説明

屈折レーザのためのパフォーマンス評価システムおよび関連方法

【課題】角膜切除で使用するレーザシステムのパフォーマンスを評価するシステムの改善を図る。
【解決手段】角膜切除で使用するレーザシステム11のパフォーマンスを評価するためのシステム10であって、切除基板13を保持するよう適応するサポート12と、処置を要する眼の角膜面16における前記切除基板13上にレーザ光線15を向けることによって、予め定められたパターンで前記切除基板13を切除するための光学システム25と、前記切除された基板13の全体にわたって光線20を向け、前記基板13から反射される光21を受光することによって、実際の切除パターンを検出するための光学スキャナ19と、前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとを比較するためのアナライザ22と、前記アナライザ22と信号通信を行い、前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとの比較をユーザに表示するためのディスプレイ24とを備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、眼科レーザ手術に関し、特に、システムコンポーネントのパフォーマンスを評価するためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、眼科レーザ手術システムにおける屈折レーザのパフォーマンスを評価するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
視力矯正のための眼科手術がレーザ、例えば、エキシマレーザを使って行われることが知られている。このとき、レーザは、予め定められたパターンで角膜を切除するのに使用される。レーザは、ショットと呼ばれるエネルギバーストとして照射されるが、予め定められたパターンとレーザによって切除されたパターンとを等しくするため、各々のショットの物理的および一時的特性を正確に知る必要がある。さらに、ショットの位置を正確にするため、ショットを角膜に向ける光学システムの物理的特性も正確に較正しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在知られているレーザシステムのパフォーマンスを評価するための方法では、ユーザがプラスチックまたは紙などの基板上で試験切除を行い、それからこの基板を他の装置に移動して測定しなければならない。一般に、このような評価方法は、実際の切除と同じ位置/方向では行われない。
【0004】
したがって、正確で自動化された屈折レーザシステムのパフォーマンスを評価するための方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の形態によれば、角膜切除で使用するレーザシステムのパフォーマンスを評価するためのシステムであって、該システムは、切除基板を保持するよう適応するサポートと、処置を要する眼の角膜面における切除基板上にレーザ光線を向けることによって、予め定められたパターンで前記切除基板を切除するための光学システムと、前記切除された基板の全体にわたって光線を向け、前記基板から反射される光を受光することによって、実際の切除パターンを検出するための光学スキャナと、前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとを比較するためのアナライザと、前記アナライザと信号通信を行い、前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとの比較をユーザに表示するためのディスプレイと、を備えるシステムが提供される。
【0006】
本発明の第2の形態によれば、角膜切除で使用するレーザシステムのパフォーマンスを評価するための方法であって、該方法は、切除基板の表面を切除することによって、予め定められた切除パターンを実現するステップと、前記切除された基板の全体にわたって光線を向け、前記基板から反射される光を受光することによって、実際の切除パターンを検出するステップと、前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとを比較するステップと、前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとの比較をユーザに表示するステップと、を備える方法が提供される。
【0007】
角膜切除で使用するレーザシステムのパフォーマンスを評価するための方法を示す。この方法は、切除基板の表面を切除することによって、予め定められた切除パターンを実現するステップを備える。切除された基板の全体にわたって光線を向け、そこから反射される光を受光することによって、切除パターンを検出する。
【0008】
検出された切除パターンを所望の切除パターンと比較する。検出された切除パターンと所望の切除パターンとの比較をユーザに対して表示することによって、レーザシステムのパフォーマンスを評価することができるようにする。
【0009】
角膜切除で使用するレーザシステムのパフォーマンスを評価するためのシステムは、切除基板を保持するよう適応するサポートを備える。光学システムによって、処置を要する眼の角膜面にある切除基板上にレーザ光線を向ける。光学スキャナを提供することによって、切除された基板の全体にわたって光線を向け、そこから反射される光を受光して、切除されたパターンを検出する。
【0010】
アナライザは、検出された切除パターンと形成したい予め定められた切除パターンとを比較するよう適応している。アナライザと信号通信を行うディスプレイを提供することによって、検出された切除パターンと所望の切除パターンとの比較をユーザに表示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を特徴づける構成および処理方法の両方に関する仕様は、本発明の他の目的および利点と共に、以下で添付図面に関連して説明することによってより良く理解されるであろう。図面は、例示および説明を目的とするものであって、本発明の制限を規定することを意図しないことは、明確に理解されるべきである。添付図面と共に以下の説明を読むにしたがい、本発明によって実現されるこれらの目的および他の目的、ならびに、本発明によって提供される利点がより完全に明白になるであろう。
【実施例】
【0012】
次に、本発明の好ましい実施例について、図1〜5を参照しながら説明する。
【0013】
角膜切除で使用するレーザシステム11のパフォーマンスを評価するのに、システム10(図1)が提供される。システム10は、好ましくは完全に自動化されており、例えばプラスチック材料を備えることもある切除基板13を保持するよう適応するサポート12を備える。レーザ光線15の経路に光学縦列を配置することによって、処置を要する眼の角膜面16にある切除基板13上にレーザ光線15を向ける。これによって、切除自体が行われるのと同じ位置で評価を行うことができるので、x、y、およびθについて正確に登録することができる。
【0014】
光コヒーレンストモグラフィ装置19によって、切除が行われた基板13の全体にわたって光線20を向け、そこから反射される光21を受光することによって、実際の切除パターンを検出する。反射光21は、切除された表面の少なくとも深さ、曲率、および高さを表すデータを備える。プロセッサ(アナライザ)22には、メモリ26の中にソフトウェア23が常駐しており、検出された切除パターンと、眼の視力を矯正するのに形成したい予め定められた切除パターンとを分析し比較する。
【0015】
アナライザ22は、単一のプロセス装置または複数のプロセス装置であってもよい。このようなプロセス装置は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコンピュータ、中央処理装置、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブル論理デバイス、ステートマシン、論理回路、アナログ回路、デジタル回路、ならびに/あるいは、演算命令に基づいて(アナログおよび/またはデジタル)信号を操作する任意の装置である場合がある。メモリ26は、単一の記憶装置または複数の記憶装置であってもよい。このような記憶装置は、リードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、スタティックメモリ、ダイナミックメモリ、フラッシュメモリ、キャッシュメモリ、および/または、デジタル情報を保存する任意の装置である場合がある。アナライザ22によって、ステートマシン、アナログ回路、デジタル回路、および/または、論理回路を介して、1つまたは複数の機能が実現されるとき、対応する演算命令(ソフトウェア23)を格納するメモリ26は、ステートマシン、アナログ回路、デジタル回路、および/または、論理回路を備える回路の中に組み込まれる場合や、あるいは、回路の外部にある場合があることに留意されたい。メモリ26には、図面に例示される少なくともいくつかのステップおよび/または機能に対応する演算命令(例えば、ソフトウェア23)が格納され、アナライザ22は、これらの演算命令を実行する。
【0016】
アナライザ22と信号通信を行うディスプレイ24によって、検出された切除パターンと所望の切除パターンとの比較がユーザに表示される。実行可能な表示方法として、切除されたプロフィルのプロフィル、検出された切除パターンと所望の切除パターンとの間の差分プロット、切除プロフィルの断面図、および切除プロフィルの立体図などがある。ただし、これらは、制限を意図するものではない。例えば、ユーザは、切除の精度に関して解釈しやすい立体によって確認することができる。
【0017】
図3の立体図が示す単純な球体のプロフィルを表す図2の断面図に示されるように、例として、深さ、曲率、および高さを有するクレータを備える所望の切除プロフィル30が挙げられる。図4A〜4Eに示すように、数種類の乖離が生じることもある。図4Aには、実際の切除プロフィル31(破線)が、所望のプロフィル30より浅い場合が示されている。これは、較正誤差によって引き起こされる可能性が高い。図4Bには、実際の切除プロフィル32が、x、y方向において中心がずれている場合が示されている。図4Cでは、実際の切除プロフィル33の形状が、収差によって不正確になっている。図4Dでは、実際の切除プロフィル34が傾斜によって非対称になっている。図4Eでは、実際の切除プロフィル35に回転誤差がある。
【0018】
角膜切除で使用するレーザシステムのパフォーマンスを評価するための方法100(図5)には、適切な表面品質および切除特性を有する平なプラスチックサンプル13を処置面に配置するステップ(ブロック101)が含まれる。レーザ25を使用して切除サンプル13の表面26を切除することによって、予め定められた切除パターンを実現する(ブロック102)。
【0019】
光コヒーレンストモグラフィ装置19を使用することによって、切除されたサンプル13をスキャンし(ブロック103)、検出された(実際の)切除パターンと所望の切除パターンとを比較する(ブロック104)。上で概説した任意またはすべての種類の実行可能な表示方法でユーザに表示する(ブロック105)ことによって、検出された切除パターンと所望の切除パターンとの比較を示すことができる。こうして、実際の切除の実質的に正確な位置/方向で目的とする切除の評価を行うことができるので、より細密な較正を行うことができる。
【0020】
上記の説明において、ある用語は、簡潔にしたり、明確にしたり、理解しやすくしたりするのに使用してきたが、従来技術が要求する範囲を超えて不必要に制限するものではない。なぜなら、本明細書において、これらの単語は、説明のため使用されており、広く解釈されることを意図しているからである。また、本明細書で例示され説明された本装置の本実施例は、例示のためのものであり、本発明の範囲は、これらの構成の厳密な詳細事項に限定されるものでない。
【0021】
ここまで本発明について説明してきたが、本発明の好ましい実施例の構成、処理、および使用方法や、本発明によって得られる有利で新しく有用な結果や、当業者にとって自明である本発明の新しく有用な構成および妥当な機構的同等物については、添付の請求の範囲に記述されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のシステムの実施例の概略図である。
【図2】所望の切除パターンの断面図である。
【図3】切除材料のスキャンを立体的に表現する図である。
【図4A】様々なシステム問題に関して所望の切除パターン(実線)対実際の切除パターン(点線)を表現する図であって、較正問題を例示する図である。
【図4B】様々なシステム問題に関して所望の切除パターン(実線)対実際の切除パターン(点線)を表現する図であって、中心のずれを例示する図である。
【図4C】様々なシステム問題に関して所望の切除パターン(実線)対実際の切除パターン(点線)を表現する図であって、収差を例示する図である。
【図4D】様々なシステム問題に関して所望の切除パターン(実線)対実際の切除パターン(点線)を表現する図であって、傾斜を例示する図である。
【図4E】様々なシステム問題に関して所望の切除パターン(実線)対実際の切除パターン(点線)を表現する図であって、回転を例示する図である。
【図5】眼の上で切除パターンを実現し、この処理中にシステム評価を行うための本発明の例示的方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
10 システム
11 レーザシステム
12 サポート
13 切除基板
15 レーザ光線
16 眼の角膜面
19 光コヒーレンストモグラフィ装置
20 光線
21 反射光
22 プロセッサ(アナライザ)
23 ソフトウェア
24 ディスプレイ
25 レーザ
26 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜切除で使用するレーザシステムのパフォーマンスを評価するためのシステムであって、該システムは、
切除基板を保持するよう適応するサポートと、
処置を要する眼の角膜面における前記切除基板上にレーザ光線を向けることによって、予め定められたパターンで前記切除基板を切除するための光学システムと、
前記切除された基板の全体にわたって光線を向け、前記基板から反射される光を受光することによって、実際の切除パターンを検出するための光学スキャナと、
前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとを比較するためのアナライザと、
前記アナライザと信号通信を行い、前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとの比較をユーザに表示するためのディスプレイと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記切除基板は、プラスチック材料を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光学スキャナは、光コヒーレンストモグラフィ装置を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記アナライザおよび前記ディスプレイは、前記切除されたプロフィルのプロフィル、前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとの間の差分プロット、前記切除プロフィルの断面図、および前記切除プロフィルの立体図のうちの少なくとも1つを表示するよう適応する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
角膜切除で使用するレーザシステムのパフォーマンスを評価するための方法であって、該方法は、
切除基板の表面を切除することによって、予め定められた切除パターンを実現するステップと、
前記切除された基板の全体にわたって光線を向け、前記基板から反射される光を受光することによって、実際の切除パターンを検出するステップと、
前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとを比較するステップと、
前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとの比較をユーザに表示するステップと、を備える方法。
【請求項6】
前記切除基板は、プラスチック材料を備える請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スキャンするステップは、光コヒーレンストモグラフィ装置を使用することを備える請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記表示するステップは、前記切除されたプロフィルのプロフィル、前記検出された切除パターンと前記予め定められた切除パターンとの間の差分プロット、前記切除プロフィルの断面図、ならびに、前記切除プロフィルの立体図のうちの少なくとも1つを表示することを備える請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−55172(P2008−55172A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224239(P2007−224239)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(504230051)アルコン リフラクティブホライズンズ,インコーポレイティド (12)