説明

居眠り防止装置及び居眠り防止方法

【課題】個々の刺激による直接効果を明確に把握して動作者に与える刺激を最適化することができる居眠り防止装置等を提供する。
【解決手段】居眠り防止装置は、心拍センサ4及び心拍信号処理部12により車両の運転をしている動作者の状態を検出し、メイン処理部14により当該動作者の状態に基づいて当該動作者の覚醒度を判定する。そして、当該動作者の覚醒度が低下していると判定された場合には、メイン処理部14は、マイク2,スピーカ3及び対話処理部11を制御して動作者に対して自発行動を誘導する刺激(対話)を与えた時の動作者の状態に基づいて、自発行動による誘導効果を判定し当該判定した誘導効果に応じて、以降に当該動作者に対して与える刺激内容(対話)を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の居眠り状態を検出し、居眠り状態を検出した場合には覚醒を促して居眠りを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動作者の心身状態を推定し、推定した心身状態から動作者毎に設定された目標状態へと調整するために、動作者に所定の刺激を与える装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−130454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術においては、提示される刺激による心身状態の調整効果が、刺激提示後の心身情報から得られる目標値までの調整効果である。したがって、個々の刺激による直接的な効果がわからず、過剰な刺激提示や、効果のない刺激提示が繰り返されてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、個々の刺激による直接効果を明確に把握して、運転や操作などを行う人(以下、動作者とする)に与える刺激を最適化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、動作者の状態を検出し、当該動作者の状態に基づいて当該動作者の覚醒度を判定する。そして、当該動作者の覚醒度が低下していると判定された場合には、動作者に対して自発行動を誘導する刺激を与えた時の動作者の状態に基づいて、自発行動による誘導効果を判定し、当該判定した誘導効果に応じて、以降に当該動作者に対して与える刺激内容を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自発行動による誘導効果を判定するので、個々の刺激によって誘導された自発行動の効果を明確に把握することで、動作者の状態に応じた最適な自発行動の誘導を行うことができ、高い精度で動作者の覚醒度を維持する効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置の構成について示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置の車両配置関係について示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置において、基本動作を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置において、心拍信号の測定処理を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置における心拍信号の測定処理の内容について説明するための図であり、(a)は、動作者の覚醒度が低下したときの心拍ゆらぎ分散の時系列変化を示し、(b)は、動作者の覚醒度が低下したときの瞬時心拍数の時系列変化を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置において、対話処理を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置における対話処理にて用いられる対話セット情報の具体例について示す図である。
【図8】本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置において、心拍・自発行動効果確認処理を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置における心拍・自発行動効果確認処理の内容について説明するための図であり、(a)は、対話負荷量を高くして動作者に対して自発行動を誘導したときの瞬時心拍数の時系列変化を示し、(b)は、対話負荷量を低くして動作者に対して自発行動を誘導したときの瞬時心拍数の時系列変化を示す図である。
【図10】本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置において、自発行動設定値変更処理を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図11】本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置における自発行動設定値変更処理の内容について説明するための図であり、(a)は、状態が良好である動作者に自発行動を誘導した結果、誘導効果が得られなかった場合における瞬時心拍数の時系列変化を示し、(b)は、状態が良好ではない動作者に自発行動を誘導した結果、誘導効果が得られなかった場合における瞬時心拍数の時系列変化を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態として示す居眠り防止装置の構成について示すブロック図である。
【図13】本発明の第2実施形態として示す居眠り防止装置の車両配置関係について示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態として示す居眠り防止装置において、基本動作を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図15】本発明の第2実施形態として示す居眠り防止装置において、血圧信号測定処理を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図16】本発明の第2実施形態として示す居眠り防止装置における血圧信号測定処理の内容について説明するための図であり、(a)は、動作者の覚醒度が低下したときの最低血圧値間の時間差における分散の時系列変化を示し、(b)は、動作者の覚醒度が低下したときの最低血圧値の時系列変化を示す図である。
【図17】本発明の第2実施形態として示す居眠り防止装置において、筋運動処理を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図18】本発明の第2実施形態として示す居眠り防止装置において、血圧・自発行動効果確認処理を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図19】本発明の第2実施形態として示す居眠り防止装置における血圧・自発行動効果確認処理の内容について説明するための図であり、(a)は、筋運動負荷量を高くして動作者に対して自発行動を誘導したときの最低血圧値(b)は、筋運動負荷量を低くして動作者に対して自発行動を誘導したときの最低血圧値の時系列変化を示す図である。
【図20】本発明の第2実施形態として示す居眠り防止装置における自発行動設定値変更処理の内容について説明するための図であり、(a)は、状態が良好である動作者に自発行動を誘導した結果、誘導効果が得られなかった場合における最低血圧値の時系列変化を示し、(b)は、状態が良好ではない動作者に自発行動を誘導した結果、誘導効果が得られなかった場合における最低血圧値の時系列変化を示す図である。
【図21】本発明の第3実施形態として示す居眠り防止装置の構成について示すブロック図である。
【図22】本発明の第3実施形態として示す居眠り防止装置の車両配置関係について示す図である。
【図23】本発明の第3実施形態として示す居眠り防止装置において、基本動作を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図24】本発明の第3実施形態として示す居眠り防止装置において、生体信号測定処理を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図25】本発明の第4実施形態として示す居眠り防止装置の構成について示すブロック図である。
【図26】本発明の第4実施形態として示す居眠り防止装置の車両配置関係について示す図である。
【図27】本発明の第4実施形態として示す居眠り防止装置において、基本動作を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図28】本発明の第4実施形態として示す居眠り防止装置において、自発行動誘導処理を行う際の一連の手順について示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
[居眠り防止装置の構成]
本発明の第1実施形態として示す居眠り防止装置は、図1に示すように、当該居眠り防止装置を統括的に制御する制御装置1と、動作・操作を行っている人としての動作者の発話内容を検出して入力する動作者発話入力手段であるマイク2と、制御装置1からの対話による呼び掛けと警報とを動作者に提示する動作者呼掛手段であるスピーカ3と、動作者の心拍信号を検出する心拍信号検出手段である心拍センサ4とを備える。なお、以下の説明としては、人が行う動作・操作の一例として車両を運転する場面を一実施形態として説明するが、人が行う動作・操作として船舶の操舵、航空機の操縦、電子計算機の操作のみならず、例えば人が紙に文字などを筆記する動作なども含まれるものとする。
【0010】
制御装置1は、動作者に対する対話による自発行動を制御する対話制御手段である対話処理部11と、動作者の心拍数情報を算出する心拍信号解析手段である心拍信号処理部12と、メイン処理部14に入出力される情報を記録する記録装置13と、動作者に自発行動を誘導する作業を統括制御する制御手段であるメイン処理部14とを有する。なお、メイン処理部14は、実際にはROM、RAM、CPU等にて構成されているが、当該CPUがROMに格納された居眠り防止のための制御プログラムに従って処理をすることによって実現できる機能をブロックとして説明する。
【0011】
メイン処理部14は、心拍信号処理部12によって算出された動作者の心拍数情報から求められた当該動作者の覚醒度状態に基づいて、動作者に自発行動を誘導する作業を統括制御する。メイン処理部14は、動作者の覚醒度が低下していると判定した場合には、対話処理部11を制御して、動作者に自発行動として対話を行わせる。また、メイン処理部14は、心拍信号処理部12から供給された心拍数情報を記録装置13に記録させる。
【0012】
心拍信号処理部12は、心拍センサ4によって検出された心拍信号を用いて所定の信号処理を行い、動作者の心拍数情報を算出する。そして、心拍信号処理部12は、算出した心拍数情報に基づいて、動作者の覚醒度の低下を判定するための覚醒度低下判定値を算出する。心拍信号処理部12は、算出した心拍数情報、覚醒度低下判定値をメイン処理部14に供給する。
【0013】
対話処理部11は、メイン処理部14の制御に従って、記録装置13から読み込んだ対話セット情報に基づいて、マイク2及びスピーカ3を介して動作者に自発行動として対話を行わせる際の制御を行う。
【0014】
記録装置13は、メイン処理部14に入力された心拍数情報や覚醒度低下判定値等の情報を記録する。また、記録装置13は、動作者に自発行動として行わせる対話セット情報を記録する。この対話セット情報は、メイン処理部14の制御に従って、対話処理部11によって読み出される。
【0015】
このような制御装置1、心拍センサ4、マイク2、及び、スピーカ3は、例えば図2に示すように車室内に配置されている。すなわち、制御装置1は、例えば、車両に搭載されているナビゲーションシステムにソフトウェアとして実装され、インストルメントパネル23に内装されている。なお、制御装置1は、本発明にかかる制御を提供できるものであれば、ハードウェアによって実装してもよく、当該形態に特に限定されるものではない。
【0016】
また、心拍センサ4は、運転席に着座した動作者の背中に当たるようにシート24に内蔵されている。これにより、心拍センサ4は、動作者の操作姿勢にかかわらず、安定して動作者の心拍信号を検出することができる。さらに、マイク2は、動作者が音声を入力しやすいように、ステアリング21の中央等に内蔵されている。さらにまた、スピーカ3は、制御装置1からの対話による呼び掛けや警報を聴取しやすいように、運転席側のドアパネル22の内面等に設置されている。
【0017】
[居眠り防止装置の動作]
「基本動作」
このような各部を備える居眠り防止装置は、図3に示すような一連の手順にしたがって、動作者の居眠りを防止するための動作を行う。
【0018】
まず、居眠り防止装置は、図3に示すように、ステップS1において、制御装置1によって、居眠り防止警報を出力するか否かの閾値であって任意に設定可能な覚醒度低下判定基準値の初期化を行う。
【0019】
次のステップS2において、制御装置1は、自発行動の負荷量を規定する自発行動設定値の初期化を行う。
【0020】
次のステップS3において、制御装置1は、自発行動による誘導効果を判定するための閾値であって任意に設定可能な誘導効果判定基準値の初期化を行う。
【0021】
続いて、居眠り防止装置は、ステップS4において、心拍信号処理部12により、心拍センサ4によって検出された心拍信号に基づいて心拍信号情報を算出する。そして、心拍信号処理部12は、算出した心拍信号情報を、上述した覚醒度低下判定基準値との比較を行うことが可能な覚醒度低下判定値に変換する。心拍信号処理部12は、これら心拍信号情報及び覚醒度低下判定値をメイン処理部14に供給する。なお、このステップS4における処理は、後に詳述するものとする。
【0022】
続いて、メイン処理部14は、ステップS5において、ステップS4にて取得された覚醒度低下判定値と覚醒度低下判定基準値とを比較する。メイン処理部14は、覚醒度低下判定値が覚醒度低下判定基準値よりも小さい場合には、動作者の覚醒度が低下していないと判定し、ステップS4からの処理を繰り返す。一方、メイン処理部14は、覚醒度低下判定値が覚醒度低下判定基準値以上である場合には、動作者の覚醒度が低下したと判定し、ステップS6へと処理を移行する。
【0023】
そして、メイン処理部14は、ステップS6において、対話処理部11を制御して、動作者に自発行動として対話を行わせ、動作者の覚醒を促す。なお、このステップS6における処理は、後に詳述するものとする。
【0024】
続いて、心拍信号処理部12は、ステップS7において、ステップS6にて行われた自発行動によって覚醒度状態が改善した効果を確認するために、心拍センサ4によって検出された心拍信号に基づいて心拍信号情報を算出し、算出した心拍信号情報を、上述した誘導効果判定基準値との比較を行うことが可能な誘導効果判定値に変換する。心拍信号処理部12は、これら心拍信号情報及び誘導効果判定値をメイン処理部14に供給する。なお、このステップS7における処理は、後に詳述するものとする。
【0025】
続いて、メイン処理部14は、ステップS8において、誘導効果判定値と誘導効果判定基準値とを比較し、ステップS6にて行われた自発行動の効果を確認する。メイン処理部14は、誘導効果判定値が誘導効果判定基準値以上である場合には、自発行動による誘導効果があったとして、ステップS4からの処理を繰り返す。一方、メイン処理部14は、誘導効果判定値が誘導効果判定基準値よりも小さい場合には、自発行動による誘導効果が少なかったとして、ステップS9へと処理を移行する。
【0026】
そして、メイン処理部14は、ステップS9において、自発行動設定値を変更し、ステップS6からの処理を繰り返す。なお、このステップS9における処理は、後に詳述するものとする。
【0027】
居眠り防止装置は、このような一連の手順にしたがって、動作者の居眠りを防止するための動作を行うことができる。通常、所定の刺激に対して反応しやすい動作者と反応しにくい動作者がいるが、従来の技術においては、現在の動作者の状態を睡眠状態とし、目標状態を覚醒状態としたときに、刺激に対して反応しやすい動作者については、目標値に到達していないと判定されるので、無意味な刺激が所定時間与え続けられることになり、刺激に対して反応しにくい動作者については、たとえ目標値に到達したとしても、刺激に対して過敏に反応する動作者であると考えられ、所定時間刺激が与えられ続けることによって不快感を与えてしまう場合がある。本実施形態として示す居眠り防止装置は、自発行動による誘導効果を確認した後、刺激を与えるためにフィードフォワード制御を行うので、動作者に与える刺激を最適化することができる。
【0028】
「心拍信号測定処理(ステップS4)の詳細」
つぎに、図4を用いて、ステップS4における心拍信号の測定処理の詳細について説明する。
【0029】
まず、心拍信号処理部12は、図4に示すように、ステップS10において、心拍センサ4から動作者の心拍信号を検出する。検出された心拍信号は、メイン処理部14の制御に従って、検出履歴として記録装置13に記録される。
【0030】
続いて、心拍信号処理部12は、ステップS11において、ステップS10にて検出された心拍信号と記録装置13に記録された心拍信号履歴とに基づいて、瞬時心拍数を算出する。
【0031】
続いて、心拍信号処理部12は、ステップS12において、ステップS10にて検出された心拍信号と記録装置13に記録された心拍信号履歴とに基づいて、心拍ゆらぎの分散RRVを算出する。
【0032】
そして、心拍信号処理部12は、ステップS13において、ステップS11にて算出された瞬時心拍数と、ステップS12にて算出された心拍ゆらぎの分散RRVとに基づいて、覚醒度低下判定値を算出する。この覚醒度低下判定値の算出は、以下のようにして行われる。
【0033】
図5(a)に、動作者の覚醒度が低下したときにおける心拍ゆらぎの分散RRVの時系列変化を示し、図5(b)に、動作者の覚醒度が低下したときの瞬時心拍数の時系列変化を示す。これら2つのグラフをみると、図中の中央部において、覚醒度低下判定基準値を超える瞬時心拍数及び心拍ゆらぎの分散RRVが発生する区間が存在する。この区間では、動作者の覚醒度が低下しており、動作者は眠気との葛藤状態にある。すなわち、動作者は、運転中に眠気を感じると、当該眠気に打ち勝とうとして欠伸や体動等の抵抗動作を行い、この抵抗動作に応じて、瞬時心拍数が上昇し、心拍ゆらぎの分散RRVも上昇する。この現象が現れているのが、上述した区間である。
【0034】
そこで、心拍信号処理部12は、ステップS11にて算出された瞬時心拍数と、ステップS12にて算出された心拍ゆらぎの分散RRVとを、覚醒度低下判定基準値と比較し、この覚醒度低下判定基準値との差分値を覚醒度低下判定値に加算する。これにより、動作者の覚醒度低下状態を算出することができる。
【0035】
心拍信号処理部12は、このような一連の手順にしたがって、覚醒度低下判定値を算出することができる。
【0036】
「対話処理(ステップS6)の詳細」
つぎに、図6を用いて、図3中ステップS6における対話処理の詳細について説明する。
【0037】
まず、メイン処理部14は、図6に示すように、ステップS20において、動作者に自発行動として誘導する対話セット情報を、記録装置13から対話処理部11に読み込ませる。
【0038】
ここで、対話セット情報は、例えば図7に示すように、クイズ等の質問文を動作者に提示すると共に、動作者が発話した回答に対する応答を動作者に提示する内容等の対話文章から構成される。図7には、予め設定された単語群の中から複数個(最大4個、最小2個)の単語を動作者に対話にて提示し、当該単語が示す物の大きさ順位(n番目に、大きい/小さい)をクイズとして出題する対話セットについて示している。このような対話セットにおいては、動作者によって発話されると想定される対象が、出題される単語群に限定されるので、発話認識のためのシステムを簡略化することができる。
【0039】
メイン処理部14は、このような対話セット情報を対話処理部11に読み込ませると、ステップS21において、自発行動設定値に基づいて、ステップS20にて対話処理部11に読み込まれた対話セットの負荷量(難易度)を決定する。
【0040】
具体的には、図7に示す対話セットの場合には、出題される単語数が最大の4個であり、出題される大きさ順位が「n番目に、大きい/小さい」である。これは、出題される本対話セットの例における最大対話負荷量である。したがって、メイン処理部14は、自発行動設定値が小さい場合には、単語数を減少させる。これにより、対話セットの対話負荷量としての記憶負荷量を低減させることができる。また、メイン処理部14は、出題される単語数が固定されているとして、出題されている大きさ順位を「最も、大きい/小さい」に変更することにより、対話セットの対話負荷量としての計算負荷量を低減させることができる。さらに、メイン処理部14は、本対話セットの例における対話負荷量として出題される単語数を調整することにより、記憶負荷量のみならず、計算負荷量も変動させることができる。図7に示す対話セットの例は、動作者に対して対話によって自発行動を行わせ、且つ、対話負荷量として計算負荷量及び記憶負荷量を調整することが可能な対話セットである。なお、対話セットとしては、この例の他に、動作者に対して対話によって自発行動を行わせ、且つ、対話負荷量として計算負荷量及び/又は記憶負荷量を調整することが可能なものであれば、いかなるものであってもよい。
【0041】
続いて、メイン処理部14は、ステップS22において、ステップS21にて設定された対話負荷量に応じて、ステップS20にて対話処理部11に読み込まれた対話セットに基づいて、対話として動作者に呼び掛ける質問文を構築する。
【0042】
そして、メイン処理部14は、ステップS23において、対話処理部11を制御して、ステップS22にて構築された質問文を、スピーカ3を介して動作者に呼び掛けさせる。これに応じて、動作者は、回答を発話することになる。
【0043】
メイン処理部14は、動作者によって回答が発話されると、ステップS24において、対話処理部11を制御して、マイク2を介した動作者の発話を入力する。
【0044】
続いて、メイン処理部14は、ステップS25において、ステップS24にて入力された動作者の発話内容を判定する。
【0045】
ここで、動作者の発話内容が、ステップS23にて動作者に呼び掛けられた質問の正解であった場合には、メイン処理部14は、ステップS27へと処理を移行し、対話処理部11を制御して、正解である旨を、スピーカ3を介して動作者に提示させ、一連の処理を終了する。また、動作者の発話内容が、ステップS23にて動作者に呼び掛けられた質問の不正解であった場合には、メイン処理部14は、ステップS28へと処理を移行し、対話処理部11を制御して、不正解である旨や正解内容を、スピーカ3を介して動作者に提示させ、一連の処理を終了する。さらに、ステップS24にて予め定められた時間内に動作者が発話しない等によって発話入力が失敗した場合には、メイン処理部14は、ステップS26へと処理を移行し、対話処理部11を制御して、再度の発話を行うようにスピーカ3を介して動作者に呼び掛けさせ、ステップS23からの処理を繰り返す。
【0046】
メイン処理部14は、このような一連の手順にしたがって、動作者に自発行動として対話を行わせることができる。
【0047】
「心拍・自発行動効果確認処理(ステップS7)の詳細」
つぎに、図8を用いて、図3中ステップS7における心拍・自発行動効果確認処理の詳細について説明する。
【0048】
まず、心拍信号処理部12は、図8に示すように、ステップS30において、心拍センサ4から動作者の心拍信号を検出すると、ステップS31において、瞬時心拍数を算出する。なお、これらステップS30及びステップS31の処理は、図3中ステップS4における心拍信号の測定処理と同様にして行われる。
【0049】
そして、心拍信号処理部12は、ステップS32において、ステップS31にて算出された瞬時心拍数に基づいて、誘導効果判定値を算出する。この誘導効果判定値の算出は、以下のようにして行われる。
【0050】
図9(a)に、対話負荷量を高くして動作者に対して自発行動を誘導したときの瞬時心拍数の時系列変化を示し、図9(b)に、対話負荷量を低くして動作者に対して自発行動を誘導したときの瞬時心拍数の時系列変化を示す。これら2つのグラフをみると、自発行動が行われている期間では、対話負荷量が高い場合には大きな心拍数上昇A1,A2,A3が検出されるのに対して、対話負荷量が小さい場合には心拍数上昇B1,B2,B3の変化が小さいことがわかる。すなわち、動作者は、対話負荷量が低い対話を行う場合よりも対話負荷量が高い対話を行う場合の方が瞬時心拍数を上昇させる傾向がある。
【0051】
そこで、心拍信号処理部12は、自発行動期間中の心拍数上昇量を比較することにより、自発行動による誘導効果を算出することができる。なお、この自発行動期間中の心拍数上昇は、自発行動期間内における瞬時心拍数と自発行動前後の瞬時心拍数との差分を用いるので、先に図5(a)及び図5(b)に示した覚醒度の低下による心拍数上昇とは区別することができる。
【0052】
心拍信号処理部12は、このような一連の手順にしたがって、自発行動による覚醒度状態改善の効果を確認することができる。
【0053】
「自発行動設定値変更処理(ステップS9)の詳細」
つぎに、図10を用いて、図3中ステップS9における自発行動設定値変更処理の詳細について説明する。
【0054】
まず、メイン処理部14は、図10に示すように、ステップS40において、現在設定されている自発行動設定値が設定可能な最大値であるか否かを判定する。
【0055】
ここで、メイン処理部14は、現在の自発行動設定値が最大値でない場合には、ステップS42へと処理を移行する。この場合、現在の自発行動設定値では動作者への誘導効果が小さい状況である。そのため、メイン処理部14は、ステップS42において、自発行動設定値を1段階上昇させ、一連の処理を終了する。
【0056】
一方、メイン処理部14は、現在の自発行動設定値が最大値である場合には、ステップS41へと処理を移行する。この場合、現在の自発行動設定値が最大値であるので、誘導される最大負荷量の自発行動であっても覚醒度の向上効果が見込めない状況である。
【0057】
図11(a)及び図11(b)に、動作者に自発行動を誘導した場合に、自発行動設定値が最大であるにもかかわらず、誘導効果が得られなかった場合における瞬時心拍数の傾向を示す。図11(a)は、動作者の状態が良好である場合における瞬時心拍数の時系列変化であり、図11(b)は、動作者の状態が、覚醒度が低く良好ではない場合における瞬時心拍数の時系列変化である。これら2つのグラフをみると、動作者の状態が良好な場合には大きな心拍数上昇A1,A2,A3がみられるが、動作者の状態が、覚醒度が低く良好ではない場合には心拍数上昇B1,B2,B3が小さくなる。すなわち、図3中ステップS7にて算出される誘導効果判定値は、小さい値となる。
【0058】
そのため、メイン処理部14は、動作者の状態が、覚醒度が低く良好ではない場合には、ステップS41へと処理を移行し、対話処理部11を制御して、スピーカ3を介して警報を動作者に提示し、運転の中止を促し、一連の処理を終了する。
【0059】
メイン処理部14は、このような一連の手順にしたがって、自発行動設定値を適切に変更することができる。
【0060】
[第1実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明の第1実施形態として示した居眠り防止装置は、動作者の状態に基づいて覚醒度が低下していると判定された場合に、動作者に自発行動を誘導する刺激を与える。そして、当該動作者に刺激を与えた後に検出された動作者の状態に基づいて自発行動による誘導効果を判定し、当該誘導効果に応じて、動作者に与える刺激内容を制御する。
【0061】
したがって、この居眠り防止装置によれば、自発行動による誘導効果を判定することにより、個々の刺激によって誘導された自発行動の効果を明確に把握することができる。これにより、過剰な刺激提示や、効果のない刺激提示を繰り返してしまうことがなく、運転者の状態に応じた最適な自発行動の誘導を行うことができ、運転者の覚醒度が低下した状態で刺激を与えることで、高い運転者覚醒度維持効果を得ることができる。
【0062】
また、この居眠り防止装置は、動作者に刺激を与えた後に検出された動作者の心拍状態に基づいて、自発行動による誘導効果を判定する。このように、この居眠り防止装置においては、心拍状態という単独の指標のみを検出するので、動作者の状態計測をより簡便にすることができる。
【0063】
さらに、この居眠り防止装置は、動作者の心拍信号の履歴を記録装置13に記録し、記録装置13に記録された心拍信号履歴に基づいて、瞬時心拍数及び心拍ゆらぎの分散RRVの変化量を解析し、当該解析結果を心拍状態として出力する。このように、この居眠り防止装置によれば、心拍信号から瞬時心拍数及び心拍ゆらぎの分散RRVの変化量のみを抽出して出力するので、心拍信号に基づいて、動作者の覚醒度低下に関する情報を効率よく取得することができる。
【0064】
さらにまた、この居眠り防止装置は、解析した瞬時心拍数及び心拍ゆらぎの分散RRVの変化量に基づいて動作者の覚醒度低下を判定するので、心拍数が上昇して心拍ゆらぎの分散RRVが増加する状態、すなわち、動作者が眠気と葛藤している状態を検出することができる。そのため、この居眠り防止装置によれば、動作者にとって違和感のない覚醒度低下状態を検出することができる。
【0065】
また、この居眠り防止装置によれば、誘導された自発行動に応じて検出された動作者の心拍数上昇傾向に基づいて自発行動による誘導効果を判定するので、動作者の状態に適した自発行動を選択して誘導することができる。
【0066】
さらに、この居眠り防止装置は、動作者に対話による自発行動を行う旨を指示するように当該動作者に刺激を与え、動作者によって行われた自発行動としての対話内容が指示に対応したものであるか否かに応じて、刺激として与える対話の負荷量を変更する。このように、この居眠り防止装置によれば、動作者に対話による自発行動を誘導することができるので、動作者に誘導される自発行動に対する親近感を持たせることができる。
【0067】
さらにまた、この居眠り防止装置は、誘導効果の判定結果に応じて、動作者に与える刺激の指示量を変更することによって当該動作者に誘導される自発行動の負荷量を変更し、自発行動の誘導効果を調整する。具体的には、この居眠り防止装置は、誘導効果の判定結果に応じて、刺激として動作者に与える対話成立に必要な記憶負荷量若しくは計算負荷量の少なくとも1つを変更することによって当該動作者に誘導される自発行動の負荷量を変更し、自発行動の誘導効果を調整する。このように、この居眠り防止装置によれば、対話による自発行動の負荷量を変更するために、記憶負荷量や計算負荷量のみを利用するので、自発行動として誘導される対話を成立させるために必要な情報量を抑制することができる。
【0068】
[第2実施形態]
つぎに、本発明の第2実施形態について説明する。
【0069】
この第2実施形態として示す居眠り防止装置は、動作者の血圧に基づいて覚醒度低下を判定すると共に、動作者に対して対話ではなく筋運動による自発行動を誘導するものである。したがって、この第2実施形態においては、第1実施形態にて説明した部位と同一部位については、それぞれ、同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0070】
[居眠り防止装置の構成]
本発明の第2実施形態として示す居眠り防止装置は、図12に示すように、動作者に筋運動による自発行動状態を表示する筋運動提示手段であるディスプレイ31と、動作者の筋運動を検出する筋運動検出手段である圧力センサ32と、動作者の血圧信号を検出する血圧信号検出手段である血圧センサ33とを備える。
【0071】
制御装置1は、動作者に自発行動を誘導する作業を統括制御する制御手段であるメイン処理部14と、動作者の血圧情報を算出する血圧信号解析手段である血圧信号処理部16と、動作者に対する筋運動による自発行動を制御する筋運動制御手段である筋運動処理部15と、メイン処理部14に入出力される情報を記録する記録装置13とを有する。
【0072】
メイン処理部14は、血圧信号処理部16によって算出された動作者の血圧情報から求められた当該動作者の覚醒度状態に基づいて、動作者に自発行動を誘導する作業を統括制御する。メイン処理部14は、動作者の覚醒度が低下していると判定した場合には、筋運動処理部15を制御して、動作者に自発行動として筋運動を行わせる。また、メイン処理部14は、血圧信号処理部16から供給された血圧情報を記録装置13に記録させる。
【0073】
血圧信号処理部16は、血圧センサ33によって検出された血圧信号に基づいて、動作者の血圧情報を算出する。そして、血圧信号処理部16は、算出した血圧情報に基づいて、動作者の覚醒度低下判定値を算出する。血圧信号処理部16は、算出した血圧情報や覚醒度低下判定値をメイン処理部14に供給する。
【0074】
筋運動処理部15は、メイン処理部14の制御に従って、記録装置13から読み込んだ筋運動セット情報に基づいて、ディスプレイ31及びスピーカ3を介して動作者に自発行動として筋運動を行わせる際の制御を行う。なお、動作者による自発行動としての筋運動は、圧力センサ32によって検出され、当該圧力信号がメイン処理部14に供給される。
【0075】
記録装置13は、メイン処理部14に入力された血圧情報や覚醒度低下判定値等の情報を記録する。また、記録装置13は、動作者に自発行動として行わせる筋運動セット情報を記録する。この筋運動セット情報は、メイン処理部14の制御に従って、筋運動処理部15によって読み出される。
【0076】
このような制御装置1、血圧センサ33、圧力センサ32、ディスプレイ31、及び、スピーカ3は、例えば図13に示すように、車室内に配置されている。すなわち、制御装置1は、制御装置1と同様に、車両に搭載されているナビゲーションシステムにソフトウェアとして実装されたり、所定のハードウェアによって実装されている。また、血圧センサ33は、動作者の操作姿勢にかかわらず、安定して動作者の血圧信号を検出するために、動作者の手首等に装着される。さらに、圧力センサ32は、車両フットレストの表面に設置されている。これにより、動作者は、運転操作が妨げられることなく、筋運動による自発行動を行うことが可能となる。なお、圧力センサ32は、動作者の運転操作を妨げることなく、筋運動による自発行動を提供できるものであれば、いかなる場所に設置されていてもよい。さらにまた、ディスプレイ31は、車両に搭載されているナビゲーションシステム用の液晶ディスプレイ等を用いることができる。また、スピーカ3は、制御装置1からの警報を聴取しやすいように、運転席側のドア内面等に設置されている。
【0077】
[居眠り防止装置の動作]
「基本動作」
このような各部を備える居眠り防止装置は、図14に示すような一連の手順にしたがって、動作者の居眠りを防止するための動作を行う。
【0078】
まず、居眠り防止装置は、図14に示すように、制御装置1の制御に従って、図3中ステップS1乃至ステップS3と同様の処理を行い、覚醒度低下判定基準値、自発行動設定値、及び誘導効果判定基準値の初期化を行う。
【0079】
次のステップS51において、血圧信号処理部16により、血圧センサ33によって検出された血圧信号に基づいて血圧信号情報を算出する。そして、血圧信号処理部16は、算出した血圧信号情報を、上述した覚醒度低下判定基準値との比較を行うことが可能な覚醒度低下判定値に変換する。血圧信号処理部16は、これら血圧信号情報及び覚醒度低下判定値をメイン処理部14に供給する。なお、このステップS51における処理は、後に詳述するものとする。
【0080】
続いて、メイン処理部14は、図3中ステップS5と同様の処理を行い、覚醒度低下判定値が覚醒度低下判定基準値よりも小さい場合には、動作者の覚醒度が低下していないと判定し、ステップS51からの処理を繰り返す。一方、メイン処理部14は、覚醒度低下判定値が覚醒度低下判定基準値以上である場合には、動作者の覚醒度が低下したと判定し、ステップS52へと処理を移行する。
【0081】
そして、メイン処理部14は、ステップS52において、筋運動処理部15を制御して、動作者に自発行動として筋運動を行わせ、動作者の覚醒を促す。なお、このステップS52における処理は、後に詳述するものとする。
【0082】
続いて、血圧信号処理部16は、ステップS53において、ステップS52にて行われた自発行動による覚醒度状態改善の効果を確認するために、血圧センサ33によって検出された血圧信号に基づいて血圧信号情報を算出し、算出した血圧信号情報を、上述した誘導効果判定基準値との比較を行うことが可能な誘導効果判定値に変換する。血圧信号処理部16は、これら血圧信号情報及び誘導効果判定値をメイン処理部14に供給する。なお、このステップS53における処理は、後に詳述するものとする。
【0083】
その後、メイン処理部14は、図3中ステップS8及びステップS9と同様の処理を行うことになる。
【0084】
居眠り防止装置は、このような一連の手順にしたがって、動作者の居眠りを防止するための動作を行うことができる。なお、居眠り防止装置は、動作者の心拍情報も検出している場合には、例えば、動作者の覚醒度低下の判定については血圧情報のみを用いたとしても、誘導効果の判定については心拍情報と血圧情報との双方を利用するようにしてもよく、覚醒度低下の判定と誘導効果の判定とに用いる指標を同一としなくてもよい。
【0085】
「血圧信号測定処理(ステップS51)の詳細」
つぎに、図15を用いて、ステップS51における血圧信号測定処理の詳細について説明する。
【0086】
まず、血圧信号処理部16は、図15に示すように、ステップS60において、血圧センサ33から動作者の血圧信号を検出する。検出された血圧信号は、メイン処理部14の制御に従って、検出履歴として記録装置13に記録される。
【0087】
続いて、血圧信号処理部16は、ステップS61において、ステップS60にて検出された血圧信号と記録装置13に記録された血圧信号履歴とに基づいて、最低血圧値を算出する。
【0088】
続いて、血圧信号処理部16は、ステップS62において、ステップS60にて検出された血圧信号と記録装置13に記録された血圧信号履歴とに基づいて、最低血圧値間の時間差における分散を算出する。すなわち、時間的に連続して検出される血圧は、心臓の運動に連動した波形を有する信号である。最低血圧値間の時間差における分散とは、かかる波形のばらつきを示す値であり、最低血圧値のピーク間の時間差における分散を意味する。
【0089】
そして、血圧信号処理部16は、ステップS63において、ステップS61にて算出された最低血圧値と、ステップS62にて算出された最低血圧値間の時間差における分散とに基づいて、覚醒度低下判定値を算出する。この覚醒度低下判定値の算出は、以下のようにして行われる。
【0090】
図16(a)に、動作者の覚醒度が低下したときの最低血圧値間の時間差における分散の時系列変化を示し、図16(b)に、動作者の覚醒度が低下したときの最低血圧値の時系列変化を示す。これら2つのグラフをみると、図中の点線で示す中央部において、覚醒度低下判定基準値を超える最低血圧値及び最低血圧値間の時間差における分散が発生する区間が存在する。この区間では、動作者の覚醒度が低下しており、動作者は眠気との葛藤状態にある。すなわち、動作者は、運転中に眠気を感じると血圧が低下し、これに応じて、最低血圧値が上昇し、最低血圧値間の時間差における分散も上昇する。この現象が現れているのが、上述した区間である。
【0091】
そこで、血圧信号処理部16は、ステップS61にて算出された最低血圧値と、ステップS62にて算出された最低血圧値間の時間差における分散とを、覚醒度低下判定基準値と比較し、この覚醒度低下判定基準値との差分値を覚醒度低下判定値に加算することにより、動作者の覚醒度低下状態を算出することができる。
【0092】
血圧信号処理部16は、このような一連の手順にしたがって、覚醒度低下判定値を算出することができる。
【0093】
「筋運動処理(ステップS52)の詳細」
つぎに、図17を用いて、図14中ステップS52における筋運動処理の詳細について説明する。
【0094】
まず、メイン処理部14は、図17に示すように、ステップS70において、動作者に自発行動として誘導する筋運動セット情報を、記録装置13から筋運動処理部15に読み込ませる。
【0095】
ここで、筋運動セット情報は、車両フットレストの表面等に設置されている圧力センサ32に対する踏み込み圧力と指定圧力での踏み込み時間とから構成される。
【0096】
メイン処理部14は、このような筋運動セット情報を筋運動処理部15に読み込ませると、ステップS71において、自発行動設定値に基づいて、ステップS70にて筋運動処理部15に読み込まれた筋運動セットの負荷量を決定する。具体的には、メイン処理部14は、自発行動設定値が大きいほど、動作者に大きな筋運動を行わせるために、圧力センサ32に対する入力圧力閾値及び力提示時間を増加させる。
【0097】
続いて、メイン処理部14は、ステップS72において、ステップS71にて設定された筋運動負荷量に応じて、ステップS70にて筋運動処理部15に読み込まれた筋運動セットに基づいて、筋運動提示としてディスプレイ31を介して動作者に提示する情報を構築する。
【0098】
そして、メイン処理部14は、ステップS73において、筋運動処理部15を制御して、ステップS72にて構築された情報を、ディスプレイ31を介して動作者に表示させる。また、メイン処理部14は、筋運動処理部15を制御して、スピーカ3を介して筋運動開始が表示された旨を報知する音楽を再生させる。これに応じて、動作者は、筋運動を開始することになる。
【0099】
メイン処理部14は、動作者によって筋運動が開始されると、ステップS74において、筋運動処理部15を制御して、圧力センサ32から動作者の筋運動を入力する。
【0100】
続いて、メイン処理部14は、ステップS75において、ステップS74にて入力された動作者の筋運動結果が、ステップS71にて設定された適切な運動であるか否かを判定する。
【0101】
ここで、動作者の筋運動が適切であった場合には、メイン処理部14は、ステップS77へと処理を移行し、筋運動処理部15を制御して、適切な筋運動入力に成功した旨を示す表示を、ディスプレイ31を介して動作者に提示し、さらに、スピーカ3を介して入力成功を提示する音楽を再生させ、一連の処理を終了する。また、動作者の筋運動が不適切であった場合には、メイン処理部14は、ステップS76へと処理を移行し、筋運動処理部15を制御して、適切な筋運動入力に失敗した旨を示す表示を、ディスプレイ31を介して動作者に提示し、さらに、スピーカ3を介して入力失敗を提示する音楽を再生させた後、ステップS73からの処理を繰り返す。
【0102】
メイン処理部14は、このような一連の手順にしたがって、動作者に自発行動として筋運動を行わせることができる。
【0103】
「血圧・自発行動効果確認処理(ステップS53)の詳細」
つぎに、図18を用いて、図14中ステップS53における血圧・自発行動効果確認処理の詳細について説明する。
【0104】
まず、血圧信号処理部16は、図18に示すように、ステップS80において、血圧センサ33から動作者の血圧信号を検出すると、ステップS81において、最低血圧値を算出する。なお、これらステップS80及びステップS81の処理は、図14中ステップS51における血圧信号測定処理と同様にして行われる。
【0105】
そして、血圧信号処理部16は、ステップS82において、ステップS81にて算出された最低血圧値に基づいて、誘導効果判定値を算出する。この誘導効果判定値の算出は、以下のようにして行われる。
【0106】
図19(a)に、筋運動負荷量を高くして動作者に対して自発行動を誘導したときの最低血圧値の時系列変化を示し、図19(b)に、筋運動負荷量を低くして動作者に対して自発行動を誘導したときの最低血圧値の時系列変化を示す。これら2つのグラフをみると、自発行動が行われている期間では、筋運動負荷量が高い場合には大きな最低血圧値上昇A1,A2,A3が検出されるのに対して、筋運動負荷量が小さい場合には最低血圧値上昇B1,B2,B3の変化が小さいことがわかる。すなわち、動作者は、負荷量が低い筋運動を行う場合よりも負荷量が高い筋運動を行う場合の方が最低血圧値を上昇させる傾向がある。
【0107】
そこで、血圧信号処理部16は、自発行動期間中の最低血圧値上昇量を比較することにより、自発行動による誘導効果を算出することができる。なお、この自発行動期間中の最低血圧値上昇は、自発行動期間内における最低血圧値と自発行動前後の最低血圧値との差分を用いるので、先に図16(a)及び図16(b)に示した覚醒度の低下による最低血圧値上昇とは区別することができる。
【0108】
血圧信号処理部16は、このような一連の手順にしたがって、自発行動による覚醒度状態改善の効果を確認することができる。
【0109】
なお、図20(a)及び図20(b)に、動作者に自発行動を誘導した場合に、自発行動設定値が最大であるにもかかわらず、誘導効果が得られなかった場合における最低血圧値の傾向を示す。図20(a)は、動作者の状態が良好である場合における最低血圧値の時系列変化であり、図20(b)は、動作者の状態が、覚醒度が低く良好ではない場合における最低血圧値の時系列変化である。これら2つのグラフをみると、動作者の状態が良好な場合には大きな最低血圧値上昇A1,A2,A3がみられるが、動作者の状態が、覚醒度が低く良好ではない場合には最低血圧値上昇B1,B2,B3が小さくなる。すなわち、図18中ステップS82にて算出される誘導効果判定値は、小さい値となる。
【0110】
そのため、メイン処理部14は、動作者の状態が、覚醒度が低く良好ではない場合には、筋運動処理部15を制御して、スピーカ3を介して警報を動作者に提示し、運転の中止を促すことになる。
【0111】
[第2実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明の第2実施形態として示した居眠り防止装置は、動作者に刺激を与えた後に、血圧センサ33及び血圧信号処理部16によって検出された動作者の血圧状態に基づいて、メイン処理部14及び血圧信号処理部16の制御に従って、自発行動による誘導効果を判定する。
【0112】
このように、本発明の第1の実施形態と同様の効果を有するとともに、この居眠り防止装置によれば、血圧状態という単独の指標のみを検出するので、運転者の状態計測をより簡便にすることができる。また、自発行動による誘導効果を判定することにより、個々の刺激によって誘導された自発行動の効果を明確に把握することができ、過剰な刺激提示や、効果のない刺激提示を繰り返してしまうことがなく、運転者の状態に応じた最適な自発行動の誘導を行うことができる。
【0113】
また、この居眠り防止装置によれば、動作者の血圧信号の履歴を記録装置13に記録し、記録装置13に記録された血圧信号履歴に基づいて、最低血圧値及び最低血圧値間の時間差における分散変化量を解析し、当該解析結果を血圧状態として出力する。このように、この居眠り防止装置によれば、血圧信号から最低血圧値及び最低血圧値間の時間差における分散変化量のみを抽出して血圧状態を出力するので、当該血圧信号に基づいて、動作者の覚醒度低下に関する情報を効率よく取得することができる。
【0114】
さらに、この居眠り防止装置によれば、解析した最低血圧値及び最低血圧値間の時間差における分散変化量に基づいて動作者の覚醒度の低下を判定するので、最低血圧値が上昇して最低血圧値間の時間差における分散が増加する状態、すなわち、動作者が眠気と葛藤している状態を検出することができる。そのため、この居眠り防止装置は、動作者にとって違和感のない覚醒度の低下状態を検出することができる。
【0115】
さらにまた、この居眠り防止装置によれば、誘導された自発行動に応じて検出された動作者の最低血圧値の上昇傾向に基づいて、自発行動による誘導効果を判定するので、動作者の状態に適した自発行動を選択して誘導することができる。
【0116】
また、この居眠り防止装置は、動作者に筋運動による自発行動を行う旨を指示するように当該動作者に刺激を与え、動作者によって行われた自発行動としての筋運動内容が指示に対応したものであるか否かに応じて、刺激として与える筋運動の負荷量を変更する。このように、この居眠り防止装置によれば、動作者に筋運動による自発行動を誘導することができるので、高い血圧上昇をともなう自発行動である筋運動を動作者に与えることができる。
【0117】
さらに、この居眠り防止装置は、メイン処理部14の制御に従って、誘導効果の判定結果に応じて、刺激として動作者に与える筋運動の必要運動量を変更することによって当該動作者に誘導される自発行動の負荷量を変更し、自発行動の誘導効果を調整する。このように、この居眠り防止装置によれば、筋運動による自発行動の負荷量を変更するために必要運度量を利用するので、動作者が直感的に把握可能な負荷量変化を筋運動による自発行動によって誘導することができる。
【0118】
[第3実施形態]
つぎに、本発明の第3実施形態について説明する。
【0119】
この第3実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態として示した居眠り防止装置を改良し、動作者の心拍数のみならず血圧も用いて覚醒度低下を判定するものである。したがって、この第3実施形態においては、第1実施形態及び第2実施形態にて説明した部位と同一部位については、それぞれ、同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0120】
[居眠り防止装置の構成]
本発明の第3実施形態として示す居眠り防止装置は、図21に示すように、先に図1に示した心拍センサ4、マイク2、及びスピーカ3の他に、先に図12に示した血圧センサ33を備え、さらに、当該居眠り防止装置を統括的に制御する制御装置1を備える。
【0121】
制御装置1は、先に図1に示した心拍信号処理部12、対話処理部11、及び記録装置13の他に、先に図12に示した血圧信号処理部16を有し、さらに、動作者に自発行動を誘導する作業を統括制御する制御手段であるメイン処理部14を有する。
【0122】
メイン処理部14は、心拍信号処理部12によって算出された動作者の心拍数情報と、血圧信号処理部16によって算出された動作者の血圧情報とから求められた当該動作者の覚醒度状態に基づいて、動作者に自発行動を誘導する作業を統括制御する。メイン処理部14は、動作者の覚醒度が低下していると判定した場合には、対話処理部11を制御して、動作者に自発行動として対話を行わせる。また、メイン処理部14は、心拍信号処理部12から供給された心拍数情報や血圧信号処理部16から供給された血圧情報を記録装置13に記録させる。
【0123】
なお、制御装置1は、動作者の心拍数や血圧の他に、図示しない生体信号センサによって検出された動作者の脳波や皮膚電位等の生体信号や、図示しない顔画像撮像カメラによって撮像された動作者の顔面映像等を用いて、動作者の覚醒度を判定することもできる。
【0124】
このような心拍センサ4、マイク2、スピーカ3、血圧センサ33、及び、制御装置1は、例えば図22に示すように、車室内に配置されている。すなわち、制御装置1は、上述した制御装置1と同様に、車両に搭載されているナビゲーションシステムにソフトウェアとして実装、又は、所定のハードウェアによって実装されている。その他の要素は、図2及び図13に示した配置と同様に配置されている。
【0125】
[居眠り防止装置の動作]
「基本動作」
このような各部を備える居眠り防止装置は、図23に示すような一連の手順にしたがって、動作者の居眠りを防止するための動作を行う。
【0126】
まず、居眠り防止装置は、図23に示すように、制御装置1の制御に従って、図3中ステップS1乃至ステップS3と同様の処理を行い、覚醒度低下判定基準値、自発行動設定値、及び誘導効果判定基準値の初期化を行う。
【0127】
次のステップS91において、心拍信号処理部12により、心拍センサ4によって検出された心拍信号に基づいて心拍信号情報を算出し、算出した心拍信号情報を、上述した覚醒度低下判定基準値との比較を行うことが可能な覚醒度低下判定値に変換する。心拍信号処理部12は、これら心拍信号情報及び覚醒度低下判定値をメイン処理部14に供給する。また、血圧信号処理部16は、血圧センサ33によって検出された血圧信号に基づいて血圧信号情報を算出し、算出した血圧信号情報を、覚醒度低下判定基準値との比較を行うことが可能な覚醒度低下判定値に変換する。血圧信号処理部16は、これら血圧信号情報及び覚醒度低下判定値をメイン処理部14に供給する。なお、このステップS91における処理は、後に詳述するものとする。
【0128】
その後、メイン処理部14は、図3中ステップS5及びステップS6と同様の処理を行い、対話処理部11を制御して、動作者に自発行動として対話を行わせ、動作者の覚醒を促す。
【0129】
そして、居眠り防止装置は、心拍信号処理部12により、図3中ステップS7と同様の心拍・自発行動効果確認処理を行うと共に、図14中ステップS53と同様の血圧・自発行動効果確認処理を行う。
【0130】
その後、メイン処理部14は、図3中ステップS8及びステップS9と同様の処理を行うことになる。
【0131】
居眠り防止装置は、このような一連の手順にしたがって、動作者の居眠りを防止するための動作を行うことができる。
【0132】
「生体信号測定処理(ステップS91)の詳細]
つぎに、図24を用いて、ステップS91における生体信号測定処理の詳細について説明する。
【0133】
まず、居眠り防止装置は、図24に示すように、ステップS101において、心拍信号処理部12によって心拍信号の測定処理を行い、動作者の心拍信号に基づいて瞬時心拍数を算出すると共に、ステップS102において、血圧信号処理部16によって血圧信号測定処理を行い、動作者の血圧信号に基づいて最低血圧値を算出する。なお、これらステップS101及びステップS102の処理は、それぞれ、図3中ステップS4における心拍信号測定処理及び図14中ステップS51における血圧信号測定処理と同様にして行われる。
【0134】
そして、メイン処理部14は、ステップS103において、ステップS101にて算出された瞬時心拍数と、ステップS102にて算出された最低血圧値とに基づいて、覚醒度低下判定値を算出する。この覚醒度低下判定値の算出は、先に図5(b)に示した動作者の覚醒度が低下したときの瞬時心拍数の時系列変化と、先に図16(b)に示した動作者の覚醒度が低下したときの最低血圧値の時系列変化とに基づいて行われる。すなわち、上述したように、覚醒度低下判定基準値を超える瞬時心拍数及び最低血圧値が発生する区間では、動作者の覚醒度が低下しており、動作者は眠気との葛藤状態にある。メイン処理部14は、これら瞬時心拍数及び最低血圧値を覚醒度低下判定基準値と比較し、この覚醒度低下判定基準値との差分値を覚醒度低下判定値に加算することにより、動作者の覚醒度低下状態を算出することができる。
【0135】
居眠り防止装置は、このような一連の手順にしたがって、覚醒度低下判定値を算出することができる。
【0136】
[第3実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明の第3実施形態として示した居眠り防止装置は、メイン処理部14、心拍信号処理部12、及び血圧信号処理部16の制御に従って、解析した瞬時心拍数の変化量と最低血圧値の変化量とに基づいて、動作者の覚醒度の低下を判定する。
【0137】
このように、本発明の第1実施形態と同様の効果を有するとともに、瞬時心拍数の変化量と最低血圧値の変化量との関係に基づいて運転者の覚醒度低下を判定するので、心拍数が増加して最低血圧値が低下する状態、すなわち、運転者が眠気と葛藤している状態を検出することができる。そのため、この居眠り運転防止装置によれば、運転者にとって違和感のない覚醒度低下状態を検出することができる。
【0138】
そして、この居眠り防止装置によれば、自発行動による誘導効果を判定することにより、個々の刺激によって誘導された自発行動の効果を明確に把握することができ、過剰な刺激提示や、効果のない刺激提示を繰り返してしまうことがなく、動作者の状態に応じた最適な自発行動の誘導を行うことができる。
【0139】
また、この居眠り防止装置によれば、心拍情報と血圧情報とを組み合わせた動作者の覚醒度状態の判定と自発行動による誘導効果の判定とを行うことができるため、覚醒度の低下検出精度をより向上させることができる。
【0140】
[第4実施形態]
つぎに、本発明の第4実施形態について説明する。
【0141】
この第4実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態として示した居眠り防止装置を改良し、動作者の心拍数及び血圧信号を用いて覚醒度低下を判定すると共に、動作者に対して対話のみならず筋運動による自発行動を誘導し、さらに、車両の走行状況に基づいて自発行動の誘導が可能であるか否かを判定するものである。したがって、この第4実施形態においては、第1実施形態及び第2実施形態にて説明した部位と同一部位については、それぞれ、同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0142】
[居眠り防止装置の構成]
本発明の第4実施形態として示す居眠り防止装置は、図25に示すように、先に図1に示したマイク2,スピーカ3及び心拍センサ4の他に、先に図12に示した血圧センサ33を備え、さらに、当該居眠り防止装置を統括的に制御する制御装置1と、ステアリング21の操舵角を検出する操舵角センサ41と、車両の横方向加速度を検出する横Gセンサ42と、車両前方の走行路映像を撮像する走行路撮像カメラ43とを備える。なお、ここでのスピーカ3は、先に図12に示したスピーカ3の機能も兼ね備えるものである。
【0143】
操舵角センサ41、横Gセンサ42、及び走行路撮像カメラ43は、それぞれ、後述する制御装置1における走行状況処理部17に走行状況検出用の信号を出力するセンサ類である。
【0144】
操舵角センサ41は、ステアリングの操舵角を検出する。この操舵角センサ41によって検出された操舵角信号は、走行状況処理部17によって読みとられる。横Gセンサ42は、車両の横方向の加速度を検出する。この横Gセンサ42によって検出された横方向加速度信号は、走行状況処理部17によって読みとられる。走行路撮像カメラ43は、車両前方の走行路映像を撮像し、走行状況処理部17に出力する。なお、走行路撮像カメラ43は、画像処理装置を内蔵することも可能である。この場合、走行路撮像カメラ43は、撮像した車両前方の走行路映像から走行区分帯や前方車両を認識し、車両と走行区分帯との距離や前方車両との距離を算出し、これらの距離情報を走行状況処理部17に出力するようにしてもよい。
【0145】
なお、居眠り防止装置は、走行状況を検出するための信号を出力するものであれば、他のセンサを備えてもよい。また、居眠り防止装置は、操舵角センサ41、横Gセンサ42、及び走行路撮像カメラ43のセンサ類を全て備える必要はない。このうち、当該居眠り防止装置の設計思想に応じて、1つのセンサのみを備えてもよく、また、複数のセンサを任意に組み合わせてもよい。
【0146】
制御装置1は、先に図1に示した心拍信号処理部12、対話処理部11、及び記録装置13の他に、先に図12に示した血圧信号処理部16を有する。さらに、制御装置1は、動作者に自発行動を誘導する作業を統括制御する制御手段であるメイン処理部14と、現在の車両の走行状況を検出する走行状況検出手段である走行状況処理部17とを有する。
【0147】
メイン処理部14は、心拍信号処理部12によって算出された動作者の心拍数情報と、血圧信号処理部16によって算出された動作者の血圧情報とから求められた当該動作者の覚醒度状態に基づいて、動作者に自発行動を誘導する作業を統括制御する。メイン処理部14は、動作者の覚醒度が低下していると判定した場合には、対話処理部11を制御して、動作者に自発行動として対話を行わせると共に、筋運動処理部15を制御して動作者に自発行動として筋運動を行わせる。このとき、メイン処理部14は、走行状況処理部17によって検出された現在の車両の走行状況に基づいて、自発行動の誘導が可能な状態であるか否かを判定し、この判定結果に応じて自発行動の誘導を行う。また、メイン処理部14は、心拍信号処理部12から供給された心拍数情報や血圧信号処理部16から供給された血圧情報、走行状況処理部17から供給された走行状況情報を記録装置13に記録させる。
【0148】
走行状況処理部17は、操舵角センサ41によって検出されたステアリングの操舵角と、横Gセンサ42によって検出された車両の横方向加速度と、走行路撮像カメラ43によって撮像された車両前方の走行路映像とに基づいて、現在の車両の走行状況を検出する。走行状況処理部17は、検出した走行状況情報をメイン処理部14に供給する。
【0149】
なお、制御装置1は、例えば特開平5−58192号公報に記載された手法を用いることにより、操舵角センサ41によって検出された操舵角信号に基づいて、動作者の覚醒度を判定することもできる。また、制御装置1は、横Gセンサ42によって検出された車両横方向の加速度に基づいて、動作者の覚醒度を判定することもできる。この場合、制御装置1は、例えば特開平5−58192号公報に記載された手法に基づいて、操舵角の変化を横Gに換算する処理、又は、車両と走行区分帯との距離変化を横Gに換算することにより、動作者の覚醒度を判定することができる。さらに、制御装置1は、例えば特開平5−69757号公報に記載された手法を用いることにより、走行路撮像カメラ43によって撮像された車両前方の走行路映像に基づいて、動作者の覚醒度を判定することもできる。
【0150】
このようなマイク2、スピーカ3、心拍センサ4、血圧センサ33、制御装置1、操舵角センサ41、横Gセンサ42、及び、走行路撮像カメラ43は、例えば図26に示すように、車室内に配置されている。すなわち、制御装置1は、上述の制御装置1と同様に、車両に搭載されているナビゲーションシステムにソフトウェアとして実装、又は、所定のハードウェアによって実装されている。その他の要素は、図2、図13、及び図22に示した配置と同様に配置されている。
【0151】
[居眠り防止装置の動作]
「基本動作」
このような各部を備える居眠り防止装置は、図27に示すような一連の手順にしたがって、動作者の居眠りを防止するための動作を行う。
【0152】
まず、居眠り防止装置は、図27に示すように、制御装置1の制御に従って、図3中ステップS1乃至ステップS3と同様の処理を行い、覚醒度低下判定基準値、自発行動設定値、及び誘導効果判定基準値の初期化を行う。
【0153】
次に図23中ステップS91と同様の処理を行い、心拍信号処理部12により、心拍センサ4によって検出された心拍信号に基づいて心拍信号情報を算出し、算出した心拍信号情報を、上述した覚醒度低下判定基準値との比較を行うことが可能な覚醒度低下判定値に変換する。心拍信号処理部12は、これら心拍信号情報及び覚醒度低下判定値をメイン処理部14に供給する。また、血圧信号処理部16は、血圧センサ33によって検出された血圧信号に基づいて血圧信号情報を算出し、算出した血圧信号情報を、覚醒度低下判定基準値との比較を行うことが可能な覚醒度低下判定値に変換する。血圧信号処理部16は、これら血圧信号情報及び覚醒度低下判定値をメイン処理部14に供給する。
【0154】
その後、メイン処理部14は、図3中ステップS5と同様の処理を行い、覚醒度低下判定値と覚醒度低下判定基準値とを比較する。メイン処理部14は、覚醒度低下判定値が覚醒度低下判定基準値よりも小さい場合には、動作者の覚醒度が低下していないと判定し、ステップS91からの処理を繰り返す。一方、メイン処理部14は、覚醒度低下判定値が覚醒度低下判定基準値以上である場合には動作者の覚醒度が低下したと判定し、ステップS111における自発行動誘導処理を行い、一連の処理を終了する。なお、このステップS111における処理は、後に詳述するものとする。
【0155】
居眠り防止装置は、このような一連の手順にしたがって、動作者の居眠りを防止するための動作を行うことができる。
【0156】
[自発行動誘導処理(ステップS111)の詳細]
つぎに、図28を用いて、ステップS111における自発行動誘導処理の詳細について説明する。
【0157】
まず、居眠り防止装置は、図28に示すように、ステップS121において、走行状況処理部17によって現在の車両の走行状況を検出する。この走行状況は、操舵角センサ41、横Gセンサ42、及び走行路撮像カメラ43のそれぞれによって検出された情報を用いて検出される。走行状況処理部17は、検出した走行状況情報をメイン処理部14に供給する。
【0158】
そして、メイン処理部14は、ステップS122において、ステップS121にて検出された走行状況情報に基づいて、自発行動の誘導が可能であるか否かを判定する。すなわち、メイン処理部14は、現在の車両の走行状況に対応する運転負荷量が、自発行動の誘導が可能な程度の運転負荷量であるか否かを判定する。
【0159】
ここで、メイン処理部14は、自発行動の誘導が可能ではない高運転負荷状態である場合には、そのまま一連の処理を終了する。一方、メイン処理部14は、自発行動の誘導が可能である運転負荷量である場合には、ステップS112へと処理を移行し、動作者に誘導する自発行動の種類を選択するために、運転負荷量の高低を判定する。
【0160】
メイン処理部14は、運転負荷量が低い場合には、動作者が対話による自発行動を行うことが可能であると判定し、図3中ステップS6と同様の対話処理を行う。また、メイン処理部14は、運転負荷量が高い場合には、動作者が対話による自発行動を行うことは不可能であるが筋運動による自発行動を行うことは可能であると判定し、図14中ステップS52と同様の筋運動処理を行う。
【0161】
そして、居眠り防止装置は、心拍信号処理部12により、図3中ステップS7と同様の心拍・自発行動効果確認処理を行うと共に、図14中ステップS53と同様の血圧・自発行動効果確認処理を行う。
【0162】
その後、メイン処理部14は、図3中ステップS8及びステップS9と同様の処理を行うことになる。
【0163】
居眠り防止装置は、このような一連の手順にしたがって、動作者に自発行動を適切に誘導することができる。
【0164】
[第4実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明の第4実施形態として示した居眠り防止装置は、誘導効果の判定結果と、検出された車両の走行状況とのうち、少なくとも一方に基づいて、動作者に与える刺激内容を複数の刺激内容の中から選択する。したがって、この居眠り防止装置によれば、運転負荷量に応じた適切な自発行動を選択することができるため、誘導される自発行動に対する動作者の違和感を解消することができ、また、車両の走行状況に応じて誘導される自発行動を対話と筋運動とから選択することができるため、動作者が自発行動の誘導に対して有する不快感を低減することができる。
【0165】
そして、本発明の第1実施形態と同様の効果を有するとともに、自発行動による誘導効果を判定することにより、個々の刺激によって誘導された自発行動の効果を明確に把握することができ、過剰な刺激提示や、効果のない刺激提示を繰り返してしまうことがなく、動作者の状態に応じた最適な自発行動の誘導を行うことができる。
【0166】
また、この居眠り防止装置によれば、検出された車両の走行状況が、自発行動の誘導が可能ではない高負荷状態である場合には、自発行動の誘導動作を抑制することにより、動作者への自発行動に対する不快感を低減することができる。
【0167】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施の形態に限定されることはなく、この実施の形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0168】
1 制御装置
2 マイク
3 スピーカ
4 心拍センサ
11 対話処理部
12 心拍信号処理部
13 記録装置
14 メイン処理部
15 筋運動処理部
16 血圧信号処理部
17 走行状況処理部
21 ステアリング
22 ドアパネル
23 インストルメントパネル
24 シート
31 ディスプレイ
32 圧力センサ
33 血圧センサ
41 操舵角センサ
42 センサ
43 走行路撮像カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作者の状態を検出する動作者状態検出手段と、
前記動作者状態検出手段によって検出された前記動作者の状態に基づいて、当該動作者の覚醒度を判定する覚醒度判定手段と、
前記覚醒度判定手段によって前記動作者の覚醒度が低下していると判定された場合に、当該動作者に対して自発行動を誘導する刺激を与える自発行動誘導手段と、
前記自発行動誘導手段によって前記動作者に刺激を与えた後に前記動作者状態検出手段によって検出された当該動作者の状態に基づいて、自発行動による誘導効果を判定する誘導効果判定手段と、
前記誘導効果判定手段によって判定された誘導効果に応じて、前記自発行動誘導手段によって動作者に対して与える刺激内容を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする居眠り防止装置。
【請求項2】
前記動作者状態検出手段は、前記動作者の心拍状態及び/又は血圧状態を検出し、
前記誘導効果判定手段は、前記自発行動誘導手段によって前記動作者に刺激を与えた後に前記動作者状態検出手段によって検出された前記動作者の心拍状態若しくは血圧状態のうちいずれか一方、又は、前記動作者の心拍状態及び血圧状態の双方に基づいて、自発行動による誘導効果を判定すること
を特徴とする請求項1に記載の居眠り防止装置。
【請求項3】
前記動作者状態検出手段は、検出した前記動作者の心拍信号及び/又は血圧信号の履歴を記録手段に記録し、
前記覚醒度判定手段は、前記記録手段に記録された心拍信号履歴及び/又は血圧信号履歴に基づいて、瞬時心拍数及び心拍ゆらぎの分散変化量、及び/又は、最低血圧値及び最低血圧値間の時間差における分散変化量を解析し、当該解析結果を前記心拍状態及び/又は前記血圧状態として出力すること
を特徴とする請求項2に記載の居眠り防止装置。
【請求項4】
前記覚醒度判定手段は、解析した瞬時心拍数及び心拍ゆらぎの分散変化量、及び/又は、最低血圧値及び最低血圧値間の時間差における分散変化量に基づいて、前記動作者の覚醒度の低下を判定することを特徴とする請求項3に記載の居眠り防止装置。
【請求項5】
前記覚醒度判定手段は、解析した瞬時心拍数の変化量と、最低血圧値の変化量とに基づいて、前記動作者の覚醒度の低下を判定することを特徴とする請求項3に記載の居眠り防止装置。
【請求項6】
前記誘導効果判定手段は、前記自発行動誘導手段によって誘導された自発行動に応じて前記動作者状態検出手段によって検出された前記動作者の心拍数上昇傾向若しくは最低血圧値上昇傾向のうちいずれか一方、又は、前記動作者の心拍数上昇傾向及び最低血圧値上昇傾向の双方に基づいて、自発行動による誘導効果を判定することを特徴とする請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載の居眠り防止装置。
【請求項7】
前記自発行動誘導手段は、前記動作者に対話及び/又は筋運動による自発行動を行う旨を指示するように当該動作者に前記刺激を与え、
前記制御手段は、前記動作者によって行われた自発行動としての対話内容及び/又は筋運動内容が、前記自発行動誘導手段による指示に対応したものであるか否かに応じて、前記自発行動誘導手段によって前記刺激として与える対話及び/又は筋運動の負荷量を変更することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の居眠り防止装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記誘導効果判定手段によって判定された自発行動による誘導効果に応じて、前記自発行動誘導手段によって前記動作者に与える刺激の指示量を変更することによって当該動作者に誘導される自発行動の負荷量を変更し、自発行動の誘導効果を調整することを特徴とする請求項1又は請求項7に記載の居眠り防止装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記誘導効果判定手段によって判定された自発行動による誘導効果に応じて、前記自発行動誘導手段によって前記刺激として前記動作者に与える対話成立に必要な記憶負荷量若しくは計算負荷量の少なくとも1つ、及び/又は、筋運動の必要運動量を変更することによって当該動作者に誘導される自発行動の負荷量を変更し、自発行動の誘導効果を調整することを特徴とする請求項8に記載の居眠り防止装置。
【請求項10】
車両の走行状況を検出する走行状況検出手段を備え、
前記制御手段は、前記誘導効果判定手段によって判定された自発行動による誘導効果と、前記走行状況検出手段によって検出された走行状況とのうち、少なくとも一方に基づいて、前記自発行動誘導手段によって与える刺激内容を複数の刺激内容の中から選択することを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の居眠り防止装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記走行状況検出手段によって検出された走行状況が、自発行動の誘導が可能ではない高負荷状態である場合には、前記自発行動誘導手段による動作を抑制することを特徴とする請求項10に記載の居眠り防止装置。
【請求項12】
動作者の状態を検出し、当該動作者の状態に基づいて当該動作者の覚醒度を判定し、
当該動作者の覚醒度が低下していると判定された場合に、当該動作者に対して自発行動を誘導する刺激を与えた時の当該動作者の状態に基づいて、自発行動による誘導効果を判定し、
当該判定した誘導効果に応じて、以降に当該動作者に対して与える刺激内容を制御すること
を備えることを特徴とする居眠り防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−187810(P2010−187810A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33500(P2009−33500)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)