着して取り付けられる、ダンパー50は、この多孔質布送風ダクト60内を流通する清浄空気の量を調整するためのもので、開口率を変化させて流量を調整する。
【0017】
ダンパー50は直方体状のフィルタボックス70bの上面に取り付けられており、フィルターボックス70bの1側面には、HEPAフィルター40が取り付けられている。このHEPAフィルター40には、フィルタボックス70aを介してファン30が取り付けられている。すなわち、ファン30が吸込んだファン30の周囲空気は、フィルターボックス70aを経てHEPAフィルター40に導かれ、HEPAフィルター40で所望の清浄度まで除塵された後、フィルターボックス70bに導かれる。フィルターボックス70bで流れの方向を変えられた後、ダンパー50で流量を調整され、多孔質布送風ダクト60の網目から、この多孔質布送風ダクト60の表面にほぼ垂直な方向にほぼ均一な流れとして流出する。
【0018】
ここで、多孔質布送風ダクト60は布製であるから剛性に乏しく、通風しない状態では流路を形成しない。そこで、図1に示すように、L字型等の曲がった流路を形成できるように、多孔質布送風ダクト60内に、ダクト形状保持手段として予めらせん状に形成された金属製またはプラスチック製のらせん状線材65を嵌合させている。らせん状線材65が多孔質布送風ダクト60の内面に当接することにより、らせん状線材65の外周形状に倣って多孔質布送風ダクト60が円筒状に膨らむ。そして、らせん状線材65の螺旋ピッチを変えることにより、L字形の角部等を形成する。
【0019】
多孔質布送風ダクト60は布製であるから、図3(d)に示すように網目間に微細な空孔がほぼ均一に形成されている。ところが、らせん状線材65をこの多孔質布送風ダクト60の内周に当接させると、当接させた部分の網目は塞がれる。しかしながら、多孔質布送風ダクト60の内径に比べてらせん状線材65の直径は非常に小さいので、塞がれる網目の面積も僅かであり、多孔質布送風ダクト60の長所である全周均一送風が阻害されることは無い。
【0020】
このように構成した多孔質布送風ダクト装置90を、実際の局所清浄空調システム100に適用した例を、図2に示す。図2は、局所清浄空調空間の一例を上面図で示したものである。三方を仕切り壁10で囲まれた局所清浄空調空間では、直線壁である側壁10a,10dとこれら側壁」10a、10d間を塞ぎ、突起壁10cが形成された背面壁10bとの間に作業空間が形成されている。作業空間の中央部には、作業に用いる装置20が配置されている。作業装置20は発塵源であり、この発塵源で発生する塵埃を速やかに作業空間から取り除いて清浄空間を維持することが望まれる。そこで、本実施例では、この作業空間の上部であって各壁10a〜10dに沿って、多孔質布送風ダクト60を配置している。
【0021】
すなわち、作業空管外に配置した多孔質布送風ダクト装置のファン30およびHEPAフィルター40、ダンパー50に接続した多孔質布送風ダクト60を、折り曲げ部60aで折り曲げて作業空間内に導き、初めに側壁10dに沿わせ、次いで背面壁10b、突起壁10c、背面壁10b、側壁10aの順に沿わせ、折り曲げ部60fで折り曲げて作業空間外へ導いている。なお、この折り曲げ位置の決定は、現場合わせである。つまり、多孔質布送風ダクト60内に配置したらせん状線材65のピッチを据付現場で適宜変えることにより、各壁10a〜10dに沿った形状としている。
【0022】
従来は、空調空気の気流およびクリーン化のための気流が強い方向性(指向性)を示すときに、作業空間の角部に気流の滞留部が生じていた。本実施例によれば多孔質布送風ダクト60の内部にダクト形状保持手段としてらせん状線材65を配置したので、作業空間内の多孔質布送風ダクト60を折り曲げ部60a〜60fでほぼ直角に折り曲げることが可能になり、多孔質布送風ダクト60の折り曲げ角部であっても、図2の矢印で示したように、清浄空気を網目から噴出でき、作業空間内部で気流の滞留を防止できる。したがって、発塵が作業空間内部の気流とともに作業空間内部に滞留することを防止できる。それとともに、多孔質布送風ダクト60からの噴出流と一緒に速やかに作業空間外へ塵埃が運ばれる。
【0023】
図3に、多孔質布送風ダクト60、61、63のいくつかの実施例の部分断面図(図3(a)〜(c))と、これら多孔質布送風ダクト60、61、63に用いる多孔質布(不織布)68の一例を斜視図(図3(d))で示す。図3(a)には、図1の実施例で説明した多孔質布送風ダクト60を断面図で示している。多孔質布68は、柔軟性および通気性を有する織布でフィルター機能を有し、空調用に用いられるものである。材質は、通常PE(ポリエステル)であり、難燃仕様やモノフィラメント等の材質も使用される。図3(d)に示す多孔質布68はモノフィラメントの例であり、縦糸(経糸)68aは多数の素線から形成されているが、横糸(緯糸)68bはポリマー製の単繊維糸である。横糸が撚り線で無いので、通風時の塑性変形による繊維間の擦れに起因する発塵を低減している。
【0024】
図3(a)に示した多孔質布送風ダクト60では、多孔質布68で形成した袋内にらせん状線材65を配置するが、上述したようにこのらせん状線材65の螺旋ピッチを変えるだけで曲がり部を形成できるから、作業現場で現場合わせが容易となる。なお、らせん状線材65が形成する円の外径と多孔質布68の内径とをほぼ等しくするか、らせん状線材65が形成する円の外径を僅かに大きくすれば、特別な固定手段を多孔質布68内に設けることなく、らせん状線材65の張力で多孔質布68をたるむことなく、膨らませることができる。
【0025】
図3(b)に、フレキシブルホース80を内蔵した多孔質布送風ダクト61の例を、部分断面図で示す。多孔質布68は、上記図3(a)に示したものと同一のものである。フレキシブルホース80は、軽量化のためプラスチック製が好ましいが、折り曲げ角部だけに使用する場合は、金属性でもかまわない。一方端側が他方端よりも小径に構成されたホース素片80aを軸方向につなぎ合わせてうろこ状に形成したもので、折り曲げ部で自在に折り曲げ可能になっている。
【0026】
各ホース素片80aには多数の小径の穴80bが形成されており、HEPAフィルター40を通過した清浄空気がこの小径の穴80bから流出できるようになっている。この小径の穴80bの径は5mm前後であり、開口率は15〜20%程度である。またフレキシブルホース80の外径と多孔質布68の内径との隙間cは、数mm以下であり、フレキシブルホース80内に加圧された清浄空気が流通することにより、周方向ほぼ均一にこの隙間cが形成される。その際、清浄空気の加圧量は70Pa程度あれば十分である。
【0027】
図3(b)に示したフレキシブルホース80は、多孔質布送風ダクト61の形状を保持する点では優れているが、形状が複雑なので高価になるおそれがある。そこで、安価に構成できる多孔質布送風ダクト63を、図3(c)に断面図で示す。これは市販のビニールダクトをダクト形状保持手段として使用するものである。
【0028】
例えばカナフレックス社製のダクトN.S.D型をダクトホース82として使用する。このダクトホース82の外径φdは、呼称8インチから12インチのものを使用すれば、217〜318.5mmであり、−20〜70℃の環境に使用できる。スパイラル突起82aはオレフィン系硬質樹脂であり、円筒部は熱可塑性エラストマーである。ピッチpは22.5〜30mmである。このダクトホース82のスパイラル突起82aを除く円筒部に、径5mm前後の穴82bを多数形成することにより、図3(b)に示したフレキシブルホース80の場合と同様の効果が得られる。なお、この場合、ダクトホース82の外径φdと多孔質布68が形成する袋の内径φDとの差は、上記実施例と同様数mm程度以下とする。
【0029】
ところでダクトホース82に小径の穴82bを作成する際には、ダクトホース82のスパイラル突起82aをガイドにする治具を作成し、この治具でダクトホース82を保持し、ダクトホース82を回転させながら軸方向に進め、その際に半径方向からヒータ加熱した棒をダクトホース82の円筒部に押し付けるようにすれば、容易に多数の穴82bを形成できる。なお、穴82bの形成方法はこれに限るものではない。
【0030】
本実施例では、多孔質布68で形成する袋内に配置するダクトホースが外周部にらせん状の突起を有する形状としているが、らせん状の突起に代えてベローズ形状としても同様の効果が得られる。この場合、ダクトホースの肉厚がほぼ均一になるので、小径の穴をダクトホースのどこの位置に設けてもよく、穴位置の自由度が増す。
【0031】
次に、局所清浄空調システムの他の実施例を、図4を用いて説明する。図4(a)は、局所清浄空調システム110の正面断面図であり、図4(b)は局所清浄空調システム110の上面断面図である。多孔質布送風ダクト62は、上記実施例とは異なり多孔質布68の外周部にらせん状線材65を配置した例を示しているが、上記実施例に示した多孔質布送風ダクト60、61、63のいずれかを使用してもよいことは言うまでも無い。
【0032】
天井壁122と両側壁124、前面壁125、背面壁126とで囲まれた作業空間内に、作業ブース130が設けられている。作業ブース130の床面128には、装置22が設置されており、所定の作業が実行されている。作業空間には、作業者150が立ち入っており、装置の監視および設定・操作を実行する。
【0033】
作業ブース130は、作業空間の前後方向にはほぼ全部にわたっており、両側壁124間方向には、作業空間の中間部のみとなっている。この作業ブース130の上部には、矩形状の天井132が設けられており、天井132の下面には複数個の走行梁134が形成されている。天井132の両側壁124間方向(図4の左右方向)の端部には、天井132から下方に高さHだけ延び気流ガイド137が設けられている。気流ガイド137と走行梁134間、および走行梁134、134間には、前面壁125から背面壁側126にほぼ水平に延びる多孔質布送風ダクト62の布製ダクト部が配置されている。この布製ダクト部は、吊り具140により、天井132から吊り下げられている。多孔質布送風ダクト62の機械部を構成するダンパ50およびHEPAフィルター40、ファン30は、背面壁126を貫通して設けられた接続管62cの作業空間外側に接続されている。接続管62cの作業空間内側の端部は、布製ダクト部に接続されている。
【0034】
装置22で発生する塵埃をこの作業ブース130から取り去るために、複数設けた多孔質布送風ダクト62の1つに分岐して他の多孔質布送風ダクト62を設け、装置22の基台の空間まで延ばしている。したがって、装置22から舞い上がって作業ブース130の上部へ流れ込む発塵は、上部に配置した多孔質布送風ダクト62の全周からほぼ均一に噴出する清浄空気が気流ガイド136により流れ方向を規制されながら下方全体に亘って噴出するので、作業ブース130の角部に滞留することなく、作業ブース22外に運ばれる。一方、舞い上がることなく装置22の内部または装置22の周辺で留まっている塵埃は、装置22の基台内部に挿入したダクト部から噴出する清浄空気とともに上昇気流を形成し、装置22の上部に配置した多孔質布送風ダクト62からの噴出気流と一緒になって、作業ブース130外に運ばれる。これにより、作業ブース内130は装置22から塵埃が発生するにもかかわらず、清浄に保たれる。
【0035】
また、作業ブース130の周囲の作業者130の作業に起因して発生する塵埃を除塵するために、作業者130の背面側の側壁には、床面128近くの高さに、多孔質布送風ダクト62が配置されている。多孔質布送風ダクト62は側壁124を貫通して設けられた接続管62bに接続されている。接続管62bの作業空間外部側には、多孔質布送風ダクト装置の機械部を構成するダンパー50およびHEPAフィルター40、ファン30が、接続管62dを介して接続されている。
【0036】
作業空間内に配置された多孔質布送風ダクト62の上面側および下面側には、多孔質布送風ダクト62の布製ダクトの全周からほぼ均一に噴出する空気を、作業者150の方向に規制するために、平板で構成された気流ガイド137がほぼ水平に配置されている。気流ガイド137の両側壁124間方向(図4の左右方向)の長さは、噴出する気流の速度や装置22と作業者150の配置を考慮して設定される。なお、多孔質布送風ダクト62からの噴出気流の速度は、0.2m/s程度が新たな発塵を防止する点で好ましい。
【0037】
本実施例によれば、多孔質布ダクトを作業ブースに複数設け、作業ブースの両端部に所定長さの気流ガイドを設けるだけで、作業ブース内に滞留しない局所清浄空気の気流を発生できる。したがって、簡単な構成で作業ブース内を清浄に維持できる。また気流ガイドは、高さ方向に床面まで延びる必要が無いので、作業者の作業の自由度が増す。
【0038】
本実施例では多孔質布送風ダクトを吊り具で吊り下げるようにしているが、多孔質布ダクトの上面側に相当する部分に、その軸方向前部または間歇的に面ファスナーを縫いこみ、この面ファスナーと結合する面ファスナーをレール状部材の表面に取り付けるようにしてもよい。多孔質布送風ダクトが布製なので、面ファスナーは縫製で取り付けるだけでよく、現場合わせも必要でなく、事前に工場内で作業を進めることが可能になり、作業性の劣る現場作業を低減できる。
【符号の説明】
【0039】
10…仕切り壁、10a…側壁、10b…背面壁、10c…突起壁、10d…側壁、20、22…装置、30…ファン、40…HEPAフィルター、50…ダンパー、60…多孔質布送風ダクト(布製ダクト)、60a〜60f…折り曲げ部、60x…縫合部、61、62…多孔質布送風ダクト、62b〜62d…接続管、63…多孔質布送風ダクト、65…らせん状線材(ダクト形状保持手段)、68…多孔質布(不織布)、68a…縦糸(経糸)、68b…横糸(緯糸)、70a、70b…フィルターボックス、80…フレキシブルホース(ダクト形状保持手段)、80a…ホース素片、80b…穴、82…ダクトホース(ダクト形状保持手段)、82a…スパイラル突起、82b…穴、90…多孔質布送風ダクト装置、100、110…局所清浄空調システム、122…天井壁、124…側壁、125…前面壁、126…背面壁、128…床面、130…作業ブース、132…天井、134…走行梁、136、137…気流ガイド、140…吊り具、150…作業者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンで吸い込んだ空気をHEPAフィルターを介して布製の袋状のダクトへ流通させ、清浄空気をダクトの周囲からほぼ均一に噴出する局所清浄空調システムにおいて、前記袋状のダクトの内部または外部にこの袋状のダクトの形状を保持する手段を設け、この形状保持手段が有する剛性またはこの形状保持手段から噴出する空気層で前記袋状のダクトの形状を保持するものであり、前記袋状のダクトの形状をこの袋状のダクトが施工される壁面形状に倣わせることを可能としたことを特徴とする局所清浄空調システム。
【請求項2】
前記袋状のダクトの形状を保持する手段は、らせん状に形成された金属製またはプラスチック製の線材であり、前記線材の張力で前記袋状部材の姿勢を保持することを特徴とする請求項1に記載の局所清浄空調システム。
【請求項3】
前記袋状ダクトの形状を保持する手段は、らせん状に形成された突起を外周部に有するダクトホースであり、このダクトホースに前記袋状ダクトの径に比べてオーダーの異なる小径の複数の穴を形成したことを特徴とする請求項1に記載の局所清浄空調システム。
【請求項4】
装置が配置される作業ブースの上部に、前記袋状のダクトをほぼ平行に複数配置し、その複数に配置された袋状のダクトの両端部側に作業ブースの天井から所定距離だけ低い位置まで延びる気流ガイドを設けたことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の局所清浄空調システム。
【請求項5】
装置が配置される作業ブースの周辺に、作業者の高さの範囲内の高さであってほぼ水平に、前記袋状のダクトを配置したことを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の局所清浄空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−50250(P2013−50250A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187635(P2011−187635)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】