説明

居室設備制御システム、方法、およびプログラム

【課題】複数の居室を持つフリーアドレス制の建物で消費される電力を低減する。
【解決手段】人数計数部11で、各居室20の在室人数を計数し、設備制御部14で、これら在室人数に基づき各居室20の空席率を計算し、居室20のうち最も空席率が小さい居室へ誘導するための案内を案内表示部13により表示し、居室20のうち解錠居室のすべてが満席となった場合には、居室20のうち施錠居室のいずれかについて、当該居室20の居室制御部12により、当該居室20で使用される電源設備21による電気機器への電源供給を開始するとともに電気錠22を解錠し、解錠居室のいずれかが空室となった場合には、当該居室20の居室制御部12により、当該居室20での電源設備21による電源供給を停止するとともに電気錠22を施錠する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備管理技術に関し、特に建物内に設けられた各居室の在室状況に基づいて入室案内を行う居室設備制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスにおいて自席を固定せず空いている席を自由に使用できる、いわゆるフリーアドレス制が導入されつつある。例えば、営業担当の会社員は、外出することが多く、固定席の使用率が低い場合がある。そのため、フリーアドレス制は、在籍者数よりも少ない机で済むという省スペースのメリットがあると言われている。また、このようなフリーアドレス制は、会社や図書館だけでなく、大学の学生室にも適用されている。元々、決められた自席を持たない学生は、予め共通使用可能な学生室として開放されたうちから、空席のある学生室を自由に選択して利用している(例えば、非特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】嶋村仁志、山田哲弥、杉山武、岩田美成、「研究執務スペースのフリーアドレス化に関する研究その1、日本建築学会大会学術講演梗概集、社団法人日本建築学会、1996年9月、pp.431−432
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来技術では、フリーアドレス制が適用されているいくつかの居室を自由に開放してしまうと、照明や空調、プリンタ、ネットワーク機器といった居室設備の消費電力が増大するという問題があった。
すなわち、利用者がフリーアドレス制の居室を利用する場合、例えば1つの部屋に収容できる人数であっても、なるべく在室者の少ない部屋を利用しようとするため、すべての部屋を分散して利用する傾向がある。したがって、本来は、1つあるいは2つ程度の部屋だけで済む人数であるにもかかわらず、用意されているすべての部屋を利用することになり、その分だけ無駄な電力を消費してしまう。使用する居室設備は人数に応じて必要最小限にして消費電力を少なくすることが好ましい。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、複数の居室を持つフリーアドレス制の建物で消費される電力を低減できる居室設備制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明にかかる居室設備制御システムは、建物内に設けられた居室ごとに、当該居室の在室人数を計数する人数計数部と、居室で使用される電気機器への電源供給および当該居室の入口ドアに設けられた電気錠の施解錠を、当該居室ごとに制御する居室制御部と、居室を利用する利用者に対して、空席のある居室へ誘導する案内を表示する案内表示部と、人数計数部で計数した在室人数に基づいて、居室制御部および案内表示部を制御する設備制御部とを備え、設備制御部は、在室人数に基づき各居室の空席率を計算し、居室のうち最も空席率が小さい居室へ誘導するための案内を案内表示部により表示し、居室のうち解錠居室のすべてが満席となった場合には、居室のうち施錠居室のいずれかについて、居室制御部により電源供給を開始するとともに当該電気錠を解錠し、解錠居室のいずれかが空室となった場合には、当該居室について、居室制御部により電源供給を停止するとともに当該電気錠を施錠するようにしたものである。
【0007】
この際、設備制御部で、解錠居室のうち、当該空席率が最大である解錠居室に在室する利用者に対して、当該居室内に設けられた案内表示部により、当該空席率が最小である解錠居室へ誘導する案内を表示するようにしてもよい。
【0008】
また、本発明にかかる居室設備制御方法は、建物内に設けられた居室ごとに、当該居室の在室人数を計数するステップと、在室人数に基づき各居室の空席率を計算し、居室のうち最も空席率が小さい居室へ誘導するための案内を案内表示部により表示するステップと、居室のうち解錠居室のすべてが満席となった場合には、居室のうち施錠居室のいずれかについて、当該居室の居室制御部により、当該居室で使用される電気機器への電源供給を開始するとともに、当該の入口ドアに設けられた電気錠を解錠するステップと、解錠居室のいずれかが空室となった場合には、当該居室の居室制御部により、当該居室での電源供給を停止するとともに、当該居室の電気錠を施錠するステップとを備えている。
【0009】
この際、解錠居室のうち、当該空席率が最大である解錠居室に在室する利用者に対して、当該居室内に設けられた案内表示部により、当該空席率が最小である解錠居室へ誘導する案内を表示するステップをさらに備えてもよい。
【0010】
また、本発明にかかるプログラムは、コンピュータを、前述した居室設備制御システムを構成する設備制御部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空席の少ない居室に対して優先的に利用者を誘導することができ、満席状態の居室数を増やす方向に制御することができる。このため、居室の利用率を高めることができ、空席状態となった居室については、施錠されて電源供給が停止される。したがって、複数の居室を持つフリーアドレス制の建物で消費される電力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態にかかる居室設備制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】設備制御部の居室解錠処理を示すフローチャートである。
【図3】居室解錠処理例を示す説明図である。
【図4】設備制御部の居室施錠処理を示すフローチャートである。
【図5】居室施錠処理例を示す説明図である。
【図6】設備制御部の入室誘導表示処理を示すフローチャートである。
【図7】入室誘導表示処理例を示す説明図である。
【図8】第2の実施の形態にかかる居室設備制御システムの構成を示すブロック図である。
【図9】設備制御部の移動誘導表示処理を示すフローチャートである。
【図10】移動誘導表示処理例を示す説明図である。
【図11】移動誘導表示処理例(続き)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる居室設備制御システム10について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる居室設備制御システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
この居室設備制御システム10は、オフィスなどの建物内に設けられている複数の居室20(20A〜20N)を、固定的な自席を持たない利用者が、自由に使用できるフリーアドレス制が導入されている環境において、各居室20の在室状況に応じて、それぞれの居室に設けられている居室設備を制御する機能を有している。なお、本発明にかかる居室は、オフィスに限定されるものではなく、例えば図書館や学校の教室など、複数の利用者が複数の居室を利用する建物の居室であればよい。また、居室は、閉鎖された空間である必要はなく、パーテーションで区切られた区画であってもよい。
【0015】
本実施の形態は、建物内に設けられた居室ごとに、当該居室の在室人数を計数し、在室人数に基づき各居室の空席率を計算し、居室のうち最も空席率が小さい居室へ誘導するための案内を案内表示部により表示し、居室のうち解錠居室のすべてが満席となった場合には、居室のうち施錠居室のいずれかについて、当該居室の居室制御部により、当該居室で使用される電気機器への電源供給を開始するとともに、当該の入口ドアに設けられた電気錠を解錠し、解錠居室のいずれかが空室となった場合には、当該居室の居室制御部により、当該居室での電源供給を停止するとともに、当該居室の電気錠を施錠するようにしたものである。
【0016】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる居室設備制御システム10の構成について詳細に説明する。
居室設備制御システム10には、主な機能部として、人数計数部11、居室制御部12、案内表示部13、および設備制御部14が設けられており、これら機能部が、LANなどの通信回線30を介してデータ通信可能に接続されている。
【0017】
各居室20には、当該居室20の居室設備として、当該居室20で使用される電気機器へ電源を供給する電源設備21と、当該居室20への入口ドアを施解錠する電気錠22とが設けられている。居室20で使用される電気機器としては、当該居室20の照明機器や空調機器、プリンタや複写機、ネットワーク機器など、一般的なオフィスなどの居室で使用される電気機器が含まれる。
【0018】
人数計数部11は、居室20ごとに設けられて、当該居室20の在室人数を計数し、当該在室人数を通信回線30を介して設備制御部14へ通知する機能を有している。この人数計数部11については、居室20の入口部に設置された読み取り機でユーザが所持したRFIDやカードを読み取って人数を計数する入退室管理装置を利用してもよい。あるいは、居室20内の机や椅子に備えられた人感センサによって人数を計数するセンサシステムを利用してもよい。また、当該居室20からネットワークに接続されている、利用者のパソコンのネットワークアドレスの数に基づいて、人数を計数するネットワーク管理システムを利用してもよい。
【0019】
居室制御部12は、データ通信機能を有する制御装置からなり、居室20ごとに設けられて、通信回線30を介して通知された設備制御部14からの指示に応じて、当該居室20の電源設備21から居室20で使用される電気機器への電源供給、および当該居室20の入口ドアに設けられた電気錠22の施解錠を制御する機能を有している。
【0020】
案内表示部13は、LEDやLCDなどの表示装置からなり、各居室20へ向かう利用者が通過する場所に設けられて、通信回線30を介して通知された設備制御部14からの指示に応じて、居室20を利用する利用者に対して、空席のある居室20へ誘導する案内を、文字や図柄で表示する機能を有している。この案内表示部13は、これらか居室20を利用する利用者に対する案内を表示する目的で設置されるため、各居室20へ向かう利用者が通過する場所、例えば居室20への通路や通路の入口にあるエントランスに設けられている。
【0021】
設備制御部14は、人数計数部11で計数した各居室20の在室人数に基づいて、通信回線30を介して各種指示を居室制御部12および案内表示部13へ通知して、任意の居室20の居室制御部12をそれぞれ個別に制御することにより、各居室20での電源供給を制御するとともに、案内表示部13での案内表示を制御することにより、利用者を所望の居室20へ誘導する機能を有している。
【0022】
具体的には、設備制御部14は、在室人数に基づき各居室20の空席率を計算し、居室20のうち最も空席率が小さい居室へ誘導するための案内を案内表示部13により表示する機能と、居室20のうち解錠居室のすべてが満席となった場合には、居室20のうち施錠居室のいずれかについて、居室制御部12により電源設備21からの電源供給を開始するとともに当該電気錠22を解錠する機能と、解錠居室のいずれかが空室となった場合には、当該居室20について、居室制御部12により電源設備21からの電源供給を停止するとともに当該電気錠22を施錠する機能とを有している。
【0023】
設備制御部14は、全体としてパソコンや制御用コントローラなどの情報処理装置からなり、内部の記憶部(図示せず)に予め保存されているプログラムをCPUに読み込んで実行することにより、上記各機能を実現する。
このプログラムは、外部装置(図示せず)や記録媒体(図示せず)から予め読み込まれて上記記憶部へ保存される。なお、本発明にかかる設備制御部14は、コンピュータとプログラムによって実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0024】
[居室解錠処理]
次に、図2および図3を参照して、本実施の形態にかかる居室設備制御システム10の居室解錠処理について説明する。図2は、設備制御部の居室解錠処理を示すフローチャートである。図3は、居室解錠処理例を示す説明図である。
設備制御部14は、間欠的に、例えば一定周期で、図2の居室解錠処理を実行する。
【0025】
まず、設備制御部14は、人数計数部11から各居室20の在室人数を取得し(ステップ100)、予め設定されている各居室20の定員数と比較することにより、居室20のうち、解錠している各解錠居室についての在室状況を確認する(ステップ101)。
ここで、いずれかの解錠居室において、定員数より在室人数が少なく空席があり、利用可能な解除居室がある場合(ステップ101:NO)、一連の居室解錠処理を終了する。
【0026】
一方、すべての解錠居室について、在室人数が定員数と等しく満席状態であり、利用可能な解錠居室がない場合(ステップ101:YES)、設備制御部14は、居室20のうち施錠されている施錠居室から、任意の居室20を1つ選択する(ステップ102)。この際、居室20を選択する順序について、例えば各居室20の配置位置に基づいて、予め設定しておいてもよい。
続いて、設備制御部14は、選択した選択居室20の居室制御部12を制御して、当該選択居室20の電気錠22を解錠するとともに、電源設備21からの電源供給を開始する(ステップ103)。
【0027】
次に、設備制御部14は、案内表示部13を制御して、選択居室へ利用者を誘導する案内を表示し(ステップ104)、一連の居室解錠処理を終了する。
これにより、新たに居室20を利用する利用者は、案内表示部13での案内表示にしたがって、当該選択居室20へ入室することになる。この案内表示については、選択居室20の場所がわかるよう、建物アレイアウト図や地図などを用いても良い。
【0028】
図3の例では、通路に面して6つの居室A〜居室Fが設けられており、各居室A〜居室Fには、それぞれ8つの席が配置されている。このうち居室A〜居室Cが満席状態にあり、居室D〜居室Fは施錠されている。したがって、この場合には、例えば居室Dが選択されて、解錠されるとともに電源供給が開始され、居室Dが新たに利用可能となる。また、これとともに、案内表示部13において新たに解錠した居室Dへの案内が表示され、新たな利用者が居室Dへ誘導される。
【0029】
これにより、すべての居室20は施錠されており、電源供給も停止されている初期状態においては、いずれかの居室20が解錠されて電源供給が開始される。また、いずれかの解錠居室に空席がある場合には、空席のある居室への案内表示が維持される。一方、解錠居室のすべてにおいて満席の場合には、新たな居室が解錠されて電源供給が開始される。したがって、利用者の増加に応じて、利用可能とする居室20の数を最低限に制限することができ、居室20の無駄な開放を抑制して、居室設備による電力消費を削減することが可能となる。
【0030】
[居室施錠処理]
次に、図4および図5を参照して、本実施の形態にかかる居室設備制御システム10の居室施錠処理について説明する。図4は、設備制御部の居室施錠処理を示すフローチャートである。図5は、居室施錠処理例を示す説明図である。
設備制御部14は、間欠的に、例えば一定周期で、図4の居室施錠処理を実行する。
【0031】
まず、設備制御部14は、人数計数部11から各居室20の在室人数を取得し(ステップ110)、居室20のうち解錠されている解錠居室から、在室状況を確認していない未確認の居室20を選択する(ステップ111)。この際、居室20を選択する順序について、例えば各居室20の配置位置に基づいて、予め設定しておいてもよい。
続いて、設備制御部14は、選択した選択居室20の在室人数と予め設定されている選択居室20の定員数と比較することにより、選択居室20についての在室状況を確認する(ステップ112)。
【0032】
ここで、選択居室20の在室人数がゼロで空室状態の場合(ステップ112:YES)、当該選択居室20の居室制御部12を制御して、当該居室20の電気錠22を施錠するとともに、電源設備21からの電源供給を停止する(ステップ113)。
一方、選択居室20の在室人数がゼロではなく使用中状態の場合(ステップ112:NO)、選択居室20にかかる居室設備の制御は行わない。
【0033】
この後、設備制御部14は、すべての解錠居室の確認が終了したか確認し(ステップ114)、未確認の解錠居室が存在しており、すべての解錠居室の確認が終了していない場合(ステップ114:NO)、ステップ111に戻って、未確認の解錠居室に関する処理を実行する。
一方、未確認の解錠居室が存在しておらず、すべての解錠居室の確認が終了した場合(ステップ114:YES)、一連の居室施錠処理を終了する。
【0034】
図5の例では、居室A,居室Bが満席状態にあり、居室Cに空席が1つあり、居室E,居室Fは施錠されている。ここで、居室Dから利用者が退室して、いままで使用されていた3つの席が空席となり、居室Dが空室状態となった場合、居室Dが施錠されるとともに電源供給が停止され、居室Dが利用不可となる。これにより、居室20のうち空室状態の居室については、施錠して電源供給を停止することができ、居室設備による電力消費を削減することが可能となる。
【0035】
また、これとともに、案内表示部13において、空席のある居室Cへの案内が表示され、新たな利用者が居室Cへ誘導される。なお、各居室20の在室状況の変化に伴う案内表示については、後述の入室誘導表示処理に従うものとする。
【0036】
[入室誘導表示処理]
次に、図6および図7を参照して、本実施の形態にかかる居室設備制御システム10の入室誘導表示処理について説明する。図6は、設備制御部の入室誘導表示処理を示すフローチャートである。図7は、入室誘導表示処理例を示す説明図である。
設備制御部14は、間欠的に、例えば一定周期で、図6の入室誘導表示処理を実行する。
【0037】
まず、設備制御部14は、人数計数部11から各居室20の在室人数を取得し(ステップ120)、居室20ごとに、当該在室人数を予め設定されている当該居室20の定員数で除算することにより、当該居室20の空席率を計算する(ステップ121)。
【0038】
続いて、設備制御部14は、満席状態ではない解錠居室20のうちから、最小空席率の居室を選択し(ステップ122)、案内表示部13を制御して、選択居室20へ利用者を誘導する案内を表示する(ステップ123)。これにより、新たに居室20を利用する利用者は、案内表示部13での案内表示にしたがって、最小空席率の居室20へ入室することになる。この案内表示については、文字を用いた案内メッセージでもよいが、選択居室20の場所がわかるよう、具体的な建物アレイアウト図や地図などを用いても良い。
【0039】
図7の例では、通路に面して6つの居室A〜居室Fが設けられており、各居室A〜居室Fには、それぞれ8つの席が配置されている。このうち、居室Aが満席状態すなわち空席率=0%であり、居室D〜居室Fは施錠されている。また、居室Bには空席が1つあって空席率=12.5%であり、居室Cには空席が2つあって空席率=25%である。
したがって、この場合には、最小空席率の居室として居室Bが選択され、案内表示部13において居室Bへの案内が表示される。
【0040】
これにより、空席の少ない居室20に対して優先的に利用者を誘導することができ、満席状態の居室数を増やす方向に制御することができる。したがって、居室20の利用率を高めることができ、空席状態となった居室20については、前述した居室施錠処理により施錠されて電源供給が停止されるため、居室設備による電力消費を削減することが可能となる。
【0041】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、人数計数部11で、建物内に設けられた各居室20の在室人数を計数し、設備制御部14で、これら在室人数に基づき各居室20の空席率を計算し、居室20のうち最も空席率が小さい居室へ誘導するための案内を案内表示部13により表示し(入室誘導表示処理)、居室20のうち解錠居室のすべてが満席となった場合には、居室20のうち施錠居室のいずれかについて、当該居室20の居室制御部12により、当該居室20で使用される電源設備21による電気機器への電源供給を開始する(居室解錠処理)とともに、当該の入口ドアに設けられた電気錠22を解錠し、解錠居室のいずれかが空室となった場合には、当該居室20の居室制御部12により、当該居室20での電源設備21による電源供給を停止するとともに、当該居室20の電気錠22を施錠する(居室施錠処理)ようにしたものである。
【0042】
したがって、居室解錠処理により、利用者の増加に応じて、利用可能とする居室20の数を最低限に制限することができ、居室20の無駄な開放を抑制して、居室設備による電力消費を削減することが可能となる。
また、居室施錠処理により、居室20のうち空室状態の居室については、施錠して電源供給を停止することができ、居室設備による電力消費を削減することが可能となる。
【0043】
また、入室誘導表示処理により、空席の少ない居室20に対して優先的に利用者を誘導することができ、満席状態の居室数を増やす方向に制御することができる。このため、居室20の利用率を高めることができ、空席状態となった居室20については、前述した居室施錠処理により施錠されて電源供給が停止されるため、居室設備による電力消費を削減することが可能となる。
したがって、これら居室解錠処理、居室施錠処理、および入室誘導表示処理により、複数の居室を持つフリーアドレス制の建物で消費される電力を低減することが可能となる。
【0044】
また、本実施の形態では、居室解錠処理、居室施錠処理、および入室誘導表示処理が、独立した処理として、設備制御部14で並列的に実行されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、これら3つの処理のうちのいずれか複数またはすべてを、連続して直列的に実行してもよい。
【0045】
また、本実施の形態では、設備制御部14で、各居室20の空席率に基づき、居室の在室状況を確認する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、居室20の使用されている席数を定員数で除算した使用率を用いてもよい。この場合、前述した最小空席率は、最大使用率に相当することになる。なお、各居室20の定員数が異なる場合、空席率(使用率)に代えて、空席数(使用数)を用いてもよい。これにより、より高い確率で、満席状態の居室数を増やす方向に制御することができる。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる居室設備制御システム10について説明する。図8は、第2の実施の形態にかかる居室設備制御システムの構成を示すブロック図である。
【0047】
第1の実施の形態では、居室20を利用開始する利用者に対して、案内表示部13で案内表示することにより、利用者を適切な居室20へ誘導する場合について説明した。本実施の形態では、居室20内に在室する利用者に対して、居室20内に設けた案内表示部13Rで、他の居室20への移動を案内表示することにより、利用者を適切な居室20へ誘導する場合について説明する。
【0048】
第1の実施の形態と比較して、本実施の形態では、居室20ごとに案内表示部13Rが追加されている。案内表示部13Rは、LEDやLCDなどの表示装置からなり、通信回線30を介して通知された設備制御部14からの指示に応じて、居室20内に在室する利用者に対して、空席のある居室20へ誘導する案内を、文字や図柄で表示する機能を有している。
本実施の形態にかかる居室設備制御システム10の他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
[移動誘導表示処理]
次に、図9−図11を参照して、本実施の形態にかかる居室設備制御システム10の移動誘導表示処理について説明する。図9は、設備制御部の移動誘導表示処理を示すフローチャートである。図10は、移動誘導表示処理例を示す説明図である。図11は、移動誘導表示処理例(続き)を示す説明図である。
設備制御部14は、間欠的に、例えば一定周期で、図9の移動誘導表示処理を実行する。
【0050】
まず、設備制御部14は、人数計数部11から各居室20の在室人数を取得し(ステップ200)、居室20ごとに、当該在室人数を予め設定されている当該居室20の定員数で除算することにより、当該居室20の空席率を計算する(ステップ201)。
【0051】
続いて、設備制御部14は、解錠されている各解錠居室20のうちから、最大空席率の居室xを選択するとともに(ステップ202)、満席状態ではない解錠居室20のうちから、最小空席率の居室yを選択する(ステップ203)。
この後、設備制御部14は、居室xに設けた案内表示部13Rを制御して、居室yへ利用者を誘導する案内を表示する(ステップ204)。
【0052】
これにより、最大空席率の居室xの利用者は、居室x内の案内表示部13Rでの案内表示にしたがって、最小空席率の居室yへ入室することになる。この案内表示については、文字を用いた案内メッセージでもよいが、選択居室20の場所がわかるよう、具体的な建物アレイアウト図や地図などを用いても良い。
【0053】
図10の例では、通路に面して6つの居室A〜居室Fが設けられており、各居室A〜居室Fには、それぞれ8つの席が配置されている。このうち、居室Aには空席が1つあって空席率=12.5%であり、居室Bには空席が2つあって空席率=25%である。一方、居室Cには空席が5つあって空席率=62.5%であり、居室D〜居室Fは施錠されている。
【0054】
したがって、この場合には、最大空席率の居室xとして居室Cが選択され、最小空席率の居室yとして居室Aが選択され、居室C(=居室x)に設けられた案内表示部13Rにおいて、居室A(=居室y)への案内、例えば「居室Aに移動して下さい」という案内メッセージが表示される。ここでは、第1の実施の形態にかかる入室誘導表示処理に基づき、案内表示部13においても居室Aへの案内が表示されている。
【0055】
これにより、利用者の最も少ない居室xから、空席の最も少ない居室yに対して利用者を誘導することができ、極めて高い確率で、満席状態の居室20を増やすとともに、空室状態の居室20を増やすことができる。したがって、居室20の利用率を高めることができ、空席状態となった居室20については、前述した居室施錠処理により施錠されて電源供給が停止されるため、居室設備による電力消費を削減することが可能となる。
【0056】
また、図10の場合、移動先の居室Aには、1つの空席しかないため、移動元の居室Cに在室する利用者のうちの1人が居室Aに移動した場合、居室Cの残りの2人は、居室Aへ移動できなくなる。
【0057】
ここで、次の処理タイミングで、図9の移動誘導表示処理が実行された場合、図11に示すように、居室Aが満席状態となるため、最大空席率の居室xとして居室Cが選択され、最小空席率の居室yとして居室Bが選択され、居室C(=居室x)に設けられた案内表示部13Rにおいて、居室B(=居室y)への案内、例えば「居室Bに移動して下さい」という案内メッセージが表示される。ここでは、第1の実施の形態にかかる入室誘導表示処理に基づき、案内表示部13においても居室Bへの案内が表示されている。
【0058】
これにより、利用者の最も少ない居室Cから、空席の最も少ない居室Bに対して利用者を誘導されて、居室Cが空室状態となる。これにより、居室Cについては、前述した居室施錠処理により施錠されて電源供給が停止されるため、居室設備による電力消費を削減することが可能となる。
【0059】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、設備制御部14により、解錠居室のうち、当該空席率が最大である解錠居室に在室する利用者に対して、当該居室内に設けられた案内表示部13Rにより、当該空席率が最小である解錠居室へ誘導する案内を表示する(移動誘導表示処理)ようにしたものである。
【0060】
したがって、移動誘導表示処理により、利用者の最も少ない居室xから、空席の最も少ない居室yに対して利用者を誘導することができ、極めて高い確率で、満席状態の居室20を増やすとともに、空室状態の居室20を増やすことができる。したがって、居室20の利用率を高めることができ、空席状態となった居室20については、前述した居室施錠処理により施錠されて電源供給が停止されるため、居室設備による電力消費を削減することが可能となる。
【0061】
また、本実施の形態にかかる移動誘導表示処理は、第1の実施の形態にかかる、居室解錠処理、居室施錠処理、および入室誘導表示処理とは独立した処理として、設備制御部14で並列的に実行されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、これら4つの処理のうちのいずれか複数またはすべてを、連続して直列的に実行してもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、設備制御部14で、各居室20の空席率に基づき、居室の在室状況を確認する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、居室20の使用されている席数を定員数で除算した使用率を用いてもよい。この場合、前述した最小空席率および最大空席率は、それぞれ最大使用率および最小使用率に相当することになる。なお、各居室20の定員数が異なる場合、空席率(使用率)に代えて、空席数(使用数)を用いてもよい。これにより、より高い確率で、満席状態および空室状態の居室数をそれぞれ増やす方向に制御することができる。
【0063】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…居室設備制御システム、11…人数計数部、12…居室制御部、13,13R…案内表示部、14…設備制御部、20,20A,20B〜20N…居室、21…電源設備、22…電気錠、30…通信回線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に設けられた居室ごとに、当該居室の在室人数を計数する人数計数部と、
前記居室で使用される電気機器への電源供給および当該居室の入口ドアに設けられた電気錠の施解錠を、当該居室ごとに制御する居室制御部と、
前記居室を利用する利用者に対して、空席のある居室へ誘導する案内を表示する案内表示部と、
前記人数計数部で計数した前記在室人数に基づいて、前記居室制御部および前記案内表示部を制御する設備制御部とを備え、
前記設備制御部は、前記在室人数に基づき前記各居室の空席率を計算し、前記居室のうち最も空席率が小さい居室へ誘導するための案内を前記案内表示部により表示し、前記居室のうち解錠居室のすべてが満席となった場合には、前記居室のうち施錠居室のいずれかについて、前記居室制御部により電源供給を開始するとともに当該電気錠を解錠し、前記解錠居室のいずれかが空室となった場合には、当該居室について、前記居室制御部により電源供給を停止するとともに当該電気錠を施錠する
ことを特徴とする居室設備制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の居室設備制御システムにおいて、
前記設備制御部は、前記解錠居室のうち、当該空席率が最大である解錠居室に在室する利用者に対して、当該居室内に設けられた案内表示部により、当該空席率が最小である解錠居室へ誘導する案内を表示することを特徴とする居室設備制御システム。
【請求項3】
建物内に設けられた居室ごとに、当該居室の在室人数を計数するステップと、
前記在室人数に基づき前記各居室の空席率を計算し、前記居室のうち最も空席率が小さい居室へ誘導するための案内を案内表示部により表示するステップと、
前記居室のうち解錠居室のすべてが満席となった場合には、前記居室のうち施錠居室のいずれかについて、当該居室の居室制御部により、当該居室で使用される電気機器への電源供給を開始するとともに、当該の入口ドアに設けられた電気錠を解錠するステップと、
前記解錠居室のいずれかが空室となった場合には、当該居室の居室制御部により、当該居室での前記電源供給を停止するとともに、当該居室の前記電気錠を施錠するステップと
を備えることを特徴とする居室設備制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の居室設備制御方法において、
前記解錠居室のうち、当該空席率が最大である解錠居室に在室する利用者に対して、当該居室内に設けられた案内表示部により、当該空席率が最小である解錠居室へ誘導する案内を表示するステップをさらに備えることを特徴とする居室設備制御方法。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1または請求項2に記載の居室設備制御システムを構成する設備制御部として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−61832(P2013−61832A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200220(P2011−200220)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504202472)大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 (119)
【Fターム(参考)】