説明

屈曲型のトレーリングシールドを備えるシングル磁気記録(SMR)ヘッドおよび製造方法

【課題】 屈曲型のトレーリングシールドを備えるシングル磁気記録(SMR)ヘッドおよび製造方法を提供する。
【解決手段】 一実施形態において、磁気ヘッドは、主磁極と、主磁極のトレーリング側付近に位置付けられたトレーリングシールドと、主磁極のクロストラック方向の両側付近に位置付けられたサイドシールドと、主磁極のリーディング側付近に位置付けられたリーディングシールドと、主磁極とシールドの間に位置付けられたギャップと、を含み、Sg1<Sg2であり、Sg1がトレーリングシールドのリーディングエッジの屈曲点と、主磁極の、屈曲点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であり、Sg2が、サイドシールドのエッジ上の、主磁極のトレーリング側角部に対してクロストラック方向に平行な第一の点と、主磁極の、第一の点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、磁気記憶システム、より具体的には、磁気記録装置に使用される屈曲型トレーリングシールドを有する垂直磁気記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
シングル磁気記録(SMR)は、他の従来の設計より高い面密度を提供する記録システムである。図5に示されるように、従来のSMRシステムでは、磁気ヘッドの主磁極(その先端または角部506だけが図示されている)を使って、新しいトラックに記録する時に以前に記録したトラックの一部に順次上書きするというシングル方式でトラックへの記録を行い、したがって、その名前が表しているように、記録はトラックに重ね書きしながら行われる。その結果、実際のトラックは主磁極先端506を使って記録されるため、主磁極先端506の記録特性が全体的なシステム性能を何かしら決定付ける。すなわち、特に磁気ヘッドのトラックエッジに対応する位置、たとえば主磁極先端506におけるクロストラック方向の磁界勾配を改善し、さらにダウントラック方向の磁界勾配を改善することは非常に有益である。
【0003】
トラックエッジでの記録特性を改善する試みの中には、主磁極606と、主磁極606の周囲の、磁気ヘッドの性能に影響を与えうる層、たとえばシールド、バイアス層等の間のサイドギャップ幅を縮小することによって磁界勾配を増大させることに焦点を当てたものがある。サイドギャップ幅の縮小に関する図が図6A〜6Bに示されており、従来のサイドギャップ幅W1が図6Aに、縮小されたサイドギャップ幅W2が図6Bに示されている。しかしながら、サイドシールドは、問題となる点として、サイドギャップを単純に狭めたのでは磁界を吸収してしまい、その結果として得られる磁界強度は高精度で精密な磁気記録には不十分となる。重要なことに、これによって、必要な磁界勾配の実現が不可能となり、サイドギャップ幅の縮小により達成されるかもしれない磁気記録装置の改善が妨げられる。
【0004】
特に狭トラックのハードディスクドライブでは、高い信号対雑音比を達成するために、とりわけトラックエッジにおいてクロストラック磁界勾配とダウントラック磁界勾配を増大させ、その一方でトラックエッジでの磁界強度のあらゆる劣化を最小限にすることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、磁気ヘッドは、主磁極と、主磁極のトレーリング側付近に位置付けられたトレーリングシールドと、主磁極のクロストラック方向の両側付近に位置付けられたサイドシールドと、主磁極のリーディング側付近に位置付けられたリーディングシールドと、主磁極とシールドの間に位置付けられたギャップと、を含み、トレーリングシールドの、その媒体対向面の断面は台形である。
【0006】
他の実施形態において、磁気ヘッドは、主磁極と、主磁極のトレーリング側付近に位置付けられたトレーリングシールドと、主磁極のクロストラック方向の両側付近に位置付けられたサイドシールドと、主磁極のリーディング側付近に位置付けられたリーディングシールドと、主磁極とシールドの間に位置付けられたギャップと、を含み、Sg1<Sg2であり、Sg1がトレーリングシールドのリーディングエッジの屈曲点と、主磁極の、屈曲点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であり、Sg2が、サイドシールドのエッジ上の、主磁極のトレーリング側角部に対してクロストラック方向に平行な第一の点と、主磁極の、第一の点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であることを特徴とする。
【0007】
さらに他の実施形態において、磁気ヘッドは、主磁極と、主磁極のトレーリング側付近に位置付けられたトレーリングシールドと、主磁極のクロストラック方向の両側付近に位置付けられたサイドシールドと、主磁極のリーディング側付近に位置付けられたリーディングシールドと、主磁極とシールドの間に位置付けられたギャップと、を含み、Sg1<Sg2であり、Sg1がトレーリングシールドのリーディングエッジの屈曲点と、主磁極の、屈曲点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であり、Sg2が、サイドシールドのエッジ上の、主磁極のトレーリング側角部に対してクロストラック方向に平行な第一の点と、主磁極の、第一の点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であることを特徴とし、また、Sg2<MPwであり、MPwが主磁極のトレーリングエッジのクロストラック方向の幅であり、トレーリングシールドのトレーリングエッジのクロストラック方向の幅がMPwの約1.5倍未満であることを特徴する。
【0008】
これらの実施形態のいずれも、磁気ヘッドと、磁気記憶媒体(ハードディスク等)を、ヘッドに対して横切るように通過させるためのドライブ機構と、ヘッドに電気的に接続され、ヘッドの動作を制御するための制御ユニットと、を含みうる磁気データ記憶システム、たとえばディスクドライブシステムの中に実装できる。
【0009】
本発明の他の態様と利点は、図面と併せて読むことで本発明の原理を例示的に解説する、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】磁気記録ディスクドライブシステムの簡略図である。
【図2A】面内記録フォーマットを利用した記録媒体の概略断面図である。
【図2B】図2Aのような面内記録のための従来の磁気記録ヘッドと記録媒体との組み合わせの概略図である。
【図2C】垂直記録フォーマットを利用した磁気記録媒体の概略図である。
【図2D】片面への垂直記録のための記録ヘッドと記録媒体の組み合わせの概略図である。
【図2E】媒体の両面に別々に記録するようになされた記録装置の概略図である。
【図3A】らせんコイルを有する垂直磁気ヘッドの1つの具体的な実施形態の断面図である。
【図3B】らせんコイルを有するピギーバック磁気ヘッドの1つの具体的な実施形態の断面図である。
【図4A】ループコイルを有する垂直磁気ヘッドの1つの具体的な実施形態の断面図である。
【図4B】ループコイルを有するピギーバック磁気ヘッドの1つの具体的な実施形態の断面図である。
【図5】先行技術による従来のシングル磁気記録システムの概略図を示す。
【図6A】先行技術による従来の厚さのサイドギャップ構造の断面図を示す。
【図6B】先行技術による薄型化されたサイドギャップ構造の断面図を示す。
【図7】一実施形態による逆転型磁気ヘッド構造の断面図を示す。
【図8】一実施形態によるシングル記録装置の磁界勾配の評価結果を表すグラフを示す。
【図9A】先行技術による従来の磁気ヘッド構造の概略断面図である。
【図9B】一実施形態による逆転型磁気ヘッド構造の概略断面図である。
【図10A】従来の等角磁気ヘッド構造と一実施形態による逆転型磁気ヘッド構造との、トラックピッチ中心でのダウントラック磁界勾配を比較するグラフである。
【図10B】従来の等角磁気ヘッド構造と一実施形態による逆転型磁気ヘッド構造との、トラックエッジにおけるダウントラック磁界勾配を比較するグラフである。
【図10C】従来の等角磁気ヘッド構造と一実施形態による逆転型磁気ヘッド構造との、クロストラック磁界勾配を比較するグラフである。
【図11】一実施形態による逆転磁気ヘッド構造のいくつかのパラメータを規定する概略図である。
【図12】一実施形態による逆転型磁気ヘッド構造において可能なさまざまなトレーリングシールド屈曲角TSw角とTS角を示す、磁気ヘッドの概略断面図である。
【図13A】一実施形態による、トレーリングシールド長さ(TSl)とTS角との関係と、トラックピッチ中心でのダウントラック磁界勾配に対するその影響を示す。
【図13B】一実施形態による、トレーリングシールド長さ(TSl)とTS角との関係と、トラックエッジでのダウントラック磁界勾配に対するその影響を示す。
【図13C】一実施形態による、トレーリングシールド長さ(TSl)とTS角との関係と、クロストラック磁界勾配に対するその影響を示す。
【図14A】一実施形態による逆転型磁気ヘッドのトレーリングシールドと主磁極の形状の断面図を示す。
【図14B】他の実施形態による逆転型磁気ヘッドのトレーリングシールドと主磁極の形状の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明は、本発明の全体的原理を例示的に説明することを目的としており、本願で請求されている発明概念を限定しようとするものではない。さらに、本明細書に記載された具体的な特徴は、記載された他の特徴との組み合わせにおいて、考えうるさまざまな組み合わせと置き換えの各々において使用できる。
【0012】
本明細書において他の明確な定義がなされていない限り、すべての用語は可能な限り広く解釈されるものとし、これには明細書から黙示される意味のほか、当業者が辞書、論文等で定義されていると了解している意味も含まれる。
【0013】
また、明細書と付属の特許請求の範囲において使用されるかぎり、冠詞(a、an、the)は、特にことわりがない限り、複数も含むことに留意しなければならない。
【0014】
以下の説明は、ディスク型記憶システムおよび/または関連するシステムと方法ならびに、その動作および/または構成部品のいくつかの好ましい実施形態を開示する。
【0015】
1つの一般的な実施形態において、磁気ヘッドは、主磁極と、主磁極のトレーリング側付近に位置付けられたトレーリングシールドと、主磁極のクロストラック方向の両側付近に位置付けられたサイドシールドと、主磁極のリーディング側付近に位置付けられたリーディングシールドと、主磁極とシールドの間に位置付けられたギャップと、を含み、トレーリングシールドの、その媒体対向面の断面は台形である。
【0016】
他の一般的な実施形態において、磁気ヘッドは、主磁極と、主磁極のトレーリング側付近に位置付けられたトレーリングシールドと、主磁極のクロストラック方向の両側付近に位置付けられたサイドシールドと、主磁極のリーディング側付近に位置付けられたリーディングシールドと、主磁極とシールドの間に位置付けられたギャップと、を含み、Sg1<Sg2であり、Sg1はトレーリングシールドのリーディングエッジの屈曲点と、主磁極の、屈曲点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であり、Sg2は、サイドシールドのエッジ上の、主磁極のトレーリング角部に対してクロストラック方向に平行な第一の点と、主磁極の、第一の点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であることを特徴とする。
【0017】
さらに他の実施形態において、磁気ヘッドは、主磁極と、主磁極のトレーリング側付近に位置付けられたトレーリングシールドと、主磁極のクロストラック方向の両側付近に位置付けられたサイドシールドと、主磁極のリーディング側付近に位置付けられたリーディングシールドと、主磁極とシールドの間に位置付けられたギャップと、を含み、Sg1<Sg2であり、Sg1はトレーリングシールドのリーディングエッジの屈曲点と、主磁極の、屈曲点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であり、Sg2は、サイドシールドのエッジ上の、主磁極のトレーリング側角部に対してクロストラック方向に平行な第一の点と、主磁極の、第一の点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であることを特徴とし、また、Sg2<MPwであり、MPwは主磁極のトレーリングエッジのクロストラック方向の幅であり、トレーリングシールドのトレーリングエッジのクロストラック方向の幅がMPwの約1.5倍未満であることを特徴とする。
【0018】
ここで、図1を参照すると、本発明の一実施形態によるディスクドライブ100が示されている。図1に示されるように、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112がスピンドル114で支持され、ディスクドライブモータ118によって回転される。各ディスク上への磁気記録は一般に、ディスク112上の同心円状のデータトラックの環状パターンの形態で行われる。
【0019】
少なくとも1つのスライダ113がディスク112の付近に位置付けられ、各スライダ113は1つまたはそれ以上の磁気記録/再生ヘッド121を支持する。ディスクが回転すると、スライダ113は半径方向に移動してディスク表面122の上方に出入りし、それによってヘッド121はディスクの、所望のデータが記録された、および/または記録される予定の異なるトラックにアクセスできる。各スライダ113は、サスペンション115によってアクチュエータアーム119に取り付けられる。サスペンション115は弱いバネ力を有し、これがディスク表面122に対してスライダ113を付勢する。各アクチュエータアーム119は、アクチュエータ127に取り付けられる。図1に示されるアクチュエータ127はボイスコイルモータ(VCM)であってもよい。VCMは、変化しない磁界の中で運動可能なコイルを有し、コイルの運動の方向と速度は、コントローラ129によって供給されるモータ電流信号により制御される。
【0020】
ディスク記憶システムの動作中、ディスク112の回転によってスライダ113とディスク表面122の間にエアベアリングが発生し、これによってスライダへの上方向の力、すなわち揚力が生まれる。エアベアリングはそれゆえ、通常動作中、サスペンション115の弱いバネ力と釣り合い、スライダ113をディスク表面から離れた、若干上方の位置に、小さな、実質的に一定の空隙を保って支持する。いくつかの実施形態においては、スライダ113はディスク表面122に沿って摺動してもよい点に留意されたい。
【0021】
ディスク記憶システムの各種の構成要素は、動作中、制御ユニット129により発生される制御信号、たとえばアクセス制御信号や内部クロック信号によって制御される。一般に、制御ユニット129は、論理制御回路、記憶装置(メモリ等)およびマイクロプロセッサを備える。制御ユニット129は、各種のシステム動作を制御するための制御信号、たとえばライン123のドライブモータ制御信号やライン128のヘッド位置およびシーク制御信号を発生する。ライン128の制御信号は、スライダ113をディスク112の上の所望のデータトラックへと最適に移動させ、位置付けるために望ましい電流プロファイルを発生させる。再生および記録信号は、記録チャネル125によって再生/記録ヘッド121間で通信される。
【0022】
一般的な磁気ディスク記憶システムの上記の説明とこれに付随する図1の図は、代表的な例を示しているにすぎない。当然のことながら、ディスク記憶システムは多数のディスクとアクチュエータを含んでいてもよく、各アクチュエータは多数のスライダを支持していてもよい。
【0023】
インタフェースもまた、ディスクドライブとホスト(内蔵または外付け)の間で、データ送受信の操作を行うため、およびディスクドライブの動作を制御し、ディスクドライブの状態をホストに通信するために提供されてもよく、これらはすべて、当業者には明らかである。
【0024】
一般的なヘッドにおいて、インダクティブ記録ヘッドは1つまたはそれ以上の絶縁層(絶縁スタック)に埋め込まれたコイル層を含み、絶縁スタックは第一と第二の磁極片層間に配置される。第一と第二の磁極片層間には、記録ヘッドのエアベアリング面(ABS)のギャップ層によってギャップが形成される。磁極片層はバックギャップで連結されてもよい。電流がコイル層の中を流れ、これが磁極片内に磁界を発生させる。磁界は、移動する媒体の上のトラック、たとえば回転する磁気ディスク上の円形トラック内に磁界情報のビットを書き込むことを目的として、ABSのギャップを縁取る。
【0025】
第二の磁極片層は、ABSからフレアポイントまで延びる磁極先端部と、フレアポイントからバックギャップまで延びるヨーク部を有する。フレアポイントとは、第二の磁極片の幅が広がり始め(フレア状となり始め)、ヨークを形成する地点である。フレアポイントの配置は、記録媒体上に情報を書き込むために生成される磁界の強さに直接影響を与える。
【0026】
図2Aは、図1に示されているような磁気ディスク記録システムに使用される従来の記録媒体を概略的に描いている。この媒体は、媒体そのものの平面内に、またはこれと平行に磁気インパルスを記録するために利用される。記録媒体、この場合での記録ディスクは基本的に、適当な非磁性材料、たとえばガラスの支持基板200を備え、適当な従来の磁性層の被覆コーティング202を有する。
【0027】
図2Bは、好ましくは薄膜ヘッドであってもよい従来の記録/再生ヘッド204と、図2Aに示されているような従来の記録媒体との動作関係を示す。
【0028】
図2Cは、図1に示されているような磁気ディスク記録システムに使用される記録媒体の表面に対して実質的に垂直である磁気インパルスの向きを概略的に描いている。このような垂直記録の場合、媒体は一般に、高い透磁率を有する材料の裏打ち層212を含む。この裏打ち層212には次に、好ましくは裏打ち層212に関して高い保磁力を有する磁性材料の被覆コーティング214が設けられる。
【0029】
図2Dは、垂直ヘッド218と記録媒体との動作関係を描いている。図2Dに描かれている記録媒体は、図2Cに関して上述した高い透磁率の裏打ち層212と磁性材料の被覆コーティング214を両方共含む。しかしながら、これらの層212と214の両方が適当な基板216に接着されているように示されている。一般に、層212と214の間には、「磁気相互作用遮断(exchange−break)」層または「中間層」と呼ばれる別の層(図示せず)がある。
【0030】
この構造において、垂直ヘッド218の磁極間に延びる磁束線は、弧を描いて記録媒体の被覆コーティング214に入り、またそこから出て、記録媒体の高透磁率裏打ち層212によって磁束線は被覆コーティング214を媒体表面に対し概して垂直に通過し、好ましくは裏打ち層212に関して高い保磁力を有する磁性材料の被覆コーティング214に情報を、好ましくは媒体表面に対して実質的に垂直の磁気インパルスの形で記録する。磁束は、軟磁性裏打ち層212によってヘッド218のリターン層(P1)に戻るように導かれる。
【0031】
図2Eは、基板216がその2つの反対側の面の各々に層212と214を担持する同様の構造を描いており、適当な記録ヘッド218が媒体の各面の磁気コーティング214の外面付近に位置付けられ、それによって媒体の各面上への記録が可能となる。
【0032】
図3Aは、垂直磁気ヘッドの断面図である。図3Aにおいては、らせんコイル310と312を使ってステッチ磁極308の中に磁束を発生させ、これはその後、その磁束を主磁極306に伝える。コイル310はこの図面から出るように延びるコイルを示し、コイル312はこの図面の中に入るように延びるコイルを示す。ステッチ磁極308は、ABSより引込められていてもよい。絶縁体316はコイルを取り囲み、要素のいくつかを支持してもよい。媒体の移動方向は、構造の右側の矢印によって示され、媒体は、まず下側のリターン磁極314を通過し、次にステッチ磁極308、主磁極306、ラップアラウンドシールド(図示せず)に接続されていてもよいトレーリングシールド304を通過し、最後に上側のリターン磁極302を通過するように移動する。これらの構成要素の各々は、ABS 318と接触する部分を有していてもよい。ABS 318は、構造の右側全体にわたって示されている。
【0033】
垂直記録は、ステッチ磁極308を通る磁束を、主磁極306へ、続いてABS 318に向かって位置付けられたディスク表面へと強制的に到達させることによって実現される。
【0034】
図3Bは、図3Aのヘッドと同様の特徴を有するピギーバック磁気ヘッドを描いている。2つのシールド304、314は、ステッチ磁極308および主磁極306の側方に位置する。また、センサシールド322、324も示されている。センサ326は一般に、センサシールド322、324間に位置付けられる。
【0035】
図4Aは、パンケーキ型と呼ばれることもあるループコイル410を使用してステッチ磁極408に磁束を発生させる一実施形態の概略図である。ステッチ磁極は次に、主磁極406にこの磁束を供給する。この向きにおいて、下側のリターン磁極は随意選択による。絶縁体416はコイル410を取り囲み、ステッチ磁極408と主磁極406のための支持してもよい。ステッチ磁極は、ABS 418から引込められていてもよい。媒体が移動する方向は、構造の右側の矢印により示され、媒体は、ステッチ磁極408、主磁極406、ラップアラウンドシールド(図示せず)に接続されていてもよいトレーリングシールド404を通過し、最後に上側のリターン磁極402を通過するように移動する(これらはすべて、ABS 418と接触する部分を有していても、いなくてもよい)。ABS 418は、構造の右側全体にわたって示されている。トレーリングシールド404は、いつくかの実施形態において、主磁極406と接触していてもよい。
【0036】
図4Bは、巻かれてパンケーキコイルを形成するループコイル410を含め、図4Aのヘッドと同様の特徴を有する、他のタイプのピギーバック磁気ヘッドを描いている。また、センサシールド422、424も示されている。センサ426は一般に、センサシールド422、424の間に位置付けられる。
【0037】
図3Bと4Bにおいて、随意選択によるヒータが磁気ヘッドのABS側とは反対側の付近に示されている。ヒータ(図中、「ヒータ」)はまた、図3Aと4Bに示される磁気ヘッドに含められてもよい。このヒータの位置は、設計上の要素、たとえば突起を設けたい場所や周囲の層の熱膨張率等に基づいて変えてもよい。
【0038】
図5は、先行技術による従来のSMRシステムを描いたものである。図のように、システムは、ダウントラック方向と一致する方向に移動する磁気ヘッド506(その角部だけが示されている)を含む。さらに、このシステムは、クロストラック方向と一致する方向に、順次走査を実行する。このシステムは、磁気媒体上に順次重なるようにトラック502を書き込む。
【0039】
図6Aと6Bは、先行技術による、磁気ヘッドのサイドギャップの幅を縮小することによってクロストラック磁界勾配を増大させるための従来の方法を示しており、図6Aは従来のサイドギャップ幅W1を有する従来のヘッドを表し、図6Bは縮小したサイドギャップ幅W2を有する従来のヘッドを表している。前述のように、この方法では、対処しなければならないまた別の問題が発生する。
【0040】
次に、図7を参照すると、一実施形態により、垂直磁気記録ヘッド700は、主磁極706、トレーリングシールド708、サイドシールド702、および主磁極706のためのリーディングシールド704を含む。主磁極706は、いくつかの実施形態において、シールドと主磁極706の間のギャップ710を有していてもよい。ギャップ710は、当業界で周知のように、どのような適当な材料からなっていてもよい。
【0041】
一実施形態において、シールド702、704、708は、異なる堆積ステップで別の部品として形成してもよい。他の実施形態においては、シールドの1つまたはそれ以上を1回の堆積ステップで連続構造として形成してもよく、これは当業者が本明細書を読めばわかるであろう。
【0042】
ギャップ710は、本明細書においてはトレーリングギャップとも呼ばれ、主磁極706のトレーリング側にクロストラック方向に垂直な方向に位置付けられる。また、本明細書ではサイドギャップと呼ばれるものもあり、これは主磁極706の、クロストラック方向に片側または両側に位置付けられる。同様に、リーディングギャップは、主磁極706のリーディング側に位置付けられたギャップを指す場合がある。
【0043】
一実施形態において、点A1とC1はトレーリングシールドとサイドシールドの屈曲点を指し、主磁極706のトレーリング側先端は点M1で示される。点A1はトレーリングシールド708の屈曲点を指し、点C1はサイドシールド702の屈曲点を指す。さらに、サイドシールド702と、点M1を通って延びる、クロストラック方向に平行な直線との交点は点B1で示され、トレーリングシールド708と、点M1を通って延びる、媒体移動方向に平行な直線との交点は点D1で示される。
【0044】
さらに、点D1とA1の間の距離はSg1と定義され、点M1とB1の間の距離はSg2と定義される。これに加えて、一実施形態において、点C1を通ってクロストラック方向に引かれる直線は、図7に示されるように、主磁極706と交差することになり、たとえば、サイドシールド702の屈曲は、主磁極706と同等の点でクロストラック方向に発生する。さらに、主磁極706の幅はMPwで示される。
【0045】
いくつかの実施形態において、点A1はさらに、点B1においてトレーリングシールド708と接する角から延びる線と、点D1においてトレーリングシールド708と接する角から延びる線との交点として定義されてもよい。
【0046】
一実施形態によれば、垂直磁気記録ヘッド700の3つのシールド702、704、708の寸法は、好ましくは、ヘッド700の媒体対向面において、以下の関係を満たす(図7は、一実施形態による、媒体対向面から取られた断面図である)。
【0047】
第一の不等式、Sg1<Sg2において、Sg1は主磁極706のトレーリング側の角部(M1として示される)からトレーリングシールド708のリーディング側の屈曲点(A1として示される)までのクロストラック方向への距離である。トレーリングシールド708のリーディング側と主磁極706は、クロストラック方向への共通線に沿っていないため、Sg1は点A1から点D1まで測定してもよく、D1はトレーリングシールド708上の、主磁極706のトレーリング側角部に対応する点を表す。
【0048】
第二の不等式、Sg2<MPwにおいて、Sg2は、主磁極706のトレーリング側の角部(M1で示される)と、サイドシールド702と主磁極706のトレーリング側の角部(M1として示される)を通過して延びる、クロストラック方向に平行な直線との交点(点B1として示される)との間のクロストラック方向の距離である。主磁極706のトレーリング側とサイドシールド702はクロストラック方向への共通の線に沿っているため、Sg2はこれらの点間で容易に測定される。
【0049】
垂直磁気記録ヘッド700のシールド702、704、708の各々は、一実施形態において、同じ材料を含んでいてもよい。これに加えて、他の実施形態によれば、これらのシールドは単独の工程で形成されてもよい。もちろん、別の実施形態において、シールドのいくつかまたは全部が異なる材料を含んでいてもよく、これは当業者が本明細書を読めばわかるであろう。
【0050】
図7に示されるようなクロストラック方向と媒体移動方向は参考のためにすぎず、ヘッド700の動作中、ヘッド700は、当業者にとっては当然のことであるが、傾斜または傾転していてもよく、したがって図の方向は動作方向と一致しなくなる。しかしながら、クロストラック方向と媒体移動方向に関して説明されている寸法、距離、厚さ、幅等は、図7に示される方向に基づくものであり、いかなる実際の移動やクロストラック方向にも基づいていない。
【0051】
一実施形態において、磁気ヘッド700は、主磁極706と、主磁極706のトレーリング側付近に位置付けられたトレーリングシールド708と、主磁極706のクロストラック方向に両側の付近に位置付けられたサイドールド702と、主磁極706のリーディング側に位置付けられたリーディングシールド704と、主磁極706とシールドの間に位置付けられたギャップ710と、を有する。
【0052】
一実施形態において、トレーリングシールド708の、その媒体対向面における断面は台形であってもよく、これは、図11に関して後で詳しく説明する。他の実施形態によれば、トレーリングシールド708の、その媒体対向面における断面の台形の形状は、台形のクロストラック方向に広い方の辺がトレーリングシールドのリーティング部となるように位置付けられてもよい。
【0053】
再び図7を参照すると、一実施形態によれば、主磁極706の、その媒体対向面における断面は、三角形か台形のいずれかまたは、三角形と台形の複合形であってもよい。
【0054】
他の実施形態において、ギャップ710の外周の、その媒体対向面における断面はダイヤモンド形であってもよく、クロストラック方向と略平行な線形トレーリングエッジと、先端の尖ったリーディングエッジと、トレーリングエッジとリーディングエッジの間に延びるサイドエッジによって特徴付けられ、サイドエッジの各々はリーディングエッジから延びる第一の線形エッジと、トレーリングエッジから延びる第二の線形エッジと、第一と第二のエッジの交点における点を含む。他の実施形態において、ギャップ710の外周の、その媒体対向面における断面は、トラック方向に略平行な線形トレーリングエッジと、線形トレーリングエッジに略平行な線形リーディングエッジと、トーリングエッジとリーディングエッジの間に延びるサイドエッジによって特徴付けられてもよく、サイドエッジの各々は、リーディングエッジから延びる第一の線形エッジと、トレーリングエッジから延びる第二の線形エッジと、第一と第二の線形エッジの交点における点を有する。
【0055】
1つの好ましい実施形態において、磁気ヘッド700は、Sg1<Sg2であり、Sg1が、トレーリングシールド708のリーディングエッジの屈曲点(点A1として示される)と、主磁極706の、屈曲点に最も近いトレーリング側角部(点M1として示される)との間のクロストラック方向の距離であり、Sg2が、サイドシールド702の、主磁極706のトレーリング側角部(点M1として示される)に対してクロストラック方向に平行なエッジ上の第一の点(点B1として示される)と、主磁極706の、第一の点(点B1として示される)に最も近いトレーリング側角部(点M1として示される)との間のクロストラック方向の距離であることを特徴とする。
【0056】
他の好ましい実施形態において、磁気ヘッド700は、Sg2<MPwであり、MPwが、主磁極706のトレーリングエッジのクロストラック方向の幅であることを特徴とする。
【0057】
1つの方法によれば、ギャップ710の、主磁極706のトレーリング側の部分(トレーリングギャップ等)は、媒体対向面の平面におけるクロストラック方向に垂直な方向への長さが約5nmから約50nmの範囲、たとえば10〜25nm、好ましくは約20nmであってもよい。
【0058】
他の方法において、主磁極706の、そのトレーリングエッジでのクロストラック方向の幅は、約60nmから約150nmの範囲、たとえば約80〜110nm、好ましくは約100nmであってもよい。
【0059】
一実施形態によれば、トレーリングシールド708のトレーリングエッジのクロストラック方向の幅は、主磁極706の、そのトレーリングエッジにおけるクロストラック方向の幅の約1.5倍未満であってもよい。別の方法において、トレーリングシールド708のトレーリングエッジのクロストラック方向の幅は、主磁極706の、そのトレーリングエッジにおけるクロストラック方向の幅と略等しくてもよい。
【0060】
他の実施形態において、トレーリングシールド708のクロストラック方向に垂直な方向の媒体対向面の平面における長さは、約25nmから約100nmの範囲、たとえば約40〜60nm、好ましくは約50nmであってもよい。
【0061】
1つの方法によれば、トレーリングシールド708のリーディングエッジとサイドエッジとの交点において形成される角度は、約20°から約60°の範囲、たとえば約40〜50°、好ましくは約45°であってもよい。
【0062】
有限要素法を用いた電磁界シミュレーションから得られた磁界分布を評価して、本明細書で説明するような逆転型磁気ヘッド構造を利用することによってもたらされる改良を測定するための指標とした。信号対雑音比(SNR)を大きくすることに関するヘッド磁界の指標として、シングル記録を実行する場合、磁界勾配が所定のトラックピッチ中心(図8に示される)においてダウントラック方向に高いことが有利である。さらに、好ましい実施形態において、ダウントラック方向への磁界勾配はまた、トラックエッジ(図8に示されるように、トラック端から、距離の10%だけ離れた位置として定義される)において高くてもよい。またさらに、いくつかの実施形態によれば、高いクロストラック磁界を有することはさらにより有利である。
【0063】
本明細書に記載されているように、逆転型ヘッド構造を利用する場合、いくつかの実施形態において、トラックエッジにおけるダウントラック勾配とクロストラック勾配の両方を1.5倍に増大させ、それと同時にトラックピッチ中心の磁界勾配が保持されるようにすることが可能である。
【0064】
次に、SMRシステムで利用される、本明細書に記載の構造を有するヘッドでの実施形態において、面密度のゲインを計算した。これらの計算によれば、隣接するトラックイレーズバンド幅を従来の構造のそれの3分の2に縮小することによって、トラック毎インチ密度(TPI)を約20%増大させることが可能である。さらに、トラックエッジでの急峻な磁界勾配を通じて記録品質を改善することにより、SNRを1dB、また線形トラック密度を100kbpi、同時に増大させることができた。これに加えて、いくつかの実施形態において、シールドには鋭角の突出部が見られなかったため、自然発生的なシールドドメインに起因する「遠隔トラック消去(far track erasure)」を防止することも可能であり、さらに、信頼性の高いハードディスクデバイスを生産することが可能であった。
【0065】
先行技術による従来の構造による磁気ヘッドが図9Aに示される。図からわかるように、トレーリングシールド908は主磁極906のトレーリングエッジを覆い、主磁極906の両側でクロストラック方向に延びる。これに対して、図9Bに示されるように、一実施形態による逆転型磁気ヘッドでは、主磁極906の周囲のシールドが、主磁極906のクロストラック方向の両側の2つの屈曲点を有する。これに加えて、主磁極906はリーディングシールドから、より上方に位置付けられており、主磁極906のトレーリングエッジの角部がこれらの位置において、より薄いシールド層によって絶縁されることになる。
【0066】
図9A〜9Bに示されるこれらの構造を実験的に評価した。この実験による比較では、ヘッド構造、ダウントラックピッチ中心での勾配、ダウントラックエッジでの磁界勾配、およびクロストラック方向へのクロストラック磁界勾配を、これに対応してサイドギャップ幅を変化させて有限要素方を用いて計算した。
【0067】
各実験的評価において、図10A〜10Cに示されるように、トラックピッチは約60nmに設定された。さらに、ダウントラック方向に約90nmの幅のFeCo系合金が主磁極として用いられ、トレーリングシールドとサイドシールドにはNiFe系合金を用いた。さらに、トレーリングシールドギャップ長さは、約20nmに設定され、主磁極と裏打ち層の間の距離は約47nmであり、磁界評価部位は、主磁極の媒体対向面から約15nm離れた点とした。これに加えて、図7において点A1として示される屈曲点において得られるトレーリングシールドのエッジの内角であるトレーリングシールドの屈曲角は約45°であった。
【0068】
図10Aは、一実施形態によれば、トラックピッチ中心での磁界勾配のサイドギャップ依存性を示している。従来の磁気ヘッド構造(図中、「タイプ1」とされる)では、磁界勾配はトラックピッチ中心で、サイドギャップの狭小化と磁界強度の低下との組み合わせによって大幅に劣化した。これに対して、一実施形態による逆転型ヘッド構造(図中、「タイプ2」)は、サイドギャップの狭小化とともに磁界勾配が増大しており、これはヘッドの動作にとって非常に有益である。
【0069】
図10Bは同様に、一実施形態によるトラックエッジにおけるダウントラック勾配を示している。勾配は、先行技術による従来の(図中、「タイプ1」)ヘッド構造と一実施形態による逆転型(図中、「タイプ2」)のヘッド構造のどちらにおいても、サイドギャップの狭小化とともに増大した。しかしながら、逆転型構造においては、従来の構造と異なり、より狭いサイドギャップで最も高い磁界勾配が見られ、トラックエッジにおける高いダウントラック勾配はサイドギャップが大きくなっても継続した。この傾向はまた、クロストラック勾配に関しても見られ、磁界勾配は、従来および逆転型ヘッド構造の両方において、サイドギャップの狭小化とともに増大する傾向があった。
【0070】
しかしながら、いくつかの実施形態においては、図10Cに示されるように、逆転型構造は、より狭いサイドギャップ条件下で勾配の改善を見せた。したがって、図10Aに示されるようなトラックピッチ中心における磁界勾配の改善と、トラック端における磁界勾配の改善の両方を生じさせることが可能である。さらに、逆転型ヘッド構造の好ましい実施形態によって、従来の磁気ヘッド構造を用いて可能なものより高い面密度を有するハードディスクデバイスが実現する。
【0071】
図11は、一実施形態による逆転型ヘッド構造を示している。図11に示されるように、主磁極1106は、そのリーディングエッジにおいて幅MPwを有することによって特徴付けられる。いくつかの実施形態によれば、MPwは約60nmから約150nmの範囲、たとえば約100nmであってもよい。さらに、トレーリングシールド1108のトレーリングエッジは、だいたい主磁極1106のトレーリングエッジの幅MPwの幅(TSw)を有していてもよい。もちろん、TSwは、いくつかの方法においては、MPwより長くても、短くてもよい。
【0072】
一実施形態によれば、トレーリングシールド1108は2つの異なる材料を含んでいてもよく、これらはトレーリングシールド1108の異なる部分を形成してもよい。たとえば、トレーリングシールド1108は、トレーリングシールド1108の異なる部分1112を形成する他の材料より高いBsを有する第一の材料を含む部分1110を有していてもよい。これに加えて、第一の材料の部分1110は、1つの方法において、トレーリングシールド1108のトレーリングエッジ付近に位置付けられてもよい。また、トレーリングシールド1108は、媒体移動方向(すなわち、クロストラック方向に垂直)の長さTSlが、約25nmから約100nmの範囲、たとえば約50nmであってもよい。さらに、トレーリングシールド1108のトレーリングエッジ付近の第一の材料の長さは、いくつかの方法において、約40から約100nmの範囲であってもよい。これに加えて、いくつかの実施形態において、主磁極1106のトレーリングエッジとトレーリングシールド1108のリーディングエッジとの間の距離であるトレーリングギャップの長さTGは、約5nmから約50nmの範囲、たとえば約20nmであってもよい。
【0073】
いくつかの好ましい実施形態において、図11に示されるように、トレーリングシールド1108の、その媒体対向面における断面は台形であってもよい。いくつかの他の形態において、台形の最も広い部分はトレーリングシールド1108のリーディングエッジ上にあってもよい。
【0074】
図11に示される角度であるTSl角は、トレーリングシールド1108の、主磁極1106に最も近いリーディングエッジから主磁極1106のトレーリングエッジに平行な線に沿って延びる線とサイドシールドのリーディングエッジとの間の角度である。図11に示される他の角度であるTSw角は、トレーリグシールド1108のトレーリングエッジとトレーリングシールド1108のサイドエッジ(クロストラック方向)との間の角度である。
【0075】
これらの角度は、その媒体対向面における断面が台形であるトレーリングシールド1108において表されている。しかしながら、他の形状も可能であり、これは当業者が本明細書を読めばわかるように、たとえば三角形、多角形、長方形、これらの組み合わせ等がある。
【0076】
一実施形態による、実際の寸法を使い、TS角とサイドギャップの幅の関係を示した参考用の計算モデルが図12に示されている。各種の実施形態による、トレーリングシールドの屈曲角(TSw角)とトレーリングシールド長さ(TSl)の変化が逆転型磁気ヘッド構造の記録特性に与える影響を、この計算モデルを使用して調査し、その結果を図13A〜13Cに示す。これらの結果では、長さ(TSl)が約50nmで、そのトレーリングエッジの幅がトレーリングシールド幅(TSw)である、高強度の磁界(Bs)を有するトレーリングシールドを前提としている。さらに、これらの実験においては、主磁極1206の幅(MPw)は約100nmであり、トレーリングギャップ長さ(TG)は約20nmであった。
【0077】
図13A〜13Cに示される計算結果によれば、この調査の焦点とされたトラックエッジでの勾配とクロストラック勾配は、トレーリングシールド幅(TSw)の増大とともに改善する傾向があった。しかしながら、トラックピッチ中心の勾配は、TS角が約60度を超えると大幅に減少した。それゆえ、サイドシールドの磁界吸収傾向によって、磁界の強度もこれと相応に低下した。その結果、トラック中心とトラック端における両立する記録特性を実現するためには、TS角は好ましくは、約20°から60°の間である。さらに、トレーリングシールド幅(TSw)をそれぞれ約50nm、100nm、150nmに設定して磁界強度計算を行った。トレーリングシールド幅(TSw)が過度に広いと、サイドシールドの効果が減少し、したがって、記録特性も相応に劣化した。
【0078】
好ましい実施形態において、トラックエッジでの記録磁界勾配を改善するには、トレーリングシールド幅(TSw)は主磁極幅(MPw)の約1.5倍以下であった。この改善は特に、シングル磁気記録(SMR)を利用したシステムにおいて有効で有利である。この構造を使用した場合、トラックエッジにおけるダウントラック方向の勾配とクロストラック勾配の両方を、図9Aに示されるような従来のヘッド構造と比較して、約50%改善することが可能であった。
【0079】
従来の構造と比較した面密度のゲインを、上記の計算と一致する構造を有する磁気ヘッドに関する電磁界シミュレーションによって計算した。一実施形態において、逆転型ヘッド構造では、イレーズバンド幅が、クロストラック磁界勾配の改善によって従来の磁気ヘッド構造のそれの約3分の2であった。これは、トラックピッチが従来のヘッド構造より約20%増大したことに対応する。さらに、エッジにおけるダウントラック方向の磁界勾配の改善によって、SNRは1dB増大した。このようなゲインの累積により、面密度において、従来の構造と比較して約30%という相応に有利な増加が得られた。
【0080】
上記の結果は、図14Aに示されるような、三角形の逆転型磁気ヘッド構造を用いて見られたが、図14Bに示されるように形状が台形の主磁極を利用する他の実施形態においても同様の効果が得られる。さらに、シールドの形状に関して、好ましい実施形態において、リーディングシールドのトレーリングエッジは、他の可能な構造の中でも、図11と14A〜Bに示されるように平坦であってもよく、また、図7と9Bに示されるように、逆転させた、先端の尖った構造を有していてもよく、これは当業者が本明細書を読めばわかるであろう。
【0081】
さらに、従来のシールドの形状では、好ましくないことに、磁界がシールド端に集中するとトラックが消去されることがある(「遠隔トラック消去」とも呼ばれる現象)。各種の実施形態によれば、本願で提案する逆転型磁気ヘッド構造によって、問題となるこのようなシールド端エンドでの磁界の集中を回避でき、それゆえ、特異なシールドドメインによる好ましくない遠隔トラック消去は発生しない。その結果、各種の実施形態による本願で説明した逆転型磁気ヘッド構造はまた、再生/記録動作において、非常に信頼性が高い。
【0082】
以上、各種の実施形態を説明したが、当然のことながら、これらは例として提示されたにすぎず、限定ではない。それゆえ、本発明のある実施形態の幅と範囲は、上記の例示的実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびこれと均等のものにしたがってのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0083】
700 磁気記録ヘッド
702 サイドシールド
704 リーディングシールド
706、906、1106、1206 主磁極
708、908、1108 トレーリングシールド
710 ギャップ
1110 (トレーリングシールドの)部分
1112 (トレーリングシールドの)異なる部分
MPw 主磁極の幅
MPw 主磁極幅
TSw トレーリングシールド幅
TSl トレーリングシールド長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主磁極と、
前記主磁極のトレーリング側付近に位置付けられたトレーリングシールドと、
前記主磁極のクロストラック方向の両側付近に位置付けられたサイドシールドと、
前記主磁極のリーディング側付近に位置付けられたリーディングシールドと、
前記主磁極と前記シールドとの間に位置付けられたギャップと、
を含み、
前記トレーリングシールドの、その媒体対向面における断面が台形である磁気ヘッド。
【請求項2】
前記主磁極の、その媒体対向面における断面が三角形、台形のいずれか、または三角形と台形の複合形である、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記ギャップの外周の、その媒体対向面における断面が、前記クロストラック方向に略平行な線形トレーリングエッジと、先端の尖ったリーディングエッジと、前記トレーリングエッジと前記リーディングエッジの間に延びるサイドエッジによって特徴付けられるダイヤモンド形であり、前記サイドエッジの各々が前記リーディングエッジから延びる第一の線形エッジと、前記トレーリングエッジから延びる第二の線形エッジと、前記第一と第二のエッジとの交点における点を含む、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記ギャップの外周の、その媒体対向面における断面が、前記クロストラック方向に略平行な線形トレーリングエッジと、前記線形トレーリングエッジに略平行な線形リーディングエッジと、前記トレーリングエッジと前記リーディングエッジの間に延びるサイドエッジによって特徴付けられ、前記サイドエッジの各々が、前記リーディングエッジから延びる第一の線形エッジと、前記トレーリングエッジから延びる第二の線形エッジと、前記第一と第二の線形エッジの交点における点を含む、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記トレーリングシールドの、その前記媒体対向面における前記断面の前記台形が、前記台形の、前記クロストラック方向に広い方の辺が前記トレーリングシールドのリーディング部であるよう配置される、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
Sg1<Sg2であり、Sg1が前記トレーリングシールドのリーディングエッジの屈曲点と、前記主磁極の、前記屈曲点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であり、Sg2が前記サイドシールドのエッジ上の、前記主磁極の前記トレーリング側角部に対して前記クロストラック方向に平行な第一の点と、前記主磁極の、前記第一の点に最も近い前記トレーリング側角部との間の前記クロストラック方向の距離であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
前記ギャップの、前記主磁極のトレーリング側の部分の、媒体対向面の平面内の前記クロストラック方向に対して垂直方向の長さが約5nmから約50nmの範囲である、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
前記ギャップの、前記主磁極のトレーリング側の前記部分の前記長さが、約10〜25nmの範囲である、請求項7に記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
前記主磁極の、そのトレーリングエッジでの前記クロストラック方向への幅が、約60nmから約150nmの範囲である、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項10】
前記主磁極の、そのトレーリングエッジでの前記幅が、約80〜110nmの範囲である、請求項9に記載の磁気ヘッド。
【請求項11】
前記トレーリングシールドのトレーリングエッジの前記クロストラック方向への幅が、前記主磁極の、そのトレーリングエッジにおける前記クロストラック方向への幅の約1.5倍未満である、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項12】
前記トレーリングシールドの前記トレーリングエッジのクロストラック方向への前記幅が、前記主磁極の、その前記トレーリングエッジにおける前記クロストラック方向への幅と略等しい、請求項11に記載の磁気ヘッド。
【請求項13】
前記トレーリングシールドの、媒体対向面の平面内における、クロストラック方向に対して垂直な方向の長さが、約25nmから約100nmの範囲である、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項14】
前記トレーリングシールドが2つの異なる材料を含み、第一の材料がより高いBsを有し、前記トレーリングシールドのトレーリングエッジ付近に位置付けられている、請求項13に記載の磁気ヘッド。
【請求項15】
前記トレーリングシールドの前記トレーリングエッジ付近の前記第一の材料の長さが約40〜100nmの範囲である、請求項14に記載の磁気ヘッド。
【請求項16】
前記トレーリングエッジのリーディングエッジとサイドエッジの交点で形成される角度が約20°から約60°の範囲である、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項17】
前記リーディングエッジと前記トレーリングシールドの前記サイドエッジの交点で形成される角度が約40〜50°の範囲である、請求項16に記載の磁気ヘッド。
【請求項18】
Sg2<MPwであり、Sg2が前記サイドシールドのエッジ上の、前記主磁極の前記トレーリング側角部に対して前記クロストラック方向に平行な第一の点と、前記主磁極の、前記第一の点に最も近い前記トレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であり、MPwが前記主磁極のトレーリングエッジのクロストラック方向への幅であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項19】
主磁極と、
前記主磁極のトレーリング側付近に位置付けられたトレーリングシールドと、
前記主磁極のクロストラック方向の両側付近に位置付けられたサイドシールドと、
前記主磁極のリーディング側付近に位置付けられたリーディングシールドと、
前記主磁極と前記シールドの間に位置付けられたギャップと、
を含む磁気ヘッドにおいて、
Sg1<Sg2であり、Sg1が前記トレーリングシールドのリーディングエッジの屈曲点と、前記主磁極の、前記屈曲点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であり、Sg2が前記サイドシールドのエッジ上の、前記主磁極の前記トレーリング側角部に対して前記クロストラック方向に平行な第一の点と、前記主磁極の、前記第一の点に最も近い前記トレーリング側角部との間の前記クロストラック方向の距離であることを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項20】
Sg2<MPwであり、MPwが前記主磁極のトレーリングエッジの前記クロストラック方向への幅であることを特徴とする、請求項19に記載の磁気ヘッド。
【請求項21】
主磁極と、
前記主磁極のトレーリング側付近に位置付けられたトレーリングシールドと、
前記主磁極のクロストラック方向の両側付近に位置付けられたサイドシールドと、
前記主磁極のリーディング側付近に位置付けられたリーディングシールドと、
前記主磁極と前記シールドの間に位置付けられたギャップと、
を含む磁気ヘッドにおいて、
Sg1<Sg2であり、Sg1が前記トレーリングシールドのリーディングエッジの屈曲点と、前記主磁極の、前記屈曲点に最も近いトレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であり、Sg2が前記サイドシールドのエッジ上の、前記主磁極の前記トレーリング側角部に対して前記クロストラック方向に平行な第一の点と、前記主磁極の、前記第一の点に最も近い前記トレーリング側角部との間のクロストラック方向の距離であることを特徴とし、
Sg2<MPwであり、MPwが前記主磁極のトレーリングエッジの前記クロストラック方向への幅であることを特徴とし、
前記トレーリングシールドのトレーリングエッジの前記クロストラック方向の幅がMPwの約1.5倍未満である磁気ヘッド。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【公開番号】特開2013−58299(P2013−58299A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194704(P2012−194704)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(503116280)エイチジーエスティーネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】