説明

局所用コエンザイムQ10製剤および使用方法

CoQ10の局所用製剤は、動物対象における腫瘍の増殖速度を低下させる。本明細書に記載された実験では、CoQ10は、皮膚がん細胞培養物におけるアポトーシス速度を増大させるが、正常細胞では増大させないことが示された。さらに、担がん動物をCoQ10の局所用製剤で処理すると該動物における腫瘍の増殖速度を劇的に低下させることが示された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コエンザイムQ10(CoQ10)を含んでなる薬剤組成物、および、がんを治療し、がん細胞の増殖を選択的に低下させ、がん細胞にアポトーシスを引き起こし、腫瘍が媒介する血管形成を阻害するためのCoQ10の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
がんは、現在、先進国における主要な死因の1つである。最近の調査により腫瘍形成の分子機序の多くに対する我々の理解は大いに増大し、がん治療のための多くの新しい手段が提供されているが、ほとんどの悪性腫瘍に対する標準的な治療は、いまだに全体の切除、化学療法、および放射線治療である。これらの治療はそれぞれ、ますます成功をおさめてはいるが、多くの好ましくない副作用を依然として引き起こしている。例えば、外科手術により疼痛、健常組織に対する外傷性の傷害、および瘢痕がもたらされる。放射線治療および化学療法により、悪心、免疫抑制、胃潰瘍、および2次性の腫瘍形成が引き起こされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、コエンザイムQ10(CoQ10)を含んでなる薬剤組成物、および、がんを治療し、がん細胞の増殖を選択的に低下させ、がん細胞にアポトーシスを引き起こし、腫瘍が媒介する血管形成を阻害するためのCoQ10の使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、CoQ10の局所用製剤が動物の対象で腫瘍の増殖速度を低下させることが可能であるという発見に関する。本明細書に記載した実験で、CoQ10は、正常細胞ではなく、皮膚がん細胞の培養物におけるアポトーシスの速度を増大することが示された。さらに、担がん動物をCoQ10の局所用製剤で治療すると、該動物における腫瘍の増殖速度を劇的に低下させることが示された。
【0005】
経口送達用に調合されたCoQ10は、以前は栄養補助食品として用いられていた。しかし、経口投与されたCoQ10は肝臓に蓄積し、その全身的有効性を低下させることが示されている。局所に適用されたCoQ10で観察される抗腫瘍反応は、栄養補助食品の形態のCoQ10に比べて、より高いバイオアベイラビリティーにつながることがある。
【0006】
したがって、本発明は、腫瘍細胞の増殖速度を低下させるか、または対象における腫瘍細胞のアポトーシスの速度を増大させるための方法を特徴とする。この方法は、複数の腫瘍細胞を有する対象を特定するステップと、該対象に、有効な量のCoQ10および薬学的に許容できる担体からなる組成物を投与するステップとを含む。
【0007】
別の1態様では、本発明は、有効な量のCoQ10および薬学的に許容できる担体からなる組成物を特徴とする。
好ましい1実施形態では、この組成物は、少なくとも約0.01重量%のCoQ10から最大30重量%(w/w)までのCoQ10、およびCoQ10を局所的に送達するのに適する担体を含む、CoQ10の局所用製剤である。薬剤組成物は、有効成分としてCoQ10、および薬学的に許容できる担体を含んでなることが好ましい。組成物は、コエンザイムQ10、Phospholipon(登録商標)90、グリセロール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エタノール、中鎖トリグリセリド(MCT)、およびラ
ベンダーからなる。好ましくは、Phospholipon(登録商標)90は、Phospholipon(登録商標)90GおよびPhospholipon(登録商標)90Hのうち少なくともいずれか一方である。
【0008】
好ましい1実施形態では、この薬剤組成物は、少なくとも約0.01%〜約30%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなる。好ましくは、薬剤組成物は、約1%〜約25%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなる。
【0009】
別の好ましい1実施形態では、本発明は、
治療上有効な量のコエンザイムQ10を含んでなる組成物を、投与を必要とする患者に投与することと、
腫瘍細胞を組成物と接触させて腫瘍細胞の溶解をもたらすことと、
それによりがん患者を治療することと
からなる、がん患者を治療する方法を提供する。好ましくは、薬剤組成物が少なくとも約0.01%〜30%(w/w)までのコエンザイムQ10を含んでなり、好ましくは、薬剤組成物が約1%〜約25%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなる。
【0010】
別の好ましい1実施形態では、薬剤組成物は、任意選択の経皮吸収促進剤とともに局所用クリーム剤に調合される。
別の好ましい実施形態では、治療上有効な量のコエンザイムQ10組成物を1つまたは複数の化学療法剤とともに投与する。これらの化学療法剤は、コエンザイムQ10と同時に投与してもよいし、コエンザイムQ10の前に投与してもよいし、またはコエンザイムQ10の後に投与してもよい。化学療法剤の非限定的な例として、それだけには限定されないが、シクロホスファミド(CTX、25mg/kg/日、経口投与)、タキサン(パクリタキセルまたはドセタキセル)、ブスルファン、シスプラチン、シクロホスファミド、メトトレキセート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、メルファラン、クラドリビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびクロラムブシルが含まれる。
【0011】
別の好ましい1実施形態では、本発明の薬剤組成物、コエンザイムQ10組成物は、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害し、本発明の方法は、治療上有効な量のCoQ10を含んでなる薬剤組成物を対象に投与することからなる。薬剤組成物における治療上有効な量のコエンザイムQ10が、約0.01%〜30%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなることが好ましい。腫瘍細胞の増殖の阻害とは、1つまたは複数の以下の作用、すなわち(1)(i)減速、および(ii)完全な増殖の停止を含む、ある程度の腫瘍増殖の阻害、(2)腫瘍細胞の数の減少、(3)腫瘍の大きさの維持、(4)腫瘍の大きさの減少、(5)腫瘍細胞の周辺の臓器への浸潤の(i)減少、(ii)減速、または(iii)完全な防止を含む阻害、(6)転移の(i)減少、(ii)減速、または(iii)完全な防止を含む阻害、(7)(i)腫瘍の大きさの維持、(ii)腫瘍の大きさの減少、(iii)腫瘍の増殖の減速、(iv)侵入の減少、減速、または防止をもたらす可能性がある抗腫瘍免疫反応の増強、および/または(8)該障害に関連する1つまたは複数の症状の重症度または数の、ある程度までの軽減、を意味する。
【0012】
別の好ましい1実施形態では、本発明は、腫瘍細胞に選択的にアポトーシスを引き起こす方法を提供し、その方法は、標準のアッセイで測定されるコエンザイムQ10を含んでなる薬剤組成物を投与することからなる。薬剤組成物が、少なくとも約0.01%〜30%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなることが好ましい。アポトーシスを測定するための方法には、それだけには限定されないが、ミトコンドリア膜の色素アッセイおよび/またはアネキシンV‐PEアッセイが含まれる。好ましい1実施形態では、薬剤組成物は、ミトコンドリア膜の色素アッセイおよび/またはアネキシンV‐PEアッセイで測定して、少なくとも約30%の腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こす。薬剤組成物が、ミ
トコンドリア膜の色素アッセイおよび/またはアネキシンV‐PEアッセイで測定して約60%の腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こすことが好ましく、薬剤組成物がミトコンドリア膜の色素アッセイおよび/またはアネキシンV‐PEアッセイで測定して約75%の腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こすことがより好ましく、薬剤組成物がミトコンドリア膜の色素アッセイおよび/またはアネキシンV‐PEアッセイで測定して、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%の腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こすことがより好ましい。
【0013】
別の1実施形態では、本発明は、腫瘍細胞における血管形成を阻害するための方法を提供し、その方法は、コエンザイムQ10を含んでなる薬剤組成物と腫瘍を接触させることからなる。薬剤組成物が、少なくとも約0.01%から最大30%(w/w)までのコエンザイムQ10を含んでなることが好ましい。
【0014】
本化合物のさらなる使用には、アテローム性動脈硬化、炎症の治療における使用、および抗血管形成薬として、がん、特に、肺、乳房、肝臓、脳、または他の組織に存在するがんなどの固形がんを治療するための使用が含まれる。
【0015】
別途定義されない限り、本明細書で用いられる技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の通常の1技術者が通常理解するのと同じ意味を有する。通常理解される医学用語の定義は、トーマス ラスロップ ステッドマン(Thomasu Lathrop Stedman)著「Stedman’s Medical Dictionary」、リッピンコット、ウィリアムズ アンド ウィルキンズ(Lippincott、Williams & Wilkins)[米国ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia)所在]発行、2000年に見ることができる。
【0016】
本明細書で言及するすべての出版物、特許出願、特許および他の参考文献について、それらの全体を援用する。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先する。以下に論じる特定の実施形態は例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【0017】
本発明のその他の態様については後述する。
本発明は、添付の特許請求の範囲において詳細に示される。本発明の上記の利点およびさらなる利点は、添付図と併せて下記の記載を参照することにより、より良く理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、腫瘍細胞の増殖速度を低下させるか、または腫瘍細胞のアポトーシスの速度を増大させるための組成物および方法を提供するものである。本発明の組成物には、抗腫瘍剤として治療上有効な量のCoQ10および担体が含まれる。本発明の好ましい組成物は、少なくとも約1%のCoQ10、およびCoQ10の局所送達を促進する担体を含んでなる、CoQ10の局所用製剤である。最も好ましい本発明の組成物は、約1%〜15%のCoQ10、およびCoQ10の局所送達を促進する担体を含んでなるCoQ10の局所用製剤である。腫瘍細胞を死滅させるか、またはその増殖速度を低下させるための本発明の方法には、細胞を有効な濃度のCoQ10と接触させるステップが含まれる。
【0019】
以下に記載する好ましい実施形態は、これらの組成物および方法の適応を例示するものである。それでも、これらの実施形態の記載から、本発明の他の態様を以下の記載に基づいて作製し、かつ/または実行することが可能である。
【0020】
本発明を開示かつ説明する前に、本発明が特定の構成、経過工程、または本明細書に開示された材料に限定されるものではなく、関連する技術分野の通常の技術者が理解するも
のとしてその同等物に拡張されるものであることを理解されたい。当然ながら、本明細書で使用する専門用語は特定の実施形態のみを説明する目的のために用いられ、限定を意図するものではない。
【0021】
定義
本発明により、かつ本明細書で用いられる以下の用語は、別段に明確な記載がなければ、以下の意味で定義づけられる。
【0022】
本明細書で用いられる「1つの」(「a」、「an」)、および「その」(「the」)は、その文脈から明らかに別のことを指示しているのでないかぎり、複数の指示対象を含む。
【0023】
本明細書で用いられる、「薬学的に許容できる」成分は、妥当な利益/リスク比に見合った、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激作用、およびアレルギー反応)を伴わずにヒトおよび/または動物に使用するのに適した成分である。
【0024】
本明細書で用いられる「安全かつ治療上有効な量」は、本発明の方法で用いる場合に、妥当な利益/リスク比に見合った、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激作用、またはアレルギー反応)を伴わずに望ましい治療反応を生じるのに十分な成分の量を意味する。「治療上有効な量」は、望ましい治療反応を生じるのに有効な、本発明の化合物の量を意味する。例えば、肉腫もしくはリンパ腫のいずれかであるがんの増殖または発生を遅らせるか、あるいはがんを萎縮させるか、または転移を予防するのに効果的な量である。個別の安全で効果的な量、または治療上有効な量は、治療対象である個々の状態、患者の身体状態、治療する哺乳動物または動物の種類、治療期間、現在の治療法(あれば)の性質、ならびに用いる特定の製剤、および化合物もしくはその誘導体の構造のような要因で変化することになる。
【0025】
本明細書で用いられる「製薬上の塩」には、それだけには限定されないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩が含まれる。有機酸または無機酸を用いて塩を生成することが好ましい。これらの好ましい酸の塩は、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩などである。最も好ましい塩は、塩酸塩である。
【0026】
本明細書で用いられる「がん」は、哺乳動物に見られるすべてのタイプのがんまたは新生物または悪性腫瘍を意味し、それだけには限定されないが、白血病、リンパ腫、メラノーマ、がん腫、および肉腫が含まれる。好ましい実施形態では、CoQ10組成物を、様々なタイプの乳がん、前立腺がん、肝臓がん、骨肉種を治療するために用いる。しかし、CoQ10組成物を用いる治療は、これらのタイプのがんに限定されない。
【0027】
がんの例として、脳、乳房、膵臓、頸部、結腸、頭頸部、腎臓、肺、非小細胞肺、メラノーマ、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮、および髄芽腫のがんがある。本明細書で用いられる「がん」、「新生物」、および「腫瘍」は互換的に用いられ、単数形または複数形のいずれかで、宿主の生物体に対して病原性となる悪性の形質転換を経た細胞を意味する。原発性のがん細胞(すなわち、悪性の形質転換部位の付近から得られる細胞)は、十分確立した技術、特に組織学的検査により、非がん性の細胞から容易に区別することが可能である。本明細書で用いられるがん細胞の定義には、原発性のがん細胞だけではなく、がん細胞の原型に由来するあらゆる細胞が含まれる。これには、転移したがん細胞、およびがん細胞に由来するin vitroの培養物および細胞株が含まれる。固形腫瘍として通常表れるタイプのがんに関する場合は、「臨床的に検出可能な」腫瘍とは、腫瘍塊をもと
に、例えば、CATスキャン、MRイメージング、X線、超音波、もしくは触診などの手法により検出可能なもの、および/または患者から得ることのできるサンプル中に1つまたは複数のがんに特異的な抗原が発現するため検出可能なものである。
【0028】
用語「肉腫」は、胎児性の結合組織のような物質でできており、繊維状または均質な物質中に包埋された緊密に詰め込まれた細胞からなる腫瘍を一般に意味する。本発明の組成物、および任意選択で増強剤かつ/または化学療法剤で治療することが可能な肉腫の例として、それだけには限定されないが、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アベメシーの肉腫(Abemethy’s sarcoma)、脂肪組織肉腫、脂肪肉腫、胞状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色肉腫、絨毛肉腫、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー星細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉細胞肉腫、傍骨肉腫、細網肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫、および毛細血管拡張性肉腫が含まれる。
【0029】
用語「メラノーマ(黒色腫)」は、皮膚およびその他の器官のメラニン細胞系から生じる腫瘍を意味すると解釈されている。本発明の組成物ならびに任意選択で増強剤および/または別の化学療法剤で治療することが可能なメラノーマには、それだけには限定されないが、例えば、末端性黒子性黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91メラノーマ、ハーディング−パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫、および表在性黒色腫が含まれる。
【0030】
用語「がん腫」は、周囲の組織に浸潤し転移を起こす傾向がある、上皮細胞から生成される悪性の新性増殖物を意味する。本発明の組成物ならびに任意選択で増強剤および/または化学療法剤で治療することが可能ながん腫には、それだけには限定されないが、例えば、細葉細胞がん、腺房細胞がん、腺嚢がん腫、腺様嚢胞がん、腺がん、副腎皮質のがん腫、胞巣状がん、肺胞上皮がん、基底細胞がん、好塩基球がん腫、類基底細胞がん、基底有棘細胞がん、細気管支肺胞上皮がん、細気管支がん、気管支原性肺がん、脳状がん(cerebriform carcinoma)、胆管細胞がん、絨毛がん、コロイド腺がん、面皰性乳がん、子宮体がん、篩状がん、胸部皮膚がん、皮膚がん、円柱がん、円柱細胞がん、管がん、硬性がん、胎児性がん、脳様がん、類表皮がん、腺上皮がん、外方発育がん、潰瘍がん、線維がん、膠様がん(gelatiniform carcinoma)、コロイド腺がん(gelatinous carcinoma)、巨細胞がん、巨大細胞がん、腺がん、顆粒膜細胞がん、毛母がん、血様がん、肝細胞がん、ヒュルツル細胞がん、硝子状がん、ハイプメフロイドカーシノーマ(hypemephoroid carcinoma)、小児性胎児性がん、上皮内がん(carcinoma in situ)、表皮内がん、上皮内がん、クロムペッヘル皮膚がん、クルチッキー細胞がん、大細胞がん、レンズ状がん(lenticular carcinoma)、レンズ状がん(carcinoma lenticulare)、脂肪腫様がん、リンパ上皮がん、髄様がん(carcinoma medullare)、髄様がん(medullary carcinoma)、黒色がん、軟性がん、粘液がん(mucinous carcinoma)、粘液分泌がん、粘液細胞がん、粘膜類表皮がん、粘液がん(carcinoma mucosum)、粘液性がん、粘液腫様がん、上咽頭がん、燕麦細胞がん、骨化性がん、類骨がん、乳頭状がん、門脈周囲がん、上皮内がん(preinvasive carcinoma)、棘細胞がん、軟性がん、腎臓の腎細胞がん、予備細胞がん、肉腫様がん、総排泄腔がん、硬性がん、陰嚢がん、印環細胞がん、単純がん、小細胞がん、バレイショ状がん、回転楕円面細胞がん腫、紡錘体細胞がん、海綿様がん、扁平上皮がん(s
quamous carcinoma)、扁平上皮がん、ストリングカルシノーマ(string carcinoma)、血管拡張がん、毛細血管拡張性のがん、移行上皮がん、結節がん(carcinoma tuberosum)、結節がん(tuberous
carcinoma)、疣状がん、および絨毛様がんが含まれる。
【0031】
本発明の組成物で治療することが可能なさらなるがんには、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳がん、卵巣がん、肺がん、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、原発性脳腫瘍、胃がん、結腸がん、悪性膵臓性インスラノーマ(insulanoma)、悪性類がん腫、膀胱がん、前がん性の皮膚の病変、精巣がん、リンパ腫、甲状腺がん、神経芽細胞腫、食道がん、泌尿生殖路がん、悪性高カルシウム血症、子宮頸がん、子宮内膜がん、副腎皮質がん、および前立腺がんが含まれる。
【0032】
「診断(上の)」または「診断された」は、病状の存在または性質を同定することを意味する。診断方法は、その感度および特異性において様々である。診断アッセイの「感度」は、試験結果が陽性である罹患個体の割合(%)(「真陽性」の割合(%))である。アッセイで検出されなかった罹患個体は「偽陰性」である。疾患ではなく、アッセイで試験結果が陰性である対象は「真陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異性」は、1から偽陽性率を差し引くが、この場合「偽陽性」率は試験結果が陽性であったが疾患ではないものの割合と定義される。特定の診断方法が、ある状態の決定的な診断を下さないことがあっても、その方法が診断上助けとなる陽性の徴候を提供するのであれば十分である。
【0033】
用語「患者」または「個体」は、本明細書では互換的に用いられ、治療すべき哺乳動物の対象を意味し、ヒト患者であることが好ましい。いくつかの場合では、本発明の方法は、それだけには限定されないが、マウス、ラット、およびハムスターなどのげっ歯動物、ならびに霊長動物を含む、実験動物における使用、獣医学的応用における使用、および疾患の動物モデルの開発における使用を見出している。
【0034】
「サンプル」は、本明細書ではその最も広い意味で用いられる。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド、抗体などを含んでなるサンプルは、体液;細胞調製物の可溶性分画または細胞を増殖させた培養液;細胞から分離または抽出した染色体、細胞小器官、または膜;溶液状態または基質に結合したゲノムDNA、RNA、もしくはcDNA、ポリペプチド、またはペプチド;細胞;組織;組織プリント;フィンガープリント、皮膚または毛髪などからなるものでよい。
【0035】
「治療(処置)」は、障害の発症を防止し、または障害の病態もしくは症状を変化させる意図で行われる介入である。したがって、「治療(処置)」は、治療的処置、および予防的または防止的措置の両者を意味する。処置を必要とするものには、すでに障害を有するもの、および障害が防止されるべきものが含まれる。腫瘍(例えば、がん)の処置では、治療用の物質は、腫瘍細胞の病態を直接減少させる場合もあるし、放射線療法および/または化学療法などの他の治療用物質による処置に対して腫瘍細胞をより感受性にする場合もある。本明細書で用いられる「改善」または「処置」は、標準化した値(例えば、健康な患者または個体で得られた値)に近づく症状であって、例えば、常套的な統計上の検定を用いた判定で、標準化した値からの違いが50%未満であり、好ましくは標準化した値からの違いが約25%未満であり、より好ましくは標準化した値からの違いが約10%未満であり、さらにより好ましくは標準化した値との有意差がない症状を意味する。例えば、「がんまたは腫瘍細胞の処置」は、以下の作用、すなわち(1)(i)減速、および(ii)完全な増殖の停止を含む、ある程度までの腫瘍の増殖の阻害、(2)腫瘍細胞の数の減少、(3)腫瘍の大きさの維持、(4)腫瘍の大きさの減少、(5)腫瘍細胞の周辺の臓器への浸潤の(i)減少、(ii)減速、または(iii)完全な防止を含む阻害
、(6)転移の(i)減少、(ii)減速、または(iii)完全な防止を含む阻害、(7)(i)腫瘍の大きさの維持、(ii)腫瘍の大きさの減少、(iii)腫瘍の増殖の減速、(iv)侵入の減少、減速、もしくは防止をもたらす可能性がある抗腫瘍免疫反応の増強、および/または、(8)障害に関連する1つまたは複数の症状の、重症度または数のある程度までの軽減、のうち1つまたは複数を意味する。
【0036】
本明細書で用いられる「改善された症状」または「処置された症状」とは、標準化した値に近づく症状であって、例えば、常套的な統計上の検定を用いた判定で、標準化した値からの違いが50%未満であり、好ましくは標準化した値からの違いが約25%未満であり、より好ましくは標準化した値からの違いが約10%未満であり、さらにより好ましくは標準化した値との有意差がない症状を意味する。
【0037】
「ケモカイン」は、食細胞およびリンパ球を含む細胞の遊走および活性化に関連する小型のサイトカインであり、炎症反応で役割を果たす。
「サイトカイン」は、細胞により生成されるタンパク質であり、該サイトカインが作用する他の細胞表面上の「サイトカイン受容体」を介して、同細胞の挙動に影響を及ぼす。リンパ球が産生するサイトカインは、「リンホカイン」と呼ばれることもある。サイトカインは、また、タイプI(例えば、IL−2およびIFN−γ)、ならびにタイプII(例えば、IL−4およびIL−10)として特徴づけられる。
【0038】
用語「変調する」は、言及した任意の活性が、例えば、増大され、増強され、増大され、アゴナイズされ(作動物質(アゴニスト)として作用し)、促進され、低減され、減少され、抑制され、阻止され、またはアンタゴナイズされる(拮抗物質(アンタゴニスト)として作用する)ことを意味する。変調により、活性をベースライン値の1倍、2倍、3倍、5倍、10倍、100倍、などを超えて増加させることが可能である。変調により、その活性をベースライン値より低く低下させることも可能である。
【0039】
本明細書で用いられる、用語「腫瘍細胞に選択的」は、後述の実施例において詳細に記載するように、腫瘍の増殖阻害、アポトーシス、抗血管形成作用などのコエンザイムQ10薬剤組成物の作用であって、正常細胞に適用した場合には検出できない作用を意味する。
【0040】
CoQ10組成物
好ましい1実施形態では、本発明は、がんを治療するためのCoQ10組成物を提供する。好ましくは、組成物は、少なくとも約1%〜約25%(w/w)のCoQ10、より好ましくは約1%〜約20%(w/w)のCoQ10を含んでなる。以下の実施例において記載する代表的な実施形態では、CoQ10の局所用製剤を担がん動物の皮膚に施用して腫瘍の増殖速度を低下させる。CoQ10はピュアプレスクリプションズ(Pure Prescriptions)[米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在]から、任意の適切な量(例えば1キログラム)の粉末形態で得ることが可能である。CoQ10含有組成物を送達するために、任意の適切な担体を使用することが可能である。例えば、リポソームを担体として使用してもよい。例示的なリポソームの製剤は、Phospholipon(登録商標)90G(アメリカン・レシチン(American Lechitin))[米国コネチカット州スタンフォード(Stanford)所在]、Phospholipon90H(アメリカン・レシチン(American Lechitin))[米国コネチカット州スタンフォード(Stanford)所在]、グリセロール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エタノール、中鎖トリグリセリド(MCT)、ラベンダー(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))[米国ミズーリ州セントルイス(St.Louis)所在]、およびコエンザイムQ10(ピュアプレスクリプションズ(Pure Prescriptions))[米国カリ
フォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在]からなる。この製剤を調製するためのプロトコールの例は、最初にPhospholipon(登録商標)90H 0g、Phospholipon(登録商標)90G 5gを、MCT 1.5g、BHT 0.3g、およびエタノール9mlと75℃で溶解することを必要とする。次に、コエンザイムQ10 12gを混合物中に溶解する。窒素飽和水で調製した1mMリン酸バッファー(pH8.2)65ml、グリセロール13.3g、およびラベンダー50μLを加える。上記の混合物を、高速ブレンダー中12000RPMでブレンドしてクリームを形成する。このクリームを、使用するまで4℃で貯蔵する。
【0041】
対象
多くの異なる生物種に由来する対象が腫瘍を有し、腫瘍を獲得しやすいので、本発明は多くのタイプの動物の対象に適合性がある。このような動物の非網羅的な例示の一覧として、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ、畜牛、イヌ、ネコ、ならびにサル、類人猿、および人類などの霊長動物などの哺乳動物が挙げられる。皮膚がん腫瘍に罹患することが知られているこれらの動物対象は、本発明に使用するのに好ましい。特に、皮膚がん腫瘍または他の腫瘍に罹患しているヒト患者は、本発明に使用するのに適した動物対象である。本明細書に教示される方法を医学または獣医学で周知の他の方法に適用することにより(例えば、対象の動物の体重にしたがって投与する物質の投与量を調節して)、本発明に利用される組成物を、他の動物における使用に容易に最適化することが可能である。
【0042】
薬剤組成物および対象への投与
好ましい1実施形態では、CoQ10を含んでなる組成物を局所投与する。有効成分すなわちCoQ10が薬剤製剤として存在することが好ましい。例示の組成物については、以下の実施例で詳細に記載する。有効成分は、局所投与については、最終製品における製剤の重量で0.001%〜約20%(w/w)を含んでいるとよく、製剤の30%(w/w)ほどを含むこともあるが、約1%〜約20%(w/w)であることが好ましい。本発明の局所用製剤は、有効成分とともに、1つまたは複数の該成分に対して許容できる担体、および任意選択で任意の他の治療用の成分を含んでなる。担体は、製剤の他の成分と共存可能であるという意味で「許容できる」ものでなければならず、投与を受ける者にとって有害であってはならない。
【0043】
本発明の組成物は、単独で、または該組成物が適切な担体もしくは賦形剤と混合されている薬剤組成物のいずれかで患者に投与することが可能である。問題の障害を示す患者を治療する際、治療上有効な量のこれらのような薬剤を投与する。治療上有効な量は、患者に症状の改善または生存の延長をもたらす化合物の量を意味する。
【0044】
このような化合物の毒性および治療上の効力は、例えばLD50(集団の50%の致死用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順により決定することが可能である。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比で表すことが可能である。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトで使用するための投与量の範囲を策定するのに用いることが可能である。このような化合物の投与量は、毒性をほとんどまたは全く伴わないED50を含む循環血中濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、使用される投与形態および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化することができる。
【0045】
本発明の方法で用いられる任意の化合物について、治療上有効な投与量を、最初に細胞培養アッセイから推定することが可能である。例えば、細胞培養物で決定したIC50を含む循環血漿中濃度範囲を達成するために、動物モデルで投与量を策定することが可能で
ある。このような情報を用いて、ヒトで有用な投与量をより正確に決定することが可能である。血漿中レベルは、例えばHPLCにより測定してもよい。
【0046】
的確な製剤、投与経路、および投与量は、患者の状態を考慮に入れて個々の医師が選択することが可能である(フィングル(Fingl)ら、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、1975年、第1章第1頁を参照されたい)。担当の医師であれば、毒性により、または臓器の機能不全により、いつ、どのように投与を終了、中断、または調節するかを承知しているということに留意しなければならない。逆に言えば、担当の医師であれば、臨床反応が(毒性を除外して)十分ではない場合に治療をより高いレベルに調節することも承知しているであろう。問題の腫瘍形成性障害の治療において投与する量の大小は、治療する状態の重症度および投与経路で変化する。状態の重症度は、例えば、一部は標準的な予後評価方法により評価してもよい。さらに、投与量およびおそらくは投与頻度は、個々の患者の年齢、体重、および反応によっても変化するであろう。上記で論じたものに相当するプログラムを、獣医学上の医薬に用いてもよい。
【0047】
治療する特定の状態に応じて、このような薬剤を調合し、全身的または局所的に投与してもよい。調合および投与のための技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第18版、マック・パブリッシング社(Mack
Publishing Co.)[米国ペンシルバニア州イーストン(Easton)所在](1990年)に記載されている。適切な経路は、少数を挙げてみると、経口、経直腸、経皮、経膣、経粘膜、または経腸投与;筋肉内注射、皮下注射、脊髄内注射、およびくも膜下注射、心室内への直接注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、または眼内注射を含む非経口送達を挙げることができる。
【0048】
上記に記載した組成物を、任意の適切な製剤として対象に投与してもよい。CoQ10の局所用製剤でがんを治療することの他に、本発明の他の態様ではCoQ10を他の方法により送達してもよい。例えば、CoQ10を非経口送達用に、例えば、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、または腫瘍内注射用に調合してもよい。他の送達方法、例えば、リポソーム送達、または組成物を含浸したデバイスからの拡散を用いてもよい。組成物を、単回ボーラスで、複数回注射で、または持続注入により(例えば、静注、もしくは腹膜透析により)投与してもよい。非経口投与では、組成物を、発熱性物質を含まない滅菌された形態で調合することが好ましい。本発明の組成物は、細胞を含んだ液体に組成物を単に加えることにより、(例えば、in vitro培養物中のがん細胞にアポトーシスを引き起こすために)in vitroで細胞に投与することも可能である。
【0049】
治療する特定の状態に応じて、このような薬剤を調合し、全身的または局所的に投与してもよい。調合および投与のための技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第18版、マック・パブリッシング社(Mack
Publishing Co.)[米国ペンシルバニア州イーストン(Easton)所在](1990年)に記載されている。適切な経路は、少数を挙げてみると、経口、経直腸、経皮、経膣、経粘膜、または経腸投与;筋肉内注射、皮下注射、脊髄内注射、およびくも膜下注射、心室内への直接注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、または眼内注射を含む非経口送達を挙げることができる。
【0050】
注射用に、本発明の薬剤を水溶液、好ましくは、ハンクス(Hanks)溶液、リンガー(Ringer)溶液、または生理食塩緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液に調合してもよい。そのような経粘膜投与では、浸透すべきバリアに適した浸透剤が製剤中に用いられる。このような浸透剤は当技術分野では一般的に知られている。
【0051】
本発明の実施のために開示した本明細書中の化合物を調合して全身投与に適した投与形態にするために、薬学的に許容できる担体を使用することは、本発明の範囲内にある。担体を適当に選択し、適切に製造を実践することにより、本発明の組成物、特に溶液として調合されたものを、静脈注射などにより非経口的に投与してもよい。当技術分野でよく知られている薬学的に許容できる担体を用いて、化合物を経口投与に適した投与形態に容易に調合することが可能である。このような担体により、本発明の化合物を、治療を受ける患者が経口摂取するための錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに調合できるようになる。
【0052】
細胞内に投与することが意図された薬剤を、当業者によく知られた技術を用いて投与してもよい。例えば、そのような薬剤をリポソーム中にカプセル化し、次いで上記に記載したように投与してもよい。リポソームは、内部が水性の球形の脂質二重層である。リポソーム形成の際に水溶液中に存在するすべての分子は、水性の内部に組み入れられる。リポソームの内容物は、外部の微小環境から保護されるとともに、リポソームが細胞膜に融合するので細胞の細胞質中に効率良く送達される。さらに、疎水性であるため、小型の有機分子は細胞内に直接投与され得る。
【0053】
本発明における使用に適する薬剤組成物には、その所期の目的を達成するのに有効な量の有効成分を含む組成物が挙げられる。例えば、図14を参照されたい。有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示を考慮すれば、当業者の能力の十分な範囲内にある。有効成分の他に、これらの薬剤組成物は、活性化合物を薬学上使用可能な調製物に加工しやすくする賦形剤および助剤からなる、適切な薬学的に許容できる担体を含んでもよい。経口投与のために調合された調製物は、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、または液剤の形態であってよい。本発明の薬剤組成物は、それ自体が周知の方法で、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、浮揚、乳化、カプセル化、エントラップ、または凍結乾燥の工程により、製造することができる。
【0054】
局所投与に適する製剤には、治療が必要とされる部位への皮膚を介した浸透に適した液体または半流動体調製物、例えば、リニメント剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、またはペースト剤、および眼、耳、または鼻に投与するのに適した滴剤が含まれる。本発明による滴剤は、水性または油性の滅菌溶液または懸濁液からなるものでよく、有効成分を、殺菌剤および/または殺真菌剤および/または任意の他の適切な保存剤の適切な水溶液に溶解することにより調製することができ、界面活性剤を含むことが好ましい。得られた溶液を次いでろ過により清浄化および滅菌し、無菌技術により容器に移すことができる。滴剤中に含めるのに適切な殺菌剤および殺真菌剤の例には、硝酸フェニル水銀または酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)、ならびに酢酸クロルヘキシジン(0.01%)がある。油性溶液の調製に適する溶媒には、グリセロール、希釈したアルコール、およびプロピレングリコールが含まれる。
【0055】
本発明によるローション剤には、皮膚または眼への適用に適するものが含まれる。点眼ローション剤は、殺菌剤を任意選択で含む滅菌水溶液からなり、滴剤の調製法と同様の方法により調製できる。皮膚に適用するためのローション剤またはリニメント剤は、アルコールもしくはアセトンなどの乾燥を速め皮膚を冷却する物質、および/あるいは保湿剤、例えばグリセロール、またはヒマシ油もしくは落花生油などの油を含むこともできる。
【0056】
本発明によるクリーム剤、軟膏剤、またはペースト剤は、外用の有効成分の半固形製剤である。これらは、細分割された形態または粉末形態の、単独または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液の有効成分を、適切な機械の助けで、脂肪性基剤または非脂肪性基剤とともに混合することにより製造することができる。基剤は、硬パラフィン、軟パラフィン、もしくは液体パラフィンなどの炭化水素、グリセロール、ミツロウ、金属石
ケン;粘漿剤;アーモンド油、トウモロコシ油、落花生油、ヒマシ油、もしくはオリーブ油などの天然起源の油;羊毛脂もしくはその誘導体、またはステアリン酸もしくはオレイン酸などの脂肪酸を、プロピレングリコールもしくはマクロゴールなどのアルコールとともに含むことができる。製剤に、任意の適切な界面活性剤、例えば陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、またはソルビタンエステルもしくはそのポリオキシエチレン誘導体などの非イオン界面活性剤を含めてもよい。懸濁化剤、例えば、天然ゴム、セルロース誘導体、または珪質シリカなどの非有機材料、およびラノリンなどの他の成分を含んでもよい。
【0057】
非経口投与のための薬剤製剤には、水に可溶な形態の活性化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁剤は、適当な油性の注射用懸濁液として調製してもよい。適切な親油性の溶媒または媒体には、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。水性注射用懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなど、懸濁液の粘度を増大させる物質を含むことができる。任意選択により、懸濁液は、適切な安定化剤または化合物の可溶性を増大して高濃度の溶液の調製を可能にする物質も含むことができる。
【0058】
経口で使用するための薬剤調製物は、錠剤または糖衣錠のコアを得るために、活性化合物を固体の賦形剤と組み合わせ、得られた混合物を場合により粉砕し、所望により適切な助剤を加えた後、粒状の混合物を加工することにより得ることが可能である。適切な賦形剤には、特に、ラクトース、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含めた糖などの増量剤;例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物がある。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤を加えてもよい。
【0059】
糖衣錠のコアには適切なコーティングが施される。この目的では、濃縮した糖の溶液を用いることができ、この溶液には任意選択でアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶剤もしくは溶剤混合液を含めることができる。染料または色素を、識別のために、または活性化合物の投与量の様々な組合せを特徴づけるために錠剤または糖衣錠のコーティングに加えてもよい。
【0060】
経口的に用いることが可能な薬剤調製物には、ゼラチン製の押し込み式カプセル、ならびに、ゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤とでできた密閉ソフトカプセルが含まれる。押し込み式カプセルは、ラクトースなどの増量剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および任意選択で安定剤と混合して有効成分を含むことが可能である。ソフトカプセルでは、活性化合物を、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解、または懸濁してもよい。さらに、安定化剤を加えてもよい。
【0061】
組成物は、所望により緩衝系を含むことが可能である。緩衝系は、組成物のpHを望ましい範囲に維持または緩衝するように選択される。本明細書で用いられる「緩衝系」または「緩衝剤」は、水溶液における場合、その溶液に酸または塩基を加えた場合にpH(または水素イオン濃度もしくは水素イオン活性)の大幅な変化に対して当該溶液を安定化する溶質物質を意味する。このように抵抗性、または上記に示した範囲の緩衝された出発pH値からのpHの変化を担う溶質物質は、よく知られている。無数の適切な緩衝剤が存在
するが、リン酸一水素カリウムが好ましい緩衝剤である。
【0062】
薬剤組成物の最終pH値は、生理学的に適合性のある範囲内で変化することができる。必然的に、最終pH値はヒトの皮膚を刺激しない値であり、その結果活性化合物すなわちCoQ10の経皮輸送が促進されることが好ましい。この制約に違反せずに、CoQ10化合物の安定性を向上させ、必要に応じて粘度を調節するようにpHを選択すればよい。1実施形態では、好ましいpH値は約3.0〜約7.4であり、より好ましくは約3.0〜約6.5であり、最も好ましくは約3.5〜約6.0である。
【0063】
好ましい局所送達用の媒体では、組成物の残りの成分は水であり、必然的に精製水、例えば脱イオン水である。このような送達媒体組成物は、組成物の全重量に対して約50%超から約95%までの範囲の水を含む。しかし、存在する水の特定の量は重要ではなく、望ましい粘度(通常約50cps〜約10000cps)および/または他の成分の濃度のために調節可能である。局所送達用の媒体は、少なくとも約30センチポアズの粘度を有することが好ましい。
【0064】
他の周知の経皮的皮膚浸透促進剤を、CoQ10の送達を促進するために用いることも可能である。例示として、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド;1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン(Azone(登録商標)、ネルソンリサーチ社(Nelson Research,Inc.)の登録商標)などの環状アミド;N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジエチルトルアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルオクタミド、N,N−ジメチルデカミドなどのアミド;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、2−ピロリドン−5−カルボン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドンもしくはその脂肪酸エステル、1−ラウリル−4−メトキシカルボニル−2−ピロリドン、N−タロウアルキルピロリドン(tallowalkylpyrrolidone)などのピロリドン誘導体:プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ヘキサントリオールなどの多価アルコール;オレイン酸、リノレン酸、ラウリル酸、吉草酸、ヘプタン酸、カプロン酸、ミリスチン酸、イソ吉草酸、ネオペンタン酸、トリメチルヘキサン酸、イソステアリン酸などの直鎖および分枝の脂肪酸;エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、オレイル、ステアリル、リノレイルなどのアルコール;ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどの陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムなどの陽イオン界面活性剤;プロポキシル化ポリオキシエチレンエーテル(例えばポロキサマー231、ポロキサマー182、ポロキサマー184など)、エトキシル化脂肪酸(例えばTween(R)20、Myrj(R)45など)、ソルビタン誘導体(例えばTween(R)40、Tween(R)60、Tween(R)80、Span60(R)など)、エトキシル化アルコール(例えばポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(Brij(R)30)、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(Brij(R)93)など)、レシチン、およびレシチン誘導体などの非イオン界面活性剤、;D−リモネン、α−ピネン、β−カレン、α−テルピネオール、カルボール(carvol)、カルボン、メントン、リモネン酸化物、α−ピネン酸化物、ユーカリプタスオイルなどのテルペン類がある。
【0065】
また、皮膚浸透促進剤として適切なものに、サリチル酸、サリチル酸メチル、クエン酸、コハク酸などの有機酸およびエステルがある。
血管形成および血管形成依存性疾患
本明細書で用いられる用語「血管形成阻害性」「血管形成を阻害する」、または「抗血管形成」には、脈管形成が含まれ、血管新生の程度、量、または速度の減少をもたらすことを意味することが意図される。組織における内皮細胞の増殖または遊走の程度、量、ま
たは速度の減少をもたらすことは、血管形成阻害の具体的な例である。
【0066】
用語「血管形成阻害性組成物」は、内皮細胞の遊走、増殖、管形成など、腫瘍が仲介する(腫瘍仲介性の)血管形成過程を阻害し、続いて既存の血管からの新しい血管の生成を阻害し、結果的に、腫瘍仲介性の血管形成などの血管形成依存性疾患を阻害する、CoQ10を含んでなる組成物を意味する。例えば、CoQ10が全く存在しない対照組織と比べて、CoQ10を含んでなる組成物が組織での腫瘍仲介性の血管形成を阻害している図29Aおよび29Bを参照されたい。CoQ10を含んでなる組成物については、以下の実施例で詳細に記載する。
【0067】
本明細書で用いられる用語「血管形成依存性疾患」は、血管形成または脈管形成の過程が病状を持続または増大させる疾患を意味することが意図されている。特に、血管形成依存性疾患は、腫瘍仲介性の血管形成に関する。
【0068】
血管形成は、既存の毛細管または後毛細管細静脈からの新しい血管の形成である。脈管形成は、内皮細胞前駆体である血管芽細胞から生じる新しい血管の形成に起因する。いずれの過程も、新しい血管の形成をもたらし、血管形成依存性疾患との用語の意味に包含される。同様に、本明細書で用いられる用語「血管形成」には、脈管形成から生じたもの、ならびに既存の血管、毛細管、および小静脈の枝分れ、および出芽から生じたものなどの血管のde novo形成が含まれることが意図される。
【0069】
脈管形成を含む血管形成は、重要な生理学的過程であり、これがなければ胎児の発育および傷の治癒は起こらない。しかし同時に、血管形成は、冒された組織内の細胞に十分な血液および栄養の供給を提供する手段としても多くの病状に不適切に動員される。これらの病状の多くは、異常な細胞の増殖または制御を伴う。血管形成が重要であると考えられるそのような状態を、本明細書では血管形成依存性疾患と呼ぶ。しかし、本発明の方法は、正常な生理学的過程に関連する血管形成を有益に阻害するために用いることも可能である。例えば、月経周期に関連する血管形成の阻害を、受胎調節の効果的な方法として予防的に用いることが可能である。したがって、血管形成依存性疾患の治療に関する以下の記載は、予防上もしくは治療上の必要または利益が存在する正常な血管形成反応の阻害に応用することもできる。
【0070】
血管形成依存性疾患には、例えば、免疫性および非免疫性の炎症、関節リウマチ、慢性関節リウマチ、および乾癬などの炎症性障害;糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症、黄斑変性症、角膜移植片拒絶反応、水晶体後線維増殖症、皮膚潮紅、アテローム硬化性プラークにおける毛細管の増殖、および骨粗鬆症など、不適切なまたは不適当な血管の侵入に関連する障害;例えば固形腫瘍、腫瘍の転移、白血病などの血液の腫瘍、血管線維症、カポジ肉腫、血管腫などの良性腫瘍、聴神経鞘腫、神経芽細胞腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫、ならびに腫瘍の増殖を支える血管新生を必要とするその他のがんを含めたがんに関連する障害が含まれる。血管形成依存性疾患のさらなる例には、例えば、オスラーウェーバー症候群、心筋の血管形成、プラーク血管新生、毛細血管拡張症、血友病者の関節および外傷の肉芽化が含まれる。病的状態の維持または進行において血管形成が役割を果たす他の疾患は当業者には周知であり、同様に、本明細書に用いられる用語の意味の中に含まれることが意図される。血管形成仲介性の疾患は、腫瘍が引き起こす血管形成を意味することが好ましい。
【0071】
血管形成阻害活性のin vitro生物学的アッセイ
本発明のCoQ10化合物は、その血管形成阻害活性をいくつかのin vitroのアッセイシステムで試験することが可能であり、当業者の知識の範囲内に十分にある。例えば、内皮細胞であるヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)またはヒト微小血管内皮
細胞(HMVEC)を調製または購入することが可能であり、細胞2×10個/mLの濃度で1:1(v/v)の比にてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中でフィブリノーゲン(5mg/mL)と混合する。トロンビンを加え(終濃度5ユニット/mL)、混合液を直ちに24ウェルのプレートに移す(1ウェル当たり0.5mL)。フィブリンのゲルを形成させ、次いで、以下の実施例に記載するように、試験化合物とともに血管内皮増殖因子(VEGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2)をウェルに(それぞれ終濃度5ng/mLで)加える。細胞を5%COにて37℃で4日間インキュベートし、4日目に各ウェルの細胞を計数し、丸いか、分枝を伴わずに伸長しているか、分枝を1つ有して伸長しているか、または分枝を2つ以上有して伸長しているかのいずれかに分類する。各濃度の化合物について5個の異なるウェルの平均として結果を表す。典型的には、血管形成阻害剤の存在下では、細胞は丸いままであるか、または未分化の管を形成する(例えば、分枝が0または1つ)。このアッセイは、当技術分野において、in vivoでの血管形成の効果(または血管形成阻害活性)を予測するものと理解されている(グラント(Grant)ら、In Vitro Cell Dev.Biol.、27A、p.327〜336(1991年);ミン(Min)ら、Cancer Res.56巻、p.2428〜2433(1996年))。
【0072】
別のアッセイでは、ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson)[米国ペンシルバニア州ベッドフォード(Bedford)所在]から販売されているMatrigel(商標)マトリックス被覆プレート上で内皮細胞を培養したときの、内皮細胞の管形成が観察される(シュネーパー(Schnapaer)ら、J.Cell.Physiol.、165巻、p.107〜118(1995年))。内皮細胞(1×10個/ウェル)を24ウェルのMatrigel(商標)マトリックス被覆プレート上に移し、48時間後に管の形成を定量する。阻害薬を、内皮細胞と同時に、またはその後様々な時点において加えることにより試験する。
【0073】
このアッセイは、特殊なタイプの基底膜、すなわち遊走し分化する内皮細胞が最初に遭遇すると予想され得るマトリックスの層を内皮細胞に提示することにより、血管形成をモデル化している。結合している増殖因子に加えて、Matrigel(商標)マトリックス(およびin situの基底膜)に見られるマトリックス成分、またはそのタンパク質分解産物は、内皮細胞の管形成に対して促進性でもあり、このモデルをフィブリンゲル血管形成モデルに対して補完的なものとしている。
【0074】
さらに、本発明の化合物の血管形成活性を、ニワトリ漿尿膜(CAM)アッセイにより評価することが可能である(オイカワ(Oikawa)ら、Cancer Lett.、59巻、p.57〜66、(1991年))
併用療法
本発明のCoQ10治療用組成物を、患者が示す特定の腫瘍、疾患、または障害の治療に一般的に用いられる任意の他の方法と組み合わせてもよい。特定の治療法が、それ自体患者の状態に有害であることが知られていない限り、かつCoQ10組成物の処置を著しく妨げない限り、その治療法と本発明との組合せが企図される。
【0075】
固形腫瘍の治療に関して、本発明を、外科手術、放射線治療、化学療法などの従来の方法と組み合わせて用いてもよい。したがって、本発明は、治療用CoQ10組成物を外科手術または放射線治療と同時に、またはその前に、またはその後に用いる併用療法、あるいは前記組成物を従来の化学療法剤、放射線治療物質もしくは他の抗血管形成薬、または標的化された免疫毒素もしくはコアグリガンド(coaguligand)とともに、またはそれらの前に、またはそれらの後に投与する併用療法を提供する。
【0076】
他の血管の疾患に対する併用療法も企図される。その特定の例として、良性の前立腺肥
大症(BPH)があり、当技術分野で現在実施されている他の治療と組み合わせてCoQ10組成物で治療してもよい。例えば、PSAなどのBPHに局在するマーカーに対する免疫毒素の標的がある。
【0077】
CoQ10組成物と組み合わせて1つまたは複数の薬剤を用いる場合、組み合わせた結果が、各処置を別々に行う場合に観察される効果の相和である必要はない。少なくとも相和効果であることが一般的に望ましいが、上記の単独治療法のうち1つの抗腫瘍効果が少しでも増強すれば有益である。また、併用療法が相乗効果を表す必要性は特にないが、相乗効果は確かに可能であり有利である。
【0078】
抗腫瘍に対する併用療法を実践するためには、動物に、CoQ10組成物構築物を別の抗がん剤と組み合わせて、その動物内で併用による抗腫瘍作用をもたらすのに効果的な方法で投与するだけでよい。したがって、薬剤は、腫瘍の脈管構造内で共存し、腫瘍の環境における作用の組合せをもたらすために、効果的な量かつ効果的な期間供給されることになろう。この目的を達成するために、CoQ10組成物および他の抗がん剤を、単一の組成物として、または異なる投与経路を用いて2つの別個の組成物として、動物に同時に投与することができる。
【0079】
あるいは、CoQ10組成物による治療を、例えば、数分から数週間の範囲の間隔で、第2の抗がん剤治療の前または後に行ってもよい。抗がん剤およびCoQ10組成物を別々に動物に施用するある実施形態では、抗がん剤とCoQ10組成物とが、腫瘍に対して併用効果を有利に発揮できるように、それぞれの送達時間の間に長時間が過ぎてしまわないようにする。そのような場合には、互いに約5分から約1週間以内に、より好ましくは互いに約12〜72時間以内に、最も好ましくはわずか約12〜48時間の遅延時間で、腫瘍を両薬剤に接触させることが企図される。
【0080】
がん治療において、一般的に物質を併用することはよく知られている。例えば、米国特許第5710134号明細書(本願明細書に参照により援用される)は、非毒性の薬剤すなわち「プロドラッグ」と組み合わせて腫瘍に壊死を引き起こす組成物を開示している。壊死の過程により遊離される酵素が非毒性の「プロドラッグ」を開裂して、腫瘍細胞の死滅をもたらす毒性の「薬物」にする。また、米国特許第5747469号明細書(本願明細書に参照により援用される)は、p53をコードするウイルスベクターおよびDNAに損傷を与える物質の併用を開示している。任意のこのような同様の方法を、本発明とともに用いることが可能である。
【0081】
ある場合には、処置のための時間を大幅に延長することが望ましいことさえもあり、この場合、各投与の間に数日(2、3、4、5、6、あるいは7日)、数週間(1、2、3、4、5、6、7、あるいは8週間)、または数カ月(1、2、3、4、5、6、7、あるいは8カ月)さえも経過する。これは、CoQ10組成物治療などの一方の処置が実質的に腫瘍を破壊するためのものであり、かつ抗血管形成薬の投与などの他方の処置が微小転移巣または腫瘍の再増殖を予防するためのものである状況では有利である。
【0082】
CoQ10組成物または別の抗がん剤のいずれかの複数回投与が用いられることも予想される。CoQ10組成物および抗がん剤を互換的に、1日おきにまたは1週おきに投与してもよいし、一続きのCoQ10組成物治療を施した後で一続きの抗がん剤治療が続いてもよい。いずれにしても、併用療法を用いて腫瘍の退縮を達成するために、投与の回数に関係なく、抗腫瘍効果を発揮するのに効果的な併用量で両方の薬物を送達することが必要とされる。
【0083】
外科手術に関しては、あらゆる外科処置を本発明と組み合わせて行うことができる。放
射線療法に関しては、γ線照射、X線、UV照射、電磁波、およびさらには電子発光など、腫瘍細胞内に局所的にDNA損傷を引き起こすあらゆる機序が企図される。放射性同位元素を腫瘍細胞に直接送達することも企図され、標的化抗体または他の標的化手段と組み合わせてこれを用いてもよい。
【0084】
サイトカイン療法も、併用治療計画の効果的なパートナーであることが証明されている。このような併用方法には、様々なサイトカインを用いることができる。サイトカインの例には、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNFα、TNFβ、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF,BDG、MP、LIF,OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、IFN−γが含まれる。サイトカインは、患者の状態およびサイトカインの相対的な毒性などの臨床上の徴候に合わせて、標準的な投与計画にしたがって投与される。ウテログロビンを使用して転移を予防または阻害することもできる(米国特許第5696092号明細書、本願明細書に参照により援用される)。
【0085】
CoQ10組成物および併用化学療法
ある実施形態では、本発明のCoQ10組成物を別の化学療法薬と組み合わせて投与してもよい。根底となる機序とは無関係に、様々な化学療法薬を、本明細書に開示される治療方法と併用することができる。治療薬には、例えば、シクロホスファミド(CTX、25mg/kg/日、経口投与)、タキサン(パクリタキセルまたはドセタキセル)、ブスルファン、シスプラチン、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、メルファラン、クラドリビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、クロラムブシル、タモキシフェン、タキソール、エトポシド(VP−16)、アドリアマイシン、5−フルオロウラシル(5FU)、カンプトテシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、コンブレタスタチン、並びにこれらの誘導体およびプロドラッグなどの化学療法薬が含まれ得る。
【0086】
当業者であれば理解するであろうが、化学療法薬の適切な投与量は、一般的におよそ、該化学療法薬が単独または他の化学療法薬と組み合わせて投与される臨床上の治療法にすでに使用されている量となる。例示に過ぎないが、シスプラチンなどの薬剤と他のDNAアルキル化剤を使用する場合もある。シスプラチンは、がんを治療するために広く使われており、この場合、臨床適用で用いられる効果的な投与量は、20mg/mを3週間ごと5日間全3コースである。シスプラチンは経口では吸収されず、したがって静脈、皮下、腫瘍内、または腹腔内注射により送達しなければならない。
【0087】
さらなる有用な薬剤には、DNA複製、有糸分裂、および染色体分離を妨げる化合物が含まれる。このような化学療法用化合物には、ドキソルビシンとしても知られるアドリアマイシン、エトポシド、ベラパミル、ポドフィロトキシンなどが含まれる。これらの化合物は、新生物の治療のための臨床上の設定において広く用いられ、アドリアマイシンでは25〜75mg/mの範囲の投与量で21日間隔にて静脈からボーラス注射により投与され、エトポシドでは35〜50mg/mで静脈投与、または静脈投与の倍の投与量で経口投与される。
【0088】
ポリヌクレオチド前駆体の合成および忠実度を妨害する薬剤を用いてもよい。広範囲にわたる試験が行われており、容易に入手可能な薬剤は、特に有用である。そのようなものとして、5−フルオロウラシル(5−FU)などの薬剤は新生物組織により優先的に使用され、新生物の細胞を標的にするのに特に有用な薬剤となっている。5−FUは非常に毒性が強いが、局所用担体を含む広範囲の担体に適用可能であり、しかし、3〜15mg/kg/日の範囲の投与量での静脈投与が一般的に用いられる。
【0089】
当業者には、CoQ10組成物との併用療法に用いることが可能な他の化学療法薬の非限定的な例について、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第15版、第33章、特に624〜652頁を教示する。投与量におけるある程度の変動は、治療する対象の状態に応じて必然的に生じる。投与を担う医師は、個々の対象について適切な投与量を決定することができる。
【0090】
抗血管形成
用語「血管形成」は、新しい血管の、一般的には組織または器官内への生成を意味する。通常の生理学的条件下では、ヒトまたは動物は、非常に特異的な制限された状況においてのみ血管形成を行う。例えば、血管形成は、傷の治癒、胎児および胎芽の発育、ならびに黄体、子宮内膜、および胎盤の形成において通常観察される。非制御状態の(持続性かつ/または調節されていない)血管形成は様々な疾患状態に関連しており、また腫瘍の増殖および転移の際に起きる。
【0091】
制御された血管形成も制御されていない血管形成も、同様の方法で進行すると考えられている。内皮細胞および血管周囲細胞は、基底膜により取り囲まれ、毛細血管を形成する。血管形成は、内皮細胞および白血球が放出した酵素による基底膜の侵食で始まる。血管の管腔の内側を覆う内皮細胞は、次いで基底膜を通して隆起する。血管形成の刺激は、侵食された基底膜を通して内皮細胞の遊走を引き起こす。遊走細胞は親血管から「出芽」を形成し、そこから内皮細胞は有糸分裂および増殖を行う。内皮細胞の出芽は互いに融合して毛細血管係蹄を形成し、新しい血管を創成する。
【0092】
腫瘍の発生および転移の際に、継続的な非制御の血管形成が起きるので、本発明の治療方法を、任意の1つまたは複数の「抗血管形成」療法と組み合わせて使用してもよい。併用療法に関して有用な抗血管形成薬の例を表1に列挙する。ここに列挙した各薬剤は例示であり、決して限定的なものではない。
【0093】
【表1】

【0094】
血管形成を阻害する際に使用するのに好ましいある成分は、「アンジオスタチン」という名のタンパク質である。この成分は、米国特許第5776704号明細書、同第5639725号明細書、および同第5733876号明細書に開示されている(これらの文献は本願明細書に参照により援用される)。アンジオスタチンは、還元ポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定した場合に、約38kD〜約45kDの分子量を有するタンパク質であり、プラスミノーゲン分子のクリングル領域1〜4をほぼ含んでいる。アンジオスタチンは、一般に、ネズミ科動物の完全長プラスミノーゲン分子の98番目のアミノ酸で始まる、ネズミ科動物プラスミノーゲン・フラグメントのアミノ酸配列と、実質的に同じアミノ酸配列を有する。
【0095】
アンジオスタチンのアミノ酸配列は、種間でわずかに変化する。例えば、ヒト・アンジオスタチンでは、アミノ酸配列は上記に記載したネズミ科動物のプラスミノーゲン・フラグメントの配列と実質的に類似しているが、活性型のヒト・アンジオスタチンの配列は、完全長のヒト・プラスミノーゲンのアミノ酸配列の97番目または99番目のアミノ酸から始まることがある。さらに、マウス腫瘍モデルで示したように、ヒト・プラスミノーゲンは類似の抗血管形成活性を有するので、使用することができる。
【0096】
ある種の抗血管形成療法は、腫瘍の退縮をもたらすことがすでに示されており、アンジオスタチンはそのような物質の1つである。エンドスタチン、コラーゲンXVIIIの20kDaのCOOH末端フラグメント、細菌の多糖CM101、および抗体LM609も血管形成を抑制する活性を有している。しかし、これらのその他の特徴を考慮すると、こ
れらは血管形成を阻害するだけではなく、ほとんど不確定の機序により腫瘍血管の破壊も開始させるので、抗血管療法剤または腫瘍血管毒素と呼ばれる。これらの本発明との併用が明らかに想定される。
【0097】
アンジオスタチンおよびエンドスタチンは、マウスにおいて腫瘍の増殖を阻害するだけではなく腫瘍の退縮をももたらす能力が実証された最初の血管形成阻害物質であるため、熱心な研究の中心になっている。エラスターゼ、マクロファージメタロエラスターゼ(MME)、マトリライシン(MMP−7)、および92kDaのゼラチナーゼB/IV型コラゲナーゼ(MMP−9)など複数のプロテアーゼについて、プラスミノーゲンからアンジオスタチンを産生することが示されている。
【0098】
MMEは腫瘍においてプラスミノーゲンからアンジオスタチンを産生することが可能であり、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)は、マクロファージによるMMEの発現を上方制御してアンジオスタチンの産生を誘導する。アンジオスタチン生成におけるMMEの役割は、MMEが実際に患者由来の肝細胞がんの臨床サンプルで発現されているという発見により支持される。アンジオスタチンを産生することができると考えられている別のプロテアーゼは、ストロメライシン−1(MMP−3)である。MMP−3は、in vitroでプラスミノーゲンからアンジオスタチン様フラグメントを産生することが示されている。
【0099】
CM101は、腫瘍で新血管の炎症を誘発する能力を特徴とする細菌の多糖である。CM101は、補体系の活性化を刺激する脱分化した内皮上で発現された受容体に結合し受容体を架橋結合する。CM101はまた、選択的に腫瘍を標的とするサイトカイン主導の炎症反応を開始させる。CM101はVEGFおよびその受容体の発現を下方制御する抗病的血管形成剤である。
【0100】
トロンボスポンジン(TSP−1)および血小板因子4(PF4)を、本発明と組み合わせて用いてもよい。これらはいずれもヘパリンと関連する血管形成阻害物質であり、血小板のα顆粒に見られる。TSP−1は、細胞外マトリックスの構成要素である、大型で450kDaのマルチドメインの糖タンパク質である。TSP−1は、HSPG、フィブロネクチン、ラミニン、および様々なタイプのコラーゲンを含む細胞外マトリックスに見られるプロテオグリカン分子の多くと結合する。TSP−1は、in vitroで内皮細胞の遊走および増殖を、in vivoで血管形成を阻害する。TSP−1は、形質転換した内皮細胞の悪性の表現型および腫瘍形成を抑制することも可能である。腫瘍抑制遺伝子p53は、TSP−1の発現を直接制御することが示されており、その結果、p53活性が失われるとTSP−1産生の劇的な低下、およびそれに伴う腫瘍誘導性の血管形成の増大がもたらされる。
【0101】
PF4は、70aaのタンパク質であり、in vitroで内皮細胞の増殖を、in
vivoで血管形成を強力に阻害することができる、ケモカインCXC ELRファミリーのメンバーである。腫瘍内投与されるか、またはアデノウイルスベクターにより送達されたPF4は、腫瘍の増殖の阻害をもたらすことができる。
【0102】
インターフェロンおよびメタロプロテイナーゼ阻害物質は、本発明と組み合わせることが可能な天然に存在する血管形成阻害物質の、他の2つのクラスである。インターフェロンの抗内皮活性は1980年代初期から知られているが、阻害の機序は依然として明らかではない。インターフェロンは内皮細胞の遊走を阻害しうること、またin vivoで、腫瘍細胞による血管形成促進因子の産生を阻害する能力によりおそらく媒介される、ある程度の抗血管形成活性を有することが知られている。例えば、特に血管の腫瘍はインターフェロンに感受性があり、増殖する血管腫をIFNαで治療することが可能である。
【0103】
組織メタロプロテイナーゼ阻害因子(TIMP)は、血管形成を阻害することも可能であり本発明と組み合わせた治療プロトコールで用いることが可能である、天然に存在するマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)阻害物質のファミリーである。MMPは、血管網の拡大または再構築の際に内皮細胞および線維芽細胞が通り抜けて遊走するマトリックスを分解するので、血管形成の過程で重要な役割を果たしている。事実、MMPの1メンバーであるMMP−2は、おそらくこの目的で、インテグリンαvβ3を介して活性化状態の内皮と結合することが示されている。この相互作用がMMP−2のフラグメントによって妨げられると、血管形成は下方制御され、腫瘍では増殖が阻害される。
【0104】
血管形成を阻害する薬物は多数存在するが、任意の1または複数の該薬物を本発明と組み合わせて用いることができる。これらの薬物には、AGM−1470/TNP−470、サリドマイド、およびカルボキシアミドトリアゾール(CAI)が含まれる。フマギリン(fumagillin)は、1990年に血管形成の強力な阻害物質であることが見出され、それ以来フマギリンの合成類似体であるAGM−1470およびTNP−470が開発されている。これらの薬物はいずれも、in vitroで内皮細胞の増殖を、in vivoで血管形成を阻害する。TNP−470は、ヒトの臨床試験で広範囲に研究されており、データから長期間の投与が最適であることが示唆されている。
【0105】
サリドマイドは、最初は鎮痛剤として用いられたが、強力な催奇形物質であることが見出され、中止された。1994年にサリドマイドが血管形成阻害物質であることが見出された。サリドマイドは、現在、抗がん剤および血管性眼疾患の処置として、臨床試験中である。
【0106】
CAIは、アクチンの再編成、内皮細胞の遊走およびIV型コラーゲン上での伸展を防止するカルシウムチャンネル・ブロッカーとして働く、合成の低分子量の血管形成阻害物質である。CAIは、生理学的に到達可能な濃度で血管新生を阻害し、がん患者による経口の耐容性がよい。CAIの臨床試験では、処置前は進行性の疾患を有していたがん患者の49%に疾患の安定が生じた。
【0107】
ヘパリンまたはヘパリン・フラグメントの存在下のコルチゾンは、マウスで、内皮細胞の増殖を阻止することにより腫瘍の増殖を阻害することが示された。このステロイドとヘパリンとの相加的な阻害効果に関する機序は明らかではないが、ヘパリンは内皮細胞による該ステロイドの取り込みを増加させることがあると考えられている。この混合物は、新しく形成された毛細管の下の基底膜の溶解を高めることが示されており、このことも相加的な血管形成を抑制する効果の説明となりうる。ヘパリン−コルチゾール複合体は、in
vivoで強力な血管形成阻害効果および抗腫瘍効果の活性も有する。
【0108】
さらなる特定の血管形成阻害物質、例えば、これらに限定はされないが、抗浸潤因子であるレチノイン酸およびパクリタキセル(米国特許第5716981号明細書、本願明細書に参照により援用される);AGM−1470(イングバー(Ingber)ら、Nature、第48巻、555〜557頁、1990年、本願明細書に参照により援用される);サメ軟骨抽出物(米国特許第5618925号明細書、本願明細書に参照により援用される);陰イオン性ポリアミドまたはポリウレアオリゴマー(米国特許第5593664号明細書、本願明細書に参照により援用される);オキシンドール誘導体(米国特許第5576330号明細書、本願明細書に参照により援用される);エストラジオール誘導体(米国特許第5504074号明細書、本願明細書に参照により援用される);およびチアゾロピリミジン誘導体(米国特許第5599813号明細書、本願明細書に参照により援用される)などが、本発明の組合せ使用のための抗血管形成組成物としての使用に企図される。
【0109】
αβインテグリンの拮抗薬を含んでなる組成物も、本発明と組み合わせて血管形成を阻害するために用いてもよい。米国特許第5766591号明細書(本願明細書に参照により援用される)に開示されているように、RGD含有ポリペプチドおよびその塩、例えば環状ポリペプチドは、αβインテグリン拮抗薬の適切な例である。
【0110】
αβインテグリンに対する抗体LM609も、腫瘍の退縮を引き起こす。LM609などのインテグリンαβ拮抗薬は、血管形成性の内皮細胞のアポトーシスを引き起こし、静止状態の血管に影響を及ぼさない。LM609または他のαβ拮抗薬は、αβと、内皮細胞および線維芽細胞の遊走に重要な役割を果たすと考えられているタンパク質分解酵素であるMMP−2との相互作用を阻害することにより作用する可能性もある。
【0111】
この場合の血管形成性の内皮のアポトーシスは、残りの血管網にカスケード効果を有することがある。腫瘍の血管網が腫瘍のシグナルに完全に応答して拡大することを阻害することで、実際に血管網の部分的または完全な崩壊を開始させ腫瘍細胞の死滅および腫瘍の体積の減少をもたらすことがある。エンドスタチンおよびアンジオスタチンは、類似の様式で機能する可能性がある。LM609は静止状態の血管に影響を及ぼさないが腫瘍の退縮をもたらすことができるという事実は、抗腫瘍効果を得るためには、腫瘍の血管すべてを処置の標的とする必要はないことを強く示唆している。
【0112】
アンジオポイエチン−2などの標的外のアンジオポイエチンを、本発明と組み合わせて用いてもよい。様々な制御物質の血管形成効果は、アンジオポイエチン−2に関する自己分泌ループに関与する。したがって、アンジオポイエチン−2、アンジオポイエチン−1、アンジオポイエチン−3、およびアンジオポイエチン−4の使用が、本発明と組み合わせて企図される。Tie2受容体を介したシグナル伝達の変更に基づく治療的介入の他の方法を本発明と組み合わせて用いる、例えばTie2活性化を阻止することのできる可溶性Tie2受容体を用いることも可能である(リン(Lin)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、第95巻(15)、8829〜34頁、1998年)。組換えアデノウイルス遺伝子治療を用いるこのような構築物の送達は、がんの治療および転移の低減に有効であることが示されている(リン(Lin)ら、1998年)。
【0113】
CoQ10組成物およびアポトーシス誘導物質との併用療法
CoQ10組成物による治療を、腫瘍細胞および腫瘍の血管内皮細胞を含む腫瘍内のあらゆる細胞にアポトーシスを引き起こす処置方法と組み合わせてもよい。抗がん剤の多くが、その作用機序の一部としてアポトーシス誘導効果を有する可能性があるが、以下に記載するように、ある種の物質は、主要な機序として同効果とともに発見され、デザインされ、または選択されている。
【0114】
アポトーシス、すなわちプログラムされた細胞死を阻害する数々の発がん遺伝子が報告されている。この範疇にある発がん遺伝子の例には、それだけには限定されないが、bcr−abl、bcl−2(bcl−1、サイクリンD1とは異なる。GenBank登録番号M14745、X06487、米国特許第5650491号明細書および米国特許第5539094号明細書、それぞれ本願明細書に参照により援用される)および、Bcl−xl、Mcl−1、Bak、A1、A20を含むファミリーのメンバーが含まれる。bcl−2の過剰発現はT細胞リンパ腫で最初に発見された。bcl−2は、アポトーシス経路のタンパク質であるBaxと結合してBaxを不活性化することにより、発がん遺伝子として機能する。bcl−2の機能を阻害するとBaxの不活性化が防止され、アポトーシス経路を進行させる。したがって、例えば、アンチセンスヌクレオチド配列を用いて、この種の発がん遺伝子を阻害することは、アポトーシスの増強が望まれる態様において
、本発明における使用に企図される(米国特許第5650491号明細書、第5539094号明細書、および第5583034号明細書、それぞれ本願明細書に参照により援用される)。
【0115】
多くの形態のがんで、p53などの腫瘍抑制遺伝子における突然変異の報告がある。p53を不活性化すると、アポトーシスの促進に不具合がもたらされる。この不具合により、がん細胞が細胞死に運命付けられることなく腫瘍形成が進行する。したがって腫瘍抑制因子の提供も、細胞死を刺激するための本発明における使用に企図される。腫瘍抑制因子の例として、それだけには限定されないが、p53、網膜芽細胞腫遺伝子(Rb)、ウィルムス腫瘍(WT1)、baxα、インターロイキン−1β−転換酵素およびファミリー、MEN−1遺伝子、神経線維腫症1型(NF1)、cdk阻害因子p16、大腸がん遺伝子(DCC)、家族性アデノーマ症ポリポーシス遺伝子(FAP)、複合のがん抑制遺伝子(MTS−1)、BRCA1、およびBRCA2が含まれる。
【0116】
p53遺伝子(米国特許第5747469号明細書、同第5677178号明細書、および同第5756455号明細書、それぞれ本願明細書に参照により援用される)、網膜芽細胞腫遺伝子、BRCA1遺伝子(米国特許第5750400号明細書、同第5654155号明細書、同第5710001号明細書、同第5756294号明細書、同第5709999号明細書、同第5693473号明細書、同第5753441号明細書、同第5622829号明細書、および同第5747282号明細書、それぞれ本願明細書に参照により援用される)、MEN−1遺伝子(GenBank登録番号U93236)、ならびにアデノウイルスE1A遺伝子(米国特許第5776743号明細書、本願明細書に参照により援用される)を使用することが好ましい。
【0117】
使用可能な他の組成物には、TRAILと呼ばれる腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導性リガンドをコードする遺伝子、およびTRAILポリペプチド(米国特許第5763223号明細書、本願明細書に参照により援用される)、米国特許第5605826号明細書(本願明細書に参照により援用される)の24kDアポトーシス関連プロテアーゼ、Fas関連因子1であるFAF1(米国特許第5750653号明細書、本願明細書に参照により援用される)が含まれる。また、本発明のこれらの態様において使用することが企図されるのは、インターロイキン−1β−転換酵素およびファミリーメンバーの供給であり、これらもアポトーシスを刺激することが報告されている。
【0118】
カルボスチリル誘導体(米国特許第5672603号、および同第5464833号、それぞれ本願明細書に参照により援用される)、分枝状のアポゲニックペプチド(apogenic peptide)(米国特許第5591717号明細書、本願明細書に参照により援用される)、ホスホチロシン阻害物質および非加水分解性ホスホチロシン類似物質(米国特許第5565491号明細書、および同第5693627号明細書、それぞれ本願明細書に参照により援用される)、RXRレチノイド受容体の作動物質(米国特許第5399586号明細書、本願明細書に参照により援用される)、およびさらには抗酸化物質(米国特許第5571523号明細書、本願明細書に参照により援用される)などの化合物を用いてもよい。ゲニスタインなどのチロシンキナーゼ阻害物質も、細胞表面受容体を標的とするリガンドに結合することがある(米国特許第5587459号明細書、本願明細書に参照により援用される)。
【0119】
有効量
上記の組成物は好ましくは、有効量で対象に投与される。有効量は、処理した動物または細胞で望ましい結果をもたらすことができる量(例えば、動物または培養組織の細胞においてアポトーシスを誘導するか、有糸分裂を阻害する量)である。医学および獣医学の分野において周知のように、ある任意の動物に対する投与量は、個々の動物の大きさ、体
表面積、年齢、投与される特定の組成物、投与の時間および経路、健康状態、ならびに同時に投与されている他の薬剤などの多くの要因に左右される。本発明の組成物の局所投与に適切な投与量は、体重1kgあたり約1.5〜4.0mgのCoQ10の範囲(例えば、49.9〜136.1kg(110〜300lbs)の範囲の対象に対して200mg)となることが予想される。培養細胞に用いる有効量も変化するが、実験的に(例えば、細胞に様々な濃度を添加し、最も望ましい結果をもたらす濃度を選択することにより)簡単に決定することができる。適切な濃度は、約5〜200μMの範囲となることが予想される。
【0120】
がん細胞の増殖を抑制する方法
本発明は、腫瘍細胞の増殖を抑制する、または腫瘍細胞のアポトーシスの速度を増大させる方法を提供する。本方法には、腫瘍細胞の有糸分裂を中止させるか、少なくとも腫瘍細胞の有糸分裂の速度を減じるのに必要な十分量のCoQ10を含有する組成物と腫瘍細胞とを接触させるステップが含まれる。この方法は、非常に多くの種類のがん性腫瘍細胞の増殖を抑制するために用いることができるであろう。コエンザイムQ10は試験され、メラノーマ、扁平上皮がんおよび乳がんの細胞に対して有効であることが示されている。コエンザイムQ10は、元は上皮、間充織、および造血系に由来する他のがんに対しても有効であることが期待される。
【0121】
CoQ10の任意の適切な製剤が、本発明の方法において使用され得る。典型的な製剤は、種々の濃度のコエンザイムQ10の局所用リポソーム製剤である。局所投与に加えて、CoQ10を含む製剤を、注射(例えば、腹腔内(IP)、静注(IV)、筋注(IM)、皮下(SQ))により対象に投与できる。
【0122】
in vitroで腫瘍細胞の増殖速度を減速させるか、または腫瘍細胞のアポトーシスの速度を増大させる方法では、CoQ10を2−プロパノールに溶解し、続いて望ましい媒体で希釈する(実施例1で以下に記載するように)。腫瘍細胞増殖の速度を減速させるか、または腫瘍細胞アポトーシスの速度を増大させるin vivoの方法では、腫瘍退縮が起こるまで、CoQ10を含むクリームを毎日、局所的に標的部位に塗布する(実施例2および3で記載するように)。別のin vivoの方法では、CoQ10を含む製剤を、注射(例えば、IP、IV、SQ、IM)により対象に投与する。
【0123】
本明細書に記載のCoQ10組成物、すなわち、約1%〜約25%のコエンザイムQ10を含んでなる組成物の投与により明らかにされた、腫瘍細胞の増殖抑制は、次のうち1つまたはそれ以上の作用を示す。すなわち、(1)(i)速度の低下および(ii)完全な増殖停止を含む、ある程度の腫瘍増殖抑制、(2)腫瘍細胞数の減少、(3)腫瘍サイズの維持、(4)腫瘍サイズの縮小、(5)周辺臓器への腫瘍細胞浸潤の(i)減少、(ii)速度の低減、または(iii)完全な阻止などの抑制、(6)転移の(i)減少、(ii)速度の低減または(iii)完全な阻止などの抑制、(7)(i)腫瘍サイズの維持、(ii)腫瘍サイズの縮小(iii)腫瘍増殖速度の低下、(iv)浸潤の減少、速度の低減、または抑制をもたらす可能性のある抗腫瘍免疫反応の増強、および/または(8)障害と関連する1つ以上の症状の重症度または数のある程度の軽減、である。
【0124】
好ましい態様では、コエンザイムQ10組成物の投与により、抑制されている腫瘍細胞に1つ以上の表現型が生じる。例えば、腫瘍の増殖抑制、腫瘍サイズの縮小、転移の抑制、腫瘍細胞数の減少などである。これらそれぞれの腫瘍細胞の表現型は、例えば、イメージング、機械的測定、in vitroアッセイなどの標準的なアッセイ法を用いて測定できる。
【0125】
キットおよび製剤
本発明はまた、対象において腫瘍増殖の速度を減少させるキットを提供する。本発明のキットは、CoQ10を含んでなる組成物および薬学的に許容し得る担体、ならびに対象において腫瘍増殖の速度を減少させる組成物の使用説明書を備えている。
【0126】
有効成分は、固体、半固体、または液体の形態であってよい。固体形態には、例えば粉末、顆粒およびフレークが挙げられる。半固体形態には、例えば、ゲル、クリーム、ゼラチンおよび軟膏が挙げられる。本発明に包含されるこれらおよび他の活性物質は、当業者に周知であり、ほとんどの場合、コンパウンド・ソリューション社(Compound Solutions,Inc.)[米国カリフォルニア州エスコンディド(Escondido)所在]のような発売元から市販されている。本発明に包含される、これらおよびその他の活性物質および不活性物質、ならびにこれらの販売元に関する情報は、各種の業者向けマニュアルから入手可能であり、最も詳しくは、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、「United States Pharmacopoeia(USP)」、「National Formulary(NF)」、「Merck Index」、「Physician’s Desk Reference(PDR)」、および「Chemical Abstracts」から入手可能である。
【0127】
本発明のキットはまた、通常、少なくとも1つの不活性物質も含む。本明細書中で用いられる、不活性物質とは、投与された対象にいかなる治療上の利益も提供しない物質である。その代わり不活性物質は、多くの他の様式で機能できる。例えば活性物質を溶解または懸濁できる基剤を提供する、投与時に適正用量が提供されるように活性物質を希釈する、活性物質の溶解もしくは懸濁を容易にする、または最終の混合懸濁液から気泡を除去して活性物質の酸化を防止するなどの様式である。本発明の一部の実施例においては、本キットは不活性物質を欠いており、むしろ2つまたはそれ以上の活性物質を含んでいる。
【0128】
クリーム、オイル、ゲルまたは軟膏のような基剤物質は、局所用または坐薬の用途に好適である。本発明のキットに用いる適切な不活性な基剤物質の選択は、混合する活性物質によって決まる。適切な基剤物質は、当業者に公知であろう。さもなければ、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、「Physician’s Desk Reference(PDR)」または上記にリストした他のマニュアルを決定に際して参照することができる。
【0129】
不活性な基剤物質または成分の例としては、例えば、ラノリン、親水軟膏、白色軟膏、黄色軟膏、ポリエチレングリコール軟膏、ペトロラタム(ワセリン)、親水ワセリン、白色ワセリン、ローズ水軟膏、スクアレン、水素化植物油(タイプII)、超音波ゲル、pluronic(登録商標)レシチン有機ゲル(PLO)ゲル、クリームが含まれる。
【0130】
本明細書で用いる用語「ペトロラタム(ワセリン)」は、ワセリン軟膏、ワセリンゲルまたはワセリンクリームを意味し、そのすべては市販されている。特定のキットに、ワセリンのどの形態が最適かを決定することは、医薬分野の当業者の領域の範囲内であろう。
【0131】
市販の超音波基剤は、パーカー・ラボラトリーズ社(Parker Laboratories,Inc.)[米国ニュージャージー州フェアフィールド(Fair field)所在]製造の、POLYSONIC(商標)(超音波ゲル)超音波ローションまたはAquasonic(登録商標)超音波100ゲル(ultrasound 100gel)、あるいはエコ・メッド社(Eco−Med)[カナダ国オンタリオ州ミシソーガ(Mississauga)所在]製造のEcoGel100(商品名)もしくはEcoGel200(商品名)である。該基剤の組成物に、セチルアルコール、流動パラフィン、ポリマー、界面活性剤、静菌性を有する濃度のプロピルパラベンおよびメチルパラベンの
ような防腐剤、芳香剤、ならびに逆浸透水を含めてもよい。本明細書中で用いられるように、ゲルとは、ローションより高い粘度を有する基剤である。POLYSONIC(商標)(超音波ゲル)超音波ローションおよびEcoGel100の物理的特性として、pH6.5〜7.0の範囲、密度1.04g/cm、粘度35,000〜70,000cpsおよび音響インピーダンス1.60(10g/cm秒)が挙げられる。Aquasonic超音波100ゲルまたはEcoGel200の物理的特性は、その粘度が80,000〜110,000cpsである点を除けば、POLYSONIC(商標)(超音波ゲル)超音波ローションおよびEcoGel100と類似している。これらのローションおよびゲルは、透明で無色の形態または青く着色した形態で入手可能である。
【0132】
液状基剤は、経口投与用の医薬品に推奨される。本発明のいくつかの実施態様において、少なくとも1つの活性物質、例えばCoQ10は、予め不活性物質と混合されて供給される。この例として、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムの組合せ(MAALOX(商標)(水酸化マグネシウム/水酸化アルミニウム)として市販されている)、ならびにジフェンヒドラミンHCl(BENADRYL(商標)(塩酸ジフェンヒドラミン)として市販されている)が挙げられる。MAALOX(商標)(水酸化マグネシウム/水酸化アルミニウム)もBENADRYL(商標)(塩酸ジフェンヒドラミン)も、活性および不活性物質の組合せとして、それぞれのメーカーにより供給される。
【0133】
無菌の基剤溶液は、非経口投与(すなわち注射)、エアロゾル投与(すなわち吸入)および眼内投与に好適である。投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、体腔内、皮下または経皮的であってよい。非経口投与用の調製物としては、無菌の水性溶液もしくは非水性溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。配合医薬品、好ましくは非経口の吸入または眼内の投与経路を目的とした配合医薬品を、薬学的に許容される不活性物質の中に含めて調製し、投与することができる。本明細書中で用いられる薬学的に許容される担体とは、活性物質の生物活性の有効性を妨害せず、かつ組織または生体のような生体系と適合する非毒性の物質を意味する。生理学的に許容される担体は、in vivo投与のためには無菌でなければならない。薬学的に許容される担体には、希釈剤、増量剤、塩類、緩衝剤、安定剤、可溶化剤およびこの技術分野で周知の他の物質が含まれる。担体の特性は、投与経路に依存する。一般的に、薬学的に許容される物質または担体は、当業者には周知である。いくつかの実施形態では、適切な無菌液には、アルブテロールおよびイプラトロピウムの吸入溶液;パパベリン、フェントラミンおよびプロスタグランジンの注射溶液;クエン酸フェンタニル注射溶液およびシクロスポリン点眼薬が挙げられる。
【0134】
非水性の溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、オレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルがある。水性の担体は、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液、生理食塩水および緩衝化媒体を含む。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液または不揮発性油が挙げられる。静脈内用の媒体には、流体および栄養補充物、電解質補充物(例えばリンゲルデキストロースをベースとしたもの)等が挙げられる。保存剤および他の添加物、例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスなどが存在してもよい。当業者であれば、これらの別の医薬組成物を調製する種々のパラメータを、過度の実験を要することなく容易に決定することができる。
【0135】
不活性物質は、混合製剤の完全性の維持に機能する成分も含むことができる。不活性物質のこの後者の範疇には、例えば消泡剤が包まれる。消泡剤は、おそらく混合または攪拌中に、組成物中に閉じ込められた不必要な空気を除去するように機能する物質である。消泡成分を使用することは、気泡による信号伝送のインピーダンスのため超音波イメージングに使用する医薬品の調製に特に有用である。本発明の組成物にとって有用な他の消泡剤
の例には、ビスフェニルヘキサメチコン、ジメチコーン(dimethicone)、ジメチコノール、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキシルアルコール、イソプロピルアルコール、石油蒸留水、フェネチルジシロキサン、フェニルトリメチコン、ポリシリコーン−7、プロピルアルコール、ジメチルシリル化シリカ、シリル化シリカ、テトラメチルデシンジオールおよびトリメチルシロキシケイ酸を含む。好ましい消泡剤は、シメチコン(simethicone)である。シメチコンは、約90%のジメチコーンと10%のシリコーンジオキシド(w/w)との混合物である。シメチコンが、医薬製品、例えばGAS−X(商標)(シメチコン)、MAALOX(商標)(水酸化マグネシウム/水酸化アルミニウム)、MYLANTA(商標)(アルミニウム、マグネシウムシメチコン)、PHAZYME(商標)(シメチコン)、GENAZYME(商標)(シメチコン)、およびMYLICON(商標)(シメチコン)Dropsの抗ガス剤として広範囲に使われている。シメチコンは、本発明の範囲に包含されるいずれの製剤においても消泡剤として使用することができるであろう。
【0136】
本発明の製剤に配合することができる他の不活性物質は、クエン酸のような安定剤、メタ重亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤およびメチルパラベンまたはプロピルパラベンのような防腐剤を含む。
【0137】
他の種類の不活性物質は、懸濁剤である。懸濁剤は、懸濁を促進し、場合によっては基剤中の活性物質の溶解を促進する物質である。一般に、懸濁剤は活性成分および基剤成分を確実により均一に混合する。患者に配合医薬品をさらに均一な投薬量で投与するために、配合される成分の厳密かつ均一な混合が必要である。活性物質が粉末の場合、従来の配合形式では均一な分散体を得るのが困難なことがある。
【0138】
懸濁剤のサブカテゴリは、可溶化剤である。可溶化剤は、固体物質または場合によっては半固体物質の、不活性な基剤中での溶解を促進する物質である。本発明のいくつかの実施態様においては、固体形態の活性物質を懸濁剤に溶解してから基剤と混合する場合がある。これとは反対に、特に固体(すなわち、粉状の)活性物質の損失よりはむしろ、基剤成分中における活性物質の均一な混合の確保に関心が向けられている場合には、懸濁剤と基剤とをあらかじめ一緒に包装してもよい。さらに他の変形例では、懸濁剤を不活性な基剤と前もって混合してもよい。
【0139】
本発明の組成物において有用で適切な懸濁剤は、グリセリン、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、アラビアゴム、コレステロール、ジエタノールアミン(添加物)、モノステアリン酸グリセリン、ラノリンアルコール、レシチン、モノグリセリドおよびジグリセリド、モノエタノールアミン(添加物)、オレイン酸(添加物)、オレイルアルコール(安定化剤)、ポロキサマー、ポリオキシエチレン50ステアレート、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水添ヒマシ油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル40ステアレート、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノステアレート、ドデシル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ステアリン酸、トロラミン、乳化ろう、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、ドキュセートナトリウム、ノンオキシノール9、ノンオキシノール10、オクトキシノール9、ポリオキシル50ステアレート、およびチロキサポールであるが、これらに限定はされない。
【0140】
さらに他の懸濁剤としては、保湿剤と湿潤剤がある。保湿剤は、水分を保持する物質である。保湿剤の例には、グリセリン、ヘキシレングリコール、プロピレングリコールおよ
びソルビトールがあるが、これらに限定されない。不活性な基剤および基剤以外の不活性物質の量は、製造する特定の配合医薬品によっても変化する。0.5%〜99.99%(重量%または容量%のいずれか)の基剤を含む最終的な配合製剤に相当する量で、基剤を提供することができる。好ましい実施形態においては、基剤の最終濃度は20%〜80%である。より好ましい実施形態においては、基剤の最終濃度は40%〜80%である。
【0141】
一般に、基剤以外の物質の量は、基剤以外の各不活性物質が組成物の0.01%〜50%(w/w)である最終製剤を提供するのに十分な量であろう。懸濁剤は、最終製剤の1%〜50%(w/w)となろう。好ましくは、懸濁剤は最終製剤の1%〜40%であり、より好ましくは、5%〜30%となろう。消泡剤は、最終製剤の0.01%〜20%(w/w)となろう。より好ましくは、消泡剤は最終製剤の0.05%〜10%であり、さらにより好ましくは、消泡剤は最終製剤の0.1%〜5%となろう。
【0142】
いくつかの好ましい実施態様では、活性物質および不活性物質を物理的に混合するとCoQ10を1%、5%、10%または20%(w/w)含んでなる配合医薬製剤を得られるように、1つまたは複数の使用ユニットのキットが設計されている。
【0143】
本発明のキットは、所定の配合医薬品を調製するために必要な1つ1つの成分をあらかじめ計量した量で提供する。各々の成分の測定は、現行の医薬品製造品質管理基準(cGMP、米国連邦規制基準すなわちCFRが制定)を用いて実施し、各々の成分の包装およびラベリングならびにキット全体としての最終的包装およびラベリングも同様に実施される。このようにキットは標準化され、バッチ間の変動は最小となるか、あるいは存在しなくなり、個々の成分の測定における精度および正確度は、薬剤師によって現在用いられる方法に比べてかなり向上するであろう。説明書はいずれの容器とも別に、しかしキットに含めて提供すればよい。代替例として、説明書が容器の上に、例えば蓋などの外表面上または内部表面上にあってもよい。
【0144】
キットの活性物質および不活性物質のいずれも容器中に提供される。キットには、少なくとも1つの活性物質と少なくとも1つの不活性物質、または不活性物質とあらかじめ配合された少なくとも2つの活性物質が入ることになるので、所定キット内の最小の容器数は2個である。好ましい実施形態では、キット内の容器の最大数は、4個以下である。容器を、1つの容器から別の容器へ成分を混合または移動するために便利な、任意のサイズまたは形状に形成できる。例えば、成分がその必要のない時期に混合してしまわないように容器が密閉されていれば、各々の容器は、バイアル、ボトル、スクィーズボトル、ジャー、密封したスリーブ、エンベロープもしくはポーチ、チューブ、またはブリスター包装、あるいはその他の適切な形態であってよい。本明細書中で用いられるように、容器が、バイアル、チューブ、ジャー、またはエンベロープ、もしくはスリーブ、もしくはブリスター包装またはボトル内の、コンパートメントまたはチャンバであって、薬剤師または医師が中身を意図的に混合する前に、1つのコンパートメントの中身が別のコンパートメントの中身と物理的に関与できないようになっているものでもよい。
【0145】
本発明は、他の付属品を必要とせずに1つのキット内にすべての必要な成分、容器および1使用ユニットの配合医薬品の調製に関する攪拌用または混合用品を提供することを目的とする。本発明のキットには、手袋または流出用パッド(spill pad)のような品目が入ってもよい。当業者は、それぞれの成分を収容し混合するのに適した容器の選択を容易に変更することができる。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態においては、最終的な配合医薬品は、不活性化合物または基剤化合物が元々入っていた容器で患者に提供される。他の実施形態においては、最終的な配合医薬品は、活性物質が元々入っていた容器で提供される。さらに他の実施形態にお
いては、配合医薬品を調製するためのすべての必要な成分が1つの容器に入っており、その容器内で物理的に分離されている。例えば、不活性物質を例えばジャーなどの容器の下部に入れ、プラスチック製の剥離式ラップによってカバーしてもよい。活性物質をこの同じジャーの中に、ジャーの蓋にしっかり固定してポーチまたはスリーブに入れて収容してもよい。すべての成分を一緒に、最小の包装構成で提供し得ることは、ある状況では好ましいだろう。配合医薬品の調製に必要な混合用品が、同じ容器の内に、例えば容器の蓋の内部表面にしっかり固定されていてもよい。
【0147】
発明のさらに別の実施形態では、活性物質および不活性物質は、1つの収容容器の隣接したコンパートメント中に提供され、これらのコンパートメントから機械的に取り出されて第3のコンパートメントに移される。一例として、特定の配合医薬品を調製するのに必要なすべての化学成分を、1つのチューブ中に、例えば、内部が別個のコンパートメントに分かれた歯みがきチューブと類似のチューブ中に存在してもよい。これらのコンパートメントの各々が、基剤または活性物質を順々に収容する。基剤または活性物質のいずれも、本明細書に記載されるような消泡剤および/または懸濁剤とあらかじめ混合されてもよい。チューブ全体へ圧力を加えると、成分がそれぞれのコンパートメントからから流出する。次いで、隣接コンパートメントまたは物理的に分かれたコンパートメント中で成分が混合されうる。チューブの外側表面を圧搾または押圧することが、チューブ内に収容されたそれぞれの成分を取り出ために必要とされるすべてである。さらに他の実施形態において、容器の両チャンバの中身が送り出されて第3の容器中に移されてもよい。関連する実施形態では、各々のコンパートメントの中身を出して第3のコンパートメント内に流入させる必要がなく、取り外し可能なシートまたはフィルムで成分を分離することも考えられる。したがって、そのようなシートまたはフィルムを除去すると、2つのコンパートメントの中身は接触し、完全に混合するために要するは攪拌または転倒転回だけとなる。後者の実施形態においては、混合用品の必要がなくなり、特に使用説明書が容器自体に書かれているならば、場合によっては外側の包装が不要となるだろう。
【0148】
本発明の一部の態様によると、各々の容器が1つ以上の活性物質または1つ以上の不活性物質を含有してもよい。例えば、本発明の一部の実施形態においては、薬剤師または医師が混合するまでは、活性物質および不活性物質の両方を含有している容器がなくてもよい。しかし、本発明はまた、容器に活性物質および少なくとも1つの不活性物質、例えば基剤、懸濁剤または消泡剤を含有できるキットを提供する。
【0149】
好ましい実施形態では、活性物質は不活性物質と予め混合されて提供される。これは主としてCoQ10が固体、例えば粉末で市販されている場合に適用され、この粉末と懸濁剤との予混合により、薬剤師または医師よる配合が容易になる。さらに別の実施形態においては、不活性物質のうちの少なくとも2つが、本発明のキットで提供されるように、あらかじめ混合されていてもよい。
【0150】
活性物質が基剤成分に添加されるいくつかの実施形態においては、基剤成分を、容器を一杯にしない状態で提供するのが望ましい。好ましい実施形態においては、基剤成分が容器に配置されるのは、全容量の100%未満である。他の実施形態においては、容器の全容量の95%、90%、80%、75%、70%、60%、50%、40%、30%、25%、20%または20%未満である。他の実施形態においては、活性物質または不活性物質は、それぞれの容器の100%から1%以上の範囲、およびその間のあらゆる整数の容積を占める。好ましい実施形態においては、不活性物質は、第2の容器において、第2の容器の容積から活性物質の容積を差し引いた容積またはそれ以下の容積を占める。
【0151】
本発明に従って使用されるように、活性物質および不活性物質は、薬剤師により物理的に混合されて配合医薬品を生成する。本キットの成分は、穏やかな振動、振盪、攪拌、折
重ね、または第1のもしくは第2の容器の転倒転回によって混合することができる。場合によっては、活性物質と不活性物質の適切な混合は、単に1つの物質を他の物質に添加した後で容器を密閉し、攪拌することで達成できる。このことは、成分がともに液体またはともに半固体である場合に特にあてはまる。別の場合には、混合用品を用いて成分を攪拌することが必要であろう。混合用品は医薬分野の当業者には周知であり、例えば、遠心分離機、混合用の棒(ガラス棒、スプーン、スパーテルまたは計量棒など)が含まれる。状況によっては、混合用品はキットに用意されている。混合用品の有無は、キットの成分で生成される配合医薬品製剤によって異なるであろう。
【0152】
最終的な配合医薬品は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、吸入剤および注射剤のような、固形、半固形、液状またはガス状の形態に、かつ経口投与、非経口投与または外科的投与のための通常の方法用に製剤化することができる。本発明は、本発明の配合医薬品を局所的に、例えばインプラントとして投与することも包含する。これらの製剤は、経口投与、局所投与、粘膜投与、非経口投与(例えば、注射による投与)、直腸投与または膣投与を目的とすることができる。好ましい実施形態においては、最終的な混合製剤が自己投与されるのが好ましい。
【0153】
本発明のキットは、厳重に閉じ込め状態にある本発明の2つ以上の容器を受け入れるために、区画に分けられた1つの包装を含むこともできる。いくつかの実施形態では、包装は、適度に堅い材料、例えばボール紙または補強紙でできている箱型のものであってもよい。他の実施形態においては、包装は袋であってもよい。さらに他の実施形態においては、本明細書に記載されるように、外部包装がなく、すべての容器が活性物質または不活性物質を収容する容器のうちの1つに組み込まれる。後者の実施形態は、活性物質または不活性物質ならびに混合に必要な混合用品が入っているポーチ、スリーブまたはサックのような容器を、本体容器の蓋内側にしっかり固定することにより達成できる。当業者であれば、各々のキットおよび各々の用途の個別の要求に適するように包装を容易に変更することができる。本発明のキットは、キット中に見いだされる構成成分を適正に使用するための説明書をさらに含む。
【0154】
本発明のキットは、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、魚、ブタ、ウシ、ヒツジ、シカ、動物園の動物および実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、サルなど)を含む種々の対象において、数々の疾患の治療または予防に用いることが意図されている。本発明は、上記の調製物を含む使用ユニットのキットを包含することを意図する。
【0155】
以下の実施例は、説明のために提供されるものであって、限定するために提供されるのではない。具体的実施例について提示してきたが、上記説明は例示であって、制限的なものではない。前述した実施形態の任意の1つ以上の特徴を、本発明の任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と、任意の方法で組み合わせることができる。さらにまた、明細書を参照すれば本発明の数多くのバリエーションが当業者には明らかになるであろう。従って、本発明の範囲は、上記の説明に関してではなく、添付の特許請求の範囲ならびにその均等物の全範囲に対して判断されなければならない。
【0156】
本出願で引用されたすべての刊行物および特許文献は、各個々の刊行物または特許文献が個々に引用されるかのように、すべての目的についての関連部分の参照により同じ程度に援用される。本明細書の種々の参考文献の引用により、出願人はいずれの特定の参考文献をも本発明の「先行技術」であると認めるものではない。
【0157】
以下の実施例は本発明を例示するものであり、例示によって本発明をいかようにも限定するものではない。当然ながら、本発明の思想および範囲から逸脱することなく変形や変更が可能である。
【実施例1】
【0158】
アポトーシス・アッセイのための材料および方法
アッセイに用いた細胞株は、SK−Mel28およびnFIBであった。細胞(SK−Mel28およびnFIB)を、培地のみが入ったウェルまたは処理済み培地が入ったウェルに接種し(細胞を1ウェルあたり5×10個)、37℃、5%CO、加湿条件のインキュベータ中に48時間置いた。各々の条件について2連で実施し、以下のプロトコールに従った。
【0159】
BDファーミンゲンのアネキシンV‐PEのプロトコールに従うアポトーシス分析
試薬は、アネキシンV‐PE(BDファーミンゲン社(BD Pharmingen)[米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在])、7‐AAD(BDファーミンゲン社[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])、結合用緩衝液(10×:0.1M Hepes/NaOH、1.4M NaCl、25mM CaCl[実験での使用には1×濃度に希釈(PBS 9mLおよび結合用緩衝液1mL)](BDファーミンゲン社[米国カリフォルニア州サンディエゴ所在])、トリプシン‐EDTA(ギブコ社(Gibco)[米国ニューヨーク州グランドアイランド(Grand Island)所在])および所望の培地である。
【0160】
各ウェルにトリプシン0.5mLを添加し、約10秒後にトリプシンを除去し、各ウェルにトリプシン0.5mLを添加する。ウェルをインキュベータに入れ、4分後に顕微鏡下で剥離の程度を観察し、そして剥離を助けるため、側面および底面を軽くたたく。細胞が剥離したら0.5mLの血清添加培地で中和する。細胞溶液を遠心管へ移し、細胞を2000RPMで5分間遠心分離し、上清を吸引除去し、6mLのPBSに再懸濁して、6mLを3本の遠心管に(各2mL)分注する。細胞を2000RPMで5分間遠心分離し、上清を吸引除去し、それぞれの遠心管中で100μLの結合用緩衝混合液中に再懸濁して50μLのアネキシンVPEと50μLの7−AADを添加し、ボルテックス処理(渦流混合)して暗所に15分間置く。各遠心管に350μLの結合用緩衝液を添加し、フローサイトメータを用いて分析を行う。
【0161】
フラスコからの新鮮な培養細胞を用いてベースラインも作製した。細胞は2次培養し、冷PBSで2回洗浄した。次いで、細胞を1×結合用緩衝液中に1×10個/mLの濃度に再懸濁した。100μLの細胞懸濁液を3本の試験管に移し、1本当たり総細胞数1×10個となるようにした。1本の試験管を、染色せずに陰性対照として用いた。別の試験管はアネキシンV‐PEのみで染色したが、最後の試験管は7−AADのみで染色した。50μLの染色液を各試験管に入れた。次いでこれらの試験管を暗所に15分間置き、その後、350μLの結合用緩衝液を各々に添加した。次いで処理細胞および対照細胞に先立ち、これらをフローサイトメトリーで分析した。
【0162】
実験1:ヒト乳がん細胞のアポトーシスの度合に及ぼすコエンザイムQ10の効果
【0163】
【表2】

【0164】
1ウェルあたり細胞50,000個として播種
72時間後のアポトーシス・アッセイ(アネキシンPI)において、1試料あたり細胞100,000個のベースラインと比較
実験2:メラノーマ細胞のアポトーシスの度合に及ぼす2−プロパノール媒体の効果
【0165】
【表3】

【0166】
1ウェルあたり細胞50,000個として播種
48時間後のアポトーシス・アッセイ(アネキシンPI)において、1試料あたり細胞100,000個のベースラインと比較
実験3:新生児線維芽細胞のアポトーシスの度合に及ぼす2−プロパノール媒体の効果
【0167】
【表4】

【0168】
1ウェルあたり細胞50,000個として播種
48時間後のアポトーシス・アッセイ(アネキシンPI)において、1試料あたり細胞100,000個のベースラインと比較
DMEM/F12培地の調製
材料:
DMEM/F12培地(カタログ番号11330−032、ギブコ・インビトロゲン社(Gibco−Invitrogen Corp)[米国ニューヨーク州グランドアイ
ランド(Grand Island)所在])
PipetMan(登録商標)で使用するシリコン処理済みの無菌ピペット・チップ(1mLおよび25mL)
FBS(ウシ胎児血清)添加物(ギブコ・インビトロゲン社[米国ニューヨーク州グランドアイランド所在])
PSA(ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンB)−抗菌剤添加物(カスケード・バイオロジクス社(Cascade Biologics,Inc.)[米国オレゴン州ポートランド(Portland)所在])
手順:
適当量のFBSをDMEM/F12に添加する(例えば、血清濃度10%とするには50mLのFBSを500mLの培地に添加)。適当量のPSAを添加して、最終濃度がペニシリンGは100U/mL、硫酸ストレプトマイシンは100μg/mL、およびアンホテリシンBは0.25μg/mLの溶液を得る(例えば、1mLの500×PSAを500mLの培地に添加)。ピペッティングとボトルの転回により混合する。使用まで4℃で貯蔵する。
【0169】
EpiLife(登録商標)培地の調製
材料:
PipetManで使用するシリコン処理済みの無菌ピペット・チップ(5mL、10mL)
EpiLife培地(M−EPI−500、カスケード・バイオロジカルズ社(Cascade Biologicals))
PSA(500×ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンB)−抗菌剤添加物(R−004−10、カスケード・バイオロジクス社(Cascade Biologics))
EDGS(表皮増殖添加物)(S−012−5、カスケード・バイオロジクス社(Cascade Biologics))
手順:
1バイアルのEDGS(5mL)およびPSA(1mL)をEpiLife培地に添加し、ペニシリンGが100U/mL、硫酸ストレプトマイシンが100μg/mLおよびアンホテリシンBが0.25μg/mLとなるようにする(例えば、1mLの500×PSAを培地500mLに添加)。ピペッティングと転回により混合する。使用まで4℃で貯蔵する。
【0170】
培地中でQ10の均質溶液を作製するプロトコール
材料:
オートマチック・ピペットで使用する、ポリスチレン製の無菌ピペット・チップ(200〜1000μM)
PipetManで使用するシリコン処理済みの無菌ピペット・チップ(10mL)
15mL遠心管
培地
コエンザイムQ10(コンパウンド・ソリューションズ社(Compound Solutions,Inc.)[米国カリフォルニア州エスコンディド(Escondido)所在])
2−プロパノール(カタログ番号9083−3、J.T.ベーカー・ケミカル社(J.T.Baker Chemical Co.)[米国ニュージャージー州フィリップスベリー(Phillipsbury)所在])
手順:
Q10ストックを−20℃の収蔵庫から取り出し、約4.4mgを計量する。Q10を25mLの遠心管に移す。2−プロパノール1mLを遠心管に添加する。ボルテックス処
理し、高温の水浴(55℃)に入れて溶解を促進する。培地9mLを遠心管に添加する。ボルテックス処理し、均質な溶液を作製するのに必要であれば高温の水浴(55℃)に入れる。これにより、500μMのQ10溶液が得られる。段階希釈して処理濃度にする。
【0171】
細胞の解凍プロトコール
材料:
PipetManで使用するシリコン処理済みの無菌ピペット・チップ(1mL、10mL)
75cmの細胞培養フラスコ
15mL遠心管
手順:
水浴中で試薬を37℃に順応させる。液体窒素タンクから細胞を取り出す。バイアルを手のひらで握りしめて、解凍を開始する。完全に溶解するまで、37℃の水浴に浸す。細胞を10mLの増殖培地の入った15mLの遠心管へ移す。ピペッティングにより混合する。2500RPMで8分間、遠心分離する。上清を吸引する。ペレットを適当な培地に再懸濁する。ボルテックス処理とピペッティングにより混合して、細胞懸濁液を均質にする。75cm細胞培養フラスコへ移す。
【0172】
細胞の継代培養プロトコール
材料:
PipetManで使用するシリコン処理済みの無菌ピペット・チップ(5mL、10mL)
75cm(T75)細胞培養フラスコ
6ウェルの組織培養プレート
15mL遠心管
培地
0.05%トリプシン(カタログ番号25−052−C1−IXトリプシン−EDTA、Cellgro(登録商標)、メディアテック社(Mediatech)[米国バージニア州ハーンドン(Herndon)所在])
手順:
水浴中で試薬を37℃に順応させる。細胞培養フラスコから培地を除去する(約85%コンフルエントな状態であれば細胞を継代培養することができる)。フラスコに1〜2mLのトリプシンを添加して30秒間下処理する。フラスコからトリプシンを除去する。フラスコに5mLのトリプシンを添加する。フラスコを37℃のインキュベータに約4分間置く。取り出し、顕微鏡で剥離の程度を観察する。必要ならば、フラスコを軽くたたき、剥離を促進する。5mLの血清添加培地を添加する。ピペッティングおよび、細胞懸濁液でフラスコを洗浄するようにして混合する。細胞懸濁液を15mLの遠心管へ移す。遠心管をボルテックス処理する。2500RPMで8分間、遠心分離する。上清を吸引する。ペレットを適当な培地に再懸濁する。ピペッティングとボルテックス処理により、均質な細胞懸濁液を作製する。実験用に、細胞を新たなT75フラスコまたはウェル・プレートに播種する。
【0173】
細胞計数プロトコール
材料:
ベックマン・コールター(Beckman Coulter:登録商標)Z1細胞計数分析装置(Cell and Particle Counter)(ベックマン・コールター社(Beckman Coulter,Inc.)[米国カリフォルニア州フラートン(Fullerton)所在])
コールター・カウンター・バイアル(ベックマン・コールター社)
Isoton(登録商標)II希釈液(#8546719、ベックマン・コールター
社)
コールターCLENZ(登録商標)(#8546929、ベックマン・コールター社)
オートマチック・ピペットで使用する、ポリスチレン製無菌ピペット・チップ(20〜200μM、200〜1000μM)
手順:
継代培養(上記の継代培養細胞プロトコールに従う)の後、オートマチック・ピペットを用いて、計数する細胞懸濁液の所望の容量(0.25〜1mL)を、コールター・カウンター・バイアル(ベックマン社(Beckman,Inc.))に移す。コールターCLENZ(登録商標)(ベックマン・コールター社[米国カリフォルニア州フラートン(Fullerton)所在])を用いて洗い流し、ベックマン・コールター(登録商標)Z1細胞計数分析装置を確実に清浄化する。Isoton(登録商標)II希釈液で装置を1回洗い流す。総容積10mLの細胞を含むバイアルに、Isoton II希釈液を添加する。装置出力モードで、精度を保つため2回、細胞を計数する。平均係数値を合計して、容積当たりの総細胞数を算出する。
【0174】
in vitro実験の実施プロトコール
材料:
オートマチック・ピペットで使用する、ポリスチレン製の無菌ピペット・チップ(20〜200μM、200〜1000μM)
PipetManで使用するシリコン処理済の無菌ピペット・チップ(5mL、10mL)
75cmの細胞培養フラスコ
6ウェルの組織培養プレート
15mLの遠心管
コールター・カウンター・バイアル(ベックマン・コールター社)
0.05%トリプシン(カタログ番号25−052−C1−1Xトリプシン−EDTA、Cellgro(登録商標))
手順:
水浴中で試薬を37℃に順応させる。地培中でQ10の均質な溶液を作製する上記プロトコールに従って、Q10の保存溶液を作製する。所望の濃度に段階希釈する。培地2mLをそれぞれのウェルに入れる。細胞継代用の上記プロトコールに従って、フラスコを継代培養する。細胞を、均質な細胞懸濁液を作製するのにほぼ十分な培地(約5mL)で再懸濁する。細胞計数用の上記のプロトコールに従って、細胞濃度を決定する。播種する所望の細胞数が50〜100μL中に含まれるように細胞懸濁液を希釈する。各ウェルに所望の細胞数を播種する。37℃、5%CO、加湿条件下で、所望の期間インキュベートする。ウェルから培地を吸引する。トリプシン0.5mLを各ウェルに入れる。約4分間インキュベートする。顕微鏡下で剥離の程度を調べる。必要ならば、旋回させ、側面を軽くたたき、穏やかに底面をたたいて剥離を助ける。0.5mLの培地でトリプシンを中和する。細胞の剥離を助け、細胞塊を壊すためにピペッティングする。細胞懸濁液0.5mLを取り出し、コールター・カウンター・バイアル(ベックマン・コールター社)に入れる。細胞計数用の上記プロトコールに従って、細胞を計数する。
【0175】
動物への接種プロトコール
材料:
リン酸緩衝液(PBS)(ギブコ・インビトロゲン社(Gibco−Invitrogen Corp)[米国ニューヨーク州グランドアイランド(Grand Island)所在])
オートマチック・ピペットで使用する、ポリスチレン製の無菌ピペット・チップ(20〜200μM、200〜1000μM)
PipetManで使用するシリコン処理済の無菌ピペット・チップ(5mL、10mL)
75cmの細胞培養フラスコ
15mLの遠心管
コールター・カウンター・バイアル(ベックマン・コールター社)
0.05%トリプシン(カタログ番号25−052−C1−1Xトリプシン−EDTA、Cellgro(登録商標))
遠心管(2ml)
麻酔剤(Aventin)
手順:
上記の細胞継代培養プロトコールに従って、フラスコを継代培養する。上清を吸引した後、5mLのピペットを用いてPBSでわずかに希釈した各フラスコからのペレットを合わせる。最終的な細胞懸濁液が100μL当たり約1000万個の細胞を含むように希釈する。細胞懸濁液をミクロ遠心分離チューブ(2mL)へ移す。直ちに氷中に置き、注射するまで氷中に入れて置く。マウスを、0.3ccのAventinを腹腔内注射して麻酔する。各動物に、1部位当たり0.1ccの細胞懸濁液を皮下接種する。残った細胞を15mLの遠心管に移す。培地で10mLに希釈する。2500RPMで8分間、遠心分離する。上清を吸引する。遠心管に培地10mLを添加する。ピペッティングとボルテックス処理により、均質な細胞懸濁液を作製する。T75フラスコに細胞を播種して、実験用の細胞の生存度を確認する。
【実施例2】
【0176】
マウスのSK−MEL28腫瘍に及ぼすコエンザイムQ10局所用製剤の効果
SK−MEL28を皮下層へ注射して、マウスにおいてメラノーマ腫瘍を誘発した。動物実験は、各4匹のマウスを含む対照群および投与群より構成した。マウスに2つの腫瘍を接種した。図14のグラフは、各マウスにおいて接種の結果生じた腫瘍の平均の大きさを示す。投与群では、コエンザイムQ10の局所用製剤(10%)を腫瘍に30日間、毎日塗布した。その後、腫瘍を摘出して大きさを測定した。投与群の総合的な平均の大きさの差異は対照群と比較して有意であった(P<0.05)。
【実施例3】
【0177】
局所用CoQ10クリームの調製
試薬:
Phospholipon(登録商標)90G(アメリカン・レシチン社(American Lechitin)[米国コネチカット州スタンフォード(Stanford)所在])
グリセロール
BHT
エタノール
MCT
ラベンダー(シグマ・アルドリッチ社(Sigma−Aldrich))
CoQ10(ピュア・プレスクリプション社(Pure Prescriptions)[米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego)所在])
【0178】
手順:
6gのPhospholipon(登録商標)90G(アメリカン・レシチン社[米国コネチカット州スタンフォード所在])を、5.8gのグリセロール(シグマ・アルドリッチ社[米国ミズーリ州セントルイス(St.Louis)所在])、0.2gのBHT(シグマ・アルドリッチ社)、4mlのエタノール(シグマ・アルドリッチ社)、および18gのMCT(シグマ・アルドリッチ社)の混合物中に60℃で溶解した。20gのC
oQ10(ピュア・プレスクリプション社)を、得られた混合物に溶解した。窒素飽和水で調製した1mMリン酸塩緩衝液(pH8.2)90mlおよび0.2mlのラベンダー(シグマ・アルドリッチ社)を添加し、混合物を12,000RPMの高速ブレンダーで混合してクリームに形成した。クリームは使用まで4℃で貯蔵した。
【実施例4】
【0179】
JC−1染色によるアポトーシス分析
アポトーシスを、ミトコンドリア膜の色素JC−1、すなわち5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチル−ベンズイミダゾリルカルボシアニンクロライド(モレキュラー・プローブ社(Molecular Probe)[米国オレゴン州ユージーン(Eugene)所在])を用いて測定した。1×PSA、5%FBSおよびコエンザイムQ10(濃度:0、50、100および200μM)を添加したDMEM−F12培地から成る処置薬を、60×15mmの組織培養ディッシュ(コスター(Costar)米国マサチューセッツ州ケンブリッジ所在)に調製した。ディッシュ1枚当たり500,000個のPC−3細胞を播種し、24時間インキュベートした。細胞を、2mLのトリプシン−EDTAを用いてトリプシン処理し、2,500rpmで8分間遠心分離した。細胞を、血清とフェノールレッド[米国オレゴン州ポートランド(Portland)所在])を欠くハムF−12培地(カスケード・バイオロジクス社(Cascade Biologics,Inc.)1mLに再懸濁し、直ちに氷中に置いた。無菌DMSOを用いてJC−1の保存溶液(1mg/ml)を調製し、10μLを各細胞懸濁液に、軽くボルテックス処理しながら添加した。細胞を37℃で15分間培養し、ハムF12培地4mlで希釈して600rpmで7分間遠心分離した。5mlの冷PBS(ギブコ社(Gibco)[米国ニューヨーク州グランドアイランド(Grand Island)所在])に再懸濁後、細胞を600rpmで7分間、再度遠心分離した。次いで細胞ペレットを1mlの冷PBSに懸濁し、光の侵入を防ぐためホイルで覆ったフローサイトメトリー用チューブのナイロンフィルター上部に移した。試料を、蛍光色素の取り込みの変化に対するフローサイトメトリーにより分析した。モノマーのJC−1は、緑色の蛍光(λem=527nm)を示すのに対し、J−凝集体は赤色の蛍光(λem=590nm)を示す。透過性となったミトコンドリアは、アポトーシス前またはアポトーシス中に、JC−1モノマー色素を蓄積する。
【0180】
他の実施形態
本発明はその詳細な説明との関連において説明されるが、前述の説明は本発明を説明するためのものであって、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を制限するものではないことは、当然のことである。他の態様、利点および変更態様は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】in vitro培養におけるヒトメラノーマ細胞(SKMEL28)に対するCoQ10の効果を示す、一連の顕微鏡写真。
【図2】CoQ10が36時間のin vitro培養においてヒトメラノーマ細胞株(SKMEL28)の増殖を抑えることを示すグラフ。
【図3】CoQ10が48時間のin vitro培養においてヒトメラノーマ細胞株(SKMEL28)の増殖を抑えることを示すグラフ。
【図4】媒体対照は48時間のin vitro培養においてヒトメラノーマ細胞株(SKMEL28)の増殖を抑えないことを示すグラフ。
【図5】ヒトメラノーマおよび新生児線維芽細胞について、in vitro培養においてアポトーシスに及ぼすCoQ10の効果を比較したグラフ。
【図6】CoQ10が48時間のin vitro培養において扁平上皮がん細胞の増殖を抑えることを示すグラフ。
【図7】CoQ10が48時間のin vitro培養においてヒト新生児線維芽細胞の増殖を抑えることを示すグラフ。
【図8】CoQ10が48時間のin vitro培養においてヒト新生児ケラチノサイトの増殖を増大させることを示すグラフ。
【図9】CoQ10が48時間のin vitro培養において乳腺がん細胞株(MCF−7)の増殖を抑えることを示すグラフ。MCF−7細胞株は、WNT7Bがん遺伝子を発現し、Tx−4がん遺伝子を含む。
【図10】CoQ10が72時間のin vitro培養において乳腺がん細胞株(MCF−7)の増殖を抑えることを示すグラフ。
【図11】対照マウスおよび局所用CoQ10製剤により30日間治療した後のCoQ10処理マウスにおいて誘発された腫瘍を示す写真。
【図12】対照マウスおよび局所用CoQ10製剤により30日間治療した後のCoQ10処理マウスにおいて誘発された腫瘍を示す写真。
【図13】対照マウスおよびCoQ10処理マウスから摘出した腫瘍を示す写真。
【図14】CoQ10で治療または対照の(30日間)マウスの腫瘍サイズに及ぼすCoQ10投与の効果を示すグラフ。対照群に対し投与群(処理群)の腫瘍の大きさの平均は、それぞれ52.3%および54.0%減少した。
【図15】in vitro培養におけるヒト乳腺がん細胞(SK−BR−3)に及ぼすCoQ10の効果を示す一連の顕微鏡写真。SK−BR−3細胞株は、Her2/c−erb−2遺伝子、遺伝子産物を過剰発現する(ATCC)。
【図16】CoQ10が48時間のin vitro培養においてヒト乳腺がん細胞株(SK−BR−3)の増殖を抑えることを示すグラフ。SK−BR−3細胞株は、Her2/c−erb−2遺伝子、遺伝子産物を過剰発現する(ATCC)。
【図17】CoQ10が72時間のin vitro培養においてヒト乳腺がん細胞株(SK−BR−3)の増殖を抑えることを示すグラフ。SK−BR−3細胞株は、Her2/c−erb−2遺伝子、遺伝子産物を過剰発現する(ATCC)。
【図18】CoQ10が48時間のin vitro培養においてヒト乳腺がん細胞株(MDA−MB−468)の増殖を抑えることを示すグラフ。MDA−MB−468細胞株は、P53遺伝子に突然変異を有する(ATCC)。
【図19】CoQ10が72時間のin vitro培養においてヒト乳腺がん細胞株(MDA−MB−468)の増殖を抑えることを示すグラフ。MDA−MB−468細胞株は、P53遺伝子に突然変異を有する(ATCC)。
【図20】CoQ10が48時間のin vitro培養においてヒト乳腺がん細胞株(BT−20)の増殖を抑えることを示すグラフ。BT−20細胞株は、WNT7BおよびWNT3がん遺伝子を発現する(ATCC)。
【図21】CoQ10が72時間のin vitro培養においてヒト乳腺がん細胞系(BT−20)の増殖を抑えることを示すグラフ。BT−20細胞系は、WNT7BおよびWNT3がん遺伝子を発現する(ATCC)。
【図22】CoQ10が48時間のin vitro培養においてヒト肝細胞がん細胞株(Hep3B)の増殖を抑えることを示すグラフ。
【図23】CoQ10が72時間のin vitro培養においてヒト肝細胞がん細胞株(Hep3B)の増殖を抑えることを示すグラフ。
【図24】CoQ10が48時間のin vitro培養においてヒト骨肉腫細胞株(143B)の増殖を抑えることを示すグラフ。
【図25】CoQ10が72時間のin vitro培養においてヒト骨肉腫細胞株(143B)の増殖を抑えることを示すグラフ。
【図26】CoQ10が48時間のin vitro培養においてヒト前立腺腺がん細胞株(PC−3)の増殖を抑えることを示すグラフ。
【図27】CoQ10が72時間のin vitro培養においてヒト前立腺腺がん細胞株(PC−3)の増殖を抑えることを示すグラフ。
【図28】24時間のin vitro培養における、ヒト前立腺腺がん細胞株(PC−3)のミトコンドリアの分極(アポトーシスの指標)に対するCoQ10の効果を示すグラフ。PC−3細胞培養物を、濃度0.05、0.1および0.2mMのQ10で24時間処理し、次いでJC−1(10マイクログラム/ml)で30分間処理した。緑色蛍光の取り込みとレベルは、フローサイトメータFL1(緑色蛍光)で測定した。注:0.2mMのQ10処理細胞(黄色のグラフ)で、緑色蛍光の有意な増加が観察された。
【図29A】CoQ10を含んでなる組成物(図29B)による、組織における腫瘍媒介性の血管形成の抑制を、CoQ10を含んでなる組成物の非存在下の対照と比較して示す写真。
【図29B】CoQ10を含んでなる組成物(図29B)による、組織における腫瘍媒介性の血管形成の抑制を、CoQ10を含んでなる組成物の非存在下の対照と比較して示す写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CoQ10および薬学的に許容できる担体を含んでなる組成物。
【請求項2】
コエンザイムQ10、phospholipon(登録商標)90、グリセロール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エタノール、中鎖トリグリセリド(MCT)、およびラベンダーを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記phospholipon(登録商標)90がphospholipon(登録商標)90Gである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記phospholipon(登録商標)90がphospholipon(登録商標)90Hである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
phospholipon(登録商標)90Gおよびphospholipon(登録商標)90Hをさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
約1%〜約25%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約1%〜約20%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
がん患者を治療する方法であって、
治療上有効な量のコエンザイムQ10を含んでなる組成物を、投与を必要とする患者に投与することと、
腫瘍細胞を組成物と接触させて腫瘍細胞の溶解をもたらすことと、
それによってがん患者を治療することと
からなる方法。
【請求項9】
前記組成物が約1%〜25%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が約1%〜約20%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記コエンザイムQ10を含んでなる組成物が局所用クリーム剤として調合される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
治療上有効な量のコエンザイムQ10組成物が1つまたは複数の化学療法剤とともに投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記化学療法剤を、治療上有効な量のコエンザイムQ10を含んでなる組成物と同時に投与するか、同組成物の前に投与するか、または同組成物の後に投与することができる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化学療法剤が、シクロホスファミド(CTX、25mg/kg/日、経口投与)、タキサン(パクリタキセルまたはドセタキセル)、ブスルファン、シスプラチン、シクロホスファミド、メトトレキセート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、メルファラン、クラドリビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびクロラムブシルからなる群から選
択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
治療の結果腫瘍細胞の増殖が阻害される、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
CoQ10を含んでなる薬剤組成物を対象に投与することからなる、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法。
【請求項17】
前記薬剤組成物が約1%〜25%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記薬剤組成物が約1%から25%(w/w)までのコエンザイムQ10を含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤組成物が約1%〜約20%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
コエンザイムQ10を含んでなる薬剤組成物を投与することからなる、腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こす方法。
【請求項21】
前記薬剤組成物が約1%から25%(w/w)までのコエンザイムQ10を含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤組成物が約1%〜約20%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記薬剤組成物が、ミトコンドリア膜の色素アッセイおよびアネキシンV‐PEアッセイのうち少なくともいずれか一方で測定して少なくとも約30%の腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こす、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記薬剤組成物が、ミトコンドリア膜の色素アッセイおよびアネキシンV‐PEアッセイのうち少なくともいずれか一方で測定して約50%の腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こす、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記薬剤組成物が、ミトコンドリア膜の色素アッセイおよびアネキシンV‐PEアッセイのうち少なくともいずれか一方で測定して約60%の腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こす、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記薬剤組成物が、ミトコンドリア膜の色素アッセイおよびアネキシンV‐PEアッセイのうち少なくともいずれか一方で測定して約75%の腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こす、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記薬剤組成物が、ミトコンドリア膜の色素アッセイおよびアネキシンV‐PEアッセイのうち少なくともいずれか一方で測定して約90%の腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こす、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記薬剤組成物が、ミトコンドリア膜の色素アッセイおよびアネキシンV‐PEアッセイのうち少なくともいずれか一方で測定して約99.9%の腫瘍細胞にアポトーシスを引き起こす、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
コエンザイムQ10を含んでなる薬剤組成物と腫瘍を接触させることからなる、腫瘍に
おける血管形成を阻害する方法。
【請求項30】
前記薬剤組成物が約1%から25%(w/w)までのコエンザイムQ10を含んでなる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記薬剤組成物が約1%〜約20%(w/w)のコエンザイムQ10を含んでなる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
コエンザイムQ10、
phospholipon(登録商標)90、
グリセロール、
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、
エタノール、
中鎖トリグリセリド(MCT)、および
ラベンダー
からなるキット。
【請求項33】
前記phospholipon(登録商標)90がphospholipon(登録商標)90Gである、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記phospholipon(登録商標)90がphospholipon(登録商標)90Hである、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
前記phospholipon(登録商標)90がphospholipon(登録商標)90GおよびPhospholipon(登録商標)90Hである、請求項32に記載のキット。
【請求項36】
コエンザイムQ10が約1%〜約30%(w/w)の間で提供される、請求項32に記載のキット。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図1】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−518805(P2007−518805A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551208(P2006−551208)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/001581
【国際公開番号】WO2005/069916
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(591279353)ユニバーシティー・オブ・マイアミ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MIAMI
【Fターム(参考)】