説明

局部洗浄装置の制御方法及び局部洗浄装置

【課題】簡易な構造で小型化を図ることができ、肛門洗浄用ノズルとビデ洗浄用ノズルの干渉を防止することができる局部洗浄装置を提供する。
【解決手段】局部洗浄装置は、第1シリンダー11と、第1ノズル12とを有する肛門洗浄用ノズル10と、第2シリンダー21と、第1ノズル12の軌道と交差する軌道上を往復移動する第2ノズル22とを有するビデ洗浄用ノズル20と、温水供給装置30とを備えている。第1ノズル12の噴出孔12Aから洗浄水を噴出する際、第2シリンダー21に温水供給装置の下流側に滞留していた洗浄水を供給して第2ノズル22と第2シリンダー21との隙間から排出する捨て水工程と、捨て水工程後に第1シリンダー11及び第2シリンダー21に対して洗浄水の供給を中断する中断工程と、中断工程後に第1シリンダー11に洗浄水を供給して第1ノズル12の噴出孔12Aから洗浄水を噴出する洗浄工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は局部洗浄装置の制御方法及び局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の局部洗浄装置が開示されている。この局部洗浄装置は、肛門洗浄用ノズル、ビデ洗浄用ノズル及び給水路を備えている。肛門洗浄用ノズルは、第1シリンダーと第1ノズルとを有している。第1ノズルは、第1シリンダー内に収納された収納位置と第1シリンダーの後端側から流入する洗浄水の水圧によって前進した前進位置との間を往復移動する。また、第1ノズルは先端部の上面に設けられた噴出孔から洗浄水を噴出する。
【0003】
ビデ洗浄用ノズルは、第2シリンダーと第2ノズルとを有している。第2ノズルは、第2シリンダー内に収納された収納位置と第2シリンダーの後端側から流入する洗浄水の水圧によって前進した前進位置との間であって、往復移動する第1ノズルの軌道と交差する軌道上を往復移動する。また、第2ノズルは先端部の上面に設けられた噴出孔から洗浄水を噴出する。
【0004】
給水路は、第1シリンダーの後端部に連通する第1給水路と、第2シリンダー後端部に連通する第2給水路と、第1シリンダー及び第2シリンダーの先端部に連通する第3給水路とに分岐している。この分岐部には、洗浄水の供給先を第1給水路、第2給水路又は第3給水路に切り替える切替弁が設けられている。
【0005】
この局部洗浄装置は、肛門洗浄又はビデ洗浄を実施する際、先ず第3給水路に洗浄水を供給する。これにより、第1シリンダー及び第2シリンダーの先端部に洗浄水が流入する。その後、肛門洗浄又はビデ洗浄に対応する第1給水路又は第2給水路の一方に洗浄水を供給する。すると、第1シリンダー又は第2シリンダーの後端側から洗浄水が流入して第1ノズル又は第2ノズルが前進位置まで前進して、第1ノズル又は第2ノズルの先端に設けられた噴出孔から洗浄水を噴出する。
【0006】
このように、この局部洗浄装置では、肛門洗浄又はビデ洗浄を実施する際、給水路に滞留していた洗浄水を第1シリンダー及び第2シリンダーの先端部から第1シリンダー及び第2シリンダーに流入して、排出する。この排出中、第1ノズル及び第2ノズルは第1シリンダー及び第2シリンダーの先端から前進しない。このため、その後に第1シリンダー又は第2シリンダーの収納位置から前進する第1ノズル又は第2ノズルの一方のノズルが他方のノズルに交差して干渉することを確実に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−109761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の局部洗浄装置では、第1シリンダー及び第2シリンダーの先端部に洗浄水を流入させるため、肛門洗浄用ノズル、ビデ洗浄用ノズル、給水路及び切替弁の構造が複雑となり、大型化するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、簡易な構造で小型化を図ることができ、肛門洗浄用ノズルとビデ洗浄用ノズルの干渉を防止することができる局部洗浄装置の制御方法及び局部洗浄装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の局部洗浄装置の制御方法は、第1シリンダーと、この第1シリンダー内に収納された収納位置とこの第1シリンダーに流入する洗浄水の水圧によって前進した前進位置との間を往復移動し、先端部の上面に設けられた噴出孔から洗浄水を噴出する第1ノズルとを有する肛門洗浄用ノズルと、
第2シリンダーと、この第2シリンダー内に収納された収納位置とこの第2シリンダーに流入する洗浄水の水圧によって前進した前進位置との間であって、往復移動する前記第1ノズルの軌道と交差する軌道上を往復移動し、先端部の上面に設けられた噴出孔から洗浄水を噴出する第2ノズルとを有するビデ洗浄用ノズルと、
前記第1シリンダーと前記第2シリンダーとに分岐して連通した給水路と、
この給水路に温水を供給する温水供給装置とを備えた局部洗浄装置の制御方法であって、
肛門洗浄又はビデ洗浄の実行によって、対応する前記第1ノズル又は前記第2ノズルの一方のノズルの前記噴出孔から洗浄水を噴出する際、
前記第1ノズル又は前記第2ノズルの他方のノズルに対応する前記第1シリンダー又は前記第2シリンダーに前記温水供給装置の下流側に滞留していた洗浄水を供給して前記第1ノズルと前記第1シリンダーとの隙間又は前記第2ノズルと前記第2シリンダーとの隙間から排出する捨て水工程と、
前記捨て水工程後に第1シリンダー及び第2シリンダーに対して洗浄水の供給を中断する中断工程と、
前記中断工程後に前記第1シリンダー又は前記第2シリンダーの一方に洗浄水を供給して前記第1ノズル又は前記第2ノズルの一方のノズルの前記噴出孔から洗浄水を噴出する洗浄工程とを有していることを特徴とする。
【0011】
この局部洗浄装置の制御方法では、捨て水工程と洗浄工程との間に、第1シリンダー及び第2シリンダーに対して洗浄水の供給を中断する中断工程を有している。このため、捨て水工程において、仮に第1ノズル又は第2ノズルの他方のノズルが対応する第1シリンダー又は第2シリンダーの先端から前進したとしても、この中断工程の間に、前進したノズルは後退して第1シリンダー又は第2シリンダー内の収納位置に収納される。よって、洗浄工程において、第1ノズル又は第2ノズルの一方のノズルが前進位置に前進する際に他方のノズルに交差して干渉することを防止することができる。
【0012】
また、この局部洗浄装置の制御方法が組み込まれた制御装置を備えている局部洗浄装置では、肛門洗浄用ノズル、ビデ洗浄用ノズル、給水路及び切替弁の構造を簡易にすることができ、小型化を図ることができる。
【0013】
したがって、本発明の局部洗浄装置の制御方法及び局部洗浄装置は、簡易な構造で小型化を図ることができ、肛門洗浄用ノズルとビデ洗浄用ノズルの干渉を防止することができる。
【0014】
前記局部洗浄装置は、前記給水路を開閉する開閉弁と、前記給水路の前記第1シリンダーと前記第2シリンダーとに連通する分岐個所に設けられて洗浄水の供給先を前記第1シリンダー又は前記第2シリンダーに切り替える切替弁とを備えており、
前記捨て水工程において、前記開閉弁を開弁し、前記切替弁を前記第1ノズル又は前記第2ノズルの他方のノズルに対応する前記第1シリンダー又は前記第2シリンダーに洗浄水を供給するように切り替えて、前記温水供給装置の下流側に滞留していた洗浄水を前記第1ノズルと前記第1シリンダーとの隙間又は前記第2ノズルと前記第2シリンダーとの隙間から排出し、
前記中断工程において、前記開閉弁を閉弁して洗浄水の供給を中断しつつ、前記切替弁を前記第1ノズル又は前記第2ノズルの一方のノズルに対応する前記第1シリンダー又は前記第2シリンダーに洗浄水を供給するように切り替え、
前記洗浄工程において、前記開閉弁を開弁して、前記第1ノズル又は前記第2ノズルの一方のノズルの前記噴出孔から洗浄水を噴出し得る。
【0015】
この場合、開閉弁の開閉と、切替弁の切り替えとによって、捨て水工程、中断工程、及び洗浄工程を容易に実行することができる。これにより、この局部洗浄装置の制御方法及び局部洗浄装置は、簡易な構造で小型化を図ることができ、肛門洗浄用ノズルとビデ洗浄用ノズルの干渉を防止することができる。
【0016】
前記局部洗浄装置は、前記給水路の前記開閉弁と前記切替弁との間に設けられた大気開放弁を備えており、
前記開閉弁を閉弁して前記洗浄工程を終了し、かつ前記第1ノズル又は前記第2ノズルの一方のノズルが後退して対応する前記第1シリンダー又は前記第2シリンダー内の収納位置に収納された後に、前記切替弁を複数回切り替える残留水抜け工程を有し得る。
【0017】
この場合、切替弁を複数回、切り替えることによって、大気開放弁を介して第1シリンダー及び第2シリンダーの内部が大気に開放されるため、第1シリンダー及び第2シリンダーの内部の状態を変動させることができる。つまり、洗浄水の表面張力等が原因で残留している洗浄水を第1ノズルと第1シリンダーとの隙間、及び第2ノズルと第2シリンダーとの隙間から確実に排出することができる。このため、次の肛門洗浄又はビデ洗浄の際の捨て水工程において、第1シリンダー及び第2シリンダーには、洗浄水が残留しておらず、温水供給装置の下流側に滞留していた洗浄水が供給された際に、第1ノズル又は第2ノズルが第1シリンダー又は第2シリンダーの先端から前進することを防止することができる。よって、その後の洗浄工程において、肛門洗浄用ノズルとビデ洗浄用ノズルの干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例の局部洗浄装置の構成図である。
【図2】実施例の肛門洗浄用ノズル及びビデ洗浄用ノズルの肛門洗浄時の動きを示す断面図であり、(A)待機状態、(B)捨て水工程、(C)中断工程、(D)洗浄工程を示す。
【図3】実施例の肛門洗浄におけるフローチャートである。
【図4】実施例のビデ洗浄におけるフローチャートである。
【図5】実施例の残留水抜き工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の局部洗浄装置の制御方法及び局部洗浄装置を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
<実施例>
実施例の局部洗浄装置は、図示しない便鉢を有する水洗式便器に取り付けられる便座装置に組み込まれる。この局部洗浄装置は、図1及び図2に示すように、肛門洗浄用ノズル10とビデ洗浄用ノズル20とを備えている。肛門洗浄用ノズル10は、第1シリンダー11と第1ノズル12とを有している。第1シリンダー11は、略円筒状であり、後端面に洗浄水の流入口が設けれ、先端面に第1ノズル12が挿通する挿通口が設けられている。また、第1シリンダー11は上側面に空気孔11Aが貫設されている。この空気孔11Aは第1シリンダー11と第1ノズル12との隙間に洗浄水が滞留しないように、空気孔11Aからこの隙間に空気が流入するように設けられている。
【0021】
第1ノズル12は、第1シリンダー11内であって、先端部が挿通口より僅かに突出した状態の収納位置に収納される。第1ノズル12の側面と第1シリンダー11の先端部の挿通口の内周面との間には隙間が形成されている。第1シリンダー11内には図示しないスプリングが収納されている。このスプリングは第1ノズル12を収納位置へ後退させる方向に弾性力を付与している。
【0022】
第1ノズル12は、第1シリンダー11の後端面に設けられた流入口から流入する洗浄水の水圧によって、第1シリンダー11の挿通口から前進位置まで前進する。また、第1ノズル12は、第1シリンダー11の後端面に設けられた流入口から洗浄水が流入しなくなると、スプリングの弾性力によって第1シリンダー11内の収納位置まで後退する。このように、第1ノズル12は収納位置と前進位置を往復移動する。
【0023】
第1ノズル12が収納位置から前進位置まで前進している間、第1シリンダー11に流入した洗浄水の一部は、第1ノズル12の側面と第1シリンダー11の先端部の挿通口の内周面との間の隙間から排出される。第1ノズル12が前進位置に前進すると、第1ノズル12の先端部の上面に設けられた噴出孔12Aから洗浄水が噴出する。その際、第1ノズル12の側面と第1シリンダー11の先端部の挿通口の内周面との間の隙間から洗浄水は排出されない。第1シリンダー11への洗浄水の供給が停止し、第1ノズル12が前進位置から収納位置まで後退している間、第1シリンダー11内の洗浄水は、第1ノズル12の側面と第1シリンダー11の先端部の挿通口の内周面との間の隙間から排出される。
【0024】
ビデ洗浄用ノズル20は、第2シリンダー21と第2ノズル22とを有している。第2シリンダー21は、略円筒状であり、後端面に洗浄水の流入口が設けられ、先端面に第2ノズル22が挿通する挿通口が設けられている。また、第2シリンダー21は上側面に空気孔21Aが貫設されている。この空気孔21Aは第2シリンダー21と第2ノズル22との隙間に洗浄水が滞留しないように、空気孔21Aからこの隙間に空気が流入するように設けられている。
【0025】
第2ノズル22は、第2シリンダー21内であって、先端部が挿通口より僅かに突出した状態の収納位置に収納される。第2ノズル22の側面と第2シリンダー21の先端部の挿通口の内周面との間には隙間が形成されている。第2シリンダー21内には図示しないスプリングが収納されている。このスプリングは第2ノズル22を収納位置へ後退させる方向に弾性力を付与している。
【0026】
第2ノズル22は、第2シリンダー21の後端面に設けられた流入口から流入する洗浄水の水圧によって、第2シリンダー21の挿通口から前進位置まで前進する。また、第2ノズル22は、第2シリンダー21の後端面に設けられた流入口から洗浄水が流入しなくなると、スプリングの弾性力によって第2シリンダー21内の収納位置まで後退する。このように、第2ノズル22は収納位置と前進位置を往復移動する。
【0027】
第2ノズル22が収納位置から前進位置まで前進している間、第2シリンダー11に流入した洗浄水の一部は、第2ノズル22の側面と第2シリンダー21の先端部の挿通口の内周面との間の隙間から排出される。第2ノズル22が前進位置に前進すると、第2ノズル22の先端部の上面に設けられた噴出孔22Aから噴出する。その際、第2ノズル22の側面と第2シリンダー21の先端部の挿通口の内周面との間の隙間から洗浄水は排出されない。第2シリンダー21への洗浄水の供給が停止し、第2ノズル22が前進位置から収納位置まで後退している間、第2シリンダー21内の洗浄水は、第2ノズル22の側面と第2シリンダー21の先端部の挿通口の内周面との間の隙間から排出される。
【0028】
この局部洗浄装置は、外部から水用給水路1を介して水が供給され、温水用給湯路2を介して温水が供給される。この局部洗浄装置は、供給された水と温水とを混合して設定温度の洗浄水にする温水供給装置30を備えている。
【0029】
また、この局部洗浄装置は、温水供給装置30の下流側に連通し、設定温度の洗浄水を第1シリンダー11の後端面に設けられた流入口と第2シリンダー21の後端面に設けられた流入口とに供給する給水路を備えている。この給水路は、上流端が温水供給装置30に連通した第1給水路S1と、第1給水路S1の下流端で分岐された第2給水路S2及び第3給水路S3とにより構成されている。第2給水路S2は下流端が第1シリンダー11の後端面に設けられた流入口に連通している。第3給水路S3は下流端が第2シリンダー21の後端面に設けられた流入口に連通している。
【0030】
第1給水路S1には、上流側から順に、温度センサー31、第1開閉弁32、減圧弁33、流量調整弁34、及び大気開放弁35が設けられている。また、第1給水路S1が第2給水路S2と第3給水路S3とに分岐する個所に切替弁36が設けられている。
【0031】
温度センサー31は第1給水路S1を流れる洗浄水の水温を検知する。第1開閉弁32は第1給水路S1を開閉する。減圧弁33は第1給水路S1を流れる洗浄水の給水圧を設定圧力以下にする。流量調整弁34は第1給水路S1を流れる洗浄水の流量を調整する。大気開放弁35は、第1給水路S1に洗浄水が流れていない状態で第1給水路S1内を大気に連通し、第1給水路S1に洗浄水が流れている状態で大気との連通を遮断する。切替弁36は洗浄水の供給先を肛門洗浄用ノズル10の第1シリンダー11に連通している第2給水路S2又はビデ洗浄用ノズル20の第2シリンダー21に連通している第3給水路S3に切り替える。
【0032】
第1給水路S1は、温度センサー31の下流側であり、かつ第1開閉弁32の上流側で排水路S4を分岐している。排水路S4の下流端は、この局部洗浄装置が組み込まれた便座装置が水洗式便器に取り付けられた際、水洗式便器の便鉢に向けて開口するように形成されている。排水路S4には、第2開閉弁40が設けられている。
【0033】
この局部洗浄装置は図示しない操作部を有している。この操作部は、肛門洗浄スイッチ、ビデ洗浄スイッチ、洗浄停止スイッチ、及び洗浄強さ調整ダイアルを有している。また、この局部洗浄装置は便座装置の便座に使用者が着座していることを検知する図示しない着座センサーを備えている。
【0034】
さらに、この局部洗浄装置は、肛門洗浄スイッチ、ビデ洗浄スイッチ及び洗浄停止スイッチの操作信号及び着座センサーの着座及び離座信号を受けて、第1開閉弁32、切替弁36及び第2開閉弁40を駆動する制御装置Cを備えている。
【0035】
洗浄強さ調整ダイアルは流量調整弁34に連動している。この局部洗浄装置を使用する使用者が、調整ダイアルを操作することによって、第1ノズル11の噴出孔12A又は第2ノズル21の噴出孔22Aから噴出する洗浄水の水勢を調整することができる。
【0036】
次に、このように構成された局部洗浄装置の肛門洗浄及びビデ洗浄の動作を説明する。
【0037】
[肛門洗浄]
図2(A)及び図3に示すように、待機状態では第1開閉弁32、第2開閉弁40は閉弁した状態であり、切替弁36は第1給水路S1と肛門洗浄用ノズル10の第1シリンダー11に連通している第2給水路S2とが連通するように切り替えられている。
【0038】
肛門洗浄スイッチが操作されると、制御装置CにON信号が送信される。すると、制御装置Cは第2開閉弁40を開弁する。また、制御装置Cは、温度センサー31が第1給水路S1を流れる洗浄水の水温が設定温度になったことを検知すると、第2開閉弁40を閉弁する。このようにして、局部洗浄装置の外部から温水用給湯路2を介して供給される温水の温度が低く、第1給水路S1を流れる洗浄水の水温が設定温度に達しない洗浄水を排水路S4を介して水洗式便器の便鉢に排水することができる(便鉢排水工程)。
【0039】
次に、図2(B)及び図3に示すように、制御装置Cは、第2開閉弁40を閉弁するとともに、設定時間の間、第1開閉弁32を開弁し、かつ第1給水路S1とビデ洗浄用ノズル20の第2シリンダー21に連通している第3給水路S3とが連通するように切替弁36を切り替える。これによって、排水路S4を分岐した箇所よりも下流側の第1給水路S1内に滞留していた洗浄水をビデ洗浄用ノズル20の第2ノズル22と第2シリンダー21との隙間から排出することができる(捨て水工程)。
【0040】
この際、第2シリンダー21の空気孔21Aの詰まり等によって、先の肛門洗浄又はビデ洗浄の際の洗浄水が第2シリンダー21と第2ノズル22との隙間に滞留していたりすると、第2ノズル22が第2シリンダー21の先端よりも前進してしまうことがある。
【0041】
次に、図2(C)及び図3に示すように、制御装置Cは、設定時間の間、第1開閉弁32を閉弁し、第2シリンダー21への洗浄水の供給を中断する。また、制御装置Cは、第1給水路S1と肛門洗浄用ノズル10の第1シリンダー11に連通している第2給水路S2とが連通するように切替弁36を切り替える。これによって、捨て水工程において、仮に第2ノズル22が第2シリンダー21の先端よりも前進したとしても、第1開閉弁32を閉弁している間に、スプリングの弾性力によって、第2ノズル22は後退し、第2シリンダー21内の収納位置に収納される(中断工程)。
【0042】
次に、図2(D)及び図3に示すように、制御装置Cは第1開閉弁32を開弁する。これによって、第2給水路S2を介して肛門洗浄用ノズル10の第1シリンダー11洗浄水が供給される。第1ノズル12は、第1シリンダー11の後端面に設けられた流入口から流入する洗浄水の水圧によって、第1シリンダー11の挿通口から前進位置まで前進し、先端部の上面に設けられた噴出孔12Aから洗浄水が噴出する(洗浄工程)。
【0043】
ビデ洗浄用ノズル20の第2ノズル22は第2シリンダー21内の収納位置に収納されているため、肛門洗浄用ノズル10の第1ノズル12が前進する際にビデ洗浄用ノズル20の第2ノズル22に交差して干渉することを防止することができる。
【0044】
洗浄停止スイッチが操作されると、制御装置Cは第1開閉弁32を閉弁し、洗浄工程を終了する。
【0045】
洗浄工程を終了した後、図3に示すように、第1ノズル12が後退し、第1シリンダー21内の収納位置に収納されるまでに、制御装置Cは、所定時間の間、第1給水路S1とビデ洗浄用ノズル20の第2シリンダー21に連通している第3給水路S3とが連通するように切替弁36を切り替える。その後、制御装置Cは、第1給水路S1と肛門洗浄ノズル10の第1シリンダー11に連通している第2給水路S2とが連通するように切替弁36を切り替える(第1ノズル後退工程)。
【0046】
このようにして、第1ノズル12が第1シリンダー11内の収納位置に良好に収納され、待機状態に復帰する。
【0047】
[ビデ洗浄]
図4に示すように、肛門洗浄と同様、待機状態では第1開閉弁32、第2開閉弁40は閉弁した状態であり、切替弁36は第1給水路S1と肛門洗浄用ノズル10の第1シリンダー11に連通している第2給水路S2とが連通するように切り替えられている。
【0048】
ビデ洗浄スイッチが操作されると、制御装置CにON信号が送信される。すると、肛門洗浄と同様に便鉢排水工程が実行される。
【0049】
次に、制御装置Cは、第2開閉弁40を閉弁するとともに、設定時間の間、第1開閉弁32を開弁する。これによって、温水供給装置30よりも下流側であって、排水路S4を分岐した箇所よりも下流側の第1給水路S1内に滞留していた洗浄水を肛門洗浄用ノズル10の第1ノズル12と第1シリンダー11との隙間から排出する(捨て水工程)。
【0050】
この際、第1シリンダー11の空気孔11Aの詰まり等によって、先の肛門洗浄又はビデ洗浄の際の洗浄水が第1シリンダー11と第1ノズル12との隙間に滞留していたりすると、第1ノズル12が第1シリンダー11の先端よりも前進してしまうことがある。
【0051】
次に、制御装置Cは、設定時間の間、第1開閉弁32を閉弁し、第1シリンダー11への洗浄水の供給を中断する。また、制御装置Cは、第1給水路S1とビデ洗浄用ノズル20の第2シリンダー21に連通している第3給水路S3とを連通するように切替弁36を切り替える。これによって、捨て水工程において、仮に第1ノズル12が第1シリンダー11の先端よりも前進したとしても、第1開閉弁32を閉弁している間に、スプリングの弾性力によって、第1ノズル12は後退し、第1シリンダー11内の収納位置に収納される(中断工程)。
【0052】
次に、制御装置Cは第1開閉弁32を開弁する。これによって、第3給水路S3を介してビデ洗浄用ノズル20の第1シリンダー21洗浄水が供給される。第2ノズル22は、第2シリンダー21の後端面に設けられた流入口から流入する洗浄水の水圧によって、第2シリンダー21の挿通口から前進位置まで前進し、先端部の上面に設けられた噴出孔22Aから洗浄水が噴出する(洗浄工程)。
【0053】
肛門洗浄用ノズル10の第1ノズル12は第1シリンダー11内の収納位置に収納されているため、ビデ洗浄用ノズル20の第2ノズル22が前進する際に肛門洗浄用ノズル10の第1ノズル12に交差して干渉することを防止することができる。
【0054】
洗浄停止スイッチが操作されると、制御装置Cは第1開閉弁32を閉弁し、洗浄工程を終了する。
【0055】
洗浄工程を終了した後、第2ノズル22が後退し、第2シリンダー21内の収納位置に収納されるまでに、制御装置Cは、所定時間の間、第1給水路S1と肛門洗浄用ノズル10の第1シリンダー11に連通している第2給水路S2とが連通するように切替弁36を切り替える。その後、制御装置Cは、第1給水路S1とビデ洗浄ノズル20の第2シリンダー21に連通している第3給水路S3とが連通するように切替弁36を切り替える(第1ノズル後退工程)。
【0056】
このようにして、第2ノズル22が第2シリンダー11内の収納位置に良好に収納される。そして、制御装置Cが、第1給水路S1と肛門洗浄用ノズル10の第1シリンダー11に連通している第2給水路S2とが連通するように切替弁36を切り替え、待機状態に復帰する。
【0057】
この局部洗浄装置は、第1開閉弁32の開閉と、切替弁36の切り替えとによって、捨て水工程、中断工程、及び洗浄工程を容易に実行することができる。さらに、この局部洗浄装置は、肛門洗浄用ノズル10、ビデ洗浄用ノズル20、給水路(第1給水路S1、第2給水路S2、第3給水路S3)及び切替弁36の構造を簡易にすることができ、小型化を図ることができる。
【0058】
したがって、実施例の局部洗浄装置の制御方法及び局部洗浄装置は、簡易な構造で小型化を図ることができ、肛門洗浄用ノズル10とビデ洗浄用ノズル20の干渉を防止することができる。
【0059】
この局部洗浄装置は、図5に示すように、肛門洗浄を終了し、肛門洗浄ノズル10の第1ノズル12が後退して、第1シリンダー11内の収納位置に収納された後、又はビデ洗浄を終了し、ビデ洗浄ノズル20の第2ノズル22が後退して、第2シリンダー21内の収納位置に収納された後であって、着座センサーが使用者の便座からの離座を検知すると、制御装置Cは切替弁36を設定した時間間隔で4回、切り替える(残留水抜き工程)。
【0060】
つまり、制御装置Cは、着座センサーのOFF信号を受信すると、第1給水路S1とビデ洗浄用ノズル20の第2シリンダー21に連通している第3給水路S3とが連通するように切替弁36を切り替える。その後、設定時間経過後に制御装置Cは、第1給水路S1と肛門洗浄用ノズル20の第1シリンダー11に連通している第2給水路S2とが連通するように切替弁36を切り替える。制御装置Cは、この切替弁36の切り替え動作をさらに設定時間経過後に実行する。
【0061】
このように切替弁36を切り替えることによって、大気開放弁35を介して第1シリンダー11又は第2シリンダー21の内部が大気に開放されるため、第1シリンダー11又は第2シリンダー21の内部の状態を変動させることができる。つまり、洗浄水の表面張力等が原因で残留している洗浄水を第1ノズル12と第1シリンダー11との隙間、及び第2ノズル22と第2シリンダー21との隙間から確実に排出することができる。このため、次の肛門洗浄又はビデ洗浄の際の捨て水工程において、第1シリンダー11及び第2シリンダーには、洗浄水が残留しておらず、温水供給装置30よりも下流側であって、排水路S4を分岐した箇所よりも下流側の第1給水路S1内に滞留していた洗浄水が供給された際に、第1ノズル12又は第2ノズル22が第1シリンダー11又は第2シリンダー21の先端から前進することを防止することができる。よって、その後の洗浄工程において、肛門洗浄用ノズル10とビデ洗浄用ノズル20の干渉を防止することができる。
【0062】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、外部から供給された水と温水とを混合して設定温度の洗浄水にする温水供給装置を用いていたが、温水供給装置は、外部から水のみを供給して設定温度にする電気式温水器であってもよい。この場合、肛門洗浄及びビデ洗浄の初期に設定温度以下の温水が温水供給装置から流出しないため、給水路を分岐した排水路を設けなくてもよい。また、この場合、温度センサーを給水路に設けなくてもよい。
(2)実施例では、残留水抜き工程を着座センサーが使用者の便座からの離座を検知して実行したが、前進位置に前進していた第1ノズル又は第2ノズルが後退して対応する第1シリンダー又は第2シリンダー内に収納された後であれば、いつでも残留水抜き工程を実行してもよい。
(3)実施例では、残留水抜き工程において切替弁を4回、切り替え動作をしたが、2回以上であれば、何回切り替え動作をおこなってもよい。
(4)実施例では、残留水抜き工程を有していたが、残留水抜き工程を有さなくてもよい。
(5)実施例では、第1シリンダー及び第2シリンダーに空気孔を貫設していたが、第1シリンダー及び第2シリンダーに空気孔を貫設しなくてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…肛門洗浄用ノズル
11…第1シリンダー
12…第1ノズル
12A…噴出孔
20…ビデ洗浄用ノズル
21…第2シリンダー
22…第2ノズル
22A…噴出孔
30…温水供給装置
32…第1開閉弁(開閉弁)
35…大気開放弁
36…切替弁
S1、S2、S3…給水路(S1…第1給水路、S2…第2給水路、S3…第3給水路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シリンダーと、この第1シリンダー内に収納された収納位置とこの第1シリンダーに流入する洗浄水の水圧によって前進した前進位置との間を往復移動し、先端部の上面に設けられた噴出孔から洗浄水を噴出する第1ノズルとを有する肛門洗浄用ノズルと、
第2シリンダーと、この第2シリンダー内に収納された収納位置とこの第2シリンダーに流入する洗浄水の水圧によって前進した前進位置との間であって、往復移動する前記第1ノズルの軌道と交差する軌道上を往復移動し、先端部の上面に設けられた噴出孔から洗浄水を噴出する第2ノズルとを有するビデ洗浄用ノズルと、
前記第1シリンダーと前記第2シリンダーとに分岐して連通した給水路と、
この給水路に温水を供給する温水供給装置とを備えた局部洗浄装置の制御方法であって、
肛門洗浄又はビデ洗浄の実行によって、対応する前記第1ノズル又は前記第2ノズルの一方のノズルの前記噴出孔から洗浄水を噴出する際、
前記第1ノズル又は前記第2ノズルの他方のノズルに対応する前記第1シリンダー又は前記第2シリンダーに前記温水供給装置の下流側に滞留していた洗浄水を供給して前記第1ノズルと前記第1シリンダーとの隙間又は前記第2ノズルと前記第2シリンダーとの隙間から排出する捨て水工程と、
前記捨て水工程後に第1シリンダー及び第2シリンダーに対して洗浄水の供給を中断する中断工程と、
前記中断工程後に前記第1シリンダー又は前記第2シリンダーの一方に洗浄水を供給して前記第1ノズル又は前記第2ノズルの一方のノズルの前記噴出孔から洗浄水を噴出する洗浄工程とを有していることを特徴とする局部洗浄装置の制御方法。
【請求項2】
前記局部洗浄装置は、前記給水路を開閉する開閉弁と、前記給水路の前記第1シリンダーと前記第2シリンダーとに連通する分岐個所に設けられて洗浄水の供給先を前記第1シリンダー又は前記第2シリンダーに切り替える切替弁とを備えており、
前記捨て水工程において、前記開閉弁を開弁し、前記切替弁を前記第1ノズル又は前記第2ノズルの他方のノズルに対応する前記第1シリンダー又は前記第2シリンダーに洗浄水を供給するように切り替えて、前記温水供給装置の下流側に滞留していた洗浄水を前記第1ノズルと前記第1シリンダーとの隙間又は前記第2ノズルと前記第2シリンダーとの隙間から排出し、
前記中断工程において、前記開閉弁を閉弁して洗浄水の供給を中断しつつ、前記切替弁を前記第1ノズル又は前記第2ノズルの一方のノズルに対応する前記第1シリンダー又は前記第2シリンダーに洗浄水を供給するように切り替え、
前記洗浄工程において、前記開閉弁を開弁して、前記第1ノズル又は前記第2ノズルの一方のノズルの前記噴出孔から洗浄水を噴出することを特徴とする請求項1記載の局部洗浄装置の制御方法。
【請求項3】
前記局部洗浄装置は、前記給水路の前記開閉弁と前記切替弁との間に設けられた大気開放弁を備えており、
前記開閉弁を閉弁して前記洗浄工程を終了し、かつ前記第1ノズル又は前記第2ノズルの一方のノズルが後退して対応する前記第1シリンダー又は前記第2シリンダー内の収納位置に収納された後に、前記切替弁を複数回切り替える残留水抜き工程を有していることを特徴とする請求項2記載の局部洗浄装置の制御方法。
【請求項4】
第1シリンダーと、この第1シリンダー内に収納された収納位置とこの第1シリンダーに流入する洗浄水の水圧によってこの第1シリンダーの先端から前進した前進位置との間を往復移動し、先端部の上面に洗浄水を噴出する噴出孔が設けられた第1ノズルとを有する肛門洗浄用ノズルと、
第2シリンダーと、この第2シリンダー内に収納された収納位置とこの第2シリンダーに流入する洗浄水の水圧によってこの第2シリンダーの先端から前進した前進位置との間であって、往復移動する前記第1ノズルの軌道と交差する軌道を往復移動し、先端部の上面に洗浄水を噴出する噴出孔が設けられた第2ノズルとを有するビデ洗浄用ノズルと、
前記第1シリンダーと前記第2シリンダーとに分岐して連通した給水路と、
この給水路に温水を供給する温水供給装置と、
この給水路を開閉する開閉弁と、
この給水路の前記第1シリンダーと前記第2シリンダーとに分岐する個所に設けられて洗浄水の供給先を前記第1シリンダー又は前記第2シリンダーに切り替える切替弁と、
この給水路の前記開閉弁と前記切替弁との間に設けられた大気開放弁とを備えた局部洗浄装置の制御方法であって、
前記開閉弁を閉弁して肛門洗浄又はビデ洗浄を終了し、かつ前記第1ノズル又は前記第2ノズルの一方のノズルが後退して対応する前記第1シリンダー又は前記第2シリンダー内の収納位置に収納された後に、前記切替弁を複数回切り替える残留水抜き工程を有していることを特徴とする局部洗浄装置の制御方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の局部洗浄装置の制御方法が組み込まれた制御装置を備えていることを特徴とする局部洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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