説明

局部洗浄装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人体局部に洗浄水を噴出口から噴出して当該局部を洗浄する局部洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年では、人体局部の洗浄を行なうに当たり、単なる洗浄水ではなく、空気を混入させた気泡水が用いられつつある。例えば、特開昭56−70338号では、洗浄水の洗浄用ノズルと当該ノズルに洗浄水を供給する配管系と、この配管流路を流れる洗浄水に気泡を混入させる局部洗浄装置とを備え、気泡を含む洗浄水を噴出する技術が提案されている。こうすることで、噴出洗浄水の洗浄力を高めたり、ソフトな洗浄感を与えている。この局部洗浄装置では、洗浄水と空気との比で定義される空気混入率を変更する手法として、空気ポンプの出力を変更する制御や、流量調整弁の開度制御により行なっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、空気流量や洗浄水流量を変更しても、その応答遅れから、空気混入率が一時的に急激に変わって、使用者に不快感を与える場合があった。
【0004】本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、洗浄水への空気混入により節水の実効性を高めると共に、空気の混入の際に空気混入率の急激な変動に伴う不快感を生じさせない局部洗浄装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本発明にかかる局部洗浄装置は、洗浄用ノズルの噴出口から、洗浄水に空気を混入した気泡水を人体局部に向けて噴出して当該局部を洗浄する局部洗浄装置において、給水源から上記噴出口に至る洗浄水流路に設けられ、上記洗浄水流路に流れる洗浄水の流量Qwを調節する洗浄水量調節手段と、圧搾空気を出力する空気供給手段と、上記洗浄水流路に設けられ、上記空気供給手段からの圧搾空気を上記洗浄水流路の洗浄水に混合することにより気泡水を作成する空気混入手段と、上記空気供給手段から上記空気混入手段への空気流量Qaを調節する空気流量調節手段と、上記洗浄水量調節手段、上記空気流量調節手段及び空気供給手段の少なくとも一を制御することにより、空気流量Qaと洗浄水の流量Qwとの比の値Qa/Qwで定義される空気混入率λを調整する主制御部と、該主制御部による空気混入率λの変更をする際に、空気流量Qaの値を変更する制御を、洗浄水の流量Qwの値を変更する制御より前の段階から実行する緩和制御部と、を有する混入比調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】本発明にかかる局部洗浄装置は、給水源から供給される洗浄水を流す洗浄水流路に空気混入手段を備えており、この空気混入手段にて、洗浄水に、空気供給手段から供給される圧搾空気が混入されて、気泡水が作成される。この気泡水は、噴出口から人体局部に向けて噴出されることにより人体局部が洗浄される。このとき、気泡水の空気混入率λ、つまり、空気流量Qaと洗浄水の流量Qwとの比率Qa/Qwは、混入比調整手段によって、洗浄水量調節手段、空気流量調節手段及び空気供給手段の少なくとも一が制御されることにより調整される。
【0007】また、混入比調整手段は、緩和制御部を備えており、この緩和制御部は、空気混入率λの変更をする際に、空気流量Qaの値を変更する制御を、洗浄水の流量Qwの値を変更する制御より前の段階から、例えば、空気流量Qaを増大する場合に、洗浄水の流量Qwを遅れて実行する。すなわち、空気供給手段により供給される圧搾空気は、その空気流量Qaを変更すると、給水源から供給される洗浄水の流量Qwに対して応答遅れを生じるが、緩和制御部がこの応答遅れを緩和するから、空気混入手段により混合される際には、それらの変更量がほぼ同時に反映される。よって、空気混入率λの設定値を変更しても、気泡水の空気混入率λが急激に変動して使用者に不快感を与えることがない。
【0008】緩和制御部の好適な態様として、空気流量Qaの値を増減する立ち上がりの割合より、洗浄水の流量Qwを緩やかに増減する構成や、空気流量調節手段への出力しさらに所定時間経過した後に、洗浄水量調節手段に対して出力する構成や、フィードバック制御を実行する際におけるフィードバックゲインを小さくする構成を採ることができる。また、それらの洗浄水量調節手段を遅れて制御する時間は、空気流量Qaにしたがって変更して、きめ細かい制御を実行してよい。
【0009】
【発明の実施の形態】以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0010】次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は実施例の局部洗浄装置10の概略構成を表わしたブロック図、図2はこの局部洗浄装置10の制御系をリモートコントローラを中心に表わしたブロック図である。図示するように、この局部洗浄装置10は、洗浄水を一旦貯留して予め温水化し、この温水化した洗浄水を人体局部に噴出するいわゆる貯湯式のものである。
【0011】局部洗浄装置10は、洗浄水タンクとして機能する熱交換器12を備え、圧力調整機能を有する電磁止水弁14を経由して、図示しない水道管から洗浄水の供給を受ける。熱交換器12は、図示するように貯湯式であることから、洗浄水の温度変化や温調むらを低減できる利点がある。そして、この熱交換器12は、貯留した洗浄水を適温に温水化するためのヒータ16と、貯留洗浄水の水位を検知するための満水水位センサ18および下限水位センサ20と、洗浄水温度を検出する温度センサ22とを有する。このヒータ16は、電子制御装置24からの制御信号を受けてオン/オフし、各センサは、電子制御装置24に検出信号を出力する。電子制御装置24は、CPU、ROM、RAM等を有する論理演算回路として構成され、局部洗浄装置10における種々の制御を実行する。その一例として、電子制御装置24は、温度センサ22の検出した洗浄水温度に基づいてヒータ16をオン/オフ制御し、貯留洗浄水を適温に維持する。また、電子制御装置24は、満水水位センサ18および下限水位センサ20からの水位信号の入力状態に応じてヒータ16や電磁止水弁14を制御し、空炊き防止や水位維持を図る。
【0012】局部洗浄装置10は、熱交換器12からノズル装置26に至るまでの洗浄水供給系に、熱交換器12の側から、バキュームブレーカ28と流量調整弁30とを有する。バキュームブレーカ28は、管路を大気開放することで、ノズル装置26の側からの洗浄水の逆流を防止する。流量調整弁30は、電子制御装置24からの制御信号を受けて、ステッピングモータの駆動により、管路開放と流量調整を行なう電磁弁であり、後述する複数の流路に選択的に連通するモードと、全ポートを全開にするモードとを備えている。
【0013】また、局部洗浄装置10は、ノズル装置26から噴出される洗浄水を気泡混入の洗浄水とするため、空気供給系として、空気ポンプ32と、大気開放弁31と、流量調整弁34と、これらを接続する空気流路29とを有する。空気ポンプ32は、電子制御装置24からの制御信号に基づいて駆動し、流量調整弁34に空気を圧送する。この空気ポンプ32としては、約50000〜10000Pa(約0.5〜1.0kgfcm2)程度の圧送能力で定常運転できるものであればよく、ローリングポンプ、ベーンポンプ、ロータリーポンプ、リニアポンプ等の種々のタイプのものを採用できる。流量調整弁34は、電子制御装置24からの制御信号に基づいて管路開放と流量調整を行ない、その下流のノズル装置26に空気ポンプ32からの空気を送り込む。この流量調整弁34と流量調整弁30は、上記したそれぞれの管路の管路開放並びに流量調整を電子制御装置24からの制御信号に基づき同期して行なう。
【0014】また、大気開放弁31は、空気流路29に接続されて、該空気流路29内の圧力を逃がす弁である。図3は大気開放弁31の付近を示す断面図である。図3において、大気開放弁31は、弁室31aを形成するケーシング31bと、弁室31a内に配置された弁体31cと、弁体31cに付勢するスプリング31dとを備えている。上記弁室31aは、空気流路29に流路側流路31eを介して接続され、大気側開口31fを介して大気側に接続されている。よって、空気流路29は、流路側流路31e、弁室31a、大気側開口31fを通じて大気に接続されている。なお、弁体31cは、スプリング31dの付勢力により、通常、流路側流路31eを閉じている。この大気開放弁31は、空気流路29に所定値以上の圧力が加わると、流路側流路31eを介して弁体31cを押圧し、この弁体31cへの押圧力がスプリング31dの付勢力を上回ると開弁する。これにより、空気流路29は、大気開放される。後述する空気混入体60に異物が付着して詰まって空気流路29が閉塞された場合に、空気ポンプ32からの圧搾空気は、空気流路29内の圧力を高くする。そして、所定値以上になった場合に、大気開放弁31を通じて大気に連通する。したがって、空気流路29内の圧力は、所定値以上に高くならないことから、空気ポンプ32に過負荷を与えることがなく、また、他の部位にも故障を招くことがない。
【0015】局部洗浄装置10は、ノズル装置26を進退駆動させるため、ノズル駆動モータ33を有する。ノズル駆動モータ33は、図示しないプーリ、ベルト等を有する駆動伝達機構を介してノズル装置26と係合されている。このノズル駆動モータ33は、電子制御装置24からの制御信号により正逆回転駆動して、ノズル装置26を図示しない本体ケーシング内の待機位置からお尻洗浄位置あるいはその前方のビデ洗浄位置に進出させたり、両洗浄位置から待機位置に退避させる。
【0016】この他、局部洗浄装置10は、使用者に操作されその使用意図を電気信号に変換して電子制御装置24に出力する操作部35と、図示しない便座に使用者が着座したことを検出する着座センサ36と、主電源の操作部である電源投入部38とを有する。操作部35は、局部洗浄に付随する種々の指令を使用者のボタン操作に伴い電子制御装置24に出力すべく、各種の操作ボタンを備える。本実施例では、局部の洗浄を開始するためのお尻洗浄ボタン71aやビデ洗浄ボタン71b、停止ボタン71c、水勢などに強弱の変化をつけた洗浄水の噴出を設定するマッサージ設定ボタン71d、ノズル装置26を揺動させた局部の洗浄を設定するムーブ設定ボタン71e、お尻噴出口49の周囲を洗浄するためのノズル洗浄ボタン71f等の動作指令ボタンや、洗浄水の温度を調節する吐水温設定ボタン71g、洗浄強度を設定する洗浄強度設定ボタン71h、空気と洗浄水との割合を設定する混合比設定ボタン71i、などの各設定ボタンと、洗浄水の水量を設定する水量設定ボタン71j、気泡量設定ボタン71k、温水洗浄便座全体の運転状態を設定する運転入/切ボタン71n等を設けている。また、この操作部35は、出力装置として、これらの各種操作ボタンによる操作の結果をランプや液晶によって表示する表示部72を、上記各ボタンと共に備える。
【0017】次に、局部洗浄装置10の洗浄動作の概略を、お尻洗浄を例として説明する。いま、操作部35のお尻洗浄ボタン71aが操作されると、操作部35は、お尻洗浄開始信号を電子制御装置24に送信する。電子制御装置24は、この信号を受けて、種々の制御対象機器に制御信号を送る。つまり、電磁止水弁14には管路を開く旨の制御信号を、空気ポンプ32には空気圧送を行なう旨の制御信号を、流量調整弁30と流量調整弁34とには管路開放並びに流量調整量(管路開放量)に関する制御信号を、ノズル駆動モータ33にはノズル装置26をお尻洗浄位置まで進出させる旨の制御信号をそれぞれ送信する。電磁止水弁14等の上記の各制御対象機器は対応する制御信号に基づいて駆動する。よって、ノズル装置26は、待機位置からお尻洗浄位置まで進出する。洗浄水供給系では、熱交換器12に洗浄水が流れ込み、その分の熱交換器内洗浄水(温水洗浄水)が、この熱交換器12からバキュームブレーカ28と流量調整弁30を経てノズル装置26に流れ込む。また、空気供給系では、空気ポンプ32の圧送した空気が流量調整弁34を経てノズル装置26に流れ込む。そして、後述するように洗浄水に空気が気泡状で分散混合した気泡流の洗浄水(図7参照)がノズル装置26から噴出され、この洗浄水によりお尻洗浄が行なわれる。なお、空気ポンプ32を圧送空気量が可変するよう構成並びに制御し、流量調整弁34を管路の開閉を行なう開閉弁とすることもできる。
【0018】このようにしてお尻洗浄を行なう際、電子制御装置24は、リモートコントローラの上記動作設定ボタンにて設定済みの洗浄水水勢の強弱等のお尻洗浄機能に関する現在の設定状態を検出する。そして、電子制御装置24は、洗浄水水勢に関する設定情報を流量調整量(管路開放量)として流量調整弁30に送信し、当該情報を受け取った流量調整弁30は、設定水勢となるように管路開度を調節する。この場合、本実施例では、後述するように空気混入を行なっていることから、この空気混入率λを考慮した管路開度とされる。また、電子制御装置24は、設定水勢、すなわち流量調整弁30による流量調整に基づいた空気の流量調整量(管路開放量)の制御信号を空気ポンプ32に送信するので、流量調整弁34は、後述の空気混入率λとなるよう、圧送空気量を調整する。
【0019】そして、操作部35の停止ボタン71cが操作されると、操作部35は、停止信号を電子制御装置24に送信するので、電子制御装置24は、上記各機器を元の状態に復帰させお尻洗浄を終了する。これにより、洗浄水並びに空気の供給は停止してノズル装置26は待機位置に退避し、局部洗浄装置10は、次回以降の局部洗浄に備える。
【0020】次に、この実施例(第1実施例)の局部洗浄装置10が有するノズル装置26について説明する。図4はノズル装置26の概略構成を示す概略断面図、図5R>5はノズル装置26の移動の様子を説明するための説明図である。
【0021】図示するように、ノズル装置26は、内部に洗浄水流路を有するノズル本体40と、その先端に着脱可能なノズルヘッド42と、ノズル本体基部側に位置して気泡混合並びに洗浄水切替を行なうための気泡混合・切替機構部44とを有する。ノズル本体40は、その軸線方向に沿って2系統の洗浄水流路を有し、小径の側の流路をお尻洗浄のためのお尻流路43とし、大径の側の流路をビデ洗浄のためのビデ流路45としている。この場合、お尻流路43は、その径が約1.9mmとされ、ビデ流路45は約2.5mmとされている。また、この両流路は、長短とされているが、この流路を通過する洗浄水速度を考慮するとほぼ同一流路長と仮定でき、本実施例では約95mmである。ノズルヘッド42は、シールリング46を介してノズル本体40先端に水密に取り付けられ、お尻流路43と同径でこれに連続したお尻噴出流路47とその先端のお尻噴出口49と、ビデ流路45と同径でこれに連続したビデ噴出流路51とその先端のビデ噴出口53とを有する。なお、ビデ噴出口53は、大小二つの噴出口からなり、ビデ噴出流路51を通過した洗浄水を両噴出口から同時に噴出する。
【0022】気泡混合・切替機構部44は、ノズル本体40に水密に固定されるケーシング55を備える。このケーシング55は、その底部のモータ連結体56でノズル駆動モータ33の動力を受け、ノズル本体40を上記した待機位置、お尻洗浄位置およびビデ洗浄位置に進退させる。ケーシング55の内部には、その周壁に沿って図中上下に摺動する空気室形成体58が水密に組み込まれている。空気室形成体58は、その内部に空気混入体60を備える。この空気混入体60は、ノズル本体40の側の支持体61とその反対側の支持体62とで、空気室形成体58の内壁から隙間を隔てて保持されている。また、空気室形成体58は、図示する上端側に空気室切替部63を備え、その下端側のケーシングとの間の間隙に、スプリング64を備える。そして、支持体62は、上記の流量調整弁30と接続され、その内部の洗浄水導入路65から、空気混入体60中央を貫通する貫通孔66に洗浄水を導き入れる。その一方、空気室切替部63は、上記の流量調整弁34と接続され、その内部に形成された空気導入路67から、空気室形成体58と空気混入体60との間の間隙に空気を導き入れる。このように洗浄水並びに空気が導かれる空気混入体60は、独立した開孔を形成する多孔質やメッシュであることから、上記のように導かれた空気を貫通孔66に通過させ、この貫通孔66において、洗浄水に空気を気泡状に混入させる。そして、気泡混入済みの洗浄水は、支持体61中央の貫通孔68を経て、上記のお尻流路43又はビデ流路45のいずれかに流れ込み、お尻洗浄あるいはビデ洗浄に供せられる。なお、気泡混入の様子並びに空気混入体60の製造手法については、後述する。
【0023】次に、上記の気泡混入済み洗浄水の供給先の切替の様子を、ノズル装置26の移動の様子と関連付けて説明する。図5に示すように、気泡混合・切替機構部44は、支持体62を下方に押し下げるための遮蔽ブロック69を有する。この遮蔽ブロック69は、ノズル装置26が上記した待機位置およびお尻洗浄位置に位置する場合には、図の左方側に示すように、支持体62と干渉しない位置に設置されている。よって、お尻洗浄ボタン71aが操作されてノズル装置26がお尻洗浄位置を採る場合には、空気室形成体58は、スプリング64の付勢力を受けて上方の初期位置(図の左方側)にある。この状態では、支持体61の貫通孔68とケーシング55のお尻側貫通孔70とが対向するので、気泡混入済み洗浄水は、ノズル本体40におけるお尻流路43を通過し、お尻噴出口49から噴出される。
【0024】その一方、ビデ洗浄ボタン71bが操作されてノズル装置26がお尻洗浄位置より前方のビデ洗浄位置まで前進すると、支持体62は、このノズル前進の間に遮蔽ブロック69と接触し、図の右方側に示すように、遮蔽ブロック69により下方に押し下げられる。よって、ノズル装置26がビデ洗浄位置を採る場合には、空気室形成体58は、スプリング64の付勢力に抗して上記の初期位置から流路切替位置(図の右方側)に移動する。この状態では、支持体61の貫通孔68とケーシング55のビデ側貫通孔71とが対向するので、気泡混入済み洗浄水は、ノズル本体40におけるビデ流路45を通過し、ビデ噴出口53から噴出される。なお、ノズル装置26がビデ洗浄位置から待機位置に復帰すると、空気室形成体58はスプリング64の付勢力を受けて初期位置に復帰し、次回のお尻洗浄・ビデ洗浄に備える。
【0025】次に、気泡混合・切替機構部44での洗浄水への空気混合の様子について説明する。この気泡混合・切替機構部44は、気泡ポンプとして機能することから、当該ポンプの概念を模式的に表わした図6の模式図として示すことができる。図6に示すように、この気泡ポンプ80は、気泡混合・切替機構部44における空気室形成体58に相当する空気混入混合筐体81と、その内部に空気室82を隔てて支持された気泡分散体83を有する。この気泡分散体83が、気泡混合・切替機構部44における空気混入体60である。この場合、洗浄水管路84の管路径や気泡分散体83の中央貫通孔径等は、気泡混合・切替機構部44における支持体62の洗浄水導入路65の管路径、空気混入体60の貫通孔66の径等と同じであり、約1.5〜3.0mmである。
【0026】気泡分散体83は、洗浄水管路84に連続した管路を形成し、当該管路を流れる洗浄水に接する面、すなわち管路壁面全周に、多数の独立開孔を備える。よって、空気導入管85から空気室82に圧送された空気は、気泡分散体83の上記の各独立開孔から管路内に送られ、各開孔箇所にて膨らむ。この場合、空気室82は、圧送された空気の圧力変動や圧力分布を吸収する緩衝領域として機能するので、空気は、著しい速度差を生じることなく気泡分散体83を通過する。そして、上記した空気の膨らみは、それぞれの開孔で洗浄水の流れから受ける剪断力により断ち切られて気泡となり、それぞれ個別に洗浄水に混入する。
【0027】本実施例では、気泡分散体83(空気混入体60)における上記の独立開孔を後述する形成材料の選定並びに工程設定を経て形成し、各独立開孔からの形成気泡の径が約100〜1000μmとなるようにした。よって、洗浄水には、このような微細な径の気泡が独立して混入・混合する。しかも、各気泡は、形成当初から独立気泡の状態を保ち、独立開孔にある程度依存した小さな径の略球形形状となるので、剛性が高く変形もしにくい。このため、混入した気泡の合一機会は低減すると共に、気泡合一自体をも起きにくくできるので、気泡分散体83により、洗浄水の流れを、空気が気泡状態で安定して分散混合した気泡流とできる。この際、各気泡は、上記したようにそれぞれの独立開孔から個別に形成されて独立気泡の状態で洗浄水に混入するので、高い分散効率で気泡が洗浄水に当初から混合する。つまり、気泡分散体83において空気の混入、微細化、分散混合が同時に行われることになる。
【0028】この気泡分散体83は、洗浄水管路84に連続した管路を形成しているので、洗浄水の流れに乱れやよどみを発生させることがなく、この乱れやよどみによる気泡合一の機会を低減できる。また、洗浄水管路84における洗浄水流れ方向に沿って独立開孔を多数有するので、この洗浄水流れ方向における多数箇所から気泡混入を図り気泡発生密度を低くできる。よって、大量の空気をこの気泡分散体83から混入させても、気泡生成時の気泡合一が発生しにくく微細な独立気泡を生成できる。
【0029】このように、上記の気泡ポンプ80として模式的に表わされた気泡混合・切替機構部44は、上記したように洗浄水に気泡を確実に分散混合させ気泡合一を起きにくくしている。よって、気泡混合・切替機構部44より下流の洗浄水の流れは、図7に示すような気泡流の洗浄水流(図7(a))となり、洗浄水に混入した気相が連続相として存在するスラグ流(図7(b))や環状流(図7(c))あるいは噴霧流(図7(d))の非所望の流動様相となることはない。従って、本実施例では、圧送空気の有する運動量(エネルギ)を、確実に、効率よく、迅速に洗浄水に伝達することができる。また、微細な気泡は剛性が高く変形しにくく、不要な運動をしないのでエネルギ損失は少ない。上記の気泡ポンプ80から噴出される洗浄水の流れの様子を写真撮影したところ、図8の写真の読取画像に示すように、この噴出洗浄水流は、噴出口から広がることなく真っ直ぐに噴出することが判明した。また、この噴出洗浄水流は、上記のように気泡が分散混合した気泡流であることから、乳白色であった。そして、本実施例では、このようにして得られた気泡流の状態で、洗浄水をノズル本体40におけるお尻流路43あるいはビデ流路45に送り込み、既述したお尻洗浄あるいはビデ洗浄に供せられる。
【0030】次に、上記の気泡混合・切替機構部44で得られる効果について、その模式的な構成を有する図6の気泡ポンプ80を用いて説明する。まず、空気混入による洗浄水の運動量増加効果について説明する。洗浄水の運動量は、気泡ポンプ80の噴出口から洗浄水を噴出させた場合、この噴出洗浄水がもたらす荷重で把握できる。よって、気泡ポンプ80の噴出口に対向して荷重側定器を配置し、この噴出洗浄水の荷重を、種々の空気混入率λの気泡流の洗浄水について測定した。その結果を図9に示す。なお、この図9における縦軸は、空気未混入の洗浄水(空気混入率λ=0)を気泡ポンプ80から噴出した場合に得られる荷重で除算した荷重比である。また、図9において本実施例とされているものは、気泡混合・切替機構部44と寸法等の点で同等の気泡ポンプ80を意味する。従来技術とされているものは、周壁に単一の空気混入孔を空けただけの管体を気泡分散体83に替わって組み込んだ空気混入手段を意味し、分岐管から管路内に単純に空気を混入させただけの従来の手法である。また、図中の理論値と示した直線は、以下のようにして導いたものである。
【0031】管路を通過する流体の運動量Euは、管路面積をS、流体密度をρ、流体速度をVとすると、次の式(1)と表わすことができる。
【0032】Eu=ρ・S・V2 …(1)
【0033】空気の密度ρaは水の密度ρwに比べて無視できるほど小さいので、洗浄水に空気を混入した混合洗浄水の密度は、空気混入率λη(空気流量/洗浄水流量)と洗浄水の密度ρwから、ρw/(1+η)となる。また、この混合洗浄水の速度は、空気混入率ληと洗浄水の速度Vから、V・(1+η)となる。よって、空気混入率ληの混合洗浄水の運動量Euは、次の式(2)と表わすことができる。
【0034】
Eu=(ρw/(1+η))・S・V2 ・(1+η)2=ρw・S・V2 ・(1+η) …(2)
【0035】そして、この式(2)の運動量を空気未混入の洗浄水(空気混入率λ=0)の運動量(ρw・S・V2 )で除算した運動量比(1+η)は、上記の荷重比に相当し、この運動量比が理論値として示されている。この理論値における混合洗浄水は、洗浄水に空気が理想的に分散混合した気泡流の洗浄水に他ならず、連続気相が存在するようなスラグ流等の非所望の流動様相の洗浄水ではない。よって、上記の荷重比がこの理論値に近似すればするほど、その洗浄水は空気が理想的に分散混合した気泡流であるといえる。
【0036】図9から、従来技術での荷重比は、1よりも低い空気混入率λの時点から上記の理論値と相違し、空気混入率λが約1.3となると、約1.5程度の荷重比しか得られない。よって、従来技術では、空気混入率λを洗浄水流量に対して1以上に高めても、洗浄水に空気が理想的に分散混合した気泡流を得ることはできず、スラグ流等の非所望の流動様相となるに過ぎない。このため、洗浄水への空気混入を通して節水化を図ろうとしても、この非所望の流動様相であるが故に、上記したように洗浄力が低下するので、空気混入を受ける洗浄水自体の流量増を必要とする。なお、この従来技術では、空気混入率λを約1.3以上としても荷重比に増大変化が見られないのは、従来技術の手法で空気混入率λを高めても、既述したようにこの空気混入率λでは噴霧流に相転してしまい、それ以上の運動量増大を得ることができないからだと考えられる。
【0037】これに対し、本実施例では、空気混入率λがほぼ4に近くなるまで、上記の理論値と合致し、最高で約4.5という高い荷重比を得ることができた。よって、本実施例によれば、従来技術にあっては噴霧流に相転してしまう1.3以上という高い空気混入率λとしても、洗浄水に空気が理想的に分散混合した気泡流を確実に得ることができる。よって、この気泡流の洗浄水とすることを通して、洗浄水の運動量を空気混入により確実に増大できる。このため、少量の洗浄水で高い洗浄力を発揮でき、節水の実効性を高めることができる。これは、上記した独立開孔を有する空気混入体60(気泡分散体83)により、上記したように、空気の微細気泡での混入並びに分散混合を行なうからである。
【0038】次に、局部洗浄装置10による洗浄動作について、図10のタイミングチャートにしたがって説明する。いま、使用者が便座上に着座すると、着座センサ36がオンし(時点t1)、その旨の信号が電子制御装置24に入力される。電子制御装置24は、まず、ノズル装置26内に残っている洗浄水を除去する残水除去前処理を実行する。残水除去前処理は、空気ポンプ32を所定時間T1だけ駆動することにより行なわれる。図11R>1はノズル装置26への流路26aに残っている水が除去される様子を説明する説明図である。図11に示すように、空気ポンプ32の駆動により流路に空気が吹き込まれると、流路内の気圧が低くなって、流路の上流側の洗浄水、つまりノズル装置26の頂部より低い位置にある流路26aの洗浄水もサイホン作用によって、流路26aの下流側へ吸引されて、お尻噴出口49を通じて排出される。この残水除去前処理により、後述するノズル前洗浄の時間が短いか、あるいは省略する場合に、冷水が人体局部に向けて噴出されるのを防止する。
【0039】続いて、使用者が操作部35のお尻洗浄ボタン71aをオンすると(時点t2)、ノズル前洗浄処理が実行される。ノズル前洗浄処理は、空気ポンプ32を時点t2から所定時間T2だけ駆動し、時間Tb経過した時点t3にて電磁止水弁14を所定時間T3だけ開くことによって行なわれる。このとき、流量調整弁30は、3ポート同時吐水の位置にあるから、ノズル装置26の流路に洗浄水を流す。そして、空気ポンプ32の圧搾空気が洗浄水に混入されて気泡流となり、お尻噴出口49及びビデ噴出口53の両噴出口から吐水される。このように気泡流がお尻噴出口49などから噴出することによりお尻噴出口49の周辺のノズル洗浄が行なわれる。
【0040】このとき、ノズル洗浄時間T3は、便座に着座してからお尻洗浄ボタン71aを押すまでの時間Tp1によって決められる。すなわち、この時間Tp1は、着座センサ36から着座した旨の信号を受けてからお尻洗浄ボタン71aが押されるまでの用便をしていた時間であり、この時間Tp1が長いほどお尻噴出口49の周辺が汚れる可能性が大きい。したがって、時間Tp1が長い場合には、ノズル洗浄時間T3が長くなり、お尻噴出口49の周辺が充分に洗浄され、一方、時間Tp1が短い場合には、ノズル洗浄時間T3が短くなり、人体局部の洗浄が直ちに開始され使い勝手がよい。
【0041】なお、ノズル洗浄の際には、時間T3を変更するほか、空気混入率λの変更を合わせて行なうか、または空気混入率λの変更を単独で行なって、適切な洗浄力で行なうようにしてもよい。このようなノズル前洗浄処理において、空気ポンプ32を駆動して空気を混入した気泡流により行なうので、少ない水量であっても、強い水勢によりお尻噴出口49の付近を洗浄することができ、よってその優れたノズル洗浄効果を得ることができる。しかも、洗浄水に混入される気泡は、100〜1000μmの微少なものであり、この混入によって超音波振動を生じて、一層、洗浄効果を高めることができる。
【0042】そして、ノズル前洗浄を終えるために電磁止水弁14が閉じられて、時間Tcだけ経過した後に空気ポンプ32が閉じられる。このように電磁止水弁14が開かれる前と閉じられた後の時間Tbにおいて、空気ポンプ32が駆動されており、これにより空気ポンプ32側の空気流路29側を洗浄水側の流路より高圧に維持する。このように空気流路29側を高圧に維持することにより、空気流路29に洗浄水が入り込まず、空気ポンプ32の故障の原因を招かない。また、空気流路29に洗浄水が入り込むと、空気混入体60が洗浄水に濡らされ、細菌を増殖させる要因になるが、このようなこともない。さらに、空気ポンプ32を駆動することにより空気流路29への逆流を防止しているので、空気流路29などに逆止弁などを設ける必要がなく、構成も簡単にできる。
【0043】続いて、電磁止水弁14を一旦閉弁するとともに空気ポンプ32を停止した状態にて、流量調整弁30のステッピングモータを原点に調節し、さらに水量設定ボタン71jの設定にしたがって流量調整弁30の開度を調節する。これと同時に、ノズル駆動モータ33を駆動することにより、ノズル装置26を待機位置から洗浄位置へ進出させる。
【0044】このノズル装置26の進出動作時に空気ポンプ32を停止させており、これにより、ノズル装置26のお尻噴出口49などから空気が吹き出されることがなく、使用者に不快感を与えることを回避している。なお、ノズル装置26の進出動作時に空気ポンプ32を停止させる制御を実行する態様のほかに、使用者に空気の噴出を感じない程度に、空気ポンプ32の出力を低減する制御を採ったり、噴出される空気を人体局部に向かわない方向へ逃がしたりする構成をとってもよい。
【0045】そして、ノズル装置26が洗浄位置まで進出した状態にて、時点t4にて、空気ポンプ32を駆動し、さらに所定時間Tb後に、電磁止水弁14を全開にする。これにより、ノズル装置26のお尻噴出口49から、洗浄水に空気が混入された気泡水が人体局部に向けて噴出されて該局部の洗浄が行なわれる。このとき、空気流量Qaと洗浄水流量Qwとの比である空気混入率λの値については、後述する。なお、この場合にも、電磁止水弁14が開かれる前の時間Tbだけ、空気ポンプ32が駆動されて、空気流路29側が高圧になり、空気流路29側に洗浄水が入り込むのを防止している。
【0046】そして、使用者が操作部35の停止ボタン71cを押すと(時点t5)、止水処理が行なわれる。すなわち、止水処理は、電磁止水弁14及び流量調整弁30を閉じて洗浄水の供給を停止すると共に、空気ポンプ32を停止して空気の供給を停止することにより行なわれる。この場合も、電磁止水弁14等を閉じて、時間Tb経過した後に、空気ポンプ32を停止させているので、空気流路29側が高圧に維持され、空気流路29に洗浄水が入り込まない。その後、ノズル駆動モータ33に駆動信号を出力することにより、ノズル装置26を洗浄位置から待機位置に後退させる。ノズル装置26は、待避移動時にも、進出時と同様に空気ポンプ32が停止しているので、お尻噴出口49などから空気が吹き出されることなく、使用者に不快感を与えない。
【0047】続いて、ノズル後洗浄処理が実行される。ノズル後洗浄処理は、ノズル前洗浄処理とほぼ同様な処理であり、つまり、流量調整弁30を3ポート同時吐水位置に移動するとともに空気ポンプ32を駆動した後に、電磁止水弁14を所定時間T4だけ開くことにより行なわれる。そして、所定時間T4が経過したときに、電磁止水弁14を閉じて、その後、空気ポンプ32を停止する。これにより、ノズル装置26のお尻噴出口49の周辺部が洗浄される。このとき、ノズル後洗浄を行なう時間T4は、お尻洗浄ボタン71aがオンされてから、停止ボタン71cが押されるまでの時間Tp2により定める。この時間Tp2は、洗浄動作開始から洗浄動作終了までの時間であり、この時間Tp2が長いほど、十分な洗浄が行なわれており、お尻噴出口49の周辺が汚れている可能性が大きい。したがって、洗浄の時間Tp2が長い場合には、ノズル後洗浄の時間T4を長くして、お尻噴出口49の周辺を充分に洗浄する。なお、ノズル洗浄の際には、時間T4を変更するほか、空気混入率λを変更する制御を合わせて行なうか、これを空気混入率λを変更する制御を単独で行なうことにより、適切な洗浄力でノズル後洗浄を行なってもよい。
【0048】続いて、使用者が便座から離れると(時点t6)、着座センサ36から離座信号が出力され、残水除去後処理が実行される。この残水除去後処理は、残水除去前処理と同様に、空気ポンプ32を所定時間T5だけ駆動することにより行なわれる。すなわち、電磁止水弁14を閉じて止水している状態にて、空気ポンプ32を駆動すると、ノズル装置26の流路に残っている洗浄水は、お尻噴出口49から排出される。これにより、ノズル装置26内に洗浄水が残らず、つまり空気混入体60を洗浄水で濡らした状態を維持しないので、雑菌の繁殖を防止する。この残水除去処理は、ノズル装置26が待機位置に戻ってから実行されるので、便座への着座時に空気ポンプ32から圧搾空気が送られて、ノズル装置26のお尻噴出口49から空気が吹き出されることがなく、使用者に不快感を与えない。
【0049】次に、局部洗浄装置10のお尻洗浄の際に、使用者の好みに合わせて、空気混入率λを変更する洗浄動作について説明する。電子制御装置24は、洗浄動作の前または本洗浄動作中に、所定時間毎の割込処理にて、気泡量設定ボタン71k及び水量設定ボタン71jにて設定された値を読み込み、これらの値に基づいて、流量調整弁30の開度及び、空気ポンプ32の出力と流量調整弁34の開度をそれぞれ制御して、洗浄水流量Qw及び空気流量Qaを定める。これにより、広範囲に空気混入率λを設定することができる。
【0050】図12は水量設定ボタン71jにより設定された水量設定値Qwsと洗浄水流量Qwとの関係を示すグラフであり、図13は気泡量設定ボタン71kにより設定された気泡量設定値Qasと空気流量Qaとの関係を示すグラフである。図12において、水量設定ボタン71jにより設定された水量設定値Qwsに基づいて洗浄水流量Qwが設定される。また、図13において、気泡量設定ボタン71kにより設定された気泡量設定値Qasに基づいて、水量設定値Qws毎に空気流量Qaが設定される。すなわち、水量設定ボタン71j及び気泡量設定ボタン71kのそれぞれの設定値であるレベル1〜5の5段階に対応した洗浄水流量Qw及び空気流量Qaが図12及び図13のマップにより定められている。
【0051】いま、使用者が、水量設定ボタン71jによって水量設定値Qws及び気泡量設定ボタン71kによって気泡量設定値Qasをレベル3にそれぞれ設定すると、図12に基づいて、洗浄水流量Qwが400ccにセットされ、さらに気泡量設定ボタン71kのレベル3でありかつ水量設定値Qwsのレベル3の直線に基づいて、空気流量Qaが500ccにセットされる。この洗浄水流量Qwに基づいて流量調整弁30の開度、及び空気流量Qaに基づいて空気ポンプ32及び流量調整弁34の開度が制御され、空気流量Qa及び洗浄水流量Qwの比で定義される空気混入率λが設定される。
【0052】このように水量設定ボタン71jにより水量設定値Qws及び気泡量設定ボタン71kにより気泡量設定値Qasをそれぞれ調節して空気混入率λを変更することにより、洗浄強度Wfを調節することができる。例えば、使用者が同じ水量設定値Qwsであっても、気泡量設定ボタン71kにより気泡量設定値Qasの値を上げることにより、空気流量Qaを増大させて洗浄強度Wfを増大させることができる。すなわち、上述したように、気泡水の洗浄力は、洗浄水のエネルギーに、つまり洗浄水流量Qwと速度に依存する。空気が混入されると、その空気混入率λによって、洗浄水のエネルギーが異なる。洗浄水流量Qwにて、空気を多く混入すると、流路面積が一定であるから、洗浄水の速度が増大して、洗浄水のエネルギーが増大する。よって、同じ水量であっても、空気流量Qaを増大することにより水勢を増大させることができる。一方、空気流量Qaを減少することにより、洗浄強度Wfが弱くなり、柔らかな洗浄感を得ることができる。このように、使用者が水量設定ボタン71jや気泡量設定ボタン71kを調節することにより、好みに合わせた洗浄強度Wfにより洗浄することができる。
【0053】図14及び図15は他の実施の形態を示し、図14は混合比設定ボタン71iにより設定される空気混入率λを示すグラフ、図15は水量設定ボタン71jにより設定される水量設定値Qwsと気泡水の噴出量Qawとの関係を示すグラフである。ここで、気泡水の噴出量Qawは、空気流量Qaと洗浄水流量Qwとの合計を表わしている。この実施の形態において、混合比設定ボタン71iにより混入率設定値λsをレベル1〜5のいずれかに設定すると、空気混入率λが設定される。そして、水量設定ボタン71jの洗浄水の水量設定値Qwsに基づいて、混入率設定値λsのレベル毎に、気泡水の噴出量Qaw、さらに空気流量Qaが求められる。これらの値に基づいて、流量調整弁30の開度及び、空気ポンプ32の駆動力と流量調整弁34の開度がそれぞれ制御され、好みに合わせた空気混入率λにて気泡水が噴出される。
【0054】図16及び図17は別の実施の形態を示し、洗浄強度設定ボタン71hの洗浄感Fsの設定値と洗浄水流量Qw及び空気流量Qaとの関係を示すグラフであり、図16は洗浄強度Wfのレベル1〜5までの5段階のうち、実線は洗浄強度Wfが3の値をとる場合を示し、図17は洗浄強度Wfが4の値をとる場合を示している。なお、図示していないが、これらのマップは洗浄強度Wfのレベル1〜5に合わせて5つ電子制御装置24に記憶されている。上記洗浄強度設定ボタン71hの洗浄強度Wfは、その強度の大きい方から順に、レベル1〜5の5段階に設定可能であり、また、洗浄感設定ボタン71mの洗浄感Fsは、空気混入率λが小さくなる方へ、レベル1〜5の5段階の値にそれぞれ設定可能である。
【0055】電子制御装置24は、洗浄強度設定ボタン71hで設定された洗浄強度Wf及び洗浄感設定ボタン71mで設定された洗浄感Fsのそれぞれの値を読み込み、例えば、洗浄強度Wfがレベル3に設定されている場合には、図16に示すマップが読み込まれる。次いで、このマップに基づいて、洗浄感Fsの値に対応する洗浄水流量Qw及び空気流量Qaが求められる。この場合において、使用者が洗浄強度Wfをレベル3の値に設定しても、洗浄感Fsをレベル1〜5のいずれかの値に設定することにより、空気混入率λの異なった値を選択することができる。例えば、洗浄感Fsをレベル1に設定すれば、洗浄水流量Qwが最小で、空気流量Qaが最大であるドライ感のある洗浄を選択することができ、また、洗浄感Fsをレベル5に設定すれば、洗浄水流量Qwが最大で、空気流量Qaが最小であるウェット感のある洗浄を選択することができる。この場合において、洗浄強度Wfは、レベル3で同じである。したがって、洗浄感設定ボタン71mの設定により同じ洗浄強度Wfであっても、水量の多いウェットな洗浄と、空気流量Qaの多いドライ感の洗浄とを使用者の好みに合わせて選択することができる。
【0056】図18は他の実施の形態における給水圧Pwと最大空気流量Qamaxとの関係を示すグラフである。すなわち、局部洗浄装置10には、給水源の給水圧Pwを検出する水圧センサ(図示省略)が設けられており、その水圧センサにより検出した給水圧Pwに基づいて、最大空気流量Qamaxが設定され、この範囲内にて空気混入率λが設定される。
【0057】すなわち、空気混入率λは、4を超えると、気泡水から噴霧流に変わることから、4以下に制御する必要がある。たとえば、給水源が水道直結タイプの場合に、給水圧Pwが所定圧Pwa以下に低下すると、洗浄水流量Qwが減少して、空気混入率λの値が高くなりやすいが、最大空気流量Qamaxが抑制されるから、空気混入率λが4を超えることがなく、よって気泡水から噴霧流に変わることがない。なお、給水圧Pwの低下の要因としては、給水用の水圧ポンプモータを用いている場合には、水圧ポンプモータの経年変化によりポンプ出力の変動などを生じたり、貯湯式タンクから便器に排水して圧力を低下した場合のように各種の状況に対応させるように構成することができる。
【0058】図19は別の実施の形態における給水圧Pwと空気流量Qaとの関係を示すグラフである。すなわち、給水圧Pwが一時的に低くなって洗浄水流量Qwが減少したときに、洗浄強度Wfが変わらないように空気流量Qaを増大し、つまり空気混入率λを高める。これにより、給水源の水圧の変動にかかわらず、一定の洗浄強度Wfが維持されて、使用者に不快感を与えることがない。
【0059】図20ないし図23は他の実施の形態にかかり、ノズル装置26から噴出される気泡水の吐水位置に応じて空気混入率λを変更する説明する図である。これらの実施の形態は、ノズル駆動モータ33によりノズル装置26を往復動させることにより洗浄位置を移動するとともに、その範囲内にて空気混入率λを変更する構成に特徴を有している。
【0060】図20は洗浄位置の中心付近で空気混入率λを小さく、つまり中心付近での洗浄水流量Qwを多くして、局部に強く付着している大便を除去する作用を高める。これにより、周辺部で空気混入率λが大きく、つまり洗浄水流量Qwが少なくなるから、体毛を濡らすことを少なくし、乾燥を容易にすることができる。また、逆に、図21に示すように、洗浄位置の中心付近での空気混入率λを大きくすることにより、人体局部の中心付近の汚物の付着量が多い場合に大きな洗浄強度Wfで洗浄することができる。さらに、図22に示すように、お尻洗浄の時にお尻の後方に向かうにしたがって空気混入率λを高くしたり、図23に示すように、ビデ洗浄の時に前方に向かうにしたがって空気混入率λを大きくしたりして、洗浄水流量Qwを少なくして衣服の濡れを予防することができる。このように、洗浄する人体局部の状態に応じて種々の空気混入率λに変更することができる。
【0061】図24及び図25は他の実施の形態にかかり、図24は瞬間式の熱交換器12Bを備えた局部洗浄装置10Bの概略構成図であり、図25は入水温度Twと、最大水量Qwmax及び最小空気混入率λminとの関係を示すグラフである。図24において、熱交換器12Bは瞬間式のヒータを備え、貯湯式タンクを有しないものであり、給水源から供給される洗浄水は、熱交換器12Bにて加熱された後に、ノズル装置26に供給される。したがって、給水される洗浄水を、入水温度Twから吐水温度設定値Tawsに向かうように、電子制御装置24によりヒータへの通電量がフィードバック制御される。
【0062】電子制御装置24は、図25に示すように、入水温度Twに応じて、最大水量Qwmax及び最小空気混入率λminを設定する。すなわち、最大水量Qwmaxは、入水温度Twによって定まり、つまり、入水温度Twの洗浄水を、熱交換器12Bにより吐水温度設定値Tawsまで加熱することができる洗浄水の流量で定まる。したがって、最大水量Qwmaxは、入水温度Twが低いほど、少ない流量となる。一方、最小空気混入率λminは、入水温度Twが低いときに大きく、空気混入率λの範囲が狭くなり、入水温度Twが高いときに小さい値まで許容する。
【0063】すなわち、入水温度Twが高いときには、空気混入率λが0から4までの広い範囲を許容するが、入水温度Twが低いときには、空気混入率λが最小空気混入率λmin以上の大きい範囲しか許容しない。したがって、寒冷地の冬季のように、入水温度Twが低く、その洗浄水の流量が熱交換器12Bによる最大沸かし上げ能力を上回るような場合にも、適切な洗浄強度Wf及び吐水温度設定値Tawsを確保したうえで、空気混入率λが大きい範囲になるように設定する。その結果、給水源からの洗浄水の入水温度Twが低くても、洗浄強度Wfを低下させることがなく、熱交換器12Bによって沸かすための洗浄水流量Qwが少なくてよく、所望の吐水温度設定値Tawsで気泡水を噴出させることができる。
【0064】なお、図24の実施の形態では、熱交換器12Bとして、瞬間式を用いたが、これに限らず、貯湯式タンクを備える場合であってもよい。すなわち、貯湯式タンクの場合において、貯湯式タンクの下部から入水されると、貯湯式タンクの一部の水が混ざり合い、一部が死水になり、所定温度以上で吐出される水量が少なくなる。このことから、少なくとも何分以上、所定以上の温水が維持されるように空気混入率λを調節するように制御することができる。しかも、貯湯式タンクの場合に、通常、400Wの熱交換器12Bを用いているが、空気混入率λを調節することにより、熱交換器12Bの容量を小さいもので済ますことができる。
【0065】また、上記実施の形態において、入水温度Twを検出するために、入水温センサを用いる代わりに、熱交換器12Bに供給した通電量に基づいて、たとえば、熱交換器12Bへ供給される通電量の微分値に基づいて算出してもよい。これにより、入水温センサが不要となり、構成を簡単にできる。
【0066】図26は他の実施の形態にかかり、洗浄時における空気混入率λの値を示すタイミングチャートである。本実施の形態では、使用者が混合比設定ボタン71iにより混入率設定値λsを設定しても、洗浄開始から所定時間Tst、異なった空気混入率λに制御することに特徴がある。図26(A)は混入率設定値λsより高い値に空気混入率λc1に設定する場合であり、図26R>6(B)は混入率設定値λsに空気混入率λc2を徐々に近づける場合であり、さらに図26(C)は混入率設定値λsより低い値に空気混入率λc3を低く設定する場合である。
【0067】図26(A)に示すように、お尻洗浄ボタン71aをオンした後に、所定時間Tst、空気混入率λを高くし、その後に使用者が設定した混入率設定値λsとなるように制御する。これは以下の理由による。図2323の瞬間式の熱交換器12Bの場合には、洗浄開始時に、ヒータの応答遅れから、洗浄水を吐水温度設定値Tawsまで加熱することができず、吐水温度Tawとの間に偏差を生じやすいが、空気混入率λを大きくして加熱する洗浄水流量Qwを少なくすることにより、これを補償するのである。すなわち、洗浄水流量Qwが減少した分は、空気混入率λの増加で補うことにより、洗浄強度Wfを低下させないようにして、使用者に不快感を与えない。
【0068】図26(B)に示すように、お尻洗浄ボタン71aをオンした後に、所定時間Tst、空気混入率λc2を低めの値から徐々に混入率設定値λsに近づけるように制御する。これにより、洗浄開始直後の所定時間Tstの間、洗浄強度Wfを変更しない範囲内にて、洗浄水流量Qwを多めに設定することから、人体局部に優しいソフトの洗浄を実現することができる。
【0069】図26(C)に示すように、お尻洗浄ボタン71aをオンした後に、所定時間Tst、空気混入率λc3を低めの値に混入率設定値λsを制御する。これにより、洗浄開始直後の所定時間Tstの間、洗浄強度Wfを変更しない範囲内にて、洗浄水流量Qwを多めに設定することから、粘着性の便の付着を容易にする。
【0070】なお、混入率設定値λsの値は、予め所定値に定めるほか、状況に応じて段階的または連続的に変動させてもよい。
【0071】次に、別の実施の形態にかかる洗浄水流量Qw及び空気流量Qaを変更する制御について説明する。図27は局部洗浄装置10の洗浄動作を示すタイミングチャートである。図10の洗浄動作では、洗浄水を流す前に空気ポンプ32を駆動することにより、空気流路29側を高圧に維持する制御を実行することにより、洗浄水に対して空気の応答遅れを回避しているが、図27R>7の洗浄動作では、これを洗浄水流量Qw及び空気流量Qaの変更の場合にも適用している。図27において、お尻洗浄ボタン71aを押した後に、時点tc4にて、吐水量設定ボタンにより噴出量設定値Qawsを高めている。このとき、まず、空気ポンプ32及び流量調整弁34への流量制御により空気流量Qaを増大させ、遅延時間Tb後に、流量調整弁30への制御により流量を調節している。また、時点tc5にて噴出量設定値Qawsを低めた場合には、空気流量Qaを減少させた後に、遅延時間Tb後に洗浄水流量Qwを減少させている。このように、噴出量設定値Qawsを変更した場合にも空気の応答遅れを回避している。これにより、噴出量設定値Qawsを変更しても、空気混入率λが急激に変動して使用者に不快感を与えることがない。
【0072】なお、図28に示すように、遅延時間Tbは、一定に設定するほか、空気流量Qaの偏差ΔQaに基づいて、その長さを変更してもよく、これにより一層、空気混入率λの急激な変動を抑制することができる。
【0073】また、図29に示すように、空気の応答遅れを回避する制御として、洗浄水流量Qwをフィードバック制御している場合において、洗浄水流量Qwを制御するフィードバックゲインを、空気流量Qaを制御するフィードバックゲインに対して小さくすることにより、意図的に緩やかな応答遅れを生じるように構成してもよい。
【0074】図30は他の実施の形態にかかるノズル前洗浄を説明するタイミングチャートである。図30において、着座センサ36により着座した旨の信号を出力されている状態にて、お尻洗浄ボタン71aがオンされたときに、ノズル前洗浄が実行されるが、このノズル前洗浄の時間は、前回の洗浄動作があってからの空き時間Tsoffに依存している。すなわち、図30において、前回の洗浄動作を終えて、着座センサ36がオフになってから(時点t6)、今回の洗浄動作において着座センサ36がオンになったときまでの空き時間Tsoffを測定する。そして、この空き時間Tsoffの長さに比例してノズル前洗浄の時間T3を長くする。
【0075】このノズル前洗浄処理について、図31のフローチャートにしたがって説明する。図31において、まず、着座センサ36がオフされたときに(ステップS52)、カウンタCstがインクリメントされる(ステップS54)。そして、続くステップS56にて、着座センサ36がオンされたか否かの判定が実行される。すなわち、ステップS52からステップS56までの処理にて、前回の離座から今回の着座までの空き時間Tsoffを測定する。そして、ステップS56にて着座センサ36がオンしていると判定されたときに、ステップS58にて、お尻洗浄ボタン71aが押されたかの判定が実行され、肯定判定されたときに、ステップS60にてノズル前洗浄を実行する。このときのノズル前洗浄の時間T3は、上記空き時間Tsoffの長さに比例して設定される。その後、カウンタCstがクリアされる(ステップS62)。
【0076】本ノズル前洗浄処理において、着座センサ36がオフされたとき、つまり離座したときから、今回の洗浄動作を行なおうとするまでの空き時間Tsoffが長いほど、ノズル洗浄が行なわれておらず、この空き時間Tsoff内に男子小用でお尻噴出口49の周辺が汚れる可能性が大きい。したがって、空き時間Tsoffが長い場合には、ノズル洗浄の洗浄時間が長く設定されるから、お尻噴出口49の周辺が充分に洗浄される。
【0077】なお、空き時間Tsoffの測定手段は、上述したように、着座センサの離座から着座までの時間を用いるほかに、停止ボタン71cの検出信号などを用いてもよく、いずれにしても、前回の前条動作の終了を判定してから、ノズル前洗浄までの時間を測定することができる手段であればよい。
【0078】また、ノズル前洗浄の際には、洗浄する時間を変更するほか、空気混入率λを変更する制御を合わせて行なうか、空気混入率λを変更する制御を単独で行なうことにより、適切な洗浄力でノズル前洗浄を行なってもよい。つまり、ノズル前洗浄の際に、空気ポンプ32を駆動して空気を混入した気泡流によりノズル装置26のお尻噴出口49の周辺を洗浄するために、少ない水量であっても洗浄力が増加して、お尻噴出口49の付近の洗浄効果を高めることができる。しかも、洗浄水に混入される気泡は、100〜1000μmの微少なものであり、この混入によって超音波振動を生じて、一層、洗浄効果を高めることができる。
【0079】図32は他の実施の形態にかかる残水除去処理を示すフローチャートである。図10に係る実施の形態では、着座センサ36からの検出信号がオフになったとき、つまり離座したときに(時点t6)、残水除去処理を実行したが、図32にかかる実施の形態は、離座した後における局部洗浄装置10を使用していない空きタイミングにて残水除去処理を実行する例である。
【0080】図32において、本処理は電子制御装置24によって所定時間毎の割込処理にて実行される。まず、ステップS102にて、着座センサ36からオフの信号が出力されたか否かが判定され、オフ信号が出力されたと判定された場合にはステップS104へ進み、所定時間が経過したか否かが判定され、肯定判定の場合には、ステップS106にてカウンタCwrがインクリメントされる。そして、ステップS108にてカウンタCwrが所定値Cwr0以上となったか否かが判定され、肯定判定の場合にステップ110にて、残水除去処理が実行され、さらにステップS112にてカウンタCwrがクリアされる。すなわち、洗浄を終えて離座した後であり、洗浄回数がカウンタCwrで設定された所定値Cwr0に達したときに、残水除去処理が実行される。したがって、図10に示すように、離座の後に直ちに残水除去処理を実行する代わりに、残水による雑菌の繁殖状況を勘案した適切な残水除去処理を行なうことができる。
【0081】なお、この残水除去処理において、上述したような、空気だけを流す態様のほか、殺菌用の薬液を混入した洗浄水を流した後に、空気を吹き出して空気混入体60などを乾燥することにより、雑菌の繁殖を一層抑制するようにしてもよい。また、残水除去処理の際に使用する洗浄水として、酸性水や塩素水などを用いれば、雑菌の繁殖の予防に対してより効果的であり、しかも水中のカルシウム、鉄、亜鉛、シリカなどによるスケール付着をも防止でき、好適である。
【0082】また、残水中における雑菌の繁殖力が大きい場合は、外気温が高い場合であることから、図32の残水除去処理のステップS106に代えて、図33のステップS106a〜S106dを実行してもよい。すなわち、外気温センサ(図示省略)からの検出信号を読み込み(ステップS106a)、その温度が所定温度以上でない場合には(ステップS106b)、カウンタCwrを1だけインクリメントし、一方、所定温度以上である場合にはカウンタCwrを2だけインクリメントする。すなわち、外気温が高い場合にはカウンタCwrのインクリメントの数を増やすことにより、残水除去処理の回数を多くし、これにより雑菌の繁殖を適切に予防することができる。
【0083】図34は別の実施の形態にかかるノズル洗浄処理を示すタイミングチャートである。本実施の形態は、人体局部の洗浄とは別に、清掃の際にノズル装置26を洗浄位置まで進出させてお尻噴出口49の周辺を清掃し易くする例である。図34において、操作部35のノズル洗浄ボタン71fをオンにすると、その旨の信号が電子制御装置24に送られる。電子制御装置24は、この信号を受けてノズル駆動モータ33を駆動して、ノズル装置26を待機位置から洗浄位置へ進出させる。その後、電磁止水弁14を開くとともに流量調整弁30を開く。これにより、電磁止水弁14からの水圧は、熱交換器12内の洗浄水に加わる。該洗浄水は、流量調整弁30を介してノズル装置26へ送り、お尻噴出口49から噴出する。このとき、お尻噴出口49から噴出される洗浄水流量Qwは、お尻洗浄時における洗浄水の流量より少なく設定されている。また、空気ポンプ32は、空気流路29側へ水が流入しない程度の小さな出力で駆動される。これにより、空気ポンプ32から圧搾空気がノズル装置26に圧送されず、洗浄水に空気が混入しない。そして、お尻噴出口49から噴出された洗浄水を利用してブラシなどで、お尻噴出口49の周辺を掃除することができる。
【0084】そして、掃除を終えて、ノズル洗浄ボタン71fをオフにすると(時点td2)、電磁止水弁14及び流量調整弁30が閉じることによりノズル装置26のお尻噴出口49からの洗浄水の噴出が停止し、さらにノズル駆動モータ33が駆動して、ノズル装置26が洗浄位置から待機位置へ待避する。
【0085】したがって、局部洗浄装置10では、ノズル装置26のお尻噴出口49の付近を掃除するために、ノズル装置26を待機位置から洗浄位置に進出させることができるとともに、そのお尻噴出口49から僅かに洗浄水が吐出されるので、お尻噴出口49の付近の掃除が簡単になる。このような洗浄水は、以下の効果もある。すなわち、お尻噴出口49から洗浄水が吐出されない場合に、洗剤などを用いて掃除すると、その洗剤がお尻噴出口49を詰まらせることもあるが、お尻噴出口49から吐出される洗浄水により洗剤が溶けるのでお尻噴出口49の付近が詰まることもない。しかも、ノズル装置26の洗浄時に、空気ポンプ32の駆動力が低められるから、空気の混入のために洗浄水が飛び散ることもなく、清掃作業に支障を生じない。
【0086】次に、局部洗浄装置10によるマッサージ機能について説明する。マッサージ機能は、人体局部への洗浄水の噴出により排便を促す機能であり、図10のタイミングチャートにおける時点t4からの本洗浄処理の際に、マッサージ吐水をするものである。すなわち、操作部35のマッサージ設定ボタン71dをオンにすると、その旨の信号が電子制御装置24に送られる。電子制御装置24は、この信号を受けてノズル装置26を待機位置から洗浄位置へ進出させた状態にて、空気ポンプ32を駆動すると共に流量調整弁34を開いて圧搾空気をノズル装置26へ供給するとともに、電磁止水弁14及び流量調整弁30を開いて洗浄水をノズル装置26へ供給する。ノズル装置26では、上記空気ポンプ32からの圧搾空気と熱交換器12からの洗浄水とを混合して、お尻噴出口49から噴出して人体局部に向けて噴出する。これと同時に、ノズル駆動モータ33を駆動してノズル装置26を軸方向に所定周波数(5〜40Hz)にて振動させ、お尻噴出口49から噴出される気泡水の噴出位置を変更する。これにより、人体局部に当たる気泡水は、周期的な刺激を受けて排便が促される。
【0087】ここで、人体局部を刺激する周期として、5〜40Hzを採ることにより、優れたマッサージ効果を得ることができる理由について説明する。
【0088】このような周波数の刺激がマッサージ洗浄にて効果を生じるかについて、人による体感試験により調べた。図36はマッサージ洗浄時における体感刺激を説明するグラフであり、横軸に周波数fm、縦軸に振動認知度を示す。ここに、振動認知度とは、気泡水を刺激として認識する度合いをいう。図36において、5〜30Hzの周波数にて、断続的な刺激を体感できたのに対して、従来の5Hz未満の周波数では、弱い不連続な刺激としか認識されず、また、30Hzを越える周波数では、連続的な刺激としか認識されなかった。
【0089】また、5〜40Hzの周波数範囲は、神経に鋭敏な刺激を与えることも医学的にも裏付けられている。すなわち、肛門・直腸部に、特定の周波数の振動を与えると、直腸内圧が高まり、肛門括約筋が弛緩を起こす。この周波数領域は、上述した5〜30Hzより広く、上述した人が認識されない30〜40Hzの振動を与えることにより、非常に高い排便促進効果が得られ、特に、中心周波数を15Hz前後して、10〜20Hz程度の範囲でもっとも効果的に振動効果を得ることができる。この効果は、最初、排便刺激効果が大きくない場合もあるが、継続することにより、人体内の学習的な作用によりその効果を高めることができる。このように、5〜30Hzの振動周波数を与えることにより、体感的な刺激を生じ、さらに5〜40Hzの周波数を与えることにより体内の括約筋への刺激を生じ、これらにより快適な使用感と高い排便促進効果を同時に得ることができる。なお、筋弛緩効果は、肛門などの括約筋だけでなく、骨格筋についても得られる。また、5〜10Hzの周波数では、体感的にも高い水量感を得ることができ、特に10〜20Hzにおいてその効果が大きい。
【0090】図37は空気流量及び洗浄水流量を周期的に増減させて、洗浄圧力を振動させた場合の洗浄圧力の時間的変化を示すグラフである。この場合における振動周波数は、15Hzであるが、その高調波も存在している。この高調波は、15Hzの振動周波数fのf/n(nは自然数)を基底振動数としかつ大きな振幅の振動であり、特に、低次のn=2程度で高調波成分が大きくなる。このような高調波は、基底周波数である15Hzと協同して人体の皮膚や括約筋などを刺激し、排便促進効果を一層促す。この高調波を主に人体局部を刺激するための周波数としても利用することができる。例えば、基底周波数を7.5Hzとすれば、15Hzの振動強度の高い第2次高調波(n=2)が得られる。したがって、刺激する周波数よりも低い周波数を用いることにより、制御を簡単にすることができる。
【0091】なお、気泡水によるマッサージ作用を得るための手段として、上記実施の形態のようにノズル装置26をノズル駆動モータ33により軸方向へ往復動させる手段のほか、人体局部に刺激を与える手段であれば各種の手段を採ることができる。例えば、流量調整弁30を上記周波数範囲にて開閉制御する手段や、流量調整弁30及び流量調整弁34を同時に制御することにより、空気混入率λを上記周波数範囲にて変動させる手段などを採ることができる。なお、空気混入率λを周期的に変動させる手段によれば、ノズル駆動モータ33による機械的駆動でないから、装置自体の寿命も長くすることができる。
【0092】次に、他の実施の形態にかかるマッサージ機能について説明する。本実施の形態は、気泡流と噴霧流とを繰り返すことによりマッサージ効果を得ようとする処理である。図9に示すように、空気混入率λによって洗浄水の荷重比が異なり、人体局部への刺激が異なる。しかも、空気混入率λを上げて、その値が4を境に、図7(a)〜図7(d)に示すように気泡流から、噴霧流に変わる。ここで、気泡流は、微細な粒子状に混合されている状態であり、噴霧流は、気泡同士が合体して空気層を形成し、洗浄水と分離している状態をいう。このような空気混入率λが約4を臨界点として変わることを利用してマッサージ作用を生じさせる。
【0093】すなわち、マッサージ設定ボタン71dが押されると、電子制御装置24は、ノズル装置26を進出させた状態にて、空気ポンプ32を駆動しかつ流量調整弁34を開くとともに、電磁止水弁14及び流量調整弁30を開いて、洗浄水及び空気をノズル装置26に供給する。空気混入率λは、気泡流または噴霧流とを繰り返す空気混入率4の付近に設定して、お尻噴出口49から噴出して人体局部に向けて噴出する。このような空気混入率λの値に設定することにより、自動的に気泡流と噴霧流とに周期的に変わり、これが局部を刺激して排便を促すマッサージ効果を生じる。
【0094】しかも、上記マッサージ機能によれば、ノズル駆動モータ33を駆動することなく、マッサージ作用を実現することができ、しかもノズル駆動モータ33の駆動によるマッサージよりも周波数の高い繰り返し状態を容易に実現することができる。しかも、ノズル駆動モータ33による機械的駆動でないから、装置自体の寿命も長くすることができる。
【0095】なお、洗浄水と空気とが混合された状態で、ノズル装置26の流路を通過する際に、空気塊が合流して噴霧流の状態になりやすいことから、ノズル装置26の流路の長さにおうじて空気混入率λを低めに設定することが必要であり、例えば、2〜2.5の空気混入率λで混合すれば、お尻噴出口49の付近にて臨界点に達して、気泡流と噴霧流とに交互に変えることができる。
【0096】さらに、上述した臨界点は、種々の条件により異なり、例えば、洗浄水水量を増加させると低下する。これは、水流が増大することにより乱れ強度が増大し、気泡の接触機会が増えて気泡の合一が促進されて、大きな気泡が作成やすくなるからである。したがって、洗浄水流量に応じて気泡流と噴霧流とを切り換えるための空気混入率を変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる局部洗浄装置10の概略構成を表わしたブロック図である。
【図2】この局部洗浄装置10の制御系をリモートコントローラを中心に表わしたブロック図である。
【図3】大気開放弁31の付近を示す断面図である。
【図4】ノズル装置26の概略構成を示す断面図である。
【図5】ノズル装置26の移動の様子を説明するための説明図である。
【図6】気泡ポンプ80による作用を説明する説明図である。
【図7】気泡流の変化の状態を説明する説明図である。
【図8】気泡流の写真の読取画像の様子を説明する説明図である。
【図9】空気混入率λと洗浄水荷重比との関係を示すグラフである。
【図10】お尻洗浄動作を示すタイミングチャートである。
【図11】ノズル装置26に接続される流路26aに残っている水が除去される様子を説明する説明図である。
【図12】水量設定ボタン71jにより設定される水量設定値Qwsと洗浄水流量Qwとの関係を示すグラフである。
【図13】気泡量設定ボタン71kにより設定される気泡量設定値Qasと空気流量Qaとの関係を示すグラフである。
【図14】混合比設定ボタン71iにより設定される混入率設定値λsと空気混入率λとを関係を示すグラフである。
【図15】水量設定ボタン71jにより設定される水量設定値Qwsと噴出量Qawとの関係を示すグラフである。
【図16】洗浄強度Wfがレベル3の場合における洗浄感Fsと洗浄水流量Qwとの関係を示すグラフである。
【図17】洗浄強度Wfがレベル4の場合における洗浄感Fsと洗浄水流量Qwとの関係を示すグラフである。
【図18】他の実施の形態における給水圧Pwと最大空気流量Qamaxとの関係を示すグラフである。
【図19】別の実施の形態における給水圧Pwと空気流量Qaとの関係を示すグラフである。
【図20】洗浄位置を中心に空気混入率λを変更する様子を説明する説明図である。
【図21】他の実施の形態にかかる洗浄位置を中心に空気混入率λを変更する様子を説明する説明図である。
【図22】お尻洗浄時における洗浄位置を中心に空気混入率λを変更する様子を説明する説明図である。
【図23】ビデ洗浄時における洗浄位置を中心に空気混入率λを変更する様子を説明する説明図である。
【図24】瞬間式の熱交換器12Bを備えた局部洗浄装置10Bの概略構成図である。
【図25】図25は入水温度Twと、最大水量Qwmax及び最小空気混入率λminとの関係を示すグラフである。
【図26】洗浄初期に空気混入率λの値を変更する態様を説明するタイミングチャートである。
【図27】洗浄水流量Qw及び空気流量Qaを変更した場合における動作を示すタイミングチャートである。
【図28】空気流量Qaの制御を遅らせる遅延時間Tbを設定するためのグラフである。
【図29】他の実施の態様にかかる洗浄水流量Qw及び空気流量Qaを変更した場合における動作を示すタイミングチャートである。
【図30】他の実施の形態にかかるノズル前洗浄を説明するタイミングチャートである。
【図31】ノズル前洗浄処理を説明するフローチャートである。
【図32】残水除去処理を示すフローチャートである。
【図33】図32の変形例を示すフローチャートである。
【図34】ノズル洗浄処理を示すタイミングチャートである。
【図35】マッサージ洗浄時における体感刺激を説明するグラフである。
【図36】マッサージ洗浄時における振動強度と周波数との関係を説明するグラフである。
【符号の説明】
10…局部洗浄装置
10B…局部洗浄装置
12…熱交換器
12B…熱交換器
14…電磁止水弁
16…ヒータ
18…満水水位センサ
20…下限水位センサ
22…温度センサ
24…電子制御装置
26…ノズル装置
26a…流路
28…バキュームブレーカ
29…空気流路
30…流量調整弁
31…大気開放弁
31a…弁室
31b…ケーシング
31c…弁体
31d…スプリング
31e…流路側流路
31f…大気側開口
32…空気ポンプ
33…ノズル駆動モータ
34…流量調整弁
35…操作部
36…着座センサ
38…電源投入部
40…ノズル本体
42…ノズルヘッド
43…お尻流路
44…気泡混合・切替機構部
45…ビデ流路
46…シールリング
47…お尻噴出流路
49…お尻噴出口
51…ビデ噴出流路
53…ビデ噴出口
55…ケーシング
56…モータ連結体
58…空気室形成体
60…空気混入体
61…支持体
62…支持体
63…空気室切替部
64…スプリング
65…洗浄水導入路
66…貫通孔
67…空気導入路
68…貫通孔
69…遮蔽ブロック
70…お尻側貫通孔
71a…お尻洗浄ボタン
71b…ビデ洗浄ボタン
71c…停止ボタン
71d…マッサージ設定ボタン
71e…ムーブ設定ボタン
71f…ノズル洗浄ボタン
71g…吐水温設定ボタン
71h…洗浄強度設定ボタン
71i…混合比設定ボタン
71j…水量設定ボタン
71k…気泡量設定ボタン
71n…運転入/切ボタン
71…ビデ側貫通孔
71m…洗浄感設定ボタン
72…表示部
80…気泡ポンプ
81…空気混入混合筐体
82…空気室
83…気泡分散体
84…洗浄水管路
85…空気導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 洗浄用ノズルの噴出口から、洗浄水に空気を混入した気泡水を人体局部に向けて噴出して当該局部を洗浄する局部洗浄装置において、給水源から上記噴出口に至る洗浄水流路に設けられ、上記洗浄水流路に流れる洗浄水の流量Qwを調節する洗浄水量調節手段と、圧搾空気を出力する空気供給手段と、上記洗浄水流路に設けられ、上記空気供給手段からの圧搾空気を上記洗浄水流路の洗浄水に混合することにより気泡水を作成する空気混入手段と、上記空気供給手段から上記空気混入手段への空気流量Qaを調節する空気流量調節手段と、上記洗浄水量調節手段、上記空気流量調節手段及び空気供給手段の少なくとも一を制御することにより、空気流量Qaと洗浄水の流量Qwとの比の値Qa/Qwで定義される空気混入率λを調整する主制御部と、該主制御部による空気混入率λの変更をする際に、空気流量Qaの値を変更する制御を、洗浄水の流量Qwの値を変更する制御より前の段階から実行する緩和制御部と、を有する混入比調整手段と、を備えたことを特徴とする局部洗浄装置。
【請求項2】 請求項1において、上記緩和制御部は、空気流量Qaの値を増減する立ち上がりの割合より、洗浄水の流量Qwを緩やかに増減する構成を備えた局部洗浄装置。
【請求項3】 請求項1において、上記緩和制御部は、空気流量調節手段へ出力しさらに所定時間経過した後に、洗浄水量調節手段に対して出力する構成を備えた局部洗浄装置。
【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、上記緩和制御部の所定時間は、空気流量Qaにしたがって変更する構成を備えた局部洗浄装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図2】
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【図5】
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【図11】
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【図8】
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【図12】
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【図6】
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【図13】
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【図14】
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【図9】
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【図15】
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【図10】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図28】
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【図31】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図29】
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【図30】
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【図32】
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【図33】
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【図36】
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【図34】
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【図35】
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【特許番号】特許第3514137号(P3514137)
【登録日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【発行日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−274417
【出願日】平成10年9月9日(1998.9.9)
【公開番号】特開2000−87421(P2000−87421A)
【公開日】平成12年3月28日(2000.3.28)
【審査請求日】平成13年8月28日(2001.8.28)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【参考文献】
【文献】特開 平10−280512(JP,A)
【文献】特許2566310(JP,B2)