説明

局所用ネパフェナク処方物

【課題】ネパフェナクの局所用懸濁組成物を提供すること。
【解決手段】その組成物は眼への局所投与に対して特に適切である。例えば、局所的に投与可能な眼用組成物であって、該組成物は、a)0.09〜0.11%(w/v)のネパフェナク;b)0.4〜0.6%(w/v)のカルボマー;c)非イオン性界面活性剤;d)該組成物に250〜350mOsm/kgの重量オスモル濃度を持たせるのに十分な量の張度調整剤;e)該組成物に7.0〜7.8のpHを持たせるのに十分な量のpH調整剤;およびf)水;から本質的になり、該組成物は保存剤およびキレート剤からなる群から選択される成分を必要に応じて含む、組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明はネパフェナク(nepafenac)の局所的に投与可能な眼用処方物に関する。本発明の処方物は懸濁組成物である。
【背景技術】
【0002】
ネパフェナクはまた2−アミノ−3−ベンゾイルフェニル酢酸として公知である。眼の炎症および疼痛を処置するための、ネパフェナクならびに3−ベンゾイルフェニル酢酸の他のアミドおよびエステル誘導体の局所的な使用は、特許文献1に開示されている。特許文献1によると、3−ベンゾイルフェニル酢酸誘導体を含む組成物は液剤、懸濁剤、ゲル剤または軟膏剤のような種々の局所的に投与可能な眼用組成物に処方され得る。その組成物は必要に応じて、塩化ベンザルコニウムのような保存剤、およびカルボマー、ヒドロキシエチルセルロースまたはポリビニルアルコールのような増粘剤を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,475,034号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明の組成物はネパフェナクの水性の懸濁組成物である。その組成物は0.09〜0.11%(w/v)のネパフェナクを含む。その組成物は本質的にネパフェナク、カルボマー、非イオン性界面活性剤、張度調整剤、pH調整剤、精製水、ならびに必要に応じて保存剤およびキレート剤からなる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
局所的に投与可能な眼用組成物であって、該組成物は、
a)0.09〜0.11%(w/v)のネパフェナク;
b)0.4〜0.6%(w/v)のカルボマー;
c)非イオン性界面活性剤;
d)該組成物に250〜350mOsm/kgの重量オスモル濃度を持たせるのに十分な量の張度調整剤;
e)該組成物に7.0〜7.8のpHを持たせるのに十分な量のpH調整剤;および
f)水;
から本質的になり、該組成物は保存剤およびキレート剤からなる群から選択される成分を必要に応じて含む、組成物。
(項目2)
前記組成物が0.1%(w/v)のネパフェナクを含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記組成物が0.5%(w/v)のカルボマーを含む、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記カルボマーがアリルスクロースまたはアリルペンタエリトリトールと架橋されたアクリル酸重合体である、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記非イオン性界面活性剤がチロキサポールである、項目1に記載の組成物。
(項目6)
前記組成物が0.01%(w/v)のチロキサポールを含む、項目5に記載の組成物。
(項目7)
前記張度調整剤が金属塩化物塩およびマンニトールからなる群から選択される、項目1に記載の組成物。
(項目8)
前記張度調整剤が塩化ナトリウムおよびマンニトールを含む、項目7に記載の組成物。
(項目9)
前記組成物が0.3〜0.5%(w/v)の塩化ナトリウムおよび2〜3%(w/v)のマンニトールを含む、項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記組成物が0.4%(w/v)の塩化ナトリウムおよび2.4%(w/v)のマンニトールを含む、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記pH調整剤が、塩酸および水酸化ナトリウムからなる群から選択される、項目1に記載の組成物。
(項目12)
前記組成物が7.3〜7.7のpHを持つ、項目1に記載の組成物。
(項目13)
前記組成物が保存剤およびキレート剤の両方を含む、項目1に記載の組成物。
(項目14)
前記保存剤がハロゲン化ベンザルコニウム;ポリクオタニウム−1;および二酸化塩素からなる群から選択される、項目1に記載の組成物。
(項目15)
前記保存剤が塩化ベンザルコニムである、項目1に記載の組成物。
(項目16)
前記組成物が0.005%の塩化ベンザルコニウムを含む、項目15に記載の組成物。
(項目17)
前記キレート剤がエデト酸二ナトリウム;エデト酸三ナトリウム;エデト酸四ナトリウム;およびジエチレンアミンペンタアセテートからなる群から選択される、項目1に記載の組成物。
(項目18)
前記組成物が0.001〜0.1%(w/v)のエデト酸二ナトリウムを含む、項目17に記載の組成物。
(項目19)
患者に項目1に記載の組成物を局所的に投与する工程を包含する、患者における眼の炎症障害を処置する方法。
(項目20)
局所的に投与可能な眼用組成物であって、該組成物は、
a)0.1%(w/v)のネパフェナク;
b)0.5%(w/v)のカルボマー;
c)0.01%(w/v)のチロキサポール;
d)0.4%(w/v)の塩化ナトリウム;
e)2.4%(w/v)のマンニトール;
f)該組成物に7.3〜7.7のpHを持たせるのに十分な量のpH調整剤;
g)0.005%(w/v)の塩化ベンザルコニウム
h)0.01%のエデト酸二ナトリウム;および
i)精製水
から本質的になる、組成物。
【発明を実施するための形態】
【0005】
(発明の詳細な説明)
他に示されない限り、すべての成分の濃度は重量/体積%(% w/v)の単位で示される。
【0006】
ネパフェナクは公知の化合物である。ネパフェナクは公知の方法で作られ得る。例えば、米国特許第5,475,034号および同第4,313,949号を参照のこと。本発明の組成物は0.09〜0.11%のネパフェナクを、および好ましくは0.1%のネパフェナクを含む。
【0007】
ネパフェナクに加えて、本発明の懸濁組成物はまた、増粘剤または物理的安定性増強剤としてのカルボマーを含む。本発明における使用のために適切なカルボマーはまた、「カルボキシビニルポリマー」またはカルボキシポリメチレンとして公知である。それらはCarbopol(登録商標)の商用名でそれらを販売しているNoveon,Inc.(Cleveland,Ohio)のような供給者から商業的に利用可能である。Carbopol重合体はアクリル酸をベースとした架橋重合体である。それらはアリルスクロースまたはアリルペンタエリトリトールで架橋される。Carbopol重合体は、アクリル酸の重合体であり、C10〜30のアルキルアクリレートにより改変されており、そしてアリルペンタエリトリトールで架橋されている。本発明の組成物における使用のための好ましいカルボマーは、アリルスクロースまたはアリルペンタエリトリトールで架橋されているアクリル酸重合体であり、それは商業的にCarbopol(登録商標)974Pとして利用可能である。本発明の組成物におけるカルボマーの濃度は一般的に0.4〜0.6%の範囲にあり、および好ましくは0.5%である。
【0008】
本発明の組成物はまた、眼に受容可能な非イオン性界面活性剤を含む。多くの眼に受容可能な非イオン性界面活性剤が公知である。適切な非イオン性界面活性剤はチロキサポール;ポリソルベート20、ポリソルベート60、およびポリソルベート80のようなポリオキシエチレンソルビタンエステル;クレモフォールELのようなポリエトキシル化したヒマシ油;HCO−40のようなポリエトキシル化した硬化ヒマシ油;およびポロクサマーを含むが、それらに限定されない。最も好ましい界面活性剤はチロキサポールである。チロキサポールの場合、その界面活性剤は一般的に0.001〜0.05%、および好ましくは0.01%の量で存在している。
【0009】
ネパフェナク、カルボマー、および非イオン性界面活性剤に加えて、本発明の組成物は眼に受容可能な張度調整剤を含む。眼に受容可能な張度調整剤は、金属塩化物の塩およびマンニトールのような非イオン性張度調整剤を含むが、それらに限定されない。好ましい金属塩化物の塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムのような、ヒトの涙の中に見出される金属塩化物である。本発明の組成物に含まれる張度調整剤の量は、その組成物に約250〜350mOsm/kg、好ましくは270〜315mOsm/kgの重量オスモル濃度を持たせるのに十分な量である。最も好ましい張度調整剤は塩化ナトリウムおよびマンニトールの組み合わせである。その張度調整剤が塩化ナトリウムおよびマンニトールの組み合わせである最も好ましい実施形態に関して、塩化ナトリウムの量は好ましくは0.3〜0.5%であり、そしてマンニトールの量は2〜3%である。また、最も好ましい塩化ナトリウムの量は0.4%であり、そして最も好ましいマンニトールの量は2.4%である。
【0010】
本発明の組成物は7.0〜7.8のpHを持つ。好ましくは、その組成物のpHは7.3〜7.7であり、および最も好ましくは7.5である。その組成物はその所望のpHを達成するために眼に受容可能なpH調整剤を含む。眼に受容可能なpH調整剤は公知であり、そして塩酸(HCl)ならびに水酸化ナトリウム(NaOH)を含むが、それらに限定されない。
【0011】
本発明の組成物は、眼に受容可能な保存剤成分を必要に応じて含む。眼に受容可能な保存剤成分は公知であり、そして塩化ベンザルコニウムのようなハロゲン化ベンザルコニウム、ポリクオタニウム−1(polyquaternium−1)、および二酸化塩素を含むが、それらに限定されない。最も好ましい眼に受容可能な保存剤成分は、塩化ベンザルコニウムおよびポリクオタニウム−1である。塩化ベンザルコニウムの場合、その保存剤は好ましくは0.001〜0.01%、および最も好ましくは0.005%の量で存在している。
【0012】
キレート剤はまた、必要に応じて本発明の懸濁組成物に含まれる。適切なキレート剤はエデト酸二ナトリウム;エデト酸三ナトリウム;エデト酸四ナトリウム;およびジエチレンアミンペンタアセテートを含む。最も好ましいキレート剤はエデト酸二ナトリウムである。もし含まれる場合、そのキレート剤は代表的に0.001〜0.1%の量で存在している。エデト酸二ナトリウムの場合、そのキレート剤は好ましくは0.01%の濃度で存在している。
【0013】
以下の実施例は、本発明を説明することが意図されたものであるが、限定することが意図されたものではない。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
下の表1Aに示される処方物を調製し、そしてそれらのインビトロの角膜透過速度を比較した。角膜透過速度を、Keら,Inflammation,24(4):371−384(2000)に記述されている方法に従い、新たに単離されたウサギの角膜を用いて、灌流槽において評価した。その角膜透過の結果を表1Bに示す。
【0015】
【表1A】

【0016】
【表1B】

(実施例2)
下の表2Aに示される処方物を調製し、そしてそれらのインビトロの角膜透過速度を比較した。その角膜透過の結果を表2Bに示す。
【0017】
【表2A】

【0018】
【表2B】

(実施例3)
下の表3Aに示される処方物を調製し、そしてそれらのインビトロの角膜透過速度を比較した。その角膜透過の結果を表3Bに示す。
【0019】
【表3A】

【0020】
【表3B】

(実施例4)
下の表4Aに示される処方物を調製し、そしてそれらのインビトロの角膜透過速度を比較した。その角膜透過の結果を表4Bに示す。
【0021】
【表4A】

【0022】
【表4B】

実施例1〜4のデータは0.3%のネパフェナク濃度を持つ組成物に関して、カルボマーの量は角膜透過速度に対して統計学的に有意な影響を及ぼさなかったことを証明している。反対に、0.1%のネパフェナク濃度を持つ組成物に関して、カルボマーの量は統計学的に有意な影響を及ぼした。0.1%のネパフェナク濃度を持つ組成物に関して、0.5%のカルボマー濃度を持つ組成物は、0.35%のカルボマー濃度を含む組成物と比較して、角膜透過速度が上回っていた。
【0023】
(実施例5)
【0024】
【表5】

本発明は一定の好ましい実施形態を参照することにより記述された;しかしながら、それが、その精神または本質的な特性から逸脱せずに、その他の特定の形式およびそのバリエーションにおいて体現され得ることが理解されるべきである。上記の実施形態は、したがってすべての点において説明的であるが、限定的ではないと考えられ、本発明の範囲は、上記の説明というよりも添付の特許請求の範囲により示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2012−41368(P2012−41368A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−257966(P2011−257966)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【分割の表示】特願2007−544521(P2007−544521)の分割
【原出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】